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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008195
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】車載用制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20250109BHJP
   F02D 41/08 20060101ALI20250109BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20250109BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F02D45/00 366
F02D41/08 ZHV
F02D45/00 364G
B60K6/48
B60W10/06 900
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110147
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾谷 紀明
【テーマコード(参考)】
3D202
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB00
3D202BB01
3D202CC47
3D202DD18
3D202DD20
3D202FF06
3D202FF13
3G301JA00
3G301KA05
3G301KA07
3G301LA01
3G301ND30
3G301PA01Z
3G301PA07Z
3G301PA10Z
3G301PA11Z
3G301PB08Z
3G301PE03Z
3G301PE08Z
3G384AA28
3G384BA04
3G384CA03
3G384CA05
3G384EA16
3G384FA01Z
3G384FA04Z
3G384FA08Z
3G384FA15Z
3G384FA28Z
3G384FA37Z
3G384FA58Z
3G384FA61Z
(57)【要約】
【課題】スロットル開度に対する吸入空気量の特性としての学習値に対する反省処理の機会を多くする。
【解決手段】車載用制御装置は、前回以前のトリップにおいてエンジンをアイドリング制御している最中に学習したスロットル開度に対する吸入空気量の特性としての前回学習値を用いて今回のトリップにおけるエンジンを制御する。アイドリング制御している最中にエンジンの吹き上げ又はエンジンの出力トルクの急増が生じたときや触媒暖機中にエンジンの吹き上げ又はエンジンの出力トルクの急増が生じたときには、前回学習値に代えて今回のトリップ中に学習する今回学習値を用いてエンジンを制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと共に車両に搭載され、前回以前のトリップにおいてエンジンをアイドリング制御している最中に学習したスロットル開度に対する吸入空気量の特性としての前回学習値を用いて今回のトリップにおけるエンジンを制御すると共に、今回のトリップにおいてアイドリング制御している最中にエンジンの吹き上げ又はエンジンの出力トルクの急増が生じたときには前記前回学習値に代えて今回のトリップ中に学習する今回学習値を用いてエンジンを制御する車載用制御装置であって、
触媒暖機中にエンジンの吹き上げ又はエンジンの出力トルクの急増が生じたときにも前記前回学習値に代えて前記今回学習値を用いてエンジンを制御する、
ことを特徴とする車載用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用制御装置に関し、詳しくは、スロットル開度と吸入空気量と関係を学習する車載用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車載用制御装置としては、エンジンをアイドリング制御をしている最中にエンジンの目標回転数と実回転数とを比較し、スロットル開度に対する吸入空気量の特性を学習するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車載用制御装置では、スロットル弁部の洗浄を行なった場合には、洗浄により詰まりが減少するため、エンジンをアイドリング制御している最中にスロットル開度に対する吸入空気量の特性が急変することから、学習値の初期化を含む反省処理を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-150736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の車載用制御装置では、エンジンをアイドリング制御している最中にスロットル開度に対する吸入空気量の特性が急変したときには対応することができるが、エンジンをアイドリング制御する機会の少ない車両では、学習値のリセットを含む反省処理を行なうことができない場合が生じ、ドライバビリティが悪化してしまう。
【0005】
本開示の車載用制御装置は、スロットル開度に対する吸入空気量の特性としての学習値に対する反省処理の機会を多くすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車載用制御装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の車載用制御装置は、
エンジンと共に車両に搭載され、前回以前のトリップにおいてエンジンをアイドリング制御している最中に学習したスロットル開度に対する吸入空気量の特性としての前回学習値を用いて今回のトリップにおけるエンジンを制御すると共に、今回のトリップにおいてアイドリング制御している最中にエンジンの吹き上げ又はエンジンの出力トルクの急増が生じたときには前記前回学習値に代えて今回のトリップ中に学習する今回学習値を用いてエンジンを制御する車載用制御装置であって、
触媒暖機中にエンジンの吹き上げ又はエンジンの出力トルクの急増が生じたときにも前記前回学習値に代えて前記今回学習値を用いてエンジンを制御する、
ことを特徴とする。
【0008】
この本開示の車載用制御装置では、前回以前のトリップにおいてエンジンをアイドリング制御している最中に学習したスロットル開度に対する吸入空気量の特性としての前回学習値を用いて今回のトリップにおけるエンジンを制御する。今回のトリップにおいてアイドリング制御している最中にエンジンの吹き上げ又はエンジンの出力トルクの急増が生じたときには前回学習値に代えて今回のトリップ中に学習する今回学習値を用いてエンジンを制御する。即ち、前回学習値を破棄して今回のトリップ中に学習する値を用いる反省処理を実行するのである。そして、触媒暖機中にエンジンの吹き上げ又はエンジンの出力トルクの急増が生じたときにも前回学習値に代えて今回学習値を用いてエンジンを制御する。即ち、アイドリング制御中だけでなく触媒暖機中にも反省処理を行なう。これにより、スロットル開度に対する吸入空気量の特性としての学習値に対する反省処理の機会を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態としての車載用制御装置を搭載するハイブリッド車20の構成の概略を示す構成図である。
図2】ハイブリッド車20が搭載するエンジン22の構成の概略を示す構成図である。
図3】新品のスロットルバルブとデポジットが付着したスロットルバルブを用いたときのスロットル開度THとスロットル通過空気流量との関係の一例を示す説明図である。
図4】エンジンECU24により実行されるスロットル特性反省処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示を実施するための形態を実施形態を用いて説明する。図1は、本開示の実施形態としての車載用制御装置を搭載するハイブリッド車20の構成の概略を示す構成図である。図2は、ハイブリッド車20が搭載するエンジン22の構成の概略を示す構成図である。実施形態のハイブリッド車20は、図1に示すように、エンジン22と、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24と、モータ30と、インバータ32と、クラッチK0と、自動変速装置40と、高電圧バッテリ60と、低電圧バッテリ62と、DC/DCコンバータ64と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70と、を備える。実施形態の車載用制御装置としては、エンジンECU24が相当する。
【0011】
エンジン22は、例えばガソリンや軽油などの燃料を用いて吸気、圧縮、膨張(爆発燃焼)、排気の4行程により動力を出力する6気筒の内燃機関として構成されている。図2に示すように、エンジン22は、吸気ポートに燃料供給装置150から低圧供給管153を介して供給される燃料を噴射するポート噴射弁126と、筒内に燃料供給装置150から高圧供給管158を介して供給される燃料を噴射する筒内噴射弁127とを有する。エンジン22は、ポート噴射弁126と筒内噴射弁127とを有することにより、ポート噴射モードと筒内噴射モードと共用噴射モードとのうちの何れかで運転可能となっている。ポート噴射モードでは、エアクリーナ122により清浄された空気を吸気管123に吸入してスロットルバルブ124やサージタンク125を通過させると共に、吸気管123のサージタンク125よりも下流側のポート噴射弁126から燃料を噴射し、空気と燃料とを混合する。そして、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室129に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、シリンダボア内でそのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト23の回転運動に変換する。筒内噴射モードでは、ポート噴射モードと同様に空気を燃焼室129に吸入し、吸気行程や圧縮行程において筒内噴射弁127から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花により爆発燃焼させてクランクシャフト23の回転運動を得る。共用噴射モードでは、空気を燃焼室129に吸入する際にポート噴射弁126から燃料を噴射すると共に吸気行程や圧縮行程において筒内噴射弁127から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花により爆発燃焼させてクランクシャフト23の回転運動を得る。これらの噴射モードは、エンジン22の運転状態に基づいて切り替えられる。燃焼室129から排気バルブ133を介して排気管134に排出される排気は、浄化装置135を介して外気に排出される。浄化装置135は、排気中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)135aを有する。
【0012】
燃料供給装置150は、燃料タンク151内の燃料をエンジン22のポート噴射弁126や筒内噴射弁127に供給する装置として構成されている。燃料供給装置150は、燃料タンク151と、フィードポンプ152と、低圧供給管153と、逆止弁154と、リリーフ管155と、リリーフバルブ156と、高圧ポンプ157と、高圧供給管158とを備える。
【0013】
フィードポンプ152は、図示しないバッテリからの電力の供給を受けて作動する電動ポンプとして構成されており、燃料タンク151内に配置されている。このフィードポンプ152は、燃料タンク151内の燃料を低圧供給管153に供給する。低圧供給管153は、ポート噴射弁126に接続されている。逆止弁154は、低圧供給管153に設けられており、フィードポンプ152側からポート噴射弁126側の方向の燃料の流れを許容すると共に逆方向の燃料の流れを規制する。
【0014】
リリーフ管155は、低圧供給管153と燃料タンク151とに接続されている。リリーフバルブ156は、リリーフ管155に設けられ、低圧供給管153内の燃圧が閾値Pflolim未満のときには閉弁すると共に低圧供給管153内の燃圧が閾値Pflolim以上のときには開弁する。リリーフバルブ156が開弁すると、低圧供給管153内の燃料の一部がリリーフ管155を介して燃料タンク151に戻される。このようにして、低圧供給管153内の燃圧が過剰になるのを抑制する。
【0015】
高圧ポンプ157は、エンジン22からの動力(実施形態では、吸気バルブ128を開閉するインテークカムシャフトの回転)により駆動されると共に低圧供給管153の燃料を加圧して高圧供給管158に供給するポンプとして構成されている。高圧ポンプ157は、その吸入口に接続されて燃料を加圧する際に開閉する電磁バルブ157aと、その吐出口に接続されて燃料の逆流を規制すると共に高圧供給管158内の燃圧を保持するチェックバルブ157bと、エンジン22の回転(インテークカムシャフトの回転)により作動する(図1における上下方向に移動する)プランジャ157cとを有する。この高圧ポンプ157は、エンジン22の運転中に、電磁バルブ157aが開弁されたときに、低圧供給管153の燃料を吸入し、電磁バルブ157aが閉弁されたときに、プランジャ157cによって圧縮した燃料をチェックバルブ157bを介して高圧供給管158に断続的に送り込むことにより、高圧供給管158に供給する燃料を加圧する。
【0016】
エンジン22は、エンジンECU24により運転制御されている。エンジンECU24は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。
【0017】
エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。エンジンECU24に入力される信号としては、例えば、エンジン22のクランクシャフト23の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランク角θcrや、エンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Twを挙げることができる。吸気バルブ128を開閉するインテークカムシャフトの回転位置や排気バルブ133を開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカム角θci,θcoも挙げることができる。スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ124aからのスロットル開度THや、吸気管123のスロットルバルブ124よりも上流側に取り付けられたエアフローメータ123aからの吸入空気量Qa、吸気管123のスロットルバルブ124よりも上流側に取り付けられた温度センサ123tからの吸気温Ta、サージタンク125に取り付けられた圧力センサ125aからのサージ圧Psも挙げることができる。排気管134の浄化装置135よりも上流側に取り付けられたフロント空燃比センサ137からのフロント空燃比AF1や、排気管134の浄化装置135とPMフィルタ136との間に取り付けられたリヤ空燃比センサ138からのリヤ空燃比AF2も挙げることができる。燃料タンク151に取り付けられた燃温センサ151tからの燃温Tftnkや、フィードポンプ152に取り付けられた回転数センサ152aからのフィードポンプ152の回転数Np、低圧供給管153のポート噴射弁126付近(例えば、低圧デリバリパイプ)に取り付けられた燃圧センサ153pからの低圧燃圧(ポート噴射弁126に供給する燃料の圧力)PL、高圧供給管158の筒内噴射弁127付近(例えば、高圧デリバリパイプ)に取り付けられた燃圧センサ158pからの高圧燃圧(筒内噴射弁127に供給する燃料の圧力)PHも挙げることができる。
【0018】
エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24から出力される信号としては、例えば、スロットルバルブ124への制御信号や、ポート噴射弁126への制御信号、筒内噴射弁127への制御信号、点火プラグ130への制御信号を挙げることができる。燃料供給装置150のフィードポンプ152への制御信号や、高圧ポンプ157の電磁バルブ157aへの制御信号も挙げることができる。
【0019】
エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのエンジン22のクランク角θcrに基づいてエンジン22の回転数Neを演算している。また、エンジンECU24は、エアフローメータ123aからの吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいて負荷率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLを演算している。
【0020】
図1に示すように、エンジン22のクランクシャフト23には、エンジン22をクランキングするためのスタータモータ25や、エンジン22からの動力を用いて発電するオルタネータ26が接続されている。スタータモータ25およびオルタネータ26は、低電圧バッテリ62と共に低電圧側電力ライン63に接続されており、HVECU70により制御される。
【0021】
モータ30は、同期発電電動機として構成されており、回転子コアに永久磁石が埋め込まれた回転子と、固定子コアに三相コイルが巻回された固定子とを有する。このモータ30の回転子が固定された回転軸31は、クラッチK0を介してエンジン22のクランクシャフト23に接続されていると共に自動変速機45の入力軸41に接続されている。インバータ32は、モータ30の駆動に用いられると共に高電圧側電力ライン61に接続されている。モータ30は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)34によってインバータ32の複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
【0022】
モータECU34は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。モータECU34には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。モータECU34に入力される信号としては、例えば、モータ30の回転子(回転軸31)の回転位置を検出する回転位置センサ30aからの回転位置θmや、モータ30の各相の相電流を検出する電流センサからの相電流Iu,Ivを挙げることができる。モータECU34からは、インバータ32への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU34は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。モータECU34は、回転位置センサ30aからのモータ30の回転子(回転軸31)の回転位置θmに基づいてモータ30の回転数Nmを演算している。
【0023】
クラッチK0は、例えば油圧駆動の摩擦クラッチとして構成されており、HVECU70によって制御され、エンジン22のクランクシャフト23とモータ30の回転軸31との接続および接続の解除を行なう。
【0024】
自動変速装置40は、トルクコンバータ43と、例えば6段変速の自動変速機45とを有する。トルクコンバータ43は、一般的な流体伝動装置として構成されており、モータ30の回転軸31に接続された入力軸41の動力を自動変速機45の入力軸である変速機入力軸44にトルクを増幅して伝達したり、トルクを増幅することなくそのまま伝達したりする。自動変速機45は、変速機入力軸44と、駆動輪49にデファレンシャルギヤ48を介して連結された出力軸42と、複数の遊星歯車と、油圧駆動の複数の摩擦係合要素(クラッチ,ブレーキ)とを有する。複数の摩擦係合要素は、何れも、ピストン、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)、作動油が供給される油室などにより構成される油圧サーボを有する。自動変速機45は、複数の摩擦係合要素の係脱により、第1速から第6速までの前進段や後進段を形成して、変速機入力軸44と出力軸42との間で動力を伝達する。クラッチK0や自動変速機45には、図示しない油圧制御装置により、機械式オイルポンプや電動オイルポンプからの作動油の油圧が調圧されて供給される。油圧制御装置は、複数の油路が形成されたバルブボディや、複数のレギュレータバルブ、複数のリニアソレノイドバルブなどを有する。この油圧制御装置は、HVECU70により制御される。
【0025】
高電圧バッテリ60は、例えば定格電圧が数百V程度のリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、インバータ32と共に高電圧側電力ライン61に接続されている。低電圧バッテリ62は、例えば定格電圧が12Vや14V程度の鉛蓄電池として構成されており、スタータモータ25やオルタネータ26と共に低電圧側電力ライン63に接続されている。DC/DCコンバータ64は、高電圧側電力ライン61と低電圧側電力ライン63とに接続されている。このDC/DCコンバータ64は、高電圧側電力ライン61の電力を低電圧側電力ライン63に電圧の降圧を伴って供給する。
【0026】
HVECU70は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。HVECU70に入力される信号としては、例えば、自動変速装置40の入力軸41に取り付けられた回転数センサ41aからの回転数Ninや、自動変速装置40の変速機入力軸44に取り付けられた回転数センサ44aからの回転数Nmi、自動変速装置40の出力軸42に取り付けられた回転数センサ42aからの回転数Noutを挙げることができる。高電圧バッテリ60の端子間に取り付けられた電圧センサからの高電圧バッテリ60の電圧Vbhや、高電圧バッテリ60の出力端子に取り付けられた電流センサからの高電圧バッテリ60の電流Ibh、低電圧バッテリ62の端子間に取り付けられた電圧センサからの電圧Vblも挙げることができる。イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ87からの車速Vも挙げることができる。
【0027】
HVECU70からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。HVECU70から出力される信号としては、例えば、スタータモータ25への制御信号や、オルタネータ26への制御信号を挙げることができる。クラッチK0や自動変速装置40(油圧制御装置)への制御信号、DC/DCコンバータ64への制御信号も挙げることができる。HVECU70は、エンジンECU24やモータECU34と通信ポートを介して接続されている。HVECU70は、回転数センサ41aからの自動変速装置40の入力軸41の回転数Ninを回転数センサ42aからの自動変速装置40の出力軸42の回転数Noutで除して自動変速装置40の回転数比Gtを演算している。
【0028】
こうして構成された実施形態のハイブリッド車20では、HVECU70とエンジンECU24とモータECU34との協調制御により、ハイブリッド走行モード(HV走行モード)や電動走行モード(EV走行モード)で走行するように、エンジン22とクラッチK0とモータ30と自動変速装置40とを制御する。ここで、HV走行モードは、クラッチK0を係合状態としてエンジン22の動力を用いて走行するモードであり、EV走行モードは、クラッチK0を解放状態としてエンジン22の動力を用いずに走行するモードである。
【0029】
次に、こうして構成された実施形態のハイブリッド車20の動作、特にスロットルバルブ124を洗浄したり新品に取り替えた後のスロットル開度THに対する吸入空気量Qaの特性としての学習値に対して反省処理を行なう際の動作について説明する。スロットル開度THに対する吸入空気量Qaの特性(学習値)の学習は、エンジン22をアイドリング制御している最中に行なわれ、前回以前のトリップで最後に学習した前回学習値が今回のトリップのエンジン22の制御に用いられる。スロットルバルブ124を洗浄したり新品に取り替えられたりすると、スロットルバルブ124に付着したデポジットが洗浄されたり全くなくなったりすることから、スロットル開度THに対する吸入空気量Qaの特性が大きく変化する。図3に新品のスロットルバルブとデポジットが付着したスロットルバルブを用いたときのスロットル開度THとスロットル通過空気流量(吸入空気量に相当)との関係の一例を示す。図中、実線が新品のスロットルバルブを用いたときのスロットル開度THとスロットル通過空気流量との関係であり、破線がデポジットが付着したスロットルバルブを用いたときのスロットル開度THとスロットル通過空気流量との関係である。図示するように、新品のスロットルバルブを用いたときには、デポジットが付着したスロットルバルブを用いたときに比して、同一のスロットル開度THに対してスロットル通過空気流量が多くなる。このため、スロットルバルブを新品に交換したりスロットルバルブのデポジットを取り除くように洗浄した直後は、前回学習値を用いてエンジン22を制御するとスロットル通過空気流量が多くなりエンジン22が吹き上がったり、エンジン22の出力トルクが急増したりする現象が生じる。このため、スロットル開度THに対する吸入空気量Qaの学習値を初期化したりする反省処理が必要となる。図4は、エンジンECU24により実行されるスロットル特性反省処理の一例を示すフローチャートである。
【0030】
スロットル特性反省処理が実行されると、エンジンECU24は、まず、スロットル開度THに対する吸入空気量Qaの学習値として前回以前のトリップで最後に学習した前回学習値に更新する(ステップS100)。続いて、今回のトリップでのスロットル開度THに対する吸入空気量Qaの学習値を学習する(ステップS110)。この学習は、エンジン22がアイドリング制御されている条件などを含む学習実行条件が成立したときに行なわれる。
【0031】
次に、エンジン22の吹き上がりが生じたか否かを判定する(ステップS120)。エンジン22の吹き上がりが生じていないと判定したときには、スロットル開度THに対する吸入空気量Qaの学習値に対する反省処理は不要と判断し、前回学習値で更新した学習値を用いてエンジン22を制御して(ステップS160)、本処理を終了する。即ち、今回のトリップでのエンジン22のスロットル開度THに対する吸入空気量Qaの制御は前回学習値を用いて行なわれるのである。
【0032】
ステップS120でエンジン22の吹き上がりが生じていると判定したときには、このエンジン22の吹き上がりがエンジン22のアイドリング制御中であるか否かを判定する(ステップS130)。エンジン22のアイドリング制御中であると判定したとき、即ち,エンジン22のアイドリング制御中にエンジン22の吹き上がりが生じたと判定したときには、スロットル開度THに対する吸入空気量Qaの学習値に対する反省処理が必要であると判断し、反省処理として、スロットル開度THに対する吸入空気量Qaの学習値として今回のトリップにおける学習値(今回学習値)に更新する処理を実行し(ステップS150)、今回学習値で更新した学習値を用いてエンジン22を制御して(ステップS160)、本処理を終了する。即ち、学習値が今回のトリップでの学習値(今回学習値)に初期化されてエンジン22の制御に用いられるのである。
【0033】
ステップS120でエンジン22の吹き上がりが生じていると判定すると共にステップS130でエンジン22のアイドリング制御中ではないと判定したとき、即ち、エンジン22をアイドリング制御していないときにエンジン22の吹き上がりが生じたときには、エンジン22を触媒暖機のための制御中であるか否かを判定する(ステップS140)。触媒暖機では、エンジン22の排気管134に取り付けられた浄化装置135内の浄化触媒135aの暖機を促進するために、エンジン22については点火時期を遅角すると共に若干の負荷運転となるように或いはアイドリング回転数より若干高い回転数となるように制御する。エンジンを触媒暖機のための制御中ではないと判断したときには、エンジン22の吹き上がりはスロットル開度THに対する吸入空気量Qaの学習値以外の要因であると判断し、前回学習値で更新した学習値を用いてエンジン22を制御して(ステップS160)、本処理を終了する。一方、エンジン22を触媒暖機のための制御中であると判定したとき、即ち、エンジン22を触媒暖機のための制御中にエンジン22の吹き上がりが生じたと判定したときには、反省処理として、スロットル開度THに対する吸入空気量Qaの学習値として今回のトリップにおける学習値(今回学習値)に更新する処理を実行し(ステップS150)、今回学習値で更新した学習値を用いてエンジン22を制御して(ステップS160)、本処理を終了する。
【0034】
以上説明した実施形態のハイブリッド車20が搭載するエンジンECU24では、エンジン22のアイドリング制御中にエンジン22の吹き上がりが生じたときに加えて、エンジン22を触媒暖機のための制御中にエンジン22の吹き上がりが生じたときに、反省処理として、スロットル開度THに対する吸入空気量Qaの学習値として今回のトリップにおける学習値(今回学習値)に更新する処理を実行する。これにより、エンジン22のアイドリング制御中にエンジン22の吹き上がりが生じたと判定したときだけに反省処理を行なうものに比して、スロットル開度に対する吸入空気量の特性としての学習値に対する反省処理の機会を多くすることができる。
【0035】
実施形態のハイブリッド車20が搭載するエンジンECU24では、エンジン22のアイドリング制御中にエンジン22の吹き上がりが生じたときやエンジン22を触媒暖機のための制御中にエンジン22の吹き上がりが生じたときに、反省処理を実行するものとした。しかし、エンジン22のアイドリング制御中にエンジン22の出力トルクの急増が生じたときやエンジン22を触媒暖機のための制御中にエンジン22の出力トルクの急増が生じたときに、反省処理を実行するものとしてもよい。スロットルバルブを新品に交換したりスロットルバルブのデポジットを取り除くように洗浄した直後は、前回学習値を用いてエンジン22を制御するとスロットル通過空気流量が多くなり、エンジン22が吹き上がったり、エンジン22の出力トルクが急増したりする現象が生じるからである。
【0036】
実施形態のハイブリッド車20では、6段変速の自動変速機45を備えるものとした。しかし、4段変速や5段変速、8段変速などの自動変速機を備えるものとしてもよい。
【0037】
実施形態のハイブリッド車20では、エンジンECU24とモータECU34とHVECU70とを備えるものとした。しかし、これらのうちの少なくとも2つを一体に構成するものとしてもよい。
【0038】
実施形態のハイブリッド車20では、エンジン22のクランクシャフト23にクラッチK0を介してモータ30の回転軸31と取り付け、モータ30の回転軸31に自動変速装置40の入力軸41を接続する構成とした。しかし、エンジンとモータとを有する如何なる構成のハイブリッド車としてもよい。また、エンジンは搭載するが走行用のモータを備えない通常の自動車としてもよい。
【0039】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、エンジン22が「エンジン」に相当し、エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)24が「車載用制御装置」に相当する。
【0040】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0041】
以上、本開示を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示は、エンジン装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
20 ハイブリッド車、22 エンジン、23 クランクシャフト、24 エンジンECU、25 スタータモータ、26 オルタネータ、30 モータ、30a 回転位置センサ、31 回転軸、32 インバータ、34 モータECU、40 自動変速装置、41 入力軸、41a 回転数センサ、42 出力軸、42a 回転数センサ、43 トルクコンバータ、44 変速機入力軸、44a 回転数センサ、45 自動変速機、48 デファレンシャルギヤ、49 駆動輪、60 高電圧バッテリ、61 高電圧側電力ライン、62 低電圧バッテリ、63 低電圧側電力ライン、64 DC/DCコンバータ、70 HVECU、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、87 車速センサ、122 エアクリーナ、123 吸気管、123a エアフローメータ、123t 温度センサ、124 スロットルバルブ、124a スロットルバルブポジションセンサ、125 サージタンク、125a 圧力センサ、126 ポート噴射弁、127 筒内噴射弁、128 吸気バルブ、129 燃焼室、130 点火プラグ、132 ピストン、133 排気バルブ、134 排気管、135 浄化装置、135a 浄化触媒、136 PMフィルタ、136a 差圧センサ、137 フロント空燃比センサ、138 リヤ空燃比センサ、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、144 カムポジションセンサ、150 燃料供給装置、151 燃料タンク、151t 燃温センサ、152 フィードポンプ、152a 回転数センサ、153 低圧供給管、153p 燃圧センサ、154 逆止弁、155 リリーフ管、156 リリーフバルブ、157 高圧ポンプ、157a 電磁バルブ、157b チェックバルブ、157c プランジャ、158 高圧供給管、158p 燃圧センサ、K0 クラッチ。
図1
図2
図3
図4