IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

特開2025-8334ファイバ素線固定構造、光海底中継器、及びファイバ素線固定構造の組立方法
<>
  • 特開-ファイバ素線固定構造、光海底中継器、及びファイバ素線固定構造の組立方法 図1
  • 特開-ファイバ素線固定構造、光海底中継器、及びファイバ素線固定構造の組立方法 図2
  • 特開-ファイバ素線固定構造、光海底中継器、及びファイバ素線固定構造の組立方法 図3
  • 特開-ファイバ素線固定構造、光海底中継器、及びファイバ素線固定構造の組立方法 図4
  • 特開-ファイバ素線固定構造、光海底中継器、及びファイバ素線固定構造の組立方法 図5
  • 特開-ファイバ素線固定構造、光海底中継器、及びファイバ素線固定構造の組立方法 図6
  • 特開-ファイバ素線固定構造、光海底中継器、及びファイバ素線固定構造の組立方法 図7
  • 特開-ファイバ素線固定構造、光海底中継器、及びファイバ素線固定構造の組立方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008334
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ファイバ素線固定構造、光海底中継器、及びファイバ素線固定構造の組立方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/46 20060101AFI20250109BHJP
   G02B 6/24 20060101ALI20250109BHJP
   H05K 7/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G02B6/46
G02B6/24
H05K7/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110419
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小黒 守
【テーマコード(参考)】
2H036
2H038
4E352
【Fターム(参考)】
2H036RA11
2H038CA32
2H038CA38
4E352AA08
4E352BB02
4E352CC02
4E352CC20
4E352CC56
4E352DR02
4E352DR25
4E352DR29
4E352DR38
4E352GG10
(57)【要約】
【課題】光海底中継器の内部に複数本のファイバ素線を固定するとき、マイクロベンディングロスを発生させないファイバ素線固定構造を提供する。
【解決手段】本開示にかかるファイバ素線固定構造100は、長さ方向に延在する複数のスリットを外周に有し、複数のスリットのそれぞれにファイバ素線200を挿入可能に構成される棒状のファイバクッション10と、中空の筒状構造を有し、ファイバクッション10が中空内の所定位置まで圧入されると、ファイバクッション10の外周からファイバクッション10を押圧して固定するように構成されるクッション固定部20とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に延在する複数のスリットを外周に有し、前記複数のスリットのそれぞれにファイバ素線を挿入可能に構成される棒状のクッションと、
中空の筒状構造を有し、前記クッションが前記中空内の所定位置まで圧入されると、前記クッションの前記外周から前記クッションを押圧して固定するように構成されるクッション固定部と、
を備える、ファイバ素線固定構造。
【請求項2】
前記クッションは、円柱形状を有し、
前記クッション固定部は、円筒形状を有する、
請求項1に記載のファイバ素線固定構造。
【請求項3】
前記クッション固定部の軸方向の一端側には、前記軸方向の他端側に向けて徐々に狭くなるテーパ部が設けられる、
請求項2に記載のファイバ素線固定構造。
【請求項4】
前記複数のスリットのそれぞれの断面は、略V字状又は略U字状である、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のファイバ素線固定構造。
【請求項5】
前記クッションの外周が押圧され、前記クッションが前記クッション固定部内に固定された状態では、前記複数のスリットのそれぞれに挿入された前記ファイバ素線は、前記クッション固定部に触れることなく、対応する前記スリットの断面からの押圧により前記スリット内に固定される、
請求項4に記載のファイバ素線固定構造。
【請求項6】
四角柱形状を有し、一面が蓋部となる筐体と、
平板状の2枚のクッションと、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のファイバ素線固定構造と、
を備え、
前記ファイバ素線固定構造は、前記蓋部の主面の垂直方向に対して二方向から前記2枚のクッションに押圧された状態で、前記筐体内に固定される、
光海底中継器。
【請求項7】
長さ方向に延在する複数のスリットを外周に有する棒状のクッションの前記複数のスリットのそれぞれにファイバ素線を挿入し、
複数本の前記ファイバ素線が前記複数のスリットにそれぞれ挿入された状態において、中空の筒状構造を有するクッション固定部の前記中空内の所定位置まで前記クッションを圧入する、
ファイバ素線固定構造の組立方法。
【請求項8】
前記クッションは、円柱形状を有し、
前記クッション固定部は、円管形状を有する、
請求項7に記載のファイバ素線固定構造の組立方法。
【請求項9】
前記クッション固定部の軸方向の一端側には、前記軸方向の他端側に向けて徐々に狭くなるテーパ部が設けられ、
前記複数本のファイバ素線が前記複数のスリットにそれぞれ挿入された状態の前記クッションは、前記テーパ部が設けられた側から前記クッション固定部内に圧入される、
請求項8に記載のファイバ素線固定構造の組立方法。
【請求項10】
前記複数のスリットのそれぞれの断面は、略V字状又は略U字状であり、
前記クッションを前記クッション固定部に固定した状態では、前記複数のスリットのそれぞれに挿入された前記ファイバ素線は、前記クッション固定部に触れることなく、対応する前記スリットの断面からの押圧により前記スリット内に固定される、
請求項7乃至請求項9のいずれかに記載のファイバ素線固定構造の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファイバ素線固定構造、光海底中継器、及びファイバ素線固定構造の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大陸間通信を含む国際通信の需要は急激に拡大している。また、近年のデータトラフィックの増加により光通信の普及が急速に進んでいる。そして、大容量伝送方式に対応するために、光海底ケーブル向けの通信装置の高機能化が要求されている。このような光海底ケーブルは相当な長さとなるため、光信号を増幅するための光海底中継器が一定間隔で設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
光海底中継器内には、上り側の光海底ケーブルから延伸する複数本のファイバ素線と、下り側の光海底ケーブルから延伸する複数本のファイバ素線とが収容される。光海底ケーブル内のファイバ素線を光海底中継器内に収容するには、低損失を実現する安定した固定構造が要求される。ここで、光海底中継器から反対の光海底ケーブル側へと引き出したファイバ素線の引っ張りによるキンク発生を防止するために、光海底中継器内でこれらのファイバ素線を確実に固定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-78677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファイバ素線を固定する方法としては、例えば、複数本のファイバ素線をそれらの側面から2枚のクッションで挟み込み、筐体内において圧縮固定する構造が考えられる。しかしながら、2枚のクッション間に複数本のファイバ素線を単純に並べると、任意の2本のファイバ素線がクッション内で互いにクロスするおそれがある。そのような場合、2本のファイバ素線がクロスした箇所において、クッションによる過度の押さえ付けによりマイクロベンドが発生し、それによる損失(マイクロベンディングロス)が生じるおそれがある。
【0006】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、複数本のファイバ素線がクロスした状態で圧縮固定されることを確実に排除することができるファイバ素線固定構造、光海底中継器、及びファイバ素線固定構造の組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様によるファイバ素線固定構造は、
長さ方向に延在する複数のスリットを外周に有し、前記複数のスリットのそれぞれにファイバ素線を挿入可能に構成される棒状のクッションと、
中空の筒状構造を有し、前記クッションが前記中空内の所定位置まで圧入されると、前記クッションの前記外周から前記クッションを押圧して固定するように構成されるクッション固定部と、
を備えるものである。
【0008】
本開示の第2の態様による光海底中継器は、
四角柱形状を有し、一面が蓋部となる筐体と、
平板状の2枚のクッションと、
上記第1の態様に記載のファイバ素線固定構造と、
を備え、
前記ファイバ素線固定構造は、前記蓋部の主面の垂直方向に対して二方向から前記2枚のクッションに押圧された状態で、前記筐体内に固定されるものである。
【0009】
本開示の第3の態様によるファイバ素線固定構造の組立方法は、
長さ方向に延在する複数のスリットを外周に有する棒状のクッションの前記複数のスリットのそれぞれにファイバ素線を挿入し、
複数本の前記ファイバ素線が前記複数のスリットにそれぞれ挿入された状態において、中空の筒状構造を有するクッション固定部の前記中空内の所定位置まで前記クッションを圧入するものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、複数本のファイバ素線がクロスした状態で光海底中継器内に圧縮固定されることを確実に排除することができるファイバ素線固定構造、光海底中継器、及びファイバ素線固定構造の組立方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示にかかる光海底中継器の概略的な断面図である。
図2】本開示にかかるファイバ素線固定構造の概略的な断面図である。
図3】本開示にかかるファイバ素線を固定する前のファイバクッションの概略図であり、(a)がその正面図、(b)がその斜視図である。
図4】本開示にかかるファイバ素線固定構造のファイバクッションの変形例を示す図である。
図5】本開示にかかるファイバ素線を固定する前のクッション固定部の正面図である。
図6】本開示にかかるファイバ素線固定構造の組立方法におけるファイバ素線配置工程を示す図である。
図7】本開示にかかるファイバ素線固定構造の組立方法におけるファイバクッション固定工程の準備段階の状態を示す図である。
図8】本開示にかかるファイバ素線固定構造の組立方法におけるファイバクッション固定工程後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態)
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。しかしながら、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施の形態に限定するものではない。また、本実施の形態で説明する構成のすべてが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
<光海底中継器>
まず、図1を参照して、本開示にかかる光海底中継器の構成を説明する。図1は、本開示にかかる光海底中継器1の概略的な断面図である。本実施の形態の光海底中継器1は、後述するファイバ素線固定構造100を筐体本体部3に収容して、蓋部4による押圧により筐体5内に固定したものである。図1に示すように、光海底中継器1は、ファイバ素線固定構造100と、2枚の中継器クッション2と、筐体本体部3及び蓋部4からなる筐体5とを備える。
【0014】
筐体5は、四角柱形状を有するが、筐体5の形状はこれに限らない。ファイバ素線固定構造100をしっかりと固定することができる限り、筐体5は、例えば円柱形等のどのような形状を有してもよい。筐体5が他の形状の場合には、その形状に合わせて中継器クッション2の枚数や形状等を調整すればよい。
【0015】
上述のように、筐体5は、筐体本体部3と、蓋部4とを有する。筐体本体部3は、蓋のない箱形状を有する。蓋部4は、筐体5の一面をなす。光海底中継器1の完成状態では、海底での高い水圧に耐えられるように、蓋部4を筐体本体部3上にしっかりと固定することにより、光海底中継器1の内部を封止するものである。
【0016】
本例では、2枚の中継器クッション2は、それぞれ主面を有する平板状である。そして、2枚の中継器クッション2それぞれの主面が筐体5の蓋部4の主面を同じ主面の方向となるように、筐体5の底部と、ファイバ素線固定構造100を介して筐体5の上部とに配設される。
【0017】
中継器クッション2の材料は、ファイバ素線固定構造100をしっかりと固定することができれば、どのようなものであってもよく、例えば、ゴム製やスポンジ製であってもよい。
【0018】
後述するファイバ素線固定構造100は、光海底中継器1内に設置されるものである。具体的には、ファイバ素線固定構造100は、蓋部4の主面の垂直方向に対して、図1において上下二方向から2枚の中継器クッション2、2に押圧された状態で、筐体5内に固定されるものである。
【0019】
<ファイバ素線固定構造>
次に、図2図5を参照して、本開示にかかるファイバ素線固定構造100の構成を説明する。図2は、本開示にかかるファイバ素線固定構造100の概略的な断面図である。図3は、本開示にかかるファイバ素線200を固定する前のファイバクッション10の概略図であり、(a)がその正面図、(b)がその斜視図である。図4は、本開示にかかるファイバ素線固定構造100のファイバクッション10の変形例を示す図である。図5は、本開示にかかるファイバ素線200を固定する前のクッション固定部20の正面図である。なお、図2に示すファイバ素線固定構造100の断面は、図1に示すファイバ素線固定構造100の断面に対応する。
【0020】
本実施の形態のファイバ素線固定構造100は、光海底中継器1の筐体5内に固定されることにより、複数本のファイバ素線200を光海底中継器1内に固定するものである。図2に示すように、ファイバ素線固定構造100は、ファイバクッション10と、クッション固定部20とを備える。
【0021】
図3に示すように、ファイバクッション10は、円柱形状を有する棒状のクッションであり、その外周には、長さ方向に延在する複数のスリット11を有する。本例では、ファイバ素線固定構造100により4本のファイバ素線200を互いに離間して固定するため、ファイバクッション10は、等間隔に4つのスリット11を有する。
【0022】
各スリット11は、その断面が略V字状となる開口部を有する。そして、後述するように、ファイバ素線固定構造100の組立工程では、スリット11の開口部にはそれぞれファイバ素線200が挿入される。
【0023】
なお、スリット11の開口部の断面形状は、略V字状に限らない。例えば、図4に示すように、その断面形状は、略U字状であってもよい。すなわち、ファイバクッション10は、スリット11の代わりに、長さ方向に延在する複数のスリット12を有すればよい。この場合、略U字状の底部、すなわち、スリット12のファイバクッション10の中心方向の曲面部は、ファイバ素線200の外周に略一致するような大きさを有すればよい。スリット12をこのように構成することにより、スリット11の場合に比べて、ファイバ素線200の外周がスリット12の内面により多く接することになる。これにより、ファイバクッション10からファイバ素線200への荷重をより均等に分散させることができる。
【0024】
ファイバクッション10の材料は、ファイバ素線固定構造100の組立後に各ファイバ素線200がしっかりと固定されるとともに、ファイバ素線200への過度な押さえ付けが起きない限り、どのようなものであってもよい。ファイバクッション10の材料は、中継器クッション2と同様に、例えば、ゴム製やスポンジ製であればよい。
【0025】
なお、本実施の形態では、ファイバクッション10の形状が円柱形状である場合を示したが、ファイバクッション10の形状はこれに限らない。ファイバ素線固定構造100の組立後のファイバ素線200への荷重が概ね均等である限り、ファイバクッション10は、固定すべきファイバ素線200の数に応じて、例えば四角形等の角柱形状であってもよく、より好ましくは、正多角形の角柱形状であればよい。
【0026】
図2及び図5に示すように、クッション固定部20は、円筒形状を有する中空の筒状(リング形状)の機構部品である。また、クッション固定部20には、その軸方向の一端側に、該一端側から他端側に向けて徐々に狭くなるテーパ部21が設けられる(図7参照)。後述するように、このテーパ部21は、ファイバクッション10をクッション固定部20の中空内に挿入(圧入)する際に用いられる。
【0027】
なお、クッション固定部20の材料は特に限定されないが、ファイバクッション10を中空内部に押圧可能な強度を有すればよい。クッション固定部20は、後述するように、テーパ部21を用いて、ファイバクッション10をクッション固定部20の中空内の所定位置まで圧入すると、ファイバクッション10の外周からファイバクッション10を押圧して固定するように構成される。
【0028】
ファイバクッション10の外周が押圧され、ファイバクッション10がクッション固定部20内に固定された状態では、複数のスリット11又は12のそれぞれに挿入されたファイバ素線200は、互いに離間した状態において、クッション固定部20の内壁に触れることなく、対応するスリット11又は12の断面(内面)からの押圧によりスリット11又は12内に固定される。
【0029】
<ファイバ素線固定構造の組立方法>
次に、図6図8を参照して、本開示にかかるファイバ素線固定構造の組立方法を説明する。図6は、本開示にかかるファイバ素線固定構造100の組立方法におけるファイバ素線配置工程を示す図である。図7は、本開示にかかるファイバ素線固定構造100の組立方法におけるファイバクッション固定工程の準備段階の状態を示す図である。図8は、本開示にかかるファイバ素線固定構造100の組立方法におけるファイバクッション固定工程後の状態を示す図である。本例では、図3のスリット11を備えるファイバクッション10を用いた場合を説明する。
【0030】
ファイバ素線固定構造100の組立方法は、ファイバ素線配置工程と、ファイバクッション固定工程とを少なくとも含む。ファイバ素線配置工程では、まず、複数本のファイバ素線200と、ファイバクッション10とを準備する。そして、図6に示すように、ファイバクッション10の各スリット11内にファイバ素線200を挿入することにより、ファイバクッション10に対して複数本のファイバ素線200を配置する。
【0031】
次いで、ファイバクッション固定工程では、まず、クッション固定部20を準備する。このとき、図7に示すように、クッション固定部20のテーパ部21がファイバクッション10に対向するように、複数本のファイバ素線200を挿入したファイバクッション10と、クッション固定部20とを配置する。この場合、スリット11内に配置された複数本のファイバ素線200は、クッション固定部20の中空内を貫通した状態となる。
【0032】
そして、複数本のファイバ素線200が複数のスリット11にそれぞれ挿入された状態において、クッション固定部20を固定しつつ、複数本のファイバ素線200を挿入したファイバクッション10を図7に示すX方向に移動させる。ファイバクッション10の長さ方向の一端側がクッション固定部20のテーパ部21に接すると、該一端側がテーパ部21に内面に沿うように圧縮されながら、ファイバクッション10を移動させる。
【0033】
最終的に、図8に示すように、複数本のファイバ素線200を挿入したファイバクッション10をクッション固定部20の中空内の所定位置まで圧入して、ファイバ素線固定構造100の組立を終了する。これにより、ファイバクッション10が実質的に均等に圧縮されて、各ファイバ素線200は個別に固定されることとなる。ここで、所定位置とは、ファイバクッション10がテーパ部21を完全に抜けて、ファイバクッション10の外周全体がクッション固定部20の内面に圧接している位置をいう。このため、テーパ部21を除くクッション固定部20の長さは、ファイバクッション10の長さよりも所定長さ以上長く設定されている。
【0034】
なお、図示を省略するが、光海底中継器1の組立方法については、以下のようになる。すなわち、図1に示すように、2枚の中継器クッション2及び筐体本体部3をさらに準備した後、筐体本体部3の底部に1枚の中継器クッション2を設置し、上記のように組み立てたファイバ素線固定構造100を該中継器クッション2上に配置し、別の中継器クッション2をファイバ素線固定構造100上に配置する。そして、蓋部4をさらに準備した後、筐体本体部3に合わせるように、蓋部4を位置させる。
【0035】
その後、蓋部4に対して下方向にゆっくりと圧力を掛けていき、ファイバ素線固定構造100により2枚の中継器クッション2を徐々につぶすようにする。最終的に、完全に蓋部4が筐体本体部3まで到達すると、蓋部4を筐体本体部3上に固定することにより、光海底中継器1の内部を封止して、光海底中継器1の組立を終了する。
【0036】
以上説明したように、本開示のファイバ素線固定構造100は、長さ方向に延在する複数のスリット11又は12を外周に有し、複数のスリット11又は12のそれぞれにファイバ素線200を挿入可能に構成される棒状のファイバクッション(クッション)10と、中空の筒状構造を有し、ファイバクッション10が中空内の所定位置まで圧入されると、ファイバクッション10の外周から該ファイバクッション10を押圧して固定するように構成されるクッション固定部20とを備えるように構成される。ファイバ素線固定構造100をこのように構成することにより、複数本のファイバ素線200を互いに離間して固定することができる。これにより、複数本のファイバ素線200がクロスした状態で光海底中継器1内に圧縮固定されることを確実に排除することができる。したがって、クロスしたファイバ素線における過度の押さえ付けによりマイクロベンドが発生することを効果的に防止することができる。
【0037】
また、クッション固定部20には、その軸方向の一端側には、該軸方向の他端側に向けて徐々に狭くなるテーパ部21が設けられてもよい。クッション固定部20にテーパ部21を設けることにより、ファイバ素線固定構造100の組立を容易に行うことができる。
【0038】
また、本開示の光海底中継器1は、四角柱形状を有し、一面が蓋部4となる筐体5と、平板状の2枚の中継器クッション(クッション)2、2と、上記のようなファイバ素線固定構造100とを備え、ファイバ素線固定構造100は、蓋部4の主面の垂直方向に対して二方向から2枚の中継器クッション2、2に押圧された状態で、筐体5内に固定されるように構成される。光海底中継器1をこのように構成することにより、ファイバ素線200の引っ張りによるキンク発生を防止しつつ、ファイバ素線固定構造100を用いることによる効果と同様の効果を奏することができる。
【0039】
さらに、本開示のファイバ素線固定構造100の組立方法は、長さ方向に延在する複数のスリット11又は12を外周に有する棒状のファイバクッション(クッション)10の複数のスリット11又は12のそれぞれにファイバ素線200を挿入し、複数本のファイバ素線200が複数のスリット11又は12にそれぞれ挿入された状態において、中空の筒状構造を有するクッション固定部20の該中空内の所定位置までファイバクッション10を圧入するように構成される。ファイバ素線固定構造100の組立方法をこのように構成することにより、ファイバ素線固定構造100を用いることによる効果と同様の効果を奏することができる。
【0040】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0041】
各図面は、1又はそれ以上の実施の形態や変形例を説明するための単なる例示である。各図面は、1つの特定の実施の形態のみに関連付けられるのではなく、1又はそれ以上の他の実施の形態に関連付けられてもよい。当業者であれば理解できるように、いずれか1つの図面を参照して説明される様々な特徴は、例えば明示的に図示又は説明されていない実施の形態を作り出すために、1又はそれ以上の他の図に示された特徴と組み合わせることができる。例示的な実施形態を説明するためにいずれか1つの図に示された特徴のすべてが必ずしも必須ではなく、一部の特徴が省略されてもよい。
【0042】
なお、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0043】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
長さ方向に延在する複数のスリットを外周に有し、前記複数のスリットのそれぞれにファイバ素線を挿入可能に構成される棒状のクッションと、
中空の筒状構造を有し、前記クッションが前記中空内の所定位置まで圧入されると、前記クッションの前記外周から前記クッションを押圧して固定するように構成されるクッション固定部と、
を備える、ファイバ素線固定構造。
(付記2)
前記クッションは、円柱形状を有し、
前記クッション固定部は、円筒形状を有する、
付記1に記載のファイバ素線固定構造。
(付記3)
前記クッション固定部の軸方向の一端側には、前記軸方向の他端側に向けて徐々に狭くなるテーパ部が設けられる、
付記2に記載のファイバ素線固定構造。
(付記4)
前記複数のスリットのそれぞれの断面は、略V字状又は略U字状である、
付記1乃至付記3のいずれかに記載のファイバ素線固定構造。
(付記5)
前記クッションの外周が押圧され、前記クッションが前記クッション固定部内に固定された状態では、前記複数のスリットのそれぞれに挿入された前記ファイバ素線は、前記クッション固定部に触れることなく、対応する前記スリットの断面からの押圧により前記スリット内に固定される、
付記4に記載のファイバ素線固定構造。
(付記6)
前記ファイバ素線固定構造は、光海底中継器内に設置される、
付記1乃至付記3のいずれかに記載のファイバ素線固定構造。
(付記7)
四角柱形状を有し、一面が蓋部となる筐体と、
付記1乃至付記3のいずれかに記載のファイバ素線固定構造と、
前記筐体の前記蓋部の主面を同じ主面を有する2枚のクッションと、
を備え、
前記ファイバ素線固定構造は、前記蓋部の主面の垂直方向に対して上下から前記2枚のクッションに押圧された状態で、前記筐体内に固定される、
光海底中継器。
(付記8)
長さ方向に延在する複数のスリットを外周に有する棒状のクッションの前記複数のスリットのそれぞれにファイバ素線を挿入し、
前記複数本のファイバ素線が前記複数のスリットにそれぞれ挿入された状態において、中空の筒状構造を有するクッション固定部の前記中空内の所定位置まで前記クッションを圧入する、
ファイバ素線固定構造の組立方法。
(付記9)
前記クッションは、円柱形状を有し、
前記クッション固定部は、円管形状を有する、
付記8に記載のファイバ素線固定構造の組立方法。
(付記10)
前記クッション固定部の軸方向の一端側には、前記軸方向の他端側に向けて徐々に狭くなるテーパ部が設けられ、
前記複数本のファイバ素線が前記複数のスリットにそれぞれ挿入された状態の前記クッションは、前記テーパ部が設けられた側から前記クッション固定部内に圧入される、
付記9に記載のファイバ素線固定構造の組立方法。
(付記11)
前記複数のスリットのそれぞれの断面は、略V字状又は略U字状である、
付記8乃至付記10のいずれかに記載のファイバ素線固定構造の組立方法。
(付記12)
前記クッションを前記クッション固定部に固定した状態では、前記複数のスリットのそれぞれに挿入された前記ファイバ素線は、前記クッション固定部に触れることなく、対応する前記スリットの断面からの押圧により前記スリット内に固定される、
付記11に記載のファイバ素線固定構造の組立方法。
(付記13)
組み立てられた前記ファイバ素線固定構造は、光海底中継器内に設置される、
付記8乃至付記10のいずれかに記載のファイバ素線固定構造の組立方法。
【符号の説明】
【0044】
1 光海底中継器
2 中継器クッション
3 筐体本体部
4 蓋部
5 筐体
10 ファイバクッション
11 スリット
20 クッション固定部
21 テーパ部
100 ファイバ素線固定構造
200 ファイバ素線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8