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特開2025-8223抜き屑押出し具及びそれを用いたシート打抜き型
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  • 特開-抜き屑押出し具及びそれを用いたシート打抜き型 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008223
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】抜き屑押出し具及びそれを用いたシート打抜き型
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/18 20060101AFI20250109BHJP
   B26F 1/44 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B26D7/18 G
B26F1/44 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110197
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】508376513
【氏名又は名称】株式会社 小池製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080126
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 惇逸
(72)【発明者】
【氏名】小池 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 稔
【テーマコード(参考)】
3C021
3C060
【Fターム(参考)】
3C021FD02
3C021FD06
3C060AA01
3C060BA03
3C060BB08
3C060BG01
3C060BG20
(57)【要約】
【課題】 シート打抜き型に使用され、構造が簡素で、シートに極めて幅狭の細長孔や細長切込み等を形成する打抜き加工を可能にする抜き屑押出し具を提供する。
【解決手段】
シート打抜き型Tにおける打抜き刃3の内側間隙4に刃高さ方向の移動可能に配置される可動部材11と、前記可動部材に連接され、刃高さ方向の弾性変形可能に刃厚さ方向に張り出すと共に打抜き刃3の側面に穿設された側孔3bに遊嵌されるバネ部材12と、前記バネ部材に連接され、打抜き刃3の内側間隙4に側孔3bから刃根元方向に延伸して配置される終端部材13とから構成される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打抜き刃がベース板に所要の打抜き予定形状に沿って植設されてなるシート打抜き型によるシートの打抜き加工に際して打抜き刃の内側間隙に設置されると共に、打抜き操作時におけるシートへの打抜き刃の切込み時に打抜き刃の内側間隙に篏入した抜き屑をシートからの打抜き刃の離反時に元のシート位置に押し戻すための抜き屑押出し具であって、打抜き刃の内側間隙に刃高さ方向の移動可能に且つ打抜き刃の切込み前は頂部を打抜き刃の刃先より所要長さだけ突出して配置される可動部材と、前記可動部材の基部に連接され、刃高さ方向の弾性変形可能に刃厚さ方向に張り出すと共に打抜き刃の側面に穿設された側孔に遊嵌されるバネ部材と、前記バネ部材の後端に連接されると共に打抜き刃の内側間隙に側孔から刃根元方向に延伸して配置される終端部材とからなり、前記バネ部材の弾性変形時に前記バネ部材の後端又はそれに連接された終端部材が、打抜き刃の側孔又はそれに連なる打抜き刃の内側間隙に圧力受け面を介して支持されるようにしたことを特徴とする抜き屑押出し具。
【請求項2】
請求項1に記載の抜き屑押出し具において、前記可動部材、バネ部材及び終端部材が金属製ばね材料で一体に形成された抜き屑押出し具。
【請求項3】
請求項1に記載の抜き屑押出し具において、前記バネ部材が刃厚さ方向に湾曲又は屈曲して張り出した抜き屑押出し具。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の抜き屑押出し具を、打抜き刃がベース板に所要の打抜き予定形状に沿って植設されてなるシート打抜き型における打抜き刃の内側間隙に設置して構成されたシート打抜き型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール紙等のシートの打抜き加工に際して打抜き刃の内側間隙に設置され、打抜き操作時におけるシートへの打抜き刃の切込み時に打抜き刃の内側間隙に篏入した抜き屑を、シートからの打抜き刃の離反時に元のシート位置に押し戻し、次の打抜き操作に備えるための抜き屑押出し具及びそれを用いたシート打抜き型に関する。
【背景技術】
【0002】
前記打抜き操作で生じた抜き屑が打抜き刃の内側間隙に残留したまま次の打抜き操作が行われて新たな抜き屑が打抜き刃の内側間隙に篏入し、これらが繰り返されると、前記抜き屑により打抜き刃が外方向に大きな側圧を受けて変形し或いは破損し易く、それによって精密な打抜き操作を安定して行うことが困難になる。
【0003】
前記問題に対しては、打抜き刃の内側間隙にスポンジゴム製等の弾性板部材からなる抜き屑押出し具を打抜き刃の刃先から若干突出する高さに配置することが広く知られている。前記従来技術によれば、打抜き操作時におけるシートへの打抜き刃の切込み時は前記抜き屑押出し具が抜き屑となるシート表面に当接し押圧されて刃高さ方向に圧縮変形すると共に抜き屑が打抜き刃の内側間隙に一時篏入するが、シートからの打抜き刃の離反時は前記抜き屑押出し具が元の高さに復元変形すると共に打抜き刃の内側間隙に篏入していた前記抜き屑が元のシート位置に押し戻されるようにしている。
【0004】
しかしながら、前記従来技術によれば、例えばシートに幅2~3mm程度の極めて幅狭の細長孔や細長切込み等を形成する打抜き加工を施す場合に、打抜き刃の極めて幅狭の内側間隙に設置し得るように極めて肉薄の弾性板部材からなる抜き屑押出し具を使用することになるが、そのような肉薄の弾性板部材では、それを間隔の幅狭の打抜き刃の内側間隙に設置すること自体が困難になる。なお仮に前記肉薄の弾性板部材を設置できたとしても、その復元変形により前記抜き屑を元のシート位置に押し戻すための弾性力が不足すると共に弾性力の調節も困難となり、他方、前記弾性力不足の解消のために、肉厚の弾性板部材を幅狭の内側間隙に無理に押し込んで設置すれば、その弾性変形時に打抜き刃は大きな側圧を受けて変形し或いは破損することになる。
【0005】
前記問題を改善するものとして、比較的硬度の高い多孔ゴム質材製の弾性板部材の頂部側端に弾性変形可能なバチ形突起部を所要ピッチで設け、圧縮変形時にも厚さ方向に膨出しないようにした打抜きクッション部材(特許文献1)が報告されている。
【0006】
しかしながら、前記技術によっても、既述のように極めて幅狭の細長孔や細長切込み等の打抜き加工には十分対応することができず、打抜き刃の内側間隙への装着性、弾性力の確保、耐久性等に関して問題を残している。いずれにしても、スポンジゴム製や多孔ゴム製等の弾性板部材を抜き屑押出し具に使用すれば、該弾性板部材は、それらの物性上、打抜き操作の繰り返しによる劣化、摩耗、耐久性低下等を免れ得ず、延いては打抜き刃の内側間隙への抜き屑の残留、滞留を招いて既述のように前記打抜き刃に大きな側圧を及ぼすことになる。
【0007】
他方、打抜き刃の内側間隙に配置した硬質の押出し具に打抜き刃の外側から弾性力を付与するようにしたシート打抜き型(特許文献2)が報告されている。前記シート打抜き型では、打抜き刃の内側間隙に摺動自在に設けられる押出し具に打抜き刃の孔等からなるアーム挿入部を介して突出しアームが前記打抜き刃の外側から連結され、前記突出しアームによって前記押出し具に弾性力を付与するようにしている。
【0008】
前記従来技術によれば、押出し具に弾性力を付与する弾性体を上記打抜き刃の外側に設けたことにより、弾性体は打抜き刃の形状や大きさに制限を受けることがなく、弾性体として弾性力が大きく大型のものを採用することもできる。また、前記従来技術によれば、打抜き刃の内側間隙に設けられる押出し具として、従来のような合成ゴム材系の弾性板部材ではなく、シートとの接触による耐摩耗性や耐久性に優れた硬質の材料を任意に選択することができる。
【0009】
しかしながら、前記従来技術によれば、打抜き刃の内側間隙に摺動自在に設けられる硬質の押出し具に、打抜き刃の外側からその孔等からなるアーム挿入部を介し、突出しアームによって所要の弾性力を付与することから、部品点数や連結部が多く構造が複雑に過ぎ、大型化する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001-347489号公報
【特許文献2】特開平10-217195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の解決すべき課題は、前記先行技術の諸問題に鑑み、構造が小規模且つ簡素で、シートに極めて幅狭の細長孔や細長切込み等を形成する打抜き加工を施す場合にも打抜き刃の極めて幅狭の内側間隙に設置できて抜き屑を所要の弾性力で元のシート位置に押し戻すことができる抜き屑押出し具を提供することにある。
【0012】
さらに、本発明の別の課題は、極めて幅狭の細長孔や細長切込み等の打抜き加工において前記抜き屑押出し具を使用することにより高い精度の打抜きを可能にする優れたシート打抜き型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る抜き屑押出し具は、打抜き刃がベース板に所要の打抜き予定形状に沿って植設されてなるシート打抜き型によるシートの打抜き加工に際して打抜き刃の内側間隙に設置されると共に、打抜き操作時におけるシートへの打抜き刃の切込み時に打抜き刃の内側間隙に篏入した抜き屑をシートからの打抜き刃の離反時に元のシート位置に押し戻すための抜き屑押出し具であって、打抜き刃の内側間隙に刃高さ方向の移動可能に且つ打抜き刃の切込み前は頂部を打抜き刃の刃先より所要長さだけ突出して配置される可動部材と、前記可動部材の基部に連接され、刃高さ方向の弾性変形可能に刃厚さ方向に張り出すと共に打抜き刃の側面に穿設された側孔に遊嵌されるバネ部材と、前記バネ部材の後端に連接されると共に打抜き刃の内側間隙に側孔から刃根元方向に延伸して配置される終端部材とからなり、前記バネ部材の弾性変形時に前記バネ部材の後端又はそれに連接された終端部材が、打抜き刃の側孔又はそれに連なる打抜き刃の内側間隙に圧力受け面を介して支持されるようにしたことを特徴としている。
【0014】
前記構成において、打抜き操作時に打抜き刃がシートに切り込まれると、該切込みの押圧力により、可動部材が、バネ部材の圧縮変形下に頂部で抜き屑となるシート表面を弾発的に刃先方向に押圧すると同時にその反力で打抜き刃の内側間隙に刃根元方向に押し込まれて元の突出位置から後退し、それによって抜き屑が打抜き刃の内側間隙に篏入する。なお前記可動部材は、必要に応じて、打抜き刃の内側間隙に摺動状態で刃高さ方向の移動可能であってもよい。
【0015】
前記バネ部材の圧縮変形は、前記バネ部材の後端又はそれに連接された終端部材が、打抜き刃の側孔又はそれに連なる打抜き刃の内側間隙に圧力受け面を介して支持された状態で行われる。前記打抜き刃の側孔における圧力受け面については、例えば前記バネ部材の後端やそれと終端部材との連接部付近と当接、係合させ易い位置にある該側孔の縁部等が圧力受け面として好適に使用可能である。さらに、前記打抜き刃の内側間隙における圧力受け面については、例えば該内側間隙に配置された終端部材と当接、係合させ易い位置にある、刃根元付近に露出し得るベース板やそのホルダー等が圧力受け面として使用可能である。また、前記打抜き刃の内側間隙に配置された終端部材と当接、係合させるために、前記内側間隙に圧力受け面を有する固定物を介設し、或いは前記内側間隙を構成する打抜き刃にそれが圧力受け面を形成するように加工を施すことも可能である。何れの場合も、前記バネ部材の後端又はそれに連接された終端部材は、前記バネ部材の圧縮変形等の弾性変形に際して、打抜き刃の側孔又はそれに連なる打抜き刃の内側間隙で圧力受け面を介して支持されるので、抜き屑押出し具の設置構造が極めて小規模且つ簡素となり、前記打抜き刃やその内側間隙から離隔して徒に外部に拡がることがない。
【0016】
前記シートの打抜き後に打抜き刃がシートから離反すると、可動部材が、バネ部材の復元変形下に頂部で抜き屑表面を弾発的に刃先方向に押圧しつつ打抜き刃の内側間隙から刃先方向に押し出されて元の突出位置まで前進し、それによって抜き屑が打抜き刃の内側間隙から元のシート位置に押し戻される。前記バネ部材の復元変形も、前記圧縮変形の場合と同様に、前記バネ部材の後端又はそれに連接された終端部材が、打抜き刃の側孔又はそれに連なる打抜き刃の内側間隙に圧力受け面を介して支持された状態で行われる。
【0017】
前記終端部材は、打抜き刃の内側間隙に側孔から刃根元方向に延伸して配置されるので、打抜き刃の内側間隙への可動部材の設置と相まって、抜き屑押出し具は、バネ部材を打抜き刃の側孔から張り出させた状態で打抜き刃の内側間隙に安定に設置される。なお、刃厚さ方向に張り出したバネ部材が打抜き刃の側孔に遊嵌される状態は、抜き刃の内側間隙からの抜き屑押出し具の脱落防止や抜き刃の内側間隙への抜き屑押出し具の安定配置等にも寄与している。
【0018】
前記可動部材、バネ部材及び終端部材は、互いに別材料で形成されてもよく、例えば所要の弾性力を備えたバネ部材を可動部材及び終端部材に接合してもよい。しかしながら、特に打抜き刃の極めて幅狭の内側間隙に円滑に設置し得るためには、例えばばね用冷間圧延鋼、ステンレス鋼等の金属製ばね材料で一体に形成されることが好ましい。
【0019】
前記バネ部材は、その形状、構造等に特別の制限はなく、刃高さ方向に弾性変形可能な種々の形状、構造で張り出したものが使用可能であるが、例えば円弧形状、半円形状、U字形状等に湾曲し、或いは山形形状、V字形状等に屈曲して張り出したものが効果的に弾性変形し易く簡素であり、好適に選択される。前記バネ部材の弾性力は、例えばバネ部材の幅、厚さ、形状、張出し長さ等の変更や構成材料の選択等により適宜調節することが可能である。
【0020】
なお、前記バネ部材は、片側の打抜き刃の側孔から張り出す態様のみならず、必要に応じて、刃高さ方向の弾性変形可能に、両側に刃厚さ方向に交互に張り出すと共に内側間隙を挟む両側の打抜き刃の各側面に穿設された側孔に各々遊嵌され、両側の側孔で弾性変形が行われるようにした態様も実施可能である。
【0021】
前記構成の抜き屑押出し具を、打抜き刃がベース板に所要の打抜き予定形状に沿って植設されてなるトムソン型等のシート打抜き型における打抜き刃の内側間隙に設置することにより、極めて幅狭の細長孔や細長切込み等の打抜き加工において高い精度の打抜きが可能になる。
【0022】
なお、前記シート打抜き型の打抜き態様に制限はない。例えば、打抜き刃の刃先の下方に対向してシートが配置されてもよく、或いは逆に、打抜き刃の刃先の上方に対向してシートが配置されてもよく、さらにそれらの場合に、打抜きに際して打抜き刃の側がシートに向かって移動してもよく、或いは逆に、シートの側が打抜き刃に向かって移動してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る抜き屑押出し具は、構造が小規模且つ簡素で、シートに極めて幅狭の細長孔や細長切込み等を形成する打抜き加工を施す場合にも打抜き刃の極めて幅狭の内側間隙に設置できて抜き屑を所要の弾性力で元のシート位置に押し戻すことができ、シートとの接触による耐摩耗性、打抜きの繰り返しにおける耐久性及び弾性力の調節容易性等にも優れたものとなる。
【0024】
前記可動部材、バネ部材及び終端部材が金属製ばね材料で一体に形成されたものでは、例えば厚さ0.3mmのように極めて薄い金属製ばね材料の使用も可能であることから、打抜き刃の極めて幅狭の内側間隙に円滑に設置できて幅1~2mm程度の極めて幅狭の細長孔や細長切込み等の打抜き形成も可能になり、しかもシートとの接触による耐摩耗性、打抜きの繰り返しにおける耐久性及び弾性力の調節容易性がさらに増強された抜き屑押出し具を効率的に得ることができる。
【0025】
また、前記バネ部材が刃厚さ方向に湾曲又は屈曲して張り出したものでは、所要の弾性力を有するバネ部材を備えた抜き屑押出し具を容易に得ることができる。
【0026】
また、前記のようなき屑押出し具を、打抜き刃がベース板に所要の打抜き予定形状に沿って植設されてなるシート打抜き型における打抜き刃の内側間隙に設置して構成されたシート打抜き型では、前記抜き屑押出し具の奏する優れた作用効果と相まって、極めて幅狭の細長孔や細長切込み等の打抜き加工において高い精度の打抜きが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は本発明の実施例に係る抜き屑押出し具の斜視図であり、同図(A)はバネ部材が弾性変形のない自然長さにある状態、同図(B)はバネ部材が圧縮されて弾性変形した状態を各々示している。
図2図2は、図1に示す抜き屑押出し具を用いたシート打抜き型の作動状態を経時的に示す要部断面図であり、同図(A)は打抜き操作前において打抜き刃が切込みに備えて待機した状態、同図(B)は打抜き刃の刃先がシート表面から内部に切り込まれ、抜き屑がシートから打ち抜かれると共に可動部材の頂部が打抜き刃の内側間隙に押し込まれた状態、同図(C)は打抜き終了後、打抜き刃の刃先がシート表面まで離脱し、可動部材の頂部が抜き屑表面を押圧しつつ刃先の位置まで押し出された状態、同図(D)は打抜き刃の刃先がシート表面から離反し、可動部材の頂部が元の突出位置まで復帰すると共に抜き屑が打抜き刃の内側間隙から元のシート位置に押し戻された状態を各々示している。
図3図3は、図2に示すものとは弾性変形時の圧力受け面の態様を異にする抜き屑押出し具を用いたシート打抜き型の作動状態を経時的に示す、図2と同様の要部断面図であり、同図(A)は打抜き操作前において打抜き刃が切込みに備えて待機した状態、同図(B)は打抜き刃の刃先がシート表面から内部に切り込まれ、抜き屑がシートから打ち抜かれると共に可動部材の頂部が打抜き刃の内側間隙に押し込まれた状態、同図(C)は打抜き終了後、打抜き刃の刃先がシート表面まで離脱し、可動部材の頂部が抜き屑表面を押圧しつつ刃先の位置まで押し出された状態、同図(D)は打抜き刃の刃先がシート表面から離反し、可動部材の頂部が元の突出位置まで復帰すると共に抜き屑が打抜き刃の内側間隙から元のシート位置に押し戻された状態を各々示している。
図4図4は、図1図3に示すものとはバネ部材の形状を異にする抜き屑押出し具を用いたシート打抜き型の実施例の要部断面図であり、同図(A)はバネ部材が弾性変形のない自然長さの状態、同図(B)はバネ部材が圧縮されて弾性変形した状態を各々示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。
本発明に係る抜き屑押出し具Gの一例は、図1(A)及び(B)に示すように、略矩形、薄板状の可動部材11と、前記可動部材11の基部11bに連接された、半円形状に湾曲し、細薄板状を呈するバネ部材12と、前記バネ部材12の後端12bに連接された細薄板状の終端部材13とからなり、本例では前記可動部材11、バネ部材12及び終端部材13は金属製ばね材料で一体に形成されている。
【0029】
前記抜き屑押出し具Gでは、バネ部材12は通常は同図(A)に示すように弾性変形のない自然長さの状態にあるところ、可動部材11からの押圧により同図(B)に示すように圧縮変形させられる。
【実施例0030】
前記抜き屑押出し具Gは、シートSの打抜き加工に際して、図2(A)~(D)に示すように、打抜き刃3がベース板1に所要の打抜き予定形状に沿って植設されてなるシート打抜き型Tにおける打抜き刃3の内側間隙4に設置して使用される。
【0031】
図2(A)において、抜き屑押出し具Gを構成する可動部材11は、打抜き刃3の内側間隙4に刃高さ方向の移動可能に且つ打抜き刃3の切込み前は頂部11aを打抜き刃3の刃先3aより所要長さdだけ突出して配置される。前記可動部材11の基部11bに連接され、刃厚さ方向に略半円形状に湾曲して張り出したバネ部材12は、打抜き刃3の側面に穿設された側孔3bに刃高さ方向の弾性変形可能に遊嵌され、緩く係合されている。前記打抜き刃3の側孔3bからのバネ部材12の張出し及び該側孔3bにおけるバネ部材12の弾性変形等を可能にするために、ベース板1には前記側孔3bの外側周辺に空洞1aが穿設されている。また、前記バネ部材12の後端12bに連接された終端部材13は、打抜き刃3の内側間隙4に側孔3bから刃根元方向に延伸して配置されている。
【0032】
一方、打抜き刃3が植設された前記ベース板1と対向して面板2が配置されると共に該面板2上には打抜き加工に供されるシートSが供給され、前記ベース板1はその背面においてホルダーHに支持されている。打抜き操作前では、同図(A)に示すように、打抜き刃3の刃先3a及び打抜き刃3の内側間隙4から突出した可動部材11の頂部11aが、面板2上のシートSから離隔した状態に保持されている。
【0033】
次に、図2(B)に示すように、打抜き刃3が刃先方向に面板2に向かって移動すると共に面板2上のシートSに切り込まれると、シートSから抜き屑Saが打ち抜かれ、可動部材11が、バネ部材12の圧縮変形下に頂部11aで抜き屑Sa表面を弾発的に刃先方向に押圧すると同時にその反力で打抜き刃3の内側間隙4に刃根元方向に押し込まれて後退し、それによって抜き屑Saが打抜き刃3の内側間隙4に篏入する。
【0034】
前記バネ部材12は、可動部材11の後退に伴って、バネ部材12の後端12bと終端部材13との連接部近辺を打抜き刃3の側孔3b縁部、詳細には刃根元方向縁部にその圧力受け面Pで当接又は係合状態で支持させつつ、打抜き刃3の側孔3b内で刃高さ方向に圧縮変形させられる。
【0035】
前記シートSの打抜きの完了後、図2(C)~(D)に示すように、打抜き刃3が刃根元方向に移動し、打抜き刃3がシートSから離脱すると共に打抜き刃3の刃先3aが面板2上のシートS表面から離反すると、可動部材11が、バネ部材12の復元変形下に頂部11aで抜き屑Sa表面を弾発的に刃先方向に押圧しつつ打抜き刃3の内側間隙4から刃先方向に押し出されて元の突出位置まで前進し、それによって抜き屑Saが打抜き刃3の内側間隙4から元のシートS位置に押し戻される。
【0036】
図2(B)に示す工程で圧縮変形していたバネ部材12は、前記可動部材11の前記前進に伴って、バネ部材12の後端12bと終端部材13との連接部近辺を打抜き刃3の側孔3b縁部にその圧力受け面Pで当接又は係合状態で支持させつつ、打抜き刃3の側孔3b内で刃高さ方向に元の自然長さまで復元変形させられている。
【0037】
なお、前記抜き屑押出し具Gでは、バネ部材12の圧縮変形及び復元変形等の弾性変形に際して、バネ部材12の後端12bと終端部材13との連接部近辺が打抜き刃3の側孔3b縁部にその圧力受け面Pで支持され、またバネ部材12が刃厚さ方向に略半円形状に湾曲して張り出した形状を呈しているが、各々別態様も実施可能である。
【実施例0038】
図3(A)~(D)に示す抜き屑押出し具Gでは、バネ部材12の後端12bに連接された終端部材13は、打抜き刃3の内側間隙4に側孔3bから刃根元方向に、ベース板1に達する程度の長さで配置されている。なお、本実施例では、実施例1の場合と異なり、打抜き刃3の内側間隙4における刃根元付近にベース板1が配置されている。
【0039】
本実施例では、同図(B)に示すシート打抜き時におけるバネ部材12の圧縮変形及び同図(C)に示すシート打抜きの終了後におけるバネ部材12の復元変形等の弾性変形に際して、終端部材13がその端部13bにおいて打抜き刃3の内側間隙4に挟まれ配置されたベース板1にその圧力受け面Qで支持されている。
【0040】
なお、バネ部材12の弾性変形に際して、前記終端部材13を打抜き刃3の内側間隙4で支持し得るものは前記ベース板1上の圧力受け面Qに限定されない。実施例1の場合のように内側間隙4にベース板1が配置されない場合でも、例えばベース板1の背面に当接又は固定されたホルダーHやプレス機の可動プレート等であって前記内側間隙4内部に露出したものであってもよく、さらには前記内側間隙4において打抜き刃3が終端部材13と当接、係合可能に加工されたもの等を圧力受け面Qとすることも可能である。
【実施例0041】
図4(A)及び(B)に示す抜き屑押出し具Gでは、前記バネ部材12が刃厚さ方向に略V字形状に屈曲して張り出し、打抜き刃3の側孔3bに遊嵌されている。本実施例のバネ部材12も、既述の実施例1及び実施例2における湾曲して張り出したバネ部材12と同様に、シート打抜きに際して、同図(B)に示すように、打抜き刃3の側孔3b内で刃高さ方向に弾性変形させられる。
【0042】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要件を満たす種々の変形、組合せ等による前記以外の多くの広範な態様が実施可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
H ホルダー
T シート打抜き型
G 抜き屑押出し具
S シート
Sa シートからの抜き屑
d 打抜き刃の刃先からの所要突出長さ
P 打抜き刃の側孔縁部上の圧力受け面
Q ベース板上の圧力受け面
1 ベース板
1a ベース板の空洞
2 面板
3 打抜き刃
3a 打抜き刃の刃先
3b 打抜き刃の側孔
4 打抜き刃の内側間隙
11 可動部材
11a 可動部材の頂部
11b 可動部材の基部
12 バネ部材
12b バネ部材の後端
13 終端部材
13b 終端部材の端部
図1
図2
図3
図4