(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008355
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】空調機の性能測定方法、空調機の性能測定装置、及び、条件発生器の制御方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/00 20060101AFI20250109BHJP
F24F 11/49 20180101ALI20250109BHJP
【FI】
G01N25/00 P
F24F11/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110460
(22)【出願日】2023-07-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「省エネ化・低温室効果を達成できる次世代冷媒・冷凍空調技術及び評価手法の開発/次世代冷媒の基本特性に関するデータ取得及び評価/低GWP冷媒を採用した次世代冷凍空調技術の実用化評価に関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100185878
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 晋一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 潔
(72)【発明者】
【氏名】ジャンネッティ ニコロ
【テーマコード(参考)】
2G040
3L260
【Fターム(参考)】
2G040AB08
2G040BA12
2G040BA23
2G040CA02
2G040CB09
2G040CB14
2G040DA07
2G040DA14
2G040DA15
2G040DA16
2G040EA08
2G040EB02
2G040EC09
2G040HA05
2G040HA16
2G040ZA09
3L260BA37
(57)【要約】
【課題】動的に制御される空調機の性能測定の精度の向上を図る空調機の性能測定方法を提供する。
【解決手段】空調機2の性能測定方法では、空調機2からの吹出空気の空気状態を用いて、実際の部屋を仮想的に再現した仮想室の空気状態をエミュレーションすることで、仮想室の空気状態の将来の変化を求め、仮想室の空気状態の将来の変化を条件発生器4の設定に用いる場合における条件発生器4の設定に対する試験室の空気状態の遅延を補償し、遅延が補償された仮想室の空気状態の将来の変化を設定として用いて、条件発生器4を制御し、条件発生器4により発生された測定条件となる試験室において、空調機2の性能測定を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定条件を発生させる条件発生器を備える試験室において動的に運転される空調機の性能を測定する空調機の性能測定方法であって、
前記空調機からの吹出空気の空気状態を用いて、実際の部屋を仮想的に再現した仮想室の空気状態をエミュレーションすることで、前記仮想室の空気状態の将来の変化を求め、
前記仮想室の空気状態の将来の変化を前記条件発生器の設定に用いる場合における前記条件発生器の設定に対する前記試験室の空気状態の遅延を補償し、
前記遅延が補償された前記仮想室の空気状態の将来の変化を設定として用いて、前記条件発生器を制御し、
前記条件発生器により発生された測定条件となる前記試験室において、前記空調機の性能測定を行う、空調機の性能測定方法。
【請求項2】
前記遅延の補償は、前記空調機からの吹出空気の空気状態を用いたフィードフォワード制御により行われる、請求項1に記載の空調機の性能測定方法。
【請求項3】
前記遅延の補償は、さらに、前記試験室の内部の空気状態を用いたフィードバック制御により行われる、請求項2に記載の空調機の性能測定方法。
【請求項4】
前記遅延の補償は、さらに、前記試験室の外部の空気状態を用いたフィードフォワード制御により行われる、請求項2または3に記載の空調機の性能測定方法。
【請求項5】
前記空気状態は、少なくとも空気の温度及び湿度のいずれか一方を含む、請求項1に記載の空調機の性能測定方法。
【請求項6】
前記遅延の補償において、さらに、前記遅延が補償された前記仮想室の空気状態に対する前記試験室の空気状態の誤差を補償する、請求項1に記載の空調機の性能測定方法。
【請求項7】
前記条件発生器の設定に対する前記試験室の空気状態の前記遅延を示す遅延モデルを生成し、
前記遅延がより小さくなるように前記条件発生器への設定を変化させ、当該変化に基づいて前記遅延の補償に用いられる補償モデルを生成する、請求項1に記載の性能測定方法。
【請求項8】
測定条件を発生させる条件発生器を備える試験室において動的に運転される空調機の性能を測定する空調機の性能測定装置であって、
前記空調機からの吹出空気の空気状態を用いて、実際の部屋を仮想的に再現した仮想室の空気状態をエミュレーションすることで、前記仮想室の空気状態の将来の変化を求めるエミュレーション部と、
前記仮想室の空気状態の将来の変化を前記条件発生器の設定に用いる場合における前記条件発生器の設定に対する前記試験室の空気状態の遅延を補償し、前記遅延が補償された前記仮想室の空気状態の将来の変化を設定として用いて、前記条件発生器を制御する遅延補償部と、
前記条件発生器により発生された測定条件となる前記試験室において、前記空調機の性能測定を行う空調性能測定部とを有する、空調機の性能測定装置。
【請求項9】
試験室に設けられ、動的に運転される空調機の性能測定の条件を発生させる条件発生器の制御方法であって、
前記空調機からの吹出空気の空気状態を用いて、実際の部屋を仮想的に再現した仮想室の空気状態をエミュレーションすることで、前記仮想室の空気状態の将来の変化を求め、
前記仮想室の空気状態の将来の変化を前記条件発生器の設定に用いる場合における前記条件発生器の設定に対する前記試験室の空気状態の遅延を補償し、
前記遅延が補償された前記仮想室の空気状態の将来の変化を設定値として用いて、前記条件発生器を制御する、条件発生器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機の性能測定方法、空調機の性能測定装置、及び、条件発生器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機の性能測定の簡易的な方法として、圧縮機の回転数を固定して空調機の容量制御を行わずに、安定した状況で空調機を駆動させて性能測定する方法が知られている。しかしながら、このような一定の運転状態、すなわち、静的な運転状態における性能測定では、実際の運転状況下で性能測定を行っておらず、測定結果と実際の使用環境での性能との間に乖離が生じてしまうおそれがある。
【0003】
そこで、空調機の運転状態を動的に変化させながら性能測定を行うことが検討されている。このような動的な運転状態における性能測定は、負荷ベース(load based)の性能測定と称されることもある。特許文献1に開示されている技術によれば、動的な運転状態における空調機の性能測定を行うために、試験室のような所定の試験環境が準備されている。この技術によれば、試験室に配置した電気機器や人体模型等を制御し、電気機器の発熱や室内の生活熱等の実際の使用環境を考慮した上で、動的な運転状態における空調機の性能測定が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている技術では、異なる場所で性能測定が実施される場合には、実施環境を同一にするために、実施場所毎に同一の試験室を制作する必要がある。しかしながら、外部環境等を含めて完全に同一な試験環境を再現することが難しく、性能測定の結果にばらつきが生じてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、試験室に測定対象の空調機とは異なる空調機により構成される条件発生器を設ける方法が検討されている。この方法によれば、測定対象の空調機からの吹出空気の状態から仮想的な試験室(仮想室)をエミュレーションし、実際の試験室の空気状態とエミュレーションにより得られた仮想室の空気状態とが一致するように条件発生器を制御しながら、測定対象の空調機の性能測定を行う。この方法では、試験室の熱容量等の環境に依存する要素を除外できるので、再現性の高い測定環境を実現しながら、動的な運転状態における空調機の性能測定を実施できる。
【0007】
しかしながら、このようにエミュレーションを行う方法であっても、条件発生器の制御や試験室内の空気の熱容量等に起因する遅延が発生し、エミュレーションにより得られた仮想室の状態に対して実際の試験室の状態の変化(応答)が遅れてしまうことがある。その結果、これらの遅延が、動的な運転状態における空調機の性能測定の結果に影響を及ぼす可能性があるという課題があった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、動的な運転状態における空調機の性能測定の精度の向上を図る空調機の性能測定方法、空調機の性能測定装置、及び、条件発生器の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の空調機の性能測定方法は、測定条件を発生させる条件発生器を備える試験室において動的に運転される空調機の性能を測定する。この空調機の性能測定方法では、空調機からの吹出空気の空気状態を用いて、実際の部屋を仮想的に再現した仮想室の空気状態をエミュレーションすることで、仮想室の空気状態の将来の変化を求め、仮想室の空気状態の将来の変化を条件発生器の設定に用いる場合における条件発生器の設定に対する試験室の空気状態の遅延を補償し、遅延が補償された仮想室の空気状態の将来の変化を設定として用いて、条件発生器を制御し、条件発生器により発生された測定条件となる試験室において、空調機の性能測定を行う。
【0010】
本発明の空調機の性能測定装置は、測定条件を発生させる条件発生器を備える試験室において動的に運転される空調機の性能を測定する。この空調機の性能測定装置は、空調機からの吹出空気の空気状態を用いて、実際の部屋を仮想的に再現した仮想室の空気状態をエミュレーションすることで、仮想室の空気状態の将来の変化を求めるエミュレーション部と、仮想室の空気状態の将来の変化を条件発生器の設定に用いる場合における条件発生器の設定に対する試験室の空気状態の遅延を補償し、遅延が補償された仮想室の空気状態の将来の変化を設定として用いて、条件発生器を制御する遅延補償部と、条件発生器により発生された測定条件となる試験室において、空調機の性能測定を行う空調性能測定部と、を有する。
【0011】
本発明の条件発生器の制御方法は、試験室に設けられ、動的に運転される空調機の性能測定の条件を発生させる条件発生器を制御する。この条件発生器の制御方法は、空調機からの吹出空気の空気状態を用いて、実際の部屋を仮想的に再現した仮想室の空気状態をエミュレーションすることで、仮想室の空気状態の将来の変化を求め、仮想室の空気状態の将来の変化を条件発生器の設定に用いる場合における条件発生器の設定に対する試験室の空気状態の遅延を補償し、遅延が補償された仮想室の空気状態の将来の変化を設定値として用いて、条件発生器を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空調機の性能測定方法、空調機の性能測定装置、及び、条件発生器の制御方法によれば、エミュレーションにより得られた仮想室の空気状態に対して、条件発生器へ入力される設定値に対する試験室の空気状態の変化の遅延を補償する。このような遅延補償が行われることで、動的に制御される空調機の性能測定を行う場合に、試験室の空気状態と仮想室の空気状態との差がより小さくなるため、性能測定の精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】各実施形態に共通の空調機の性能測定を行う試験室の概略構成図である。
【
図2】第1実施形態の仮想室計算部の動作の説明図である。
【
図3】比較例の仮想室計算部の動作の説明図である。
【
図4】第1の例において生成された遅延モデルの性能を示すグラフである。
【
図5】生成された補償モデルの性能を示すグラフである。
【
図6】第2の例において生成された補償モデルの性能を示すグラフである。
【
図7】生成された遅延モデルを用いて実際に試験室で動作させた場合の測定結果を示すグラフである。
【
図8】第2実施形態の仮想室計算部の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面について本発明の実施の形態を詳述する。以下の説明において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、試験室1の概略構成図である。図示された試験室1は、各実施形態に共通の構成である。この図によれば、試験室1には、測定対象の空調機2と、空調機2から吹き出す空気を捕集する測定チャンバ3と、測定チャンバ3からの吹出空気を取り込み、試験室1内の空気状態(温度及び湿度)を所定の空気状態とすることで性能測定の条件を発生させる条件発生器4とが設けられている。一例として、条件発生器4は、空調機2とは異なる空調機であり、温度及び湿度を制御可能である。空調機2は室外機5と一体となって動作し、条件発生器4は室外機6と一体となって動作する。
【0016】
空調機2からの吹出空気は、測定チャンバ3に吹き込む。さらに、測定チャンバ3からの吹出空気は、一部が条件発生器4に吹き込み、その他は試験室1内に吹き込む。他の態様として、測定チャンバ3からの吹出空気は、全てが条件発生器4に吹き込んでもよい。条件発生器4に吹き込まれた空気は、条件発生器4によってその温度及び湿度が変化される。
【0017】
空調機2の性能測定を実行する空調性能測定部7と、条件発生器4の目標値を決める仮想室計算部8との2つの制御部が、性能測定装置9において一体となって設けられている。性能測定装置9は、中央演算装置(CPU)や記憶部等を備える計算機(コンピュータ)で構成される。性能測定装置9は、記憶部に記憶された特定のプログラムを実行することにより、空調性能測定部7及び仮想室計算部8の機能を実現するための処理を実行する。なお、空調性能測定部7及び仮想室計算部8は、一つの計算機で構成しても良いし、複数の計算機で構成してもよい。
【0018】
空調性能測定部7は、測定された試験室1内の空気状態と空調機2の消費電力とから、空調機2の空調性能を算出するように構成されている。空調性能測定部7は、測定条件に応じて空調機2が動的に制御されているため、空調機2の動的な性能測定を実行できる。
【0019】
仮想室計算部8は、測定された空調機2からの吹出空気の空気状態を用いて、仮想的な部屋(以下、仮想室と称する)の空気状態(温度、湿度)をエミュレーションにより予測し、試験室1の空気状態が仮想室の空気状態と一致するように条件発生器4を制御する。このように、条件発生器4を用いて試験室1の空気状態を仮想室の空気状態と一致させることで、異なる場所に設けられる複数の試験室1の構成の違いに起因する空調性能の測定結果のばらつきを抑制できる。
【0020】
試験室1は、全体が断熱材10により覆われている。試験室1は、天井の外側壁11の内側に内側天井12が設けられた二層構造となっており、外側壁11と内側天井12との間に条件発生器4からの吹出空気を取り込み可能に構成されている。内側天井12には複数の穴が設けられており、条件発生器4からの吹出空気は、これらの穴を介して試験室1の内部の全体に拡散される。なお、本実施形態においては試験室1内に内側天井12が設けられているが、内側天井12が設けられず、条件発生器4からの吹出空気が試験室1内に直接あるいは間接的に吹き込まれてもよい。
【0021】
空調機2は、配管等を介して試験室1の外部に設けられた室外機5と接続されている。室外機5は、コンプレッサー等を備えており、空調機2と室外機5とが一体となって動作することで、所定の温度、湿度及び風量の空気が空調機2から吹き出される。
【0022】
空調機2の吸気口の近傍には、試験室1内の室内温度Trを測定する温度計21、及び、湿度を測定するために設けられた湿球温度計22が設けられている。湿球温度計22により測定される湿球温度と、温度計21により測定された室内温度Trとを用いて、室内湿度xrが求められる。また、空調機2の吹出口の近傍には、空調機2からの吹出空気の吹出温度Tsを測定する温度計23、及び、湿度を直接的に測定するために設けられた湿度計24が設けられている。空調機2の吹出口は温湿度分布が存在するため、温度計の測定温度と比較して湿度を測定する湿球温度計に替えて、湿度計24を設置して直接吹出空気の湿度湿度xsが測定されることが好ましい。
【0023】
また、空調機2は、室外機5と一体となって制御されており、空調機2に設けられた電力計25及び室外機5に設けられた電力計53を用いて、試験室1の空調に用いられる消費電力Pが求められる。室外機5の近傍には温度計51及び湿球温度計52が設けられており、それぞれ試験室1の外部の室外温度To及び室外湿度xoを測定する。室外温度To及び室外湿度xoは、第1実施形態においては用いられないが、第2実施形態で用いられる。なお、空調機2及び室外機5の一方にのみ電力計が設けられているような構成もあり得る。
【0024】
測定チャンバ3内には、温度計31及び湿球温度計32が設けられている。測定チャンバ3の出口には風量計33が設けられている。風量計33は、空気の流れに沿って設けられた2つの圧力計の差圧を求め、差圧に基づいて空調機2からの吹出風量Gsを算出する。
【0025】
ここで、空調機2の吹出口の近傍においては、温湿度分布が存在するため、温度計23及び湿度計24を用いて取得した温度Ts及び湿度xsに誤差が生じることがある。これに対して、温度計31及び湿球温度計32により得られる温度Ts’及び湿度xs’は、空調機2の吹出口の近傍に設けられた温度計23及び湿度計24により測定される吹出温度Ts及び吹出湿度xsと比較すると、測定チャンバ3が空調機2の吹出口から距離があり、かつ、測定チャンバ3自体に熱容量が存在するため、空調機2からの吹出空気の実際の状態からの誤差があることはある。しかしながら、測定チャンバ3内において吹出空気が攪拌された状態であるため、より安定して吹出空気の状態が測定可能になる。
【0026】
そこで、前もって定常状態時に温度計31及び湿球温度計32により得られる温度Ts’及び湿度xs’を用いて、温度計23及び湿度計24により測定される空調機2からの吹出温度Ts及び吹出湿度xsを校正することで、吹出温度Ts及び吹出湿度xsの測定精度を高めることができる。また、空調機2の吹出口と測定チャンバ3との間の距離に起因する測定の遅れは比較的小さいとみなせる場合には、温度計23及び湿度計24を用いずに、温度計31及び湿球温度計32を用いて測定チャンバ3の空気状態を測定することで、空調機2からの吹出温度Ts及び吹出湿度xsを求めててもよい。
【0027】
空調性能測定部7は、温度計21及び湿球温度計22を用いて取得した室内温度Tr及び室内湿度xr、温度計23、湿度計24及び風量計33を用いて取得した吹出温度Ts、吹出湿度xs(温度計31、湿球温度計32により取得した温度Ts’、湿度xs’により校正されていてもよい)、及び、吹出風量Gs、並びに、電力計25、53により測定された消費電力Pの入力を受け付ける。
【0028】
空調性能測定部7は、室内温度Trと室内湿度xrとから室内空気のエンタルピーを算出し、吹出温度Tsと吹出湿度xsとを用いて空調機2から吹出空気のエンタルピーを算出し、両者のエンタルピーの差を算出する。そして、空調性能測定部7は、エンタルピー差に吹出風量Gsを乗ずることで、空調能力(冷凍能力/暖房能力)を得る。最終的に、空調性能測定部7は、得られた空調能力を消費電力Pで除することで、空調機2及び室外機5の空調性能を算出する。
【0029】
仮想室計算部8は、温度計23、湿度計24及び風量計33を用いて取得した吹出温度Ts、吹出湿度xs、及び、吹出風量Gsの入力を受け付けると、これらの入力を用いて仮想室の空気状態をエミュレーションする。そして、仮想室計算部8は、試験室1の空気状態がエミュレーションにより得られた仮想室の空気状態と一致するような設定値(設定温度Tset、設定湿度xset)を条件発生器4に対して送信する。このようにすることで、空気状態が仮想室と一致した試験室1において、空調機2の空調性能を測定できる。
【0030】
条件発生器4は、測定対象の空調機2とは異なる空調機により構成されており、配管等を介して接続された室外機6と一体となって動作する。条件発生器4は、測定チャンバ3からの吹出空気の一部または全部を取り込み、仮想室計算部8からの設定温度Tset、及び、設定湿度xsetに応じて動作する。
【0031】
また、試験室1の内部及び外部には、温度計21、23、51、湿度計24、及び湿球温度計22、52以外の他の温度計、湿度計及び湿球温度計が設けられてもよい。複数の温度計、湿度計及び湿球温度計の測定結果を用いることで、より高い精度で、室内温度Tr及び室内湿度xr、吹出温度Ts及び吹出湿度xs、並びに、室外温度To及び室外湿度xoを求めることができる。
【0032】
図2は、本実施形態の仮想室計算部8の動作の説明図である。この図には、制御の流れが細線の矢印で示されており、空気の流れが幅の太い矢印(ドットのハッチングが付されている)で示されている。
【0033】
太い矢印で示されるように、空調機2からの吹出空気は、測定チャンバ3を通過し、条件発生器4によって所定の条件(温度、湿度)に変更された後に、再度、試験室1内に戻されて、空調機2に吸い込まれる。
【0034】
一方で、細線の矢印で示されるように、空調機2の吹出口及び測定チャンバ3内に設けられたセンサ(温度計23、湿度計24及び風量計33)で測定された吹出温度Ts、吹出湿度xs及び吹出風量Gsが仮想室計算部8に入力される。仮想室計算部8は、エミュレーション部81と、遅延補償部82とを有する。なお、本実施形態においては、エミュレーション部81と遅延補償部82とが一体となって仮想室計算部8を構成する例を用いて説明したが、エミュレーション部81と遅延補償部82とは独立した異なる計算機やソフトウエアであってもよい。
【0035】
エミュレーション部81は、測定された吹出温度Ts、吹出湿度xs及び吹出風量Gsを受け付け、仮想室の空気状態をエミュレーションして仮想室温度Temu及び仮想室湿度xemuを求める。このエミュレーションにおいては、仮想室における熱量の出入り、具体的には、入射する太陽光、外部との換気状態(隙間風を含む)、及び、内部で居住する人や電化製品により生じる生活熱等が再現される。
【0036】
より詳細には、エミュレーション部81は、空調機2からの吹出空気の状態、すなわち、吹出温度Ts、吹出湿度xs及び吹出風量Gsの各種パラメータを用いて、仮想室の内外の熱の出入りを考慮して微分方程式を解き、仮想室の空気状態(温度、湿度)の経時的な変化を予測する。これらの仮想室の空気状態の将来的な予測値は、後段の遅延補償部82によって補正された後に条件発生器4の制御に用いられる。これらの仮想室の空気状態の将来的な予測値は、時間に応じて変化する空気状態を示すものであり、仮想室温度Temu及び仮想室湿度xemuで示される。
【0037】
遅延補償部82は、エミュレーション部81から出力される仮想室温度Temu及び仮想室湿度xemuに加えて、エミュレーション部81と同様に、センサで測定された吹出温度Ts、吹出湿度xs及び吹出風量Gsを受け付ける。
【0038】
ここで、条件発生器4の機械的制御や試験室1内の空気の熱容量等に起因して、条件発生器4へ入力される設定(設定温度Tset、設定湿度xset)に対して、試験室1内の空気状態(室内温度Tr、室内湿度xr)の変化(応答)は遅延してしまう。
【0039】
そこで、遅延補償部82は、入力された吹出温度Ts、吹出湿度xs及び吹出風量Gsを用いたフィードフォワード制御により、エミュレーション部81から出力される仮想室温度Temu及び仮想室湿度xemuに対して遅延を補償するような補正を行う。遅延補償部82は、遅延を補償した設定温度Tset及び設定湿度xsetを条件発生器4に出力して、これに応じて条件発生器4が制御される。
【0040】
さらに、条件発生器4の制御対象は試験室1の空気状態であり、制御における不確実性が存在するため、空気状態に制御誤差が生じてしまうことがある。そのため、遅延補償部82は、このような誤差についても補償するように構成されてもよい。
【0041】
条件発生器4は、温度調整部41と湿度調整部42とを有しており、遅延補償部82から出力される設定温度Tset及び設定湿度xsetに基づいて動作する。このように条件発生器4が動作することで、試験室1の室内温度Tr及び室内湿度xrを、仮想室温度Temu及び仮想室湿度xemuに近づけることができる。なお、温度調整部41と湿度調整部42は、条件発生器4の制御部であって、一体となって条件発生器制御部43として構成されてもよい。
【0042】
図3は、比較例の仮想室計算部8の動作の説明図である。この図に示される構成は、
図2に示される第1実施形態の仮想室計算部8と比較すると、仮想室計算部8内の遅延補償部82が省略されている。
【0043】
遅延補償部82が省略されているため、エミュレーション部81により得られた仮想室の状態(仮想室温度Temu、仮想室湿度xemu)が設定値として用いられて条件発生器4が制御される。このような制御では、条件発生器4の機械的制御や試験室1内の空気の熱容量等に起因する遅延が発生するので、試験室1内の状態(室内温度Tr、室内湿度xr)は設定値に対して遅延してしまう。
【0044】
そこで、本実施形態においては、
図2に示すようにエミュレーション部81の後段に遅延補償部82を設けることによって、遅延が補償された設定温度T
set及び設定湿度x
setが条件発生器4の制御に用いられる。その結果、試験室1の空気状態(室内温度T
r、室内湿度x
r)を、エミュレーション部81により得られた仮想室の空気状態(仮想室温度T
emu、仮想室湿度x
emu)に近づけることができる。
【0045】
遅延補償部82は、例えば、以下のような方法で構成される。まず、条件発生器4の設定値に対する試験室1の空気状態の遅延を示す遅延モデルを生成した後に、その遅延を補償する補償モデルを生成する。そして、このように生成された補償モデルを用いて、遅延補償部82を構成する。
【0046】
詳細には、まず、
図3の比較例のような遅延補償部82が存在しない場合において発生する遅延をモデル化した遅延モデルが生成される。例えば、条件発生器4の設定(設定温度T
set、設定湿度x
set)の過去データ、仮想室の空気状態(仮想室温度T
emu、仮想室湿度x
emu)の過去データ、試験室1の空気状態(室内温度T
r、室内湿度x
r)の過去データ、及び、空調機2からの吹出空気の空気状態(吹出温度T
s、吹出湿度x
s、吹出風量G
s)の過去データ等を用いた機械学習により遅延モデルが構成される。
【0047】
次に、生成された遅延モデルを用いて、その遅延を補償する補償モデルが生成される。例えば、遅延モデルへの入力の1つを変化させると、その入力の変化に応じて出力値が変化する。変化する出力値の1つは試験室1の空気状態である。そこで、変化後の試験室1の空気状態の仮想室の空気状態に対する偏差が経時的に最小となるような入力の変化を求める。例えば遺伝的アルゴリズムを用いれば、このような入力の変化を繰り返して最適な変化を求めることができる。最終的に、求められた変化が補償されるような補償モデルを生成することができる。
【0048】
このように、遅延モデルが生成され、その後、補償モデルが生成され、生成された遅延モデルを用いて遅延補償部82を構成することができる。なお、上述の説明では、遅延モデル及び補償モデルの生成に機械学習を用いたが、機械学習に限らず、条件発生器4内の現象を記述した数理モデルを用いてもよい。
【0049】
以下では、機械学習による遅延補償部82を構築する場合の2つの具体例なシミュレーションについて説明する。第1の例は、過去の測定データを用いた機械学習が行われ、補償モデルの性能の検証がシミュレーションで行われており、
図4、5に示される。第2の例は、さらに仮想室の空気状態からの試験室1の室内状態の誤差を明示的にパラメータとして用いた機械学習が行われ、補償モデルの性能の検証が実測で行われており、
図6、7に示される。両者の例に共通して、シミュレーションは温度についてのみ行い、湿度については行っていない。
【0050】
第1の例においては、過去の測定データを用いて、条件発生器4の設定である仮想室温度Temuに対する室内温度Trの遅延を示す遅延モデルを生成した。その後、条件発生器4の設定温度Tsetを変化させて、変化後の設定温度Tset’に応じて得られる室内温度Tr’とエミュレーション結果の仮想室温度Temuとの差(Tr’-Tset’)が最小(より小さく、または、所定値以下)となるような設定温度Tset’を求める。その結果、仮想室温度Temuを入力とし設定温度Tset’を出力とする遅延モデルが生成される。
【0051】
図4は、第1の例の機械学習により得られた遅延モデルの妥当性を示すグラフである。この図おいては、縦軸には-1~+1の間の数に規格化された温度が示されており、横軸には秒単位の時間が示されている。また、一点鎖線はエミュレーション部81により得られた仮想室温度T
emuを示し、実線は温度計21により測定される試験室1内の室内温度T
rを示している。そして、細い点線は遅延モデルを用いて仮想室温度T
emuに対して遅延を補償することで得られた室内温度T
r’を示している。なお、この図では、上段において二点鎖線の矩形で囲まれた箇所が、下段で拡大されて示されている。
【0052】
図示されるように、細い点線で示された室内温度Tr’は、測定された試験室1内の室内温度Trと略一致している。このように、多くの時間で両者が一致している、または、差が所定値以下であることから、遅延モデルが正しく構成されたことが理解できる。
【0053】
図5は、機械学習を経て生成された補償モデルの性能を示すグラフである。この図では、上段において二点鎖線の矩形で囲まれた箇所が、下段で拡大されて示されている。
【0054】
この図においては、
図4と同様に、一点鎖線で仮想室温度T
emuが示されている。また、
図4との比較のために、実線で室内温度T
rが示されている。さらに、細い実線は、仮想室温度T
emuに対して補償モデルを用いて遅延が補償された条件発生器4に対する設定(設定温度T
set’)を示している。細い点線は、この設定温度T
set’を入力として遅延モデルを用いたシミュレーションにより生成された試験室1の温度(室内温度T
r’)を示している。なお、一点鎖線(仮想室温度T
emu)と細い点線(室内温度T
r’)とは重複する箇所が多く、細い点線を構成する小さな「点」のうち一点鎖線と重複する箇所は、白抜きで示されている。
【0055】
この図に示すように、仮想室温度Temuに対して補償モデルを用いて設定温度Tset’を生成する。そして、この設定温度Tset’を条件発生器4の制御に用いる場合の結果は、遅延モデルによりシミュレーション結果を得ることができ、細い点線で示されるような室内温度Tr’が求められる。
【0056】
仮想室温度Temu(一点鎖線で示されている)は、遅延モデルを用いて得られた室内温度Tr’(細い点線で示されている)と多くの時間で一致していることから、遅延を正しく補償可能な補償モデルが構成されたことが理解できる。そして、この補償モデルを利用して遅延補償部82を構成することで、仮想室温度Temuに対する室内温度Trの遅延が抑制されるので、仮想室を用いた空調機2の性能測定の精度を向上させることができる。
【0057】
第2の例においては、さらに、仮想室の空気状態からの試験室1の室内状態の誤差を明示的にパラメータとして用いた機械学習により、遅延モデルが生成されている。すなわち、この遅延モデルに基づいて生成された補償モデルにおいては、遅延だけでなく誤差も直接的に補償できる。
【0058】
図6は、第2の例の機械学習を経て生成された補償モデルの性能を示すグラフである。この図においては、
図4、5の例と比較すると、縦軸の温度は規格化されずに示されている。丸印は補償モデルを用いて生成された条件発生器4に対する設定値(設定温度T
set)を示す。実線はこの設定値(設定温度T
set)に基づいて遅延モデルを利用して得られた室内温度T
rを示す。破線は仮想室温度T
emuを示す。
【0059】
図示されるように、実線で示された室内温度Trと破線で示された仮想室温度Temuは略一致している。このように、多くの時間で両者が一致している、または、差が所定値以下であることから、遅延モデルが正しく構成されたことが理解できる。
【0060】
図7は、機械学習を経て生成された補償モデルを用いて生成された遅延補償部82を実際に利用した場合における試験室1の測定温度を示すグラフである。丸印は補償モデルを用いて生成された条件発生器4に対する設定値(設定温度T
set)を示す。破線は仮想室温度T
emuを示す。三角印はこの設定値(設定温度T
set)に基づいて制御された試験室1内で測定された室内温度T
rを示す。
【0061】
このような第2の例においては、三角印で示された測定された室内温度Trと破線で示された仮想室温度Temuは略一致している。このように、多くの時間で両者が一致している、または、差が所定値以下であることから、遅延補償部82により遅延が補償されたことが理解できる。
【0062】
第1実施形態の空調機2の性能測定方法によれば、エミュレーション部81により得られた仮想室の空気状態(仮想室温度Temu、仮想室湿度xemu)に対して、遅延補償部82が、条件発生器4へ入力される設定値(仮想室温度Temu、仮想室湿度xemu)に対する試験室1の空気状態(室内温度Tr、室内湿度xr)の変化(応答)の遅延を補償する。このような遅延補償が行われることで、試験室1の空気状態(室内温度Tr、室内湿度xr)と仮想室の空気状態(仮想室温度Temu、仮想室湿度xemu)との差が小さくなるため、空調機2の性能測定の精度の向上を図ることができる。
【0063】
第1実施形態の空調機2の性能測定方法によれば、遅延補償部82は、空調機2からの吹出空気の空気状態(吹出温度Ts、吹出湿度xs、吹出風量Gs)を用いたフィードフォワード制御により行われる。このようなフィードフォワード制御が行われることで、空調機2の性能測定の精度の向上を図ることができる。
【0064】
第1実施形態の空調機2の性能測定方法によれば、条件発生器4により再現される仮想室の空気状態は、仮想室温度Temuと仮想室湿度xemuとを含む。このように、試験室1において仮想室の温度及び湿度の両者が再現されることで、空調機2の測定条件の再現性が高くなり、空調機2の性能測定の精度の向上を図ることができる。
【0065】
第1実施形態の空調機2の性能測定方法によれば、条件発生器4への設定値となる仮想室の状態(仮想室温度Temu、仮想室湿度xemu)に対する試験室1の空気状態(室内温度Tr、室内湿度xr)の変化(応答)の遅延を示す遅延モデルを生成する。そして、この遅延がより小さくなるように変化させて、変化後の条件発生器4への設定(仮想室温度Temu’、仮想室湿度xemu’)を得て、当該変化に基づいて遅延の補償に用いられる補償モデルを生成する。このように遅延モデルの生成後に、生成した遅延モデルを用いて補償モデルを生成することで、モデルの構成方法を単純化できる。
【0066】
第1実施形態の空調機2の性能測定方法によれば、遅延の補償において、さらに、遅延が補償された場合の仮想室の空気状態に対する試験室1の空気状態の誤差を補償する。このように、遅延だけでなく誤差も補償することで、空調機2の性能測定の精度の向上を図ることができる。
【0067】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、
図2に示す遅延補償部82においては、遅延モデルによって、測定チャンバ3内の空気状態(吹出温度T
s、吹出湿度x
s、吹出風量G
s)に基づき、条件発生器4への設定値となる仮想室の空気状態(仮想室温度T
emu、仮想室湿度x
emu)に対して遅延補償が行われた。第2実施形態においては、遅延補償の精度をあげるために、さらに他のパラメータを用いる例について説明する。
【0068】
図8は、第2実施形態の仮想室計算部8の動作の説明図である。この図によれば、仮想室計算部8の遅延補償部82には、空調機2からの吹出空気の空気状態(吹出温度T
s、吹出湿度x
s、吹出風量G
s)に加えて、試験室1内のセンサ(温度計21、湿球温度計22)により取得される試験室1内の空気状態(室内温度T
r、室内湿度x
r)と、試験室1外のセンサ(温度計51、湿球温度計52)により取得される試験室1外の空気状態(室外温度T
o、室外湿度x
o)と、が入力されている。遅延補償部82は、これらの入力に基づいて、仮想室の状態(仮想室温度T
emu、仮想室湿度x
emu)に対して遅延補償を行い、補償されたものを条件発生器4の設定値(設定温度T
set、設定湿度x
set)として用いる。
【0069】
条件発生器4へ入力される設定値に対する試験室1内の空気状態の応答の遅延は、条件発生器4の制御や試験室1内の空気の熱容量等に起因する遅延に加えて、試験室1の外部からの断熱材10を介した熱伝導/熱放射が考えられる。特に、室外機5は高温となるため、室外機5の近傍に設けられた温度計51及び湿球温度計52により測定された室外温度To及び室外湿度xoを用いたフィードフォワードで、試験室1の外からの熱伝導/熱放射による遅延を補償する。
【0070】
さらに、遅延補償部82は、試験室1内の空気状態(室内温度Tr、室内湿度xr)を受け付けることで、条件発生器4の設定値(設定温度Tset、設定湿度xset)に対する試験室1内の空気状態(室内温度Tr、室内湿度xr)の応答の遅れ/進みを直接的に知ることができる。
【0071】
そのため、試験室1内の空気状態(室内温度Tr、室内湿度xr)が条件発生器4の設定値(設定温度Tset、設定湿度xset)に対して遅れている場合には、さらに補償量を大きくし、試験室1内の空気状態(室内温度Tr、室内湿度xr)が条件発生器4の設定値(設定温度Tset、設定湿度xset)に対して進んでいる場合には、補償量を小さくする。このように、遅延補償部82は、試験室1内の空気状態(室内温度Tr、室内湿度xr)を用いたフィードバック制御により、最適に遅延を補償できる。
【0072】
なお、本実施形態では、遅延補償部82が、測定チャンバ3内の空気状態(吹出温度Ts、吹出湿度xs、吹出風量Gs)に加えて、試験室1内の空気状態(室内温度Tr、室内湿度xr)、及び、試験室1外の空気状態(室外温度To、室外湿度xo)を用いて遅延の補償を行う。このような場合でも、モデル生成時に扱うパラメータを増やすことで、機械学習により遅延モデル及び補償モデルを生成できる。
【0073】
このような第2実施形態の空調機2の性能測定方法によれば、遅延補償部82は、さらに、試験室1の内部の空気状態(室内温度Tr、室内湿度xr)を用いたフィードバック制御により遅延を補償する。このようなフィードバック制御が行われることで、遅延の補償量を適切に調整可能となるため、さらに空調機2の性能測定の精度の向上を図ることができる。
【0074】
第2実施形態の空調機2の性能測定方法によれば、遅延補償部82は、さらに、試験室1の外部の空気状態(室外温度To及び室外湿度xo)を用いたフィードフォワード制御により遅延を補償する。このように、さらに空調機2からの吹出空気の状態(吹出温度Ts、吹出湿度xs、吹出風量Gs)を用いたフィードフォワード制御が行われることで、遅延の補償量を適切に調整可能となるため、さらに空調機2の性能測定の精度の向上を図ることができる。
【0075】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0076】
1 試験室
2 空調機
3 測定チャンバ
4 条件発生器
5、6 室外機
7 空調性能測定部
8 仮想室計算部
9 性能測定装置
21、23、31、51 温度計
24 湿度計
22、32、52 湿球温度計
25、53 電力計
33 風量計
81 エミュレーション部
82 遅延補償部