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特開2025-8284信号機制御装置、信号機制御方法、および信号機制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008284
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】信号機制御装置、信号機制御方法、および信号機制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/08 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G08G1/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110300
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100187078
【弁理士】
【氏名又は名称】甲原 秀俊
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】本田 裕康
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181CC02
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC18
5H181JJ02
5H181JJ07
(57)【要約】
【課題】横断歩道における信号機制御の技術を改善する。
【解決手段】信号機制御装置は、通信部と、制御部とを含む。通信部は、横断歩道を含む横断歩道の周辺の検知対象の複数の領域について、移動体を検出した検出結果を取得する。制御部は、通信部により取得した検出結果に基づいて、複数の領域に含まれる領域ごとの移動体の存在の有無の組合わせを認識し、当該組合せに基づいて歩行者用信号機および車両用信号機を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断歩道を含む該横断歩道の周辺の検知対象の複数の領域について、移動体を検出した検出結果を取得する通信部と、
前記通信部により取得した前記検出結果に基づいて、前記複数の領域に含まれる領域ごとの前記移動体の存在の有無の組合わせを認識し、該組合せに基づいて歩行者用信号機および車両用信号機を制御する制御部と
を備える信号機制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の領域の何れの領域にも移動体が存在しない場合、前記歩行者用信号機が歩行者を通行可とする表示をするように該歩行者用信号機を制御する請求項1に記載の信号機制御装置。
【請求項3】
前記複数の領域は、前記横断歩道上の領域である第1領域と、前記横断歩道の近傍の歩行者が通る領域である第2領域と、前記横断歩道に向かう車両が通る領域である第3領域とを含み、
前記制御部は、前記第1領域、前記第2領域、および、前記第3領域における移動体の存在の有無の組合せに基づいて、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を、前記歩行者用信号機が歩行者を通行可とし前記車両用信号機が車両を通行不可とする第1状態と、前記歩行者用信号機が歩行者を通行不可とし前記車両用信号機が車両を通行可とする第2状態との間で遷移させるように制御する、請求項1に記載の信号機制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第1状態であり、前記第1領域および前記第2領域に移動体が存在せず、前記第3領域に移動体が存在するとき、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第2状態に遷移させるように制御する、請求項3に記載の信号機制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第1状態であり、前記第2領域に移動体が存在せず、前記第3領域に移動体が存在しているとき、前記第1領域に移動体が存在しなくなってから第1の時間後に、前記前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第2状態に遷移させるように制御する、請求項3に記載の信号機制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第1状態であり、前記第3領域に移動体が存在しているとき、前記第1領域に移動体が存在しない状態が第2の時間以上継続し、かつ、前記第2領域に移動体が存在している状態が第3の時間以上継続したとき、前記前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第2状態に遷移させるように制御する、請求項3に記載の信号機制御装置。
【請求項7】
前記第2領域は、前記横断歩道に隣接する第4領域と、前記第4領域よりも前記横断歩道より離れて位置する第5領域とを含み、前記第4領域に移動体が存在している場合と、前記第5領域に移動体が存在し前記第4領域に移動体が存在しない場合とでは前記第3の時間が異なる、請求項6に記載の信号機制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第1状態であり、前記第3領域に移動体が存在する状態が第4の時間継続したとき、前記前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第2状態に遷移させるように制御する、請求項3に記載の信号機制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第2状態であり、前記第1領域および前記第3領域に移動体が存在しない状態が第5の時間継続したとき、前記前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第1状態に遷移させるように制御する、請求項3に記載の信号機制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第2状態であり、前記第2状態が第6の時間継続したとき、前記前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第1状態に遷移させるように制御する、請求項3に記載の信号機制御装置。
【請求項11】
前記移動体は、歩行者、自転車および車両を含む複数の種類の異なる移動体を含み、前記制御部は、前記移動体の前記種類を区別しない、請求項1に記載の信号機制御装置。
【請求項12】
前記通信部は、撮像した画像から移動体を識別する機能を有するカメラから前記検出結果を取得する、請求項1に記載の信号機制御装置。
【請求項13】
信号機制御装置の制御部が実行する信号機制御方法であって、
横断歩道を含む該横断歩道の周辺の検知対象の複数の領域について、移動体を検出した検出結果を取得することと、
前記検出結果に基づいて、前記複数の領域に含まれる領域ごとの前記移動体の存在の有無の組合せを認識することと、
前記組合せに基づいて歩行者用信号機および車両用信号機を制御することと
を含む信号機制御方法。
【請求項14】
前記制御部は、前記複数の領域の何れの領域にも移動体が存在しない場合、前記歩行者用信号機が歩行者を通行可とする表示をするように該歩行者用信号機を制御する、請求項13に記載の信号機制御方法。
【請求項15】
前記複数の領域は、前記横断歩道上の領域である第1領域と、前記横断歩道に隣接する歩道の領域である第2領域と、前記横断歩道に向かう車両が通る領域である第3領域とを含み、
前記制御部は、前記第1領域、前記第2領域、および、前記第3領域における移動体の存在の有無の組合せに基づいて、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を、前記歩行者用信号機が歩行者を通行可とし前記車両用信号機が車両を通行不可とする第1状態と、前記歩行者用信号機が歩行者を通行不可とし前記車両用信号機が車両を通行可とする第2状態との間で遷移させるように制御する、請求項13に記載の信号機制御方法。
【請求項16】
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第1状態であり、前記第1領域および前記第2領域に移動体が存在せず、前記第3領域に移動体が存在するとき、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第2状態に遷移させるように制御する、請求項15に記載の信号機制御方法。
【請求項17】
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第1状態であり、前記第2領域に移動体が存在せず、前記第3領域に移動体が存在しているとき、前記第1領域に移動体が存在しなくなってから第1の時間後に、前記前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第2状態に遷移させるように制御する、請求項15に記載の信号機制御方法。
【請求項18】
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第1状態であり、前記第3領域に移動体が存在しているとき、前記第1領域に移動体が存在しない状態が第2の時間以上継続し、かつ、前記第2領域に移動体が存在している状態が第3の時間以上継続したとき、前記前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第2状態に遷移させるように制御する、請求項15に記載の信号機制御方法。
【請求項19】
前記第2領域は、前記横断歩道に隣接する第4領域と、前記第4領域よりも前記横断歩道より離れて位置する第5領域とを含み、前記第4領域に移動体が存在している場合と、前記第5領域に移動体が存在し前記第4領域に移動体が存在しない場合とでは前記第3の時間が異なる、請求項18に記載の信号機制御方法。
【請求項20】
横断歩道の通行を制御するために配置された歩行者用信号機および車両用信号機と、
前記横断歩道を含む該横断歩道の周辺の検知対象の複数の領域について、移動体を検出する検出器と、
前記検出器から移動体を検出した検出結果を取得する通信部、および、前記検出結果に基づいて、前記複数の領域に含まれる領域ごとの前記移動体の存在の有無の組合わせを認識し、該組合せに基づいて前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を制御する制御部を含む信号機制御装置と
を備える信号機制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号機制御装置、信号機制御方法、および信号機制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、横断歩道を横断するために待機している待機歩行者を検出し、待機用歩行者の検出によるリコール制御により、歩行者用信号機および車両用信号機を制御する横断歩道用信号システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によれば、撮像装置により横断歩道の手前に立つ歩行者を含む画像を撮像し、撮像された画像に所定の画像解析を行うことにより、歩行者が横断歩道を渡ろうとする待機歩行者か否かを判断している。この画像解析には、撮像画像中の待機エリア内に対応する画像部分に写っている人物の抽出、抽出された人物の追跡、および、抽出された人物の視線方向の判断等の処理を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-208141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の横断歩道における信号機の制御方法では、複雑な画像処理を行うことにより歩行者の横断意図を予測しているため、判断に揺らぎが生じることがある。また、天候および明るさ等の条件により、歩行者の視線方向等を判定することが難しくなる場合がある。すなわち、従来技術では高度な画像認識を必要とするために、画像認識にロバスト性が不十分となり安定稼働に問題が生じることが懸念される。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、横断歩道における信号機制御の技術を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る信号機制御装置は、横断歩道を含む該横断歩道の周辺の検知対象の複数の領域について、移動体を検出した検出結果を取得する通信部と、前記通信部により取得した前記検出結果に基づいて、前記複数の領域に含まれる領域ごとの前記移動体の存在の有無の組合わせを認識し、該組合せに基づいて歩行者用信号機および車両用信号機を制御する制御部とを備える。
【0007】
また、本開示の一実施形態に係る信号機制御方法は、信号機制御装置の制御部が実行する信号機制御方法であって、横断歩道を含む該横断歩道の周辺の検知対象の複数の領域について、移動体を検出した検出結果を取得することと、前記検出結果に基づいて、前記複数の領域に含まれる領域ごとの前記移動体の存在の有無の組合せを認識することと、前記組合せに基づいて歩行者用信号機および車両用信号機を制御することとを含む。
【0008】
また、本開示の一実施形態に係る信号機制御システムは、横断歩道の通行を制御するために配置された歩行者用信号機および車両用信号機と、前記横断歩道を含む該横断歩道の周辺の検知対象の複数の領域について、移動体を検出する検出器と、前記検出器から移動体を検出した検出結果を取得する通信部、および、前記検出結果に基づいて、前記複数の領域に含まれる領域ごとの前記移動体の存在の有無の組合わせを認識し、該組合せに基づいて前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を制御する制御部を含む信号機制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、横断歩道における信号機制御の技術を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る信号機制御システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図1の信号機制御システムの各構成要素および検知対象の領域の配置の一例を説明する平面図である。
図3図1の歩行者用信号機および車両用信号機の信号現示階梯図の一例を示す図である。
図4】信号機制御装置による信号機制御処理の一例を示すフローチャートである。
図5図4の信号機の切替を判断する処理の一例を示すフローチャートである。
図6】第1状態から第2状態への遷移条件の一例を示す図である。
図7】第2状態から第1状態への遷移条件の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものである。図面上の寸法および比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
【0012】
(信号機制御システムの構成)
本開示の一実施形態に係る信号機制御システム1は、図1に示すように、信号機制御装置10と、一つ以上の検出器20と、歩行者用信号機31と、車両用信号機32とを含む。信号機制御装置10と、検出器20、歩行者用信号機31、および、車両用信号機32それぞれとの間は、有線通信手段および/または無線通信手段により通信可能に接続されている。
【0013】
信号機制御装置10は、歩行者用信号機31および車両用信号機32を制御するコンピュータである。信号機制御装置10は、歩行者用信号機31および車両用信号機32に隣接して配置されてよい。信号機制御装置10の少なくとも一部の機能は、歩行者用信号機31および車両用信号機32から離れた遠隔の場所に配置されてもよい。信号機制御装置10は、通信部11、制御部12および記憶部13を含む。
【0014】
通信部11は、信号機制御装置10の外部の装置と通信を行うための通信インタフェースを含む。外部の装置は、検出器20、歩行者用信号機31および車両用信号機32を含む。通信部11は、有線通信および/または無線通信に対応する。
【0015】
制御部12は、単一の、または、複数のプロセッサとメモリとを含んで構成される。プロセッサには、特定のプログラムを読み込ませることにより、プログラムされた機能を実行する汎用プロセッサおよび、特定の処理に特化した専用プロセッサが含まれる。制御部12は、信号機制御用のプログラムを読み込んで、歩行者用信号機31および車両用信号機32を制御する。制御部12は、歩行者用信号機31および車両用信号機32を制御するための種々の演算を実行する。
【0016】
記憶部13は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせを含む。記憶部13は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部13には、信号機制御装置10の動作に用いられるプログラム及びデータと、信号機制御装置10の動作によって得られたデータとが記憶される。記憶部13に記憶される情報は、それぞれ、例えば通信部11から取得される情報で更新可能であってもよい。
【0017】
信号機制御装置10は、通信部11、制御部12および記憶部13に加え、入力部および表示部等を備えてよい。入力部は、信号機制御システム1の管理者が直接操作を行うためのボタンスイッチおよびタッチパネル等を含む。表示部は、管理者の操作に応じた表示を行うためのLCD(liquid crystal display)等のディスプレイを含む。
【0018】
検出器20は、横断歩道41(図2参照)を含む横断歩道41の周辺領域において、移動体を検出するセンサである。本開示において、移動体は、移動可能な人および物を意味する。移動体は、ある瞬間に停止していてもよい。移動体は、歩行者42、車両43、自転車、および、パーソナルモビリティビークル(PMV:Personal Mobility Vehicle)等の複数の種類の人または物を含んでよい。移動体は、交通参加者と言い換えることができる。検出器20は、移動体の種類を判別しなくてよい。検出器20は、所定の周辺領域の移動体を検出するため、2つ以上配置されてよい。検出器20は、検出結果を信号機制御装置10に送信するように構成される。検出器20の検出結果は、横断歩道41を含む横断歩道41の周辺領域に含まれる複数の領域のそれぞれにおける移動体の存在の有無を認識するために使用される。
【0019】
検出器20は、例えば、横断歩道41に隣接する信号機または電柱等の構造物に固定され、横断歩道41の周辺領域を撮像するカメラである。カメラは、可視光の画像を撮像するカメラに限られず、赤外線波長の光を撮像する赤外線カメラを含んでよい。検出器20がカメラの場合、本開示において「移動体を検出する」とは、単に移動体を含む画像を撮像することと、撮像した画像から移動体を識別することとの双方の意味で使用する。
【0020】
検出器20としては、例えば、エッジAI(artificial intelligence)カメラを使用することができる。エッジAIカメラは、AI処理機能が搭載されたカメラである。エッジAIカメラは、カメラ内部で撮像した画像のAI処理を行い、処理結果を信号機制御装置10に送信することができる。エッジAIカメラは、撮像した画像から移動体を識別して、識別した移動体の情報を撮像した画像とともに信号機制御装置10に送信することができる。
【0021】
検出器20は、エッジAIカメラではなく、一般的なカメラであってもよい。この場合、検出器20は、検出結果として撮像した画像を信号機制御装置10に送信してよい。撮像した画像からの領域ごとの移動体の検出は、制御部12によって行われる。この場合、制御部12が、AI画像解析処理を実行する機能を有してよい。
【0022】
検出器20は、カメラに限られない。検出器20は、特定の領域内の移動体の存在の有無を検出するために使用することができる任意のセンサであってよい。検出器20は、例えば、歩行者用道路44および/または車両用道路45上の構造物に固定された超音波センサ、および/または、赤外線センサを含んでよい。また、検出器20は、ループコイル検出器のような車両用道路45に埋設されたセンサであってもよい。検出器20は、特定の領域の端部にこれらのセンサを配置して、特定の領域内に出入りする移動体の存在の有無を検知してもよい。
【0023】
歩行者用信号機31および車両用信号機32は、横断歩道41の通行を制御するために配置される。
【0024】
歩行者用信号機31は、横断歩道41を挟んで車両用道路45の両側に配置される信号機である。歩行者用信号機31は、横断歩道41を渡る歩行者42に対面する方向に発光部を向けて配置される。歩行者用信号機31は、歩行者42に対して横断歩道41を通行可とする表示および通行不可とする表示を行う。例えば、歩行者用信号機31は、青色の発光部と赤色の発光部とを含む。青色の発光部が点灯している状態は、歩行者42が通行可能であることを示す。赤色の発光部が点灯している状態は、歩行者42が通行不可であることを示す。また、青色の発光部が点灯している状態から赤色の発光部が点灯している状態に切り替わる前には、青色の発光部が点滅して信号の切替えが近いことを知らせる。歩行者用信号機31は、信号機制御装置10により制御される。
【0025】
車両用信号機32は、横断歩道41を挟んで車両用道路45上の車両43の運転者に向けて配置される信号機である。車両用信号機32は、車両43の運転者に対して、車両43が横断歩道41上を通行可又は通行不可であることを示す表示を行う。例えば、車両用信号機32は、青色、赤色および黄色の発光部を有する。青色の発光部は、車両43が横断歩道41上を通行可能であることを示す。赤色の発光部は、車両43が横断歩道41上を通行不可であることを示す。また、青色の信号は黄色信号を経て赤色に切り替わる。車両用信号機32は、信号機制御装置10により制御される。
【0026】
歩行者用信号機31および車両用信号機32は、上述のように発光部の色により通行可能または通行不可を示すものに限られない。例えば、通行可能であることを示すために、歩行者用信号機31および/または車両用信号機32は、矢印を表示してもよい。また、通行可能であることを示す発光部の色は、青色ではなく緑色であってもよい。以下では、説明を簡略化するために信号機の表示する青、赤および黄等の色を使用して信号機の表示する状態を説明することがある。
【0027】
(横断歩道周辺での領域および機器の配置例)
図2は、歩行者用道路44と車両用道路45とが交差する位置における横断歩道41と、検知対象の複数の領域と、信号機制御システム1の各構成要素の配置の一例を示す。
【0028】
歩行者用道路44は、歩行者42の他、自転車およびPMVも通行する道路である。歩行者42、自転車およびPMVは、移動体に含まれる。歩行者用道路44を通行する移動体は、歩行者用信号機31に従って横断歩道41を通行する。信号機制御システム1は移動体の種類を識別しないので、歩行者用道路44を通行する移動体は、実質的に歩行者42として扱われる。
【0029】
車両用道路45は、車両43の他、自転車およびPMVも通行する道路である。車両43、自転車およびPMVは、移動体に含まれる。車両用道路45を通行する移動体は、車両用信号機32に従って車両用道路45を通行する。信号機制御システム1は移動体の種類を識別しないので、車両用道路45を通行する移動体は、実質的に車両43として扱われる。
【0030】
横断歩道41およびその周辺の検知対象の領域は、例えば、第1領域51、第2領域52および第3領域53を含む。第1領域51は、横断歩道41上の領域である。第2領域52は、横断歩道41の近傍の歩行者42が通る領域である。第3領域53は、横断歩道41に向かう車両43が通る領域である。第3領域53は、車両用道路45の横断歩道41に向かう車線上で、横断歩道41から所定の距離手前から横断歩道41の直前までの領域であってよい。所定の距離は、例えば、30m、50mまたは100m等、道路環境に応じて任意に設定することができる。以下において、第1領域51、第2領域52および第3領域53は、それぞれ、横断部エリア、歩行者側近傍エリア、車両接近エリアとも称することがある。第2領域52は車両用道路45を挟んで左右に一つずつ存在する。第3領域53は、車両用道路45のセンターライン46を挟んで左右にそれぞれ一つずつ存在する。
【0031】
第2領域52は、さらに、第4領域54と第5領域55とを含んでよい。第4領域54は、横断歩道41に隣接し、歩行者42が信号待ちをする領域である。第5領域55は、第4領域54に隣接し第4領域54よりも横断歩道41から離れて位置する領域であって、横断歩道41へ向かう歩行者42が通る領域である。第4領域54および第5領域55の奥行きは、道路環境等に応じて任意に設定することができる。例えば、第4領域54は、横幅が横断歩道41の幅よりも1mから2m広く、奥行きが2m、3mまたは5m等の歩行者用道路44上の領域であってよい。また、第5領域55は、歩行者用道路44上で奥行きが10m、20mまたは30m等の領域であってよい。ここで、奥行きは、歩行者用道路44の延びる方向の長さを意味する。以下において、第4領域54および第5領域55は、それぞれ、歩行者横断待ちエリアおよび横断歩行者接近エリアとも称することがある。
【0032】
図2の例において、検出器20として、2つの検出器20Aおよび20Bが、それぞれ、横断歩道41を挟んで道路の両側に設けられる。一実施形態において、検出器20Aおよび20Bは、それぞれ、一台以上のエッジAIカメラを搭載してよい。例えば、検出器20Aは、第1領域51と、車両用道路45のセンターライン46の検出器20A側(図2において左側)に位置する第2領域52および第3領域53とを撮像するように構成されてよい。また、検出器20Bは、第1領域51と、車両用道路45のセンターライン46の検出器20B側(図2において右側)に位置する第2領域52および第3領域53とを撮像するように構成されてよい。
【0033】
エッジAIカメラである検出器20A、20Bは、それぞれ検出対象とする領域に、移動体が存在しているか否かを検出する。検出器20A、20Bは、移動体の存在の有無および存在位置(領域)のみを検出すればよく、移動体の種類、向き、進行方向、および、速度等を分析しなくてよい。このため、検出器20A、20Bは、複雑な画像処理を実行する必要は無い。検出器20の数は2つに限られない。検出器20は、横断歩道41の周辺の第1領域51から第5領域55を撮像される領域として包含するのに十分な数のエッジAIカメラを含んでよい。エッジAIカメラどうしは互いに通信接続され、横断歩道41周辺全体の移動体の検知情報が統合可能に構成されてよい。検出器20Aが検出した、第1領域51から第5領域55内の移動体の存在有無およびその存在位置の情報は、信号機制御装置10に送信される。
【0034】
信号機制御装置10の制御部12は、通信部11を介して各検出器20Aおよび20Bから取得した検出結果の情報を統合して、全体として第1領域51から第5領域55のそれぞれにおける移動体の存在の有無を判断する。この存在判定は、全ての検出器20の検出結果を統合して行われる。制御部12は、検知ハンチング(ゆらぎ)による判定ハンチング(ゆらぎ)を防ぐため、領域内で一定時間(例えば、0.3秒等)以上移動体の検知が継続したときに、当該領域の移動体の存在を有りと判断する。また、移動体の存在の有無の判断を有りから無しに変更する場合も同様とする。
【0035】
制御部12は、第1領域51から第5領域55に含まれる領域ごとの移動体、すなわち、歩行者42および車両43等の交通参加者の存在の有無の組合せを認識する。制御部12は、この組み合わせに基づいて、横断歩道41及びその周辺の歩行者42及び車両43等の交通参加者の状況を判断する。制御部12は、例えば、横断歩道41を横断中の歩行者42の有無、横断歩道41で横断待ちをしている歩行者42の有無、および、横断歩道41の手前で横断歩道41に接近する車両43または信号待ちをする車両43の有無等を判断する。制御部12は、第1領域51から第5領域55ごとの移動体の存在の有無の組合せに基づいて、歩行者用信号機31および車両用信号機32を制御する。
【0036】
本開示の信号機制御システム1では、移動体が横断歩道41まで到達するのにかかる時間を計算して歩行者用信号機31および車両用信号機32を制御するのではない。本開示の信号機制御システム1では、各検知対象の領域の配置および形状と、移動体の存在有無の組合せとにより、移動体の横断歩道41への接近、および、待機状態等を判定する。
【0037】
一実施形態において、制御部12は、第1領域51から第3領域53の何れにも移動体が存在しない場合、歩行者用信号機31を、歩行者42を通行可とする表示をするように制御してよい。すなわち、制御部12は、歩行者用信号機31に青とすることを基本状態として、所定の遷移条件を満たした場合のみ、歩行者用信号機31を赤、車両用信号機32青にするように、歩行者用信号機31および車両用信号機32を制御してよい。このようにすることで、横断歩道41に到達した歩行者42が、歩行者用信号機31が赤から青に切り替わるのを待つ時間を低減することが可能になる。また、歩行者用信号機31を青とすることを基本とすることにより、少なくとも第3領域53に移動体が存在しないとき、横断歩道41に接近する歩行者42の画像から歩行者42が横断歩道41を通行することを意図しているか否かを分析する必要が無くなる。
【0038】
(信号現示階梯図)
制御部12は、例えば、図3の信号現示階梯図に従い、歩行者用信号機31と車両用信号機32との信号切替を制御する。
【0039】
階梯1は、歩行者用信号機31が青であり、車両用信号機32が赤である階梯である。階梯1の状態は第1状態である。階梯1は、信号機制御システム1における歩行者用信号機31と車両用信号機32の基本状態とすることができる。階梯1から階梯3の列の流れ図の枠内に破線で示される矢印は、「1P」で表される歩行者42の移動方向を示している。階梯1において、後述する図6に例示される判定条件が充足されると、制御部12は、階梯2への遷移を指示する。
【0040】
階梯2は、歩行者用信号機31が青の点滅信号であり、車両用信号機32が赤である階梯である。制御部12は、所定の保安秒数だけ階梯2を継続した後、階梯3に遷移する。図3の例では、階梯2の保安秒数は8秒である。
【0041】
階梯3は、歩行者用信号機31および車両用信号機32が赤信号である階梯である。制御部12は、階梯3で所定の保安秒数経過後、階梯4に遷移する。図5の例では、所定の保安秒数は2秒である。
【0042】
階梯4は、歩行者用信号機31が赤であり、車両用信号機32が青である階梯である。階梯4の状態は第2状態である。階梯4では、歩行者42は横断歩道41を通行不可とする。また、階梯4では、車両43は、車両用道路45の横断歩道41上を通行可とする。階梯4から階梯6の列の流れ図の枠内に実線で示される矢印は、「2G」で表される車両43の移動方向を示している。階梯4において、図7に例示される判定条件が充足されると、制御部12は、階梯5への遷移を指示する。
【0043】
階梯5は、歩行者用信号機31が赤であり、車両用信号機32が黄である階梯である。制御部12は、所定の保安秒数だけ階梯5を継続した後、階梯6に遷移する。図5の例では、階梯6の保安秒数は6秒である。
【0044】
階梯6は、歩行者用信号機31および車両用信号機32が赤である階梯である。制御部12は、階梯6で所定の保安秒数経過後、階梯1に遷移する。図5の例では、所定の保安秒数は2秒である。
【0045】
図3に示される保安秒数は、一例である。保安秒数は、交通環境および交通量等に応じて適切な値に設定されてよい。
【0046】
図3に示すように、信号機制御システム1では、第1状態である階梯1と第2状態である階梯4において、所定の判定条件が充足することにより次の階梯の遷移が開始される。第1状態は、歩行者用信号機31が歩行者42を通行可とし車両用信号機32が車両43を通行不可とする状態である。第2状態は、歩行者用信号機31が歩行者42を通行不可とし車両用信号機32が車両43を通行可とする状態である。階梯2、階梯3、階梯5および階梯6は、所定の保安秒数が経過した後、次の階梯へ遷移する。すなわち、制御部12は、歩行者用信号機31と車両用信号機32とを、第1状態と第2状態との間で切り替える処理を順次繰り返し行っている。階梯2、階梯3、階梯5および階梯6は、第1状態と第2状態との間の遷移状態とみなすことができる。
【0047】
(信号機制御装置の処理)
図4のフローチャートを参照して、信号機制御装置10が実行する信号機制御方法の手順を説明する。本明細書で開示される方法は、制御部12に含まれるプロセッサがプログラムに従って実行することができる。そのようなプログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体において記憶されることが可能である。非一時的なコンピュータ可読媒体の例としては、ハードディスク、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、CD-ROM(Compact Disc Read only memory)、等を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体は、これらに限定されない。
【0048】
まず、検出器20が検知対象の領域において移動体を検出する。信号機制御装置10の制御部12は、検出器20が検知した検出結果を、通信部11を介して取得する(S11)。
【0049】
次に、制御部12は、例えばエッジAIカメラである検出器20から取得した検出結果の情報を統合して、検知対象の領域ごとの移動体の有無を認識する(S12)。
【0050】
制御部12は、S12における認識結果による、領域ごとの移動体の有無の組合せに基づいて、歩行者用信号機31および車両用信号機32の切替を判断する(S13)。この切替の判断は、図5に示すように、歩行者用信号機31および車両用信号機32を、第1状態と第2状態との間で遷移させる判断をする。以下に図5の信号切替判断処理について説明する。
【0051】
まず、制御部12は、歩行者用信号機31および車両用信号機32が、第1状態と第2状態との間で状態遷移中である場合(S21:Yes)、第1状態または第2状態の何れかになるまで(S21:Yes)待機する。すなわち、制御部12は、図3の信号現示階梯図の階梯2および階梯3の状態のとき、階梯4への遷移が完了するまで待つ。また、制御部12は、図3の信号現示階梯図の階梯5および階梯6の状態のとき、階梯1への遷移が完了するまで待つ。
【0052】
次に、制御部12は、歩行者用信号機31および車両用信号機32の現在の状態が第1状態(階梯1)の場合(S22:Yes)、第2状態(階梯4)への遷移条件を充足するか判定する(S23)。制御部12は、検出器20から取得された領域ごとの移動体の存在の有無の組合わせが、図6に示される第2状態への遷移条件を満たすか否かを判定する。
【0053】
S23において第2状態への遷移条件が充足される場合(S23:Yes)、制御部12は第2状態への信号切替を実行することを判断する(S24)。S23において第2状態への遷移条件が充足されない場合(S23:No)、制御部12は第2状態への遷移条件が充足されるまでS23の判定を繰り返す。その結果、最終的に第2状態への遷移条件が充足されたとき、制御部12は第2状態への切替を判断する(S24)。
【0054】
また、制御部12は、S22において、歩行者用信号機31および車両用信号機32の現在の状態が第2状態(階梯4)の場合(S22:No)、第1状態(階梯1)への遷移条件を充足するか判定する(S25)。制御部12は、検出器20から取得された領域ごとの移動体の存在の有無の組合わせが、図7に示される第1状態への遷移条件を満たすか否かを判定する。
【0055】
S25において第1状態への遷移条件が充足される場合(S25:Yes)、制御部12は第1状態への信号切替を実行することを判断する(S26)。S25において第1状態への遷移条件が充足されない場合(S25:No)、制御部12は第1状態への遷移条件が充足されるまでS25の判定を繰り返す。その結果、最終的に第1状態への遷移条件が充足されたとき、制御部12は第1状態への切替を判断する(S26)。
【0056】
図4に戻り、制御部12は、S13(S24およびS26)の判断結果に基づいて、歩行者用信号機31および車両用信号機32に対して、第1状態と第2状態との間の切替を行うことを指示する。第1状態から第2状態への切替を行う場合、制御部12は歩行者用信号機31および車両用信号機32を、図3の信号現示階梯図に従い順次階梯1から階梯4に遷移させる。第2状態から第1状態への切替を行う場合、制御部12は歩行者用信号機31および車両用信号機32を、図3の信号現示階梯図に従い順次階梯4から階梯1に遷移させる。以上のようにして、制御部12は、歩行者用信号機31と車両用信号機32とを順次切り替えて、歩行者42および車両43を順次横断歩道41を通行させることができる。
【0057】
(第1状態から第2状態への遷移条件)
次に、図6に基づいて、第1状態から第2状態への遷移条件の一例について説明する。なお、図6に含まれる時間を示す数値は一例に過ぎない。これらの数値は、適宜変更することが可能である。
【0058】
制御部12は、以下に説明する条件(1)と、条件(2)から(5)の何れか一つとが、同時に充足される場合、歩行者用信号機31および車両用信号機32の第2状態への遷移を開始する。条件(1)は、第3領域53(車両接近エリア)内に移動体の存在「有り」が1秒以上継続しているという条件である。すなわち、条件(1)は、第3領域53(車両接近エリア)で横断歩道41を通過するため停止線等の手前で待機している車両43、または、横断歩道41に向かって進行中の車両43が存在することを示す。
【0059】
一方、条件(2)は、第1領域51(横断部エリア)および第2領域52(歩行者側近傍エリア)に歩行者42がいないことを示す条件である。条件(1)と(2)とを同時に充足する場合とは、横断歩道41を通行中または渡ろうとしている歩行者42が無く、横断歩道41を横断するため待機中または横断歩道41に向かう車両43がある場合を意味する。このような場合、制御部12は、速やかに車両用信号機32を青とするように、階梯を遷移させる。
【0060】
条件(3)は、第1領域51(横断部エリア)に移動体が存在していない状態が第1の時間以上継続し、かつ、第4領域54(歩行者横断待ちエリア)内に移動体が存在していないことを示す。条件(3)における第1の時間は、例えば3秒である。条件(1)と(3)とを同時に充足するとき状態を遷移させることにより、歩行者42が横断歩道41を横断完了後に、車両43の無駄な待ち時間を少なくして横断歩道41上を通行することができる。
【0061】
条件(4)は、第1領域51(横断部エリア)に移動体が存在していない状態が第2の時間以上継続し、かつ、第4領域54(歩行者横断待ちエリア)内に移動体が第3の時間秒以上存在していることを示す。条件(4)における第2の時間は、例えば5秒であり、第3の時間は、例えば10秒である。条件(1)と(4)とを同時に充足する条件は、第4領域54(歩行者横断待ちエリア)に横断歩道41の横断待ちではない歩行者42が立ち止まっている場合に、車両43が横断歩道41上を通行できない状態が継続されることを防止する条件である。
【0062】
条件(5)は、第1領域51(横断部エリア)に移動体が存在していない状態が第2の時間以上継続し、かつ、第5領域55(横断歩行者接近エリア)内に移動体が第3の時間以上存在していることを示す。条件(4)における第2の時間は、例えば5秒であり、第3の時間は、例えば30秒である。第4領域54に移動体が存在している場合と、第5領域55に移動体が存在し第4領域54に移動体が存在しない場合とでは、第3の時間が異なる。条件(1)と(5)とを同時に充足する条件は、第5領域55(横断歩行者接近エリア)に横断歩道41の横断待ちではない歩行者42がいる状態が続く場合に、車両43が横断歩道41上通行できない状態が継続されることを防止する条件である。
【0063】
制御部12は、さらに、以下の条件(6)が充足される場合、歩行者用信号機31および車両用信号機32の第2状態への遷移を開始する。条件(6)は、第3領域53(車両接近エリア)に移動体があり、かつ、第1状態が第4の時間以上継続していることを示す。条件(6)における第4の時間は、例えば3分である。この条件によれば、横断歩道41を通行する歩行者42が多く歩行者42の列が途切れないような場合に、車両43が第3領域53(車両接近エリア)で検知されてから第4の時間経過後に、制御部12は、第2状態への遷移を開始する。これにより、制御部12は、車両43が横断歩道41上を通行できることを確保する。
【0064】
(第2状態から第1状態への遷移条件)
図7は、第2状態から第1状態への遷移条件の一例について説明する図である。制御部12は、条件(7)または(8)が充足されるとき、歩行者用信号機31および車両用信号機32の状態を第2状態から第1状態へ遷移させる。図7に含まれる時間を示す数値は一例に過ぎない。これらの数値は、適宜変更することが可能である。
【0065】
条件(7)は、第1領域51(横断部エリア)および第3領域53(車両接近エリア)に移動体が無い状態が第5の時間以上継続することを示す。条件(7)における第5の時間は、例えば1秒である。この条件は、車両用信号機32が車両43を通行可能とする状態で、車両43が横断歩道41を通過後、横断歩道41上および横断歩道41へ向かう車両用道路45上に後続の車両43がいなくなったとき、速やかに歩行者42の横断歩道41の通行を可能にする。
【0066】
条件(8)は、第2状態が第6の時間以上継続すると、第1状態に遷移を開始することを示す。(8)において、第6の時間は、例えば2分である。この条件は、車両用道路45を多くの車両43が通行しており車両43の列が途切れない場合、および/または、想定外の状況により条件(7)による第2状態から第1状態への遷移が開始されない場合に、歩行者用信号機31を青にすることを示す。想定外の状況は、例えば、第3領域53(車両接近エリア)内の路側で長時間停車している車両43がいる場合である。条件(8)により第1状態への遷移をすることにより、歩行者42の横断歩道41の通行が確保される。
【0067】
以上説明したように、本開示の信号機制御システム1によれば、信号機制御装置10が、複数の領域について領域ごとの移動体の存在の有無の組合せに基づいて信号切替の判断を行い、歩行者用信号機31および車両用信号機32を制御する。この方法は、実質的に移動体の存在を判定する領域の配置および形状等により移動体の種類および進行方向を想定するので、移動体の種類の識別および進行方向の予測等の処理を必要としない。また、複雑な画像処理を行わないので、天候および/または周辺の明るさ等による影響を受けにくい。したがって、本開示の信号機制御システム1は、AI画像処理による高機能な予測モデルを使用する従来技術と比較して、安価でありながら安定的に稼働することができる。
【0068】
特に、本開示の信号機制御システム1では、第4領域54(歩行者横断待ちエリア)および第5領域55(横断歩行者接近エリア)を設けたことにより、歩行者42の横断歩道41の横断意図を考慮した判定を行うことができる。さらに、信号機制御システム1では、移動体が何れかの領域に存在する状態が所定時間より長く継続する場合、状態の切替を行うようにしたので、歩行者用信号機31および車両用信号機32が切り替わらなくなるデッドロック状態の発生を防止することができる。
【0069】
また、本開示の信号機制御システム1では、歩行者用信号機31が青の状態を基本状態とした。これにより、本開示の信号機制御システム1では、横断歩道41を横断する歩行者42にとって無駄な信号待ちが発生しない。定時切替方式の従来の信号機では、歩行者42は車両用道路45に横断歩道41を通行する車両43がいない場合でも信号待ちを強いられることがあり、無駄な待ち時間のためフラストレーションを感じることがあった。また、歩行者42の存在を検知して信号機の切替を行う感応式信号機でも、信号が切り替わるまでに無駄な待ち時間が発生することがあった。本開示の信号機制御システム1は、これらの従来技術の問題点を改善する。
【0070】
さらに、本開示の信号機制御システム1では、車両43が横断歩道41に向かう領域である第3領域53(車両接近エリア)に存在する移動体を検知するようにした。これにより、横断歩道41手前の停止線に停止している車両43のみならず、横断歩道41に向って進行する車両43の存在を検知することができる。したがって、横断歩道41を歩行する又は歩行しようとする歩行者42がいない場合、速やかに車両用信号機32を青に切り替え、車両43を横断歩道41の手前で停止することなく通過させることが可能になる。
【0071】
また、本開示の信号機制御システム1では、道路インフラとして設置した検出器20、特に、カメラを用いて移動体を検知するので、歩行者42を含む移動体を検知するために、移動体側に特殊な装置を実装する必要が無い。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または改変が可能である。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段またはステップ等を1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【0073】
以下に本開示の実施形態の一部について例示する。しかしながら、本開示の実施形態はこれらに限定されない点に留意されたい。
[付記1]
横断歩道を含む該横断歩道の周辺の検知対象の複数の領域について、移動体を検出した検出結果を取得する通信部と、
前記通信部により取得した前記検出結果に基づいて、前記複数の領域に含まれる領域ごとの前記移動体の存在の有無の組合わせを認識し、該組合せに基づいて歩行者用信号機および車両用信号機を制御する制御部と
を備える信号機制御装置。
[付記2]
前記制御部は、前記複数の領域の何れの領域にも移動体が存在しない場合、前記歩行者用信号機が歩行者を通行可とする表示をするように該歩行者用信号機を制御する付記1に記載の信号機制御装置。
[付記3]
前記複数の領域は、前記横断歩道上の領域である第1領域と、前記横断歩道の近傍の歩行者が通る領域である第2領域と、前記横断歩道に向かう車両が通る領域である第3領域とを含み、
前記制御部は、前記第1領域、前記第2領域、および、前記第3領域における移動体の存在の有無の組合せに基づいて、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を、前記歩行者用信号機が歩行者を通行可とし前記車両用信号機が車両を通行不可とする第1状態と、前記歩行者用信号機が歩行者を通行不可とし前記車両用信号機が車両を通行可とする第2状態との間で遷移させるように制御する、付記1または2に記載の信号機制御装置。
[付記4]
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第1状態であり、前記第1領域および前記第2領域に移動体が存在せず、前記第3領域に移動体が存在するとき、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第2状態に遷移させるように制御する、[付記3]に記載の信号機制御装置。
[付記5]
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第1状態であり、前記第2領域に移動体が存在せず、前記第3領域に移動体が存在しているとき、前記第1領域に移動体が存在しなくなってから第1の時間後に、前記前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第2状態に遷移させるように制御する、付記3または4に記載の信号機制御装置。
[付記6]
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第1状態であり、前記第3領域に移動体が存在しているとき、前記第1領域に移動体が存在しない状態が第2の時間以上継続し、かつ、前記第2領域に移動体が存在している状態が第3の時間以上継続したとき、前記前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第2状態に遷移させるように制御する、付記3から5の何れか一項に記載の信号機制御装置。
[付記7]
前記第2領域は、前記横断歩道に隣接する第4領域と、前記第4領域よりも前記横断歩道より離れて位置する第5領域とを含み、前記第4領域に移動体が存在している場合と、前記第5領域に移動体が存在し前記第4領域に移動体が存在しない場合とでは前記第3の時間が異なる、付記6に記載の信号機制御装置。
[付記8]
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第1状態であり、前記第3領域に移動体が存在する状態が第4の時間継続したとき、前記前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第2状態に遷移させるように制御する、付記3から7の何れか一項に記載の信号機制御装置。
[付記9]
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第2状態であり、前記第1領域および前記第3領域に移動体が存在しない状態が第5の時間継続したとき、前記前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第1状態に遷移させるように制御する、付記3から8の何れか一項に記載の信号機制御装置。
[付記10]
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第2状態であり、前記第2状態が第6の時間継続したとき、前記前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第1状態に遷移させるように制御する、付記3から9の何れか一項に記載の信号機制御装置。
[付記11]
前記移動体は、歩行者、自転車および車両を含む複数の種類の異なる移動体を含み、前記制御部は、前記移動体の前記種類を区別しない、付記1から10の何れか一項に記載の信号機制御装置。
[付記12]
前記通信部は、撮像した画像から移動体を識別する機能を有するカメラから前記検出結果を取得する、付記1から11の何れか一項に記載の信号機制御装置。
[付記13]
信号機制御装置の制御部が実行する信号機制御方法であって、
横断歩道を含む該横断歩道の周辺の検知対象の複数の領域について、移動体を検出した検出結果を取得することと、
前記検出結果に基づいて、前記複数の領域に含まれる領域ごとの前記移動体の存在の有無の組合せを認識することと、
前記組合せに基づいて歩行者用信号機および車両用信号機を制御することと
を含む信号機制御方法。
[付記14]
前記制御部は、前記複数の領域の何れの領域にも移動体が存在しない場合、前記歩行者用信号機が歩行者を通行可とする表示をするように該歩行者用信号機を制御する、付記13に記載の信号機制御方法。
[付記15]
前記複数の領域は、前記横断歩道上の領域である第1領域と、前記横断歩道に隣接する歩道の領域である第2領域と、前記横断歩道に向かう車両が通る領域である第3領域とを含み、
前記制御部は、前記第1領域、前記第2領域、および、前記第3領域における移動体の存在の有無の組合せに基づいて、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を、前記歩行者用信号機が歩行者を通行可とし前記車両用信号機が車両を通行不可とする第1状態と、前記歩行者用信号機が歩行者を通行不可とし前記車両用信号機が車両を通行可とする第2状態との間で遷移させるように制御する、付記13または14に記載の信号機制御方法。
[付記16]
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第1状態であり、前記第1領域および前記第2領域に移動体が存在せず、前記第3領域に移動体が存在するとき、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第2状態に遷移させるように制御する、付記15に記載の信号機制御方法。
[付記17]
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第1状態であり、前記第2領域に移動体が存在せず、前記第3領域に移動体が存在しているとき、前記第1領域に移動体が存在しなくなってから第1の時間後に、前記前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第2状態に遷移させるように制御する、付記15または16に記載の信号機制御方法。
[付記18]
前記制御部は、前記歩行者用信号機および前記車両用信号機が前記第1状態であり、前記第3領域に移動体が存在しているとき、前記第1領域に移動体が存在しない状態が第2の時間以上継続し、かつ、前記第2領域に移動体が存在している状態が第3の時間以上継続したとき、前記前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を前記第2状態に遷移させるように制御する、付記15から17の何れか一項に記載の信号機制御方法。
[付記19]
前記第2領域は、前記横断歩道に隣接する第4領域と、前記第4領域よりも前記横断歩道より離れて位置する第5領域とを含み、前記第4領域に移動体が存在している場合と、前記第5領域に移動体が存在し前記第4領域に移動体が存在しない場合とでは前記第3の時間が異なる、付記18に記載の信号機制御方法。
[付記20]
横断歩道の通行を制御するために配置された歩行者用信号機および車両用信号機と、
前記横断歩道を含む該横断歩道の周辺の検知対象の複数の領域について、移動体を検出する検出器と、
前記検出器から移動体を検出した検出結果を取得する通信部、および、前記検出結果に基づいて、前記複数の領域に含まれる領域ごとの前記移動体の存在の有無の組合わせを認識し、該組合せに基づいて前記歩行者用信号機および前記車両用信号機を制御する制御部を含む信号機制御装置と
を備える信号機制御システム。
【符号の説明】
【0074】
1 信号機制御システム
10 信号機制御装置
11 通信部
12 制御部12
20A,20B 検出器
31 歩行者用信号機
32 車両用信号機
41 横断歩道
42 歩行者(移動体)
43 車両(移動体)
44 歩行者用道路
45 車両用道路
51 第1領域(横断部エリア)
52 第2領域(歩行者側近傍エリア)
53 第3領域(車両接近エリア)
54 第4領域(歩行者横断待ちエリア)
55 第5領域(横断歩行者接近エリア)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7