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特開2025-8231皮膚状態推定装置、皮膚状態推定方法および皮膚状態推定プログラム
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  • 特開-皮膚状態推定装置、皮膚状態推定方法および皮膚状態推定プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008231
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】皮膚状態推定装置、皮膚状態推定方法および皮膚状態推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20250109BHJP
   G16H 20/00 20180101ALI20250109BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20250109BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20250109BHJP
   C12Q 1/6874 20180101ALI20250109BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20250109BHJP
【FI】
A61B5/00 M
G16H20/00
G01N33/50 Q
C12Q1/6888 Z
C12Q1/6874 Z
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110209
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相良 早苗
(72)【発明者】
【氏名】福田 優子
(72)【発明者】
【氏名】小林 奈都美
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045AA28
2G045CB09
2G045CB21
2G045DA13
2G045FB01
2G045FB02
2G045JA01
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
4C117XB01
4C117XB02
4C117XE03
4C117XJ21
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】臀部に存在する腸内細菌類を含む菌叢の組成から皮膚状態を推定すること。
【解決手段】皮膚状態推定装置であって、乳幼児の臀部の皮膚に存在する菌叢を解析した結果である菌叢解析データを取得する菌叢解析データ取得部と、菌叢解析データから算出した腸内細菌類比率に基づいて、乳幼児の皮膚状態を推定する皮膚状態推定部と、を備えた。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳幼児の臀部の皮膚に存在する菌叢を解析した結果である菌叢解析データを取得する菌叢解析データ取得部と、
前記菌叢解析データから算出した腸内細菌類比率に基づいて、前記乳幼児の皮膚状態を推定する皮膚状態推定部と、
を備えた皮膚状態推定装置。
【請求項2】
前記皮膚状態推定部は、推定された前記皮膚状態に基づいて、
前記皮膚状態に適した商品および前記皮膚状態に適したケア方法の少なくとも一方を含むレコメンドを生成するレコメンド生成部と、
生成した前記レコメンドを所定通知先へ通知する通知制御部と、
をさらに備えた請求項1に記載の皮膚状態推定装置。
【請求項3】
前記皮膚状態推定部は、前記菌叢解析データから、さらに、皮膚常在菌類比率を算出し、算出した皮膚常在菌類比率に基づいて、前記乳幼児の皮膚状態を推定する請求項1または2に記載の皮膚状態推定装置。
【請求項4】
前記皮膚状態推定部は、前記腸内細菌類比率を前記皮膚常在菌類比率で除した、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率をさらに算出し、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率に基づいて、前記乳幼児の皮膚状態を推定する請求項3に記載の皮膚状態推定装置。
【請求項5】
前記皮膚状態推定部は、さらに黄色ブドウ球菌の比率、表皮ブドウ球菌の比率の少なくとも1つによって前記乳幼児の皮膚状態を推定する請求項1~4のいずれか1項に記載の皮膚状態推定装置。
【請求項6】
前記乳幼児の属性情報を取得する属性情報取得部をさらに備え、
前記レコメンド生成部は、前記属性情報を加味して、前記レコメンドを生成する請求項2~5のいずれか1項に記載の皮膚状態推定装置。
【請求項7】
前記属性情報は、前記乳幼児の月齢、性別、食事状況、睡眠時間および起床時間の少なくとも1つを含む請求項6に記載の皮膚状態推定装置。
【請求項8】
前記皮膚状態は、紅斑および丘疹の少なくともいずれかを含む請求項1~7のいずれか1項に記載の皮膚状態推定装置。
【請求項9】
乳幼児の臀部の皮膚に存在する菌を採取し、前記皮膚に存在する菌叢を解析した結果である菌叢解析データを取得する菌叢解析データ取得ステップと、
前記菌叢解析データから算出した腸内細菌類比率に基づいて、前記乳幼児の皮膚状態を推定する皮膚状態推定ステップと、
を含む皮膚状態推定方法。
【請求項10】
乳幼児の臀部の皮膚に存在する菌を採取し、前記皮膚に存在する菌叢を解析した結果である菌叢解析データを取得する菌叢解析データ取得ステップと、
前記菌叢解析データから算出した腸内細菌類比率に基づいて、前記乳幼児の皮膚状態を推定する皮膚状態推定ステップと、
をコンピュータに実行させる皮膚状態推定プログラム。
【請求項11】
乳幼児の臀部の皮膚に存在する菌を採取し、前記皮膚に存在する菌叢を解析した結果である菌叢解析データを取得する菌叢解析データ取得部と、
前記菌叢解析データから算出した腸内細菌類比率に基づいて、前記乳幼児の皮膚状態を推定する皮膚状態推定部と、
を備えた皮膚状態推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚状態推定装置、皮膚状態推定方法および皮膚状態推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、皮膚常在菌叢における特定細菌の占有率や多様性である菌指標に基づいて、肌状態を診断することが開示されている(段落[0051]、請求項1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-99184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、臀部に存在する腸内細菌類を含む菌叢の組成から皮膚状態を推定することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る皮膚状態推定装置は、
乳幼児の臀部の皮膚に存在する菌を採取し、前記皮膚に存在する菌叢を解析した結果である菌叢解析データを取得する菌叢解析データ取得部と、
前記菌叢解析データから算出した腸内細菌類比率に基づいて、前記乳幼児の皮膚状態を推定する皮膚状態推定部と、
を備えた。
【0006】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る皮膚状態推定方法は、
乳幼児の臀部の皮膚に存在する菌を採取し、前記皮膚に存在する菌叢を解析した結果である菌叢解析データを取得する菌叢解析データ取得ステップと、
前記菌叢解析データから算出した腸内細菌類比率に基づいて、前記乳幼児の皮膚状態を推定する皮膚状態推定ステップと、
を含む。
【0007】
さらに、上記目的を達成するため、本発明に係る皮膚状態推定プログラムは、
乳幼児の臀部の皮膚に存在する菌を採取し、前記皮膚に存在する菌叢を解析した結果である菌叢解析データを取得する菌叢解析データ取得ステップと、
前記菌叢解析データから算出した腸内細菌類比率に基づいて、前記乳幼児の皮膚状態を推定する皮膚状態推定ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乳幼児の臀部の皮膚に存在する腸内細菌類を含む菌叢の組成から皮膚状態を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る皮膚状態推定装置の動作の概要を説明するための図である。
図2A】本発明の第1実施形態に係る皮膚状態推定装置の構成を説明するためのブロック図である。
図2B】本発明の第1実施形態に係る皮膚状態推定装置において利用される菌叢の分類図である。
図2C】本発明の第1実施形態に係る皮膚状態推定装置における皮膚状態の推定において用いられる皮疹スコアの一例を説明するための図である。
図2D】本発明の第1実施形態に係る皮膚状態推定装置において皮膚状態推定のための指標の設定に用いられる皮疹スコアと菌叢との相関関係を説明するための図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る皮膚状態推定装置が有するレコメンドテーブルの一例を説明するための図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る皮膚状態推定装置のハードウェア構成を説明するための図である。
図5A】本発明の第1実施形態に係る皮膚状態推定装置の処理手順(腸内細菌類比率)を説明するためのフローチャートである。
図5B】本発明の第1実施形態に係る皮膚状態推定装置の処理手順(皮膚常在菌類比率)を説明するためのフローチャートである。
図5C】本発明の第1実施形態に係る皮膚状態推定装置の処理手順(腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率)を説明するためのフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態に係る皮膚状態推定装置の構成を説明するためのブロック図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る皮膚状態推定装置が有する属性情報テーブルの一例を説明するための図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る皮膚状態推定装置のハードウェア構成を説明するための図である。
図9A】本発明の第2実施形態に係る皮膚状態推定装置の処理手順(腸内細菌類比率)を説明するためのフローチャートである。
図9B】本発明の第2実施形態に係る皮膚状態推定装置の処理手順(皮膚常在菌類比率)を説明するためのフローチャートである。
図9C】本発明の第2実施形態に係る皮膚状態推定装置の処理手順(腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率)を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る皮膚状態推定装置について、図1図5Cを用いて説明する。図1は、本実施形態に係る皮膚状態推定装置100の動作の概要を説明するための図である。皮膚状態推定装置100は、乳幼児110の臀部111の皮膚に存在する菌叢の組成から、乳幼児110の皮膚状態を推定する装置である。皮膚状態を推定する部位は、乳幼児110の臀部111、排尿部112(泌尿器周辺)、肛門周囲部113であり、乳幼児110がおむつを履いた時に、おむつにより隠される部分である。なお、本実施形態の説明では、皮膚状態推定装置100として、他のコンピュータ(クライアント)からの要求や指示を受けて、情報や処理結果を返すコンピュータであるサーバ装置を例に説明をする。しかしながら、皮膚状態推定装置100は、サーバ装置には限定されず、スマートフォンなどの携帯端末、タブレット端末およびPC(パーソナルコンピュータ)などの装置であってもよい。
【0012】
菌叢のサンプルは、例えば、乳幼児110の臀部111の皮膚を綿棒114などで擦って得られる。得られた菌叢サンプルは、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法による検査装置120にかけられ、その組成などが解析される。検査結果として得られる菌叢解析データ121は、皮膚状態推定装置100へ送信される。
【0013】
皮膚状態推定装置100は、受信した菌叢解析データ121に基づいて、乳幼児110の皮膚状態を推定する。すなわち、菌叢解析データ121から、腸内細菌の比率や皮膚常在菌の比率などを導出して、乳幼児110の皮膚状態を推定する。皮膚状態推定装置100は、推定された皮膚状態に基づいて、推定された皮膚状態に適した商品や皮膚状態に適したケア方法などを含むレコメンドを生成して、例えば、乳幼児110の養育者等が所有するスマートフォン130などの携帯端末へ通知する。
【0014】
次に、図2Aを参照して、皮膚状態推定装置100の構成について説明する。皮膚状態推定装置100は、菌叢解析データ取得部201、皮膚状態推定部202、レコメンド生成部203および通知制御部204を有する。
【0015】
≪菌叢解析データ取得部201≫
菌叢解析データ取得部201は、乳幼児110の臀部111の皮膚に存在する菌を解析した結果である菌叢解析データ121を取得する。菌叢の採取のタイミングは、特に限定されないが、乳幼児110の臀部から菌叢を採取する場合には、便由来菌の影響を防ぐため、前日の入浴から起床までの間、排便をしていない日の起床時に採取することが望ましい。
【0016】
皮膚の菌の採取は、例えば、菌叢採取用の綿棒114で臀部111の皮膚を擦り、擦った綿棒114を保存液等が充填された容器に入れて、所定検査機関へ郵送等ができるようにした、菌叢採取用キットを用いて行われる。解析まで冷蔵庫などで保管することが望ましい。なお、皮膚の菌の採取は、乳幼児110の皮膚から直接採取しても、乳幼児110が装着するおむつや、乳幼児110がはくパンツなどから間接的に採取してもよく、乳幼児110の皮膚の菌が採取できる方法であればいずれの方法であってもよい。
【0017】
そして、検査機関において、採取された菌から菌DNA(Deoxyribonucleic Acid)が抽出され、リアルタイムPCR、および次世代シーケンサーにより解析が行われる。
【0018】
一般的にアンプリコンシーケンス解析で得られた情報から達成することができる。具体的には、市販の抽出キットで菌のDNA抽出、16srDNAのPCR増幅、次世代シーケンサー解析、得らえたシーケンスに対し、データベースを用いて属もしくは種を解析する。DNA抽出には例えば、市販の抽出キット(MORA-EXTRACT kit、極東製薬工業)などを用いることができる。16srDNA増幅に使うプライマーは一般的に用いられるユニバーサルプライマーを用いることができる。
【0019】
ここで、図2Bを参照して、皮膚状態推定装置100において、皮膚状態の推定に用いられる菌叢の分類について説明する。皮膚状態推定装置100において、利用される菌叢は、腸内細菌類250、皮膚常在菌類251および口腔などに見られるその他の菌類252の3つに大別される。なお、図2Bに示した菌叢は、一例に過ぎず、皮膚状態推定装置100において、利用される菌叢は、ここに示した菌叢には、限定されない。
【0020】
≪皮膚状態推定部202≫
次に、皮膚状態の推定について説明する。皮膚状態の推定は、本発明者らが新たに見出した以下の知見に基づいて行われる。すなわち、皮膚状態の推定は、乳幼児110の3部位(臀部111、排尿部112、肛門周囲部113)の皮疹スコアと、乳幼児110から採取した菌叢との相関関係に基づいて行われる。ここで、皮疹スコアは、乳幼児110の3部位における、紅斑および丘疹の状態を、医師による判断に応じてスコア化したものである。
【0021】
例えば、図2Cに示した皮疹スコア260のように、紅斑(/浮腫)および丘疹(/膿疱)の状態を、7段階で評価し、各評価に応じたスコアを付与することで、乳幼児110の紅斑および丘疹の状態をスコア化して評価できる。例えば、紅斑や丘疹が無い状態では、スコアは0となる。そして、紅斑や丘疹の状態が悪く(症状が重く)なるにつれて、スコアが大きくなるようになっている。各スコアの上限は、6となっている。そして、各症状としては、スコアが、0の場合、「健常」、1~2の場合、「軽度」、3~4の場合、「中度」、5~6の場合、「重度」と判断することができる。
【0022】
乳幼児110の3部位のそれぞれについて、医師が判断した結果に応じて、皮疹スコア260に示したスコアを3部位のそれぞれに付け、最終的に、3部位のスコアの合計を算出する。そして、3部位合計のスコアと、そのスコアを記録した乳幼児110の菌叢との相関関係を見ると、図2Dに示したような関連性を見出すことができる。
【0023】
(1)腸内細菌類グラフ270
腸内細菌類グラフ270は、横軸に、3部位合計の皮疹スコア(紅斑と丘疹)、縦軸に、腸内細菌類の比率[%]を取ったものとなっている。そして、腸内細菌類グラフ270においては、皮疹スコアが低いほど(皮膚の状態が良いほど)、乳幼児110の臀部111の皮膚から採取した菌叢中の腸内細菌類の比率が低い傾向にあることが分かる。
【0024】
(2)皮膚常在菌類グラフ271
皮膚常在菌類グラフ271は、横軸に、3部位合計の皮疹スコア(紅斑と丘疹)、縦軸に、皮膚常在菌類の比率[%]を取ったものとなっている。そして、皮膚常在菌類グラフ271においては、皮疹スコアが低いほど(皮膚の状態が良いほど)、乳幼児110の臀部111の皮膚から採取した菌叢中の皮膚常在菌類の比率が高い傾向にあることが分かる。
【0025】
(3)腸内細菌類/皮膚常在菌類グラフ272
腸内細菌類/皮膚常在菌類グラフ272は、横軸に、3部位合計の皮疹スコア(紅斑と丘疹)、縦軸に、腸内細菌類比率を皮膚常在菌類比率で除した、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率を取ったものとなっている。皮疹スコアが低いほど(皮膚の状態が良いほど)、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率が低い傾向にあることが分かる。
【0026】
以上、3つのグラフ270,271,272から、乳幼児110の臀部111の皮膚上の腸内細菌類の比率が高いほど、3部位(臀部111,排尿部112、肛門周囲部113)の皮疹スコアが悪くなる傾向にあることが分かる。したがって、乳幼児110の臀部111の皮膚の菌叢解析を行い、菌叢の組成比(腸内細菌類、皮膚常在菌類)を算出することで、おむつ内(3部位)の皮膚状態(皮疹)を推定できる。
【0027】
(4)指標
以上の考察から、皮疹スコア10を閾値として、皮疹スコアが10以下(良好状態)であるのか、皮疹スコアが10より大きい(悪い状態)のかを1つの指標として、菌叢解析と当該指標とを組み合わせることにより、皮膚状態を推定できることが分かる。
【0028】
例えば、腸内細菌類の比率を指標とした場合(指標1)、腸内細菌類比率が、20%以上であれば、皮膚状態が悪く、20%未満であれば、皮膚状態が良好であると判断できる(図2Dの領域273)。
【0029】
同様に、例えば、皮膚常在菌類の比率を指標とした場合(指標2)、皮膚常在菌類比率が、20%未満であれば、皮膚状態が悪く、20%以上であれば、皮膚状態が良好であると判断できる(図2Dの領域274)。
【0030】
また、例えば、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率を指標とした場合(指標3)、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率<1であれば、皮膚状態が良好、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率≧1であれば、皮膚状態が悪いと判断できる(図2Dの領域275)。
【0031】
このように、解析された菌叢の比率に応じて、いくつかの指標を設定することで、乳幼児110の皮膚(3部位)の状態を医師等の判断を受ける前であっても(目視等で確認しなくても)菌叢解析の結果から推定できるようになる。
【0032】
そして、皮膚状態推定部202は、上記指標1~3に従って、以下のように、乳幼児110の皮膚の状態を推定する。
【0033】
(1)腸内細菌類比率(指標1)から推定
皮膚状態推定部202は、菌叢解析データ121から算出した腸内細菌類比率に基づいて、乳幼児110の皮膚状態を推定する。ここで、腸内細菌類比率(%)は、次世代シーケンサー(MiSeq解析)から算出する。すなわち、腸内細菌類比率(%)=腸内細菌類の発現量/合計発現量×100となる。
【0034】
そして、上述の腸内細菌類グラフ270に従って、乳幼児110の皮膚状態を推定する。具体的には、皮膚状態推定部202は、腸内細菌類比率(%)が20%を閾値として、20%以上の場合は、皮膚状態が悪く、20%未満であれば、皮膚状態が良好であると推定する。
【0035】
(2)皮膚常在菌類比率(指標2)から推定
皮膚状態推定部202は、菌叢解析データ121から、さらに、皮膚常在菌類比率を算出して、皮膚常在菌類比率に基づいて、乳幼児110の皮膚状態を推定する。ここで、皮膚常在菌類比率(%)は、次世代シーケンサー(MiSeq解析)から算出する。すなわち、皮膚常在菌類比率(%)=皮膚常在菌類の発現量/合計発現量×100となる。
【0036】
そして、上述の皮膚常在菌類グラフ271に従って、乳幼児110の皮膚状態を推定する。具体的には、皮膚状態推定部202は、皮膚常在菌類(%)が20%を閾値として、20%未満の場合は、皮膚状態が悪く、20%以上であれば、皮膚状態が良好であると推定する。
【0037】
(3)腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率(指標3)から推定
皮膚状態推定部202は、腸内細菌類比率を皮膚常在菌比率で除した、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率をさらに算出し、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率に基づいて、乳幼児110の皮膚状態を推定する。ここで、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率は、次世代シーケンサー(MiSeq解析)から算出することができる。
【0038】
そして、上述の皮膚常在菌類グラフ272に従って、乳幼児110の皮膚状態を推定する。具体的には、皮膚状態推定部202は、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率<1である場合、乳幼児110の皮膚状態が良好であると推定する。皮膚状態推定部202は、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率≧1である場合、乳幼児110の皮膚状態が悪いと推定する。
【0039】
皮膚状態推定部202は、菌叢全体の中に占める黄色ブドウ球菌の比率を算出してもよい。菌叢全体に占める黄色ブドウ球菌の比率が高い場合には、皮膚状態推定部202は、乳幼児110の皮膚状態を悪いと推定する。つまり、黄色ブドウ球菌は、病原性が高い菌であり、皮膚がアルカリ性に傾くと増殖して皮膚炎などを引き起こすからである。また、黄色ブドウ球菌は、アトピー性皮膚炎との関連性があり、アトピー性皮膚炎の皮膚からは、黄色ブドウ球菌が高い確率で検出されることが知られているからである。
【0040】
皮膚状態推定部202は、菌叢全体の中に占めるRuminococcus gnavus菌の比率を算出してもよい。Ruminococcus gnavus菌の比率が高い場合には、皮膚状態推定部202は、乳幼児110の皮膚状態を悪いと推定する。つまり、Ruminococcus gnavus菌は、乳幼児110のアレルギー疾患と関連性が高い菌として知られているからである。
【0041】
皮膚状態推定部202は、皮膚常在菌類の中に占める表皮ブドウ球菌の比率を算出してもよい。皮膚常在菌類に占める表皮ブドウ球菌の比率が高い場合には、皮膚状態推定部202は、乳幼児110の皮膚状態を良好と推定する。つまり、表皮ブドウ球菌は、グリセリンを生成するので、皮膚のバリア機能を保つことができ、また、脂肪酸を生成するので、皮膚(肌)を弱酸性に保つことができる。さらに、表皮ブドウ球菌は、抗菌ペプチドを生成して、黄色ブドウ球菌の増殖を防ぐことができる。そのため、表皮ブドウ球菌の比率が高い場合には、皮膚状態推定部202は、乳幼児110の皮膚状態を良好と推定できる。
【0042】
≪レコメンド生成部203≫
レコメンド生成部203は、推定された皮膚状態に基づいて、皮膚状態に適した商品および皮膚状態に適したケア方法の少なくとも一方を含むレコメンドを生成する。レコメンドの内容は、例えば、肌にやさしいおむつ、ケア剤、清拭剤の使用の勧奨などである。また、例えば、指標1に基づく推定が、悪い推定の乳幼児110である場合には、レコメンドとして、腸内細菌を増殖させないおむつやケア剤、清拭剤などのレコメンドを生成する。さらに、例えば、おむつ替えの頻度を増やす、便残りなくきれいに清拭する、擦らずやさしく洗浄するなどのケア方法をレコメンドとして生成してもよい。
【0043】
≪通知制御部204≫
通知制御部204は、生成したレコメンドを所定通知先へ通知する。通知先は、例えば、乳幼児110の養育者のスマートフォン130などの携帯端末やかかりつけの病院の端末などであるが、これらには、限定されない。なお、上述した皮膚状態推定装置100の説明においては、皮膚状態推定装置100が、レコメンド生成部203および通知制御部204を有している例を用いて説明をしたが、皮膚状態推定装置100は、レコメンド生成部203および通知制御部204を有していなくてもよい。
【0044】
次に、図3を参照して、皮膚状態推定装置100が有するレコメンドテーブル301の一例について説明する。レコメンドテーブル301は、推定皮膚状態311に関連付けてレコメンド内容312を記憶する。推定皮膚状態311は、皮膚状態推定部202により推定された乳幼児110の皮膚の状態である。レコメンド内容312は、推定された皮膚状態に応じた内容のレコメンドである。そして、レコメンド生成部203は、レコメンドテーブル301を利用して、レコメンドを生成する。
【0045】
図4を参照して、皮膚状態推定装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで図2の皮膚状態推定装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0046】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。菌叢解析データ441は、乳幼児110の臀部111の皮膚から採取された菌叢を解析して得られるデータである。腸内細菌類比率442は、菌叢を解析したデータから算出された、菌叢に含まれる腸内細菌類の比率である。皮膚常在菌類比率443は、菌叢を解析したデータから算出された、菌叢に含まれる皮膚常在菌類の比率である。腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率444は、算出された腸内細菌類比率および皮膚常在菌類比率から算出される値である。推定皮膚状態445は、推定された皮膚状態を表すデータである。レコメンド446は、推定された皮膚状態に応じて生成されるレコメンドである。
【0047】
送受信データ447は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域448を有する。
【0048】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、レコメンドテーブル301を格納する。レコメンドテーブル301は、図3に示した、推定皮膚状態311とレコメンド内容312との関係を管理するテーブルである。
【0049】
ストレージ450は、さらに、菌叢解析データ取得モジュール451、皮膚状態推定モジュール452、レコメンド生成モジュール453および通知制御モジュール454を格納する。菌叢解析データ取得モジュール451は、乳幼児110の臀部111の皮膚から採取された菌をPCR法などにより解析した結果のデータを取得するモジュールである。皮膚状態推定モジュール452は、菌叢解析データから算出した、腸内細菌類比率、皮膚常在菌類比率、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率などに基づいて、乳幼児110の皮膚の状態を推定するモジュールである。レコメンド生成モジュール453は、推定された皮膚状態に基づいて、皮膚状態に適した商品および皮膚状態に適したケア方法の少なくとも一方を含むレコメンドを生成する。通知制御モジュール454は、生成したレコメンドを所定通知先へ通知するモジュールである。これらのモジュール451~454は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域448に読み出され、実行される。制御プログラム455は、皮膚状態推定装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0050】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、図4に示したRAM440やストレージ450には、皮膚状態推定装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0051】
次に図5A図5Cに示したフローチャートを参照して、皮膚状態推定装置100の処理手順について説明する。これらのフローチャートは、図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、図2の皮膚状態推定装置100の各機能構成を実現する。
【0052】
まず、図5Aを参照して、腸内細菌類比率から皮膚状態を推定する場合の皮膚状態推定装置100の処理手順について説明する。ステップS501において、菌叢解析データ取得部201は、乳幼児110の臀部111の皮膚から採取した菌を解析した菌叢解析データ121を取得する。ステップS503において、皮膚状態推定部202は、菌叢解析データ121から腸内細菌類比率を算出する。ステップS505にいて、皮膚状態推定部202は、算出した腸内細菌類比率が20%未満であるか否かを判定する。20%未満であると判定した場合(ステップS505のYES)、皮膚状態推定部202は、ステップS507へ進む。20%未満でないと判定した場合(ステップS505のNO)、皮膚状態推定部202は、ステップS509へ進む。
【0053】
ステップS507において、皮膚状態推定部202は、乳幼児110の皮膚状態を良好と推定する。また、ステップS509において、皮膚状態推定部202は、乳幼児110の皮膚状態を悪いと推定する。
【0054】
ステップS511において、レコメンド生成部203は、乳幼児110の推定された皮膚状態に応じたレコメンドを生成する。ステップS513において、通知制御部204は、生成したレコメンドを所定通知先へ通知する。なお、ステップS511およびステップS513は、任意のステップとして、実行されても、実行されなくてもよい。
【0055】
次に、図5Bを参照して、皮膚常在菌類比率から皮膚状態を推定する場合の皮膚状態推定装置100の処理手順について説明する。ステップS531において、菌叢解析データ取得部201は、乳幼児110の臀部111の皮膚から採取した菌を解析した菌叢解析データ121を取得する。ステップS533において、皮膚状態推定部202は、菌叢解析データ121から皮膚常在菌類比率を算出する。ステップS535において、皮膚状態推定部202は、算出した皮膚常在菌類比率が20%以上であるか否かを判定する。20%以上であると判定した場合(ステップS535のYES)、皮膚状態推定部202は、ステップS537へ進む。20%以上でないと判定した場合(ステップS535のNO)、皮膚状態推定部202は、ステップS539へ進む。
【0056】
ステップS537において、皮膚状態推定部202は、乳幼児110の皮膚状態を良好と推定する。また、ステップS539において、皮膚状態推定部202は、乳幼児110の皮膚状態を悪いと推定する。
【0057】
ステップS541において、レコメンド生成部203は、乳幼児110の推定された皮膚状態に応じたレコメンドを生成する。ステップS543において、通知制御部204は、生成したレコメンドを所定通知先へ通知する。なお、ステップS541およびステップS543は、任意のステップとして、実行されても、実行されなくてもよい。
【0058】
図5Cを参照して、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率から皮膚状態を推定する場合の皮膚状態推定装置100の処理手順について説明する。ステップS551において、菌叢解析データ取得部201は、乳幼児110の臀部111の皮膚から採取した菌を解析した菌叢解析データ121を取得する。ステップS553において、皮膚状態推定部202は、腸内細菌類比率および皮膚常在菌類比率を算出する。ステップS555において、皮膚状態推定部202は、腸内細菌類比率20%以下(≦20%)であるか否かを判定する。腸内細菌類比率20%以下であると判定した場合(ステップS555のYES)、皮膚状態推定部202は、ステップS557へ進む。
【0059】
ステップS557において、皮膚状態推定部202は、皮膚常在菌類比率が20%以上であるか否かを判定する。皮膚常在菌類比率が、20%以上であると判定した場合(ステップS557のYES)、皮膚状態推定装置100は、ステップS559へ進む。ステップS559において、皮膚状態推定部202は、皮膚状態を良好と推定する。ここでの良好推定(※1)は、腸内細菌類比率が20%以下で、皮膚常在菌類比率が20%以上であるので、皮膚に刺激がある腸内細菌類が少なく、皮膚に良い皮膚常在菌類が多いので、皮膚の状態が非常に良い状態であることが推定される。
【0060】
皮膚常在菌比率が、20%未満であると判定した場合(ステップS557のNO)、皮膚状態推定装置100は、ステップS561へ進む。ステップS561において、皮膚状態推定部202は、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率を算出する。ステップS563において、皮膚状態推定部202は、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率が1未満か否かを判定する。1未満であると判定した場合(ステップS563のYES)、皮膚状態推定部202は、ステップS565へ進む。ステップS565において、皮膚状態推定部202は、皮膚状態を良好と推定する。ここでの良好推定(※2)は、皮膚常在菌類比率が低いが、皮膚常在菌類の比率が、腸内細菌類の比率よりも大きいので、中程度の良好の推定となる。1未満でないと判定した場合(ステップS563のNO)、皮膚状態推定装置100は、ステップS567へ進む。ステップS567において、皮膚状態推定部202は、皮膚状態を良好と推定する。ここでの良好推定(※3)は、皮膚常在菌類比率が低く、さらに、皮膚常在菌類が、腸内細菌類よりも少ない場合と推定され、皮膚にいるべき菌が非常に少ない状態なので、良好推定の中でも最も低いものとなる。
【0061】
次に、腸内細菌類比率が20%以下でないと判定した場合(ステップS555のNO)、皮膚状態推定装置100は、ステップS569へ進む。ステップS569において、皮膚状態推定部202は、皮膚常在菌類比率が20%以上であるか否かを判定する。皮膚常在菌類比率が20%以上であると判定した場合(ステップS569のYES)、皮膚状態推定装置100は、ステップS571へ進む。ステップS571において、皮膚状態推定部202は、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率を算出する。ステップS573において、皮膚状態推定部202は、腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率が1未満か否かを判定する。腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率が1未満であると判定した場合(ステップS573のYES)、皮膚状態推定装置100は、ステップS575へ進む。ステップS575において、皮膚状態推定部202は、皮膚状態が悪いと推定する。ここでの悪い推定(※1)は、腸内細菌類が多い中でも皮膚常在菌類が多い状態は、皮膚にとって良い菌も存在しているという状態なので、悪い推定とはなるが、悪い推定の中でも良好という推定となる。
【0062】
腸内細菌類比率/皮膚常在菌類比率が1未満でないと判定した場合(ステップS573のNO)、皮膚状態推定装置100は、ステップS577へ進む。ステップS577において、皮膚状態推定部202は、皮膚状態が悪いと推定する。ここでの悪い推定(※2)は、腸内細菌類が多く、皮膚常在菌類が少ない状態であるので、悪い推定の中でも中程度の悪さという推定となる。
【0063】
皮膚常在菌類比率が20%以上でないと判定された場合(ステップS569のNO)、皮膚状態推定装置100は、ステップS579へ進む。ステップS579において、皮膚状態推定部202は、皮膚状態を悪いと推定する。ここでの悪い推定(※3)は、腸内細菌類比率が20%よりも大きく、さらに、皮膚常在菌類比率が20%よりも小さいので、皮膚において、腸内細菌類が多い状態となり、状態が非常に悪いという推定となる。そして、皮膚状態推定装置100は、ステップS559、ステップS565、ステップS567、ステップS575、ステップS577およびステップS579の各ステップを実行すると、処理を終了する。
【0064】
なお、上述のステップにさらに、レコメンド生成部203および通知制御部204による以下の追加のステップ(不図示)を入れてもよい。ステップS581において、レコメンド生成部203は、乳幼児110の推定された皮膚状態に応じたレコメンドを生成する。ステップS583において、通知制御部204は、生成したレコメンドを所定通知先へ通知する。
【0065】
本実施形態によれば、臀部に存在する腸内細菌類を含む菌叢の組成から皮膚状態を推定することができる。また、臀部の菌叢を解析するだけで、臀部、排尿部および肛門周囲部の皮膚の状態(皮疹の状態)を精度高く推定することができる。また、医師による判断を受ける前であっても、皮疹の状態を把握することができるので、乳幼児の養育者が、医師の診察を受けるか否かを判断する際の判断材料とすることができる。
【0066】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係る皮膚状態推定装置について、図6図9Cを用いて説明する。図6は、本実施形態に係る皮膚状態推定装置600の構成を説明するためのブロック図である。本実施形態に係る皮膚状態推定装置600は、上記第1実施形態と比べると、属性情報取得部601を有する点で異なる。その他の構成および動作は第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0067】
皮膚状態推定装置600は、属性情報取得部601を有する。属性情報取得部601は、乳幼児110の属性情報を取得する。属性情報は、乳幼児110の月齢、食事状況、睡眠時間および起床時間の少なくとも1つを含む。
【0068】
乳幼児110は、月齢や性別、食事状況などにより、腸内細菌類の獲得状況に相違が生じることがある。また、皮膚常在菌類についても、月齢などにより、母親やその周辺の人物との接触回数が異なるため、十分な皮膚常在菌類を獲得できていない場合などもある。
【0069】
そのため、レコメンド生成部203は、推定された皮膚状態に対するレコメンドを生成する場合に、乳幼児110の属性情報を加味することで、乳幼児110の置かれた状況や、個別の事情などを反映したレコメンドを生成することができるようになる。
【0070】
次に、図7を参照して皮膚状態推定装置600が有する属性情報テーブル701の一例について説明する。属性情報テーブル701は、属性情報711に関連付けてレコメンド712を記憶する。属性情報711は、乳幼児110の月齢や性別、食事状況、睡眠時間、起床時間を含む。レコメンド712は、属性情報に応じて生成されるレコメンドである。そして、レコメンド生成部203は、属性情報テーブル701を利用してレコメンドを生成する。
【0071】
図8を参照して、皮膚状態推定装置600のハードウェア構成について説明する。RAM840は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。属性情報データ841は、乳幼児110の属性に関する情報である。
【0072】
ストレージ850には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ850は、属性情報テーブル701を格納する。属性情報テーブル701は、図7に示した、属性情報711とレコメンド712との関係を管理するテーブルである。
【0073】
ストレージ850は、さらに、属性情報取得モジュール851を格納する。属性情報取得モジュール851は、乳幼児110の月齢、性別、食事状況、睡眠時間および起床時間の少なくとも1つを含む属性情報を取得するモジュールである。
【0074】
次に図9A図9Cに示したフローチャートを参照して、皮膚状態推定装置600の処理手順について説明する。これらのフローチャートは、図8のCPU410がRAM840を使用して実行し、図6の皮膚状態推定装置600の各機能構成を実現する。
【0075】
図9Aを参照して、腸内細菌類比率から皮膚状態を推定する場合の皮膚状態推定装置600の処理手順について説明する。ステップS901において、属性情報取得部601は、乳幼児110の属性情報を取得する。そして、レコメンド生成部203は、取得した属性情報を加味して、レコメンドを生成する。
【0076】
図9Bを参照して、皮膚常在菌類比率から皮膚状態を推定する場合の皮膚状態推定装置600の処理手順について説明する。ステップS931において、属性情報取得部601は、乳幼児110の属性情報を取得する。そして、レコメンド生成部203は、取得した属性情報を加味して、レコメンドを生成する。
【0077】
図9Cを参照して、腸内細菌類比率/皮膚常在菌比率から皮膚状態を推定する場合の皮膚状態推定装置600の処理手順について説明する。ステップS951において、属性情報取得部601は、乳幼児110の属性情報を取得する。そして、レコメンド生成部203は、取得した属性情報を加味して、レコメンドを生成する。
【0078】
本実施形態によれば、乳幼児の属性情報を加味してレコメンドを生成するので、当該乳幼児に適したレコメンドを生成することができる。
【0079】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0080】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C