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特開2025-8162セラミックス焼結体、および、プラズマ発生用電極
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  • 特開-セラミックス焼結体、および、プラズマ発生用電極 図1
  • 特開-セラミックス焼結体、および、プラズマ発生用電極 図2
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  • 特開-セラミックス焼結体、および、プラズマ発生用電極 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008162
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】セラミックス焼結体、および、プラズマ発生用電極
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/56 20060101AFI20250109BHJP
   H05H 1/34 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C04B35/56 070
H05H1/34
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110100
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100227732
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 祥二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 経之
(72)【発明者】
【氏名】吉本 修
(72)【発明者】
【氏名】田中 智雄
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084BB23
2G084BB37
2G084CC23
2G084DD01
2G084DD12
2G084GG02
2G084GG12
2G084GG13
(57)【要約】
【課題】 セラミックス焼結体において、耐酸化性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】 セラミックス焼結体は、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、および、タングステン(W)から選択される5種または6種の元素からなる第1特定元素と、イットリウム(Y)およびアルミニウム(Al)から選択される1種の元素からなる第2特定元素と、炭素元素(C)と、を含み、セラミックス焼結体に含まれる、第1特定元素と第2特定元素と炭素元素の合計は、98at%以上であり、セラミックス焼結体に含まれる第2特定元素は、3000atppm以下であり、セラミックス焼結体に含まれる炭素は、45at%以上55at%以下であり、第1特定元素が固溶した単相組織を有する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス焼結体であって、
チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、および、タングステン(W)から選択される5種または6種の元素からなる第1特定元素と、
イットリウム(Y)およびアルミニウム(Al)から選択される1種の元素からなる第2特定元素と、
炭素元素(C)と、を含み、
前記セラミックス焼結体に含まれる、前記第1特定元素と前記第2特定元素と炭素元素との合計は、98at%以上であり、
前記セラミックス焼結体に含まれる前記第2特定元素は、3000atppm以下であり、
前記セラミックス焼結体に含まれる炭素は、45at%以上55at%以下であり、
前記第1特定元素が固溶した単相組織を有する、
ことを特徴とするセラミックス焼結体。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックス焼結体であって、
前記第1特定元素は、ジルコニウムを含む、
ことを特徴とするセラミックス焼結体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のセラミックス焼結体であって、
前記セラミックス焼結体に含まれる鉄元素(Fe)は、800atppm以下である、
ことを特徴とするセラミックス焼結体。
【請求項4】
プラズマ発生用電極であって、
請求項1または請求項2に記載のセラミックス焼結体を備える、
プラズマ発生用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス焼結体、および、プラズマ発生用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラズマ発生用電極に用いられるセラミックス焼結体が知られている(例えば、特許文献1、および、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6929755号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Shiro Shimada, Michio Inagaki, Kunihito Matsui, "Oxidation Kinetics of Hafnium Carbide in the Temperature Range of 480° to 600°C", Journal of the American Ceramic Society, Volume75, Issue10, October 1992, Pages 2671-2678, [令和5年5月9日検索]、インターネット<https://doi.org/10.1111/j.1151-2916.1992.tb05487.x>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および非特許文献1のような先行技術によっても、セラミックス焼結体において、耐酸化性を向上させる技術については、なお、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、セラミックス焼結体において、耐酸化性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、セラミックス焼結体が提供される。このセラミックス焼結体は、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、および、タングステン(W)から選択される5種または6種の元素からなる第1特定元素と、イットリウム(Y)およびアルミニウム(Al)から選択される1種の元素からなる第2特定元素と、炭素元素(C)と、を含み、前記セラミックス焼結体に含まれる、前記第1特定元素と前記第2特定元素と炭素元素との合計は、98at%以上であり、前記セラミックス焼結体に含まれる前記第2特定元素は、3000atppm以下であり、前記セラミックス焼結体に含まれる炭素は、45at%以上55at%以下であり、前記第1特定元素が固溶した単相組織を有する。
【0009】
この構成によれば、セラミックス焼結体は、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル、および、タングステンから選択される5種または6種の元素からなる第1特定元素が固溶した単相組織を有する。これにより、セラミックス焼結体の耐酸化性を向上させることができる。
【0010】
(2)上記形態のセラミックス焼結体において、前記第1特定元素は、ジルコニウムを含んでもよい。この構成によれば、セラミックス焼結体は、第1特定元素として、チタン、バナジウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステンのいずれよりもイオン半径が大きいジルコニウムを含んでいる。これにより、第1特定元素が固溶した単相組織における結晶格子の歪みが大きくなる。したがって、セラミックス焼結体は、酸化しにくくなるため、セラミックス焼結体の耐酸化性をさらに向上させることができる。
【0011】
(3)上記形態のセラミックス焼結体において、前記セラミックス焼結体に含まれる鉄元素(Fe)は、800atppm以下であってもよい。この構成によれば、セラミックス焼結体は、鉄元素の濃度が800atppm以下であるため、鉄系粒子の析出が抑制される。これにより、セラミックス焼結体の温度上昇に伴う溶融が抑制されるため、使用によるセラミックス焼結体の重量減少を抑制させることができる。
【0012】
(4)本発明の別の形態によれば、プラズマ発生用電極が提供される。このプラズマ発生用電極は、上記形態のセラミックス焼結体を備える。この構成によれば、プラズマ発生用電極は、第1特定元素が固溶した単相組織を有するセラミックス焼結体を備えるため、プラズマ発生用電極の耐酸化性を向上させることができる。これにより、プラズマ発生用電極の寿命を延ばすことができる。
【0013】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、セラミックス焼結体の製造方法、セラミックス焼結体を備える装置、セラミックス焼結体を備える装置の制御方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態のセラミック焼結体を備えるプラズマ発生用電極の断面図である。
図2】セラミックス焼結体のサンプルの作製条件を説明する第1の図である。
図3】セラミックス焼結体のサンプルの作製条件を説明する第2の図である。
図4】セラミックス焼結体のサンプルの特性を説明する第1の図である。
図5】セラミックス焼結体のサンプルの特性を説明する第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態の電極チップ1(セラミック焼結体)を備えるプラズマ発生用電極10の断面図である。本実施形態のプラズマ発生用電極10は、プラズマを用いる切断機、表面処理装置、溶射装置などにおいて、例えば、酸素プラズマを発生させるために用いられる。プラズマ発生用電極10は、プラズマ発生用カソードとしての電極チップ1と、電極チップ1を支持するチップ支持部2と、を備える。
【0016】
電極チップ1は、セラミックス焼結体であって、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、および、タングステン(W)から選択される5種または6種の元素からなる第1特定元素と、イットリウム(Y)およびアルミニウム(Al)から選択される1種の元素からなる第2特定元素と、炭素元素(C)と、を含んでいる。電極チップ1に含まれる、第1特定元素と第2特定元素と炭素元素との合計は、98at%以上であり、第2特定元素は、3000atppm以下である。第1特定元素と第2特定元素と炭素元素との合計は、100at%であってもよく、第2特定元素は、0atppmであってもよい。電極チップ1に含まれる炭素は、45at%以上55at%以下である。電極チップ1における第1特定元素の濃度と炭素元素の濃度とは、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いて測定する。電極チップ1における第2特定元素の特定、および、濃度の測定は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置を用いて行う。
【0017】
本実施形態の電極チップ1は、第1特定元素が固溶した単相組織を有している。本実施形態では、電極チップ1が、第1特定元素が固溶した単相組織を有しているか否かは、X線回折装置を用いたX線回折法によって同定する。具体的には、CuKα1線を用いたX線回折法による電極チップ1の結晶構造の解析において、2θを20°から80°まで測定した場合、NaCl型構造の<111>方向、<200>方向、<220>方向、<311>方向、<222>方向のそれぞれに由来するピークが、30.0°~37.2°,34.8°~43.1°,50.2°~62.3°,59.7°~74.4°,62.7°~78.5°のそれぞれに1つだけ存在している場合、電極チップ1は、単相組織を有していると判断する。なお、30.0°~37.2°,34.8°~43.1°,50.2°~62.3°,59.7°~74.4°,62.7°~78.5°の範囲内のいずれかに、2つもしくは3つのピークが観察される場合には、複相組織を有していると判断する。
【0018】
本実施形態の電極チップ1は、第1特定元素として、チタン、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、および、タンタルの5種類の元素を含んでいる。電極チップ1には、第1特定元素の組み合わせとして、チタンと、ジルコニウムと、ハフニウムと、タンタルとの組み合わせが含まれていることが好ましい。電極チップ1には、第1特定元素の組み合わせとして、ジルコニウムとハフニウムとを含んでいることが好ましく、ジルコニウムとハフニウムとタンタルとを含んでいることがより好ましく、ジルコニウムとハフニウムとタンタルとチタンとを含んでいることがさらに好ましい。電極チップ1は、ジルコニウム元素の濃度が8.43at%となっており、酸素プラズマが存在する雰囲気において酸化しにくい。電極チップ1が備えるセラミックス焼結体は、第2特定元素として、イットリウムを含んでいる。
【0019】
本実施形態の電極チップ1には、不可避的不純物として、鉄元素が含まれている。本実施形態では、電極チップ1に含まれる鉄元素(Fe)は、800atppm以下である。電極チップ1の鉄元素は、0atppmであってもよい。
【0020】
本実施形態の電極チップ1は、第1特定元素が固溶した単相組織を有しているため、気孔が少ない比較的緻密なセラミックス焼結体となっている。セラミックス焼結体の緻密性は、リートベルト解析により求められる格子定数から算出される理論密度値と、JIS R1634による方法で測定される比重と開気孔率を用いて算出される相対密度の大きさで表される。本実施形態の電極チップ1は、相対密度が97%より大きい。
【0021】
本実施形態の電極チップ1では、第1特定元素どうしの濃度差は、5at%より小さいため、固溶した単相組織が形成されやすい。本実施形態では、第1特定元素どうしの濃度差は、エネルギー分散型X線分光法を用いた結晶粒中の組成比の算出結果から求める。
【0022】
チップ支持部2は、有底の筒状部材であって、例えば、銅製の棒状部材を加工することで形成される。チップ支持部2の底部2aには、電極チップ1が嵌め込まれる孔2bが形成されている。本実施形態のプラズマ発生用電極10は、チップ支持部2の孔2bに、電極チップ1が嵌め込まれることで完成する。
【0023】
次に、電極チップ1の製造方法について説明する。電極チップ1の製造方法として、最初に、秤量した金属粉末をエタノールとともにボールミル中に投入し、混合粉砕を20時間行うことで、金属粉末混合物を作製する。秤量する金属粉末の種類は、炭化チタン粉末(平均粒径:1.7μm)、炭化ジルコニウム粉末(平均粒径:2.4μm)、炭化ニオブ粉末(平均粒径:1.1μm)、炭化ハフニウム粉末(平均粒径:0.7μm)、および、炭化タンタル粉末(平均粒径:1.0μm)であって、作製する金属粉末混合物において、それぞれが20mol%となるように秤量する。次に、3mol%のイットリア(Y23)で部分安定化されたジルコニウム(以下、「3YSZ」という)を、作製した金属粉末混合物の0.4wt%に相当する量を金属粉末混合物に添加し、さらに、混合粉砕を20時間行い、スラリーを作製する。作製したスラリーを湯煎乾燥することで乾燥粉末を作製する。作製した乾燥粉末を目開き100μmの篩に通すことで得られる造粒粉末をホットプレス用の型に投入し、温度1900℃の真空雰囲気において、圧力30MPaで加圧し焼成することで、電極チップ1は、完成する。
【0024】
次に、プラズマ発生用電極の電極チップとして用いられるセラミックス焼結体に関する評価試験について説明する。本評価試験では、作製条件が異なる複数のセラミックス焼結体を作製し、作製条件がセラミックス焼結体の特性に及ぼす影響を評価した。
【0025】
図2は、セラミックス焼結体のサンプルの作製条件を説明する第1の図である。図3は、セラミックス焼結体のサンプルの作製条件を説明する第2の図である。本評価試験では、セラミックス焼結体のサンプルとして、29種類のサンプル1~29を作製した。図2および図3には、サンプル1~29のそれぞれの作製条件として、「主原料」の種類とそれぞれのモル百分率、「添加物」の種類とそれぞれの重量百分率、および、「焼成条件」としての「焼成方法」と、「温度」(単位:℃)と、「圧力」(単位:MPa)と、を示している。
【0026】
最初に、セラミックス焼結体に含まれる第1特定元素となる「主原料」について説明する。サンプル1~29のうち、サンプル1~21,24~29の作製では、炭化チタン、炭化バナジウム、炭化ジルコニウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化ハフニウム、炭化タンタル、および、炭化タングステンのうち、図2および図3に示すように、1~8種類の材料を「主原料」として用いた。サンプル1~21,24~29の作製では、以下に示す平均粒径を有する「主原料」の粉末を用いた。
炭化チタン粉末:1.7μm
炭化バナジウム粉末:1.8μm
炭化ジルコニウム粉末:2.4μm
炭化ニオブ粉末:1.1μm
炭化モリブデン粉末:1.8μm
炭化ハフニウム粉末:0.7μm
炭化タンタル粉末:1.0μm
炭化タングステン粉末:1.1μm
【0027】
次に、セラミックス焼結体に含まれる第2特定元素となる「添加物」について説明する。サンプル1~21,25~29の作製では、図2および図3に示すように、3YSZ、または、酸化アルミニウム(Al23)のいずれかを「添加物」として用いた。なお、サンプル1~21,24~29の作製では、以下に示す平均粒径を有する「添加物」の粉末を用いた。なお、サンプル24では、「添加物」として、0.4wt%のジルコニア(ZrO2)を用いた。サンプル22,23の作製に用いた原料の詳細は、後述する。
3YSZ:1.0μm
Al23:0.3μm
【0028】
サンプル1~21,24~29の作製では、電極チップ1の製造方法と同様に、金属粉末混合物を作製した。金属粉末混合物の作製では、金属粉末混合物における「主原料」のモル百分率が図2または図3に示す数値となるように秤量し、エタノールとともにボールミル中に投入し、混合粉砕を20時間行った。サンプル25では、主原料が合計で略100mol%となるように、炭化チタン、炭化バナジウム、炭化ニオブを等量ずつ秤量し、エタノールとともにボールミル中に投入し、混合粉砕を20時間行った。サンプル1~21,25~29では、作製した金属粉末混合物の重量に対して図2または図3に示す数値に相当する量の「添加物」を加え、さらに、混合粉砕を20時間行い、スラリーを作製した。サンプル24では、作製した金属粉末混合物の0.4wt%に相当する量のジルコニアを「添加物」として加え、さらに、混合粉砕を20時間行い、スラリーを作製した。サンプル1~21,24~29では、作製したスラリーを湯煎乾燥することで、それぞれの乾燥粉末を作製し、作製した乾燥粉末を目開き100μmの篩に通して、造粒粉末を得た。
【0029】
サンプル1~21,24~29のうち、サンプル1~19,21,24~29の作製では、図2および図3の「焼成条件」の「焼成方法」に示すホットプレス法(HP)によって焼成を行った。サンプル1~19,21,24~29の作製では、サンプルの厚みが20mmとなるように、30mm×30mmの大きさを有する角型のホットプレス用の型に得られた造粒粉末を投入し、図2および図3の「焼成条件」の「温度」および「圧力」の条件において、真空雰囲気において焼成を行った。
【0030】
サンプル1~21,24~29のうち、サンプル20の作製では、図3の「焼成条件」の「焼成方法」に示す通電焼結法(SPS)によって焼成を行った。サンプル20の作製では、サンプルの厚みが10mmとなるように、得られた造粒粉末を直径10mmの通電焼結用の型に投入し、焼成温度1900℃および圧力70MPaの条件において、真空雰囲気において焼成を行った。
【0031】
サンプル22,23の作製では、原料として、金属酸化物である、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化タンタル(Ta25)、および、酸化ニオブ(Nb25)と、炭素(C)とを用いた。サンプル22,23の作製では、以下に示す平均粒径を有する原料の粉末を用いた。
酸化ハフニウム粉末:2.0μm
酸化ジルコニウム粉末:1.0μm
酸化チタン粉末:1.0μm
酸化タンタル粉末:3.0μm
酸化ニオブ粉末:1.0μm
炭素粉末:5.0μm
【0032】
サンプル22の作製では、組成が(HfZrTiTaNb)0.60.4となるように、上述の原料を秤量した。サンプル23の作製では、組成が(HfZrTiTaNb)0.40.6となるように、上述の原料を秤量した。サンプル22,23の作製では、秤量した原料をボールミルで混合し、混合した粉末を温度1600℃の条件において、真空雰囲気において熱処理を3時間行った。その後、サンプルの厚みが20mmとなるように、30mm×30mmの大きさを有する角型のホットプレス用の型に熱処理後の粉末を投入し、焼成温度1900℃および圧力30MPaの条件において、真空雰囲気において焼成を行った。
【0033】
図4は、セラミックス焼結体のサンプルの特性を説明する第1の図である。図5は、セラミックス焼結体のサンプルの特性を説明する第2の図である。図4には、サンプル1~16のそれぞれについて、第1特定元素に該当する元素の数と、各種測定によって得られた特性が示されている。図5には、サンプル17~29のそれぞれについて、第1特定元素に該当する元素の数と、各種測定によって得られた特性が示されている。ここで、図4および図5に示すサンプルの特性の測定方法について説明する。本評価試験では、特性の測定にあたり、鏡面研磨したサンプルを用いている。なお、図4および図5に示す各特性について、測定していない項目は、「-」とし、測定結果が検出限界以下である項目は、「ND」としている。
【0034】
「単相化の程度」は、X線回折装置を用いたX線回折法によってサンプルの結晶相を同定することで、単相化しているか否かを判定した。具体的には、電極チップ1における判定方法と同様に、CuKα1線を用いたX線回折法によるサンプルの結晶構造の解析において、NaCl型構造の<111>方向、<200>方向、<220>方向、<311>方向、<222>方向のそれぞれに由来するピークが、30.0°~37.2°,34.8°~43.1°,50.2°~62.3°,59.7°~74.4°,62.7°~78.5°のそれぞれに1つだけ存在している場合、サンプルは、単相化していると判定した。単相化していると判定されたサンプルは、リートベルト解析により求められる格子定数から算出される理論密度値と、JIS R1634による方法で測定される比重と開気孔率を用いて、「相対密度」を算出した。
【0035】
「原子濃度の差」は、サンプルに含まれる第1特定元素どうしの濃度差を示している。「C濃度」は、サンプルに含まれる炭素元素の濃度を示している。「原子濃度の差」と「C濃度」は、エネルギー分散型X線分光法を用いた結晶粒中の組成比の算出結果から求めた。
【0036】
「Zr濃度」、「Y濃度」、「Al濃度」、および、「Fe濃度」のそれぞれは、サンプルに含まれるジルコニウム元素、イットリウム元素、アルミニウム元素、および、鉄元素のそれぞれの濃度を示している。本評価試験では、誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いて、サンプル中のイットリウム元素またはアルミニウム元素の有無を確認するとともに、「Zr濃度」、「Y濃度」、「Al濃度」、および、「Fe濃度」のそれぞれを測定した。
【0037】
「耐酸化性」は、高周波プラズマエッチング装置を用いて測定した。具体的には、圧力が30Paとなるように酸素量が調整された減圧酸素雰囲気において、高周波出力100Wのプラズマをサンプルに30分間照射してエッチング処理を行った。エッチング処理後のサンプルについて、エネルギー分散型X線分光法を用いて組成比を算出し、処理前後のサンプルにおける炭素量と酸素量とのそれぞれの変化量に基づいて評価した。サンプルの「耐酸化性」の評価基準は、以下の通りである。
「◎」:炭素減少量が2at%以上、または、酸素増加量が4at%以上
「〇」:炭素減少量が3at%以上、または、酸素増加量が6at%以上
「△」:炭素減少量が4at%以上、または、酸素増加量が8at%以上
「×」:炭素減少量が6at%以上、または、酸素増加量が10at%以上
【0038】
「耐消耗性」は、セラミックス焼結体のサンプルをプラズマ発生用電極として使用した場合の消耗の度合いを表している。具体的には、セラミックス焼結体のサンプルを直径1mm×長さ10mmとなるように加工し作製した評価用電極をカソードとし、アノードを接地して直流パルス電源に接続し、窒素と酸素との混合ガスが存在する雰囲気において、電力量300Wのプラズマを3時間放電させた。放電後、評価用電極の重量減少量を測定し、評価用電極の消耗量を算出した。本評価試験では、サンプル1~21,25~29の「消耗量」は、サンプル20の消耗量を100としたときの相対値を示している。すなわち、図4および図5に示す「耐消耗性」は、値が小さいほど消耗しにくいことを意味する。
【0039】
図4に示すサンプル1~16は、いずれも、第1特定元素の数が5種または6種であり、単相化していることが明らかとなった。また、サンプル1~16は、相対密度が97%より大きく、原子濃度の差が5at%より小さい。さらに、サンプル1~16は、炭素元素の濃度が、45at%以上55at%以下となっており、イットリウム元素またはアルミニウム元素の濃度が、3000atppm以下となっている。
【0040】
サンプル1~16は、いずれも、ジルコニウム元素を含んでおり、図4に示すように、耐酸化性が、いずれも「◎」または「〇」となっている。したがって、後述する図5に示すサンプル17~29よりも、優れた耐酸化性を有することが明らかとなった。サンプル1~16のうち、ジルコニウム元素の濃度が比較的大きいサンプル1~3,8~16と、ジルコニウム元素の濃度が比較的小さいサンプル4~7とを比較すると、ジルコニウム元素の濃度が比較的大きいサンプル1~3,8~16は、耐酸化性がさらに向上することが明らかとなった。
【0041】
サンプル1~16は、いずれも、不純物として鉄元素を含んでいるものの、その濃度は、800atppm以下となっている。サンプル1~16の耐消耗性は、全てが40以下となるように比較的小さい値となり、図5に示すサンプル17~29よりも消耗しにくいことが明らかとなった。サンプル1~16のうち、鉄元素の濃度が比較的小さいサンプル1~3,8~16と、鉄元素の濃度が比較的大きいサンプル4~7とを比較すると、鉄元素の濃度が比較的小さいサンプル1~3,8~16は、耐消耗性がさらに向上することが明らかとなった。
【0042】
図5に示すサンプル17~29は、耐酸化性および耐消耗性のいずれにおいても、サンプル1~16よりも劣っていることが明らかとなった。ここでは、サンプル17~29のそれぞれの特性について、サンプル1~16との違いを説明する。
【0043】
サンプル17は、サンプル1~16の焼成温度よりも小さい1700℃で焼成されており(図3参照)、単相化していない。このため、サンプル17は、耐酸化性が低く、酸素プラズマを発生させるプラズマ発生用電極として使用する場合、酸化が進行しやすい。したがって、サンプル17は、プラズマ発生用電極としての寿命が短くなるおそれがある。
【0044】
サンプル18は、焼成時に、サンプル1~16の圧力よりも小さい10MPaで加圧されているため(図3参照)、サンプル1~16よりも気孔を多く有しており、相対密度がサンプル1~16よりも小さい。このため、サンプル18は、電気抵抗によって発熱しやすく、プラズマ発生用電極としての寿命が短くなるおそれがある。
【0045】
サンプル19は、「主原料」を炭化ハフニウムのみとしている(図3参照)。炭化ハフニウムは、酸素雰囲気において比較的低温であっても容易に酸化するため、耐酸化性は「×」となった。さらに、炭化ハフニウムは、高融点材料であるため焼結させるのが難しく、ホットプレス(図3参照)によって作製されているサンプル19は、気孔を多く有しており、相対密度が比較的小さく、緻密に形成されていない。このため、サンプル19は、耐消耗性が低く、消耗しやすい。
【0046】
サンプル20は、サンプル19と同様に、「主原料」を炭化ハフニウムのみとしているが、「SPS(通電焼結法)」によって作製されている(図3参照)。これにより、サンプル20は、サンプル19よりも緻密に形成されており、相対密度が大きくなるため、サンプル19よりも耐消耗性は向上する。しかしながら、上述したように、炭化ハフニウムは酸化しやすいため、耐酸化性は、「×」となった。
【0047】
サンプル21は、組成が(Hf0.1Zr0.225Ti0.225Ta0.225Nb0.225)Cとなっている。これにより、原子濃度の差が、サンプル1~16の原子濃度の差の上限(5at%)よりも大きい6.5at%となっている。原子濃度の差が5at%より大きくなると、固溶した単相組織が形成されにくくなるため、酸素プラズマを発生させるプラズマ発生用電極として使用する場合、酸化が進行しやすく、プラズマ発生用電極としての寿命が短くなるおそれがある。
【0048】
サンプル22は、原料として第1特定元素の酸化物と炭素とを用いて形成されており、組成が(HfZrTiTaNb)0.60.4となっている。サンプル22は、炭素元素の濃度が、サンプル1~16の炭素元素の濃度の下限(45at%)よりも小さい、42.5at%となっている。このため、サンプル22は、第1特定元素の金属相が析出しやすくなる。金属相は、炭化物よりも融点が低いため、プラズマ発生用電極として使用する温度において溶融しやすくなる。したがって、プラズマ発生用電極としての寿命が短くなるおそれがある。
【0049】
サンプル23は、原料として第1特定元素の酸化物と炭素とを用いて形成されており、組成が(HfZrTiTaNb)0.40.6となっている。サンプル23は、炭素元素の濃度が、サンプル1~16の炭素元素の濃度の上限(55at%)よりも大きい、57.2at%となっている。このため、遊離炭素が析出しやすくなり、プラズマ発生用電極として使用する場合、放電開始電圧が上昇するため、プラズマ発生用電極自身の温度が上昇し、溶融しやすくなる。したがって、プラズマ発生用電極としての寿命が短くなるおそれがある。
【0050】
サンプル24は、添加物として、3YSZやAl23ではなく、ジルコニアが用いられて作製されている。このため、サンプル24は、イットリウムやアルミニウムを含んでいない。イットリウムやアルミニウムを含んでないと、プラズマ発生用電極として使用する場合、放電開始電圧が上昇するため、溶融しやすくなり、プラズマ発生用電極としての寿命が短くなるおそれがある。
【0051】
サンプル25は、組成が(TiNbV)Cとなっている。すなわち、サンプル25は、第1特定元素の数が5種または6種のサンプル1~16とは異なり、3種である。また、サンプル25は、鉄元素の濃度が、サンプル1~16の鉄元素の濃度の上限(800atppm)よりも大きく、1340atppm%となっている。鉄元素の濃度が、800atppmより大きくなると、粗大な鉄系粒子が析出しやすい。鉄系粒子は融点が低く、プラズマ発生用電極として使用する温度において溶融しやすい。したがって、プラズマ発生用電極としての寿命が短くなるおそれがある。
【0052】
サンプル26は、組成が(HfTiTaNbVWMo)Cとなっている。すなわち、サンプル26は、第1特定元素の数が5種または6種のサンプル1~16とは異なり、7種であり、単相化していない。このため、サンプル26は、サンプル17と同様に、酸素プラズマを発生させるプラズマ発生用電極として使用する場合、酸化が進行しやすく、プラズマ発生用電極としての寿命が短くなるおそれがある。
【0053】
サンプル27は、組成が(HfZrTiTaNbVWMo)Cとなっている。すなわち、サンプル27は、第1特定元素の数が5種または6種のサンプル1~16とは異なり、8種であり、単相化していない。このため、サンプル27は、サンプル26と同様に、酸素プラズマを発生させるプラズマ発生用電極として使用する場合、酸化が進行しやすく、プラズマ発生用電極としての寿命が短くなるおそれがある。
【0054】
サンプル28は、添加物として、1.5wt%の3YSZが加えられている(図3参照)。これにより、サンプル28は、イットリウム元素の濃度が、サンプル1~16のイットリウム元素の濃度の上限(3000atppm)よりも大きく、3958atppmとなっている。サンプル29は、添加物として、0.3wt%の酸化アルミニウムが加えられている(図3参照)。これにより、サンプル29は、アルミニウム元素の濃度が、サンプル1~16のアルミニウム元素の濃度の上限(3000atppm)よりも大きく、4013atppmとなっている。イットリウム元素の濃度またはアルミニウム元素の濃度が3000atppmより大きくなると、イットリウムやアルミニウムがセラミックス焼結体の結晶粒界に析出しやすくなるとともに、固溶した単相組織に含まれる元素の濃度にばらつきが生じやすくなる。このため、酸素プラズマを発生させるプラズマ発生用電極として使用する場合、酸化が進行しやすくなるため、プラズマ発生用電極としての寿命が短くなるおそれがある。
【0055】
サンプル28は、ジルコニウム元素の濃度が、サンプル1~16におけるジルコニウム元素の濃度の15at%より大きい18.08at%となっている。セラミックス焼結体において、ジルコニウム元素の濃度が15at%を超えるとジルコニウムを含む複相組織が生成されるとともに、第1特定元素の単相組織の粒子内における第1特定元素の濃度分布が不均一となる。これにより、酸素プラズマを発生させるプラズマ発生用電極として使用する場合、酸化が進行しやすく、プラズマ発生用電極としての寿命が短くなるおそれがある。
【0056】
プラズマを用いた切断機や表面処理装置では、プラズマ発生用電極として、ハフニウムやジルコニウム、タングステンなどの高融点金属材料が用いられる場合がある。しかしながら、プラズマアーク電流の高止まりによるプラズマ発生用電極自体の発熱や、酸素などのプラズマガス種の影響による酸化によって、プラズマ発生用電極は消耗しやすく、プラズマ発生用電極の寿命は、比較的短くなるおそれがある。そこで、プラズマ発生用電極の材料として、さらに融点が高い炭化ハフニウムを使う場合もある。しかしながら、上述のサンプル19,20でも説明したように、炭化ハフニウムは、酸素雰囲気において比較的低温でも容易に酸化するため、酸素を含むプラズマ雰囲気においては、酸化による寿命低下が懸念されていた。また、炭化ハフニウムは、焼結しにくいため、サイズが大きい焼結体を得るには大きな電圧が必要であり、装置コストや製造コストが増大しやすい通電焼結法でしか緻密な焼結体を得ることができなかった。また、通電焼結法では、均一に焼結させることが難しく、形状自由度は低い。
【0057】
本実施形態の電極チップ1が備えるセラミックス焼結体は、第1特定元素としてのチタン、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、および、タンタルと、第2特定元素としてのイットリウムと、炭素元素とを含んでいる。セラミックス焼結体は、5種類の第1特定元素が単相化した固溶体を形成することで、例えば、酸素プラズマが存在する雰囲気においても、酸化が抑制される。また、第1特定元素は、炭化ハフニウムよりも融点が低い元素を含んでいるため、例えば、ホットプレスなどの焼結法でも緻密なセラミックス焼結体を作製することができる。これにより、本実施形態の電極チップ1が備えるセラミックス焼結体は、装置コストや製造コストを低減しつつ、複雑な形状を有することができる。また、電極チップ1は、ハフニウムや炭化ハフニウムよりも寿命を長くすることができる。
【0058】
以上説明した、本実施形態の電極チップ1が備えるセラミックス焼結体は、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル、および、タングステンから選択される5種または6種の元素からなる第1特定元素が固溶した単相組織を有する。これにより、電極チップ1が備えるセラミックス焼結体の耐酸化性を向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態の電極チップ1が備えるセラミックス焼結体は、第1特定元素は、ジルコニウムを含んでいる。これにより、第1特定元素が固溶した単相組織における結晶格子の歪みが大きくなる。したがって、電極チップ1が備えるセラミックス焼結体は、酸化しにくくなるため、セラミックス焼結体の耐酸化性をさらに向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態の電極チップ1が備えるセラミックス焼結体は、鉄元素の濃度が800atppm以下であるため、粗大な鉄系粒子の析出が抑制される。これにより、セラミックス焼結体の温度上昇に伴う溶融が抑制されるため、使用によるセラミックス焼結体の重量減少を抑制させることができる。したがって、電極チップ1としての寿命を延ばすことができる。
【0061】
また、本実施形態の電極チップ1は、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル、および、タングステンから選択される5種または6種の元素からなる第1特定元素が固溶した単相組織を有するセラミックス焼結体を備えている。これにより、電極チップ1の耐酸化性を向上させることができるため、プラズマ発生用電極寿命を延ばすことができる。
【0062】
また、本実施形態の電極チップ1は、ホットプレスによって作製されている。これにより、電極チップ1は、通電焼結法によって作製されるハフニウムや炭化ハフニウムからなるプラズマ発生用電極よりも、装置コストや製造コストを低減しつつ、複雑な形状を有することができる。
【0063】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0064】
[変形例1]
上述の実施形態では、電極チップ1が備えるセラミックス焼結体は、第1特定元素として、チタン、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、および、タンタルの5種類の元素を含んでいるとした。チタン、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル、および、タングステンのうちの5種または6種の元素を含んでいればよい。
【0065】
[変形例2]
上述の実施形態では、電極チップ1には、第1特定元素として、チタンと、ジルコニウムと、ハフニウムと、タンタルとの組み合わせが含まれているとした。しかしながら、第1特定元素の好ましい組み合わせは、これに限定されない。ジルコニウムと、ハフニウムと、タンタルとの組み合わせも好ましく、ハフニウムと、タンタルとの組み合わせであっても、電極チップ1の耐酸化性をさらに向上させることができる。
【0066】
[変形例3]
上述の実施形態では、電極チップ1は、ジルコニウム元素の濃度が、8.43at%となっているとした。しかしながら、電極チップ1に含まれることで電極チップ1の耐酸化性を向上させる第1特定元素は、ジルコニウムに限定されない。ジルコニウムの代わりに、ハフニウム、タンタル、チタンなどが含まれることで、電極チップ1の耐酸化性を向上させることができる。
【0067】
[変形例4]
上述の実施形態では、電極チップ1が備えるセラミックス焼結体に含まれる鉄元素(Fe)は、800atppm以下であるとした。鉄元素は、800atppmより大きくてもよいが、鉄元素の濃度が高くなると、析出する鉄系粒子が溶融することで寿命が短くなるため、鉄元素の濃度は低い方が望ましい。鉄元素の濃度は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置による測定において、測定限界以下となってもよい。
【0068】
[変形例5]
上述の実施形態のセラミックス焼結体は、電極チップ1が備えるとした。セラミックス焼結体が適用される技術分野はこれに限定されない。耐酸化性や耐消耗性が要求される技術分野において用いられてもよい。
【0069】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0070】
<適用例1>
セラミックス焼結体であって、
チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、および、タングステン(W)から選択される5種または6種の元素からなる第1特定元素と、
イットリウム(Y)およびアルミニウム(Al)から選択される1種の元素からなる第2特定元素と、
炭素元素(C)と、を含み、
前記セラミックス焼結体に含まれる、前記第1特定元素と前記第2特定元素と炭素元素との合計は、98at%以上であり、
前記セラミックス焼結体に含まれる前記第2特定元素は、3000atppm以下であり、
前記セラミックス焼結体に含まれる炭素は、45at%以上55at%以下であり、
前記第1特定元素が固溶した単相組織を有する、
ことを特徴とするセラミックス焼結体。
<適用例2>
適用例1に記載のセラミックス焼結体であって、
前記第1特定元素は、ジルコニウムを含む、
ことを特徴とするセラミックス焼結体。
<適用例3>
適用例1または適用例2に記載のセラミックス焼結体であって、
前記セラミックス焼結体に含まれる鉄元素(Fe)は、800atppm以下である、
ことを特徴とするセラミックス焼結体。
<適用例4>
プラズマ発生用電極であって、
適用例1から適用例3のいずれか一例に記載のセラミックス焼結体を備える、
プラズマ発生用電極。
【符号の説明】
【0071】
1…電極チップ(セラミックス焼結体)
10…プラズマ発生用電極
図1
図2
図3
図4
図5