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特開2025-8359階段の壁際構造及び階段壁際構造の構築方法
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  • 特開-階段の壁際構造及び階段壁際構造の構築方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008359
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】階段の壁際構造及び階段壁際構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/16 20060101AFI20250109BHJP
   E04F 11/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E04F11/16
E04F11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110466
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】大井 亮
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301CC01
2E301CC54
2E301CD04
2E301CD43
2E301DD14
2E301DD79
2E301DD99
(57)【要約】
【課題】構成の簡素化を図りながら、階段の上り下りに際し音鳴りの発生を抑制することができる階段の壁際構造及び階段壁際構造の構築方法を提供する。
【解決手段】
建物には、複数の踏み板11を有する階段と、階段の側方に設けられた壁部20と、壁部20に取り付けられ踏み板11の上面に沿って配置された横巾木21とが設けられている。踏み板11と壁部20との間の隙間24には、弾性接着剤26により形成された弾性接着部28が介在されている。その弾性接着部28を介して踏み板11と壁部20とが接着されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の踏み板を有する階段と、
前記階段の側方に設けられた壁部と、
前記壁部に取り付けられ、前記踏み板の上面に沿って設けられた階段巾木と、を備える建物に適用され、
前記踏み板と前記壁部との間の隙間には、弾性接着剤により形成された弾性接着部が介在され、その弾性接着部を介して前記踏み板と前記壁部とが接着されている、階段の壁際構造。
【請求項2】
前記弾性接着部は、前記隙間から下方にはみ出たはみ出し部を有しており、
前記はみ出し部の一部は、前記踏み板の下面側に配置され前記踏み板を下方から支持する支持部となっている、請求項1に記載の階段の壁際構造。
【請求項3】
前記階段は、前記複数の踏み板を支持する階段下地を有し、
前記階段下地は、前記踏み板が載置される載置面を有し、
前記踏み板は、前記載置面に弾性接着剤により形成された接着層を介して接着され、
前記弾性接着部は、前記接着層を形成する弾性接着剤と同じ弾性接着剤を用いて形成されている、請求項1に記載の階段の壁際構造。
【請求項4】
前記階段は、前記複数の踏み板を支持する階段下地を有し、
前記階段下地は、前記壁部に対して非固定の状態で設けられている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の階段の壁際構造。
【請求項5】
請求項2に記載された階段の壁際構造を構築する構築方法であって、
前記階段は、前記複数の踏み板を支持する階段下地を有し、
前記踏み板を前記階段下地に設置する前に、前記壁部の壁面に前記弾性接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程の後、前記踏み板を前記階段下地に設置することにより、前記踏み板と前記壁部との間に前記弾性接着剤を介在させる踏み板設置工程と、
前記踏み板設置工程の後、前記弾性接着剤を固化させることにより前記弾性接着部を形成する接着剤固化工程と、を備え、
前記接着剤塗布工程では、前記隙間の幅方向における前記弾性接着剤の寸法が前記隙間の幅よりも大きくなるように前記弾性接着剤を塗布し、
前記踏み板設置工程では、前記踏み板の下面により前記弾性接着剤の一部を下方に押しやりながら前記踏み板を設置することで、前記弾性接着剤の一部を前記踏み板の下面側に配置し、
前記接着剤固化工程により、前記踏み板の下面側に配置された前記一部が前記支持部とされる、階段壁際構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段の壁際構造、及びその壁際構造を構築する構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数階を有する住宅等の建物には、階段が設置されている。階段は、複数の踏み板と、複数の蹴込み板とを有している。階段の側方に壁部が設けられている場合、壁部には階段巾木が取り付けられる。階段巾木には、踏み板の上面に沿って設けられる横巾木と、蹴込み板の前面に沿って設けられる縦巾木とがある。
【0003】
ところで、階段の上り下りの際に踏み板が振動すると、踏み板と横巾木とが擦れ合って音鳴りが発生する場合がある。そこで、特許文献1には、かかる音鳴りの発生を抑制すべく、横巾木と踏み板との間の隙間に弾性変形可能な隙間閉塞部材を設けた構成が開示されている。隙間閉塞部材は、上記隙間に沿った長尺状をなしており、ひれ状の弾性片を含んで形成されている。また、隙間閉塞部材は、横巾木の下端面に沿って形成された溝部に嵌め込まれた状態で取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5679156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、隙間閉塞部材がひれ状の弾性片を含んで形成されているため、隙間閉塞部材の構成が複雑なものとなっている。また、横巾木には、隙間閉塞部材を嵌め込む溝部を形成する必要があるため、横巾木の構成も複雑になってしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、構成の簡素化を図りながら、階段の上り下りに際し音鳴りの発生を抑制することができる階段の壁際構造及び階段壁際構造の構築方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の階段の壁際構造は、複数の踏み板を有する階段と、前記階段の側方に設けられた壁部と、前記壁部に取り付けられ、前記踏み板の上面に沿って設けられた階段巾木と、を備える建物に適用され、前記踏み板と前記壁部との間の隙間には、弾性接着剤により形成された弾性接着部が介在され、その弾性接着部を介して前記踏み板と前記壁部とが接着されている。
【0008】
第1の発明によれば、階段の踏み板と壁部との間の隙間に弾性接着剤により形成された弾性接着部が介在され、その弾性接着部を介して踏み板と壁部とが接着されている。かかる構成では、階段の上り下りの際に踏み板が振動した場合に、壁部に対する踏み板の変位を緩和(抑制)することができる。そのため、壁部に取り付けられた階段巾木と踏み板との擦れ合いを抑制することができる。これにより、階段の上り下りに際し音鳴りの発生を抑制することができる。また、踏み板と壁部との間に弾性接着部を介在させるだけで音鳴りを抑制することができるため、簡易な構成で音鳴り抑制を図ることができる。
【0009】
第2の発明の階段の壁際構造は、第1の発明において、前記弾性接着部は、前記隙間から下方にはみ出たはみ出し部を有しており、前記はみ出し部の一部は、前記踏み板の下面側に配置され前記踏み板を下方から支持する支持部となっている。
【0010】
第2の発明によれば、弾性接着部が、踏み板と壁部との隙間から下方にはみ出たはみ出し部を有している。はみ出し部の一部は、踏み板の下面側に配置され踏み板を下方から支持する支持部となっている。かかる構成によれば、階段の上り下りに際し踏み板が振動した場合に、壁部に対する踏み板の変位をより一層緩和(抑制)することができる。そのため、音鳴りの発生をより一層抑制することができる。
【0011】
第3の発明の階段の壁際構造は、第1の発明において、前記階段は、前記複数の踏み板を支持する階段下地を有し、前記階段下地は、前記踏み板が載置される載置面を有し、前記踏み板は、前記載置面に弾性接着剤により形成された接着層を介して接着され、前記弾性接着部は、前記接着層を形成する弾性接着剤と同じ弾性接着剤を用いて形成されている。
【0012】
踏み板は、階段下地の載置面に弾性接着剤により形成された接着層を介して接着固定されることがある。そこで、第3の発明では、弾性接着部を、接着層を形成する弾性接着剤と同じ弾性接着剤を用いて形成している。この場合、弾性接着部を、踏み板固定用の弾性接着剤を用いて簡単に形成することができる。
【0013】
第4の発明の階段の壁際構造は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記階段は、前記複数の踏み板を支持する階段下地を有し、前記階段下地は、前記壁部に対して非固定の状態で設けられている。
【0014】
踏み板を支持する階段下地が壁部に対して非固定とされている階段では、階段の上り下りの際、踏み板(ひいては階段)が壁部に対して変位し易く、音鳴りが発生し易いと考えられる。その点、第4の発明では、かかる階段構造に第1の発明を適用しているため、かかる構成であっても、音鳴りの発生を好適に抑制することができる。
【0015】
第5の発明の階段壁際構造の構築方法は、第2の発明の階段の壁際構造を構築する構築方法であって、前記階段は、前記複数の踏み板を支持する階段下地を有し、前記踏み板を前記階段下地に設置する前に、前記壁部の壁面に前記弾性接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記接着剤塗布工程の後、前記踏み板を前記階段下地に設置することにより、前記踏み板と前記壁部との間に前記弾性接着剤を介在させる踏み板設置工程と、前記踏み板設置工程の後、前記弾性接着剤を固化させることにより前記弾性接着部を形成する接着剤固化工程と、を備え、前記接着剤塗布工程では、前記隙間の幅方向における前記弾性接着剤の寸法が前記隙間の幅よりも大きくなるように前記弾性接着剤を塗布し、前記踏み板載置工程では、前記踏み板の下面により前記弾性接着剤の一部を下方に押しやりながら前記踏み板を設置することで、前記弾性接着剤の一部を前記踏み板の下面側に配置し、前記接着剤固化工程により、前記踏み板の下面側に配置された前記一部が前記支持部とされる。
【0016】
第5の発明によれば、接着剤塗布工程、踏み板設置工程及び接着剤固化工程が行われることにより、壁部と踏み板との隙間に弾性接着部が形成される。具体的には、接着剤塗布工程では、上記隙間の幅方向における弾性接着剤の寸法が上記隙間の幅よりも大きくなるように、弾性接着剤が塗布される。また、踏み板設置工程では、踏み板の下面により弾性接着剤の一部を下方に押しやりながら踏み板が設置されることで、弾性接着剤の一部が踏み板の下面側に配置される。そして、その下面側に配置された弾性接着剤の一部が、接着剤固化工程により、踏み板を下方から支持する支持部とされる。これにより、支持部を有する弾性接着部を好適に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】階段の構成を示す斜視図。
図2】階段の縦断面図。
図3】階段の壁際構造を示す縦断面図であり、図2のA-A線断面図に相当する。
図4図3のB-B線断面図。
図5】階段の壁際構造を構築する際の手順を説明するための図。
図6】階段の壁際構造を構築する際の手順を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は階段10の構成を示す斜視図、図2は階段10の縦断面図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、住宅等の建物には、階段10が設けられている。階段10は、複数の踏み板11と、複数の蹴込み板12と、各踏み板11を下方から支持する階段下地13とを有している。踏み板11及び蹴込み板12は木製であり、長方形板状に形成されている。
【0020】
階段下地13は、各踏み板11の並ぶ方向に延びる左右一対の桁部14と、各桁部14に架け渡されて設けられた複数の支持フレーム15とを有する。各桁部14は、鋼製の長尺材からなり、階段10の左右方向(換言すると階段10の幅方向)の両端側にそれぞれ配置されている。また、各支持フレーム15は、左右方向に延びる鋼製の長尺材からなり、各桁部14にそれぞれ固定されている。各支持フレーム15は、踏み板11ごとに設けられており、それぞれ踏み板11が載置される載置板部16を有している。載置板部16の上面17(支持フレーム15の上面17でもある)は、踏み板11が載置される載置面である。踏み板11は、載置板部16の上面17に載置された状態で当該載置板部16に固定されている。なお、図示は省略するが、階段下地13は、建物の構造体(梁や柱等)に固定金具を介して固定されている。
【0021】
階段10の側方には壁部20が設けられている。壁部20は、階段10を挟んだ左右両側に配置されている。各壁部20は、石膏ボードからなる壁面材を含んで構成されている。また、階段10の階段下地13(ひいては階段10)は、各壁部20からそれぞれ離間して配置され、各壁部20に対して非固定の状態とされている。
【0022】
壁部20には、長尺板状の階段巾木21,22が取り付けられている。階段巾木21,22には、踏み板11の上面に沿って設けられた横巾木21と、蹴込み板12の前面に沿って設けられた縦巾木22とがある。なお、横巾木21が、特許請求の範囲に記載された「階段巾木」に相当する。
【0023】
続いて、階段10の壁際構造について図3及び図4に基づき説明する。図3は、階段10の壁際構造を示す縦断面図であり、図2のA-A線断面図に相当する。また、図4は、図3のB-B線断面図である。
【0024】
図3及び図4に示すように、踏み板11は、支持フレーム15の上面17に接着層25を介して接着固定されている。接着層25は、支持フレーム15の上面17の略全域に亘って設けられている。接着層25は、弾性接着剤26により形成されている。弾性接着剤26は、例えばウレタン樹脂系の弾性接着剤とされている。但し、弾性接着剤26は、シリコン樹脂系や変性シリコン樹脂系等、ウレタン樹脂系以外の弾性接着剤であってもよい。
【0025】
踏み板11は、その一部が支持フレーム15の長手方向(左右方向)の端部よりも同方向に延出した延出部11aとなっている。延出部11aは壁部20から離間しており、その延出部11aと壁部20との間には所定の隙間24が形成されている。この隙間24の幅Wは所定の大きさに設定されており、例えば1~2mm程度とされている。
【0026】
踏み板11(延出部11a)と壁部20との隙間24には、弾性接着剤26により形成された弾性接着部28が介在されている。弾性接着部28は、各踏み板11ごとに設けられている。この弾性接着部28により踏み板11と壁部20とが接着されている。弾性接着部28は、弾性接着剤26が固化されることにより形成されたゴム状弾性体である。本実施形態では、弾性接着部28が、接着層25を形成する弾性接着剤26と同じ弾性接着剤26を用いて形成されている。そのため、ここでは、弾性接着部28を形成する弾性接着剤26と、接着層25を形成する弾性接着剤26とに同じ符号「26」を付している。
【0027】
弾性接着部28は、踏み板11の前後方向(換言すると踏み板11の幅方向)に沿って連続して延びている。弾性接着部28は、その前端部が上記踏み板11の前端側に配置(接続)された蹴込み板12よりも後方に位置している。また、弾性接着部28は、その一部が踏み板11と壁部20との隙間24から下方にはみ出したはみ出し部29となっている。はみ出し部29は、弾性接着部28の長さ方向全体に亘って設けられている。
【0028】
はみ出し部29の一部は、踏み板11の延出部11aの下面側に配置され、延出部11aを下方から支持する支持部31となっている。支持部31は、延出部11aの下面に接着されている。なお、支持部31(はみ出し部29)は、支持フレーム15から離間している。
【0029】
続いて、上述した階段10の壁際構造を構築する際の手順について図5及び図6に基づき説明する。図5及び図6は、階段10の壁際構造を構築する際の手順を説明するための図である。なお、ここでは、各壁部20と階段10の階段下地13とがあらかじめ設置されているものとする。
【0030】
階段10を構築する際には、階段下地13に各踏み板11と各蹴込み板12とを順次組み付けていく。例えば、階段の上側から下側に向かって順に組み付けていく。ここで以下では、階段下地13に踏み板11を組み付ける際の手順について詳しく説明する。
【0031】
まず、図5(a)に示すように、階段下地13の支持フレーム15の上面17に踏み板11を仮載置し、その仮載置状態で壁部20の壁面20aに踏み板11の上面に沿って線を引く線引き工程を行う。線引き工程では、鉛筆等の線引き具Sを用いて線を引く。具体的には、この工程では、踏み板11の上面と同じ高さ位置に線を引く。線引き工程の後、支持フレーム15の上面17から踏み板11を取り外す。なお、図5(b)には、線引きされた線引き位置Eを示している。
【0032】
続いて、図5(b)に示すように、壁部20の壁面20aに弾性接着剤26(以下、弾性接着剤26aという)を塗布する第1接着剤塗布工程を行う。この工程では、壁面20aのうち、踏み板11が支持フレーム15の上面17に設置された状態で当該踏み板11(詳しくは踏み板11の端面)と対向する領域Kに弾性接着剤26aを塗布する。この場合、弾性接着剤26aを領域Kの前後方向に沿って塗布し、詳しくは領域Kの前後方向の略全域に亘って塗布する。なお、第1接着剤塗布工程が接着剤塗布工程に相当する。
【0033】
第1接着剤塗布工程では、弾性接着剤26aが線引き工程により線引きした線引き位置E(つまり、踏み板11の上面位置)を上側に越えないようにして、弾性接着剤26aを壁面20aに塗布する。詳しくは、弾性接着剤26aの上端が線引き位置Eよりも下方に位置するように弾性接着剤26aを塗布する。
【0034】
第1接着剤塗布工程では、踏み板11と壁部20との間の隙間24の幅W(図3参照)よりも、当該隙間24の幅方向における弾性接着剤26aの寸法Dが大きくなるよう、弾性接着剤26aを壁面20aに塗布する(D>W)。詳しくは、弾性接着剤26aの上記寸法Dが、上記隙間24の幅Wの2倍以上となるように弾性接着剤26aを塗布する。また、弾性接着剤26aの上記寸法Dは、壁部20と支持フレーム15(上面17)との離間寸法Lよりも小さくされている。
【0035】
続いて、支持フレーム15の上面17に弾性接着剤26(以下、弾性接着剤26bという)を塗布する第2接着剤塗布工程を行う。この工程では、第1接着剤塗布工程で用いた弾性接着剤26aと同じ弾性接着剤26bを用いて塗布を行う。なお、この工程では、支持フレーム15の上面17に代えて、又は加えて、踏み板11の下面に弾性接着剤26bを塗布してもよい。また、第2接着剤塗布工程は第1接着剤塗布工程の後に行ってもよいし、先に行ってもよい。また、第2接着剤塗布工程を第1接着剤塗布工程と並行して行ってもよい。
【0036】
続いて、図6に示すように、踏み板11を支持フレーム15の上面17に設置する踏み板設置工程を行う。この工程により、踏み板11と支持フレーム15の上面17との間に弾性接着剤26bが介在されるとともに、踏み板11と壁部20との間の隙間24に弾性接着剤26aが介在される。また、踏み板設置工程では、踏み板11を支持フレーム15の上面17に設置する際、壁面20aに塗布された弾性接着剤26aの一部を踏み板11の下面により下方に押しやりながら設置する。これにより、弾性接着剤26aの一部は上記隙間24から下方にはみ出し、そのはみ出した一部が踏み板11の下面側に配置される。
【0037】
続いて、弾性接着剤26aを固化させることにより弾性接着部28を形成する接着剤固化工程を行う。この工程により、弾性接着部28を介して踏み板11と壁部20とが接着される(図3参照)。また、この工程では、踏み板11の下面側に配置されていた弾性接着剤26aの一部が支持部31となる。
【0038】
接着剤固化工程では、弾性接着剤26bを固化させることにより接着層25を形成する。これにより、接着層25を介して踏み板11が支持フレーム15の上面17に接着固定される。
【0039】
以上が、踏み板11を組み付ける際の手順についての説明である。各踏み板11及び各蹴込み板12を階段下地13に組み付けた後、壁部20の壁面20aに横巾木21及び縦巾木22を取り付ける巾木取付工程を行う。この工程では、横巾木21及び縦巾木22を接着剤等を用いて順次、壁部20に取り付けていく。以上により、階段10の壁際構造が構築され、一連の作業が終了する。
【0040】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0041】
階段10の踏み板11と壁部20との間の隙間24に弾性接着剤26により形成された弾性接着部28が介在されており、その弾性接着部28を介して踏み板11と壁部20とが接着されている。かかる構成では、階段10の上り下りの際に踏み板11が振動した場合に、壁部20に対する踏み板11の変位を緩和(抑制)することができる。そのため、壁部20に取り付けられた横巾木21と踏み板11との擦れ合いを抑制することができる。これにより、階段10の上り下りに際し音鳴りの発生を抑制することができる。また、踏み板11と壁部20との間に弾性接着部28を介在させるだけで音鳴りを抑制することができるため、簡易な構成で音鳴り抑制を図ることができる。
【0042】
また、踏み板11と壁部20との隙間24に弾性接着部28が介在されていることで、踏み板11と壁部20とが擦れ合うのを確実に抑制することができる。そのため、かかる両者11,20の擦れ合いによる音鳴りの発生を確実に抑制することができる。
【0043】
弾性接着部28が、踏み板11と壁部20と間の隙間24から下方にはみ出たはみ出し部29を有している。はみ出し部29の一部は、踏み板11の下面側に配置され踏み板11を下方から支持する支持部31となっている。かかる構成によれば、階段10の上り下りの際に踏み板11が振動した場合に、壁部20に対する踏み板11の変位をより一層緩和(抑制)することができる。そのため、音鳴りの発生をより一層抑制することができる。
【0044】
踏み板11は、階段下地13の支持フレーム15の上面17に弾性接着剤26により形成された接着層25を介して接着固定されている。そして、上記の実施形態では、弾性接着部28を、接着層25を形成する弾性接着剤26と同じ弾性接着剤26を用いて形成している。この場合、弾性接着部28を、踏み板11固定用の弾性接着剤26を用いて簡単に形成することができる。
【0045】
特に、接着層25を形成する弾性接着剤26も、弾性接着部28を形成する弾性接着剤26も、踏み板11を支持フレーム15の上面17に設置する直前に塗布されるものであるため、これらの弾性接着剤26として同じものを用いるのは、作業的にとりわけ都合がよいといえる。
【0046】
踏み板11を支持する階段下地13が壁部20に対して非固定とされている階段10では、階段10の上り下りの際、踏み板11(ひいては階段10)が壁部20に対して変位し易く、音鳴りが発生し易いと考えられる。その点、上記の実施形態では、かかる階段10に弾性接着部28を用いた本発明を適用しているため、かかる構成であっても、音鳴りの発生を好適に抑制することができる。
【0047】
第1接着剤塗布工程では、隙間24の幅方向における弾性接着剤26の寸法が隙間24の幅よりも大きくなるように、弾性接着剤26が塗布される。また、踏み板設置工程では、踏み板11の下面により弾性接着剤26の一部を下方に押しやりながら踏み板11が設置されることで、弾性接着剤26の一部が踏み板11の下面側に配置される。そして、その下面側に配置された弾性接着剤26の一部が、接着剤固化工程により、踏み板11を下方から支持する支持部31とされる。これにより、支持部31を有する弾性接着部28を好適に形成することができる。
【0048】
踏み板11を支持フレーム15の上面17に仮載置した状態で、壁部20の壁面20aに踏み板11の上面に沿って線引きする線引き工程を行うようにした。そして、仮置きした踏み板11を支持フレーム15の上面17から取り外した後、第1接着剤塗布工程を行うようにした。この塗布工程では、弾性接着剤26が線引き位置Eを上側に越えないように、弾性接着剤26を壁面20aに塗布するようにした。これにより、その後の踏み板設置工程を行う際に、弾性接着剤26が踏み板11と壁部20との間の隙間24から上方にはみ出てしまうのを抑制することができる。そのため、はみ出た弾性接着剤26(ひいては弾性接着部28)により階段壁際の見栄えが損なわれることを回避することができる。
【0049】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0050】
・弾性接着部28の全体が踏み板11と壁部20との間の隙間24に位置するように、弾性接着部28を当該隙間24に介在させるようにしてもよい。この場合、弾性接着部28がはみ出し部29を有しない構成となる。
【0051】
・上記実施形態では、踏み板11と壁部20との間の隙間24に弾性接着剤26を介在させるに際し、まず壁部20に弾性接着剤26を塗布し、その後踏み板11を支持フレーム15の上面17に設置することで上記隙間24に弾性接着剤26を介在させるようにした。しかしながら、上記隙間24に弾性接着剤26を介在させる方法は必ずしもこれに限らない。例えば、まず踏み板11(詳しくは踏み板11の壁部20側の端面)に弾性接着剤26を塗布し、その後踏み板11を支持フレーム15の上面17に設置することにより上記隙間24に弾性接着剤26を介在させてもよい。また、まず踏み板11を支持フレーム15の上面17に設置し、その後、踏み板11と壁部20との隙間24に弾性接着剤26を注入することで当該隙間24に弾性接着剤26を介在させるようにしてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、階段下地13が壁部20に対して非固定とされている階段10に本発明を適用したが、階段下地が壁部20に固定されている階段に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…階段、11…踏み板、13…階段下地、17…載置面としての上面、20…壁部、21…階段巾木としての横巾木、24…隙間、25…接着層、26…弾性接着剤、28…弾性接着部、29…はみ出し部、31…支持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6