(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008224
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】貸金庫システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20250109BHJP
B65G 1/04 20060101ALI20250109BHJP
E05G 1/06 20060101ALI20250109BHJP
E05G 1/00 20060101ALI20250109BHJP
A47B 49/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B65G1/00 521E
B65G1/04 541
B65G1/04 511
E05G1/06
E05G1/00 C
A47B49/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110199
(22)【出願日】2023-07-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年8月8日に株式会社クマヒラ 東京・日本橋ショールームに展示 令和5年3月20日に株式会社クマヒラのウェブサイトに掲載 令和5年3月27日にカタログを配布 令和5年3月15日にプレスリリース 令和5年3月17日にニッキンに掲載 令和5年3月24日に広告に掲載 令和5年6月27日に株式会社熊平製作所に展示
(71)【出願人】
【識別番号】307011510
【氏名又は名称】株式会社熊平製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 一志
(72)【発明者】
【氏名】道町 知之
(72)【発明者】
【氏名】垣井 雄史
(72)【発明者】
【氏名】殿村 進一
(72)【発明者】
【氏名】田邊 翔希
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022AA17
3F022FF23
3F022FF35
3F022KK14
3F022MM01
3F022MM17
3F022NN12
(57)【要約】
【課題】複数の保護箱を密に格納可能な金庫室を備えながら、設置面積の縮小が可能な貸金庫システムを提供する。
【解決手段】貸金庫システムSは、上下方向に長い周回軌道に沿って循環する無端状部材11と、無端状部材11を周回軌道に沿って循環駆動する駆動部12と、金庫室R内において無端状部材11の周方向の一部に対して支持アーム40を介して連結され、複数の保護箱を上下方向に所定の隙間をあけて並べた状態で収容可能に構成された複数の収容体30とを備えている。収容体30は、貸金庫システムSにおける利用者が操作する側へ向けて開放されるとともに、保護箱が出し入れされる開放部を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の保護箱を格納する金庫室を備えた貸金庫システムであって、
上下方向に長い周回軌道に沿って循環する無端状部材と、
前記無端状部材を前記周回軌道に沿って循環駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
前記金庫室内において前記無端状部材の周方向の一部に対して支持アームを介して連結され、複数の前記保護箱を上下方向に所定の隙間をあけて並べた状態で収容可能に構成された複数の収容体とを備え、
前記収容体は、前記貸金庫システムにおける利用者が操作する側へ向けて開放されるとともに、前記保護箱が出し入れされる開放部を有し、
前記制御部は、前記収容体の前記開放部が前記金庫室に設けられている開口部と一致するまで前記無端状部材を周回駆動した後、前記無端状部材の周回を停止させるように前記駆動部を制御するように構成されている、貸金庫システム。
【請求項2】
請求項1に記載の貸金庫システムにおいて、
前記収容体における前記開放部が設けられている側には、前記収容体に収容された前記保護箱に対して係止する係止位置と当該保護箱に対して非係止となる非係止位置とに切替可能な係止部材と、前記係止部材を係止位置へ付勢する付勢部材とが設けられている、貸金庫システム。
【請求項3】
請求項1に記載の貸金庫システムにおいて、
前記収容体の内側面には、前記保護箱の下面を支持する支持部が前記保護箱の出し入れ方向に延びるように設けられ、
前記保護箱における前記収容体への収容方向奥側の下面には、奥側へ行くほど上に位置するように傾斜ないし湾曲したガイド部が設けられている、貸金庫システム。
【請求項4】
請求項1に記載の貸金庫システムにおいて、
前記金庫室の上部には、前記収容体の上面に摺接することによって当該収容体の揺れを抑制する上側揺れ抑制部が前記金庫室の奥行方向に延びるように設けられている、貸金庫システム。
【請求項5】
請求項1に記載の貸金庫システムにおいて、
前記金庫室の下部には、前記収容体の下面に摺接することによって当該収容体の揺れを抑制する下側揺れ抑制部が前記金庫室の奥行方向に延びるように設けられている、貸金庫システム。
【請求項6】
請求項1に記載の貸金庫システムにおいて、
前記収容体の外側面には、前記支持アームが連結されるブラケットと、当該ブラケットを前記収容体に締結する締結部材とが設けられている、貸金庫システム。
【請求項7】
請求項6に記載の貸金庫システムにおいて、
前記収容体の上部には、前記締結部材によって締結される前の前記ブラケットに対して上方から当接する当接部が前記収容体の側方へ延出するように設けられている、貸金庫システム。
【請求項8】
請求項6に記載の貸金庫システムにおいて、
前記収容体の外側面には、前記ブラケットに対して前記収容体の奥行方向に当接するように配置され、前記ブラケットの前記収容体に対する位置決めを行うための位置決め部材が設けられている、貸金庫システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、格納された複数の保護箱の中から所望の保護箱のみを利用者に対して利用可能にする貸金庫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば金融機関等には、貴重品等が収容される複数の保護箱を安全に保管するための貸金庫システムが設置されている。例えば特許文献1に開示されている貸金庫システムは、全自動貸金庫システムと呼ばれており、複数の保護箱が格納された金庫室と、利用者が認証操作等を行うクーポンブースとを有している。金庫室には、保護箱を水平方向及び上下方向に並んだ状態で格納するラックと、ラック内の保護箱を出し入れするとともに搬送するスタッカクレーンとが設置されている。そして、クーポンブースの操作端末で認証操作が行われると、所望の保護箱をスタッカクレーンがラックから引き出してクーポンブースの操作端末まで搬送し、利用者が保護箱を利用できるようになる。
【0003】
また、特許文献2には、回転式収納棚装置が開示されている。この回転式収納棚装置は、上下方向に長い軌道を描くように循環駆動される棚吊りチェーンに複数の収納棚を連結することによって構成されている。棚吊りチェーンを駆動することによって所望の収納棚を利用可能位置まで搬送し、収納棚への収納物の出し入れが行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-234048号公報
【特許文献2】特開平10-109711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、金融機関の店舗面積の縮小が顕著であり、貸金庫システムも設置面積(平面視での投影面積)の縮小が求められている。しかしながら、従来の貸金庫システムは、特許文献1に開示されているようにラック内の保護箱をスタッカクレーンで搬送するように構成されているので、金融機関への設置時には、ラックの設置に必要な面積と、スタッカクレーンの設置に必要な面積とを確保しなければならない。特にスタッカクレーンは、ラックの幅方向両端に亘って移動するものなので、当該方向に長い設置面が必要であるとともに、保護箱をラックから完全に引き出して上下左右に移動させるため、保護箱の長さ分よりも長い設置面が必要である。よって、特許文献1に開示されているような従来の貸金庫システムでは、近年の金融機関の店舗面積の縮小には対応できない。
【0006】
一方、特許文献2の回転式収納棚装置では、上下方向に長い軌道を描く棚吊りチェーンによって収納棚を搬送するようにしているので、スタッカクレーンを用いた搬送装置に比べて平面視での投影面積の縮小を図ることが可能であると考えられる。
【0007】
ところが、特許文献2の回転式収納棚装置では、収納棚を棚吊りチェーンに対して連結するための棚支持アームが収納棚ごとに必要になる。この回転式収納棚装置は、オフィスにおいて書類の保管等に、また病院においてはカルテの保管等に使用されるものであることから、当該文献の
図3や
図4等に示されているように、各収納棚は上下方向の寸法が奥行方向の寸法よりも長く設定されている。したがって、棚支持アームを設けるスペースを確保し易いので、収納棚ごとに棚支持アームを設けたとしても、特に問題は生じない。
【0008】
しかし、貸金庫システムで使用される多くの保護箱は、上下方向の寸法が奥行方向の寸法よりも短く設定された薄型形状である。加えて、貸金庫システムのスペース効率を高めるためには、保護箱の上下方向の間隔を狭めてできる限り密に配置したいという要求がある。したがって、特許文献2のような棚支持アームを設ける構成を貸金庫システムに適用しようとすると、棚支持アームを保護箱の上下方向に狭い間隔に合わせて上下方向に密に設けなければならない。棚支持アームを上下方向に密に設けるためには、棚支持アームが他の部材に干渉しないようにするための非干渉スペースも含めて設置スペースの確保が大きな課題になるし、そもそも、薄型の保護箱から上下方向に飛び出さないように棚支持アームを設けること自体が困難な場合もある。このような事情から、保護箱の上下方向の間隔を広げなければならず、結果的にスペース効率の悪化を招く。つまり、特許文献2の回転式収納棚装置を貸金庫システムに適用したとしても、当該貸金庫システムの設置面積の縮小効果は限定的であった。
【0009】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、複数の保護箱を密に格納可能な金庫室を備えながら、設置面積の縮小が可能な貸金庫システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、複数の保護箱を格納する金庫室を備えた貸金庫システムを前提とすることができる。貸金庫システムは、上下方向に長い周回軌道に沿って循環する無端状部材と、前記無端状部材を前記周回軌道に沿って循環駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、前記金庫室内において前記無端状部材の周方向の一部に対して支持アームを介して連結され、複数の前記保護箱を上下方向に所定の隙間をあけて並べた状態で収容可能に構成された複数の収容体とを備えている。
【0011】
前記収容体は、前記貸金庫システムにおける利用者が操作する側へ向けて開放されるとともに、前記保護箱が出し入れされる開放部を有している。前記制御部は、前記収容体の前記開放部が前記金庫室に設けられている開口部と一致するまで前記無端状部材を周回駆動した後、前記無端状部材の周回を停止させるように前記駆動部を制御するように構成されている。
【0012】
この構成によれば、1つの収容体に複数の保護箱が収容されており、その収容体を複数有しているので、支持アームの数が保護箱の数よりも大幅に少なくなる。これにより、複数の保護箱の上下方向の間隔を狭くして密に配置したとしても、支持アーム同士が干渉することはないので、多くの保護箱が格納された金庫室の小型化が可能になる。また、支持アームの数が保護箱の数よりも大幅に少なくなることで、支持アームを設けるためのスペースが削減され、このことによっても、金庫室の小型化が可能になる。
【0013】
前記収容体における前記開放部が設けられている側には、前記収容体に収容された前記保護箱に対して係止する係止位置と当該保護箱に対して非係止となる非係止位置とに切替可能な係止部材と、前記係止部材を係止位置へ付勢する付勢部材とが設けられていてもよい。
【0014】
この構成によれば、収容体に設けられている係止部材が付勢部材によって係止位置に常時付勢されているので、収容体に収容されている保護箱が当該収容体の開放部から不意に出てしまうことがなくなる。保護箱を出す際には、付勢部材による付勢力に抗して係止部材を非係止位置に切り替えればよく、これにより、必要時にのみ保護箱を収容体から容易に出すことができる。
【0015】
前記収容体の内側面には、前記保護箱の下面を支持する支持部が前記保護箱の出し入れ方向に延びるように設けられていてもよい。この場合、前記保護箱における前記収容体への収容方向奥側の下面には、奥側へ行くほど上に位置するように傾斜ないし湾曲したガイド部を設けることができる。
【0016】
この構成によれば、保護箱を収容体に入れる際、保護箱が支持部よりも若干下に位置している場合には、ガイド部が支持部に当たることで、保護箱の下面が支持部の高さになるまで導かれ、その後、保護箱の下面が支持部によって収容体の奥側まで案内されるので、保護箱を収容体にスムーズに入れることができる。
【0017】
ここで、収容体に傾斜ないし湾曲したガイド部を設けて保護箱を案内する構成も考えられるが、傾斜ないし湾曲したガイド部を設けようとすると、上下方向にある程度の寸法が必要になる。収容体には複数の保護箱が収容されていることから、全ての保護箱を案内できるようにガイド部を複数設けてしまうと、収容体全体の上下方向の寸法が長くなってしまい、ひいては、金庫室に格納可能な保護箱の数が減ってしまうおそれがある。
【0018】
このことに対して、本態様では、保護箱の下面を利用してガイド部を設けていることから、ガイド部は保護箱の上面と下面との間に収めることができる。これにより、保護箱の案内を可能にしながら、収容体の上下方向の寸法が長くなってしまうのを回避できる。
【0019】
前記金庫室の上部には、前記収容体の上面に摺接することによって当該収容体の揺れを抑制する上側揺れ抑制部が前記金庫室の奥行方向に延びるように設けられていてもよい。また、前記金庫室の下部には、前記収容体の下面に摺接することによって当該収容体の揺れを抑制する下側揺れ抑制部が前記金庫室の奥行方向に延びるように設けられていてもよい。
【0020】
すなわち、収容体は金庫室内で上下方向に長い周回軌道に沿って循環することになるが、周回軌道の上部及び下部では、収容体の動く方向が上向きから下向き、または下向きから上向きへ切り替わることになり、この時に水平方向に力が作用する。このように収容体の動きの向きが大きく変わる部分では収容体が大きく揺れるおそれがある。これに対して、本態様では、上側揺れ抑制部または下側揺れ抑制部を設けていることで、収容体の揺れを抑制することができ、収容体をスムーズに循環させることができる。
【0021】
前記収容体の外側面には、前記支持アームが連結されるブラケットと、当該ブラケットを前記収容体に締結する締結部材とが設けられていてもよい。すなわち、製造やメンテナンス時、収容体を無端状部材に連結する際には、事前に無端状部材に支持アームを取り付けておき、その後、収容体を金庫室に収容して支持アームに連結する方法が考えられる。この方法を採用する場合、金庫室が小型化されていることから、作業者が金庫室の中に入ることは困難であり、金庫室の外から連結する必要がある。本態様では、先にブラケットを支持アームに連結しておき、その後、収容体を金庫室に収容してブラケットを収容体に締結することが可能になるので、収容体の取付作業性が良好になる。
【0022】
前記収容体の上部には、前記締結部材によって締結される前の前記ブラケットに対して上方から当接する当接部が前記収容体の側方へ延出するように設けられていてもよい。この構成によれば、ブラケットを収容体に締結部材で締結する前に、収容体をブラケットに仮保持させておくことができる。これにより、締結部材による締結作業が容易になる。
【0023】
前記収容体の外側面には、前記ブラケットに対して前記収容体の奥行方向に当接するように配置され、前記ブラケットの前記収容体に対する位置決めを行うための位置決め部材が設けられていてもよい。この構成によれば、ブラケットを収容体に締結部材で締結する前に、ブラケットの収容体に対する位置決めを行うことができるので、締結部材による締結作業が容易になる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、複数の保護箱が収容される収容体を、上下方向に長い周回軌道に沿って循環する無端状部材に連結するようにしたので、複数の保護箱を密に格納可能な金庫室を備えながら、設置面積の縮小が可能な貸金庫システムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る貸金庫システムを上方から見た斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る貸金庫システムの側面図である。
【
図3】複数の保護箱が収容された収容体の斜視図である。
【
図4】複数の保護箱が収容された収容体の正面図である。
【
図5】保護箱が収容される前の収容体の斜視図である。
【
図6】保護箱が収容される前の収容体の正面図である。
【
図8】
図4におけるVIII-VIII線断面図である。
【
図10】収容体の無端状部材への連結構造を示す図である。
【
図12】FIG.12Aは上側揺れ止め部と収容体との関係を示す図であり、FIG.12Bは下側揺れ止め部と収容体との関係を示す図である。
【
図13】ブラケットが取り付けられた収容体の右側面図である。
【
図14】搬送装置と収容体との位置関係を示す側面図である。
【
図15】搬送装置のアームを伸ばした状態を示す
図14相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る貸金庫システムSを上方から見た斜視図であり、また、
図2は、本発明の実施形態に係る貸金庫システムSの側面図である。貸金庫システムSは、例えば銀行を含む金融機関等に設置されて運用される。貸金庫システムSは、内部に金庫室Rを有する金庫部1と、利用者や管理者等が操作可能な操作端末2とを備えている。
図1及び
図2に示す仮想線Aは、金庫部1が設置される金庫エリアA1と、操作端末2が設置されるクーポンブースA2との境界を示す線である。金庫エリアA1は、利用者が入ることのできない区域である。一方、クーポンブースA2は利用者が入ることのできる区域である。
【0028】
本実施形態の説明では、
図1に示すように、貸金庫システムSにおける利用者が操作する側を前側と呼び、その反対側を後側と呼ぶ。前側を手前側、後側を奥側と呼ぶこともできる。また、貸金庫システムSを利用者から見て右側に位置する側を単に「右」といい、貸金庫システムSを利用者から見て左側に位置する側を単に「左」というものとする。この方向の定義は、説明の便宜を図るためであり、本発明に係る貸金庫システムSの使用時や製造時の方向を限定するものではない。
【0029】
図1に示すように、操作端末2には、利用者が認証カード(図示せず)を差し込むためのカード差込口2aと、暗証番号等を入力するための複数のキー2bとが設けられている。操作端末2の上部には、扉2cが設けられている。扉2cは、金庫室Rから取り出された保護箱20(
図3等に示す)が収容される保護箱空間Bを開閉するための部材である。操作端末2の内部には、保護箱20を金庫室Rから取り出して保護箱空間Bまで搬送するための搬送装置3が配設されている。この搬送装置3は、保護箱空間Bにある保護箱20を金庫室Rへ搬送することも可能に構成されている。搬送装置3の詳細は後述する。
【0030】
図2に示すように、金庫部1は、筐体10を備えている。筐体10は、前壁部10aと、後壁部10bと、右側壁部10cと、左側壁部10dと、上壁部10eと、下壁部10fとを有している。筐体10を構成している各壁部10a~10fは、例えば耐火性等を備えた高強度な部材で構成されている。各壁部10a~10fのうち、例えば前壁部10aは開閉可能になっている。
【0031】
筐体10の内部が金庫室Rとなっている。金庫部1の設置に要する面積(設置面積)は、特に限定されるものではないが、例えば1m
2程度の小さな面積となっている。これは、近年の金融機関の店舗面積の縮小に対応するためであり、このような設置面積の縮小を実現するために、金庫室R内には、
図2に破線で示すように複数の保護箱20を収容する収容体30が上下方向に長い周回軌道に沿って循環移動するように設けられている。収容体30については
図3~
図6に示している。
【0032】
具体的に説明すると、金庫部1は、複数の収容体30が連結される無端状部材11(
図2に破線、
図7に仮想線で示す)と、無端状部材11を駆動する駆動部12と、駆動部12を制御する制御部13(
図2に破線で示す)とを備えている。無端状部材11は、ローラチェーンで構成されており、金庫室R内の左側部に設けられ、上下方向に長い周回軌道に沿って循環するようになっている。尚、
図7は、筐体10の左側壁部10dを当該筐体10の内部から見た図であり、無端状部材11は前後方向の中央部に位置付けられている。
【0033】
駆動部12は、上側スプロケット12aと、下側スプロケット12bと、上側支軸12cと、下側支軸12dと、電動モータ12e(
図2にのみ破線で示す)とを有している。上側支軸12cは、左側壁部10dの上下方向中央部よりも上方で左右方向に延びるように設けられている。上側スプロケット12aは、上側支軸12cによって左右方向に延びる軸芯周りに回転可能に左側壁部10dに対して支持されている。一方、下側支軸12dは、左側壁部10dの上下方向中央部よりも下方で上側支軸12cと平行に設けられている。下側スプロケット12bは、下側支軸12dによって左右方向に延びる軸芯周りに回転可能に左側壁部10dに対して支持されている。下側スプロケット12bと下側支軸12dとは相対回転不能になっている。
【0034】
無端状部材11は、上側スプロケット12a及び下側スプロケット12bに巻き掛けられている。上側スプロケット12a及び下側スプロケット12bが上下方向に間隔をあけて設けられているので、無端状部材11は上下方向に長い周回軌道を形成することになる。また、筐体10の左側壁部10dには、無端状部材11の周回軌道を囲むように延びるレール部14が設けられている。右側壁部10cの内面にも、左側壁部10dと同様に無端状部材11が設けられるとともに、周回軌道を囲むレール部14が設けられている。
【0035】
制御部13は、電動モータ12eを制御するための部分であり、例えばマイクロコンピュータや記憶装置等で構成されている。制御部13は、記憶装置に記憶されているプログラムに従って動作することで、電動モータ12eを回転させたり、停止させたりすることが可能になっている。電動モータ12eが回転を開始するタイミング、回転を停止するタイミング等は、制御部13が決定する。
【0036】
制御部13によって電動モータ12eが制御されると、電動モータ12eの回転力は、図示しないがローラチェーンや伝動ベルト等の動力伝達部材によって下側支軸12dに伝達される。下側支軸12dに伝達された電動モータ12eの回転力は下側スプロケット12bに伝達され、下側スプロケット12bが回転する。これにより、電動モータ12eの回転力が、無端状部材11を周回軌道に沿って循環駆動する駆動力となる。無端状部材11が循環駆動する際に上側スプロケット12aも回転する。尚、上側スプロケット12aを電動モータ12eによって回転させてもよい。また、本実施形態では、スプロケット12a、12bとローラチェーンからなる無端状部材11とを用いて収容体30を循環させるようにしているが、これに限らず、プーリと伝動ベルトからなる無端状部材(図示せず)とを用いて収容体30を循環させるようにしてもよい。
【0037】
筐体10の右側壁部10cにも左側壁部10dと同様な無端状部材11、上側スプロケット12a及び下側スプロケット12bが設けられている。上側支軸12c及び下側支軸12dは、右側壁部10cに達するまで延びていてもよく、この場合、上側支軸12cの右側部分に、右側の上側スプロケット12aを設け、下側支軸12dの右側部分に、右側の下側スプロケット12bを設けることができる。右側の上側スプロケット12a及び下側スプロケット12bに右側の無端状部材11を巻き掛けることで、左側の無端状部材11と同様に循環駆動させることができる。
【0038】
図8は、複数の保護箱20が収容された状態の収容体30の縦断面図である。本実施形態の収容体30は、5つの保護箱20を上下方向に所定の隙間をあけて並べた状態で収容可能に構成されている。
図8では、上から4つ目の保護箱20を途中まで引き出した状態(言い換えると途中まで入れた状態)を示している。尚、1つの収容体30に収容される保護箱20の数は、5つに限られるものではなく、2つ以上の任意の数の保護箱20を収容体30に収容することができる。また、保護箱20の上下方向の寸法は、同一でなくてもよく、上下方向の寸法が短い保護箱20と上下方向の寸法が長い保護箱20とが混在していてもよい。
【0039】
この図に示すように、多くの保護箱20は、その上下方向の寸法が、左右方向の寸法及び奥行方向の寸法よりも短く設定された薄型形状となっている。保護箱20の上面には、図示しないが蓋が設けられており、この蓋を利用者が鍵を用いて開閉可能になっている。保護箱20の手前側は、収容体30から引き出す際に手前となる側(
図8における左側)である。保護箱20の手前側には、搬送装置3のアームを引っ掛けるための引っ掛け部20aが設けられている。
【0040】
一方、保護箱20における収容体30への収容方向奥側(
図8における右側)の下面には、奥側へ行くほど上に位置するように傾斜したガイド部20bが設けられている。ガイド部20bは、奥側へ行くほど上に位置するように傾斜した傾斜面で構成される以外にも、奥側へ行くほど上に位置するように湾曲した湾曲面で構成されていてもよいし、傾斜面と湾曲面とを組み合わせて構成されていてもよい。また、保護箱20における収容体30への収容方向奥側(
図8における右側)の上面に、奥側へ行くほど下に位置するように傾斜面や湾曲面で構成されるガイド部20bを設けてもよい。
【0041】
図3~
図6に示すように、収容体30は、直方体に近い箱状をなしており、上板部30aと、下板部30bと、右板部30cと、左板部30dと、奥板部30eとを有している。上板部30aと下板部30bが略平行に水平方向に延びており、また右板部30cと左板部30dとが略平行に上下方向に延びている。奥板部30eは、上板部30aに対して略垂直に延びている。各板部30a~30eの寸法は、保護箱20の大きさや収容する保護箱20の数に応じて設定することができる。
【0042】
収容体30の手前側の面は全体が開放されており、従って、収容体30は手前側に開放口(開放部)31を有する構造となっている。保護箱20は、開放口31を介して収容体30へ入れることができるとともに、開放口31を介して収容体30から出すことができるようになっている。
【0043】
収容体30の開放口31の上縁部は上板部30aの手前側の縁部で構成され、収容体30の開放口31の下縁部は下板部30bの手前側の縁部で構成され、収容体30の開放口31の右縁部は右板部30cの手前側の縁部で構成され、収容体30の開放口31の左縁部は左板部30dの手前側の縁部で構成されている。これにより、収容体30の開放口31は正面側(手前側)から見たときに略矩形状となる。
【0044】
図5及び
図6に示すように、収容体30の左側の内側面及び右側の内側面には、それぞれ、保護箱20の下面を支持する左側支持部32及び右側支持部33が保護箱20の出し入れ方向に延びるように設けられている。すなわち、収容体30の左板部30dの内側面には、収容される保護箱20の数と同じ5つの左側支持部32が上下方向に互いに間隔をあけて設けられている。各左側支持部32は板状をなしており、収容体30の奥行方向及び左右方向に略水平に延びている。各左側支持部32の奥行方向の寸法は、各左側支持部32の左右方向の寸法よりも長く設定されている。
【0045】
収容体30の右板部30cの内側面には、左側支持部32と同様に5つの右側支持部33が上下方向に互いに間隔をあけて設けられている。左側支持部32と高さと、右側支持部33の高さとは同じになっている。左側支持部32及び右側支持部33の上面には摺動抵抗を低減させるための構造が設けられている。
【0046】
保護箱20を収容体30に収容する際には、開放口31から奥側へ移動させることになるが、収容し始めの段階では、保護箱20の下面が対応する左側支持部32及び右側支持部33よりも若干下に位置していることがある。この場合、保護箱20のガイド部20bが左側支持部32及び右側支持部33に当たることで、保護箱20の下面が左側支持部32及び右側支持部33の高さになるまで導かれる。このことを保護箱20の誘い込みという。保護箱20の誘い込みの後、保護箱20の下面が左側支持部32及び右側支持部33によって収容体30の奥側まで案内されるので、保護箱20を収容体30にスムーズに入れることができる。また、保護箱20が所定の位置よりも若干上に位置した場合でも、保護箱20における収容体30への収容方向奥側(
図8における右側)の上面にガイド部20bを設けておくことで、同様に保護箱20を収容体30にスムーズに入れることができる。
【0047】
本実施形態では、上述したように、保護箱20にガイド部20b(
図8に示す)を設けている。図示しないが、仮に、収容体30に傾斜ないし湾曲したガイド部を設けて保護箱20を案内する構成を採用した場合、傾斜ないし湾曲したガイド部を設けようとすると、上下方向にある程度の寸法が必要になる。収容体30には複数の保護箱20が収容されていることから、全ての保護箱20を案内できるように複数のガイド部を収容体30に設けてしまうと、収容体30全体の上下方向の寸法が長くなってしまい、ひいては、金庫室Rに格納可能な保護箱20の数が減ってしまうおそれがある。
【0048】
このことに対して、本実施形態では、保護箱20の下面を利用してガイド部20bを設けていることから、ガイド部20bは保護箱20の上面と下面との間に収めることができる。これにより、保護箱20の高さ方向の案内をガイド部20bによって実現しながら、収容体30の上下方向の寸法が長くなってしまうのを回避できる。
【0049】
図8に示すように、上下方向に隣合う左側支持部32の離間寸法Eは、上に位置する左側支持部32の下面と、すぐ下に位置する左側支持部32の上面との距離である。また、保護箱20の高さ寸法Fは、保護箱20の上面から下面までの距離である。さらに、保護箱20を収容体30に収容する際には、例えば製造公差の吸収等を目的として、保護箱20の高さ寸法Fよりも上記離間寸法Eを所定寸法Tだけ長く設定しておく必要がある。本実施形態では、上述したように保護箱20の下面を利用して保護箱20の誘い込みを実現しているので、保護箱20を誘い込むための形状を収容体30に設けずに済み、その分、上記離間寸法Eを短くすることができる。
【0050】
図3~
図6に示すように、収容体30における開放口31が設けられている側(手前側)には、収容体30に収容された各保護箱20に対して係止する係止部材34と、係止部材34を付勢する付勢部材35とが設けられている。本実施形態では、5つの保護箱20が1つの収容体30に収容されるので、1つの収容体30に5つの係止部材34及び付勢部材35が設けられている。具体的には、
図4に示すように、収容体30の左板部30dの外面には、一番上に収容された保護箱20に係止する係止部材34と、上から3番目に収容された保護箱20に係止する係止部材34と、一番下に収容された保護箱20に係止する係止部材34とが設けられている。一方、収容体30の右板部30cの外面には、上から2番目に収容された保護箱20に係止する係止部材34と、上から4番目に収容された保護箱20に係止する係止部材34とが設けられている。付勢部材35は、係止部材34ごとに設けられている。尚、係止部材34が設けられる部位は、上述した部位に限られるものではなく、収容体30に収容された各保護箱20を係止する部位であれば、右板部30cの外面でも左板部30dの外面でもよい。
【0051】
図9は、収容体30の左側面の上部を拡大して示す図である。係止部材34は、保護箱20に係止する係止部34aと、上下方向に長い長穴34bとを有している。係止部34aは、保護箱20の手前側の面に対向するように配置可能になっており、保護箱20が手前側に移動しようとすると、係止部34aが保護箱20の手前側の面に当接し、これにより、保護箱20が収容体30から出てしまうのを防止できる。
【0052】
長穴34bには、収容体30の左板部30dに突設された複数の軸部30fが挿通されている。複数の軸部30fは、上下方向に互いに間隔をあけて設けられており、軸部30fの先端部には、長穴34bからの抜け止め部30gが設けられている。軸部30fは長穴34b内を当該長穴34bの長手方向に相対的に移動可能になっている。すなわち、FIG.9Aに示すように、係止部材34が上に移動した状態で係止部34aが保護箱20の手前側の面に対向するように配置される。係止部材34の上に移動した位置が、収容体30に収容された保護箱20に係止する係止位置である。
【0053】
一方、FIG.9Bに示すように、係止部材34が下に移動した状態で係止部34aが保護箱20の手前側の面よりも下に配置されるので、保護箱20の出し入れが係止部材34によって阻害されなくなる。係止部材34の下に移動した位置が、収容体30に収容された保護箱20に非係止となる非係止位置である。このように、係止部材34は、係止位置と非係止位置とに切替可能になっている。
【0054】
付勢部材35は、例えば引っ張りバネ等のように、係止部材34に対して上方へ向けて引っ張り力を作用させる部材で構成されている。付勢部材35の上部は、収容体30の左板部30dに固定されている。付勢部材35の下部は、係止部材34に固定されている。これにより、付勢部材35による引っ張り力は、係止部材34を係止位置へ付勢する付勢力となって当該係止部材34に作用する。尚、全ての係止部材34及び付勢部材35は同様に構成されている。右の係止部材34及び付勢部材35は、左の係止部材34及び付勢部材35と左右対称構造である。
【0055】
図10に示すように、金庫部1は、金庫室R内において収容体30を無端状部材11の周方向の一部に対して連結するための支持アーム40、連結軸41、ブラケット42及び振れ止め軸43を備えている。支持アーム40、連結軸41、ブラケット42及び振れ止め軸43は、収容体30の左右両側にそれぞれ設けられており、
図10では右側のものを示している。右側の支持アーム40、連結軸41及びブラケット42によって収容体30の右側部分が右側の無端状部材11に連結され、また左側の支持アーム40、連結軸41及びブラケット42によって収容体30の左側部分が左側の無端状部材11に連結される。支持アーム40、連結軸41、ブラケット42及び振れ止め軸43は、左右対称構造である。
【0056】
右側のブラケット42は、収容体30の右外側面に対して着脱可能に取り付けられている。ブラケット42には、左右方向に延びる連結軸41が設けられている。連結軸41には下方へ延びる板状部材を介して振れ止め軸43が連結されている。振れ止め軸43の右側部分は、筐体10の右側壁部10cに設けられているレール部14に嵌まるように形成されており、振れ止め軸43の右側部分はレール部14によって案内され、周回軌道を循環する。
【0057】
右側の支持アーム40の一端部は、右側の無端状部材11に固定されている。右側の支持アーム40の他端部は右側の連結軸41に対して当該連結軸41の軸芯周りに回転可能に支持されている。これにより、収容体30は右側の支持アーム40に対して回転可能になる。
【0058】
左側のブラケット42は、収容体30の左外側面に対して着脱可能に取り付けられている。ブラケット42には、左右方向に延びる連結軸41が設けられている。連結軸41には下方へ延びる板状部材を介して振れ止め軸43が連結されている。振れ止め軸43の左側部分は、筐体10の左側壁部10dに設けられているレール部14に嵌まるように形成されており、振れ止め軸43の左側部分はレール部14によって案内され、周回軌道を循環する。
【0059】
左側の支持アーム40の一端部は、左側の無端状部材11に固定されている。左側の支持アーム40の他端部は左側の連結軸41に対して当該連結軸41の軸芯周りに回転可能に支持されている。これにより、収容体30は左側の支持アーム40に対して回転可能になる。
【0060】
図2では、収容体30を4つしか示していないが、無端状部材11には、4つ以上の収容体30が互いに接触しない程度の狭い隙間をあけて連結されている。これにより、多くの収容体30を共通の無端状部材11によって循環駆動することができる。尚、収容体30の数は特に限定されるものではなく、いくつであってもよい。無端状部材11の循環方向は特に限定されるものではなく、
図2の右側面視で時計回りであってもよいし、反時計回りであってもよい。また、複数の収容体30は、隙間をあけずに互いに接触する位置で無端状部材11に連結されていてもよい。
【0061】
図2の右側面視で時計回りの場合、左右の無端状部材11を循環駆動すると、例えば前側に位置している収容体30は上方へ移動した後、循環軌道の後側に移動してから下方へ移動し、その後、循環軌道の前側に移動する。無端状部材11に連結された収容体30は、循環時、貸金庫システムSにおける利用者が操作する側に向けて開放するように配置される。すなわち、支持アーム40によって無端状部材11に連結された収容体30の開放口31は、循環軌道の前側を移動する際には前方に向いている。尚、開放口31は、循環中、常に前方に向くようになっている。
【0062】
図11は、循環中の収容体30の揺れ易さが位置によって異なっていることを説明する概略図である。収容体30が上方または下方へ移動しているときは、収容体30に対して前後方向の加速度が殆ど作用しないので、収容体30は殆ど揺れず、収容体30の揺れは小さくなる。一方、収容体30が周回軌道の上部に達して前側から後側へ移動するとき、及び収容体30が周回軌道の下部に達して後側から前側へ移動するときには、収容体30に対して前後方向の加速度が作用するので、収容体30の揺れが大きくなる。
【0063】
このことに対して、本実施形態の金庫部1は、
図12のFIG.12Aに示すように周回軌道の上部において収容体30の前後方向の揺れを止めるための上側揺れ止め部15と、
図12のFIG.12Bに示すように周回軌道の下部において収容体30の前後方向の揺れを止めるための下側揺れ止め部16とを有している。上側揺れ止め部15は、金庫室Rの上部において当該金庫室Rの前後方向(奥行方向)に延びる部材で構成されており、周回軌道の上部において前側から後側へ移動している収容体30の上面に摺接することによって当該収容体30の揺れを止めるように構成されている。上側揺れ止め部15の前後方向の寸法は、収容体30の上面の前後方向の寸法よりも長く設定されている。上側揺れ止め部15は、筐体10の上壁部10eの下面に下方へ突出するように取り付けられている。複数の上側揺れ止め部15を左右方向に間隔をあけて設けてもよい。
【0064】
下側揺れ止め部16は、金庫室Rの下部において当該金庫室Rの前後方向(奥行方向)に延びる部材で構成されており、周回軌道の下部において後側から前側へ移動している収容体30の下面に摺接することによって当該収容体30の揺れを止めるように構成されている。下側揺れ止め部16の前後方向の寸法は、収容体30の下面の前後方向の寸法よりも長く設定されている。下側揺れ止め部16は、筐体10の下壁部10fの上面に上方へ突出するように取り付けられている。複数の下側揺れ止め部16を左右方向に間隔をあけて設けてもよい。尚、上側揺れ止め部15及び下側揺れ止め部16は必要に応じて設ければよい。
【0065】
図13に示すように、収容体30の右外側面には、支持アーム40(
図10に示す)が連結されるブラケット42と、当該ブラケット42を収容体30に締結するための締結部材44とが設けられている。ブラケット42は、収容体30の右板部30cの外面に沿って上下方向及び前後方向に延びるように形成された金属製の板材で構成されている。ブラケット42が収容体30の右板部30cに接触するように配置された状態で、ボルトやネジ等の締結部材44を、右側方からブラケット42を貫通させ、収容体30の右板部30cに設けられたネジ孔に螺合させる。これにより、ブラケット42が収容体30に締結固定される。締結部材44を緩めれば、ブラケット42を収容体30から取り外すことができる。尚、収容体30の左外側面にも同様にブラケット42と締結部材44とが設けられている。
【0066】
図3に示すように、収容体30の上部には、締結部材44によって締結される前のブラケットに対して上方から当接する当接部37が収容体30の側方へ延出するように設けられている。すなわち、ブラケット42の上縁部は、前後方向に直線状に延びている。ブラケット42が収容体30への締結位置近傍に配置されると、ブラケット42の上縁部が収容体30の上部近傍に位置付けられ、当該収容体30の上部近傍で前後方向に延びる姿勢となる。この姿勢にあるブラケット42の上縁部が当接するように当接部37が形成されている。左右ともに当接部37が設けられている。
【0067】
例えば、無端状部材11に取り付けた支持アーム40に連結軸41を取り付け、さらに連結軸41にブラケット42を取り付けている場合には、既に無端状部材11に支持されているブラケット42に対して収容体30を取り付けることになる。このとき、収容体30の左右に当接部37が設けられていることで、ブラケット42を収容体30に締結部材44で締結する前に、収容体30の重量を当接部37によってブラケット42で支持できる。これが収容体30の仮保持状態である。収容体30をブラケット42に仮保持させておくことができるので、締結部材44によるブラケット42の締結作業が容易になる。
【0068】
収容体30の外側面には、ブラケット42に対して収容体30の奥行方向に当接するように配置され、ブラケット42の収容体30に対する位置決めを行うための位置決め部材38が設けられている。すなわち、ブラケット42の奥側部分には、手前側部分に比べて下方へ延出する延出部42aが形成されている。延出部42aには、手前側に向けて開放する切欠部42bが形成されている。
【0069】
一方、収容体30の右板部30cには、板材で構成された位置決め部材38が右側方へ突出するように取り付けられている。ブラケット42が無端状部材11に取り付けられた状態で、収容体30を手前側から奥側へ移動させていくと、位置決め部材38がブラケット42の切欠部42bに嵌まることで、収容体30がそれ以上、奥側へ移動しなくなる。この位置がブラケット42を締結部材44によって収容体30に締結する位置である。また、位置決め部材38がブラケット42の切欠部42bに嵌った際に、板状部材でブラケット42を側方から押さえる構造を設けているため、位置決め部材38のブラケット42に対する左右方向の動きも規制することができる。これらにより、収容体30とブラケット42の奥側部分で締結作業を行う必要がなくなり、手前側のみで締結作業を行えるため、締結作業が容易になる。
【0070】
図14は、収容体30の開放口31が金庫室Rに設けられている開口部10hと一致している状態を示している。この図に示すように、制御部13は、駆動部12の電動モータ12eを制御することで、所望の収容体30の開放口31が金庫室Rの開口部10hと一致するまで無端状部材11を周回駆動した後、無端状部材11の周回を停止させる。具体的に説明すると、利用者の識別情報と、保護箱20の位置情報とは関連付けられた状態で操作端末2に記憶されている。保護箱20の位置情報には、複数の収容体30のうち、どの収容体30に収容されているか、その収容体30の何段目に収容されているかが含まれている。保護箱20の位置情報が特定されると、その保護箱20が開口部10hの高さと一致するまで制御部13が駆動部12の電動モータ12eを回転させる。このような制御手法は従来から周知であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0071】
搬送装置3は、水平方向に伸縮可能なアーム3aを備えている。
図14はアーム3aが縮んだ状態を示しており、
図15はアーム3aが伸びた状態を示している。所望の保護箱20が開口部10hの高さと一致した状態で停止すると、シャッター部材等(図示せず)によって閉じていた開口部10hが開放される。その後、搬送装置3のアーム3aが伸びると、アーム3aの先端部が係止部材34を下方へ押圧し、この押圧力により、係止位置にある係止部材34(
図9のFIG.9Aに示す)が付勢部材35の付勢力に抗して非係止位置(
図9のFIG.9B)に移動する。そして、アーム3aが有する係合部(図示せず)をアクチュエータ等で移動させて保護箱20の引っ掛け部20aに引っ掛ける。その後、係合部を搬送装置3によって手前に引くことで保護箱20を収容体30から出し、保護箱20を開口部10hから保護箱空間Bに搬送する。これにより、利用者が保護箱20を利用することができる。
【0072】
保護箱20の利用が終わると、搬送装置3によって保護箱20を開口部10hから収容体30に収容することができる。保護箱20を収容体30に収容した後、アーム3aの係止部を引っ掛け部20aから外し、アーム3aを
図14に示すように縮める。その後、開口部10hが閉じられる。尚、搬送装置3の構成は上述した構成に限られるものではなく、保護箱20を収容体30から出し入れ可能な構成であればよい。
【0073】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の保護箱20を収容可能な複数の収容体30を無端状部材11に連結し、金庫室R内で上下方向に長い周回軌道に沿って循環させるようにしたので、金庫部1の設置面積が小さくても、多くの保護箱20を金庫室Rに格納できる。
【0074】
そして、各収容体30に複数の保護箱20が収容されており、その収容体30を複数有しているので、支持アーム40の数が保護箱20の数よりも大幅に少なくなる。これにより、複数の保護箱20の上下方向の間隔を狭くして密に配置したとしても、支持アーム40同士が干渉することはないので、多くの保護箱20が格納された金庫室Rの小型化が可能になる。また、支持アーム40の数が保護箱20の数よりも大幅に少なくなることで、支持アーム40を設けるためのスペースが削減され、このことによっても、金庫室Rの小型化が可能になる。
【0075】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明に係る貸金庫システムは、例えば設置面積が小さい金融機関等に導入する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0077】
10h 開口部
11 無端状部材
12 駆動部
13 制御部
15 上側揺れ止め部(上側揺れ抑制部)
16 下側揺れ止め部(下側揺れ抑制部)
20 保護箱
20b ガイド部
30 収容体
31 開放口(開放部)
32 左側支持部
33 右側支持部
34 係止部材
35 付勢部材
37 当接部
38 位置決め部材
40 支持アーム
42 ブラケット
R 金庫室
S 貸金庫システム