(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008171
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】エンジン用制御装置
(51)【国際特許分類】
F02P 5/15 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
F02P5/15 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110114
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花井 紀仁
(72)【発明者】
【氏名】千田 健次
(72)【発明者】
【氏名】細木 貴之
【テーマコード(参考)】
3G022
【Fターム(参考)】
3G022EA07
3G022FA05
3G022FA06
3G022GA05
3G022GA06
(57)【要約】
【課題】周辺学習における過剰な学習を抑制する。
【解決手段】エンジン用制御装置は、エンジンの点火時期を設定する際に用いるエンジンの運転ポイントと点火時期との関係を示す点火時期マップに対し、エンジンの運転ポイントに対して点火時期を学習したときには学習に係る運転ポイントの点火時期については学習値を用いて更新すると共に学習に係る運転ポイントの周辺の運転ポイントの点火時期については学習値に応じた値を用いて更新する周辺学習を行なう。この際、学習に係る運転ポイントの周辺の運転ポイントの点火時期のうち学習値から所定値の範囲内となる運転ポイントの点火時期についてのみ周辺学習する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの点火時期を設定する際に用いる前記エンジンの運転ポイントと点火時期との関係を示す点火時期マップに対し、前記エンジンの運転ポイントに対して点火時期を学習したときには学習に係る運転ポイントの点火時期については学習値を用いて更新すると共に前記学習に係る運転ポイントの周辺の運転ポイントの点火時期については前記学習値に応じた値を用いて更新する周辺学習を行なうエンジン用制御装置であって、
前記学習に係る運転ポイントの周辺の運転ポイントの点火時期のうち前記学習値から所定値の範囲内となる運転ポイントの点火時期についてのみ周辺学習する、
ことを特徴とするエンジン用制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のエンジン用制御装置であって、
前記学習に係る運転ポイントの点火時期について進角側に学習するときには、前記周辺の運転ポイントの点火時期のうち進角側に前記学習値から前記所定値の範囲内となる運転ポイントの点火時期についてのみ周辺学習し、前記学習に係る運転ポイントの点火時期について遅角側に学習するときには、前記周辺の運転ポイントの点火時期のうち遅角側に前記学習値から前記所定値の範囲内となる運転ポイントの点火時期についてのみ周辺学習する、
エンジン用制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のエンジン用制御装置であって、
前記学習に係る運転ポイントの周辺の運転ポイントの点火時期を学習するときには前記学習に係る運転ポインに近い運転ポイントほど前記学習値の影響を大きく受けるように点火時期を学習する、
エンジン用制御装置。
【請求項4】
請求項1または2記載のエンジン用制御装置であって、
前記エンジンの運転ポイントは、前記エンジンの負荷率と前記エンジンの回転数とにより表わされる、
エンジン用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジン用制御装置に関し、詳しくは、エンジンの点火時期を設定するのに用いる点火時期マップを学習するエンジン用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエンジン用制御装置としては、基本学習値と多点学習値と基本点火時期とに基づいて点火時期を算出するものが提案されている(例えば特許文献1参照)。この制御装置では、エンジンの運転条件に基づいて区画される複数の基本学習領域とこの複数の基本学習領域のうちの1つにおいてエンジンの運転条件に基づいて区画される複数の多点学習領域を設定し、エンジンの運転状態が基本学習領域のいずれかにあるときに基本学習値を更新し、エンジンの運転状態が多点学習領域のいずれかにあるときに多点学習値を更新する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンのある運転ポイントの点火時期を学習したときには、その運転ポイントの周辺の運転ポイントの点火時期についても学習地に応じて学習する周辺学習するものも提案されている。しかし、エンジンを特定の運転領域のみて繰り返し運転すると、その周辺の運転ポイントでは点火時期が進角側のみ或いは遅角側のみに過剰に学習される場合が生じる。
【0005】
本開示のエンジン用制御装置は、周辺学習における過剰な学習を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のエンジン用制御装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示のエンジン用制御装置は、
エンジンの点火時期を設定する際に用いる前記エンジンの運転ポイントと点火時期との関係を示す点火時期マップに対し、前記エンジンの運転ポイントに対して点火時期を学習したときには学習に係る運転ポイントの点火時期については学習値を用いて更新すると共に前記学習に係る運転ポイントの周辺の運転ポイントの点火時期については前記学習値に応じた値を用いて更新する周辺学習を行なうエンジン用制御装置であって、
前記学習に係る運転ポイントの周辺の運転ポイントの点火時期のうち前記学習値から所定値の範囲内となる運転ポイントの点火時期についてのみ周辺学習する、
ことを特徴とする。
【0008】
本開示のエンジン用制御装置では、エンジンの点火時期を設定する際に用いるエンジンの運転ポイントと点火時期との関係を示す点火時期マップに対し、エンジンの運転ポイントに対して点火時期を学習したときには学習に係る運転ポイントの点火時期については学習値を用いて更新すると共に学習に係る運転ポイントの周辺の運転ポイントの点火時期については学習値に応じた値を用いて更新する周辺学習を行なう。この際、学習に係る運転ポイントの周辺の運転ポイントの点火時期のうち前記学習値から所定値の範囲内となる運転ポイントの点火時期についてのみ周辺学習する。これにより、点火時期が進角側のみ或いは遅角側のみに過剰に学習される過剰な周辺学習を抑制することができる。
【0009】
本開示のエンジン用制御装置において、前記学習に係る運転ポイントの点火時期について進角側に学習するときには、前記周辺の運転ポイントの点火時期のうち進角側に前記学習値から前記所定値の範囲内となる運転ポイントの点火時期についてのみ周辺学習し、前記学習に係る運転ポイントの点火時期について遅角側に学習するときには、前記周辺の運転ポイントの点火時期のうち遅角側に前記学習値から前記所定値の範囲内となる運転ポイントの点火時期についてのみ周辺学習するものとしてもよい。こうすれば、進角側への学習については学習値から進角側に所定値を超える点火時期については行なわれず、遅角側への学習については学習値から遅角側に所定値を超える点火時期については行なわれないから、点火時期が進角側のみ或いは遅角側のみに過剰に学習される過剰な周辺学習を抑制することができる。
【0010】
本開示のエンジン用制御装置において、前記学習に係る運転ポイントの周辺の運転ポイントの点火時期を学習するときには前記学習に係る運転ポインに近い運転ポイントほど前記学習値の影響を大きく受けるように点火時期を学習するものとしてもよい。こうすれば、前記学習に係る運転ポインに近い運転ポイントほど学習の効果を大きく反映することができ、より適正に点火時期マップとすることができる。
【0011】
本開示のエンジン用制御装置において、前記エンジンの運転ポイントは、前記エンジンの負荷率と前記エンジンの回転数とにより表わされるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態のエンジン用制御装置を備えるエンジン装置10の概略の構成を示す構成図である。
【
図2】電子制御ユニット40により実行される点火時期学習処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】エンジン12の運転ポイントとしての負荷率KLと回転数Neと点火時期θとの関係の一例を示す点火時期マップの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態のエンジン用制御装置を備えるエンジン装置10の概略の構成を示す構成図である。図示するように、エンジン装置10は、エンジン12と、電子制御ユニット40とを備える。エンジン装置10は、例えば、エンジン12からの動力を用いて走行するエンジン車や、エンジン12に加えてモータを備えるハイブリッド車などに搭載される。エンジン用制御装置としては、電子制御ユニット40が相当する。
【0014】
エンジン12は、例えば燃料タンクからのガソリンとアルコール(例えば、エタノールなど)との混合燃料を用いて吸気、圧縮、膨張(爆発燃焼)、排気の4行程により動力を出力する4気筒の内燃機関として構成されている。このエンジン12は、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁26と、筒内に燃料を噴射する筒内噴射弁27と、点火プラグ30とを備える。筒内噴射弁27は、燃焼室29の頂部の略中央に配置されており、燃料をスプレー状に噴射する。点火プラグ30は、筒内噴射弁27からスプレー状に噴射される燃料に点火できるように筒内噴射弁27の近傍に配置されている。
【0015】
エンジン12は、ポート噴射弁26および筒内噴射弁27を備えることにより、エンジン12の運転状態基づいて、噴射モードMiをポート噴射モードと筒内噴射モードと共用噴射モードとで切り替えたり、筒内噴射モードや共用噴射モードでの筒内噴射弁27の噴射回数である筒内噴射回数Ndを切り替えたりしながら運転可能となっている。ポート噴射モードでは、エアクリーナ22により清浄された空気を吸気管23に吸入してスロットルバルブ24やサージタンク25を通過させると共に、吸気管23のサージタンク25よりも下流側でポート噴射弁26から燃料を噴射し、空気と燃料とを混合する。続いて、この混合気を吸気バルブ28を介して燃焼室29に吸入し、点火プラグ30による電気火花により爆発燃焼させる。そして、そのエネルギによりシリンダボア31内で押し下げられるピストン32の往復運動をクランクシャフト14の回転運動に変換する。筒内噴射モードでは、ポート噴射モードと同様に空気を燃焼室29に吸入し、吸気行程や圧縮行程で筒内噴射弁27から1回でまたは複数回に分けて燃料を噴射し、点火プラグ30による電気火花により爆発燃焼させてクランクシャフト14の回転運動を得る。共用噴射モードでは
、空気を燃焼室29に吸入する際にポート噴射弁26から燃料を噴射すると共に吸気行程や圧縮行程で筒内噴射弁27から1回でまたは複数回に分けて燃料を噴射し、点火プラグ30による電気火花により爆発燃焼させてクランクシャフト14の回転運動を得る。燃焼室29から排気バルブ33を介して排気管34に排出される排気は、浄化装置35を介して外気に排出される。浄化装置35は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する触媒(三元触媒)35aを有する。
【0016】
電子制御ユニット40は、マイクロコンピュータを備えており、マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有する。電子制御ユニット40は、各種センサからの信号を入力ポートを介して入力している。例えば、電子制御ユニット40は、エンジン12のクランクシャフト14の回転位置を検出するクランクポジションセンサ14aからのクランク角θcrや、エンジン12の冷却水の温度を検出する水温センサ15からの冷却水温Twを入力している。電子制御ユニット40は、吸気バルブ28を開閉するインテークカムシャフトの回転位置や排気バルブ33を開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ16からのカム角θci,θcoも入力している。電子制御ユニット40は、吸気管23のスロットルバルブ24よりも上流側に取り付けられたエアフローメータ23aからの吸入空気量Qaや、吸気管23のスロットルバルブ24よりも上流側に取り付けられた温度センサ23tからの吸気温Taも入力している。電子制御ユニット40は、スロットルバルブ24のポジション(開度)を検出するスロットルポジションセンサ24aからのスロットル開度THや、サージタンク25に取り付けられた圧力センサ25aからのサージ圧Psも入力している。電子制御ユニット40は、排気管34の浄化装置35よりも上流側に取り付けられたフロント空燃比センサ37からのフロント空燃比AF1や、排気管34の浄化装置35よりも下流側に取り付けられたリヤ空燃比センサ38からのリヤ空燃比AF2も入力している。
【0017】
電子制御ユニット40は、各種制御信号を出力ポートを介して出力している。例えば、電子制御ユニット40は、スロットルバルブ24への制御信号や、ポート噴射弁26への制御信号、筒内噴射弁27への制御信号、点火プラグ30への制御信号を出力している。電子制御ユニット40は、クランク角θcrに基づいてエンジン12の回転数Neを演算したり、吸入空気量Qaおよび回転数Neに基づいてエンジン12の負荷率KLを演算したりしている。負荷率KLは、エンジン12の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比として定義される。電子制御ユニット40は、エンジンの運転ポイント(エンジン12の負荷率KLおよびエンジン12の回転数Neの運転ポイント)と点火時期θとの関係を予め実験や機会学習などにより定めて点火時期マップとして記憶し、負荷率KLと回転数Neが与えられると点火時期マップから対応する点火時期θを導出することにより設定し、そのタイミングで点火する。
【0018】
電子制御ユニット40は、点火時期マップの点火時期を学習する。
図2は、電子制御ユニット40により実行される点火時期学習処理の一例を示すフローチャートである。この処理は所定時間毎に繰り返し実行される。
【0019】
点火時期学習処理が実行されると、電子制御ユニット40は、点火時期の学習が行なわれるのを待つ(ステップS100)。点火時期の学習が行なわれたときには、点火時期マップの学習に係るエンジン12の運転ポイント(以下、学習運転ポイントという)の点火時期に学習値をセットする(ステップS110)。
【0020】
続いて、学習値が既存の値から進角側であるか否かを判定する(ステップS120)。学習値が既存の値から進角側であると判定したときには、学習運転ポイントの直近の運転ポイントの点火時期のうち学習値から進角側に所定値の範囲内の運転ポイントの点火時期に対して60%の反映率で進角側に点火時期を学習し(ステップS130)、次近の運転ポイントの点火時期のうち学習値から進角側に所定値の範囲内の運転ポイントの点火時期に対して30%の反映率で進角側に点火時期を学習して(ステップS140)、本処理を終了する。
図3は、エンジン12の運転ポイントとしての負荷率KLと回転数Neと点火時期θとの関係の一例を示す点火時期マップの一例を示す説明図である。マップ中の丸印が学習している点火時期θであり、丸印以外の運転ポイントの点火時期θは直近の学習している点火時期θにより補間により求められる。マップ中の黒丸印の運転ポイントの点火時期が値14から値15に進角側に学習されたときで所定値が値2のときを考える。この場合、学習運転ポイントの点火時期θは値15とされ、学習値(値15)から進角側に所定値(値2)の範囲内の運転ポイントの点火時期についてだけ、直近の運転ポイントで60%、次近の運転ポイントで30%の反映率で進角側に周辺学習が行なわれる。
図3の拡大図において、中央の学習運転ポイントの直近の運転ポイントにおける点火時期(右上ブロックAの値16の点火時期、左下ブロックCの値15の点火時期、右下ブロックDの値10の点火時期)については60%の反映率で進角側の学習(+0.6の学習)が行なわれ、次近の運転ポイントにおける点火時期(右上ブロックAの値17、値15、値17の点火時期、左下ブロックCの値13,値14、値13の点火時期、右下ブロックDの値8、値6、値12の点火時期)については30%の反映率で進角側の学習(+0.3の学習)が行なわれる。なお、中央の学習運転ポイントの左上ブロックBの各点火時期については学習値(値15)から進角側に所定値(値2)の範囲外となるため、進角側への周辺学習は行なわれない。
【0021】
ステップS120で学習値が既存の値から進角側ではない(遅角側である)と判定したときには、学習運転ポイントの直近の運転ポイントの点火時期のうち学習値から遅角側に所定値の範囲内の運転ポイントの点火時期に対して60%の反映率で遅角側に点火時期を学習し(ステップS150)、次近の運転ポイントの点火時期のうち学習値から遅角側に所定値の範囲内の運転ポイントの点火時期に対して30%の反映率で遅角側に点火時期を学習して(ステップS160)、本処理を終了する。
図3の拡大図において、マップ中の黒丸印の運転ポイントの点火時期が値16から値15に遅角側に学習されたときで所定値が値2のときを考える。この場合、学習運転ポイントの点火時期θは値15とされ、学習値(値15)から遅角側に所定値(値2)の範囲内の運転ポイントの点火時期についてだけ、直近の運転ポイントで60%、次近の運転ポイントで30%の反映率で遅角側に周辺学習が行なわれる。
図3の拡大図において、中央の学習運転ポイントの直近の運転ポイントにおける点火時期(右上ブロックAの値16の点火時期、左上ブロックBの値19の点火時期、左下ブロックCの値15の点火時期)については60%の反映率で遅角側の学習(-0.6の学習)が行なわれ、次近の運転ポイントにおける点火時期(右上ブロックAの値17、値15、値17の点火時期、左上ブロックBの値20,値21、値18の点火時期、左下ブロックCの値13、値14、値13の点火時期)については30%の反映率で遅角側の学習(-0.3の学習)が行なわれる。なお、中央の学習運転ポイントの右下ブロックDの点火時期については学習値(値15)から遅角側に所定値(値2)の範囲外となるため、遅角側への周辺学習は行なわれない。
【0022】
以上説明したエンジン装置10における電子制御ユニット40では、エンジン12の運転ポイントの点火時期θの学習が行なわれたときに、学習値が既存の値から進角側であるときには、学習運転ポイントの直近および次近の運転ポイントの点火時期のうち学習値から進角側に所定値の範囲内の運転ポイントの点火時期に対して進角側に点火時期を周辺学習し、学習値が既存の値から遅角側であるときには、学習運転ポイントの直近および次近の運転ポイントの点火時期のうち学習値から遅角側に所定値の範囲内の運転ポイントの点火時期に対して遅角側に点火時期を周辺学習する。これにより、過剰な進角側や遅角側への周辺学習を抑制することができる。しかも、学習運転ポイントの直近の運転ポイントの点火時期については60%の反映率で周辺学習し、学習運転ポイントの次近の運転ポイントの点火時期については30%の反映率で周辺学習するから、周辺学習をより適正に行なうことがででき、点火時期マップをより適正なものとすることができる。
【0023】
実施形態のエンジン装置10における電子制御ユニット40では、エンジン12の運転ポイントの点火時期θの学習が行なわれたときに、学習値が既存の値から進角側であるときには、学習運転ポイントの直近および次近の運転ポイントの点火時期のうち学習値から進角側に所定値の範囲内の運転ポイントの点火時期に対して進角側に点火時期を周辺学習し、学習値が既存の値から遅角側であるときには、学習運転ポイントの直近および次近の運転ポイントの点火時期のうち学習値から遅角側に所定値の範囲内の運転ポイントの点火時期に対して遅角側に点火時期を周辺学習するものとした。しかし、エンジン12の運転ポイントの点火時期θの学習が行なわれたときには、学習運転ポイントの直近および次近の運転ポイントの点火時期のうち学習値から進角側および遅角側に拘わらずに所定値の範囲内の運転ポイントの点火時期に対して進角側および遅角側に点火時期を学習するものとしてもよい。
【0024】
実施形態のエンジン装置10における電子制御ユニット40では、学習運転ポイントの直近の運転ポイントの点火時期については60%の反映率で周辺学習し、学習運転ポイントの次近の運転ポイントの点火時期については30%の反映率で周辺学習するものとした。しかし、反映率は学習運転ポイントに近いほど大きくすればよいから、実施形態の反映率にとらわれる必要はない。また、学習運転ポイントの直近の運転ポイントの点火時期についてのみ周辺学習するものとしてもよい。
【0025】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、エンジン12が「エンジン」に相当し、電子制御ユニット40が「制御装置」に相当する。
【0026】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な
要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0027】
以上、本開示を実施するための実施形態について説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本開示は、エンジン用制御装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 エンジン装置、12 エンジン、14 クランクシャフト、14a クランクポジションセンサ、15 水温センサ、16 カムポジションセンサ、22 エアクリーナ、23 吸気管、23a エアフローメータ、23t 温度センサ、24 スロットルバルブ、24a スロットルポジションセンサ、25 サージタンク、25a 圧力センサ、26 ポート噴射弁、27 筒内噴射弁、28 吸気バルブ、29 燃焼室、30 点火プラグ、31 シリンダボア、32 ピストン、33 排気バルブ、34 排気管、35 浄化装置、37 フロント空燃比センサ、38 リヤ空燃比センサ、40 電子制御ユニット。