(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008191
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/209 20210101AFI20250109BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M50/209
H01M50/507
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110143
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲村 卓思
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA06
5H040AS07
5H040AT02
5H040DD03
5H040NN03
5H043AA19
5H043BA16
5H043BA17
5H043BA19
5H043CA04
5H043FA04
5H043JA01F
5H043JA13F
5H043LA21F
(57)【要約】
【課題】Cell-to-Pack構造においてもバスバーモジュールの位置決めを精度よく行うことが可能な電池パックを提供する。
【解決手段】第1バスバーモジュールおよび第2バスバーモジュールの少なくとも一方は、第1積層体と第2積層体との間に挿入され、電池セルの積層方向(第1の方向)に直交する方向(第2の方向)における第1バスバーモジュールまたは第2バスバーモジュールの位置決めを行う位置決め機構を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に並ぶ複数の第1電池セルを含む第1積層体と、
前記第1の方向に直交する第2の方向において前記第1積層体と隣接し、前記第1の方向に並ぶ複数の第2電池セルを含む第2積層体と、
前記第1積層体および前記第2積層体に前記第1の方向から対向する側壁を有し、前記第1積層体および前記第2積層体を収納するケースと、
前記複数の第1電池セルを電気的に接続する第1バスバー、および前記第1バスバーを収納する第1プレート部材を含み、前記第1積層体上に配置される第1バスバーモジュールと、
前記複数の第2電池セルを電気的に接続する第2バスバー、および前記第2バスバーを収納する第2プレート部材を含み、前記第2積層体上に配置される第2バスバーモジュールとを備え、
前記第1バスバーモジュールおよび前記第2バスバーモジュールの少なくとも一方は、前記第1積層体と前記第2積層体との間に挿入される部分を有し、前記第2の方向における前記第1バスバーモジュールまたは前記第2バスバーモジュールの位置決めを行う第1位置決め機構を有する、電池パック。
【請求項2】
前記第1位置決め機構の前記挿入される部分は、前記第1積層体と前記第2積層体との間に圧入される、請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記第1位置決め機構の前記挿入される部分は、前記第1の方向からみて左右非対称な形状を有する、請求項1または請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記第1位置決め機構の前記挿入される部分は、厚肉部と薄肉部とを有する、請求項3に記載の電池パック。
【請求項5】
前記第1プレート部材は、前記第1プレート部材の端面から前記第2の方向に沿って前記第2積層体側に突出する第1凸部分を含み、
前記第1凸部分の底部が前記複数の第1電池セルのうちの少なくとも1つおよび前記複数の第2電池セルのうちの少なくとも1つに当接する、請求項1または請求項2に記載の電池パック。
【請求項6】
前記第2プレート部材は、前記第2プレート部材の端面から前記第2の方向に沿って前記第1積層体側に突出する第2凸部分を含み、
前記第2凸部分の底部が前記複数の第1電池セルのうちの少なくとも1つおよび前記複数の第2電池セルのうちの少なくとも1つに当接する、請求項5に記載の電池パック。
【請求項7】
前記複数の第1電池セルは、前記第1プレート部材と対向する上面を各々有し、
前記第1プレート部材は、前記複数の第1電池セルの前記上面と対向する底面を有し、
前記第1プレート部材の前記底面から前記複数の第1電池セルの前記上面に向かって突出する突出リブが前記第1プレート部材の前記底面の一部に設けられ、前記突出リブが前記複数の第1電池セルの前記上面に当接する、請求項1または請求項2に記載の電池パック。
【請求項8】
前記第1プレート部材および前記第2プレート部材は、前記ケースの前記側壁を付勢することにより前記第1の方向における前記第1バスバーモジュールおよび前記第2バスバーモジュールの位置決めを各々行う第2位置決め機構を各々有する、請求項1または請求項2に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
中国実用新案第217468616号明細書(特許文献1)には、複数の電池セルを拘束するエンドプレートおよびバインドバー(モジュール構造)を用いず、複数の電池セルを含む積層体をそのままケースに収納するCell-to-Pack構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案第217468616号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のバスバーをプレート部材に収容してモジュール化したバスバーモジュールを複数の電池セルの積層体の上に搭載する構造において、バスバーモジュールの位置決めを行うにあたり、モジュール構造においては、たとえばバインドバーを位置決め用の固定部として利用し得るが、Cell-to-Pack構造においては、バインドバーが存在しないため、モジュール構造の電池パックとは異なる機構が求められる。
【0005】
本技術の目的は、Cell-to-Pack構造においてもバスバーモジュールの位置決めを精度よく行うことが可能な電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、以下の電池パックを提供する。
【0007】
[1]第1の方向に並ぶ複数の第1電池セルを含む第1積層体と、第1の方向に直交する第2の方向において第1積層体と隣接し、第1の方向に並ぶ複数の第2電池セルを含む第2積層体と、第1積層体および第2積層体に第1の方向から対向する側壁を有し、第1積層体および第2積層体を収納するケースと、複数の第1電池セルを電気的に接続する第1バスバー、および第1バスバーを収納する第1プレート部材を含み、第1積層体上に配置される第1バスバーモジュールと、複数の第2電池セルを電気的に接続する第2バスバー、および第2バスバーを収納する第2プレート部材を含み、第2積層体上に配置される第2バスバーモジュールとを備え、第1バスバーモジュールおよび第2バスバーモジュールの少なくとも一方は、第1積層体と第2積層体との間に挿入される部分は、第2の方向における第1バスバーモジュールまたは第2バスバーモジュールの位置決めを行う第1位置決め機構を有する、電池パック。
【0008】
[2]第1位置決め機構の上記挿入される部分は、第1積層体と第2積層体との間に圧入される、[1]に記載の電池パック。
【0009】
[3]第1位置決め機構の上記挿入される部分は、第1の方向からみて左右非対称な形状を有する、[1]または[2]に記載の電池パック。
【0010】
[4]第1位置決め機構の上記挿入される部分は、厚肉部と薄肉部とを有する、[3]に記載の電池パック。
【0011】
[5]第1プレート部材は、第1プレート部材の端面から第2の方向に沿って第2積層体側に突出する第1凸部分を含み、第1凸部分の底部が複数の第1電池セルのうちの少なくとも1つおよび複数の第2電池セルのうちの少なくとも1つに当接する、[1]から[4]のいずれか1項に記載の電池パック。
【0012】
[6]第2プレート部材は、第2プレート部材の端面から第2の方向に沿って第1積層体側に突出する第2凸部分を含み、第2凸部分の底部が複数の第1電池セルのうちの少なくとも1つおよび複数の第2電池セルのうちの少なくとも1つに当接する、[5]に記載の電池パック。
【0013】
[7]複数の第1電池セルは、第1プレート部材と対向する上面を各々有し、第1プレート部材は、複数の第1電池セルの上面と対向する底面を有し、第1プレート部材の底面から複数の第1電池セルの上面に向かって突出する突出リブが第1プレート部材の底面の一部に設けられ、突出リブが複数の第1電池セルの上面に当接する、[1]から[6]のいずれか1項に記載の電池パック。
【0014】
[8]第1プレート部材および第2プレート部材は、ケースの側壁を付勢することにより第1の方向における第1バスバーモジュールおよび第2バスバーモジュールの位置決めを各々行う第2位置決め機構を各々有する、[1]から[7]のいずれか1項に記載の電池パック。
【発明の効果】
【0015】
本技術によれば、2つの積層体の間に挿入され、積層方向に直交する方向(第2の方向)におけるバスバーモジュールの位置決めを行う位置決め機構を設けることにより、複数の電池セルを含む積層体をそのままケースに収納するCell-to-Pack構造においてもバスバーモジュールの位置決めを精度よく行うことが可能な電池パックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】バスバーモジュールにおけるプレート部材の上面図である。
【
図5】Y軸方向におけるバスバーモジュールの位置決め機構を示す図である。
【
図6】バスバーモジュールと電池セル上面との間の構造を示す斜視図である。
【
図7】バスバーモジュールにおけるプレート部材の裏面を示す斜視図である。
【
図8】X軸方向におけるバスバーモジュールの位置決め機構を示す図である。
【
図9】
図8に示す位置決め機構の変形例を示す図(その1)である。
【
図10】
図8に示す位置決め機構の変形例を示す図(その2)である。
【
図11】
図8に示す位置決め機構の変形例を示す図(その3)である。
【
図12】
図8に示す位置決め機構の変形例を示す図(その4)である。
【
図13】
図8に示す位置決め機構の変形例を示す図(その5)である。
【
図14】
図8に示す位置決め機構の変形例を示す図(その6)である。
【
図15】
図8に示す位置決め機構の変形例を示す図(その7)である。
【
図16】
図8に示す位置決め機構の変形例を示す図(その8)である。
【
図17】
図8に示す位置決め機構の変形例を示す図(その9)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0018】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0019】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0020】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0021】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池およびナトリウムイオン電池などの他の電池を含み得る。本明細書において、「電池パック」は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、および電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などに搭載可能である。ただし、「電池セル」の用途は、車載用に限定されるものではない。
【0022】
図1は、電池パック1の分解斜視図である。
図1に示すように、電池パック1は、Y軸方向(第1の方向)に並ぶ複数の電池セル100(
図2参照)を含む積層体10と、積層体10を収納するケース20と、積層体10上に配置されたバスバーモジュール30とを備える。
【0023】
積層体10は、積層体10A(第1積層体)と、積層体10B(第2積層体)と、積層体10C(第3積層体)とを含む。積層体10A,10Bは、X軸方向(第2の方向)において互いに隣接する。積層体10B,10Cは、X軸方向において互いに隣接する。
【0024】
ケース20は、積層体10A,10B,10CにY軸方向から対向する側壁21を有する。側壁21は、積層体10A,10B,10CをY軸方向の両側から直接支持する。このように、本実施の形態に係る電池パック1は、複数の電池セル100を含む積層体10をそのままケースに収納するCell-to-Pack構造を採用するものである。
【0025】
バスバーモジュール30は、積層体10A上に配置されるバスバーモジュール30A(第1バスバーモジュール)と、積層体10B上に配置されるバスバーモジュール30B(第2バスバーモジュール)と、積層体10C上に配置されるバスバーモジュール30C(第3バスバーモジュール)とを含む。
【0026】
図2は、積層体10A,10B,10Cを構成する電池セル100の構成を示す斜視図である。
図2に示すように、電池セル100は、角型形状を有する。電池セル100は、電極端子110と、筐体120と、ガス排出弁130とを有する。
【0027】
電極端子110は、筐体120上に形成されている。電極端子110は、Y軸方向(第1の方向)に直交するX軸方向(第2の方向)に沿って並ぶ2つの電極端子110として、正極端子111および負極端子112を有する。正極端子111および負極端子112は、X軸方向において、互いに離れて設けられている。
【0028】
筐体120は、略直方体形状を有する。筐体120には、図示しない電極体および電解液が収容されている。筐体120は、上面121と、下面122と、第1側面123と、第2側面124と、第3側面125とを有する。
【0029】
上面121は、Z軸方向に直交する平面である。上面121には、電極端子110が配置されている。下面122は、Y軸方向(第1の方向)およびX軸方向(第2の方向)に直交するZ軸方向(第3の方向)に沿って上面121に対向している。
【0030】
第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に直交する平面からなる。第1側面123および第2側面124の各側面は、筐体120が有する複数の側面のうちで最も大きい面積を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、矩形形状を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、X軸方向が長手方向となり、Z軸方向が短手方向となる矩形形状を有する。
【0031】
複数の電池セル100は、Y軸方向に隣り合う電池セル100,100の間において、第1側面123同士、第2側面124同士が向かい合わせとなるように積層されている。これにより、複数の電池セル100が積層されるY軸方向において、正極端子111と負極端子112とが、交互に並んでいる。
【0032】
ガス排出弁130は、上面121に設けられている。ガス排出弁130は、筐体120の内部で発生したガスにより筐体120の内圧が所定値以上にまで上昇した場合に開弁し、そのガスを筐体120の外部に排出する。
【0033】
次に、バスバーモジュール30の基本的構成について
図3および
図4を用いて説明する。
図3は、バスバーモジュール30に含まれるプレート部材310の上面図である。
図4は、バスバーモジュール30におけるバスバー320周辺の構造を示す斜視図である。
【0034】
バスバーモジュール30A,30B,30Cは、
図3に示すプレート部材310を各々含む。
図3に示すように、プレート部材310は、Y軸方向の端部に位置する端面311と、X軸方向の端部に位置する端面312と、電池セル100のガス排出弁130に対応する位置に形成された貫通孔313と、プレート部材310上の空間を複数に仕切る壁部314とを含む。
【0035】
図4に示すように、壁部314により仕切られた各々の空間にバスバー320が収納される。バスバー320は、導電体(典型的には、金属部材)からなる。バスバー320は、複数の電池セル100の電極端子110を互いに電気的に接続する。バスバー320は、Y軸方向に延びる根元部321と、根元部321からX軸方向に突出する接続部322(第1接続部)および接続部323(第2接続部)を含む。接続部322,323は、Y軸方向において隣接する2つの電池セル100の電極端子110と各々接続される。
【0036】
プレート部材310の壁部314は、第1部分314Aと、第2部分314Bと、第3部分314Cとを含む。第1部分314Aおよび第2部分314Bは、X軸方向に延びるように形成される。第1部分314Aおよび第2部分314Bは、Y軸方向において互いに離間した位置にある。第3部分314Cは、第1部分314Aと第2部分314Bとを接続する。
【0037】
壁部314には、リブ315およびロック316が形成される。リブ315は、壁部314の第3部分314Cに隣接する位置からY軸方向の両側に突出する。リブ315は、隣接する複数のバスバー320のY軸方向における位置決めを行う。ロック316は、Z軸方向からバスバー320をロックする。リブ315およびロック316の形状ないし配置は、
図4に示すものに限定されず、適宜変更され得る。
【0038】
バスバー320は、配線410と接続される。配線410は、ねじ420によりバスバー320に固定される。配線410およびねじ420の態様は、
図4に示すものに限定されず、たとえばフレキシブル配線基板により配線を構成してもよい。
【0039】
電池セル100の電極端子110とバスバー320とは、X軸方向およびY軸方向において互いに位置決めされた上で溶接接合される。この位置決めを正確に行うことにより、電極端子110とバスバー320との溶接工程を高効率および高品質に実施することができる。バスバー320は、壁部314により仕切られた空間に収納されるとき、プレート部材310に対してX軸方向およびY軸方向に正確に位置決めされる。したがって、プレート部材310と積層体10との位置決めを精度よく行うことが要請される。
【0040】
図5ないし
図8を用いて、本実施の形態におけるバスバーモジュール30(プレート部材310)の位置決め機構について説明する。
【0041】
図5は、Y軸方向におけるバスバーモジュール30の位置決め機構を示す図である。
図5に示すように、バスバーモジュール30のプレート部材310は、ケース20の側壁21を付勢することによりY軸方向におけるバスバーモジュール30の位置決めを行う位置決め機構317を有する。
【0042】
図5に示す位置決め機構317は、プレート部材310の端面311に形成されたスナップフィット形状の突起により構成される。位置決め機構317を構成する突起は、プレート部材310の端面311から側壁21側に突出する。プレート部材310をケース20内に設置するとき、位置決め機構317はケース20の側壁21を押圧し、プレート部材310を所定の位置に向けて付勢する。この結果、Y軸方向におけるバスバーモジュール30の位置決めが行われる。
【0043】
位置決め機構317は、プレート部材310のY軸方向の両側の端面311に設けられてもよいし、プレート部材310のY軸方向の片側のみの端面311に設けられてもよい。Y軸方向の両側に位置決め機構317を設けた場合、プレート部材310は、ケース20のY軸方向の中央に向けて付勢され、両側の位置決め機構317による付勢力が釣り合う位置に位置決めされる。Y軸方向の片側に位置決め機構317を設けた場合、プレート部材310は、位置決め機構317を設けた側と反対側の側壁21に向けて付勢され、側壁21を基準面として位置決めされる。
【0044】
位置決め機構317を構成する突起は、ケース20の側壁21を押圧する反作用として、積層体10の中央側に向けて変形する。このとき、位置決め機構317は、Z軸方向からみてガス排出弁130と干渉しない位置にあることが好ましい。このようにすることで、Y軸方向の端部に位置する電池セル100のガス排出弁130からのガスの排出に影響を与えることなく、Y軸方向におけるバスバーモジュール30の位置決めを行うことができる。
【0045】
図6は、バスバーモジュール30と電池セル100の上面121との間の構造を示す斜視図である。
【0046】
図6に示すように、積層体10は、複数の電池セル100の間に設けられるセパレータ11を含む。セパレータ11は、電池セル100の第1側面123、第2側面124、第3側面125を覆うフィルムないしテープであってもよい。セパレータ11は、筐体120を包み込むフィルムであってもよい。セパレータ11は、互いに隣接する電池セル100の間に挟まれる板状部材(板)であってもよい。セパレータ11は、上記フィルムないしテープと板状部材とを組み合わせて構成することもできる。セパレータ11は、複数の電池セル100よりもプレート部材310側に突出する突出部11Aを有する。プレート部材310は、セパレータ11の突出部11Aを避ける凹部318を有する。
【0047】
図7は、プレート部材310の裏面を示す斜視図である。
図7に示すように、プレート部材310は、底面319Aを有する。底面319Aは、電池セル100の上面と対向する。プレート部材310の底面319Aから電池セル100の上面121に向かって突出する突出リブ319がプレート部材310の底面319Aの一部に設けられる。突出リブ319は、電池セル100の上面121に当接する。
図7の例において、突出リブ319は、貫通孔313の両側において、Y軸方向に延びるように断続的に形成される。
【0048】
図8は、X軸方向におけるバスバーモジュール30の位置決め機構を示す図である。
図8に示すように、バスバーモジュール30は、隣接する2つの積層体(
図8の例では積層体10A,10B)の間に挿入され、X軸方向におけるバスバーモジュール30の位置決めを行う位置決め機構330を有する。
図8の例では、積層体10Aが位置決め機構330Aを有し、積層体10Bが位置決め機構330Bを有しているが、本技術の範囲は、すべての積層体10が位置決め機構330を有するものに限定されず、複数の積層体10のうちの一部のみが位置決め機構330を有するものであってもよい。
【0049】
位置決め機構330Aは、積層体10A,10Bの間に圧入される挿入部331Aを有する。挿入部331Aが積層体10A,10Bの間に圧入されたとき、バスバーモジュール30Aは積層体10Bから離れる方向に付勢される。このとき、挿入部331Aが積層体10Aの側面に当接することにより、バスバーモジュール30AのX軸方向における位置決めがなされる。
【0050】
位置決め機構330Bは、積層体10A,10Bの間に圧入される挿入部331Bを有する。挿入部331Bが積層体10A,10Bの間に圧入されたとき、バスバーモジュール30Bは積層体10Aから離れる方向に付勢される。このとき、挿入部331Bが積層体10Bの側面に当接することにより、バスバーモジュール30BのX軸方向における位置決めがなされる。
【0051】
図9ないし
図17は、X軸方向の位置決め機構の変形例を示す図である。
図9に示す位置決め機構330Aは、積層体10A上に設けられるバスバーモジュール30Aに含まれるものであって、積層体10A,10Bの間に圧入される挿入部331Aと、プレート部材310の端面312からX軸方向に突出する凸部分332Aとを含む。挿入部331Aは、凸部分332AからZ軸方向に突出するように設けられている。凸部分332Bの底部には、電池セル100の上面121に向けて突出する突出部333Aが設けられる。
【0052】
挿入部331Aが積層体10A,10B間に圧入されたとき、積層体10Aの電池セル100の上面121と、積層体10Bの電池セル100の上面121とに突出部333Aが当接する。すなわち、挿入部331Aは、電池セル100の上面121に突出部333Aが当接する位置まで圧入される。この圧入は、人の手(指)により凸部分332Aを積層体10側(下方)に押圧することにより行われる。
【0053】
図9に示す挿入部331Aは、Y軸方向からみて左右非対称な形状を有する。挿入部331Aは、厚肉部3311Aと薄肉部3312Aとを有する。積層体10B上に設けられるバスバーモジュール30Bに含まれる位置決め機構330Bにおいて、位置決め機構330Aと同じ構造を採用してもよい。
【0054】
図10ないし
図13に示す例のように、位置決め機構330に突出部333を設けなくてもよいし、
図14ないし
図17に示す例のように、凸部分332の底部に突出部333を設けた位置決め機構330としてもよい。挿入部331を複数の積層体10の間への押し込み量をより正確に管理することを考慮すると、
図14ないし
図17に示すように、電池セル100の上面121に当接する突出部333が設けられることが好ましい。
【0055】
図10ないし
図13の例のように、挿入部331を構成する略U字形状ないし略V字形状の上側が分離していてもよいし、
図14ないし
図17に示す例のように、挿入部331を構成する略U字形状ないし略V字形状の上側開口が繋がれていてもよい。挿入部331を複数の積層体10の間に押し込むときの押し込みやすさを考慮すると、
図14ないし
図17に示すように、略U字形状ないし略V字形状の上側開口が繋がれた構造であることが好ましい。
【0056】
図16,
図17の例に示す位置決め機構330は、凸部分332から突出部333の反対側(電池セル100の上面121から離れる側)に突出する突出部334をさらに含む。この場合、挿入部331を複数の積層体10間に押し込むときに、突出部334を押圧することができる。
【0057】
上述のとおり、本実施の形態に係る電池パック1は、複数の電池セル100を含む積層体10をそのままケース20に収納するCell-to-Pack構造を採用しているため、モジュール構造におけるバインドバー等の部材をバスバーモジュール30の位置決め用の部材として用いることができない。
【0058】
本実施の形態に係る電池パック1においては、複数の積層体10の間にZ軸方向に沿って挿入(圧入)される挿入部331を含み、X軸方向におけるバスバーモジュール30の位置決めを行う位置決め機構330が設けられているため、X軸方向においてプレート部材310の位置決めを行うことが可能である。したがって、Cell-to-Pack構造の電池パック1において、複雑な機構を設けることなくバスバーモジュール30の位置決めを精度よく行うことができる。
【0059】
なお、本技術において、複数の積層体10のすべてが位置決め機構330を備えてもよいし、複数の積層体10のうちの一部が位置決め機構330を備えてもよい。
【0060】
挿入部331は、Y軸方向からみて左右非対称な形状を有してもよいし、左右対称な形状を有してもよい。
【0061】
図14ないし
図17に例示するとおり、位置決め機構330の凸部分332の底部に設けられた突出部333を電池セル100の上面121に当接させることにより、挿入部331の押し込み量を正確に管理することができる。この結果、バスバーモジュール30のX軸方向の位置決めをより正確に行うことができる。ただし、本技術において突出部333は必ずしも必須の構成ではない。
【0062】
電池パック1においては、プレート部材310に設けられた位置決め機構317がケース20の側壁21を付勢することにより、X軸方向に加えてY軸方向においてもバスバーモジュール30の位置決めを行うことができる。
【0063】
電池パック1においては、プレート部材310の底面319Aから電池セル100に向けて突出する突出リブ319が電池セル100の上面121に当接している。このように、突出リブ319を電池セル100に当接させることにより、プレート部材310と電池セル100の上面121との接触面積を低減させ、プレート部材310が電池セル100に対して移動するときの摩擦抵抗を低減させ、プレート部材310の位置決めを円滑かつ正確に行うことができる。
【0064】
なお、突出リブ319の形状ないし配置は
図7に示すものに限定されない。また、本技術において突出リブ319は必ずしも必須の構成ではない。
【0065】
電池パック1においては、セパレータ11の突出部11Aを避ける凹部318をプレート部材310が有しているため、位置決め機構317によりプレート部材310のY軸方向の位置決めを行うときに、セパレータ11の突出部11Aによりプレート部材310のY軸方向の移動が阻害されない。このため、プレート部材310の位置決めを円滑かつ正確に行うことができる。
【0066】
ただし、本技術において、セパレータ11の突出部11Aおよびプレート部材310の凹部318は必ずしも必須の構成ではない。
【0067】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1 電池パック、10,10A,10B,10C 積層体、11 セパレータ、11A 突出部、20 ケース、21 側壁、30,30A,30B,30C バスバーモジュール、100 電池セル、110 電極端子、110A 突出部、111 正極端子、112 負極端子、120 筐体、121 上面、122 下面、123 第1側面、124 第2側面、125 第3側面、130 ガス排出弁、310 プレート部材、311,312 端面、313 貫通孔、314 壁部、314A 第1部分、314B 第2部分、314C 第3部分、315 リブ、316 ロック、 317 位置決め機構、318 凹部、319 突出リブ、319A 底面、320 バスバー、321 根元部、322,323 接続部、330,330A,330B 位置決め機構、331,331A,331B 挿入部、332 凸部分、333,333A,334 突出部、410 配線、420 ねじ、3311,3311A 厚肉部、3312,3312A 薄肉部。