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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008197
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   F02D 17/04 20060101AFI20250109BHJP
   F01N 3/033 20060101ALI20250109BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20250109BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F02D17/04 M
F01N3/033 Z
F01N3/023 A
F02D17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110150
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 亮太
(72)【発明者】
【氏名】井戸側 正直
(72)【発明者】
【氏名】内田 孝宏
【テーマコード(参考)】
3G092
3G190
【Fターム(参考)】
3G092AA01
3G092AA05
3G092AA06
3G092BA01
3G092BA03
3G092BA04
3G092BB10
3G092FA05
3G092FA20
3G092HA01Z
3G092HA04Z
3G092HE01Z
3G092HE03Z
3G092HE08Z
3G092HF12Z
3G092HF26Z
3G190AA02
3G190AA13
3G190BA22
3G190BA48
3G190CA01
3G190CB13
3G190CB18
3G190CB24
3G190CB34
3G190CB35
3G190DA50
3G190DB02
3G190DB12
3G190DB23
3G190DB81
3G190DC14
3G190DC15
3G190DD03
3G190EA01
3G190EA02
3G190EA04
3G190EA07
3G190EA12
3G190EA14
3G190EA22
3G190EA24
3G190EA26
3G190EA32
3G190EA42
(57)【要約】
【課題】ドライバビリティの悪化を抑制する。
【解決手段】車両は、粒子状物質を捕集するフィルタが排気系に取り付けられたエンジンと、運転者のシフト操作に応じた変速段の変更を伴ってエンジンからの動力を駆動輪に伝達する手動変速機と、運転者のクラッチペダルの操作に応じてエンジンと手動変速機との接続を解除可能なクラッチと、粒子状物質の堆積量が所定量未満で且つフィルタの温度が第1所定温度以上のときには、エンジンの燃料カットを禁止する制御装置とを備える。制御装置は、粒子状物質の堆積量が所定量未満で且つフィルタの温度が第1所定温度以上のときでも、変速段の変更時には、燃料カットを許可する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状物質を捕集するフィルタが排気系に取り付けられたエンジンと、運転者のシフト操作に応じた変速段の変更を伴って前記エンジンからの動力を駆動輪に伝達する手動変速機と、運転者のクラッチペダルの操作に応じて前記エンジンと前記手動変速機との接続を解除可能なクラッチと、前記粒子状物質の堆積量が所定量未満で且つ前記フィルタの温度が第1所定温度以上のときには、前記エンジンの燃料カットを禁止する制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、前記粒子状物質の堆積量が前記所定量未満で且つ前記フィルタの温度が前記第1所定温度以上のときでも、前記変速段の変更時には、前記燃料カットを許可する、
車両。
【請求項2】
請求項1記載の車両であって、
前記制御装置は、前記フィルタの温度が前記第1所定温度よりも高い第2所定温度以上のときには、前記変速段の変更時であるか否かに拘わらずに前記燃料カットを禁止する、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両としては、粒子状物質を捕集するフィルタが排気系に取り付けられたエンジンを備えるものにおいて、燃料カット条件が成立する場合に燃料噴射弁からの燃料の噴射を停止する燃料カット処理を実行し、燃料カット処理の実行中に吸気の積算量が所定値以上になる場合に燃料カット処理を中止するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、燃料カット処理を実行することにより、フィルタに酸素が供給され、フィルタに堆積した粒子状物質が燃焼し、フィルタが再生される。また、燃料カット処理を中止することにより、多量の粒子状物質が燃焼してフィルタが過熱するのが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-165564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした車両では、フィルタに堆積した粒子状物質が少な過ぎると、フィルタによる粒子状物質の捕集程度が低下するため、粒子状物質の堆積量が所定量未満でフィルタの温度が所定温度以上のとき(粒子状物質が燃料可能な温度範囲内のとき)に、エンジンの燃料カットを禁止することが行なわれている。ところで、運転者のシフト操作に応じた変速段の変更を伴ってエンジンからの動力を駆動輪に伝達する手動変速機と、運転者のクラッチペダルの操作に応じてエンジンと手動変速機との接続を解除可能なクラッチと、を備えるマニュアルトランスミッション車において、手動変速機の変速段を変更する際には、基本的に、クラッチペダルの踏込によりクラッチが解放状態になり、シフト操作に応じて変速段を変更し、クラッチペダルの踏込が徐々に戻されることによりクラッチがスリップ係合状態を経由して係合状態に戻る。このときに、エンジンの燃料カットを禁止していると、エンジンが吹き上がり、ドライバビリティが悪化する懸念がある。
【0005】
本開示の車両は、ドライバビリティの悪化を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の車両は、
粒子状物質を捕集するフィルタが排気系に取り付けられたエンジンと、運転者のシフト操作に応じた変速段の変更を伴って前記エンジンからの動力を駆動輪に伝達する手動変速機と、運転者のクラッチペダルの操作に応じて前記エンジンと前記手動変速機との接続を解除可能なクラッチと、前記粒子状物質の堆積量が所定量未満で且つ前記フィルタの温度が第1所定温度以上のときには、前記エンジンの燃料カットを禁止する制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、前記粒子状物質の堆積量が前記所定量未満で且つ前記フィルタの温度が前記第1所定温度以上のときでも、前記変速段の変更時には、前記燃料カットを許可する、
ことを要旨とする。
【0008】
本開示の車両では、粒子状物質の堆積量が所定量未満で且つフィルタの温度が第1所定温度以上のときには、基本的に、エンジンの燃料カットを禁止する。ただし、粒子状物質の堆積量が所定量未満で且つフィルタの温度が第1所定温度以上のときでも、変速段の変更時には、燃料カットを許可する。これにより、手動変速機の変速段の変更時のエンジンの吹き上がりを抑制し、ドライバビリティの悪化を抑制することができる。ここで、手動変速機の変速段の変更時は、クラッチをオフにしてから変速段を変更し、クラッチをオンにするまでの期間であってもよいし、変速段の変更開始から変更終了までの期間であってもよい。
【0009】
本開示の車両において、前記制御装置は、前記フィルタの温度が前記第1所定温度よりも高い第2所定温度以上のときには、前記変速段の変更時であるか否かに拘わらずに前記燃料カットを禁止するものとしてもよい。これにより、エンジンの燃料カットの実行によりフィルタが過熱する、のを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態としての車両20の概略構成図である。
図2】車両20が搭載するエンジン22の概略構成図である。
図3】電子制御ユニット50により実行される許否判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本開示の実施形態としての車両20の概略構成図である。図2は、車両20が搭載するエンジン22の概略構成図である。実施形態の車両20は、マニュアルトランスミッション車(MT車)として構成されており、図1に示すように、エンジン22と、手動変速機30と、クラッチ40と、電子制御ユニット50とを備える。
【0012】
エンジン22は、ガソリンや軽油などの燃料を用いて吸気、圧縮、膨張(爆発燃焼)、排気の4行程により動力を出力する複数気筒の内燃機関として構成されている。図2に示すように、エンジン22は、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁126と、筒内に燃料を噴射する筒内噴射弁127とを有し、ポート噴射モードと筒内噴射モードと共用噴射モードとのうちの何れかで運転する。ポート噴射モードでは、エアクリーナ122により洗浄された空気を吸気管123に吸入してスロットルバルブ124やサージタンク125を通過させ、吸気管123のサージタンク125よりも下流側でポート噴射弁126から燃料を噴射し、空気と燃料とを混合する。この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室129に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させ、シリンダボア内でそのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト23の回転運動に変換する。筒内噴射モードでは、ポート噴射モードと同様に空気を燃焼室129に吸入し、吸気行程や圧縮行程において筒内噴射弁127から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花により爆発燃焼させてクランクシャフト23の回転運動を得る。共用噴射モードでは、空気を燃焼室129に吸入する際にポート噴射弁126から燃料を噴射すると共に吸気行程や圧縮行程において筒内噴射弁127から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花により爆発燃焼させてクランクシャフト23の回転運動を得る。燃焼室129から排気バルブ133を介して排気管134に排出される排気は、浄化装置135およびPMフィルタ136を介して外気に排出される。浄化装置135は、排気中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)135aを有する。PMフィルタ136は、セラミックスやステンレスなどにより多孔質フィルタとして形成されており、排気中の煤などの粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集する。なお、PMフィルタ136に代えて、三元触媒の浄化機能と粒子状物質に対する捕集機能とを組み合わせた四元触媒が用いられてもよい。
【0013】
手動変速機30は、6段変速機として構成されており、図1に示すように、入力軸がクラッチ40を介してエンジン22のクランクシャフト23に接続されていると共に、出力軸が駆動輪DWにデファレンシャルギヤDGを介して連結された駆動軸DSに接続されている。この手動変速機30は、運転者のシフトレバー32の操作に応じて、第1速~第6速の前進段や後進段を形成したり、入力軸と出力軸との接続を解除したりする。
【0014】
クラッチ40は、エンジン22と手動変速機30の入力軸との間に設けられており、運転者によりクラッチペダル42が踏み込まれていないときには、係合状態となり、クラッチペダル42が踏み込まれているときには、踏込量に応じてスリップ係合状態や解放状態となる。
【0015】
電子制御ユニット50は、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。図1図2に示すように、電子制御ユニット50は、各種センサからの信号を入力ポートを介して入力している。
【0016】
電子制御ユニット50が入力する信号としては、例えば、エンジン22を運転制御するのに必要な信号を挙げることができる。エンジン22を運転制御するのに必要な信号としては、例えば、エンジン22のクランクシャフト23の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランク角θcrや、エンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Twを挙げることができる。吸気バルブ128を開閉するインテークカムシャフトの回転位置や排気バルブ133を開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカム角θci,θcoも挙げることができる。スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ124aからのスロットル開度THや、吸気管123のスロットルバルブ124よりも上流側に取り付けられたエアフローメータ123aからの吸入空気量Qa、吸気管123のスロットルバルブ124よりも上流側に取り付けられた温度センサ123tからの吸気温Ta、サージタンク125に取り付けられた圧力センサ125aからのサージ圧Psも挙げることができる。排気管134の浄化装置135よりも上流側に取り付けられたフロント空燃比センサ137からのフロント空燃比AF1や、排気管134の浄化装置135とPMフィルタ136との間に取り付けられたリヤ空燃比センサ138からのリヤ空燃比AF2、PMフィルタ136の前後の差圧(上流側と下流側との差圧)を検出する差圧センサ136aからの差圧ΔPも挙げることができる。
【0017】
また、電子制御ユニット50が入力する信号としては、イグニッションスイッチ51からイグニッション信号や、アクセルペダル53の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ54からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル55の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ56からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ58からの車速Vも挙げることができる。
【0018】
電子制御ユニット50は、エンジン22を運転制御するための各種制御信号などを出力ポートを介して出力している。電子制御ユニット50が出力する信号としては、例えば、スロットルバルブ124への制御信号や、ポート噴射弁126への制御信号、筒内噴射弁127への制御信号、点火プラグ130への制御信号を挙げることができる。
【0019】
電子制御ユニット50は、クランクポジションセンサ140からのエンジン22のクランク角θcrに基づいてエンジン22の回転数Neを演算している。また、エンジンECU24は、エアフローメータ123aからの吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいて負荷率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLを演算している。さらに、エンジンECU24は、差圧センサ136aからの差圧ΔPに基づいてPMフィルタ136に堆積した粒子状物質の堆積量としてのPM堆積量Qpmを演算したり、エンジン22の回転数Neや負荷率KLに基づいてPMフィルタ136の温度としてのフィルタ温度tfを演算したりしている。
【0020】
実施形態の車両20では、電子制御ユニット50は、アクセル開度Accに基づいてエンジン22の目標負荷率KL*を設定し、エンジン22が目標負荷率KL*に基づいて運転されるようにエンジン22の運転制御(吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御など)を行なう。
【0021】
また、実施形態の車両20では、電子制御ユニット50は、アクセルオフのときに、エンジン22の燃料カットを実行する。フィルタ温度Tfが閾値Tfref以上のときにエンジン22の燃料カットを実行することによってPMフィルタ136に空気(酸素)が供給されると、PMフィルタ136に堆積した粒子状物質と酸素とが反応して粒子状物質が燃焼し、PMフィルタ136が再生される。ここで、閾値Tfrefは、PMフィルタ136を再生可能(粒子状物質が燃焼可能)な温度範囲の下限である。
【0022】
次に、実施形態の車両20の動作、特に、エンジン22の燃料カットの許否を判定する処理について説明する。図3は、電子制御ユニット50により実行される許否判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、繰り返し実行される。
【0023】
図3の許否判定判定ルーチンが実行されると、電子制御ユニット50は、最初に、フィルタ温度Tfが上述の閾値Tfrefよりも高い過熱温度Tfot以上であるか否かを判定する(ステップS100)。ここで、過熱温度Tfotは、エンジン22の燃料カットの実行によりPMフィルタ136が過熱する可能性があるか否かを判断するのに用いられる温度として定められる。過熱温度Tfotは、一定値が用いられてもよいし、PM堆積量Qpmが多いほど低くなるように設定されてもよい。後者は、エンジン22の燃料カットを実行したときに、PM堆積量Qpmが多いほど粒子状物質の燃焼による発熱量が大きくなり、フィルタ温度Tfが高温になりやすいためである。
【0024】
ステップS100でフィルタ温度Tfが過熱温度Tfot未満であると判定したときには、エンジン22の燃料カットを実行してもPMフィルタ136が過熱する可能性が十分に低いと判断し、PM堆積量Qpmが閾値Qpmref未満であるか否かを判定すると共に(ステップS110)、フィルタ温度Tfが閾値Tfref以上であるか否かを判定する(ステップS120)。PM堆積量Qpmが少な過ぎると、PMフィルタ136による粒子状物質の捕集率が低下する。閾値Qpmrefおよび閾値Tfrefは、エンジン22の燃料カットを実行すると粒子状物質が燃焼してPM堆積量Qpmが少なくなり過ぎる可能性があるか否かを判断するのに用いられる閾値である。
【0025】
ステップS110でPM堆積量Qpmが閾値Qpmref以上であると判定したときには、エンジン22の燃料カットを実行して粒子状物質が燃焼してもPM堆積量Qpmが少なくなり過ぎる可能性が十分に低いと判断し、エンジン22燃料カットを許可して(ステップS150)、本ルーチンを終了する。
【0026】
ステップS120でフィルタ温度Tfが閾値Tfref未満であると判定したときには、エンジン22の燃料カットを実行しても粒子状物質が燃焼しにくいためにPM堆積量Qpmが少なくなり過ぎる可能性が十分に低いと判断し、エンジン22燃料カットを許可して(ステップS150)、本ルーチンを終了する。
【0027】
ステップS110でPM堆積量Qpmが閾値Qpmref未満であると判定し、且つ、ステップS120でフィルタ温度Tfが閾値Tfref以上であると判定したときには、エンジン22の燃料カットを実行すると粒子状物質が燃焼してPM堆積量Qpmが少なくなり過ぎる可能性があると判断し、手動変速機30の変速段の変更時であるか否かを判定する(ステップS130)。マニュアルトランスミッション車において、手動変速機30の変速段を変更する際には、基本的に、クラッチペダル42の踏込によりクラッチ40が解放状態になり、シフトレバー32の操作に応じて手動変速機30の変速段を変更し、クラッチペダル42の踏込が徐々に戻されることによりクラッチ40がスリップ係合状態を経由して係合状態に戻る。これを踏まえて、手動変速機30の変速段の変更時は、クラッチペダル42の踏込が開始してから終了する(クラッチ40の係合状態が解除されてから係合状態に戻るまで)までの期間であってもよいし、手動変速機30の変速段の変更開始から変更終了までの期間であってもよい。
【0028】
ステップS130で手動変速機30の変速段の変更時でないと判定したときには、エンジン22の燃料カットを禁止して(ステップS140)、本ルーチンを終了する。これにより、エンジン22の燃料カットの実行によりPM堆積量Qpmが少なくなり過ぎる、のを抑制することができる。
【0029】
ステップS130で手動変速機30の変速段の変更時であると判定したときには、エンジン22の燃料カットを許可して(ステップS150)、本ルーチンを終了する。手動変速機30の変速段の変更時にエンジン22の燃料カットを禁止していると、エンジン22が吹き上がり、ドライバビリティが悪化する懸念がある。これに対して、実施形態では、手動変速機30の変速段の変更時にはエンジン22の燃料カットを許可することにより、エンジン22の吹き上がりを抑制し、ドライバビリティの悪化を抑制することができる。なお、手動変速機30の変速段の変更に要する時間は、一般に、数十msec~数百msec程度であり、エンジン22の燃料カットによるPM堆積量Qpmの減少量が比較的少なく、PMフィルタ136による粒子状物質の捕集率の低下量も比較的少ない(許容範囲内である)ことを、発明者らは、実験や解析により確認した。また、エンジン22の吹き上がりをより十分に抑制するためには、手動変速機30の変速段の変更時は、手動変速機30の変速段の変更開始から変更終了までの期間とするよりも、クラッチペダル42の踏込が開始してから終了する(クラッチ40の係合状態が解除されてから係合状態に戻るまで)までの期間とするのが好ましい。
【0030】
ステップS100でフィルタ温度Tfが過熱温度Tfot以上のときには、エンジン22の燃料カットの実行によりPMフィルタ136が過熱する可能性があると判断し、エンジン22の燃料カットを禁止して(ステップS140)、本ルーチンを終了する。これにより、エンジン22の燃料カットの実行によりPMフィルタ136が過熱する、のを抑制することができる。
【0031】
以上説明した本実施形態の車両20では、PM堆積量Qpmが閾値Qpmref未満で且つフィルタ温度Tfが閾値Tfref以上のときには、基本的には、エンジン22の燃料カットを禁止する。ただし、PM堆積量Qpmが閾値Qpmref以下で且つフィルタ温度Tfが閾値Tfref以上のときでも、手動変速機30の変速段の変更時には、エンジン22の燃料カットを許可する。これにより、手動変速機30の変速段の変更時のエンジン22の吹き上がりを抑制し、ドライバビリティの悪化を抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態の車両20では、フィルタ温度Tfが閾値Tfrefよりも高い過熱温度Tfot以上のときには、手動変速機30の変速段の変更時であるか否かに拘わらずに、エンジン22の燃料カットを禁止する。これにより、エンジン22の燃料カットの実行によりPMフィルタ136が過熱する、のを抑制することができる。
【0033】
上述した実施形態では、エンジン22は、ポート噴射弁126および筒内噴射弁127を有するものとした。しかし、エンジン22は、ポート噴射弁126および筒内噴射弁127のうちの一方だけを有してもよい。
【0034】
上述した実施形態では、手動変速機30は、6段変速機として構成されるものとした。しかし、手動変速機30は、4段変速機や5段変速機、8段変速機などとして構成されてもよい。
【0035】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、エンジン22が「エンジン」に相当し、手動変速機30が「手動変速機」に相当し、電子制御ユニット50が「制御装置」に相当する。
【0036】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0037】
以上、本開示を実施するための実施形態について説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本開示は、車両の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
20 車両、22 エンジン、23 クランクシャフト、24 エンジンECU、30 手動変速機、32 シフトレバー、40 クラッチ、42 クラッチペダル、50 電子制御ユニット、51 イグニッションスイッチ、53 アクセルペダル、54 アクセルペダルポジションセンサ、55 ブレーキペダル、56 ブレーキペダルポジションセンサ、58 車速センサ、122 エアクリーナ、123 吸気管、123a エアフローメータ、123t 温度センサ、124 スロットルバルブ、124a スロットルバルブポジションセンサ、125 サージタンク、125a 圧力センサ、126 ポート噴射弁、127 筒内噴射弁、128 吸気バルブ、129 燃焼室、130 点火プラグ、132 ピストン、133 排気バルブ、134 排気管、135 浄化装置、136 PMフィルタ、136a 差圧センサ、137 フロント空燃比センサ、138 リヤ空燃比センサ、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、144 カムポジションセンサ。
図1
図2
図3