(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008252
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B25J15/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110249
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000103792
【氏名又は名称】オリエンタルモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕之
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET02
3C707ET10
3C707EU13
3C707EU14
3C707EU17
3C707EV02
3C707EV04
3C707HS27
(57)【要約】
【課題】ロボットハンドの把持対象物に合わせて把持力を効率的に調整可能とする。
【解決手段】ロボットハンドは、モーターのシャフト3に組み付けられた可動アーム50Aと、一端部が前記可動アームに固定され、前記可動アームを前記シャフトの周方向に付勢する弾性体70Aと、前記シャフトが貫通し、前記弾性体の他端部が固定されるリング状部品60とを備え、前記モーターの外装部に対する前記リング状部品の固定位置が調整可能である。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターのシャフトに組み付けられた可動アームと、
一端部が前記可動アームに固定され、前記可動アームを前記シャフトの周方向に付勢する弾性体と、
前記シャフトが貫通し、前記弾性体の他端部が固定されるリング状部品と
を備え、
前記モーターの外装部に対する前記リング状部品の固定位置が調整可能である、
ロボットハンド。
【請求項2】
前記リング状部品に設けられた複数の固定部のうちの一つに前記弾性体の他端部が固定される、請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記弾性体が取替え可能である、請求項1又は2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記可動アームに設けられた複数の固定部のうちの一つに前記弾性体の一端部が固定される、請求項1又は2に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記モーターの外装部に取り付けられ、前記リング状部品が固定されるケースをさらに備える請求項1又は2に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記モーターの外装部に対して着脱可能な固定アームをさらに備え、
前記モーターの外装部に対する前記固定アームの取付け位置によって、前記ロボットハンドが、保持対象物を外側から保持する外側保持タイプ又は内側から保持する内側保持タイプとなる、
請求項1又は2に記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の試料保持具は、握り部と、この握り部に一体に設けられた固定アーム部と、前記握り部に回動可能に装着された可動アーム部と、この可動アーム部を前記固定アーム部側へ付勢する付勢部材と、前記固定アーム部に装着され、試料の周縁部を保持する固定アーム部側保持部と、前記可動アーム部に前記固定アーム部側保持部と対向す
るように装着され、前記試料の周縁部を保持する可動アーム部側保持部とを備えている。
【0003】
特許文献2に記載の物体把持装置は、物体を把持するための把持装置本体と、前記把持装置本体に対して回動可能に吊り下げ保持された複数の把持アームと、前記把持アームに対して物体を把持する把持力を付与するねじりばねと、前記ねじりばねによる前記把持アームの把持力を調整する把持力調整機構とを有する。
【0004】
特許文献3に記載のロボットハンドの指機構は、ロボットハンドの指を構成している根元側指リンクおよび先端側指リンクと、前記先端側指リンクを前記根元側指リンクに対して前記ロボットハンドの握り方向および開き方向に旋回可能に連結している指関節軸と、前記先端側指リンクを前記握り方向に所定の力で常に付勢している付勢部材と、前記先端側指リンクを前記指関節軸を中心として前記握り方向および前記開き方向に旋回させるためのモータとを有している。
【0005】
特許文献4に股関節を備えるシステムが記載されている。この股関節は、回転軸と、前記回転軸を中心として回転可能であり、下半身リンクへ連結されるように構成された下半身結合位置を有する第1部材と、前記回転軸を中心として回転可能であり、上半身リンクに連結されるように構成された上半身結合位置を有する第2部材と、前記第1部材と前記第2部材の少なくとも一方の部材に連結され、前記下半身結合位置に対する前記上半身結合位置の回転方向における回転を妨げるために、前記少なくとも一方の部材に調整可能な力を加えるように構成された、力を調整可能な機構とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-80792号公報
【特許文献2】特開2006-346247号公報
【特許文献3】国際公開第2009/107164号公報
【特許文献4】特表2018-522747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術に鑑み、本発明は、ロボットハンドの把持対象物に合わせて把持力を効率的に調整可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るロボットハンドは、モーターのシャフトに組み付けられた可動アームと、一端部が前記可動アームに固定され、前記可動アームを前記シャフトの周方向に付勢する弾性体と、前記シャフトが貫通し、前記弾性体の他端部が固定されるリング状部品とを備え、前記モーターの外装部に対する前記リング状部品の固定位置が調整可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロボットハンドの把持対象物に合わせて把持力を効率的に調整可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】固定アーム及び第2可動アームが取り付けられる前のロボットハンドの斜視図である。
【
図1B】固定アーム及び第2可動アームが取り付けられる前のロボットハンドの斜視図である。
【
図2A】固定アーム及び第2可動アームが取り付けられた後のロボットハンドの斜視図である。
【
図2B】固定アーム及び第2可動アームが取り付けられた後のロボットハンドの斜視図である。
【
図4A】モーターにケースを組み付ける様子を示す斜視図である。
【
図4B】モーターにケースが組み付けられた状態を示す斜視図である。
【
図5】各種モーターとケースとの組み合わせの例を示す説明図である。
【
図7A】保持トルク調整リングにねじりコイルばねを組み付ける様子を示す斜視図である。
【
図7B】保持トルク調整リングにねじりコイルばねが組み付けられた状態を示す斜視図である。
【
図8A】保持トルク調整リング及びねじりばねをケースに組み付ける様子を示す斜視図である。
【
図8B】保持トルク調整リング及びねじりばねがケースに組み付けられた状態を示す斜視図である。
【
図9A】ケースに押さえ板を組み付ける様子を示す斜視図である。
【
図9B】ケースに押さえ板が組み付けられた状態を示す斜視図である。
【
図9C】ケースに押さえ板が組み付けられた状態を示す斜視図である。
【
図10A】モーターシャフトにカップリングを組み付ける様子を示す斜視図である。
【
図10B】モーターシャフトにカップリングが組み付けられた状態を示す斜視図である。
【
図11A】カップリングに第1可動アームを組み付ける様子を示す斜視図である。
【
図11B】カップリングに第1可動アームが組み付けられた状態を示す斜視図である。
【
図12A】第1可動アーム及びカップリングの斜視図である。
【
図12B】別の例に係る第1可動アーム及びカップリングの斜視図である。
【
図13】ねじりコイルばねの自然状態の開き角と撓み角αの説明図である。
【
図14】ねじりコイルばね70Aを保持トルク調整リングの溝A2に組み込み、保持トルク調整リングが調整範囲の中央で固定されているときのロボットハンドの正面図である。
【
図15】ねじりコイルばね70Aを保持トルク調整リングの溝A2に組み込み、保持トルク調整リングが調整範囲の中央で固定されているときの第1可動アームの角度θとねじりコイルばねの撓み角αの関係を示すグラフである。
【
図16】ねじりコイルばね70Aを保持トルク調整リングの溝A2に組み込み、保持トルク調整リングが調整範囲の中央で固定されているときの角度θと保持トルクとの関係を示すグラフである。
【
図17A】保持トルク調整リングの固定位置を変更した後の状態を示す正面図である。
【
図17B】保持トルク調整リングの固定位置を変更した後の状態を示す別の正面図である。
【
図18】ねじりコイルばね70Aを保持トルク調整リングの溝A2に組み込み、保持トルク調整リングが120°の範囲で回転可能なときの調整可能範囲を示すグラフである。
【
図19A】保持トルクを有段階で調整可能なロボットハンドの斜視図である。
【
図19B】保持トルクを有段階で調整可能な押さえ板の斜視図である。
【
図20】有段階で保持トルクを調整したときの角度θと保持トルクとの関係を示すグラフである。
【
図21】ねじりコイルばね70Aの脚の固定位置を変更したときの、角度θと保持トルクとの関係を示すグラフである。
【
図22A】右巻きねじりコイルばねの斜視図である。
【
図22B】左巻きねじりコイルばねの斜視図である。
【
図23】ワークの中空部を内側から把持するロボットハンドの斜視図である。
【
図24A】ロボットハンドの正面図である(ばね70A、固定位置A1)。
【
図24B】ロボットハンドの正面図である(ばね70A、固定位置A2)。
【
図24C】ロボットハンドの正面図である(ばね70A、固定位置A3)。
【
図25A】ロボットハンドの正面図である(ばね70B、固定位置B1)。
【
図25B】ロボットハンドの正面図である(ばね70B、固定位置B2)。
【
図25C】ロボットハンドの正面図である(ばね70B、固定位置B3)。
【
図26A】ロボットハンドの正面図である(ばね71C、固定位置C1)。
【
図26B】ロボットハンドの正面図である(ばね71C、固定位置C2)。
【
図26C】ロボットハンドの正面図である(ばね71C、固定位置C3)。
【
図27A】ロボットハンドの正面図である(ばね71D、固定位置D1)。
【
図27B】ロボットハンドの正面図である(ばね71D、固定位置D2)。
【
図27C】ロボットハンドの正面図である(ばね71D、固定位置D3)。
【
図28】ばね定数の異なるねじりコイルばね70A及び70Bの、保持トルクの調整可能範囲を示すグラフである。
【
図29】
図14に示したロボットハンドの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を以下に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態によって限定されるものではない。
【0012】
図1A及び1Bにロボットハンド100を示す。ロボットハンド100は、モーター1と、ケース20と、押さえ板30と、カップリング40と、第1可動アーム50と、保持トルク調整リング60と、それらを固定するねじ部品とを備えている。なお、ロボットハンド100は、後述するねじりコイルばね70をも備えている。
【0013】
モーター1は、外形が直方体状である。このモーター1の外装部の長手方向両側面の一方を前面あるいは取付面(
図4Aの符号FF)、他方を後面と呼ぶ。また、モーター1の外装部の幅方向両側面のうち、後面から前面に向かって、右側にある幅方向側面を右側面(
図4Aの符号RF)と呼び、左側にある幅方向側面を左側面と呼ぶ。モーター1の外装部はさらに、高さ方向に向かい合う上面(
図4Aの符号UF)及び下面を有する。モーター1のシャフト3は、モーター1の外装部の前面から外装部の長手方向に沿って外側に突出している。
【0014】
シャフト3の突出方向をx軸正方向とし、x軸正方向を基準として左方向をy軸正方向とし、モーター1の外装部の下面から上面へ向かう方向をz軸正方向とする。
【0015】
図10A、10B、11A及び11Bに示すように、モーター1のシャフト3には、カップリング40を介して第1可動アーム50が固定されている。第1可動アーム50は、ともに細長の板状体である第1部分50A及び第2部分50Bを備え、全体が幅方向視略L字状である。第1部分50Aは、シャフト3に対して垂直であり、カップリング40が取り付けられた基部から先端部に向かう長手方向がシャフト3の径方向外側方向と平行である。第2部分50Bは、第1部分50Aの先端部に接した基部から先端部に向かう長手方向がシャフト3の突出方向とは反対の方向に延びている。第2部分50Bは第1部分50Aに対して垂直である。シャフト3が回転すると、それに合わせて第1可動アーム50が回転する。
【0016】
図2A及び2Bにロボットハンド200を示す。このロボットハンド200は、基本形であるロボットハンド100に、ワークを把持するための固定アーム80及び第2可動アーム90が取り付けられて成る。固定アーム80は、細長の板状体であり、モーター1の外装部の右側面と対向するケース20の右側面部20B(詳細は後述)に取り付けられた基部から先端部に向かう長手方向が下方と平行である。
【0017】
第2可動アーム90は、ともに細長の板状体である第1部分90A及び第2部分90Bを備え、全体が幅方向視扁平略V字状である。第1部分90Aは、第1可動アーム50の第2部分50Bにおける外側の面に取り付けられた基部から先端部に向かう方向が、第2部分50Bの幅方向と平行である。また、第1可動アーム50の第1部分50Aを時計の針に見立てると、前方から見て第1部分50Aが概ね4時位置にある状態(
図2A、2Bに示した状態)において、第2可動アーム90の第1部分90Aの先端部は基部よりも下方にある。第2可動アーム90の第2部分90Bは、前述した4時位置の状態において、第1部分90Aの先端部に接している基端部から先端部へ向かう方向がz軸負方向である。
【0018】
固定アーム80と第2可動アーム90とはいずれも、把持するワークの形状に合わせて交換できるよう、ねじにより着脱可能に固定される。
【0019】
ケース20は、
図3A、3B、4A及び4Bに示すように、モーター1の前面FFに接する板状の前面部20Aと、モーター1の右側面RFと対向する板状の右側面部20Bと、モーター1の上面UFと対向する板状の上面部20Cとを備えている。つまり、ケース20は、矢印Bに沿って見たときに、モーター1をB側から挿入できるように、略直方体の前面、右側面及び上面を残してくり抜いたような形状である。
【0020】
また、ケース20の上面部20Cには、ロボットハンド100を他の装置に固定するためのタップ穴22(4か所)及び位置決めピン穴24(丸穴と長孔)が設けられている。右側面部20Bには、固定アーム80をケース20に固定するためのタップ穴23(4か所)及び位置決めピン穴25(丸穴と長孔)が設けられている。前面部20Aの中央には、インロー継手部が形成されたインロー穴21が形成されている。
【0021】
モーター1のインロー継手部2を、ケース20のインロー穴21に対して矢印B(
図3A)に沿って挿入する様子を
図4Aに示す。そして、モーター1にケース20が取り付けられた状態を
図4Bに示す。シャフト3はインロー穴21を通じて前方に突出している。
【0022】
図5に、取付寸法(前面の幅寸法及び高さ寸法)が同じであって全長が異なる(出力トルクが異なる)モーター1a、1bや回転角度検出器付モーター1c、1dと、ケース20との組み合わせの例を示す。このように、ロボットハンドに組み込まれるモーターを容易に変更できるように、ケース20とモーター1の外装部の一部を成すフランジ4とを別々の部品としている。モーター1の外装部は、フランジ4とエンドブラケット5とモーターステータで構成されているものでもよいし、モーターハウジングであってもよい。更に、モーター1の外装部は直方体状に限らず円筒形状などでもよい。
なお、フランジ4とケース20とを一体化してもよい。
【0023】
図6A及び6Bに、ケース20の前面部20Aに取り付けられる保持トルク調整リング60を示す。保持トルク調整リング60は、リング形状の本体部と、その本体部から径方向外側に突出するように設けられた耳62とを有する。耳62の中心には軸方向のタップ穴63が加工されている。
【0024】
保持トルク調整リング60の本体部裏面には、複数の溝(
図6Aの符号A1、A2、A3、B1、B2、B3、C1、C2、C3、D1、D2及びD3の12か所)が設けられている。また、保持トルク調整リング60には軸方向の貫通穴(図ではA1’、A2’、A3’、B1’、B2’、B3’、C1’、C2’、C3’、D1’、D2’及びD3’の12か所)が設けられている。溝A1~D3は、いずれも概ね径方向に延びており、基端部が本体部の内周面64に通じており、先端部が貫通穴A1’~ D3’にそれぞれ通じている。
保持トルク調整リング60の本体部裏面において、耳62に近い位置から反時計方向に沿って溝A1、B1、A2、B2、A3及びB3が順に位置している。また、耳62に近い位置から時計方向に沿って溝C1、D1、C2、D2、C3及びD3が順に位置している。
【0025】
図7A及び7Bに、保持トルク調整リング60に右巻きのねじりコイルばね70を挿入する様子及び挿入後の様子をそれぞれ示す。また、
図22Aに右巻きのねじりコイルばね70のみを示す。ねじりコイルばね70において、巻き始め側の片脚70aはコイル部の接線方向に延びており、巻き終わり側の片脚70cはコイル部の別の接線方向に延びている。片脚70a及び70cの先端部はいずれも折り曲げられてx軸正方向(シャフト3の突出方向)に延びている。図示の例では、片脚70aは溝A2及び貫通穴A2’に挿入され、中空部70bを有するコイル部は保持トルク調整リング60の中空部に位置し、片脚70cの先端部は保持トルク調整リング60の中空部から前方に向かって突出している。
【0026】
図8A及び8Bに、ねじりコイルばね70が挿入された保持トルク調整リング60をケース20に組み付ける様子及び組付け後の様子を示す。モーター1のインロー継手部2と保持トルク調整リング60の裏面の凹部61(
図6A)とを嵌め合わせることにより、保持トルク調整リング60はインロー部2を中心に同軸を維持した状態で回転することができる。また、モーター1のシャフト3は、ねじりばね70の中空部70bに通されている。
【0027】
ケース20の前面部20Aには、保持トルク調整リング60を収容する凹部20aが形成されている。また、耳62の可動範囲をケース前面において概ね1時位置から反時計方向に約120度の範囲内に制限する耳収容部20bが、凹部20aと通じるように形成されている。
【0028】
図9A及び9Bに、保持トルク調整リング60をケース20の凹部に収納したのち、押さえ板30で固定した様子を示す。保持トルク調整リング60の厚さは、ケース20の正面の凹部深さよりもわずかに小さいため、
図9Cにおいて、耳部62は、モーター1のシャフト3と同軸で回転できるが、その範囲は、ケース20の耳収容部20bにより約120度の範囲に制限されている。
【0029】
押さえ板30の中央にはシャフト3が貫通する穴が形成され、その穴の付近に、耳収容部20bと軸方向に対向する弧状のスリット30aが形成されている。
押さえ板30は、ねじ31とねじ32で固定される。なお、3本のねじ32は、ケース20とモーター1とで共締めで固定され、1本のねじ31はケース20のみと固定される。
保持トルク調整リング60の耳部62に設けられたねじ穴63に、押さえ板30のスリット30aを通してワッシャ33及びねじ34で締結することにより、保持トルク調整リング60が回転しないよう固定することができる。保持トルク調整リング60の耳部62の位置を変更するときは、ねじ34をわずかに緩めて固定を解除し、手動でねじ34ごと所望の位置まで移動させた後に、再びねじ34を締め込んで固定する。
【0030】
図10A及び10Bに、カップリング40をモーター1のシャフト3に挿入して止めねじ41により固定する様子及び固定後の様子をそれぞれ示す。
図11A及び11Bには、第1可動アーム50をカップリング40に組み付ける様子及び組付け後の様子をそれぞれ示す。
第1可動アーム50は、圧入や接着、かしめ、溶接のいずれか、もしくはそれらの組み合わせにより、カップリング40に接合される。
第1可動アーム50の第1部分50Aには、
図12Aに示すように、ねじりコイルばね70の片脚70cを通すための、シャフト方向に沿った複数の穴a~dがカップリング40の取付部周辺に設けられている。シャフト方向に向かって反時計方向に穴d、c、a及びbが順に位置している。図示の例ではねじりコイルばね70の片脚70cは穴aに通している。
【0031】
あるいは、
図12Bに示すように、カップリング40´の端面にシャフト方向の穴a~dを設けておき、ねじりばね70の片脚70cを固定することもできる。カップリング40´は、片脚固定用の穴が無い第1可動アーム50´に取り付けることができる。
【0032】
以上で、
図1A及び1Bに示した、基本形としてのロボットハンド100が完成する。
【0033】
続いて、ロボットハンド200の作用を説明する。
ロボットハンド200を駆動するモーター1は、第1可動アーム50に、設定した巻線電流にほぼ比例するトルクを発生させる。このトルクによりワーク(把持対象物)が把持される。あるいは、モーター1がステッピングモーターの場合は、ワークの大きさに合わせて位置決めを行い、励磁最大静止トルク以内でワークを把持する制御が行われる。
【0034】
ロボットハンド200がワークを把持している最中に、非常停止や停電などによりモーター1が無励磁状態となった場合、ワークの落下を防止することが望まれる。そのために、モーター1に電磁ブレーキを組み合わせることや、ウォームギヤ、すべりねじなどの逆駆動効率が低い機械要素、又はゼンマイを用いることも考えられるが、本実施形態では前述のとおり、軽量で安価なねじりコイルばね70を使用する。
【0035】
図13に、自然状態(すなわち、後述する撓み角α=0°の状態)での開き角が135°であるねじりばね70を示す。ねじりばね70の片脚70aは、
図7A、7B、8A及び8Bに示したように、保持トルク調整リング60に固定される。もう片方の脚70cは、
図11A、11B、12A及び12Bに示したように、第1可動アーム50又はカップリング40に固定される。
【0036】
前述のとおり、保持トルク調整リング60は、120度の範囲内で回転させることができる。また、第1可動アーム50(及びカップリング40)は、モーター1のシャフト3に締結されている。そのため、シャフト3が、ワークを把持しようとする方向(後述する
図14の時計方向)に回転すると、ねじりコイルばね70の撓み角αが正の値の範囲内で減少する。撓み角αとは、両脚の開き角の自然状態からの変化角度であり、α>0になるとねじりコイルばね70は自然状態に戻ろうとする復元トルクが働く。本実施形態は、この復元トルクを無励磁時におけるワークの把持トルクとして利用することで、無励磁時のワーク落下を防止しようとするものである。
なお、モーター励磁時におけるワークの把持トルクは、モータートルクとねじりコイルばね70の復元トルクとの合計トルクである。
【0037】
図2A及び2Bに示したロボットハンド200において、第2可動アーム90と固定アーム80とでワークを挟むように把持している場合、第2可動アーム90が閉じる方向(固定アーム80に近づく方向)に、ねじりコイルばね70の復元トルクが発生する。モーター1が無励磁状態となっても、ねじりコイルばね70の復元トルクによりワークを保持し続けることが可能となる。
省エネルギーやモーターの発熱抑制を目的として、ワークを把持している間は意図的にモーターを無励磁状態とし、ねじりコイルばねの復元トルクのみを利用してワークを把持してもよい。あるいは、ワーク把持時にモーターに流す電流値を定格より小さくし、モータートルクとねじりコイルばねの復元トルクの比率を変えて、ワークを把持してもよい。
また、モーター1が回転角度検出器付などのステッピングモーターの場合は、第2可動アーム90がワークの近傍に位置するとき、あるいはワーク接触後の脱調前にステッピングモーターを無励磁状態とし、ねじりコイルばね70の保持トルクのみを利用してワークを把持することにより、安定してワークを把持することができるとともに省エネルギーにもつながる。
【0038】
ねじりコイルばね70の保持トルク(復元トルク)Tcは、簡易的に以下の式で表される。
Tc=kc×α (1)
ただし、kcはばね定数であり、αはねじりコイルばね70の撓み角である。
ねじりコイルばね70のばね定数kcは、ばね素線の線径、ばねの内径、巻き数、脚の長さ、材質などで決まるが、
図5に示したように、モーターの出力トルクに合わせてばね定数kcの異なるねじりコイルばねを選択することができると、バリエーションが拡がる。また、右巻きあるいは左巻きのねじりコイルばねも組み付けることができると、第1可動アーム50に対する保持トルクTcのかかる方向を変えることができ、さらに都合がよい。
そのため、
図6A及び6Bに示したように、保持トルク調整リング60の裏面に複数の溝及び貫通穴を設け、使用するねじりコイルばねに応じて溝及び貫通穴を適宜選択できるようにしている。選択の詳細については後述する。
【0039】
保持トルク調整リング60は、前述のとおりモーター1のシャフト3に対して同軸で120度の範囲内で回転可能である。その効果について説明する。
ねじりコイルばね70の例として、線径φ0.5mm、内径5mm、巻き数5、ばね定数kc=0.112Nmm/degの右巻きねじりコイルばね70Aを選択する。保持トルク調整リング60の溝A2及び貫通穴A2’にねじりコイルばね70Aの片脚70Aaが挿入され、第1可動アーム50の穴aにねじりばね70Aのもう片方の脚70Acが挿入されている場合について以下に説明する。
【0040】
保持トルク調整リング60の効果を説明するために、まず、
図14に示すように、保持トルク調整リング60の耳部62のねじ穴63が、120°にわたる回転範囲の中央でねじ34により、押さえ板30の上から締結して固定されていると仮定する。すなわち、ねじりばね70Aの片脚70Aaは、ケース20に対して相対的に動かない状態になっているとする。
【0041】
第1可動アーム50が開いてワークW1を把持しているときの、第1部分50Aの長手方向とz軸負方向(-z方向)との成す角度θは、ワークW1の大きさにより変化する。第1可動アーム50の第1部分50Aが下向き(-z方向)になったときをθ=0°とし、θ=0°の状態から第1可動アーム50が開くように動いたときの角度θをθ>0°とする。
【0042】
第1可動アーム50の角度θと、ねじりコイルばね70Aの撓み角αの関係は、
図15のように表される。よって、式(1)から、第1可動アーム50の角度θと保持トルクTcの関係は、
図16のように表される。第1可動アーム50の角度θとねじりコイルばね70Aの撓み角αは、比例関係になる。例えば、角度θ=45°において、保持トルクTc=7.28N・mmとなり、固定となる。つまり第1可動アーム50の角度θにより、保持トルクTcは線形に変化する。
【0043】
次に、
図17A及び17Bに示すように、保持トルク調整リング60の耳部62の、回転範囲の中央での固定を解除し、120°の範囲内で自由に回転、固定を無段階で(あるいは連続的に)行うことができるようにする。つまり、ねじりばね70Aaのケース20に対する位置を変更することができるようになり、第1可動アーム50の角度θが同じであっても、撓み角α、すなわち保持トルクTcを変更できるようになる。そのときの、第1可動アーム50の角度θと保持トルクTcの関係は、
図18のようになる。例えば、第1可動アーム50の角度θ=45°における保持トルクTcは、0.56~14N・mmの範囲で調整できる。このように調整範囲が拡大する。
【0044】
なお、保持トルクTcの調整は、
図9Aにおいて保持トルク調整リング60の耳部62に加工されたねじ穴63に対し、押さえ板30の上からワッシャ33、ねじ34を締結して保持トルク調整リング60の回転を固定することにより行うことができる。押さえ板30には弧状のスリット30aが形成され、無段階に調整して固定することができるため、細かい調整が可能である。しかし、多数のロボットハンドを、調整トルクのばらつきを抑えて使用するときは、いずれのロボットハンドも安定して同じ調整ができるように、有段階で(あるいは離散的に)調整できると労力が軽減できる。
【0045】
図19A及び19Bに示す押さえ板35は、押さえ板30の代わりに用いられ、スリット部35aにおいてねじ34の頭部がわずかに通る(直径がスリット幅よりも大きい)円状の部分を20°ごとに計7か所設けて有段階(本実施例では7段階)で調整できるようにしたものである。ねじ34は、保持トルク調整リング60の耳部62に直接、締結される。保持トルクTcを変更するときは、ねじ34の頭部の底が押さえ板35からわずかに出るまで緩めて、保持トルク調整リング60を回転させる。その後、ねじ34の頭部が押さえ板35のスリット部35aを通過できる位置でねじ34を締め込む。保持トルク調整リング60は、ねじ34の頭部の側面が押さえ板35のスリット部35aの側面に当たりストッパーの役目を果たすため、固定される。
【0046】
図20に、有段階調整時の第1可動アーム50の角度θに対する保持トルクTcの関係を示す。この例では、第1可動アーム50の角度θに対して、保持トルクTcは2.24N・mmごとに7段階の設定が可能である。
【0047】
保持トルク調整リング60の固定位置を前述のとおり120°の回転範囲内で調整することにより保持トルクTcの調整範囲が拡張する。
図18に示したように、第1可動アーム50の角度θ=15°のときは、保持トルクTcは最大で10.64N・mmである。また、第1可動アーム50の角度θ=75°のときは、保持トルクTcは最小で3.92N・mmである。
【0048】
把持対象のワークの大きさが或る程度決まっているのであれば(つまり、第1可動アーム50の角度θの範囲が或る程度決まっているのであれば)、それに合わせて、保持トルクTcの調整範囲をシフトさせることができると都合が良い。
図6A及び6Bに示した保持トルク調整リング60の溝及び貫通穴について、ねじりコイルばね70Aの片脚70Aaの挿入位置を溝A2から溝A1あるいは溝A3に変更することにより、保持トルクTcの調整範囲をシフトさせることができる。
【0049】
図21は、ねじりコイルばね70Aの片脚70Aaを溝A3あるいは溝A1に挿入した場合の、第1可動アーム50の角度θと保持トルクTcの関係を示したグラフである。片脚70Aaを溝A3に挿入した場合を領域RA3として示し、片脚70Aaを溝A1に挿入した場合を領域RA1として示している。領域RA13は、領域RA1と領域RA3の共通領域である。片脚70Aaを溝A3に挿入した場合は、第1可動アーム50の角度θが比較的小さい場合において保持トルクTcの調整範囲を比較的大きくできる。また、脚70Aaを溝A1に挿入した場合は、第1可動アーム50の角度θが比較的大きい場合において保持トルクTcの調整範囲を比較的大きくでき、保持トルクTcを相当小さい値に設定することも可能である。
【0050】
<他の実施形態>
これまで、第1可動アーム50が閉じる方向に保持トルクを発生させる場合について説明した。第1可動アーム50が閉じる方向に保持トルクを発生させるためには、右巻きのねじりコイルばね70(
図22A)を保持トルク調整リング60に組み込むことで実現できる。
他方、
図22Bに示す左巻きのねじりコイルばね71を保持トルク調整リング60に組付けることもできる。そして、
図23に示すように、固定アーム80を別の固定アーム81に、第2可動アーム90を別の第2可動アーム91に取り替え、中空部を有するワークW2を内側から把持するようにする。第2可動アーム91が固定アーム81から遠ざかる方向(すなわち開く方向)の保持トルクをねじりコイルばね71により発生させることができる。
ねじりコイルばねの撓み角αが常に正の値となるよう、ワークに合わせて、右巻きのねじりコイルばね又は左巻きのねじりコイルばねを用いることができる。
【0051】
さらに別の実施形態として、
図24A~
図27Cに、ねじりコイルばねのみを交換し他の部品を変更しない場合を示す。ばね定数kcが異なる(寸法が異なる)2種類の右巻きねじりコイルばねと、同じくばね定数が異なる2種類の左巻きねじりコイルばねとの計4種類のねじりコイルばねを使用する。
【0052】
図6A及び6Bに示したように、保持トルク調整リング60には、溝(A1~D3)及び貫通穴(A1’~D3’)が12か所ずつ設けられている。さらに、
図12A及び12Bに示したように、第1可動アーム50あるいはカップリング40´に穴が4か所設けられている。
【0053】
図24A~24Cに、線径φ0.5mm、内径5mm、巻き数5、ばね定数kc=0.112Nmm/degの右巻きねじりコイルばね70Aを用いた場合を示す。保持トルク調整リング60の溝A1~A3のいずれかを選択して片脚70Aaを挿入している。他方の脚70Acは、第1可動アーム50あるいはカップリング40´の穴aに挿入している。
【0054】
図25A~25Cに、線径φ0.6mm、内径6mm、巻き数5、ばね定数kc=0.194Nmm/degの右巻きねじりコイルばね70Bを用いた場合を示す。保持トルク調整リング60の溝B1~B3のいずれかを選択して片脚70Baを挿入している。他方の脚70Bcは、第1可動アーム50あるいはカップリング40´の穴bに挿入している。
【0055】
図26A~26Cに、線径φ0.5mm、内径5mm、巻き数5、ばね定数kc=0.112Nmm/degの左巻きねじりコイルばね71Cを用いた場合を示す。保持トルク調整リング60の溝C1~C3のいずれかを選択して片脚71Caを挿入している。他方の脚71Ccは、第1可動アーム50あるいはカップリング40´の穴cに挿入している。
【0056】
図27A~27Cに、線径φ0.6mm、内径6mm、巻き数5、ばね定数kc=0.194Nmm/degの左巻きねじりコイルばね71Dを用いた場合を示す。保持トルク調整リング60の溝D1~D3のいずれかを選択して片脚71Daを挿入している。他方の脚71Dcは、第1可動アーム50あるいはカップリング40´の穴dに挿入している。
【0057】
図24A~27Cはいずれも、ワークを把持しているときの第1可動アーム50の角度θが45°である。それぞれのねじりコイルばねについて、片脚が固定される保持トルク調整リング60の溝及び貫通穴の選択を変えることで、撓み角αが変わり、保持トルクTcを変化させることができる。このことは、
図6A及び6B並びに
図21を参照しながら述べたとおりでもある。
【0058】
図28において、右巻きねじりコイルばね70Aの片脚70Aaを保持トルク調整リング60の溝A2に挿入した場合の保持トルクTcの調整可能範囲を領域R70Aとして示す。また、右巻きねじりコイルばね70Bの片脚70Baを保持トルク調整リング60の溝B2に挿入した場合の保持トルクTcの調整可能範囲を領域R70Bとして示す。領域R70ABは、領域R70Aと領域R70Bの共通領域である。ねじりコイルばね70Aを用いる場合に比べて、ねじりコイルばね70Bを用いた場合は保持トルクTcが1.8倍程度になる。つまり、ねじりコイルばね以外は同一部品のままで高トルクモーターにも対応できる保持トルクが得られる。
【0059】
図5に示したように、取付角が同じであればモーターを変更できる。同様の考え方はギヤードモーターに適用することもできる。その場合は、ケース20をギヤードモーターの取付部に合わせて設計しておき、減速比の異なる、すなわち把持力の異なるロボットハンドを得ることができる。また、電磁ブレーキ付のモーター、およびギヤードモーターとの組合せももちろん可能である。
【0060】
図14に示したロボットハンドの変形例を
図29に示す。変形の手順としてはまず、
図14に示したロボットハンドから固定アーム80及び第2可動アーム90を取り外す。次に、モーター1に対するケース20の取付け位置を変更し、ケース20の板状部20B及び板状部20Cがそれぞれモーター1の上面UF及び左側面と対向するようにする。続いて、ケース20の板状部20Cに固定アーム80又は81を取り付けるとともに、第1可動アーム50に対し第2可動アーム90又は91を取り付ける。図示の例では、固定アーム81及び第2可動アーム91が取り付けられている。
これにより、ワークを外側から把持する外側把持タイプのロボットハンド(
図14)を、ワークを内側から把持する内側把持タイプのロボットハンド(
図29)に変更することができる。その際、ねじりコイルばね70Aを別のねじりコイルばねに取り替える必要は無い。
なお、可動アーム及び固定アームの取付けは、ねじ締結によるものであるため、ロボットハンドの製造者のみならずユーザーにとっても容易である。
【0061】
これまでに述べた実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)保持トルク調整リングをケースに対してある角度範囲内(一例として120度の範囲内)で回転させて保持トルクを調整することができる。大がかりな機構の分解、組付けをすることなく、簡単に保持トルクの調整範囲を拡げることができる。
(2)把持するワークの大きさの範囲が限定されている場合(第1可動アームの角度範囲が限定されている場合)、ねじりコイルばねの脚を保持トルク調整リングに設けた複数の溝のいずれかに挿入することにより、保持トルクの調整範囲をシフトさせることができる。その際、部品の変更も新規の部品の追加も不要である。
(3)モーターのトルクが異なっても、ばね定数kcが異なるばねのみ変更し、その他の部品は変更せずに、限界保持トルクを大きくすることができる。
(4)ねじりコイルばねの巻き方向を変更するだけで、第1可動アームを閉じる方向にも開く方向にも保持トルクをかけることができる。
【0062】
上記(1)~(3)の効果は、(モーター変更時はモーターの長さ寸法のみ変わるものの)ロボットハンドの外観寸法を変更せずに得られるものである。
【0063】
また、保持トルクの調整にあたり、なるべく多くの部品を共通して使用することができる。さらに、保持トルク調整リングがモーターシャフトに組み付けられるため、保持トルク調整機能を加えることによるロボットハンドの大型化を抑えることができる。
【0064】
第1可動アームをねじりコイルばねによる付勢方向と反対の方向に動かせるようにするために、ねじりコイルばねの復元トルクよりも大きいトルクを発生できるモーターを使用する必要がある。
モータートルクが比較的小さいモーターを用いる場合には、そのモーターに合わせて、ばね定数が比較的小さいねじりコイルばねを使用する必要がある。
ロボットハンドに使用するモーターを、モータートルクが比較的小さいモーターから比較的大きいモーターに変更して、比較的重いワークを把持できるようにする場合がある。その際、モータートルクが比較的小さいモーターに合わせたねじりコイルばねを変えずに用いると、復元トルクが比較的小さいことから、モーターが無励磁状態になったときにワークが落下する可能性がある。
上述の実施形態では、モータートルクに合ったばね定数のねじりコイルばねを選択できるとともに、モーター交換に応じたねじりコイルばねの取替えも容易である。そのため、さまざまなワークの保持に対応できる。
【0065】
これまでに説明した実施形態に関し、以下の付記を開示する。
<付記1>
モーターのシャフトに組み付けられた可動アームと、
一端部が前記可動アームに固定され、前記可動アームを前記シャフトの周方向に付勢する弾性体と、
前記シャフトが貫通し、前記弾性体の他端部が固定されるリング状部品と
を備え、
前記モーターの外装部に対する前記リング状部品の固定位置が調整可能である、
ロボットハンド。
<付記2>
前記リング状部品に設けられた複数の固定部のうちの一つに前記弾性体の他端部が固定される、付記1に記載のロボットハンド。
<付記3>
前記弾性体が取替え可能である、付記1又は2に記載のロボットハンド。
<付記4>
前記可動アームに設けられた複数の固定部のうちの一つに前記弾性体の一端部が固定される、付記1又は2に記載のロボットハンド。
<付記5>
前記モーターの外装部に取り付けられ、前記リング状部品が固定されるケースをさらに備える付記1又は2に記載のロボットハンド。
<付記6>
前記モーターの外装部に対して着脱可能な固定アームをさらに備え、
前記モーターの外装部に対する前記固定アームの取付け位置によって、前記ロボットハンドが、保持対象物を外側から保持する外側保持タイプ又は内側から保持する内側保持タイプとなる、
付記1又は2に記載のロボットハンド。
【0066】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
100、200 ロボットハンド
1 モーター
3 シャフト
20 ケース
30、35 押さえ板
40 カップリング
50 第1可動アーム
60 保持トルク調整リング
70、71 ねじりコイルばね
80 固定アーム
90 第2可動アーム
A1~D3 溝
A1’~D3’ 貫通穴
a~d 第1可動アーム又はカップリングの穴
W1、W2 ワーク(把持対象物)