(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008166
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】防獣防虫シート
(51)【国際特許分類】
A01M 29/34 20110101AFI20250109BHJP
D06M 13/322 20060101ALI20250109BHJP
D06M 23/12 20060101ALI20250109BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20250109BHJP
A01N 37/18 20060101ALI20250109BHJP
A01N 25/18 20060101ALI20250109BHJP
A01N 25/28 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A01M29/34
D06M13/322
D06M23/12
A01P17/00
A01N37/18 A
A01N25/18 102B
A01N25/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110105
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】309037387
【氏名又は名称】株式会社保安サプライ
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 将夫
(72)【発明者】
【氏名】加納 寛之
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
2B121AA03
2B121AA11
2B121BB28
2B121BB30
2B121BB32
2B121CC22
2B121DA70
2B121EA30
2B121FA01
2B121FA12
2B121FA13
4H011AC06
4H011AE02
4H011BB06
4H011BC19
4H011DA06
4H011DA07
4H011DH04
4L031AB34
4L031BA34
4L031DA12
4L033AA07
4L033AB07
4L033AC10
4L033BA44
(57)【要約】
【課題】簡易な手段で害獣や害虫の侵入を抑制可能とする。
【解決手段】不織布1に、カプサイシノイド21が封入されたマイクロカプセル2が、アクリル樹脂3に混ぜられた状態で含浸されている。マイクロカプセル2の平均粒子径は、15μm以上、25μm以下であり、カプサイシノイド21の含有割合が3.0質量%以上、6.0質量%以下となるように含浸されていることが好ましい。また、不織布1は、ポリエステル繊維を含むスパンボンド不織布であり、A4サイズであることが好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布にカプサイシノイドが含浸されていることを特徴とする防獣防虫シート。
【請求項2】
前記カプサイシノイドはマイクロカプセルに封入された状態で、前記不織布に含浸されていることを特徴とする請求項1に記載の防獣防虫シート。
【請求項3】
前記マイクロカプセルは、アクリル樹脂に混ぜられた状態で、前記不織布に含浸されていることを特徴とする請求項2に記載の防獣防虫シート。
【請求項4】
前記マイクロカプセルの平均粒子径は、15μm以上、25μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の防獣防虫シート。
【請求項5】
前記カプサイシノイドを3.0質量%以上、6.0質量%以下含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の防獣防虫シート。
【請求項6】
前記不織布は、ポリエステル繊維を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の防獣防虫シート。
【請求項7】
前記不織布は、スパンボンド不織布であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の防獣防虫シート。
【請求項8】
前記不織布は、短辺150mm以上、250mm以下、長辺250mm以上、350mm以下の矩形状であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の防獣防虫シート。
【請求項9】
前記不織布は、A4サイズであることを特徴とする請求項8に記載の防獣防虫シート。
【請求項10】
前記カプサイシノイドは、複数種類の強度の前記マイクロカプセルに封入された状態で、前記不織布に含浸されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の防獣防虫シート。
【請求項11】
前記カプサイシノイドの含有割合が、前記不織布の部分によって異なることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の防獣防虫シート。
【請求項12】
第1の濃度で前記カプサイシノイドを含有する第1部分と、前記第1の濃度よりも高い第2の濃度で前記カプサイシノイドを含有する第2部分と、を備えることを特徴とする請求項11に記載の防獣防虫シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防獣防虫シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、通信、電力供給等のためのケーブルが、鼠やその他の害獣や害虫に咬まれると、ケーブルが断線し、通信、電力供給等に支障をきたすおそれがある。そこで、このような害獣や害虫による咬害を抑制するため、例えば、被膜に害獣や害虫による咬害からケーブルを防護するための防護層を有するケーブルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような防護層を有するケーブルを用いれば、当該ケーブルを使用した部分については、害獣や害虫による咬害を抑制できるものの、そのためにはケーブルの交換を要することとなる。そして、既存の設備についてケーブルの交換を行うことは、大規模な工事を要することから、コスト、工期等の面で望ましくない場合が多い。
そこで、ケーブルを交換することなく害獣や害虫による咬害を抑制するため、害獣や害虫による咬害が生じる可能性のあるケーブルが敷設されたエリア等の害獣や害虫の侵入を抑制したい特定のエリアの全体について、害獣や害虫が侵入し難くすることが考えられるが、そのために害獣や害虫が侵入可能な隙間を埋めるための工事を実施することも、ケーブルの交換と同様に、大規模な工事を要し、コスト、工期等の面で望ましくない場合が多かった。
【0005】
本発明の課題は、簡易な手段で害獣や害虫の侵入を抑制可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、防獣防虫シートであって、
不織布にカプサイシノイドが含浸されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の防獣防虫シートであって、
前記カプサイシノイドはマイクロカプセルに封入された状態で、前記不織布に含浸されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の防獣防虫シートであって、
前記マイクロカプセルは、アクリル樹脂に混ぜられた状態で、前記不織布に含浸されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の防獣防虫シートであって、
前記マイクロカプセルの平均粒子径は、15μm以上、25μm以下であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の防獣防虫シートであって、
前記カプサイシノイドを3.0質量%以上、6.0質量%以下含有することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の防獣防虫シートであって、
前記不織布は、ポリエステル繊維を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の防獣防虫シートであって、
前記不織布は、スパンボンド不織布であることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の防獣防虫シートであって、
前記不織布は、短辺150mm以上、250mm以下、長辺250mm以上、350mm以下の矩形状であることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の防獣防虫シートであって、
前記不織布は、A4サイズであることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載の防獣防虫シートであって、
前記カプサイシノイドは、複数種類の強度の前記マイクロカプセルに封入された状態で、前記不織布に含浸されていることを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の防獣防虫シートであって、
前記カプサイシノイドの含有割合が、前記不織布の部分によって異なることを特徴とする。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の防獣防虫シートであって、
第1の濃度で前記カプサイシノイドを含有する第1部分と、前記第1の濃度よりも高い第2の濃度で前記カプサイシノイドを含有する第2部分と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な手段で害獣や害虫の侵入を抑制可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る防獣防虫シートを示す斜視図である。なお、シートの厚みを実際よりも強調して図示している。
【
図2】実施形態に係る防獣防虫シートを示す断面図である。
【
図3】実施形態に係る防獣防虫シートに含浸されたマイクロカプセルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である防獣防虫シート100について説明する。ただし、本発明の技術的範囲は図示例に限定されない。
なお、本明細書において、「~」を用いて記載する数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含むものとする。
【0021】
[1 構成の説明]
まず、防獣防虫シート100の構成について説明する。
【0022】
防獣防虫シート100は、
図1及び
図2に示すように、矩形状の不織布1に、アクリル樹脂3に混ぜられた状態のマイクロカプセル2が含浸されたものである。なお、手法を問わず、不織布1の繊維の間にマイクロカプセル2が入り込んでいれば、マイクロカプセル2、ひいてはマイクロカプセル2に封入されたカプサイシノイド21は、不織布1に含浸されているものとする。
【0023】
[(1) 不織布]
不織布1は、所定の繊維間をスパンレース、エアスルー、エアレイド、ポイントボンド、スパンボンド、ニードルパンチ等の周知の技術によって結合することで製造される不織布である。ここでは、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルを繊維状としたポリエステル繊維を、スパンボンドによってシート状としたスパンボンド不織布であることが好ましい。
【0024】
不織布1の一枚当たりの大きさは、短辺150~250mm、長辺250~350mmの矩形状であることが好ましく、A4サイズ(短辺210mm、長辺297mmの矩形状)であることが特に好ましい。
【0025】
不織布1の目付け量は、30g/m2~50g/m2であることが好ましく、40g/m2であることが特に好ましい。なお、目付け量は、JIS P8124:2011に従って測定した坪量のことをいう。
【0026】
また、不織布1は、上記のサイズのものが個別に形成されていてもよいし、長尺な不織布について、ミシン目を入れた上でロール状とし、ミシン目で切り離した際の大きさが上記の大きさとなるようにしてもよい。前者の場合、上下方向に多数積層された防獣防虫シート100を上から一枚ずつ引き出して使用し、後者の場合、ロールの外側又は中心側の端部から引き出した防獣防虫シート100を、ミシン目によって一枚当たり上記の大きさにカットして使用することとなる。なお、後者の場合には、ミシン目によって切り離した状態における大きさを、不織布1の大きさとする。
【0027】
[(2) マイクロカプセル]
マイクロカプセル2は、
図3に示すように、カプサイシノイド21を、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アルギン酸等の膜物質からなる皮膜22によってコーティングすることによって封入して形成された微細なカプセル状の部材である。マイクロカプセル2の平均粒子径は、15~25μmであることが好ましい。また、膜物質は、メラニン樹脂であることが特に好ましい。
【0028】
マイクロカプセル2に封入されたカプサイシノイド21は、唐辛子の辛み成分であるカプサイシン又はその同族体であり、カプサイシンの他に、例えば、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン等であればよく、これらの複数種類が混合されていてもよい。
また、マイクロカプセル2に封入されたカプサイシノイド21は、唐辛子から抽出された天然物質でもよいし、例えば、ノナン酸バニリルアミド(N-バニリルノナンアミド)等の化学的に合成されたものであってもよい。
【0029】
また、マイクロカプセル2は、カプサイシノイド21の防獣防虫シート100中での含有割合が、防獣防虫シート100の質量に対して、3.0~6.0質量%となるように、不織布1に含浸されていることが好ましい。
【0030】
[(3) アクリル樹脂]
アクリル樹脂3は、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体である。
【0031】
防獣防虫シート100において、マイクロカプセル2は、アクリル樹脂3に混合された状態でマイクロカプセル2に含浸されている。すなわち、
図2に示すように、防獣防虫シート100において、不織布1の繊維間に位置するマイクロカプセル2の周囲には、アクリル樹脂3が存在し、不織布1の繊維間の空間が、一部又は全部アクリル樹脂3によって埋められていることとなる。
【0032】
[2 使用方法の説明]
本実施形態に係る防獣防虫シート100は、使用者が一枚ずつ丸めた上で、害獣や害虫の侵入を抑制したいエリアに通じる隙間に詰め込み、当該隙間を埋めるようにして使用する。
隙間の大きさに応じて、一枚ずつ防獣防虫シート100を丸めて詰め込んで行き、完全に隙間が埋まるまで防獣防虫シート100を連続して詰め込むようにすればよい。
【0033】
[3 効果の説明]
本実施形態に係る防獣防虫シート100によれば、不織布1にカプサイシノイド21が含浸されている。不織布1は、丸めることで柔軟に形状を変更可能であり、かつ丸められた状態とすると元の形状に戻ろうとする力が働くことから、これを丸めて詰め込むことで、上記のように様々な大きさの隙間を簡易に埋めることが可能であり、かつカプサイシノイド21は、多くの害獣や害虫に対して忌避効果を有する。
したがって、大規模な工事等を要することなく、丸めて隙間に詰め込むのみで、隙間から害獣や害虫が侵入し難くすることができることから、簡易な手段で、害獣や害虫による咬害が生じる可能性のあるケーブルが敷設されたエリア等の害獣や害虫の侵入を抑制したい特定のエリアについて、害獣や害虫の侵入を抑制することが可能となる。
【0034】
特に、ケーブルを敷設するための配管が設けられている場合、当該配管のケーブルの周囲の部分に隙間が生じ易く、害獣や害虫の通り道となり易い。このような隙間は多数箇所存在し、かつ隙間の形状及び大きさが場所によって異なるため、従来塞ぐのに非常に手間が掛かったが、本実施形態に係る防獣防虫シート100によれば、一枚ずつ丸めて詰め込むのみで、あらゆる形状及び大きさの隙間に対応できることから、このような配管のケーブルの周囲の隙間であっても、容易に埋めることが可能となる。
【0035】
また、カプサイシノイド21をそのまま不織布1に含浸させると、シートが風雨に晒された際等にカプサイシノイド21が流出し易いが、本実施形態に係る防獣防虫シート100によれば、カプサイシノイド21がマイクロカプセル2に封入された状態で、不織布1に含浸されていることによって、害獣や害虫が防獣防虫シート100を咬んだ段階で初めてカプサイシノイド21が放出されるようにすることができることから、害獣や害虫が咬む前の段階でカプサイシノイド21が流出し難くなり、防獣防虫シート100による害獣や害虫に対する忌避効果を長期間持続させ易くなる。
また、防獣防虫シート100を使用者が丸めて詰め込む段階で、カプサイシノイド21が流出し難くなることから、刺激物であるカプサイシノイド21が使用者の手に付着することによる皮膚の炎症等の弊害が生じ難くなる。
【0036】
また、マイクロカプセル2が、アクリル樹脂3に混ぜられた状態で、不織布1に含浸されていることで、マイクロカプセル2を不織布1の内部にまで含浸させることができると共に、マイクロカプセル2が、アクリル樹脂3によって不織布1の繊維に固定されることから、マイクロカプセル2が不織布1から流出し難くなり、かつ、マイクロカプセル2がアクリル樹脂によって保護され破裂し難くなることから、防獣防虫シート100による害獣や害虫に対する忌避効果をさらに長期間持続させ易くなる。
また、アクリル樹脂3は、対候性に優れることから、風雨に晒された状態で長時間放置されても、防獣防虫シート100が劣化したり変色したりし難くなる。
【0037】
また、マイクロカプセル2の平均粒子径が、15~25μmであることで、不織布1の繊維間に含浸させ易くなる。
【0038】
また、カプサイシノイド21の含有割合が、防獣防虫シート100の質量に対して、3.0~6.0質量%であることで、害獣や害虫に対して十分な忌避効果を得ることができると共に、過剰なカプサイシノイド21を含浸させることによって不要にコストを増大させることも防止できる。
【0039】
また、不織布1がポリエステル繊維を含むことで、不織布1を構成する繊維が劣化し難くなり、長期間経過しても、隙間に詰め込まれた防獣防虫シート100を外れ難くすることができる。
【0040】
また、不織布1がスパンボンド不織布であることで、不織布1が適切な柔軟性を有することから、丸めて隙間に詰め込む作業を行い易くなる。
【0041】
また、不織布1が大き過ぎると、防獣防虫シート100を丸め難くなり、特に片手での作業が困難となる。また、不織布1が小さ過ぎると、丸めた状態での一枚の体積が小さく、隙間を埋めるのに多数の防獣防虫シート100が必要となり作業に要する手間が増大する。この点、本実施形態に係る防獣防虫シート100によれば、不織布1が短辺150~250mm、長辺250~350mmの矩形状、特に好ましくは、A4サイズであることで、防獣防虫シート100の丸め易さと、丸めた状態での一枚の体積の大きさとのバランスを適切に保つことができる。
【0042】
[4 変形例]
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0043】
[(1) 変形例1:複数種類のマイクロカプセルの含浸]
上記構成の説明においては、不織布1に含浸されるマイクロカプセル2の種類が一種類のみである場合について説明したが、カプサイシノイド21が封入されたマイクロカプセル2として、皮膜22を形成する膜物質の種類、皮膜22の厚み等を変えることで、強度の異なる複数種類のマイクロカプセルが含浸させるようにしてもよい。
【0044】
この場合、例えば、防獣防虫シート100が隙間に詰め込まれた後に、害獣や害虫が防獣防虫シート100を咬んだときに限らず、複数の段階でマイクロカプセルを破裂させることで、防獣防虫シート100が害獣や害虫に対する忌避効果を発揮する場面を拡大することができる。
例えば、害獣や害虫が噛んだ時点で初めて破裂する強度のマイクロカプセルと、所定期間経過後に順次破裂する程度の強度のマイクロカプセルとの両者を含浸させることで、前者のマイクロカプセルによる害獣や害虫が噛んだ際の忌避効果と、後者のマイクロカプセルにより害獣や害虫を近づけ難くする忌避効果との両者を得ることが可能となる。
【0045】
[(2) 変形例2:カプサイシノイドの含有割合の不均一化]
上記構成の説明においては、不織布1の全体に、マイクロカプセル2が均一に含浸される場合について説明したが、不織布1の部分によって、マイクロカプセル2の含有割合、ひいてはマイクロカプセル2に封入されて含浸されたカプサイシノイド21の含有割合が異なるようにしてもよい。
【0046】
例えば、矩形状の不織布1の長辺方向の中央よりいずれか一方について、他方と比較して、マイクロカプセル2の含有割合、ひいてはマイクロカプセル2に封入されて含浸されたカプサイシノイド21の含有割合が高くなるようにする。これによって、カプサイシノイド21の含有割合が高い部分が外側になるように防獣防虫シート100を丸めて隙間に詰め込むようにすることで、均一に含浸させた場合と比較して、不織布1に対して含浸させるカプサイシノイド21の量を低減してコストを抑えつつ、カプサイシノイド21による害獣や害虫に対する十分な忌避効果を得やすくなる。
【0047】
また、例えば、カプサイシノイド21の含有割合は、上記のように段階的に変動するのではなく、徐々に変動するようにしてもよい。例えば、矩形状の不織布1の長辺方向の一端部において、カプサイシノイド21の含有割合が最も高く、他端部において、カプサイシノイド21の含有割合が最も低くなるようにし、これら端部の間では、一端部から他端部へと徐々に含有割合が低下するようにすればよい。
【実施例0048】
次に、実施例及び比較例に係るシートについて、害獣や害虫の一例である鼠に対する通過阻止効果を検証した2種類の試験の結果を説明する。以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
[1 試験1:鼠に対する通過阻止効果試験1]
実施例及び比較例に係るシートについて、鼠に対する通過阻止効果を検証した第1の試験の結果について説明する。
【0050】
[(1) サンプル作成]
以下の実施例及び比較例のシートを作製した。
【0051】
[a 実施例]
A4サイズの不織布(ポリエステル繊維(PET繊維)によるスパンボンド不織布、目付け量40g/m2)に、カプサイシノイド(ノナン酸バニリルアミド)が封入されたマイクロカプセル(膜物質メラニン樹脂、平均粒子径15~20μm)を、アクリル樹脂に混ぜた上で含浸させたものである。なお、マイクロカプセルは、1m2当たり1g含浸させた。
【0052】
[b 比較例]
A4サイズの不織布(ポリエステル繊維(PET繊維)によるスパンボンド不織布、目付け量40g/m2)であり、実施例について、マイクロカプセル及びアクリル樹脂を含浸させない状態としたものである。
【0053】
[(2) 試験内容]
以下の試験を実施した。なお、b及びcについては供試動物(ラット(Jcl:Wistar系))5個体について個別に実施した(それぞれの個体に対する試験について、試験を行った順にNo.1-1~No.1-5とする。)。
【0054】
[a 試験装置の準備]
縦35cm×横30cm×高さ19.5cmの透明なプラスチック製の箱の内部を、2か所の貫通部を有する透明なプラスチック製の遮蔽版で仕切った試験装置を準備した。なお、貫通部は、板状の遮蔽版に形成された円形の開口部にパイプ状の部材を挿通させるようにして形成されたものであり、このようなパイプ状の部材の中を通過することで、遮蔽版の一方の側から他方の側へと移動可能となっている。このような貫通部を以下「配管」という。
【0055】
[b 予備試験の実施]
本試験前日に、配管内に何も設置しない状態で、試験装置の遮蔽版の一方の側に鼠飼育用固形餌を、他方の側に水瓶及び供試動物を配置し、供試動物が固形餌を喫食するまで待った。これによって、供試動物に対し、配管内を通過すれば固形餌に到達できることを学習させた。
なお、試験中は、12時間毎に明暗を転換し、気温を25度に保ち、水は十分に与えた。この点は以下に述べるいずれの試験についても同様である。
【0056】
[c 本試験の実施]
2か所の配管のうち一方について、ケーブル3本を通した上で、残った隙間について実施例10枚を丸めたものを詰め込んで埋めた。また、2か所の配管のうち他方について、ケーブル3本を通した上で、残った隙間について比較例10枚を丸めたものを詰め込んで埋めた。その上で、固形餌、水瓶及び供試動物(予備試験と同一の個体)を予備試験と同様に配置し、固形餌の喫食状況を観察した。なお、喫食が確認された時点で試験を終了し、確認されない場合には3日間経過で試験を終了することとした。
【0057】
[(3) 試験結果]
No.1-2及びNo.1-3の試験では、試験開始翌日に供試動物が比較例によって埋められた配管を突破して固形餌を喫食して終了し、No.1-1及びNo.1-4の試験では、試験開始2日後に、供試動物が比較例によって埋められた配管を突破して固形餌を喫食して終了し、No.1-5の試験では、試験開始3日後に、供試動物が比較例によって埋められた配管を突破して固形餌を喫食して終了した。
【0058】
[(4) 評価]
No.1-1~1-5のいずれの試験においても、供試動物は、実施例によって埋められた配管ではなく比較例によって埋められた配管を突破して固形餌に到達していることから、実施例に係る防獣防虫シートが、比較例と比較して、鼠に対する高い通過阻止効果を有することが分かる。
【0059】
[2 試験2:鼠に対する通過阻止効果試験2]
実施例及び比較例に係るシートについて、鼠に対する通過阻止効果を検証した第2の試験の結果について説明する。
【0060】
[(1) サンプル作成]
試験1と同様の実施例及び比較例のシートを作製した。
【0061】
[(2) 試験内容]
以下の試験を実施した。なお、b及びcについては供試動物(ラット(Jcl:Wistar系))5個体について個別に実施した(それぞれの個体に対する試験について、試験を行った順にNo.2-1~2-5とする。)。
【0062】
[a 試験装置の準備]
縦35cm×横30cm×高さ19.5cmの透明なプラスチック製の箱の内部を、1か所の配管を有する透明なプラスチック製の遮蔽版で仕切った試験装置を準備した。
【0063】
[b 比較例に係る試験の実施]
配管内にケーブル3本を通した上で、残った隙間について比較例10枚を丸めたものを詰め込んで埋めた。その上で、遮蔽版の一方の側に鼠飼育用固形餌を、他方の側に水瓶及び供試動物を配置し、固形餌の喫食状況を観察した。なお、喫食が確認された時点で試験を終了した。
【0064】
[c 実施例に係る試験の実施]
配管内にケーブル3本を通した上で、残った隙間について実施例10枚を丸めたものを詰め込んで埋めた。その上で、遮蔽版の一方の側に鼠飼育用固形餌を、他方の側に水瓶及び供試動物(比較例に係る試験と同一の個体)を配置し、固形餌の喫食状況を観察した。なお、喫食が確認された時点で試験を終了し、確認されない場合には、3日間経過時点で中断の上、4日間のインターバル期間をおいて試験を再開し、再開後3日間経過しても喫食が確認されなかった時点で試験を終了した。なお、インターバル期間中供試動物は、自由に餌及び水を摂取できる状態で飼育した。
【0065】
[(3) 試験結果]
比較例に係る試験では、No.2-1から2-5の全てについて、試験開始翌日に、供試動物が比較例に係るシートを引き出して配管を突破し、固形餌を喫食して試験が終了となった。
これに対し、実施例に係る試験では、No.2-1から2-5の全てについて、インターバル期間を挟んで計6日間経過した時点でも、供試動物が実施例によって埋められた配管を突破することはなく、固形餌が喫食されることはなかった。
【0066】
[(4) 評価]
No.2-1~2-5のいずれの試験においても、供試動物は比較例によって埋められた配管を突破して固形餌に到達したのに対し、実施例によって埋められた配管を突破することはなかったことから、実施例に係る防獣防虫シートが、比較例と比較して、鼠に対する高い通過阻止効果を有することが分かる。