(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008293
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】コイル部品、送電装置、受電装置、移動体、及び電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20250109BHJP
H01F 27/36 20060101ALI20250109BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20250109BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20250109BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20250109BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20250109BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20250109BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F27/36 150
H01F27/28 K
H02J50/10
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110320
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】岡部 将人
【テーマコード(参考)】
5E043
5E058
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5E043BA01
5E058CC15
5H105AA17
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC04
5H105CC07
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC26
5H125AC27
5H125FF15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コイル部品の製造効率を向上させる。
【解決手段】電力伝送システムにおいて、コイル部品5は、第1、第2平面コイル要素11、12を含むコイル10を備える。第1、第2平面コイル要素は、各々が複数のターン部111~116、121~123を有する渦巻形状を有している。第1、第2平面コイル要素は、この渦巻形状の中心軸線C1、C2上を延びる軸方向に互いに対向して配置されている。第1、第2平面コイル要素は、互いに直列接続されている。第2平面コイル要素のターン数は、第1平面コイル要素のターン数よりも少ない。また、軸方向に見て、第2平面コイル要素の複数のターン部の少なくとも1つは、第1平面コイル要素の複数のターン部の2以上と重なる。また、軸方向に見て、第2平面コイル要素の複数のターン部の間の各隙間が、第1平面コイル要素の複数のターン部の間の隙間のいずれかと重なる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が複数のターン部を有する渦巻形状を有し、前記渦巻形状の中心軸線上を延びる軸方向に互いに対向して配置され、互いに直列接続されている第1平面コイル要素及び第2平面コイル要素を含むコイルを備え、
前記第2平面コイル要素のターン数が、前記第1平面コイル要素のターン数よりも少なく、
前記軸方向に見て、前記第2平面コイル要素の前記複数のターン部の少なくとも1つは、前記第1平面コイル要素の複数のターン部の2以上と重なり、
前記軸方向に見て、前記第2平面コイル要素の前記複数のターン部の間の各隙間が、前記第1平面コイル要素の前記複数のターン部の間の隙間のいずれかと重なる、コイル部品。
【請求項2】
前記第1平面コイル要素のターン数は、前記第2平面コイル要素のターン数の2倍であり、
前記軸方向に見て、前記第2平面コイル要素の各ターン部は、前記第1平面コイル要素の2つのターン部と重なる、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記軸方向に見て、前記第2平面コイル要素の各ターン部の内方の縁部が、前記第1平面コイル要素のいずれかのターン部の内方の縁部と重なり、前記第2平面コイル要素の各ターン部の外方の縁部が、前記第1平面コイル要素のいずれかのターン部の外方の縁部と重なる、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第2平面コイル要素の前記複数のターン部に、当該ターン部に沿って延びる長孔が形成されている、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記長孔は、前記第2平面コイル要素の渦巻形状に沿って延びている、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記軸方向に見て、前記長孔は、前記第1平面コイル要素の前記複数のターン部の間の隙間のいずれかと重なる、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第2平面コイル要素の厚さが、0.15mm以上0.35mm以下である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第2平面コイル要素と対向して配置される磁気シールド部材を更に備える、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記軸方向に沿って延び、且つ、前記軸方向に見て前記第1平面コイル要素の複数のターン部の間の隙間に沿って延びる磁性体壁部を更に備え、
前記磁性体壁部は、前記第1平面コイル要素の前記第2平面コイル要素に対向する第1面とは反対側の第2面に対向して配置されている、請求項8に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記軸方向に沿って延び、且つ、前記軸方向に見て前記第1平面コイル要素の複数のターン部の間の隙間に沿って延びる磁性体壁部を更に備え、
前記磁性体壁部は、前記第1平面コイル要素の複数のターン部の間の隙間を通って、前記第1平面コイル要素の一方の側から他方の側へ、前記軸方向に沿って延びている、請求項8に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第1平面コイル要素と対向して配置される磁気シールド部材を更に備える、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記軸方向に沿って延び、且つ、前記軸方向に見て前記第2平面コイル要素の複数のターン部の間の隙間に沿って延びる磁性体壁部を更に備え、
前記磁性体壁部は、前記第2平面コイル要素の前記第1平面コイル要素に対向する第3面とは反対側の第4面に対向して配置されている、請求項11に記載のコイル部品。
【請求項13】
前記軸方向に沿って延び、且つ、前記軸方向に見て前記第2平面コイル要素の複数のターン部の間の隙間に沿って延びる磁性体壁部を更に備え、
前記磁性体壁部は、前記第2平面コイル要素の複数のターン部の間の隙間を通って、前記第2平面コイル要素の一方の側から他方の側へ、前記軸方向に沿って延びている、請求項11に記載のコイル部品。
【請求項14】
前記第2平面コイル要素の前記複数のターン部に、当該ターン部に沿って延びる長孔が形成され、
前記コイル部品は、追加の磁性体壁部を更に備え、
前記追加の磁性体壁部は、前記軸方向に沿って延び、且つ、前記軸方向に見て前記長孔に沿って延び、
前記追加の磁性体壁部は、前記第2平面コイル要素の前記第1平面コイル要素に対向する第3面とは反対側の第4面に対向して配置されている、請求項11に記載のコイル部品。
【請求項15】
前記第2平面コイル要素の前記複数のターン部に、当該ターン部に沿って延びる長孔が形成され、
前記コイル部品は、追加の磁性体壁部を更に備え、
前記追加の磁性体壁部は、前記軸方向に沿って延び、且つ、前記軸方向に見て前記長孔に沿って延び、
前記追加の磁性体壁部は、前記第2平面コイル要素の複数のターン部に形成された前記長孔を通って、前記第2平面コイル要素の一方の側から他方の側へ、前記軸方向に沿って延びている、請求項11に記載のコイル部品。
【請求項16】
請求項1に記載のコイル部品を備える、送電装置。
【請求項17】
請求項1に記載のコイル部品を備える、受電装置。
【請求項18】
請求項17に記載の受電装置を備える、移動体。
【請求項19】
送電装置と、受電装置とを備え、
前記送電装置及び前記受電装置のうちの少なくともいずれかが、請求項1に記載のコイル部品を備える、電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル部品、送電装置、受電装置、移動体、及び電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で電力を伝送するワイヤレス電力伝送システムが普及しつつある。
【0003】
電力を非接触で伝送する場合、コイルを含む共振回路に高周波の電流が流される。このような共振回路に用いられるコイル部品が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたコイル部品は、渦巻形状且つ板状の平面コイル要素を2枚積層してなるコイルを用いている。これにより、平面視におけるコイルの寸法を小さくすることができる。
【0004】
コイルを2枚の平面コイル要素の積層体として形成する場合、特許文献1に開示されているように、同一又は対応するパターンの(すなわち、ターン数及びターン部のピッチが互いに同じ)2枚の平面コイル要素を作製し、これらを上下に重ね合わせて電気的に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その一方で、コイル部品の製造効率を向上させることが求められている。コイル部品の製造効率は、例えば、コイル部品を構成する部材の取り扱い性を改善することで、向上させることができる。とりわけ、平面コイル要素の厚みが小さいコイル部品の場合、コイル部品を組み立てる際の平面コイル要素の取り扱いが難しいことが問題となっている。
【0007】
本開示の実施形態は、コイル部品の製造効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]~[19]に関連する。
【0009】
[1]
各々が複数のターン部を有する渦巻形状を有し、前記渦巻形状の中心軸線上を延びる軸方向に互いに対向して配置され、互いに直列接続されている第1平面コイル要素及び第2平面コイル要素を含むコイルを備え、
前記第2平面コイル要素のターン数が、前記第1平面コイル要素のターン数よりも少なく、
前記軸方向に見て、前記第2平面コイル要素の前記複数のターン部の少なくとも1つは、前記第1平面コイル要素の複数のターン部の2以上と重なり、
前記軸方向に見て、前記第2平面コイル要素の前記複数のターン部の間の各隙間が、前記第1平面コイル要素の前記複数のターン部の間の隙間のいずれかと重なる、コイル部品。
【0010】
[2]
前記第1平面コイル要素のターン数は、前記第2平面コイル要素のターン数の2倍であり、
前記軸方向に見て、前記第2平面コイル要素の各ターン部は、前記第1平面コイル要素の2つのターン部と重なる、[1]に記載のコイル部品。
【0011】
[3]
前記軸方向に見て、前記第2平面コイル要素の各ターン部の内方の縁部が、前記第1平面コイル要素のいずれかのターン部の内方の縁部と重なり、前記第2平面コイル要素の各ターン部の外方の縁部が、前記第1平面コイル要素のいずれかのターン部の外方の縁部と重なる、[1]又は[2]に記載のコイル部品。
【0012】
[4]
前記第2平面コイル要素の前記複数のターン部に、当該ターン部に沿って延びる長孔が形成されている、[1]~[3]のいずれかに記載のコイル部品。
【0013】
[5]
前記長孔は、前記第2平面コイル要素の渦巻形状に沿って延びている、[4]に記載のコイル部品。
【0014】
[6]
前記軸方向に見て、前記長孔は、前記第1平面コイル要素の前記複数のターン部の間の隙間のいずれかと重なる、[4]又は[5]に記載のコイル部品。
【0015】
[7]
前記第2平面コイル要素の厚さが、0.15mm以上0.35mm以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のコイル部品。
【0016】
[8]
前記第2平面コイル要素と対向して配置される磁気シールド部材を更に備える、[1]~[7]のいずれかに記載のコイル部品。
【0017】
[9]
前記軸方向に沿って延び、且つ、前記軸方向に見て前記第1平面コイル要素の複数のターン部の間の隙間に沿って延びる磁性体壁部を更に備え、
前記磁性体壁部は、前記第1平面コイル要素の前記第2平面コイル要素に対向する第1面とは反対側の第2面に対向して配置されている、[8]に記載のコイル部品。
【0018】
[10]
前記軸方向に沿って延び、且つ、前記軸方向に見て前記第1平面コイル要素の複数のターン部の間の隙間に沿って延びる磁性体壁部を更に備え、
前記磁性体壁部は、前記第1平面コイル要素の複数のターン部の間の隙間を通って、前記第1平面コイル要素の一方の側から他方の側へ、前記軸方向に沿って延びている、[8]に記載のコイル部品。
【0019】
[11]
前記第1平面コイル要素と対向して配置される磁気シールド部材を更に備える、[1]~[7]のいずれかに記載のコイル部品。
【0020】
[12]
前記軸方向に沿って延び、且つ、前記軸方向に見て前記第2平面コイル要素の複数のターン部の間の隙間に沿って延びる磁性体壁部を更に備え、
前記磁性体壁部は、前記第2平面コイル要素の前記第1平面コイル要素に対向する第3面とは反対側の第4面に対向して配置されている、[11]に記載のコイル部品。
【0021】
[13]
前記軸方向に沿って延び、且つ、前記軸方向に見て前記第2平面コイル要素の複数のターン部の間の隙間に沿って延びる磁性体壁部を更に備え、
前記磁性体壁部は、前記第2平面コイル要素の複数のターン部の間の隙間を通って、前記第2平面コイル要素の一方の側から他方の側へ、前記軸方向に沿って延びている、[11]に記載のコイル部品。
【0022】
[14]
前記第2平面コイル要素の前記複数のターン部に、当該ターン部に沿って延びる長孔が形成され、
前記コイル部品は、追加の磁性体壁部を更に備え、
前記追加の磁性体壁部は、前記軸方向に沿って延び、且つ、前記軸方向に見て前記長孔に沿って延び、
前記追加の磁性体壁部は、前記第2平面コイル要素の前記第1平面コイル要素に対向する第3面とは反対側の第4面に対向して配置されている、[11]~[13]のいずれかに記載のコイル部品。
【0023】
[15]
前記第2平面コイル要素の前記複数のターン部に、当該ターン部に沿って延びる長孔が形成され、
前記コイル部品は、追加の磁性体壁部を更に備え、
前記追加の磁性体壁部は、前記軸方向に沿って延び、且つ、前記軸方向に見て前記長孔に沿って延び、
前記追加の磁性体壁部は、前記第2平面コイル要素の複数のターン部に形成された前記長孔を通って、前記第2平面コイル要素の一方の側から他方の側へ、前記軸方向に沿って延びている、[11]~[13]のいずれかに記載のコイル部品の製造方法。
【0024】
[16]
[1]~[15]のいずれかに記載のコイル部品を備える、送電装置。
【0025】
[17]
[1]~[15]のいずれかに記載のコイル部品を備える、受電装置。
【0026】
[18]
[17]に記載の受電装置を備える、移動体。
【0027】
[19]
送電装置と、受電装置とを備え、
前記送電装置及び前記受電装置のうちの少なくともいずれかが、[1]~[15]のいずれかに記載のコイル部品を備える、電力伝送システム。
【発明の効果】
【0028】
本開示の一実施の形態によれば、コイル部品の製造効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】一実施の形態に係るコイル部品が適用されるワイヤレス電力伝送システムを概略的に示す図である。
【
図2】一実施の形態に係るコイル部品の斜視図である。
【
図3】
図2に示すコイル部品のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図3に示すコイル部品のコイルの分解斜視図である。
【
図5】
図3に対応する図であって、コイル部品の変形例を示す断面図である。
【
図6】
図3に対応する図であって、コイル部品の他の変形例を示す断面図である。
【
図7】
図6に示すコイル部品のコイルの分解斜視図である。
【
図8】
図3に対応する図であって、コイル部品のさらに他の変形例を示す断面図である。
【
図9】
図3に対応する図であって、コイル部品のさらに他の変形例を示す断面図である。
【
図10】
図9に示すコイル部品のコイルの分解斜視図である。
【
図11】
図3に対応する図であって、コイル部品のさらに他の変形例を示す断面図である。
【
図12】
図2に対応する図であって、コイル部品のさらに他の変形例を示す斜視図である。
【
図13】
図12に示すコイル部品のXIII-XIII線に沿った断面図である。
【
図14】
図13に示すコイル部品のコイルの分解斜視図である。
【
図15】
図13に対応する図であって、コイル部品のさらに他の変形例を示す断面図である。
【
図16】
図3に対応する図であって、比較例1~3によるコイル部品の断面を示す図である。
【
図17】
図3に対応する図であって、比較例4によるコイル部品の断面を示す図である。
【
図18】
図3に対応する図であって、比較例5によるコイル部品の断面を示す図である。
【
図19】
図3に対応する図であって、比較例6によるコイル部品の断面を示す図である。
【
図20】実施例1~4及び比較例1~6のコイル部品の性能を示す表である。
【
図21】実施例1~4及び比較例1~6のコイル部品の性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して一実施の形態及びその変形例について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0031】
また、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」などの用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば「シート」は、フィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0032】
図1は、一実施の形態に係るコイル部品5が適用されるワイヤレス電力伝送システムSを概略的に示す。まず、ワイヤレス電力伝送システムS(以下、電力伝送システムSと略す。)について
図1を参照しつつ説明する。なお、電力伝送システムSに本実施の形態に係るコイル部品5とは異なるコイル部品が適用され得ることは、言うまでもない。
【0033】
<ワイヤレス電力伝送システム>
電力伝送システムSは、送電装置1と、受電装置2とを備える。送電装置1は、コイル部品5と、高周波電流供給部1Aとを含む。送電装置1におけるコイル部品5は、送電コイル部品として機能する。高周波電流供給部1Aは、送電コイル部品としてのコイル部品5に高周波電流を供給する。
【0034】
受電装置2は、コイル部品5と、変換部2Aとを含む。受電装置2におけるコイル部品5は、受電コイル部品として機能する。変換部2Aは、コイル部品5で生じる高周波電流を整形する。変換部2Aは、高周波電流を直流電流に変換する整流回路などを有する。変換部2Aは、例えば複数のダイオードを含む全波整流回路と、平滑化コンデンサーと、を備えてもよい。
【0035】
本実施の形態では、送電装置1及び受電装置2のそれぞれがコイル部品5を含む。ただし、送電装置1及び受電装置2のうちの一方のみにコイル部品5が用いられ、他方には異なる形式のコイル部品が用いられてもよい。
【0036】
送電装置1から受電装置2にワイヤレス(非接触)で電力を伝送する際には、送電装置1が、高周波電流供給部1Aから送電コイル部品としてのコイル部品5に所定の周波数の高周波電流を供給する。この際、コイル部品5には、電磁誘導により磁界が生じる。そして、この磁界の影響で、受電装置2では、受電コイル部品としてのコイル部品5に高周波電流が生じる。すなわち、受電装置2は送電装置1から磁界を受信して又は送電装置1での磁界の影響を受けて、電磁誘導により高周波電流を通流させる。変換部2Aは、この高周波電流を直流電流に変換し、変換した直流電流を例えば図示しないバッテリに供給する。
【0037】
図1に示す電力伝送システムSは、電力伝送方式として、磁界共鳴方式を採用している。ただし、本実施の形態に係るコイル部品5は、電磁誘導方式の電力伝送システムで用いられてもよい。また、電力伝送システムSは、電気自動車にワイヤレスで電力を伝送するシステムとして構成される。この場合、送電装置1は、道路、駐車場などに設置される。受電装置2は、電気自動車に設置される。
【0038】
ただし、電力伝送システムSの用途は、電気自動車への電力伝送に限られるものではない。例えば、電力伝送システムSは、ドローンなどの飛行体、ロボットへの電力伝送に用いられてもよい。また、電力伝送システムSは、海中における潜水艇や、探査ロボットへの電力伝送に用いられてもよい。このように、電力伝送システムSは、電気自動車、飛行体、ロボット、潜水艇等、様々な移動体への電力伝送に用いられ得る。また、コイル部品5の用途は、ワイヤレス電力伝送システムに限られない。例えば、コイル部品5は、トランス、DC-DCコンバータ、アンテナなどに用いられてもよい。
【0039】
<コイル部品>
以下、コイル部品5について説明する。
図2は、コイル部品5の斜視図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿うコイル部品5の断面図である。
図4は、コイル部品5が備えるコイル10の分解斜視図である。
【0040】
図2及び
図3に示すように、コイル部品5は、コイル10と、磁気シールド部材20と、保持体30と、磁性体壁部40と、第1接続端子51と、第2接続端子52と、を備えている。
【0041】
図3に示すように、コイル10は、磁気シールド部材20に対面する裏側面10aと、裏側面10aとは反対側の表側面10bと、を含む。また、コイル10は、第1平面コイル要素11と、第2平面コイル要素12と、を含む。
図3に示す例では、第1平面コイル要素11が表側面10bを形成し、第2平面コイル要素12が裏側面10aを形成している。言い換えると、
図3に示すコイル部品5では、磁気シールド部材20に、第2平面コイル要素12及び第1平面コイル要素11がこの順で重なるように配置される。第1平面コイル要素11と第2平面コイル要素12は直列に接続され、隙間を空けて重なっている。第2平面コイル要素12と磁気シールド部材20も、隙間を空けて重なっている。
【0042】
保持体30は、第1平面コイル要素11と第2平面コイル要素12との間の隙間を維持するとともに、第2平面コイル要素12と磁気シールド部材20との間の隙間を維持するように機能する。また、保持体30は、第1平面コイル要素11と第2平面コイル要素12とを一体化させる機能も有する。
【0043】
(第1平面コイル要素及び第2平面コイル要素)
第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12は、
図2及び
図4に示すように渦巻形状である。第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12は、導電材料から形成される。本実施の形態では、第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12は銅を含む。具体的には、第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12は、銅から形成される。ただし、第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12は、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等で形成されてもよい。第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12は、互いに異なる導電性材料から形成されてもよい。
【0044】
第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12は、
図3及び
図4に示すように、板状である。
図3に示すように、第1平面コイル要素11が渦巻形状に周回する方向に直交する方向での第1平面コイル要素11の断面形状は、矩形状である。同様に、第2平面コイル要素12が渦巻形状に周回する方向に直交する方向での第2平面コイル要素12の断面形状は、矩形状である。
【0045】
第1平面コイル要素11は、第2平面コイル要素12に対向する第1面11aと、第1面11aとは反対側の第2面11bとを有する。
図4に示す例では第2面11bが、コイル10の表側面10bを形成する。
【0046】
第2平面コイル要素12は、第1平面コイル要素11に対向する第3面12aと、第3面12aとは反対側の第4面12bとを有する。
図4に示す例では第4面12bが、コイル10の裏側面10aを形成する。
【0047】
図2乃至
図4に示す符号C1は、第1平面コイル要素11の渦巻形状の中心を通る第1平面コイル要素11の第1中心軸線を示している。以下、「第1平面コイル要素11の軸方向」とは、第1中心軸線C1上を延びる方向又は第1中心軸線C1と平行な方向を意味する。また、「第1平面コイル要素11の径方向」とは、第1中心軸線C1上の任意の点を中心として第1中心軸線C1と直交する平面上に描かれた円の半径方向を意味する。また、第1平面コイル要素11及びこれを構成するターン部11nの径方向の内方とは、当該径方向において第1中心軸線C1に近づく方向を意味する。また、第1平面コイル要素11及びターン部11nの径方向の外方とは、当該径方向において第1中心軸線C1から離れる方向を意味する。
【0048】
また、
図2乃至
図4に示す符号C2は、第2平面コイル要素12の渦巻形状の中心を通る第2平面コイル要素12の第2中心軸線を示している。以下、「第2平面コイル要素12の軸方向」とは、第2中心軸線C2上を延びる方向又は第2中心軸線C2と平行な方向を意味する。また、「第2平面コイル要素12の径方向」とは、第2中心軸線C2上の任意の点を中心として第2中心軸線C2と直交する平面上に描かれた円の半径方向を意味する。また、第2平面コイル要素12及びこれを構成するターン部12nの径方向の内方とは、当該径方向において第2中心軸線C2に近づく方向を意味する。また、第2平面コイル要素12及びターン部12nの径方向の外方とは、当該径方向において第2中心軸線C2から離れる方向を意味する。
【0049】
本実施の形態では、第2平面コイル要素12が第1平面コイル要素11と同軸になるように配置されている。つまり、第1平面コイル要素11の第1中心軸線C1と第2平面コイル要素12の第2中心軸線C2とが一致する。言い換えると、第1中心軸線C1と第2中心軸線C2は、同一直線上に位置する。
【0050】
第1平面コイル要素11は、複数のターン部11nにより渦巻形状をなす導電体11Eを有する。第1平面コイル要素11の複数のターン部11nは、渦巻形状の第1中心軸線C1に直交する方向に配列される。詳しくは、当該複数のターン部11nは、渦巻形状の第1中心軸線C1から径方向の外方に向かって第1中心軸線C1から次第に離れるように接続される。そして、これにより渦巻形状が形成される。
【0051】
ターン部11nは、基本的には線状の導体部分が環状をなさずに第1中心軸線C1の周りを360度周回する形状である。いわゆる平面コイルである場合には、ターン部11nの両端部は、径方向にずれる。複数のターン部11nでは、或るターン部11nの径方向の外方の端部に他のターン部11nの径方向の内方の端部が接続し、他のターン部11nが第1中心軸線C1から離れるように延びていく。
【0052】
以下では、複数のターン部11nのうちの第1中心軸線C1に最も近いものを、ターン部111と称す場合がある。また、ターン部111に接続するターン部を、ターン部112と称す場合がある。以下において複数のターン部11nのそれぞれに共通となる事項を説明する際には、基本的に、ターン部11nと称す。
【0053】
本実施の形態では、ターン部11nが矩形状をなすように周回する。ただし、ターン部11nは、円形をなすように周回する形状でもよい。なお、本明細書及び本開示で言う渦巻形状とは、螺旋状に巻いた平面曲線の形を意味する。ここで言う平面曲線には、図示のような折れ線状に曲がりつつ繰り返し周回する平面パターンも含む。また、言い換えると、渦巻形状とは、旋回するにつれて中心から遠ざかる(あるいは旋回するにつれて中心に近づく)平面曲線の形を意味する。
【0054】
同様に、第2平面コイル要素12は、複数のターン部12nにより渦巻形状をなす導電体12Eを有する。第2平面コイル要素12の複数のターン部12nは、渦巻形状の第2中心軸線C2に直交する方向に配列される。詳しくは、当該複数のターン部12nは、渦巻形状の第2中心軸線C2から径方向の外方に向かって第2中心軸線C2から次第に離れるように接続される。そして、これにより渦巻形状が形成される。
【0055】
ターン部12nは、基本的には線状の導体部分が環状をなさずに第2中心軸線C2の周りを360度周回する形状である。いわゆる平面コイルである場合には、ターン部12nの両端部は、径方向にずれる。複数のターン部12nでは、或るターン部12nの径方向の外方の端部に他のターン部12nの径方向の内方の端部が接続し、他のターン部12nが第2中心軸線C2から離れるように延びていく。
【0056】
以下では、複数のターン部12nのうちの第2中心軸線C2に最も近いものを、ターン部121と称す場合がある。また、ターン部121に接続するターン部を、ターン部122と称す場合がある。以下において複数のターン部12nのそれぞれに共通となる事項を説明する際には、基本的に、ターン部12nと称す。
【0057】
本実施の形態では、第2平面コイル要素12の形状は、第1平面コイル要素11の形状と対応している。具体的には、図示された例のようにターン部11nが矩形状をなすように周回する場合、ターン部12nも、ターン部11nと同様に矩形状をなすように周回する。また、ターン部11nが円形をなすように周回する形状を有する場合、ターン部12nも、ターン部11nと同様に円形をなすように周回してもよい。
【0058】
ここで、第1中心軸線C1は、本実施の形態では次のようにして定められる。まず、最内周のターン部111の径方向の内方の端部から最内周のターン部111と相似の形状の線状の仮想ターン部を径方向の内方に渦巻形状をなすように順次描画していく。そして、直径1cm内に収まる仮想ターン部が描画できるまで描画を継続する。そして、直径1cm内に収まる仮想ターン部の径方向の内方の領域を、渦巻形状の周方向及び径方向に直交する方向に通過する線が、第1中心軸線C1として定められる。第2中心軸線C2も、第1中心軸線C1と同様の方法により定められる。まず、最内周のターン部121の径方向の内方の端部から最内周のターン部121と相似の形状の線状の仮想ターン部を径方向の内方に渦巻形状をなすように順次描画していく。そして、直径1cm内に収まる仮想ターン部が描画できるまで描画を継続する。そして、直径1cm内に収まる仮想ターン部の径方向の内方の領域を、渦巻形状の周方向及び径方向に直交する方向に通過する線が、第2中心軸線C2として定められる。
【0059】
第1平面コイル要素11の径方向の内方の端部(第1中心軸線C1に近い端部)は、第2平面コイル要素12の径方向の内方の端部(第2中心軸線C2に近い端部)と電気的に接続される。
図2に示す接続配線部14は導電体であり、第1平面コイル要素11と第2平面コイル要素12とを直列に電気的に接続する。第1平面コイル要素11と第2平面コイル要素12とが接続された際、第1平面コイル要素11の第2平面コイル要素12に接続されない端部(第1平面コイル要素11の径方向の外方の端部)から第2平面コイル要素12に接続される端部まで、第1平面コイル要素11が周回する方向は、第2平面コイル要素12の第1平面コイル要素11に接続される端部から第1平面コイル要素11に接続されない端部(第2平面コイル要素12の径方向の外方の端部)まで、第2平面コイル要素12が周回する方向と同じである。
【0060】
図示の接続配線部14は、一例として第1平面コイル要素11と一体に形成されている。接続配線部14は、第2平面コイル要素12に超音波接続などにより接続されてもよい。一方で、第1平面コイル要素11の径方向の外方の端部(第1中心軸線C1から遠い端部)は、第1接続端子51と接続している。また、第2平面コイル要素12の径方向の外方の端部(第2中心軸線C2から遠い端部)は、第2接続端子52と接続している。
【0061】
本実施の形態における第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12は、一例として銅板やアルミ板等の金属板から渦巻形状に打ち抜かれて形成される。ただし、第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12は、銅箔やアルミ箔等の金属箔を渦巻形状にエッチングすることでも形成され得る。
【0062】
第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12の厚さ(導電体11E及び12Eの厚さ)は、第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12の軸方向に沿って測定される。第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12の厚さ(導電体11E及び12Eの厚さ)は、例えば0.1mm以上1.0mm以下でもよく、0.2mm以上0.7mm以下でもよく、0.3mm以上0.4mm以下でもよい。第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12の厚さ(導電体11E及び12Eの厚さ)は、例えば0.15mm以上0.35mm以下でもよい。第1平面コイル要素11の厚さ(導電体11Eの厚さ)は、第2平面コイル要素12の厚さと同じであってもよいし、第2平面コイル要素12の厚さよりも小さくてもよいし、大きくてもよい。言い換えると、第2平面コイル要素12の厚さ(導電体12Eの厚さ)が、第1平面コイル要素11の厚さと同じであってもよいし、第1平面コイル要素11の厚さよりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0063】
また、第1平面コイル要素11の半径(第1中心軸線C1から径方向で最も離れた部分までの距離)は80mm以上でもよく、80mm以上450mm以下でもよい。また、断面形状が矩形となる第1平面コイル要素11(導電体11E)のアスペクト比は、第1平面コイル要素11(導電体11E)の線幅(各ターン部11nの径方向での幅)を第1平面コイル要素11(導電体11E)の厚さで割ることにより定められる。第1平面コイル要素11(導電体11E)のアスペクト比は、2以上12以下でもよいし、3以上10以下でもよい。
【0064】
同様に、第2平面コイル要素12の半径(第2中心軸線C2から径方向で最も離れた部分までの距離)は80mm以上でもよく、80mm以上450mm以下でもよい。また、断面形状が矩形となる第2平面コイル要素12(導電体12E)のアスペクト比は、第2平面コイル要素12(導電体12E)の線幅(各ターン部12nの径方向での幅)を第2平面コイル要素12(導電体12E)の厚さで割ることにより定められる。第2平面コイル要素12(導電体12E)のアスペクト比は、2以上12以下でもよいし、3以上10以下でもよい。
【0065】
導電体11E及び12Eの厚さ及び線幅の測定は、コイル部品5を軸方向に切断して導電体11E及び12Eを露出させた断面において、導電体11E及び12Eの各部を定規などで測定することにより行ってもよいし、断面画像の解析で行ってもよい。また、コイル部品5から第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12を取り出して、導電体11E及び12Eの厚さを、定規、ノギス等で測定してもよい。
【0066】
第1平面コイル要素11と第2平面コイル要素12は隙間を空けて重なっている。この隙間は、0.5mm以上1.5mm以下でもよい。隙間の寸法は特に限られるものではないが、隙間が大きくなり過ぎると、コイル部品5の薄型化が損なわれる。
【0067】
コイル10のターン数(第1平面コイル要素11のターン数T1と第2平面コイル要素12のターン数T2との和)は、コイル部品5に求められる性能を考慮して決定される。より具体的には、コイル部品5が適切なインダクタンスを有するように、決定される。例えば、コイル部品5が電気自動車にワイヤレスで電力を伝送するシステムSに適用される場合、コイル部品5のインダクタンスは、35Hz~50Hz程度であることが望ましい。この場合、コイル10のターン数は、例えば8~10程度とされる。ただし、コイル10のターン数はこれに限定されない。コイル10のターン数は、例えば、6以上24以下であってよい。
【0068】
ここで、コイル部品5の製造効率を向上させることが求められている。このため、コイル部品5を構成する部材の取り扱い性を改善することが検討されている。
【0069】
このような事情を考慮して、本実施の形態では、第2平面コイル要素12のターン数T2が第1平面コイル要素11のターン数T1よりも少なくなるように、平面コイル要素11及び12の各ターン数が決定されている。これにより、第2平面コイル要素12の取り扱い性を改善することができる。すなわち、第1平面コイル要素11と第2平面コイル要素12とが同じターン数を有する場合と比較して、第2平面コイル要素12のターン数T2が減るため、第2平面コイル要素12の取り扱いが容易になる。図示された例では、第1平面コイル要素11のターン数T1は、第2平面コイル要素12のターン数T2の2倍である。より具体的には、図示された例ではコイル10のターン数が8~10程度とされ、これに基づいて、第1平面コイル要素11のターン数T1を6、第2平面コイル要素12のターン数T2を3としている。言い換えると、複数のターン部11nは、6個のターン部111~116で構成される。また、複数のターン部12nは、3個のターン部121~123で構成される。
【0070】
また、図示された例では、第2平面コイル要素12の線幅は、第1平面コイル要素11の線幅よりも大きい。これにより、第2平面コイル要素12を取り扱う際に第2平面コイル要素12が変形する虞が、抑制される。したがって、第2平面コイル要素12の取り扱い性が向上する。また、第2平面コイル要素12の電気抵抗を低減させることができる。とりわけ、図示された例では、磁気シールド部材20に対面して配置される第2平面コイル要素12の線幅は、第1平面コイル要素11の線幅の2倍以上である。
【0071】
本件発明者らは、第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116及び第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123を次のように配置することにより、コイル部品5のQ値が、同程度のターン数を有する従来型のコイルを備えたコイル部品と比較して著しく低くなる、ということを防止し得ることを知見した。すなわち、軸方向に見て、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の少なくとも1つが、第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の2以上と重なり、且つ、軸方向に見て、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の間の各隙間が、第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の間の隙間のいずれかと重なる。
【0072】
図示された例では、第2平面コイル要素12の各ターン部12nは、軸方向に見て、第1平面コイル要素11の互いに隣り合う2つのターン部と重なるように、配置されている。図示された例では、軸方向に見て、ターン部121は、ターン部111及び112と重なる。また、軸方向に見て、ターン部122は、ターン部113及び114と重なる。また、軸方向に見て、ターン部123は、ターン部115及び116と重なる。
【0073】
また、図示された例では、軸方向に見て、ターン部121及び122の間の隙間が、ターン部112及び113の間の隙間と重なる。また、軸方向に見て、ターン部122及び123の間の隙間が、ターン部114及び115の間の隙間と重なる。
【0074】
さらに図示された例では、軸方向に見て、第2平面コイル要素12の各ターン部12nの縁部が、第1平面コイル要素11のいずれかのターン部の縁部と重なる。より具体的には、第2平面コイル要素12の各ターン部12nの内方の縁部が、第1平面コイル要素11のいずれかのターン部の内方の縁部と重なる。また、第2平面コイル要素12の各ターン部12nの外方の縁部が、第1平面コイル要素11のいずれかのターン部の外方の縁部と重なる。図示された例では、ターン部121の内方の縁部は、ターン部111の内方の縁部と重なる。ターン部121の外方の縁部は、ターン部112の外方の縁部と重なる。ターン部122の内方の縁部は、ターン部113の内方の縁部と重なる。ターン部122の外方の縁部は、ターン部114の外方の縁部と重なる。ターン部123の内方の縁部は、ターン部115の内方の縁部と重なる。ターン部123の外方の縁部は、ターン部116の外方の縁部と重なる。
【0075】
第1平面コイル要素11のターン数T1と第2平面コイル要素のターン数T2との比は、2:1に限られない。例えば、当該比は、3:1であってもよい。また、第1平面コイル要素11のターン数T1は、第2平面コイル要素12のターン数T2の整数倍でなくてもよい。例えば、第1平面コイル要素11のターン数T1が5であり、第2平面コイル要素12のターン数T2が3であってもよい。この場合、軸方向に見て、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の間の各隙間が、第1平面コイル要素11の複数のターン部の間の隙間のいずれかと重なるよう、第2平面コイル要素12の一部のターン部の線幅が、他のターン部の線幅と異なっていてもよい。例えば、ターン部121がターン部111と重なり、ターン部122がターン部112及び113と重なり、ターン部123がターン部114及び115と重なるように、第2平面コイル要素12の各ターン部12nの幅が決定されてよい。
【0076】
第1平面コイル要素11(導電体11E)の線幅、すなわち各ターン部11nの径方向幅(径方向での幅)は、特に限られない。ただし、例えば79kHzから90kHzの高周波電流の周波数帯で、1kW以上、望ましくは5kW以上の電力を伝送可能とすることを考慮すると、ターン部11nの径方向幅は、2mm以上20mm以下でもよく、2mm以上16mm以下、2mm以上12mm以下、2mm以上8mm以下でもよい。
【0077】
第2平面コイル要素12(導電体12E)の線幅、すなわち各ターン部12nの径方向幅(径方向での幅)も、特に限られない。ただし、第2平面コイル要素12の各ターン部12nの線幅は、軸方向に見て、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の間の各隙間が第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の間の隙間のいずれかと重なるように、決定される。
【0078】
(磁気シールド部材)
磁気シールド部材20は、磁気の透過及び/又は漏れ磁界の抑制のために設けられる。磁気シールド部材20は、第1平面コイル要素11、第2平面コイル要素12及び保持体30とは別体のシート状の部材である。磁気シールド部材20が、第1平面コイル要素11、第2平面コイル要素12及び保持体30と別体であるとは、磁気シールド部材20が、これら第1平面コイル要素11、第2平面コイル要素12及び保持体30に一体化されていないことを意味する。ただし、磁気シールド部材20と保持体30とが接着層などを介して接合されてもよい。磁気シールド部材20は、平面視で第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12を包含する大きさに形成されている。磁気シールド部材20は、第1平面コイル要素11、第2平面コイル要素12及び保持体30と重なり、このうちの保持体30の一部(後述の第2層間部32)と直接的に接する。
【0079】
本実施の形態における磁気シールド部材20は磁性を有し、磁性体を含む又は磁性体でなる。コイル部品5では、第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12に電流が供給された際に磁界が生じる。このようなコイル部品5で生じる磁界は、第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12の各中心軸線C1,C2に対して全方向に広がるように生じる。この際、磁気シールド部材20は磁性を有することで、広がろうとする磁束線を各中心軸線C1,C2側に配向できる。また、コイル部品5は移動体に設置され得るが、この際、コイル部品5で生じる磁界が他の移動体部品側に流れると、移動体部品に悪影響が生じる場合がある。このような場合に、磁気シールド部材20は電流の発生に寄与しない漏れ磁界を抑制できる。
【0080】
磁気シールド部材20は好ましくは軟磁性体又はナノ結晶磁性体を含む。より具体的には、磁気シールド部材20はフェライトを含む、好ましくはソフトフェライトを含む。本実施の形態では、磁気シールド部材20が、プレート状のフェライトを含む。より詳しくは、磁気シールド部材20は、複数のプレート状のフェライトをシート状に配列して構成されている。
【0081】
磁気シールド部材20の比透磁率は、500以上でもよく、1000以上でもよい。磁気シールド部材20の比透磁率は、500以上3000以下でもよいし、1000以上3000以下でもよい。なお、本明細書における比透磁率は、周波数85kHzで、環境温度23度で測定した際の値である。
【0082】
(保持体)
保持体30は、上述したように第1平面コイル要素11と第2平面コイル要素12との間の隙間を維持するとともに、第2平面コイル要素12と磁気シールド部材20との間の隙間を維持するように機能する。また、本実施の形態では、保持体30が、第1平面コイル要素11と第2平面コイル要素12とを一体化させる機能も有する。詳しくは、
図3に示すように、保持体30は、第1平面コイル要素11と第2平面コイル要素12との間に配置される第1層間部31と、第2平面コイル要素12と磁気シールド部材20との間に配置される第2層間部32と、を含む。
【0083】
本実施の形態では、第1層間部31が第1平面コイル要素11と第2平面コイル要素12とに接合し、第2層間部32が第2平面コイル要素12に接合している。これにより、第1平面コイル要素11、第2平面コイル要素12及び保持体30が一体化されている。詳しくは、第1層間部31は、第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12における最内周のターン部111、121から、最外周のターン部116、123にわたり、互い対面するターン部11n、12nの間の隙間を埋めている。また、第2層間部32は、第2平面コイル要素12における最内周のターン部121から最外周のターン部123にわたり、全てのターン部121~123と、これらに対面する磁気シールド部材20の部分との間の隙間を埋めている。
【0084】
また、図示された例では、第1層間部31は、さらに、第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の間の隙間を埋めている。また、図示された例では、第2層間部32は、さらに、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の間の隙間を埋めている。
【0085】
また、本実施の形態における保持体30は、第1層間部31及び第2層間部32の外周側に位置する外周枠部33と、第1層間部31及び第2層間部32の内周側に位置する内周コア部34と、をさらに含んでいる。そして、第1層間部31及び第2層間部32は、外周枠部33に接続するとともに、内周コア部34に接続している。これにより、第1層間部31、第2層間部32、外周枠部33及び内周コア部34は、一体物として形成されている。
【0086】
なお、保持体30は、第1層間部31を第1平面コイル要素11と第2平面コイル要素12との間の隙間を維持させる目的のみで機能させ、第2層間部32を第2平面コイル要素12と磁気シールド部材20との間の隙間を維持させる目的のみで機能させてもよい。この場合、言うまでないが、第1層間部31は、第1平面コイル要素11と第2平面コイル要素12に接合しなくてもよく、第2層間部32は第2平面コイル要素12に接合しなくてもよい。また、保持体30は、外周枠部33及び内周コア部34を含まなくてもよい。
【0087】
保持体30は絶縁性を有し、樹脂を含む。保持体30は、例えば絶縁性を有する樹脂から形成されてもよい。保持体30が含む樹脂は、非磁性且つ絶縁性であれば特に限られない。保持体30は、例えばポリエチレン又はポリプロピレンを含むか、あるいはポリエチレン又はポリプロピレンから形成されてもよい。また、保持体30は、例えば繊維強化プラスチックを含むか、又は繊維強化プラスチックから形成されてもよい。より具体的には、保持体30は、ガラス繊維強化ポリアミドを含むか、又はガラス繊維強化ポリアミドから形成されてよい。なお、絶縁性とは、体積抵抗率が1010Ω・m以上であることを意味する。
【0088】
(磁性体壁部)
磁性体壁部40は、
図3に示すように、軸方向に延びている。また、
図2及び
図3から理解されるように、軸方向に見て、磁性体壁部40は、第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の間の隙間に沿って延びている。図示された例では、磁性体壁部40は渦巻形状であり、軸方向に見て、第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の間の隙間と重なっている。
【0089】
磁性体壁部40は磁性を有し、渦電流損失や漏れ磁束を抑制したり、結合係数を高くしたりすることにより、コイル性能の向上を図る。磁性体壁部40の比透磁率は、2.0以上であることが好ましく、2.0以上20.0以下でもよい。磁性体壁部40の比透磁率は、5.0以上であることがより好ましく、5.0以上20.0以下でもよい。磁性体壁部40の比透磁率は特に限られないが、大き過ぎると磁性体壁部40の柔軟性や強度が不所望に損なわれる場合がある。したがって、磁性体壁部40の比透磁率は200以下でもよい。
【0090】
図3に示す例では、磁性体壁部40は、第1平面コイル要素11の第2面11bに対向して配置されている。図示された例では、磁性体壁部40は、第2面11bと同一面上に配置されている。磁性体壁部40の高さ(軸方向に沿った寸法)は特に限られるものではないが、例えば0.5mm以上でもよく、1.0mm以上でもよい。
【0091】
本実施の形態における磁性体壁部40は、一例として、樹脂を含む保持材料と、磁性体で構成される複数又は無数の磁性体粒子と、を含む。磁性体粒子は、保持材料に保持される。保持材料は絶縁性であり、詳しくは非磁性且つ絶縁性である。保持材料は特に限られないが、例えばポリエチレン又はポリプロピレンを含むか、あるいはポリエチレン又はポリプロピレンから形成されてもよい。また、保持材料は、例えば繊維強化プラスチックを含むか、又は繊維強化プラスチックから形成されてもよい。より具体的には、保持材料は、ガラス繊維強化ポリアミドを含むか、又はガラス繊維強化ポリアミドから形成されてよい。
【0092】
磁性体粒子は、フェライト特に軟磁性材料のフェライト、ナノ結晶磁性体、ケイ素鋼、電磁軟鉄、及びアモルファス金属のうちのいずれか又は二種以上から形成されてもよい。
【0093】
(接続端子)
図2及び
図4に示すように、第1接続端子51は、第1平面コイル要素11におけるターン部116の径方向の外方の端部に接続されている。第2接続端子52は、第2平面コイル要素12におけるターン部123の径方向の外方の端部に接続されている。第1接続端子51及び第2接続端子52は、例えば高周波電流供給部1A又は変換部2Aとの接続の際に用いられ得る。第1接続端子51とターン部116との接続及び第2接続端子52とターン部123との接続は、超音波接合で行われてもよい。ただし、その接続手法は限られず、例えば導電性接着剤による接続が採用されてもよい。
【0094】
<変形例>
なお、上述した一実施の形態に対して、様々な変更を加えることが可能である。以下、
図5乃至
図15を参照して、本実施の形態の変形例について説明する。
【0095】
例えば、磁性体壁部40は、第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の間の隙間を通って、第1平面コイル要素11の一方の側から他方の側へ、軸方向に沿って延びていてもよい。この場合、保持体30には、磁性体壁部40を受け入れるスリット36が形成されていてよい。
【0096】
また、例えば、
図6乃至
図8に示すように、第2平面コイル要素12には、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123に沿って延びる長孔12hが形成されていてもよい。この場合、表皮効果によって、第2平面コイル要素12により多くの電流を流すことができる。図示された例では、長孔12hは、第2平面コイル要素12の渦巻形状に沿って延びている。
【0097】
図6及び
図8から理解されるように、第2平面コイル要素12に長孔12hが形成される場合、長孔12hは、軸方向に見て、第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の間の隙間のいずれかと重なっていてよい。この場合、
図8に示すように、磁性体壁部40は、第2平面コイル要素12の長孔12h内に延び入っていてもよい。
【0098】
また、
図9乃至
図11に示すように、第1平面コイル要素11が、磁気シールド部材20と対向して配置されてもよい。言い換えると、第2平面コイル要素12と磁気シールド部材20との間に、第1平面コイル要素11が配置されてもよい。この場合、第2平面コイル要素12の第4面12bが、コイル10の表側面10bを形成する。また、第1平面コイル要素11の第2面11bが、コイル10の裏側面10aを形成する。また、この場合、磁性体壁部40は、軸方向に見て第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の間の隙間に沿って延びてよい。
図9及び
図11に示す例では、軸方向に見て、磁性体壁部40は、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の間の隙間と重なっている。磁性体壁部40は、
図9に示すように、第2平面コイル要素12の第4面12bに対向して配置されてよい。
図9に示す例では、磁性体壁部40は、第4面12bと同一面上に配置されている。あるいは、
図11に示すように、磁性体壁部40は、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の間の隙間を通って、第2平面コイル要素12の一方の側から他方の側へ、軸方向に沿って延びていてもよい。
【0099】
また、第1平面コイル要素11が磁気シールド部材20と対向して配置される場合、
図12乃至
図15に示すように、第2平面コイル要素12には、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123に沿って延びる長孔12hが形成されていてもよい。この場合、コイル部品5は、追加の磁性体壁部45を更に備えていてもよい。追加の磁性体壁部45は、軸方向に沿って延びている。また、追加の磁性体壁部45は、軸方向に見て、長孔12hに沿って延びている。
図12乃至
図15に示す例では、軸方向に見て、追加の磁性体壁部45は、長孔12hと重なっている。追加の磁性体壁部45は、
図12乃至
図14に示すように、第2平面コイル要素12の第4面12bに対向して配置されてよい。
図12及び
図13に示す例では、追加の磁性体壁部45は、第4面12bと同一面上に配置されている。あるいは、
図15に示すように、追加の磁性体壁部45は、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123に形成された長孔12hを通って、第2平面コイル要素12の一方の側から他方の側へ、軸方向に沿って延びていてもよい。この場合、保持体30に、追加の磁性体壁部45を受け入れるためのスリット37が形成されていてよい。
【0100】
<コイル部品の用途>
本実施形態に係るコイル部品5は、上述したワイヤレス電力伝送システムSの送電装置1における送電コイルとして用いることができ、受電装置2における受電コイルとして用いることができる。
【0101】
送電コイルとしてコイル部品5を用いる場合、第1接続端子51及び第2接続端子52が
図1で示したような高周波電流供給部1A又は交流電源に接続される。高周波電流がコイル部品5に供給されると、電流を、第1接続端子51から平面コイル要素11に流した後、第2接続端子52から高周波電流供給部1A又は交流電源に流すことができる。また、電流を、第2接続端子52から平面コイル要素11に流した後、第1接続端子51から高周波電流供給部1A又は交流電源に流すことができる。これにより、平面コイル要素11の中心軸線Cに沿う磁力線を含む磁界を発生させることができる。
【0102】
一方で、受電コイルとしてコイル部品5を用いる場合、平面コイル要素11の内側を通過するように磁力線を含む磁界を受ける又は発生させることで、平面コイル要素11に高周波電流を発生させることができる。そして、この高周波電流を、第1接続端子51又は第2接続端子52から外部の装置に供給できる。
【0103】
また、コイル部品5は、トランス、アンテナなどでも用いることができる。例えばトランスにおける一次側コイルとしてコイル部品5が機能する場合には、第1接続端子51及び第2接続端子52が交流電源に接続される。そして、高周波電流を供給されることで、平面コイル要素11の中央側から鉄心に磁束を供給できる。
【0104】
<コイル部品5の性能評価シミュレーション>
以下、実施例1~4及び比較例1~6にかかるコイル部品5、5'、5''、5'''及び5''''の性能評価のために行ったシミュレーションについて説明する。シミュレーションは、ムラタソフトウェア株式会社製のFemtet(登録商標)で行った。
【0105】
実施例1~4及び比較例1~6のシミュレーションにおける共通の条件は、以下の通りである。
・供給する高周波電流は、40Aであり、周波数は、85KHzである。
・第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12,12',12''は、銅で形成される。
・第1平面コイル要素11と第2平面コイル要素12,12',12'',12'''との間の隙間の寸法は、0.50mmであり、コイル10,10',10'',10'''と磁気シールド部材20との間の隙間の寸法は、1.0mmである。
・磁気シールド部材20の比透磁率は、3000である。
・磁性体壁部40は、コイル10,10',10'',10'''の表側面10b,10b',10b'',10b'''と同一面上に配置される。磁性体壁部40の比透磁率は、5.0である。
【0106】
実施例1~4のシミュレーションにおける共通の条件は、以下の通りである。
・第1平面コイル要素11のターン数T1は6であり、第2平面コイル要素12のターン数T2は3である。
・第1平面コイル要素11の線幅は9mmであり、第2平面コイル要素12の線幅は22mmである。
・軸方向に見て、ターン部121の内方の縁部は、ターン部111の内方の縁部と重なる。また、軸方向に見て、ターン部121の外方の縁部は、ターン部112の外方の縁部と重なる。また、軸方向に見て、ターン部122の内方の縁部は、ターン部113の内方の縁部と重なる。また、軸方向に見て、ターン部122の外方の縁部は、ターン部114の外方の縁部と重なる。また、軸方向に見て、ターン部123の内方の縁部は、ターン部115の内方の縁部と重なる。また、軸方向に見て、ターン部123の外方の縁部は、ターン部116の外方の縁部と重なる。
【0107】
実施例1~4及び比較例1~4のシミュレーションにおける個別の条件は、以下の通りである。
<実施例1>
実施例1のコイル部品5では、
図2乃至
図4に示す例と同様に、磁気シールド部材20が第2平面コイル要素12に対向して配置される。第1平面コイル要素11の厚さは0.25mmであり、第2平面コイル要素12の厚さは0.5mmである。磁性体壁部40は、軸方向に見て、第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の間の隙間に沿って延び、当該隙間と重なっている。
<実施例2>
実施例2のコイル部品5では、
図6及び
図7に示す例と同様に、磁気シールド部材20が第2平面コイル要素12に対向して配置される。第2平面コイル要素12は、第2平面コイル要素12の渦巻形状に沿って延びる長孔12hを有する。長孔12hは、軸方向に見て、ターン部111及び112の間の隙間、ターン部113及び114の間の隙間、並びに、ターン部115及び116の間の隙間と重なる。長孔12hの径方向に沿った幅は、9mmである。その他の構成は、実施例1と同様である。
<実施例3>
実施例3のコイル部品5では、
図9及び
図10に示す例と同様に、磁気シールド部材20が第1平面コイル要素11に対向して配置される。第1平面コイル要素11の厚さは0.5mmであり、第2平面コイル要素12の厚さは02.5mmである。また、磁性体壁部40が、第2平面コイル要素12の第4面12bに対向して配置される。磁性体壁部40は、軸方向に見て、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の間の隙間に沿って延び、当該隙間と重なっている。その他の構成は、実施例1と同様である。
<実施例4>
実施例4のコイル部品5では、
図12乃至
図14に示す例と同様に、磁気シールド部材20が第2平面コイル要素12に対向して配置される。第1平面コイル要素11の厚さは0.25mmであり、第2平面コイル要素12の厚さは0.5mmである。第2平面コイル要素12は、第2平面コイル要素12の渦巻形状に沿って延びる長孔12hを有する。長孔12hは、軸方向に見て、ターン部111及び112の間の隙間、ターン部113及び114の間の隙間、並びに、ターン部115及び116の間の隙間と重なる。長孔12hの径方向に沿った幅は、9mmである。第2平面コイル要素12の第4面12bに対向して、追加の磁性体壁部45が配置される。追加の磁性体壁部45は、軸方向に見て、長孔12hに沿って延び、長孔12hと重なっている。追加の磁性体壁部45の比透磁率は、5.0である。その他の構成は、実施例3と同様である。
<比較例1>
比較例1の従来型のコイル部品5'では、
図16に示すように、磁気シールド部材20が第2平面コイル要素12'に対向して配置される。第1平面コイル要素11'は、4つのターン部111~114を有する。また、第2平面コイル要素12'は、4つのターン部121~124を有する。すなわち、第1平面コイル要素11のターン数T1及び第2平面コイル要素12'のターン数T2は、共に4である。第1平面コイル要素11'及び第2平面コイル要素12'の線幅は、共に14mmである。軸方向に見て、ターン部121の両縁部は、ターン部111の両縁部と重なる。また、軸方向に見て、ターン部122の両縁部は、ターン部112の両縁部と重なる。また、軸方向に見て、ターン部123の両縁部は、ターン部113の両縁部と重なる。また、軸方向に見て、ターン部124の両縁部は、ターン部114の両縁部と重なる。その他の構成は、実施例1と同様である。
<比較例2>
比較例2の従来型のコイル部品5'では、第1平面コイル要素11'の線幅及び第2平面コイル要素12'の線幅は、共に10mmである。その他の構成は、比較例1と同様である。
<比較例3>
比較例3の従来型のコイル部品5'では、第1平面コイル要素11'の線幅及び第2平面コイル要素12'の線幅は、共に8mmである。その他の構成は、比較例1と同様である。
<比較例4>
比較例4の従来型のコイル部品5''では、
図17に示すように、磁気シールド部材20が第2平面コイル要素12''に対向して配置される。第1平面コイル要素11は、6つのターン部111~116を有する。また、第2平面コイル要素12''は、6つのターン部121~126を有する。すなわち、第1平面コイル要素11のターン数T1及び第2平面コイル要素12''のターン数T2は、共に6である。第2平面コイル要素12''の線幅は、9mmである。軸方向に見て、ターン部121の両縁部は、ターン部111の両縁部と重なる。また、軸方向に見て、ターン部122の両縁部は、ターン部112の両縁部と重なる。また、軸方向に見て、ターン部123の両縁部は、ターン部113の両縁部と重なる。また、軸方向に見て、ターン部124の両縁部は、ターン部114の両縁部と重なる。また、軸方向に見て、ターン部125の両縁部は、ターン部115の両縁部と重なる。また、軸方向に見て、ターン部126の両縁部は、ターン部116の両縁部と重なる。その他の構成は、実施例1と同様である。
<比較例5>
比較例5のコイル部品5'''では、
図18に示すように、磁気シールド部材20が第2平面コイル要素12'に対向して配置される。第1平面コイル要素11は、6つのターン部111~116を有する。また、第2平面コイル要素12'は、4つのターン部121~124を有する。すなわち、第1平面コイル要素11のターン数T1は6であり、第2平面コイル要素12'のターン数T2は4である。第2平面コイル要素12'の線幅は14mmである。軸方向に見て、第2平面コイル要素12'の複数のターン部121~124の間の各隙間が、第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の間の隙間のいずれとも重なっていない。その他の構成は、実施例1と同様である。
<比較例6>
比較例6のコイル部品5''''では、
図19に示すように、磁気シールド部材20が第1平面コイル要素11に対向して配置されている。第1平面コイル要素11の厚さは0.5mmであり、第2平面コイル要素12の厚さは0.25mmである。磁性体壁部40は、軸方向に見て、第2平面コイル要素12'の複数のターン部121~124の間の隙間に沿って延びる。磁性体壁部40は、軸方向に見て、第2平面コイル要素12'の複数のターン部121~124の間の隙間に沿って延び、当該隙間と重なっている。その他の構成は、比較例5と同じである。
【0108】
図20及び
図21に、シミュレーションの結果を示す。
図20及び
図21から理解されるように、第2平面コイル要素12のターン数T2を第1平面コイル要素11のターン数T1より少なくしても、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の間の各隙間が、第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の間の隙間のいずれかと重なっていれば、第1平面コイル要素11の線幅が同程度であり且つコイルのターン数が同程度の従来型のコイル10'を備えた比較例2及び3のコイル部品5'と比較して、コイル部品5のQ値が著しく低下しないことが理解される。
【0109】
以上に説明してきた一実施の形態及びその変形例によるコイル部品5は、第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12を含むコイル10を備えている。第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12は、各々が複数のターン部111~116及び121~123を有する渦巻形状を有している。第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12は、この渦巻形状の中心軸線C1及びC2上を延びる軸方向に互いに対向して配置されている。第1平面コイル要素11及び第2平面コイル要素12は、互いに直列接続されている。第2平面コイル要素12のターン数T2が、第1平面コイル要素11のターン数T1よりも少ない。また、軸方向に見て、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の少なくとも1つは、第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の2以上と重なる。また、軸方向に見て、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の間の各隙間が、第1平面コイル要素111の複数のターン部111~116の間の隙間のいずれかと重なる。このようなコイル部品5によれば、第2平面コイル要素12の取り扱い性を改善させることができ、コイル部品の製造効率を向上させることができる。また、第1平面コイル要素11の線幅が同程度であり且つコイルのターン数が同程度の従来型のコイル10'を備えたコイル部品5'と比較して、コイル部品5のQ値が著しく低下する虞が低い。
【0110】
一実施の形態及びその変形例によるコイル部品5において、第1平面コイル要素11のターン数T1は、第2平面コイル要素12のターン数T2の2倍である。軸方向に見て、第2平面コイル要素12の各ターン部121、122及び123は、第1平面コイル要素11の2つのターン部111,112、123,124及び125,126と重なる。このようなコイル部品5は、設計が容易である。
【0111】
一実施の形態及びその変形例によるコイル部品5において、軸方向に見て、第2平面コイル要素12の各ターン部121、122及び123の内方の縁部が、第1平面コイル要素11のいずれかのターン部111、113、114の内方の縁部と重なる。また、第2平面コイル要素12の各ターン部121、122及び123の外方の縁部が、第1平面コイル要素のいずれかのターン部112、114及び116の外方の縁部と重なる。
【0112】
変形例によるコイル部品5において、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123に、当該ターン部121~123に沿って延びる長孔12hが形成されている。これにより、第2平面コイル要素12により多くの電流を流すことができる。
【0113】
変形例によるコイル部品5において、長孔12hは、第2平面コイル要素12の渦巻形状に沿って延びている。
【0114】
変形例によるコイル部品5において、軸方向に見て、長孔12hは、第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の間の隙間のいずれかと重なる。
【0115】
一実施の形態及びその変形例によるコイル部品5において、第2平面コイル要素12の厚さが、0.15mm以上0.35mm以下である。第2平面コイル要素12の厚さがこのように小さい場合、第2平面コイル要素12のターン数T2を減らすことで、第2平面コイル要素12の取り扱い性が著しく改善される。
【0116】
一実施の形態及びその変形例によるコイル部品5は、第2平面コイル要素12と対向して配置される磁気シールド部材20を更に備える。この場合、コイル部品5の性能を向上させることができる。
【0117】
第2平面コイル要素12が磁気シールド部材20と対向して配置される実施形態及び変形例において、コイル部品5は、軸方向に沿って延び、且つ、軸方向に見て第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の間の隙間に沿って延びる磁性体壁部40を更に備えている。磁性体壁部40は、第1平面コイル要素11の第2平面コイル要素12に対向する第1面11aとは反対側の第2面11bに対向して配置されている。この場合、コイル部品5の性能をさらに向上させることができる。
【0118】
第2平面コイル要素12が磁気シールド部材20と対向して配置される変形例において、コイル部品5は、軸方向に沿って延び、且つ、軸方向に見て第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の間の隙間に沿って延びる磁性体壁部40を更に備えている。磁性体壁部40は、第1平面コイル要素11の複数のターン部111~116の間の隙間を通って、第1平面コイル要素11の一方の側から他方の側へ、軸方向に沿って延びている。この場合、コイル部品5の性能をさらに向上させることができる。
【0119】
変形例によるコイル部品5は、第1平面コイル要素11と対向して配置される磁気シールド部材20を更に備える。この場合も、コイル部品5の性能を向上させることができる。
【0120】
第1平面コイル要素11が磁気シールド部材20に対向して配置される変形例において、コイル部品5は、軸方向に沿って延び、且つ、軸方向に見て第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の間の隙間に沿って延びる磁性体壁部40を更に備える。磁性体壁部40は、第2平面コイル要素12の第1平面コイル要素11に対向する第3面12aとは反対側の第4面12bに対向して配置されている。この場合、コイル部品5の性能をさらに向上させることができる。
【0121】
第1平面コイル要素11が磁気シールド部材20に対向して配置される変形例において、コイル部品5は、軸方向に沿って延び、且つ、軸方向に見て第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の間の隙間に沿って延びる磁性体壁部40を更に備える。磁性体壁部40は、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123の間の隙間を通って、第2平面コイル要素12の一方の側から他方の側へ、軸方向に沿って延びている。この場合、コイル部品5の性能をさらに向上させることができる。
【0122】
第1平面コイル要素11が磁気シールド部材20に対向して配置される変形例において、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123に、当該ターン部121~123に沿って延びる長孔12hが形成されている。また、コイル部品5は、追加の磁性体壁部45を更に備える。追加の磁性体壁部45は、軸方向に沿って延び、且つ、軸方向に見て長孔12hに沿って延びる。追加の磁性体壁部45は、第2平面コイル要素12の第1平面コイル要素11に対向する第3面12aとは反対側の第4面12bに対向して配置されている。この場合、コイル部品5の性能をさらに向上させることができる。
【0123】
第1平面コイル要素11が磁気シールド部材20に対向して配置される変形例において、コイル部品5は、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123に、当該ターン部121~123に沿って延びる長孔12hが形成されている。また、コイル部品5は、追加の磁性体壁部45を更に備える。追加の磁性体壁部45は、軸方向に沿って延び、且つ、軸方向に見て長孔12hに沿って延びる。追加の磁性体壁部45は、第2平面コイル要素12の複数のターン部121~123に形成された長孔12hを通って、第2平面コイル要素12の一方の側から他方の側へ、軸方向に沿って延びている。この場合、コイル部品5の性能をさらに向上させることができる。
【0124】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0125】
S…電力伝送システム
1…送電装置
1A…高周波電流供給部
2…受電装置
2A…変換部
5、5'、5''、5'''、5''''…コイル部品
10、10’、10''…コイル
11、11’…第1平面コイル要素
11a…第1面
11b…第2面
11E…導電体
12、12’、12''…第2平面コイル要素
12a…第3面
12b…第4面
12h…長孔
12E…導電体
20…磁気シールド部材
30…保持体
40…磁性体壁部
45…追加の磁性体壁部
51…第1接続端子
52…第2接続端子
C1…第1中心軸線
C2…第2中心軸線