(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025082250
(43)【公開日】2025-05-28
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250521BHJP
【FI】
H01G4/30 201M
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024134553
(22)【出願日】2024-08-09
(31)【優先権主張番号】10-2023-0158979
(32)【優先日】2023-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ヒョ スン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン ジン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ホ サム
(72)【発明者】
【氏名】シム、ダエ ジン
(72)【発明者】
【氏名】リー、セウン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヨン フワ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ホ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AD02
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E082AA01
5E082BC19
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
5E082JJ03
5E082JJ12
(57)【要約】
【課題】耐湿信頼性、電気的特性及び信頼性が向上した積層型電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む容量形成部、並びに上記容量形成部の上記第1方向の両端面に配置されるカバー部を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記カバー部は、バリウム(Ba)、ガリウム(Ga)及びスズ(Sn)を含み、上記カバー部に含まれるバリウム(Ba)100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、上記カバー部に含まれるバリウム(Ba)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)は、0.2≦A/B≦4.0を満たすことができる。
【選択図】
図5a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む容量形成部、並びに前記容量形成部の前記第1方向の両端面に配置されるカバー部を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記カバー部は、バリウム(Ba)、ガリウム(Ga)及びスズ(Sn)を含み、
前記カバー部に含まれるバリウム(Ba)100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、前記カバー部に含まれるバリウム(Ba)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)は、
0.2≦A/B≦4.0を満たす、積層型電子部品。
【請求項2】
前記カバー部に含まれるバリウム(Ba)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)は、0.3モル以上6.0モル以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記カバー部に含まれるバリウム(Ba)100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)は、0.1モル以上3.0モル以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記誘電体層はガリウム(Ga)を含まない、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記容量形成部の誘電体層を第1誘電体層とするとき、前記カバー部は第2誘電体層を含み、
前記第1誘電体層の組成は、前記第2誘電体層の組成と異なる、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記カバー部は複数の結晶粒を含み、前記カバー部に含まれる複数の結晶粒の平均大きさは170nm以上200nm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記カバー部に含まれる複数の結晶粒の平均大きさ(AVG)と、前記カバー部に含まれる複数の結晶粒の大きさの標準偏差(STD)との比(STD/AVG)を大きさ変動係数(CV)とするとき、
大きさ変動係数(CV)の分率は50%以上60%以下である、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む容量形成部、並びに前記容量形成部の前記第1方向の両端面に配置されるカバー部を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記カバー部は、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)及びスズ(Sn)を含み、
前記カバー部に含まれるチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)は、0.3モル以上6.0モル以下である、積層型電子部品。
【請求項9】
前記カバー部に含まれるチタン(Ti)100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)は、0.1モル以上3.0モル以下である、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記カバー部に含まれるチタン(Ti)100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、前記カバー部に含まれるチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)は、
0.2≦A/B≦4.0を満たす、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記誘電体層はガリウム(Ga)を含まない、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記容量形成部の誘電体層を第1誘電体層とするとき、前記カバー部は第2誘電体層を含み、
前記第1誘電体層の組成は、前記第2誘電体層の組成と異なる、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記カバー部は複数の結晶粒を含み、前記カバー部に含まれる複数の結晶粒の平均大きさは170nm以上200nm以下である、請求項8から12のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記カバー部に含まれる複数の結晶粒の平均大きさ(AVG)と、前記カバー部に含まれる複数の結晶粒の大きさの標準偏差(STD)との比(STD/AVG)を大きさ変動係数(CV)とするとき、
大きさ変動係数(CV)の分率は50%以上60%以下である、請求項13に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話などの様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。コンピュータ、モバイル機器など、各種の電子機器が小型化、高出力化されるにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化の要求が増大している。
【0004】
積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化に伴い、高い電気的特性を実現すべく、電界集中現象を緩和するために微細構造である誘電体結晶粒の大きさを減少させる研究が進められてきた。誘電体結晶粒の大きさを減少させることにより、電界集中現象は改善されているものの、微細構造内の気孔が過度に生成することで、むしろ耐湿信頼性が劣化する問題点が発生しており、電気的特性及び耐湿信頼性を共に解決する研究が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決しようとする様々な課題の一つは、耐湿信頼性が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0007】
本発明の解決しようとする様々な課題の一つは、電気的特性が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0008】
本発明の解決しようとする様々な課題の一つは、信頼性が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0009】
但し、本発明の解決しようとする様々な課題は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む容量形成部、並びに上記容量形成部の上記第1方向の両端面に配置されるカバー部を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記カバー部は、バリウム(Ba)、ガリウム(Ga)及びスズ(Sn)を含み、上記カバー部に含まれるバリウム(Ba)100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、上記カバー部に含まれるバリウム(Ba)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)は、0.2≦A/B≦4.0を満たすことができる。
【0011】
本発明の他の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む容量形成部、並びに上記容量形成部の上記第1方向の両端面に配置されるカバー部を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記カバー部は、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)及びスズ(Sn)を含み、上記カバー部に含まれるチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は、0.3モル以上6.0モル以下であることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の様々な効果の一つとして、積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させることができる。
【0013】
本発明の様々な効果の一つとして、積層型電子部品の電気的特性を向上させることができる。
【0014】
本発明の様々な効果の一つとして、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0015】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
【
図2】内部電極の積層構造を示した分離斜視図を概略的に示したものである。
【
図3】
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図4】
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図5a】カバー部の断面を透過電子顕微鏡(TEM)のEDS分析モードでスズ(Sn)元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【
図5b】カバー部の断面を透過電子顕微鏡(TEM)のEDS分析モードでガリウム(Ga)元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【
図6a】比較例のカバー部の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した後、プログラムを通じて結晶粒を観察したイメージである。
【
図6b】実施例のカバー部の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した後、プログラムを通じて結晶粒を観察したイメージである。
【
図6c】
図6a及び
図6bで観察された結晶粒の平均大きさを示した棒グラフである。
【
図7a】()は、比較例のカバー部の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した後、気孔Pを観察したイメージである。
【
図7b】実施例のカバー部の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した後、気孔Pを観察したイメージである。
【
図7c】
図7a及び
図7bで観察された気孔率(porosity)を示した棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上に同一符号で示される要素は同一要素である。
【0018】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0019】
図面において、第1方向は積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0020】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、
図2は、内部電極の積層構造を示した分離斜視図を概略的に示したものであり、
図3は、
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図4は、
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【0021】
以下、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳細に説明する。但し、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は、誘電体組成物を用いる様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用されることができる。
【0022】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層111と第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含む容量形成部Ac、並びに上記容量形成部Acの上記第1方向の両端面(end-surface)に配置されるカバー部112、113を含む本体110と、上記本体110上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記カバー部112、113は、バリウム(Ba)、ガリウム(Ga)及びスズ(Sn)を含み、上記カバー部112、113に含まれるバリウム(Ba)100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、上記カバー部112、113に含まれるバリウム(Ba)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)は、0.2≦A/B≦4.0を満たすことができる。
【0023】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていてもよい。
【0024】
より具体的に、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量を形成する容量形成部Acを含むことができる。
【0025】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状やこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれるセラミック粒子の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないものの、実質的に六面体形状を有することができる。
【0026】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1面1及び第2面2、第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに対向する第3面3及び第4面4、第1面1、第2面2、第3面3及び第4面4と連結され、第3方向に互いに対向する第5面5及び第6面6を有することができる。
【0027】
本体110を形成する複数の誘電体層111は、焼成された状態であり、隣接する誘電体層111の間の境界は、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を利用せずには確認しにくいほど一体化されることができる。
【0028】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り制限されない。一般的にペロブスカイト(ABO3)系材料を使用することができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粒子を含むことができ、セラミック粒子の例として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)、又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0029】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粒子に、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0030】
また、誘電体層111は、チタン酸バリウム(BaTiO3)のような誘電体物質を用いて形成することができるため、焼成後に誘電体微細構造を含むことができる。誘電体微細構造は、複数の結晶粒、上記隣接した結晶粒の間に配置される結晶粒界、及び上記結晶粒界が3つ以上接する地点に配置される三重点を含むことができ、それぞれ複数個を含むことができる。
【0031】
本発明では、後述するカバー部112、113に含まれる誘電体層と区分するために、容量形成部Acに含まれる誘電体層111は第1誘電体層111と定義することができ、カバー部112、113に含まれる誘電体層は第2誘電体層と定義することができる。
【0032】
本発明において、積層型電子部品100の各構成に含まれる元素の含有量を測定するより具体的な方法の一例として、破壊工法の場合、走査電子顕微鏡(SEM)のエネルギー分散X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、EDS)モード、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)のEDSモード、又は走査透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope、STEM)のEDSモードを用いて成分を分析することができる。まず、焼結が完了した本体又はサイドマージン部の断面(cross-section)のうち誘電体微細構造を含む領域において、集束イオンビーム(Focused Ion Beam、FIB)装備を用いて薄片化された分析試料を準備する。そして、薄片化された試料をキセノン(Xe)又はアルゴン(Ar)イオンミリング(ion milling)を用いて表面のダメージ層を除去し、その後、SEM-EDS、TEM-EDS、又はSTEM-EDSを用いて得られたイメージにおいて、測定しようとする各成分をマッピング(mapping)して定性/定量分析を進める。この場合、各成分の定性/定量分析グラフは、各元素の質量百分率(wt%)、原子百分率(at%)、又はモル百分率(mol%)に換算して表すこともできる。このとき、特定成分のモル数に対する他の特定成分のモル数を換算して表すことができる。
【0033】
他の方法としては、チップを粉砕して誘電体微細構造が含まれた領域を選別し、このように選別された誘電体微細構造が含まれた部分を誘導結合プラズマ分光分析器(ICP-OES)、誘導結合プラズマ質量分析器(ICP-MS)などの装置を用いて、誘電体微細構造が含まれた領域の成分を分析することができる。
【0034】
本発明の一実施形態において、容量形成部Acの第1誘電体層111はガリウム(Ga)を含まなくてよい。
【0035】
ここで、容量形成部Acの第1誘電体層111がガリウム(Ga)を含まないとは、第1誘電体層111を焼成する前、第1誘電体層111になる誘電体スラリー(slurry)又は誘電体グリーンシートの状態がガリウム(Ga)を含まないことを意味することができ、容量形成部Acの中央部領域に位置する第1誘電体層111はガリウム(Ga)を含まないことを意味することができる。
【0036】
すなわち、後述するカバー部112、113に含まれるガリウム(Ga)が、高温熱処理などの焼成過程が進められるにつれて、容量形成部Acのうちカバー部112、113と隣接した容量形成部Acの第1誘電体層111の領域にガリウム(Ga)が拡散することもあるが、容量形成部Acの中央部領域に位置する第1誘電体層111はガリウム(Ga)を含まないことを意味することができる。
【0037】
例えば、第1誘電体層111を含む本体110の第3方向の中心における第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を基準として、第1方向及び第2方向の中心部に位置する10μm×10μmの領域を透過電子顕微鏡(TEM)のエネルギー分散X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectrometer、EDS)モードで観察したとき、ガリウム(Ga)が検出されないか、ガリウム(Ga)が0.1at%未満で検出されることを意味することができる。
【0038】
第1誘電体層111の厚さtdは、特に限定する必要はない。
【0039】
ただし、積層型電子部品の高容量化を達成するために、第1誘電体層111の厚さは3.0μm以下であることができ、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、第1誘電体層111の厚さは1.0μm以下であることができ、好ましくは0.6μm以下であることができ、より好ましくは0.4μm以下であることができる。
【0040】
ここで、第1誘電体層111の厚さtdは、第1内部電極121及び第2内部電極122の間に配置される第1誘電体層111の厚さtdを意味することができる。
【0041】
一方、第1誘電体層111の厚さtdは、第1誘電体層111の第1方向の大きさを意味することができる。また、第1誘電体層111の厚さtdは、第1誘電体層111の平均厚さtdを意味することができ、第1誘電体層111の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0042】
第1誘電体層111の第1方向の平均大きさは、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、1つの第1誘電体層111の第1方向の平均大きさは、スキャンされたイメージにおいて、1つの第1誘電体層111を第2方向に等間隔の30個の地点で第1方向の大きさを測定して計算した平均値を意味することができる。上記等間隔の30個の地点は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10つの第1誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、第1誘電体層111の第1方向の平均大きさをさらに一般化することができる。
【0043】
内部電極121、122は、第1誘電体層111と交互に積層されることができる。
【0044】
内部電極121、122は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1内部電極121及び第2内部電極122は、本体110を構成する第1誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ露出されることができる。
【0045】
より具体的に、第1内部電極121は、第4面4と離隔され、第3面3を介して露出されることができ、第2内部電極122は、第3面3と離隔され、第4面4を介して露出されることができる。本体110の第3面3には第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0046】
すなわち、第1内部電極121は、第2外部電極132とは連結されずに第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は、第1外部電極131とは連結されずに第2外部電極132と連結されることができる。このとき、第1内部電極121及び第2内部電極122は、中間に配置された第1誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0047】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成されることができる。
【0048】
内部電極121、122を形成する材料は、特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含むことができる。
【0049】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを用いることができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0050】
一方、内部電極121、122の厚さteは、特に限定する必要はない。
【0051】
但し、積層型電子部品の高容量化を達成するために、内部電極121、122の厚さは1.0μm以下であることができ、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さは0.6μm以下であることができ、より好ましくは0.4μm以下であることができる。
【0052】
ここで、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の第1方向の大きさを意味することができる。また、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さteを意味することができ、内部電極121、122の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0053】
内部電極121、122の第1方向の平均大きさは、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、1つの内部電極の第1方向の平均大きさは、スキャンされたイメージにおいて、1つの内部電極を第2方向に等間隔の30個の地点で第1方向の大きさを測定して計算した平均値であることができる。上記等間隔の30個の地点は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10つの内部電極に拡張して平均値を測定すると、内部電極の第1方向の平均大きさをさらに一般化することができる。
【0054】
一方、本発明の一実施形態において、複数の第1誘電体層111のうち少なくとも1つの平均厚さtdと、複数の内部電極121、122のうち少なくとも1つの平均厚さteは、2×te<tdを満たすことができる。
【0055】
言い換えると、第1誘電体層111の1つの平均厚さtdは、内部電極121、122の1つの平均厚さteの2倍よりもさらに大きくてよい。好ましくは、複数の第1誘電体層111の平均厚さtdは、複数の内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりもさらに大きくてよい。
【0056】
一般的に高電圧電場用電子部品は、高電圧環境下での絶縁破壊電圧(Breakdown Voltage、BDV)の低下による信頼性問題が主なイシューである。
【0057】
そこで、高電圧環境下での絶縁破壊電圧の低下を防ぐために、第1誘電体層111の平均厚さtdを内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりもさらに大きくすることにより、内部電極間の距離である誘電体層の厚さを増加させることができ、絶縁破壊電圧特性を向上させることができる。
【0058】
第1誘電体層111の平均厚さtdが内部電極121、122の平均厚さteの2倍以下である場合は、内部電極間の距離である誘電体層の平均厚さが薄くて絶縁破壊電圧が低下することがあり、内部電極間の短絡が発生する可能性がある。
【0059】
一方、本体110は、容量形成部Acの第1方向の両端面(end-surface)上に配置されるカバー部112、113を含むことができる。
【0060】
具体的に、容量形成部Acの第1方向の一面に配置される第1カバー部112及び容量形成部Acの第1方向の他面に配置される第2カバー部113を含むことができ、より具体的に、容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112及び容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0061】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の第2誘電体層又は2つ以上の第2誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0062】
上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極121、122を含まず、第1誘電体層111と同一の誘電体物質を母材主成分として含むことができる。すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113の第2誘電体層は、セラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を母材主成分として含むことができる。
【0063】
第2誘電体層は、チタン酸バリウム(BaTiO3)のような誘電体物質を用いて形成することができるため、焼成後に誘電体微細構造を含むことができる。誘電体微細構造は、複数の結晶粒、上記隣接した結晶粒の間に配置される結晶粒界、及び上記結晶粒界が3つ以上接する地点に配置される三重点を含むことができ、それぞれ複数個を含むことができる。
【0064】
ただし、第2誘電体層の組成は、第1誘電体層111の組成と異なっていてもよく、例えば、第2誘電体層はガリウム(Ga)を含むことができる。
【0065】
言い換えると、カバー部112、113はガリウム(Ga)を含むことができる。
【0066】
カバー部112、113がガリウム(Ga)を含むことにより、低温焼成を可能とし、結晶粒の過度な粒成長を抑制し、均一な大きさの粒成長を誘導して結晶粒大きさの分布度を改善させることができる。これにより、気孔Pの数が減少することができ、これに伴い、カバー部112、113の緻密性が向上して耐湿信頼性が向上されることができる。また、外部からの衝撃を受けてもクラック(crack)の生成を抑制することができるため、機械的特性が向上されることができる。
【0067】
また、カバー部112、113は、スズ(Sn)を含むことができる。
【0068】
カバー部112、113がスズ(Sn)を含むことにより、セラミック材料の結晶粒の大きさ(grain size)を減少させることができ、適切な結晶粒の大きさに制御することで、電界集中が緩和され電気的特性を改善させることができる。
【0069】
本発明において、カバー部112、113に含まれるガリウム(Ga)及びスズ(Sn)のモル数は、チタン酸バリウム(BaTiO3)系母材主成分100モルを基準として添加された含有量であることができ、又は、カバー部112、113に含まれるガリウム(Ga)及びスズ(Sn)のモル数は、バリウム(Ba)100モルを基準として添加されたモル数であるか、カバー部112、113に含まれるガリウム(Ga)及びスズ(Sn)のモル数は、チタン(Ti)100モルを基準として添加されたモル数であることができるが、特にこれに制限されるものではない。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系母材主成分のバリウム(Ba)イオンの位置であるA-siteにバリウム(Ba)以外の他の物質が置換・固溶された場合、A-site 100モルと表現するか、チタン(Ti)100モルと表現することができる。または、チタン酸バリウム(BaTiO3)系母材主成分のチタン(Ti)イオンの位置であるB-siteにチタン(Ti)以外の他の物質が置換・固溶された場合、B-site 100モルと表現するか、バリウム(Ba)100モルと表現することができる。同様に、チタン酸バリウム(BaTiO3)系母材主成分のバリウム(Ba)イオンの位置であるA-siteにバリウム(Ba)以外の他の物質が置換・固溶された場合、及びチタン(Ti)イオンの位置であるB-siteにチタン(Ti)以外の他の物質が置換・固溶された場合、A-site 100モル又はB-site 100モルと表現することができる。
【0070】
本発明の一実施形態において、カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)は、0.2≦A/B≦4.0を満たすことができる。
【0071】
言い換えると、カバー部112、113に含まれるバリウム(Ba)100モルに対するスズ(Sn)のモル数と、カバー部112、113に含まれるバリウム(Ba)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数との比率は、0.2以上4.0以下を満たすことができる。
【0072】
または、カバー部112、113に含まれるチタン(Ti)100モルに対するスズ(Sn)のモル数と、カバー部112、113に含まれるチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数との比率は、0.2以上4.0以下を満たすことができる。
【0073】
以下において、母材主成分100モルを基準として、他の成分のモル数や含有量、比率などについて説明することができるが、これは、バリウム(Ba)100モル又はチタン(Ti)100モルを基準とした他の成分のモル数や含有量、比率などに該当することができる。
【0074】
カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)が、0.2≦A/B≦4.0を満たすことにより、誘電体スラリー(slurry)の状態で誘電体の母材主成分又は副成分が凝集せず、結晶粒の大きさを制御し結晶粒の大きさを均一に粒成長させて、平均故障時間(Mean Time To Failure、MTTF)を改善することができ、気孔Pの数を減少させて耐湿信頼性を向上させることができる。
【0075】
カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)が、0.2未満である場合(A/B<0.2)、ガリウム(Ga)の成分不足のためにガリウム(Ga)の添加による効果を確認し難い可能性がある。
【0076】
カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)が、4.0超過である場合(4.0<A/B)、誘電体スラリー(slurry)中で凝集が発生して分散性が低下し、電気的特性や平均故障時間(MTTF)などの信頼性が低下する可能性がある。
【0077】
本発明の一実施形態において、カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)は、0.3モル以上6.0モル以下であることができる。言い換えると、0.3モル≦A≦6.0モルを満たすことができる。
【0078】
または、カバー部112、113に含まれるバリウム(Ba)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は、0.3モル以上6.0モル以下であることができる。
【0079】
あるいは、カバー部112、113に含まれるチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は、0.3モル以上6.0モル以下であることができる。
【0080】
カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)が、0.3モル≦A≦6.0モルを満たすことで、カバー部112、113の焼成温度を低下させて気孔Pの数を減少させることができ、これにより、カバー部112、113の緻密度が向上して耐湿信頼性が向上されることができる。また、外部からの衝撃を受けてもクラック(crack)の生成を抑制することができるため、機械的特性が向上されることができる。
【0081】
一方、カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)が、0.3モル未満(A<0.3モル)である場合、気孔P数が十分に減少されず内湿信頼性が改善されない恐れがあり、カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)が、6.0モル超過(6.0モル<A)である場合、ガリウム(Ga)の過量添加により誘電体スラリー(slurry)の分散性が低下し、絶縁破壊電圧(BDV)が低下するか、機械的強度が低下するなどの副効果が発生する恐れがある。
【0082】
一方、カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)は、0.1モル以上3.0モル以下であることができる。言い換えると、0.1モル≦B≦3.0モルを満たすことができる。
【0083】
または、カバー部112、113に含まれるバリウム(Ba)100モルに対するスズ(Sn)のモル数は、0.1モル以上3.0モル以下であることができる。
【0084】
あるいは、カバー部112、113に含まれるチタン(Ti)100モルに対するスズ(Sn)のモル数は、0.1モル以上3.0モル以下であることができる。
【0085】
カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)が、0.1モル≦B≦3.0モルを満たすことで、カバー部112、113の結晶粒の粒成長を制御し、適切な大きさの結晶粒と共に結晶粒の大きさを均一に粒成長させ、絶縁破壊電圧(BDV)などの電気的特性や平均故障時間(MTTF)などの信頼性を向上させることができる。
【0086】
一方、カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)が、0.1モル未満(B<0.1モル)である場合、スズ(Sn)の添加による効果を確認し難い可能性があり、カバー部112、113に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)が3.0モル超過(3.0モル<B)である場合、スズ(Sn)の過量添加により、結晶粒の過度な粒成長制御で電気的特性が実現されない恐れがある。
【0087】
本発明の一実施形態において、カバー部112、113に含まれる複数の結晶粒の平均大きさ(AVG)は、170nm以上200nm以下であることができる。
【0088】
複数の結晶粒の平均大きさ(AVG)を測定する方法は、特に制限されるものではないが、例えば、第1カバー部の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を基準として、10μm×10μmの領域を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影してイメージを得た後、プログラムを通じて当該領域に含まれる結晶粒の大きさを測定し、これらの平均値を計算して求めることができる。
【0089】
このとき、カバー部112、113に含まれる複数の結晶粒の平均大きさ(AVG)と、上記カバー部に含まれる複数の結晶粒の大きさの標準偏差(standard deviation、STD)との比(STD/AVG)を大きさ変動係数(Coefficient of Variation、CV)とするとき、カバー部112、113の大きさ変動係数(CV)の分率は50%以上60%以下であることができる。すなわち、50%≦CV≦60%を満たすことができる。
【0090】
カバー部112、113の大きさ変動係数(CV)の分率が50%以上60%以下を満たすことにより、結晶粒の均一な粒成長を通じて絶縁破壊電圧(BDV)等の電気的特性が改善されることができ、平均故障時間(MTTF)などの信頼性が改善されることができる。
【0091】
カバー部112、113の大きさ変動係数(CV)の分率の下限値は、特に制限されるものではないが、結晶粒の粒成長を誘導しながら大きさ変動係数(CV)を50%未満に制御することが容易でない可能性があるため、下限値を50%に設定したものである。
【0092】
一方、カバー部112、113の厚さtcは、特に限定する必要はない。
【0093】
ただし、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは100μm以下であることができ、好ましくは30μm以下であることができ、超小型製品においては、より好ましくは20μm以下であることができる。
【0094】
ここで、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の第1方向の大きさを意味することができる。また、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の平均厚さtcを意味することができ、カバー部112、113の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0095】
カバー部112、113の第1方向の平均大きさは、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、1つのカバー部をスキャンしたイメージにおいて、第2方向に等間隔の30個の地点で第1方向の大きさを測定して計算した平均値を意味することができる。
【0096】
また、前述した方法で測定したカバー部の第1方向の平均大きさは、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)において、カバー部の第1方向の平均大きさと実質的に同一の大きさを有することができる。
【0097】
一方、積層型電子部品100は、容量形成部Acの第3方向の両端面(end-surface)に位置するサイドマージン部114、115を含むことができる。
【0098】
より具体的に、サイドマージン部114、115は、本体110の第5面5に位置する第1サイドマージン部114及び本体110の第6面6に位置する第2サイドマージン部115を含むことができる。
【0099】
サイドマージン部114、115は、図示のように、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を基準として、第1内部電極121及び第2内部電極122の第3方向の両端面(end-surface)と本体110の境界面の間の領域を意味することができる。
【0100】
すなわち、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115は、内部電極121、122を含まない領域を意味することができる。
【0101】
サイドマージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0102】
一方、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115の幅wmは、特に限定する必要はない。
【0103】
但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、サイドマージン部114、115の幅wmは100μm以下であることができ、好ましくは30μm以下であることができ、超小型製品においては、より好ましくは20μm以下であることができる。
【0104】
ここで、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の第3方向の大きさを意味することができる。また、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の平均幅wmを意味することができ、サイドマージン部114、115の第3方向の平均大きさを意味することができる。
【0105】
サイドマージン部114、115の第3方向の平均大きさは、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、1つのサイドマージン部をスキャンしたイメージにおいて、第1方向に等間隔の10個の地点で第3方向の大きさを測定して計算した平均値を意味することができる。
【0106】
本発明の一実施形態では、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更されることができる。
【0107】
外部電極131、132は、本体110上に配置され、内部電極121、122と連結されることができる。
【0108】
より具体的に、外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ配置され、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結される第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は、本体の第3面3に配置されて第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は、本体の第4面4に配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0109】
また、外部電極131、132は、本体110の第1面1及び第2面2上の一部に延長して配置されることができ、又は本体110の第5面5及び第6面6上の一部に延長して配置されることができる。すなわち、第1外部電極131は、本体110の第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6上の一部、及び本体110の第3面3上に配置されることができ、第2外部電極132は、本体110の第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6上の一部、及び本体110の第3面3上に配置されることができる。
【0110】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用しても形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0111】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層及び電極層上に配置されるめっき層を含むことができる。
【0112】
電極層についてより具体的な例を挙げると、電極層は、第1導電性金属及びガラスを含む焼成電極層である第1電極層131a、132aを含むことができ、第2導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極である第2電極層131b、132bを含むことができる。
【0113】
ここで、第1導電性金属は、第1電極層131a、132aに含まれる導電性金属を意味することができ、第2導電性金属は、第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属を意味することができる。このとき、第1導電性金属及び第2導電性金属は同一であっても異なっていてもよく、複数の金属物質を含む場合、少なくとも一つの金属物質が同一であることができるが、特にこれに制限されるものではない。
【0114】
また、電極層131a、132a、131b、132bは、本体上に第1電極層131a、132a及び第2電極層131b、132bが順次形成された形態であってもよく、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0115】
電極層131a、132a、131b、132bに含まれる第1導電性金属及び第2導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を用いることができ、例えば、第1導電性金属及び第2導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択される1つ以上を含むことができるが、特にこれに限定されない。
【0116】
本発明の一実施形態において、電極層131a、132a、131b、132bは、第1電極層131a、132a及び第2電極層131b、132bを含む2層の構造を有することができ、これにより、外部電極131、132は、導電性金属及びガラスを含む第1電極層131a、132a、及び上記第1電極層131a、132a上に配置され、導電性金属及び樹脂を含む第2電極層131b、132bを含むことができる。
【0117】
第1電極層131a、132aは、ガラスを含むことによって、本体110との接合性を向上させる役割を果たすことができ、第2電極層131b、132bは、樹脂を含むことによって、反り強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0118】
第1電極層131a、132aに使用される導電性金属は、静電容量を形成するために、上記内部電極121、122と電気的に連結されることができる材質であれば特に制限されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金からなる群から選択される1つ以上を含むことができる。第1電極層131a、132aは、上記導電性金属粒子にガラスフリットを添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することにより形成されることができる。
【0119】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、第1電極層131a、132aと電気的に連結されるようにする役割を果たすことができる。
【0120】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、電極層131a、132aと電気的に連結されることができる材質であれば特に制限されず、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金からなる群から選択される1つ以上を含むことができる。
【0121】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、球状粒子及びフレーク状粒子のうち1つ以上を含むことができる。すなわち、導電性金属は、フレーク状粒子のみからなるか、球状粒子のみからなることができ、フレーク状粒子と球状粒子とが混合された形態であることもできる。ここで、球状粒子は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク状粒子は、平たくてかつ細長い形態を有する粒子を意味し、特に制限されるものではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であることができる。上記球状粒子及びフレーク状粒子の長軸と短軸の長さは、積層型電子部品の第3方向の中央部で切断した第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして得られたイメージから測定することができる。
【0122】
第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性確保及び衝撃吸収の役割を果たすことができる。第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性及び衝撃吸収性を有し、導電性金属粒子と混合してペーストを作製できるものであれば特に制限されず、例えば、エポキシ系樹脂を含むことができる。
【0123】
また、第2電極層131b、132bは、複数の金属粒子、金属間化合物、及び樹脂を含むことができる。上記金属間化合物を含むことにより、第1電極層131a、132aとの電気的連結性をより向上させることができる。上記金属間化合物は、複数の金属粒子を連結して電気的連結性を向上させる役割を果たし、複数の金属粒子を取り囲んで互いに連結する役割を果たすことができる。
【0124】
このとき、上記金属間化合物は、樹脂の硬化温度よりも低い融点を有する金属を含むことができる。すなわち、上記金属間化合物が樹脂の硬化温度よりも低い融点を有する金属を含むため、樹脂の硬化温度よりも低い融点を有する金属が乾燥及び硬化工程を経る過程で溶融され、金属粒子の一部と金属間化合物を形成して金属粒子を取り囲むようになる。このとき、金属間化合物は、好ましくは300℃以下の低融点金属を含むことができる。
【0125】
例えば、213~220℃の融点を有するSnを含むことができる。乾燥及び硬化工程を経る過程でSnが溶融され、溶融されたSnがAg、Ni又はCuのような高融点の金属粒子を毛細管現象により濡らすようになり、Ag、Ni又はCu金属粒子の一部と反応して、Ag3Sn、Ni3Sn4、Cu6Sn5、Cu3Snなどの金属間化合物を形成するようになる。反応に参加しなかったAg、Ni又はCuは金属粒子の形態で残るようになる。
【0126】
従って、上記複数の金属粒子は、Ag、Ni及びCuのうち1つ以上を含み、上記金属間化合物は、Ag3Sn、Ni3Sn4、Cu6Sn5及びCu3Snのうち1つ以上を含むことができる。
【0127】
めっき層131c、132cは、実装特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0128】
めっき層131c、132cの種類は特に限定されず、図面においては、単一層のめっき層131c、132cのみを示しているが、これに制限されるものではなく、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち1つ以上を含む単一層のめっき層131c、132cであることができ、複数の層から形成されることもできる。
【0129】
めっき層131c、132cについてより具体的な例を挙げると、めっき層131c、132cは、Niめっき層又はSnめっき層であることができ、電極層上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができる。また、めっき層131c、132cは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0130】
積層型電子部品100のサイズは、特に限定する必要はない。
【0131】
ただし、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、1005(長さ×幅:1.0mm×0.5mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において本発明による効果がより顕著になり得る。
【0132】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明するが、これは発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0133】
(実施例)
以下では、カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)による誘電体スラリー(slurry)の凝集有無、結晶粒の平均大きさ(AVG)、結晶粒の大きさ変動係数(CV)、気孔率(%)、絶縁破壊電圧(BDV)、平均故障時間(MTTF)、及び耐湿信頼性を評価して表1に示した。
【0134】
誘電体スラリー(Slurry)の凝集有無は、誘電体スラリー(slurry)の状態でガリウム(Ga)を含む凝集体が検出された場合を「〇」と評価し、ガリウム(Ga)を含む凝集体が検出されなかった場合を「×」と評価した。
【0135】
結晶粒の平均大きさ及び結晶粒の大きさ変動係数(CV)は、第1カバー部の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)の23μm×23μmの領域に含まれる結晶粒の大きさを測定した後、これらの平均値及び標準偏差値を計算し、結晶粒の平均大きさ及び変動係数値を記載したものである。
【0136】
気孔率(%)は、第1カバー部の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)の23μm×23μmの領域に対する、細孔Pの面積分率(%)を示したものである。
【0137】
絶縁破壊電圧(BDV)は、それぞれの試験例当たり50個のサンプルチップ(chip)において電圧(V)値を上げたとき、短絡(short)が現れた電圧(V)値の平均値を計算して記載したものである。
【0138】
平均故障時間(MTTF)は、それぞれの試験例当たり40個のサンプルチップ(chip)において125℃で9.45Vの電圧を印加したとき、短絡(short)が現れた時間の値を用いて平均無故障時間値(MTTF)を計算して記載したものである。
【0139】
耐湿信頼性評価は、それぞれの試験例当たり40個のサンプルチップ(chip)において温度条件85℃、相対湿度条件85%で、9.45Vの電圧を24時間印加したとき、全サンプルチップのうち短絡(short)が現れたサンプルチップの数を分率(不良率)で表したものである。
【0140】
【0141】
試験例1は、スズ(Sn)を3.0モル以下で添加したが、ガリウム(Ga)は添加しなかった。これにより、結晶粒の平均大きさが166nmと小さい方であり、平均故障時間(MTTF)も13時間であって信頼性に優れていないと評価される。そして、気孔率は0.415%と高い方であり、同様に耐湿信頼性の不良率が23%であって優れていないと評価される。これは、ガリウム(Ga)が添加されなかったことにより、十分な結晶粒成長が起こらなかったことから信頼性が良くないと予測され、気孔が多く生成して耐湿信頼性が良くないと予測される。試験例2~試験例6は、カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)が、0.2~4.0に該当する。適切な結晶粒成長により、絶縁破壊電圧(BDV)が50V以上と優れている方であり、平均故障時間(MTTF)も試験例1に比べて高い方である。気孔率も0.2%以下と測定されており、これにより耐湿信頼性の不良率が試験例1に比べて改善されている。これは、スズ(Sn)とガリウム(Ga)が適正含有量で添加されることで、十分な結晶粒成長が起こり信頼性が向上し、気孔生成が抑制されて耐湿信頼性が良いと評価される。
【0142】
試験例7及び試験例8は、カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)が、それぞれ4.67及び6.0に該当する。スズ(Sn)の含有量に対するガリウム(Ga)の含有量が多くなるにつれて、誘電体スラリー状態の分散性が良くないことからガリウム(Ga)の凝集が観察されており、絶縁破壊電圧(BDV)もそれぞれ41V及び42Vと低下しており、平均故障時間(MTTF)もそれぞれ16時間及び15時間と徐々に低下する値を有することを確認した。これは、ガリウム(Ga)がスズ(Sn)に比べて過剰添加されることで、気孔率は改善されて耐湿信頼性の面では優れているものの、過度な結晶粒成長により電気的特性及び信頼性の面では良くないと評価される。
【0143】
このように、スズ(Sn)のモル数(B)とガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)が0.2~4.0となるように添加する場合、電気的特性、信頼性、及び耐湿信頼性がいずれも向上することが分かる。
【0144】
図5aは、実施例のカバー部の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)のうち10μm×10μmの領域を透過電子顕微鏡(TEM)のEDS分析モードでスズ(Sn)元素をマッピング(mapping)したイメージであり、
図5bは、同一の領域において、カバー部の断面を透過電子顕微鏡(TEM)のEDS分析モードでガリウム(Ga)元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【0145】
図5a及び
図5bの実施例は、カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、上記カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)が、0.2≦A/B≦4.0を満たす。
【0146】
このように、カバー部の断面において、スズ(Sn)及びガリウム(Ga)が検出されることを確認することができ、凝集したスズ(Sn)やガリウム(Ga)が観察されないことから、カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)が、0.2≦A/B≦4.0を満たす場合、誘電体スラリー(slurry)の分散性に優れるため、凝集しないことが分かる。
【0147】
図6aは、比較例のカバー部の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した後、プログラムを通じて結晶粒を観察したイメージであり、
図6bは、実施例のカバー部の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した後、プログラムを通じて結晶粒を観察したイメージであり、
図6cは、
図6a及び
図6bで観察された結晶粒の平均大きさを示した棒グラフである。
【0148】
図6aの比較例は、カバー部にスズ(Sn)のみを添加した場合であり、平均結晶粒の大きさは166nmと測定された。
【0149】
図6bの実施例は、カバー部に
図6aの比較例で添加したスズ(Sn)と同一の含有量を添加すると同時にガリウム(Ga)をさらに添加し、カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、上記カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)が0.2≦A/B≦4.0を満たすように作製した場合であり、平均結晶粒の大きさは188nmと測定された。
【0150】
図6cから確認できるように、スズ(Sn)及びガリウム(Ga)を一緒に添加した
図6bの実施例の場合、スズ(Sn)のみを添加した
図6aの比較例よりも、結晶粒の大きさが約13.2%大きいことからみて、スズ(Sn)及びガリウム(Ga)を適正含有量で添加する場合、結晶粒の粒成長を誘導することができると判断される。
【0151】
図7aは、比較例のカバー部の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した後、気孔Pを観察したイメージであり、
図7bは、実施例のカバー部の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した後、気孔Pを観察したイメージであり、
図7cは、
図7a及び
図7bで観察された気孔率(porosity)を示した棒グラフである。
【0152】
図7aの比較例は、カバー部にスズ(Sn)のみを添加した場合であり、気孔率は2.1%と測定された。
【0153】
図7bの実施例は、カバー部に
図7aの比較例で添加したスズ(Sn)と同一の含有量を添加すると同時にガリウム(Ga)をさらに添加し、カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、上記カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)が0.2≦A/B≦4.0を満たすように作製した場合であり、気孔率は0.7%と測定された。
【0154】
図7cから確認できるように、適正含有量のスズ(Sn)及びガリウム(Ga)が添加される場合、気孔の生成を抑制して気孔率が改善されることが分かる。
【0155】
図7cから確認できるように、スズ(Sn)及びガリウム(Ga)を一緒に添加した
図7bの実施例の場合、スズ(Sn)のみを添加した
図7aの比較例よりも、気孔率が約65%減少したことからみて、スズ(Sn)及びガリウム(Ga)を適正含有量で添加する場合、気孔の数を減少させることができると判断される。
【0156】
図8aは、比較例のMTTFグラフであり、
図8bは、実施例のMTTFグラフである。
【0157】
図8aの比較例は、カバー部にスズ(Sn)のみを添加したサンプルチップ20個に対して、温度条件125℃で9.45Vの電圧を印加した場合であり、MTTFは13hrsと示された。
【0158】
図8bの実施例は、カバー部に
図8aの比較例で添加したスズ(Sn)と同一の含有量を添加すると同時にガリウム(Ga)をさらに添加し、カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、上記カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)が0.2≦A/B≦4.0を満たすサンプルチップ20個に対して、温度条件125℃で9.45Vの電圧を印加した場合であり、MTTFは21hrsと示された。
【0159】
図9aは、比較例の耐湿信頼性の評価グラフであり、
図9bは、実施例の耐湿信頼性の評価グラフである。
【0160】
図9aの比較例は、カバー部にスズ(Sn)のみを添加したサンプルチップ20個に対して、温度条件85℃、相対湿度条件85%で9.45Vの電圧を24時間印加した場合であり、20個のサンプルチップのうち短絡(short)が発生したサンプルチップは14個と示された。
【0161】
図9bの実施例は、カバー部に
図9aの比較例で添加したスズ(Sn)と同一の含有量を添加すると同時にガリウム(Ga)をさらに添加し、カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するスズ(Sn)のモル数(B)と、上記カバー部に含まれる母材主成分100モルに対するガリウム(Ga)のモル数(A)との比(A/B)が0.2≦A/B≦4.0を満たすサンプルチップ20個に対して、温度条件85℃、相対湿度条件85%で9.45Vの電圧を24時間印加した場合であり、20個のサンプルチップのうち短絡(short)が発生したサンプルチップはなかった。
【0162】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0163】
また、本発明で用いられた「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかしながら、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と組み合わせて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態において説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明として理解することができる。
【0164】
本発明で用いられた用語は、単に一実施形態を説明するために用いられたものであり、本発明を限定する意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0165】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 サイドマージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
P 気孔