(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008215
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】酸発生剤、前記酸発生剤を含む硬化性組成物、及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
C07C 381/12 20060101AFI20250109BHJP
C08G 65/18 20060101ALI20250109BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20250109BHJP
C07C 25/18 20060101ALI20250109BHJP
C07F 5/02 20060101ALI20250109BHJP
C07F 5/00 20060101ALI20250109BHJP
C07C 211/64 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C07C381/12 CSP
C08G65/18
C08G59/40
C07C25/18
C07F5/02 A
C07F5/00 H
C07C211/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110181
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000106139
【氏名又は名称】サンアプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】白石 篤志
(72)【発明者】
【氏名】木津 智仁
【テーマコード(参考)】
4H006
4H048
4J005
4J036
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB40
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB40
4J005AA07
4J005BB04
4J036AD01
4J036AJ09
4J036GA21
4J036GA22
4J036GA24
4J036JA05
(57)【要約】
【課題】溶解性に優れ、光照射処理又は加熱処理を施すことで速やかに硬化して、接着性、耐熱性、及び絶縁性に優れた硬化物を形成する硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明の酸発生剤は、下記式(1)で表される化合物を含む。式(1)中、Ctは1価のカチオンを示す。Arは芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基を示す。Mはホウ素原子、アルミニウム原子、又はガリウム原子を示す。R
1はフッ素原子、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環式基を示す。mは1以上の整数を示し、nは1~4の整数を示す。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物を含む酸発生剤。
【化1】
(式中、Ctは1価のカチオンを示す。Arは芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基を示す。Mはホウ素原子、アルミニウム原子、又はガリウム原子を示す。R
1はフッ素原子、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環式基を示す。mは1以上の整数を示し、nは1~4の整数を示す)
【請求項2】
Ctにおける1価のカチオンが、スルホニウムイオン、ヨードニウムイオン、セレニウムイオン、アンモニウムイオン、及びホスホニウムイオンから選択されるカチオンである請求項1に記載の酸発生剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の酸発生剤とカチオン硬化性化合物を含む硬化性組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項5】
下記式(1-1)で表される化合物。
【化2】
(式中、Ctは1価のカチオンを示す。Arは芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基を示す。M’はホウ素原子又はガリウム原子を示す。R
1はフッ素原子、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環式基を示す。mは1以上の整数を示し、nは1~4の整数を示す。但し、M’がホウ素原子の場合、R
1は芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基である)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の酸発生剤、前記酸発生剤を含む硬化性組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カチオン硬化性化合物を硬化させる酸発生剤としては、例えばベンジルアニリニウム塩が知られている。
【0003】
特許文献1には、カチオン硬化性化合物と共に、下記式で表される化合物を酸発生剤として含有する有機EL表示素子用封止剤が記載されている。
【化3】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体デバイスは電気的信頼性が求められ、イオン性物質の混入は避けなければならない。そのため、有機EL表示素子等の半導体素子の樹脂封止パッケージでは、封止樹脂(封止剤の硬化物)に電気絶縁性が求められる。
【0006】
しかし、酸発生剤が封止剤中に溶解せずに含まれると、光照射処理又は加熱処理を施しても、得られる硬化物に酸発生剤が残存し易く、硬化物中に残存する酸発生剤が電気的特性を悪化させる原因となる。また、所期の硬化性、接着性、及び耐熱性が得られないことも問題である。
【0007】
特許文献1に記載の酸発生剤は樹脂へ溶解し難く、不溶分が残存し易いが、封止剤中に酸発生剤の不溶分が残存しないことを確認するのは極めて困難である。そのため、十二分の溶解作業で酸発生剤の溶解を担保していた。そのため、溶解作業に多くの時間を費やしており、作業効率が悪かった。
【0008】
従って、本発明の目的は、溶解性に優れ、短時間の溶解作業により、硬化性に優れ、接着性、耐熱性、及び絶縁性に優れた硬化物を形成する硬化性組成物を製造できる新規の酸発生剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、光照射処理又は加熱処理を施すことで速やかに硬化して、接着性、耐熱性、及び絶縁性に優れた硬化物を形成する硬化性組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、接着性、耐熱性、及び絶縁性に優れた硬化物を提供することにある。
本発明の他の目的は、光又は熱酸発生剤として有用な新規の化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記式で表される化合物はカチオン硬化性化合物への溶解性に優れ、前記化合物を使用すれば効率よく硬化性組成物を製造することができること、前記化合物を使用して得られる硬化性組成物は硬化性に優れ、接着性、耐熱性、及び絶縁性に優れる硬化物を形成できることを見いだした。
本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される化合物を含む酸発生剤を提供する。
【化1】
(式中、Ctは1価のカチオンを示す。Arは芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基を示す。Mはホウ素原子、アルミニウム原子、又はガリウム原子を示す。R
1はフッ素原子、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環式基を示す。mは1以上の整数を示し、nは1~4の整数を示す)
【0011】
本発明は、また、Ctにおける1価のカチオンが、スルホニウムイオン、ヨードニウムイオン、セレニウムイオン、アンモニウムイオン、及びホスホニウムイオンから選択されるカチオンである請求項1に記載の酸発生剤を提供する。
【0012】
本発明は、また、前記酸発生剤とカチオン硬化性化合物を含む硬化性組成物を提供する。
【0013】
本発明は、また、前記硬化性組成物の硬化物を提供する。
【0014】
本発明は、また、下記式(1-1)で表される化合物を提供する。
【化2】
(式中、Ctは1価のカチオンを示す。Arは芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基を示す。M’はホウ素原子又はガリウム原子を示す。R
1はフッ素原子、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環式基を示す。mは1以上の整数を示し、nは1~4の整数を示す。但し、M’がホウ素原子の場合、R
1は芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基である)
【発明の効果】
【0015】
本発明の酸発生剤はカチオン硬化性化合物への溶解性に優れる。そのため、前記酸発生剤は、カチオン硬化性化合物と混合し、短時間撹拌するだけで、カチオン硬化性化合物に完全に溶解させることができ、カチオン硬化性化合物中に均一に分散させることができる。そのため、得られる硬化性組成物はカチオン硬化性に優れ、光照射処理又は加熱処理を施すことで速やかに硬化して、接着性、耐熱性、及び絶縁性に優れた硬化物を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[酸発生剤]
本発明の酸発生剤は、下記式(1)で表される化合物(以後、「化合物(1)」と称する場合がある)を含む。
【化4】
(式中、Ctは1価のカチオンを示す。Arは芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基を示す。Mはホウ素原子、アルミニウム原子、又はガリウム原子を示す。R
1はフッ素原子、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環式基を示す。mは1以上の整数を示し、nは1~4の整数を示す)
【0017】
前記Mとしては、なかでもホウ素原子又はガリウム原子が好ましい。
【0018】
従って、前記酸発生剤は、下記式(1-1)で表される化合物が好ましい。
【化5】
(式中、Ctは1価のカチオンを示す。Arは芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基を示す。M’はホウ素原子又はガリウム原子を示す。R
1はフッ素原子、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環式基を示す。mは1以上の整数を示し、nは1~4の整数を示す)
【0019】
上記式中のn個のArは同一であっても良いし、異なっていても良い。また、上記式中のm個のR1も、同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0020】
前記芳香族炭化水素基としては、C6-14(特に、C6-10)芳香族炭化水素基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0021】
前記芳香族複素環式基は、芳香族複素環の構造式から1個の水素原子を除いた基である。前記芳香族複素環としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、フラン環、チオフェン環等の5員環;ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環等の6員環;キノリン環、ベンゾフラン環等の縮合環等が挙げられる。
【0022】
前記Arは、なかでも芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0023】
前記R1は、なかでもフッ素原子又は芳香族炭化水素基が好ましく、フッ素原子又はフェニル基が特に好ましく、フッ素原子が最も好ましい。
【0024】
上記式(1)(1-1)中のm個のSF4R1基について、その少なくとも1つはSF5基であることが好ましく、m個全てがSF5基であることが特に好ましい。
【0025】
従って、上記式(1)で表される化合物は下記式(1F)で表される化合物が好ましく、上記式(1-1)で表される化合物は下記式(1-1F)で表される化合物が好ましい。下記式中、Ct、Ar、M、M’、m、nは前記に同じである。
【化6】
【0026】
前記Arは、上記式中に示される置換基(SF4R1基又はSF5基)以外に、他の置換基を1種又は2種以上有していても良い。他の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、C1-4アルコキシ基、C6-10アリールオキシ基、C7-16アラルキルオキシ基、C1-4アシルオキシ基等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等のC1-4アルキル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基等のC2-4アルケニル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基等のC2-4アルキニル基等)、C3-8シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等のC6-15アリール基)、チオ基、置換チオ基(例えば、置換基を有していても良いC1-6アルキルチオ基、C6-10アリールチオ基等であり、前記置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基、カルボキシ基等が挙げられる)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(例えば、C1-4アルコキシカルボニル基、C6-10アリールオキシカルボニル基、C7-16アラルキルオキシカルボニル基等)、アシル基(ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基等のC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基等のC7-14芳香族アシル基)、置換又は無置換カルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル等のC1-4アルキル置換カルバモイル、フェニルカルバモイル基等のC6-10アリール置換カルバモイル基)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、複素環式基等が挙げられる。
【0027】
前記mは、上記式中に示されるSF4R1基又はSF5基の数(Arに結合するSF4R1基又はSF5基の数)を示し、1以上の整数である。溶解性に優れる観点から、前記mは1~5の整数が好ましく、1~3の整数が特に好ましく、1又は2が最も好ましい。
【0028】
前記nは、上記式中に示されるnが付された括弧内の基の数を示し、1~4の整数である。溶解性に優れる観点から、前記nは2~4の整数が好ましく、3又は4が特に好ましく、4が最も好ましい。
【0029】
前記化合物(1)を構成するアニオンとしては、下記式(A-1)~(A-24)で表されるアニオンが好ましい。
【化7】
【化8】
【0030】
前記Ctは1価のカチオンを示す。前記カチオンは、好ましくは有機カチオン、特に好ましくはオニウムカチオンである。
【0031】
前記オニウムカチオンには、スルホニウムイオン、ヨードニウムイオン、セレニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン等が含まれる。
【0032】
前記スルホニウムイオンとしては、例えば、下記式(s)で表されるスルホニウムイオンが挙げられる。
【化9】
【0033】
上記式(s)中、R11、R12は、同一又は異なって1価の炭化水素基、1価の複素環式基、及び前記基の2個以上が単結合又は連結基を介して結合してなる1価の基から選択される基を示す。R11、R12は互いに連結して隣接するS+と共に環を形成していても良い。
【0034】
前記1価の炭化水素基には、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した1価の基が含まれる。
【0035】
1価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~20(=C1-20)の脂肪族炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基等の炭素数1~20(好ましくは1~10、特に好ましくは1~3)程度のアルキル基;ビニル基、アリル基、1-ブテニル基等の炭素数2~20(好ましくは2~10、特に好ましくは2~3)程度のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等の炭素数2~20(好ましくは2~10、特に好ましくは2~3)程度のアルキニル基等が挙げられる。
【0036】
1価の脂環式炭化水素基としては、C3-20脂環式炭化水素基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の3~20員(好ましくは3~15員、特に好ましくは5~8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロへキセニル基等の3~20員(好ましくは3~15員、特に好ましくは5~8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン-1-イル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン-3-イル基等の橋かけ環式炭化水素基等が挙げられる。
【0037】
1価の芳香族炭化水素基としては、C6-14(特に、C6-10)芳香族炭化水素基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0038】
脂環式炭化水素基と芳香族炭化水素基が結合した1価としては、ベンジル基、フェニルエチル基等のC7-18アラルキル基等が挙げられる。
【0039】
また、前記脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
【0040】
前記炭化水素基は置換基を有していても良い。前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、C1-4アルコキシ基、C6-10アリールオキシ基、C7-16アラルキルオキシ基、C1-4アシルオキシ基等)、チオ基、置換チオ基(例えば、置換基を有していても良いC1-6アルキルチオ基、C6-10アリールチオ基等であり、前記置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、スルホ基、カルボキシ基等が挙げられる)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(例えば、C1-4アルコキシカルボニル基、C6-10アリールオキシカルボニル基、C7-16アラルキルオキシカルボニル基等)、アシル基(ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基等のC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基等のC7-14芳香族アシル基)、置換又は無置換カルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル等のC1-4アルキル置換カルバモイル、フェニルカルバモイル基等のC6-10アリール置換カルバモイル基)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、複素環式基等が挙げられる。また、前記炭化水素基は、パーフルオロメチル基又はパーフルオロメチレン基を含む基(例えば、C1-10ハロアルキル基等)を有していても良い。
【0041】
前記1価の複素環式基は、複素環の構造式から1個の水素原子を除いた基である。前記複素環には、芳香族複素環及び非芳香族複素環が含まれる。前記複素環式基を構成する複素環には、芳香族複素環及び非芳香族複素環が含まれる。このような複素環としては、環を構成する原子に炭素原子と少なくとも1種のヘテロ原子(例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子等)を有する3~20員環(好ましくは3~10員環、特に好ましくは4~6員環)、及びこれらの縮合環を挙げることができる。具体的には、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキシラン環等の3員環;オキセタン環等の4員環;フラン環、テトラヒドロフラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、γ-ブチロラクトン環等の5員環;4-オキソ-4H-ピラン環、テトラヒドロピラン環、モルホリン環等の6員環;ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、4-オキソ-4H-クロメン環、クロマン環、イソクロマン環等の縮合環;3-オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン-2-オン環、3-オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン-2-オン環等の橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環等の5員環;4-オキソ-4H-チオピラン環等の6員環;ベンゾチオフェン環等の縮合環等)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール環、ピロリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環等の5員環;イソシアヌル環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の6員環;インドール環、インドリン環、キノリン環、アクリジン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、プリン環等の縮合環等)等が挙げられる。
【0042】
前記複素環式基は置換基を有していても良い。前記置換基としては、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等のC1-4アルキル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基等のC2-4アルケニル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基等のC2-4アルキニル基等)、C3-8シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等のC6-15アリール基)等が挙げられる。
【0043】
R11、R12が互いに連結して隣接するS+と共に形成していても良い環は、式中に記載のS+を少なくとも含む複素環である。前記複素環は、前記S+以外にもヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等)を含んでいても良い。前記複素環は、例えば5~6員の複素環である。
【0044】
上記式(s)中に示されるベンゼン環には、アルキル基(例えば、C1-5アルキル基)やアリール基(例えば、C6-15アリール基)が結合していても良い。また、前記ベンゼン環には、芳香族炭化水素環が縮合していてもよい。更に、前記ベンゼン環や、前記ベンゼン環に結合するアルキル基、アリール基、前記ベンゼン環と芳香族炭化水素環との縮合環には、置換基が結合していても良い。前記置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、SF5基、ハロゲン原子、シリル基、置換オキシ基(例えば、C1-4アルコキシ基、C6-15アリールオキシ基、C7-16アラルキルオキシ基、C1-4アシルオキシ基等)、置換チオ基(例えば、C1-6アルキルチオ基、C6-15アリールチオ基)等が挙げられる。
【0045】
また、前記スルホニウムイオンは、後述のカチオン硬化性化合物に結合していても良い。すなわち、前記スルホニウムイオンは、その構造内に、後述のカチオン硬化性化合物を含んでいても良い。
【0046】
上記式(s)で表されるスルホニウムイオンとしては、なかでも、下記式(s-1)で表されるトリアリールスルホニウムイオンや、下記式(s-2)で表されるスルホニウムイオンが好ましい。
【化10】
【0047】
上記式(s-2)で表されるスルホニウムイオンの具体例を以下に示す。下記式中に示されるベンゼン環には前記と同じ置換基が結合していても良い。
【化11】
【0048】
前記ヨードニウムイオンとしては、例えば、下記式(i)で表されるヨードニウムイオン等が挙げられる。
【化12】
【0049】
上記式(i)中に示されるベンゼン環にはアルキル基(例えば、C1-5アルキル基)やアリール基(例えば、C6-15アリール基)が結合していても良い。また、前記ベンゼン環には、芳香族炭化水素環が縮合していてもよい。更に、前記ベンゼン環や、前記ベンゼン環に結合するアルキル基、アリール基、前記ベンゼン環と芳香族炭化水素環との縮合環には、置換基が結合していても良い。前記置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、SF5基、ハロゲン原子、シリル基、置換オキシ基(例えば、C1-4アルコキシ基、C6-15アリールオキシ基、C7-16アラルキルオキシ基、C1-4アシルオキシ基等)、置換チオ基(例えば、C1-6アルキルチオ基、C6-15アリールチオ基)等が挙げられる。
【0050】
前記ヨードニウムイオンの具体例としては、例えば、p-クメニル(p-トリル)ヨードニウムイオン、ジフェニルヨードニウムイオン、ジ-p-トリルヨードニウムイオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムイオン、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウムイオン、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウムイオン、(4-オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムイオンなどのアリールヨードニウムイオン等が挙げられる。
【0051】
前記セレニウムイオンとしては、例えば、トリフェニルセレニウムイオン、トリ-p-トリルセレニウムイオン、トリ-o-トリルセレニウムイオン、トリス(4-メトキシフェニル)セレニウムイオン、1-ナフチルジフェニルセレニウムイオン、トリス(4-フルオロフェニル)セレニウムイオン、トリ-1-ナフチルセレニウムイオン、トリ-2-ナフチルセレニウムイオンなどのアリールセレニウムイオン等が挙げられる。
【0052】
前記アンモニウムイオンとしては、例えば、下記式(n)で表されるアンモニウムイオン等が挙げられる。
【化13】
【0053】
上記式(n)中、R13~R16は同一又は異なって1価の炭化水素基、1価の複素環式基、及び前記基の2個以上が単結合又は連結基を介して結合してなる1価の基から選択される基を示す。R13~R16から選択される2個以上の基は互いに連結して隣接するN+と共に環を形成していても良い。
【0054】
前記1価の炭化水素基、1価の複素環式基、及び前記基の2個以上が単結合又は連結基を介して結合してなる1価の基としては、R11、R12と同様の例が挙げられる。
【0055】
前記アンモニウムイオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、テトラオクチルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、トリメチルオクチルアンモニウムイオン、ベンジルトリメチルアンモニウム、ジベンジルジメチルアンモニウム、トリベンジルメチルアンモニウム、テトラベンジルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、ジフェニルジメチルアンモニウム、トリフェニルメチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム、ジアルキルイミダゾリウムなどの4級アンモニウムイオン等が挙げられる。
【0056】
前記ホスホニウムイオンとしては、例えば、テトラフェニルホスホニウム、テトラ-p-トリルホスホニウム、テトラキス(2-メトキシフェニル)ホスホニウム、テトラキス(3-メトキシフェニル)ホスホニウム、テトラキス(4-メトキシフェニル)ホスホニウムなどのテトラアリールホスホニウム;トリフェニルベンジルホスホニウム、トリフェニルフェナシルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム、トリフェニルブチルホスホニウム等のトリアリールホスホニウム;トリエチルベンジルホスホニウム、トリブチルベンジルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、トリエチルフェナシルホスホニウム、トリブチルフェナシルホスホニウム等のテトラアルキルホスホニウム等が挙げられる。
【0057】
前記有機カチオンとしては、酸発生効率に優れる点から、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、又はヨードニウムイオンが好ましい。
【0058】
前記酸発生剤は化合物(1)以外に、更に他の成分を含有していても良いが、前記酸発生剤に含まれる分解により酸を発生する化合物全量において、化合物(1)の占める割合は、例えば80重量%以上、好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上、最も好ましくは99重量%以上、とりわけ好ましくは99.9重量%以上である。尚、前記割合の上限値は100重量%である。
【0059】
前記酸発生剤はカチオン硬化性化合物への溶解性に優れ、例えば、25℃において、カチオン硬化性化合物としての3’,4’-エポキシシクロへキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」、(株)ダイセル製)100重量部に、前記酸発生剤1重量部を添加して、長さ2cmのスターラーチップで攪拌速度100rpmの条件で撹拌した場合に、前記酸発生剤が完全に溶解までに要する時間は、例えば5分以下、好ましくは3分以下、更に好ましくは2分以下である。前記酸発生剤が完全に溶解までに要する時間の下限値は、例えば0.1分である。
【0060】
前記酸発生剤は光感応性に優れ、光照射処理(例えば、波長365nmの光を、照射エネルギー量として10~10000mJ/cm2照射する処理)を施せば、速やかに分解して、酸を発生する。
【0061】
また、前記酸発生剤は熱感応性に優れ、加熱処理(例えば、70~120℃の温度で30~120分加熱する処理)を施せば、速やかに分解して、酸を発生する。
【0062】
従って、前記酸発生剤は光酸発生剤又は熱酸発生剤として好適に使用することができる。
【0063】
[酸発生剤の製造方法]
前記化合物(1)は、Mに結合する基をn個有するが、n個の前記基がすべて同じ構造の基である化合物は、例えば、下記反応[1][2]を経て製造することができる。
【化14】
【0064】
上記式中、Ct、Ar、M、R1、m、nは前記に同じである。Xはハロゲン原子を示す。R2は有機基を示し、好ましくは炭化水素基である。n’は1~3の整数を示す。
【0065】
反応[1]は、まず、グリニャール試薬(R2-MgX)と式(a)で表される化合物を反応させ、次いで式(b)で表される化合物と反応させ、その後、炭酸ナトリウムを反応させて、式(ab)で表される化合物を得る反応である。
【0066】
反応[1]は、溶剤の存在下で行うことができる。前記溶剤としては、グリニャール反応で用いられる一般的な溶剤(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン等から選択される1種又は2種以上の溶剤)を使用することができる。
【0067】
反応[2]は、反応[1]を経て得られた式(ab)で表される化合物(以後、「化合物(ab)」と称する場合がある)にAXを反応させて塩交換を行い、式(1)で表される化合物(=化合物(1))を得る反応である。
【0068】
前記反応に付する化合物(ab)とAXのモル比(化合物(ab)/AX)は、例えば1/3~3/1、好ましくは1/2~2/1である。
【0069】
前記塩交換反応は、溶剤の存在下で行うことができる。前記溶剤としては、例えば、水、酢酸エチル、ジクロロメタン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
前記反応温度は、例えば15~35℃である。
【0071】
また、前記化合物(1)のうち、式中のnが4であり、且つMに結合する4個の基が2種の異なる基である化合物(すなわち、下記式(1’)で表される化合物)は、例えば、下記反応[1-1][1-2][2]を経て製造することができる。
【化15】
【0072】
上記式中、Ct、Ar、M、R1、m、nは前記に同じである。Xはハロゲン原子を示す。R2は有機基を示し、好ましくは炭化水素基、特に好ましくは炭素数1~10のアルキル基である。n’は1~3の整数を示す。m’は1以上の整数を示す。但し、m’はmとは異なる整数を示す。
【0073】
反応[1-1]は、まず、グリニャール試薬(R2-MgX)と式(a’)で表される化合物を反応させ、次いで式(b’)で表される化合物と反応させ、その後、炭酸ナトリウムを反応させて、式(a’b’)で表される化合物を得る反応である。
【0074】
反応[1-2]は、まず、グリニャール試薬(R2-MgX)と式(a)で表される化合物を反応させ、得られた生成物を、反応[1-1]を経て得られた式(a’b’)で表される化合物と反応させ、その後、炭酸ナトリウムを反応させて、式(a’b’b)で表される化合物を得る反応である。
【0075】
反応[1-1][1-2]は、溶剤の存在下で行うことができる。前記溶剤としては、グリニャール反応で用いられる一般的な溶剤(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン等から選択される1種又は2種以上の溶剤)を使用することができる。
【0076】
反応[2]は、反応[1-1][1-2]を経て得られた式(a’b’b)で表される化合物にAXを反応させて塩交換を行い、式(1’)で表される化合物を得る反応であり、化合物(ab)にAXを反応さる反応[2]と同様の方法で行うことができる。
【0077】
上記反応の雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法でも行うことができる。
【0078】
上記反応終了後は、得られた反応生成物を、一般的な分離精製処理(例えば、沈殿、洗浄、濾過等)に付しても良い。
【0079】
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、前記酸発生剤とカチオン硬化性化合物を含む。前記酸発生剤とカチオン硬化性化合物はそれぞれ1種を単独で含有しても良いし、2種以上を組み合わせて含有しても良い。
【0080】
前記酸発生剤の含有量は、カチオン硬化性化合物100重量部に対して、例えば0.05~20重量部、好ましくは0.1~10重量部である。
【0081】
前記カチオン硬化性化合物は、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等から選択される1種又は2種以上のカチオン硬化性基を有する化合物である。尚、前記エポキシ基とは3員の環状エーテル骨格を含む基であり、オキセタニル基とは4員の環状エーテル骨格を含む基である。
【0082】
前記カチオン硬化性化合物の1分子中のカチオン硬化性基数は1個以上であり、好ましくは1~4個、より好ましくは2~4個、特に好ましくは2~3個である。
【0083】
前記カチオン硬化性化合物のカチオン硬化性基1個当たりの分子量(例えば、エポキシ当量、オキセタン当量などのカチオン硬化性基当量)は、例えば50~500g/eq、好ましくは100~400g/eq、さらに好ましくは100~300g/eqである。
【0084】
前記カチオン硬化性化合物としては、例えば、カチオン硬化性基としてエポキシ基を有する化合物(=エポキシ化合物)、カチオン硬化性基としてオキセタニル基を有する化合物(=オキセタン化合物)、カチオン硬化性基としてビニルエーテル基を有する化合物(=ビニルエーテル化合物)、カチオン硬化性基としてエポキシ基とオキセタニル基を有する化合物、カチオン硬化性基としてエポキシ基とビニルエーテル基を有する化合物、カチオン硬化性基としてオキセタニル基とビニルエーテル基を有する化合物等が挙げられる。
【0085】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物には、例えば、エポキシ変性シロキサン化合物、脂環式エポキシ化合物(脂環式エポキシ樹脂)、芳香族エポキシ化合物(芳香族エポキシ樹脂)、脂肪族エポキシ化合物(脂肪族エポキシ樹脂)等が含まれる。
【0086】
<エポキシ変性シロキサン化合物>
前記エポキシ変性シロキサン化合物としては、例えば、エポキシ変性シリコーンやエポキシ変性ポリオルガノシルセスキオキサン等が挙げられる。
【0087】
<脂環式エポキシ化合物>
上記脂環式エポキシ化合物としては、分子内に1個以上の脂環と1個以上のエポキシ基とを有する公知乃至慣用の化合物が挙げられ、特に限定されないが、例えば、以下の化合物等が挙げられる。
(1)脂環エポキシ基(=分子内に脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基)を有する化合物
(2)脂環とグリシジルエーテル基を有する化合物
【0088】
前記脂環エポキシ基を有する化合物(1)としては、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサンメタジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)等が挙げられる。
【0089】
前記脂環とグリシジルエーテル基を有する化合物(2)としては、例えば、脂環式アルコール(特に、脂環式多価アルコール)のグリシジルエーテルが挙げられる。より詳しくは、例えば、2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパンなどのビスフェノールA型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールA型エポキシ化合物);ビス[o,o-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[o,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[p,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタンなどのビスフェノールF型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールF型エポキシ化合物);水素化ビフェノール型エポキシ化合物;水素化フェノールノボラック型エポキシ化合物;水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;ビスフェノールAの水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;水素化ナフタレン型エポキシ化合物;トリスフェノールメタン型エポキシ化合物の水添物等が挙げられる。
【0090】
<芳香族エポキシ化合物>
前記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール類[例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等]と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;これらのエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を上記ビスフェノール類とさらに付加反応させることにより得られる高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール類[例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等]とアルデヒド[例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等]とを縮合反応させて得られる多価アルコール類を、さらにエピハロヒドリンと縮合反応させることにより得られるノボラック・アルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フルオレン環の9位に2つのフェノール骨格が結合し、かつこれらフェノール骨格のヒドロキシ基から水素原子を除いた酸素原子に、それぞれ、直接又はアルキレンオキシ基を介してグリシジル基が結合しているエポキシ化合物等が挙げられる。
【0091】
<脂肪族エポキシ化合物>
前記脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、q価の環状構造を有しないアルコール(qは自然数である)のグリシジルエーテル;一価又は多価カルボン酸[例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸等]のグリシジルエステル;エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、エポキシ化ひまし油等の二重結合を有する油脂のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン等のポリオレフィン(ポリアルカジエンを含む)のエポキシ化物等が挙げられる。尚、上記q価の環状構造を有しないアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール等の一価のアルコール;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の二価のアルコール;グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等の三価以上の多価アルコール等が挙げられる。また、q価のアルコールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等であってもよい。
【0092】
(オキセタン化合物)
前記オキセタン化合物としては、例えば、3,3-ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス([1-エチル(3-オキセタニル)]メチル)エーテル、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、4,4’-ビス[3-エチル-(3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4-ビス([(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル)ベンゼン、3-エチル-3([(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル)オキセタン、キシリレンビスオキセタン等を挙げることができる。
【0093】
(ビニルエーテル化合物)
前記ビニルエーテル化合物としては、例えば、フェニルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル;n-ブチルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2-ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシル基を有するビニルエーテル;ハイドロキノンジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等の多官能ビニルエーテルなどが挙げられる。
【0094】
前記カチオン硬化性化合物としては、脂環エポキシ基を1個以上(好ましくは1~4個)有する脂環式エポキシ化合物(特に、脂環エポキシ基を2個以上(好ましくは2~4個)有する多官能脂環式エポキシ化合物)を少なくとも含有することが好ましい。
【0095】
前記カチオン硬化性化合物は、前記脂環式エポキシ化合物と、グリシジルエーテル基を1個以上(好ましくは1~4個)有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物及び/又はオキセタニル基を1個以上(好ましくは1~4個)有するオキセタン化合物を併用しても良い。併用する場合、これらの配合割合[脂環式エポキシ化合物/(グリシジルエーテル型エポキシ化合物及びオキセタン化合物);重量比]は、例えば95/5~5/95、好ましくは95/5~30/70、より好ましくは95/5~40/60、更に好ましくは95/5~60/40、特に好ましくは90/10~65/35、最も好ましくは85/15~65/35である。
【0096】
前記硬化性組成物は、上記成分以外にも必要に応じて他の成分を1種又は2種以上含有していても良い。他の成分としては、例えば、増感剤、増感助剤、酸化防止剤、安定化剤、界面活性剤、溶剤、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、シランカップリング剤、充填材、導電性粒子、重合禁止剤、光安定剤、可塑剤、消泡剤、発泡剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、硬化遅延剤、イオン吸着体、顔料、染料、蛍光体、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、ラジカル硬化性化合物、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、SBS、SEBS等を挙げることができる。これらの含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、硬化性組成物全量(100重量%)の、例えば50重量%以下、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。これらの含有量は、硬化性組成物全量(100重量%)の、例えば0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0097】
前記硬化性組成物は、前記酸発生剤とカチオン硬化性化合物と、必要に応じて添加される他の成分を、自公転式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、ビーズミル等の一般的に知られる混合用機器を使用して均一に混合することにより製造することができる。尚、各成分は、同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。
【0098】
前記硬化性組成物の用途は特に制限がなく、例えば、塗料、コーティング剤、各種被覆材料(ハードコート、耐汚染被覆材、防曇被覆材、耐触被覆材、光ファイバー等)、粘着テープの背面処理剤、粘着ラベル用剥離シート(剥離紙、剥離プラスチックフィルム、剥離金属箔等)の剥離コーティング材、印刷板、歯科用材料(歯科用配合物、歯科用コンポジット)、インキ、インクジェットインキ、ポジ型レジスト(回路基板、CSP、MEMS素子等の電子部品製造の接続端子や配線パターン形成等)、レジストフィルム、液状レジスト、ネガ型レジスト(半導体素子等の表面保護膜、層間絶縁膜、平坦化膜等の永久膜材料等)、MEMS用レジスト、ポジ型感光性材料、ネガ型感光性材料、各種接着剤(各種電子部品用仮固定剤、HDD用接着剤、ピックアップレンズ用接着剤、FPD用機能性フィルム(偏向板、反射防止膜等)用接着剤等)、ホログラフ用樹脂、FPD材料(カラーフィルター、ブラックマトリックス、隔壁材料、フォトスペーサー、リブ、液晶用配向膜、FPD用シール剤等)、光学部材、成形材料(建築材料用、光学部品、レンズ)、注型材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め材、シーリング材、封止材、光半導体(LED)封止材、光導波路材料、ナノインプリント材料、光造形用、及びマイクロ光造形用材料等が挙げられる。
【0099】
前記硬化性組成物が含有する酸発生剤は、カチオン硬化性化合物への溶解性に優れ、短時間の溶解作業により確実に溶解させることができる。また、経時での析出を抑制することもできる。そのため、前記硬化性組成物は効率よく調製することができ、調製後は、使用するまでに時間的余裕があり、取り扱い性に優れる。
【0100】
前記硬化性組成物は酸発生剤を完全に溶解した状態で含有するため硬化性に優れる。そして、得られる硬化物は電気絶縁性に優れ、酸発生剤の不溶分が原因となる帯電性を示さない。
【0101】
[硬化物]
本発明の硬化物は、前記硬化性組成物の硬化物である。
【0102】
前記硬化物は前記硬化性組成物を硬化させることにより得られる。
【0103】
前記硬化性組成物は、例えば、光照射処理を施すことで硬化させることができる。光照射処理に使用する光線としては、例えば、紫外線、電子線、X線、放射線等が挙げられる。なかでも、紫外線が経済的に最も好ましい。紫外線の光源としては、例えば、紫外線レーザ、水銀ランプ、キセノンレーザ、メタルハライドランプ等が挙げられる。前記光線の照射エネルギー量は、例えば10~10000mJ/cm2である。
【0104】
前記硬化性組成物は、また、加熱処理を施すことにより硬化させることもできる。加熱温度は例えば70~120℃である。加熱時間は例えば0.5~2時間である。
【0105】
前記硬化物は、光照射処理又は加熱処理でも分解せずに残存する酸発生剤を含有せず、若しくは光照射処理又は加熱処理でも分解せずに残存する酸発生剤の含有量が極めて低く、前記硬化物中に含まれるイオン成分を水で抽出して得られる抽出水(より具体的には、実施例に記載の方法で得られる抽出水)の電気伝導度は、例えば50μS/cm未満、好ましくは40μS/cm以下、特に好ましくは30μS/cm以下、最も好ましくは25μS/cm未満である。
【0106】
前記硬化物は残存する酸発生剤を含有しないか、含有するとしても極めて少量であるため、絶縁性に優れる。そのため、前記硬化物を封止用途に使用すれば、短絡防止性に優れ、高い信頼性を有する半導体素子が得られる。
【0107】
以上、本発明の各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において、適宜、構成の付加、省略、置換、及び変更が可能である。
【実施例0108】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0109】
調製例1 ナトリウムテトラキス[3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル]ボレート(A-3)の調製
窒素雰囲気下で十分に乾燥させた200mLの4つ口フラスコに、1-ブロモ-3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン8.0gおよびの無水ジエチルエーテル80mLを加えた。フラスコ内の溶液を-78℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムクロリドジエチルエーテル溶液(1mol/L)19.6mLを滴下した。フラスコ内の混合物を-78℃で5分間、続いて0℃で25分間撹拌し、次いで60分間かけて室温まで昇温させた。
その後、一旦0℃に冷却し、三塩化ホウ素へプタン溶液(1mol/L)3.2mLを加え、0℃で15分間撹拌し、室温でさらに19時間撹拌した。
得られた反応液を撹拌しながら2%炭酸ナトリウム水溶液800mLに添加し、さらに1時間激しく撹拌した。
水層をジエチルエーテル200mLにて4回抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄、セライトで濾過した後、溶媒を減圧下で除去した。残渣を50mLのアセトンに溶解し、ヘキサンを徐々に加えると白色固体が沈殿した。
液相をデカンテーションにより除去し、残った固体をヘキサンで洗浄し、減圧下で乾燥させた。得られた固体を300mLのトルエンに分散させ、共沸蒸留によって1時間乾燥させた。濾過により固体を取り出し、減圧下で一晩乾燥させることにより白色固体2.7gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が下記表1に記載のアニオン前駆体(A-3)であることを確認した(収率61%)。
【0110】
調製例2 ナトリウムテトラキス(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート(A-1)の調製
1-ブロモ-3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン8.0gを1-ブロモ-4-ペンタフルオロスルファニルベンゼン5.5gに変更した以外は調製例1と同様にして白色固体を得た(2.0g)。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が下記表1に記載のアニオン前駆体(A-1)であることを確認した(収率74%)。
【0111】
調製例3 ナトリウムテトラキス[3,4-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル]ボレート(A-2)の調製
1-ブロモ-3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン8.0gを1-ブロモ-3,4-ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン8.0gに変更した以外は調製例1と同様にして白色固体を得た(2.9g)。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が下記表1に記載のアニオン前駆体(A-2)であることを確認した(収率67%)。
【0112】
調製例4 ナトリウムテトラキス(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート(A-4)の調製
1-ブロモ-3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン8.0gを1-ブロモ-3-ペンタフルオロスルファニルベンゼン5.5gに変更した以外は調製例1と同様にして白色固体を得た(1.9g)。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が下記表1に記載のアニオン前駆体(A-4)であることを確認した(収率70%)。
【0113】
調製例5 ナトリウムテトラキス[2,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル]ボレート(A-5)の調製
1-ブロモ-3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン8.0gを1-ブロモ-2,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン8.0gに変更した以外は調製例1と同様にして白色固体を得た(1.5g)。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が下記表1に記載のアニオン前駆体(A-5)であることを確認した(収率35%)。
【0114】
調製例6 ナトリウムテトラキス[3,4,5-トリス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル]ボレート(A-6)の調製
1-ブロモ-3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン8.0gを1-ブロモ-3,4,5-トリス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン10.5gに変更した以外は調製例1と同様にして白色固体を得た(1.6g)。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が下記表1に記載のアニオン前駆体(A-6)であることを確認した(収率27%)。
【0115】
調製例7 ナトリウムトリス(3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)フェニルボレート(A-9)の調製
三塩化ホウ素へプタン溶液(1mol/L)3.2mLをジクロロフェニルボラン0.78gに変更した以外は調製例1と同様にして白色固体を得た(3.2g)。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が下記表2に記載のアニオン前駆体(A-9)であることを確認した(収率60%)。
【0116】
調製例8 ナトリウムトリス(3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート(A-12)の調製
Organic Letters,2013,15,20,p5147記載の方法により、(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)トリフルオロボレートカリウム塩を調製した。
三塩化ホウ素へプタン溶液(1mol/L)3.2mLを(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)トリフルオロボレートカリウム塩1.5gに変更した以外は調製例1と同様にして白色固体を得た(3.7g)。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が下記表2に記載のアニオン前駆体(A-12)であることを確認した(収率62%)。
【0117】
調製例9 リチウムテトラキス(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ガレート(A-13)の調製
窒素雰囲気下で十分に乾燥させた300mLの4つ口フラスコに、4-ブロモペンタフルオロスルファニルベンゼン11.3gおよび無水ジエチルエーテル100mLを加えた。フラスコ内の溶液を-78℃に冷却し、撹拌しながらtert-ブチルリチウムペンタン溶液(1.6mol/L)25mLを滴下し、15分撹拌した。その後、更に塩化ガリウム(III)1.2gを加えて30分撹拌した。フラスコ内の反応液を室温まで昇温し19時間撹拌した。
反応液を氷浴にて冷却し、水を加えてクエンチした。その後、反応液を水300mLに加え、1時間攪拌した。分液後、有機層を除去し、水層を酢酸エチル100mLにて3回抽出し、有機層を合わせ、水100mLで3回洗浄した。有機層を脱溶剤し、得られた油状物をヘキサンで再結晶して、微黄色固体3.4gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が下記表2に記載のアニオン前駆体(A-13)であることを確認した(収率56%)。
【0118】
調製例10 リチウムテトラキス[3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル]ガレート(A-15)の調製
4-ブロモペンタフルオロスルファニルベンゼン11.3gを1-ブロモ-3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン16.3gに変更した以外は調製例9と同様にして微黄色固体を得た(6.3g)。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が下記表2に記載のアニオン前駆体(A-15)であることを確認した(収率67%)。
【0119】
調製例11 ナトリウムトリス(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)フェニルガレート(A-20)の調製
三塩化ホウ素へプタン溶液(1mol/L)3.2mLをジクロロフェニルガリウム1.07gに、1-ブロモ-3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン8.0gを1-ブロモ-3-ペンタフルオロスルファニルベンゼン5.5gに変更した以外は調製例1と同様にして白色固体を得た(2.2g)。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が下記表2に記載のアニオン前駆体(A-20)であることを確認した(収率58%)。
【0120】
調製例12 ナトリウムトリス(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)(4-フルオロフェニル)ガレート(A-22)の調製
三塩化ホウ素へプタン溶液(1mol/L)3.2mLをジクロロ-4-フルオロフェニルガリウム1.16gに、1-ブロモ-3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン8.0gを1-ブロモ-4-ペンタフルオロスルファニルベンゼン5.5gに変更した以外は調製例1と同様にして白色固体を得た(2.5g)。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が下記表2に記載のアニオン前駆体(A-22)であることを確認した(収率64%)。
【0121】
上記調製例で得られたアニオン前駆体と、ナトリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボーレート(H-1)を下記表1,2に示す。
【0122】
【0123】
【0124】
<光酸発生剤の調製>
実施例1 [4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス[3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル]ボレート(PAG-1)の調製
[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムクロリド0.8gをジクロロメタン30mLに溶解し、調製例1で得たアニオン前駆体(A-3)2.7gを含む水溶液30gを加え室温下で混合し、そのまま5時間撹拌した。分液操作により水層を除去し、ジクロロメタン層を水で5回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去した。これにより、油状物を得た。得られた油状物をジクロロメタン-シクロヘキサン混合液で再結晶して、微黄色固体2.4gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-1であることを確認した(収率71%)。
【0125】
実施例2 [4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)フェニルボレート(PAG-2)の調製
調製例1で得たアニオン前駆体(A-3)2.7gを調製例7で得たアニオン前駆体(A-9)2.1gに変更した以外は実施例1と同様にして、微黄色固体2.1gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-2であることを確認した(収率73%)。
【0126】
実施例3 [4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス[3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル]ガレート(PAG-3)の調製
調製例1で得たアニオン前駆体(A-3)2.7gを調製例10で得たアニオン前駆体(A-15)2.8gに変更した以外は実施例1と同様にして、微黄色固体2.8gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-3であることを確認した(収率80%)。
【0127】
実施例4 [4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム(4-フルオロフェニル)トリス(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ガレート(PAG-4)の調製
調製例1で得たアニオン前駆体(A-3)2.7gを調製例12で得たアニオン前駆体(A-22)1.6gに変更した以外は実施例1と同様にして、微黄色固体2.1gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-4であることを確認した(収率73%)。
【0128】
実施例5 [4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]-4-ビフェニルフェニルスルホニウムテトラキス(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート(PAG-5)の調製
反応容器に4-[(フェニル)スルフィニル]ビフェニル11g、4-(フェニルチオ)ビフェニル12g、無水酢酸22g及びメタンスルホン酸16gを加えて均一混合し、65℃で3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却し、イオン交換水100mL中に投入し、ジクロロメタン100gで抽出し、水層のpHが中性になるまで水で洗浄した。ジクロロメタン層をロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、褐色固体を得た。これを酢酸エチル/ヘキサンで洗浄を行い、有機溶媒を濃縮することで(中間体-1)を得た。
得られた(中間体-1)1.2gをジクロロメタン30mLに溶かし、調製例4で得たアニオン前駆体(A-4)1.7gを含む水溶液30gを加え室温下で混合し、そのまま5時間撹拌した。分液操作により水層を除去し、ジクロロメタン層を水で5回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去した。これにより、淡褐色固体を得た。ジクロロメタン-ヘキサンで再結晶を行い、微黄色固体2.2gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-5であることを確認した(収率82%)。
【0129】
実施例6 [4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]-4-ビフェニルフェニルスルホニウムトリス(3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート(PAG-6)の調製
実施例5において、調製例4で得たアニオン前駆体(A-4)1.7gを調製例8で得たアニオン前駆体(A-12)1.6gに変更した以外、実施例5と同様にして、微黄色固体2.5gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-6であることを確認した(収率80%)。
【0130】
実施例7 [4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]-4-ビフェニルフェニルスルホニウムテトラキス(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ガレート(PAG-7)の調製
調製例4で得たアニオン前駆体(A-4)1.7gを調製例9で得たアニオン前駆体(A-13)1.8gに変更した以外は実施例5と同様にして、微黄色固体1.9gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-7であることを確認した(収率76%)。
【0131】
実施例8 [4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]-4-ビフェニルフェニルスルホニウムトリス(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)フェニルガレート(PAG-8)の調製
調製例4で得たアニオン前駆体(A-4)1.7gを調製例11で得たアニオン前駆体(A-20)1.6gに変更した以外は実施例5と同様にして、微黄色固体1.8gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-8であることを確認した(収率80%)。
【0132】
実施例9 (4-イソプロピルフェニル)トリルヨードニウムテトラキス(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート(PAG-9)の調製
(4-イソプロピルフェニル)トリルヨードニウムクロリド0.75gをジクロロメタン30mLに溶解し、調製例4で得たアニオン前駆体(A-4)1.7gを含む水溶液30gを加え室温下で混合し、そのまま5時間撹拌した。分液操作により水層を除去し、ジクロロメタン層を水で5回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去した。これにより、油状物を得た。得られた油状物をジクロロメタン-シクロヘキサン混合液で再結晶して、微黄色固体1.9gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-9であることを確認した(収率82%)。
【0133】
実施例10 (4-イソプロピルフェニル)トリルヨードニウムトリス(3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)フェニルボレート(PAG-10)の調製
調製例4で得たアニオン前駆体(A-4)1.7gを調製例7で得たアニオン前駆体(A-9)2.1gに変更した以外は実施例9と同様にして、微黄色固体2.1gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-10であることを確認した(収率73%)。
【0134】
実施例11 (4-イソプロピルフェニル)トリルヨードニウムテトラキス(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ガレート(PAG-11)の調製
調製例4で得たアニオン前駆体(A-4)1.7gを調製例9で得たアニオン前駆体(A-13)1.8gに変更した以外は実施例9と同様にして、微黄色固体2.1gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-11であることを確認した(収率86%)。
【0135】
実施例12 (4-イソプロピルフェニル)トリルヨードニウム(4-フルオロフェニル)トリス(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ガレート(PAG-12)の調製
調製例4で得たアニオン前駆体(A-4)1.7gを調製例12で得たアニオン前駆体(A-22)1.8gに変更した以外は実施例9と同様にして、微黄色固体1.5gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-12であることを確認した(収率68%)。
【0136】
実施例13 ジ(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス[3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル]ボレート(PAG-13)の調製
ジ(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムクロリド0.86gをジクロロメタン30mLに溶解し、調製例1で得たアニオン前駆体(A-3)2.7gを含む水溶液30gを加え室温下で混合し、そのまま5時間撹拌した。分液操作により水層を除去し、ジクロロメタン層を水で5回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去した。これにより、油状物を得た。得られた油状物をジクロロメタン-シクロヘキサン混合液で再結晶して、微黄色固体3.8gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-13であることを確認した(収率90%)。
【0137】
実施例14 ジ(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリス(3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート(PAG-14)の調製
調製例1で得たアニオン前駆体(A-3)2.7gを調製例8で得たアニオン前駆体(A-12)1.6gに変更した以外は実施例13と同様にして、微黄色固体2.7gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-14であることを確認した(収率85%)。
【0138】
実施例15 ジ(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス[3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル]ガレート(PAG-15)の調製
調製例1で得たアニオン前駆体(A-3)2.7gを調製例10で得たアニオン前駆体(A-15)2.8gに変更した以外は実施例13と同様にして、微黄色固体2.8gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-15であることを確認した(収率79%)。
【0139】
実施例16 ジ(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリス(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)フェニルガレート(PAG-16)の調製
調製例1で得たアニオン前駆体(A-3)2.7gを調製例11で得たアニオン前駆体(A-20)1.6gに変更した以外は実施例13と同様にして、微黄色固体1.7gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-16であることを確認した(収率74%)。
【0140】
比較例1 [4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(PAG-H1)の調製
調製例1で得たアニオン前駆体(A-3)2.7gをナトリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(H-1)1.4gに変更した以外は実施例1と同様にして、微黄色固体1.8gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記PAG-H1であることを確認した(収率86%)。
【0141】
比較例2 (4-イソプロピルフェニル)トリルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(PAG-H2)の調製
調製例4で得たアニオン前駆体(A-4)1.7gをナトリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(H-1)1.4gに変更した以外は実施例9と同様にして、白色固体1.9gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が前記PAG-H2であることを確認した(収率94%)。
【0142】
【0143】
<熱酸発生剤の調製>
実施例17 4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウムテトラキス[3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル]ボレート(TAG-1)の調製
4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウムクロリド0.53gをジクロロメタン30mLに溶解し、調製例1で得たアニオン前駆体(A-3)2.7gを含む水溶液30gを加え室温下で混合し、そのまま5時間撹拌した。分液操作により水層を除去し、ジクロロメタン層を水で5回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去した。これにより、淡黄色固化体を得た。得られた淡黄色固化体をジクロロメタン-シクロヘキサン混合液で再結晶して、白色固体2.6gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が前記TAG-1であることを確認した(収率84%)。
【0144】
実施例18 4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウムテトラキス[3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル]ガレート(TAG-2)の調製
調製例1で得たアニオン前駆体(A-3)2.7gを調製例7で得たアニオン前駆体(A-9)2.1gに変更した以外は実施例17と同様にして、白色固体2.3gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が前記TAG-2であることを確認した(収率88%)。
【0145】
実施例19 4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウムテトラキス(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ガレート(TAG-3)の調製
調製例1で得たアニオン前駆体(A-3)2.7gを調製例9で得たアニオン前駆体(A-13)1.8gに変更した以外は実施例17と同様にして、白色固体2.0gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が前記TAG-3であることを確認した(収率90%)。
【0146】
実施例20 4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウム(4-フルオロフェニル)トリス(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ガレート(TAG-4)の調製
調製例1で得たアニオン前駆体(A-3)2.7gを調製例12で得たアニオン前駆体(A-22)1.8gに変更した以外は実施例17と同様にして、白色固体2.0gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記TAG-4であることを確認した(収率75%)。
【0147】
実施例21 N-(4-メトキシベンジル)-N,N-ジメチルアニリ二ウムテトラキス(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート(TAG-5)の調製
反応容器にN,N-ジメチルアニリン50g、4-メトキシベンジルクロリド65g、アセトニトリル25mLを混合し、50℃にて5時間反応させた。反応溶液にアセトン320mLを加えて、10℃以下に冷却し1時間攪拌した。その後、析出した固体を分取して、N-(4-メトキシベンジル)-N,N-ジメチルアニリ二ウムクロリド81gを得た。
反応容器にN-(4-メトキシベンジル)-N,N-ジメチルアニリ二ウムクロリド0.56gとジクロロメタン30mLを加え、溶解し、調製例4で得たアニオン前駆体(A-4)1.7gを含む水溶液30gを加え室温下で混合し、そのまま5時間撹拌した。分液操作により水層を除去し、ジクロロメタン層を水で5回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去した。これにより、淡黄色固化体を得た。メタノール-水で再結晶を行い、微黄色固体1.7gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記TAG-5であることを確認した(収率80%)。
【0148】
実施例22 N-(4-メトキシベンジル)-N,N-ジメチルアニリ二ウムトリス(3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)(4-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート(TAG-6)の調製
調製例4で得たアニオン前駆体(A-4)1.7gを調製例8で得たアニオン前駆体(A-12)1.6gに変更した以外は実施例21と同様にして、微黄色固体2.2gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記TAG-6であることを確認した(収率77%)。
【0149】
実施例23 N-(4-メトキシベンジル)-N,N-ジメチルアニリ二ウムテトラキス[3,5-ビス(ペンタフルオロスルファニル)フェニル]ガレート(TAG-7)の調製
調製例4で得たアニオン前駆体(A-4)1.7gを調製例10で得たアニオン前駆体(A-15)2.8gに変更した以外は実施例21と同様にして、微黄色固体2.4gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体前記TAG-7であることを確認した(収率74%)。
【0150】
実施例24 N-(4-メトキシベンジル)-N,N-ジメチルアニリ二ウムトリス(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)フェニルガレート(TAG-8)の調製
調製例4で得たアニオン前駆体(A-4)1.7gを調製例11で得たアニオン前駆体(A-20)1.6gに変更した以外は実施例21と同様にして、微黄色固体1.6gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの微黄色固体が前記TAG-8であることを確認した(収率80%)。
【0151】
比較例3 4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TAG-H1)の調製
調製例1で得たアニオン前駆体(A-3)2.7gをナトリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(H-1)1.4gに変更した以外は実施例17と同様にして、白色固体1.6gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が前記TAG-H1であることを確認した(収率90%)。
【0152】
比較例4 N-(4-メトキシベンジル)-N,N-ジメチルアニリ二ウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TAG-H2)の調製
調製例4で得たアニオン前駆体(A-4)1.7gをナトリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(H-1)1.4gに変更した以外は実施例21と同様にして、白色固体1.6gを得た。1H-NMR、19F-NMRよりこの白色固体が前記TAG-H2であることを確認した(収率87%)。
【0153】
【0154】
実施例25~49、比較例5~8
ビーカーに、下記表5、6(単位は重量部)に記載の処方通りに各成分を仕込み、撹拌子を入れ20℃、100rpmで撹拌して、光硬化性組成物を得た。
【0155】
実施例及び比較例で得た光硬化性組成物の溶解性、硬化性、接着性、耐熱接着性、及び絶縁性を以下方法で評価した。結果を下記表5、6にまとめて示す。
【0156】
[溶解性評価]
酸発生剤が完全に溶解するまでに要した撹拌時間を測定し、下記基準で溶解性を評価した。
<評価の基準>
◎(優):1分未満の撹拌で溶解
○(良):1分以上、5分未満の撹拌で溶解
△(可):5分以上、10分未満の撹拌で溶解
×(不可):10分以上撹拌しても溶解せず
【0157】
[PAG硬化性]
スライドガラス(商品名「S9112」、松浪ガラス工業(株)製)の両端に30μmmのスペーサーを設置し、実施例及び比較例で得た光硬化性組成物を真ん中に滴下した。スキージーを使用して0.03mmの厚みになるように光硬化性組成物を塗り広げ、高圧水銀ランプを下記条件で使用して光照射を行った。光照射後室温で60分間放置して硬化物を得た。
<高圧水銀ランプの光照射条件>
照射装置:商品名「LC-8」(浜松ホトニクス(株)製)
照射強度:100mW/cm
積算照射量:500~1000mJ/cm2
【0158】
得られた硬化物について下記基準で硬化性を評価した。尚、タック性の有無は指触により判断した。
評価基準
◎:照射量1000mJ/cm2未満で硬化物表面にタック性がなく、指触しても硬化物の表面形状に変化がなかった
○:照射量1000mJ/cm2では表面にタック性がなく、硬化物の表面形状に変化がなかった。しかし、照射量1000mJ/cm2未満では、硬化物表面のタック性はないが、指触により硬化物の表面形状が変化した。
△:照射量1000mJ/cm2で硬化物表面のタック性はないが、指触により硬化物の表面形状が変化した
×:照射量1500mJ/cm2でも硬化物表面にタック性を有した
【0159】
[PAG接着性]
スライドガラスの両端に40μmのスペーサーを設置し、実施例及び比較例で得た光硬化性組成物を真ん中に滴下した。スキージーを使用して40μmの厚みになるように光硬化性組成物を塗り広げ、その上にエポキシ樹脂製立方体(外径:4mm×4mm×1mm、内径:3.7mm×3.7mm×0.8mm、接着面積:2.3mm2)をセットし、上記[PAG硬化性]評価と同様の方法で光照射を行った。光照射後、室温で60分以上放置した。これにより、前記光硬化性組成物の硬化物とエポキシ樹脂製立方体が密着してなる構造物を得た。得られた構造物を5個ずつ用意した。
【0160】
前記構造物について、ダイシェアテスター(商品名「4000PXY」、ノードソンDAGE社製)を下記条件で使用して、前記硬化物からエポキシ樹脂製立方体が剥離加重(kgf)を求めた。前記構造物5個の剥離加重の平均値をもって評価した。尚、加重が大きいほど接着性が優れることを示す。
<ダイシェアテスター測定条件>
シェア高さ:0.65mm
シェアスピード:0.5mm/s
【0161】
[PAG耐熱接着性]
上記[PAG接着性]評価と同様の方法で得た構造物について、卓上リフロー炉(シンアペック社製)を使用して、JEDEC規格記載のリフロー温度プロファイル(最高温度:270℃)に基づく耐熱試験を連続して3回行った後、上記[PAG接着性]評価と同様の方法(サンプル数:5個)で剥離加重の平均値を求め、これを耐熱試験後剥離加重とした。
そして、[PAG接着性]評価で求めた剥離加重(=耐熱性試験前剥離加重)と、耐熱試験後剥離加重の差を求めた。尚、差が小さいほど、熱安定性が良好であることを示す。
【0162】
[PAG絶縁性]
実施例及び比較例で得た光硬化性組成物について、ポリフェニレンエーテル基材上に、バーコーターを用いて厚さが50μmとなるよう塗工した。その後、上記[PAG硬化性]評価と同様の方法で光照射を行った。光照射後室温で60分間放置して硬化物を得た。得られた硬化物について、ポリフェニレンエーテル基材から剥がして約0.2gを精秤して試験片とした。
このようにして得られた試験片とイオン交換蒸留水10gを入れたテフロン(登録商標)製のPCT容器をSUS製の圧力容器内に入れて密閉し、141℃、2気圧の条件下に20時間静置した後、室温まで放冷した。
その後、PCT容器内の水分を取り出して導電率を測定し、以下の基準で絶縁性を評価した。
<評価基準>
◎(優):導電率が25μS/cm未満
○(良):導電率が25μS/cm以上50μS/cm未満
△(可):導電率が50μS/cm以上100μS/cm未満
×(不可):導電率が100μS/cm以上
【0163】
【0164】
【0165】
実施例50~66、比較例9~12
ビーカーに、下記表7、8(単位は重量部)に記載の処方通りに各成分を仕込み、撹拌子を入れ20℃、100rpmで撹拌して、熱硬化性組成物を得た。
【0166】
実施例及び比較例で得た熱硬化性組成物の溶解性、熱硬化性、接着性、耐熱接着性、及び絶縁性を以下方法で評価した。結果を下記表7、8にまとめて示す。
【0167】
[溶解性評価]
酸発生剤が完全に溶解するまでに要した撹拌時間を測定し、下記基準で溶解性を評価した。
<評価の基準>
◎(優):1分未満の撹拌で溶解
○(良):1分以上、5分未満の撹拌で溶解
△(可):5分以上、10分未満の撹拌で溶解
×(不可):10分以上撹拌しても溶解せず
【0168】
[TAG硬化性]
スライドガラスの両端に40μmのスペーサーを設置し、実施例及び比較例で得た熱硬化性組成物を真ん中に滴下した。スキージーを使用して40μmの厚みになるように熱硬化性組成物を塗り広げ、ホットプレートを使用して120℃で5~10分間加熱を行った。その後、室温で60分以上放置して硬化物を得た。
【0169】
得られた硬化物について下記基準で硬化性を評価した。尚、タック性の有無は指触により判断した。
評価基準
◎:10分未満の加熱で表面にタック性がなく、指触しても硬化物の表面形状に変化がなかった。
○:10分間の加熱で表面にタック性がなく、指触しても硬化物の表面形状に変化がなかった。しかし、10分未満の加熱では、硬化物表面のタック性はないが、指触により硬化物の表面形状が変化した。
△:10分間の加熱で表面のタック性はないが、指触により硬化物の表面形状が変化した。
×:10分間以上の加熱でも表面にタック性を有した。
【0170】
[TAG接着性]
スライドガラスの両端に40μmのスペーサーを設置し、実施例及び比較例で得た熱硬化性組成物を真ん中に滴下した。スキージーを使用して40μmの厚みになるように熱硬化性組成物を塗り広げ、その上にエポキシ樹脂製立方体(外径:4mm×4mm×1mm、内径:3.7mm×3.7mm×0.8mm、接着面積:2.3mm2)をセットし、上記[TAG硬化性]評価と同様の方法で加熱した。加熱後、室温で60分以上放置した。これにより、前記熱硬化性組成物の硬化物とエポキシ樹脂製立方体が密着してなる構造物を得た。得られた構造物を5個ずつ用意した。
【0171】
前記構造物5個について、上記光硬化性組成物の[TAG接着性]評価と同様の方法で剥離加重の平均値を求めて、接着性を評価した。
【0172】
[TAG耐熱接着性]
上記[TAG接着性]評価と同様の方法で得た構造物(サンプル数:5個)について、[PAG耐熱接着性]評価と同様の方法で耐熱試験後剥離加重の差を求め、[TAG接着性]評価で求めた剥離加重(=耐熱性試験前剥離加重)との差を求めた。
【0173】
[TAG絶縁性]
実施例及び比較例で得た熱硬化性組成物について、ポリフェニレンエーテル基材上に、バーコーターを用いて厚さが50μmとなるよう塗工した。その後、120℃の熱風式乾燥機で10分間加熱処理を施して、室温で60分以上放置して硬化物を得た。得られた硬化物について、[PAG絶縁性]評価と同様の方法で導電率を測定し、絶縁性を評価した。
【0174】
【0175】
【0176】
表5~8中の各成分の化合物名は、次のとおりである。
<カチオン硬化性化合物>
セロキサイド2021P:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ当量127g/eq、(株)ダイセル製
THI-DE:ジエポキシ化テトラヒドロインデン、JXTGエネルギー(株)製
jER 828:ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エポキシ当量189g/eq、三菱ケミカル(株)製
jER YX8000:水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エポキシ当量205g/eq、三菱ケミカル(株)製
VG3101L:2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-[2,3-エポキシプロポキシ]フェニル]エチル]フェニル]プロパン、商品名「TECHMORE VG3101L」、(株)プリンテック製
SR-NPG:ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、阪本薬品工業(株)製
OXT-121:キシリレンビスオキセタン、オキセタン当量167g/eq、東亜合成(株)製
OXT-221:3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、東亜合成(株)製
X-22-169:両末端脂環式エポキシ変性シリコーンオリゴマー、信越化学工業(株)製
デナコールEX-146:p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製
<光酸発生剤>
PAG-1~16、PAG-H1、H2:実施例1~16、及び比較例1,2で得られた化合物を使用した
<熱酸発生剤>
TAG-1~8、TAG-H1、H2:実施例17~24、及び比較例3,4で得られた化合物を使用した
<カップリング剤>
KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製
<消泡剤>
BYK-1790:非シリコーン系ポリマ型消泡剤、ビックケミー・ジャパン(株)製
<レベリング剤>
LS-460:ポリエーテル変性シリコーン、楠本化成(株)製
【0177】
表5~8から、本発明の酸発生剤は、比較例の酸発生剤と比べてカチオン硬化性化合物に対する溶解性に優れ、且つカチオン重合開始能に優れることが分かる。
そして、本発明の酸発生剤が光硬化性組成物である場合は、より少ない光エネルギーで硬化可能であり、本発明の酸発生剤が熱硬化性組成物である場合、より少ない熱エネルギーで硬化可能であることが分かる。
更に、本発明の酸発生剤の硬化物は、接着性及び絶縁性に優れた硬化物が得られることが分かる。