IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コネクタ 図1
  • 特開-コネクタ 図2
  • 特開-コネクタ 図3
  • 特開-コネクタ 図4
  • 特開-コネクタ 図5
  • 特開-コネクタ 図6
  • 特開-コネクタ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008371
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/50 20110101AFI20250109BHJP
【FI】
H01R24/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110492
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】浅野 泰徳
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AA16
5E223AB21
5E223AB41
5E223AB43
5E223AC11
5E223BA12
5E223BA15
5E223BA17
5E223CA13
5E223CA21
5E223CB22
5E223CC09
5E223CD01
5E223DB08
5E223EA01
5E223GA08
5E223GA52
5E223GA72
(57)【要約】
【課題】コネクタ用導体を相手側コネクタに接続する際に、所望の接触荷重を得られるようにすることを目的とする。
【解決手段】コネクタ60は、コネクタ用導体80を備えるコネクタであって、コネクタ用導体は、筒部82と、筒部の開口縁から延出する弾性片90、96と、を含み、筒部は、筒形状をなす筒形成部86と、筒形成部における周方向の第1端部84と、第1端部に重ね合わされると共に筒形成部における周方向の第2端部88と、第1端部および第2端部をかしめて固定するかしめ固定部83と、を有し、筒部には、筒部の径方向に貫通する変形吸収開口82Sが形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ用導体を備えるコネクタであって、
前記コネクタ用導体は、筒部と、前記筒部の開口縁から延出する弾性片と、を含み、
前記筒部は、
筒形状をなす筒形成部と、
前記筒形成部における周方向の第1端部と、
前記第1端部に重ね合わされると共に前記筒形成部における周方向の第2端部と、
前記第1端部および前記第2端部をかしめて固定するかしめ固定部と、
を有し、
前記筒部には、前記筒部の径方向に貫通する変形吸収開口が形成されている、コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記筒形成部および前記第1端部は同径の筒形状をなすように連なっており、
前記第2端部は前記筒部の径方向において前記第1端部に重ね合わされており、
前記変形吸収開口は、前記筒部の周方向において、前記第1端部における前記かしめ固定部の位置よりも、前記筒形成部における周方向の中央寄りの位置に設けられている、コネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタであって、
前記変形吸収開口は、前記筒部の周方向において、前記第1端部と前記筒形成部との境界に位置する、コネクタ。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のコネクタであって、
前記第1端部のうち前記開口縁側の部分が前記筒形成部に連なっている、コネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のコネクタであって、
前記弾性片は、前記筒形成部のうち前記第1端部と連なる端部分において前記開口縁から延出する端部弾性片を含み、
前記端部弾性片は、相手側導体に接する接点部を有し、
前記接点部は、前記筒部の径方向の内側および外側の一方側を向いており、
前記第2端部は、前記第1端部に対して、前記筒部の径方向における前記接点部の向きとは逆側に重ね合わされている、コネクタ。
【請求項6】
請求項2または請求項3に記載のコネクタであって、
前記第2端部は前記第1端部の内側に重ね合わされて、前記筒形成部よりも内周側に突出している、コネクタ。
【請求項7】
請求項2または請求項3に記載のコネクタであって、
前記変形吸収開口は、スリット状の開口形状に形成されている、コネクタ。
【請求項8】
請求項7に記載のコネクタであって、
前記変形吸収開口は、前記筒部の周方向に交差する方向に沿って延びている、コネクタ。
【請求項9】
請求項8に記載のコネクタであって、
前記変形吸収開口は、前記筒部の中心軸の方向において、前記筒部のうち前記開口縁とは反対側の基端側開口縁から前記かしめ固定部を越える位置まで延びている、コネクタ。
【請求項10】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコネクタであって、
内導体と、
前記内導体が収容される絶縁体と、
をさらに備え、
前記筒部内には前記絶縁体が収容されている、コネクタ。
【請求項11】
請求項10に記載のコネクタであって、
前記絶縁体の外周面に凹みが形成され、前記第2端部は前記第1端部よりも前記筒部の内周側に位置し、前記第2端部は前記凹みに嵌っている、コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コンタクトと、コンタクトを保持する合成樹脂製の絶縁体と、さらに絶縁体を収容する金属製のシェルとを備える同軸コネクタを開示している。金属製のシェルは、相手側の雄型コネクタと嵌合する嵌合部を有し、その嵌合部は略円筒状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-297491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の金属製のシェルは、筒状の嵌合部を含むコネクタ用導体として機能し得る。このようなコネクタ用導体を相手側の雄型コネクタに接続する際に所望の接触荷重を得られるようにすることが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、コネクタ用導体を相手側コネクタに接続する際に、所望の接触荷重を得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、コネクタ用導体を備えるコネクタであって、前記コネクタ用導体は、筒部と、前記筒部の開口縁から延出する弾性片と、を含み、前記筒部は、筒形状をなす筒形成部と、前記筒形成部における周方向の第1端部と、前記第1端部に重ね合わされると共に前記筒形成部における周方向の第2端部と、前記第1端部および前記第2端部をかしめて固定するかしめ固定部と、を有し、前記筒部には、前記筒部の径方向に貫通する変形吸収開口が形成されている、コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、コネクタ用導体を相手側コネクタに接続する際に、所望の接触荷重を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態に係る同軸コネクタを備える機器を示す斜視図である。
図2図2図1のII-II線断面図である。
図3図3は同軸コネクタを示す斜視図である。
図4図4は同軸コネクタを示す分解斜視図である。
図5図5は同軸コネクタを示す底面図である。
図6図6は外導体を示す斜視図である。
図7図7図5のVII-VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のコネクタは、次の通りである。
【0011】
(1)コネクタ用導体を備えるコネクタであって、前記コネクタ用導体は、筒部と、前記筒部の開口縁から延出する弾性片と、を含み、前記筒部は、筒形状をなす筒形成部と、前記筒形成部における周方向の第1端部と、前記第1端部に重ね合わされると共に前記筒形成部における周方向の第2端部と、前記第1端部および前記第2端部をかしめて固定するかしめ固定部と、を有し、前記筒部には、前記筒部の径方向に貫通する変形吸収開口が形成されている、コネクタである。
【0012】
第1端部および第2端部をかしめて固定する際に、かしめによる変形の影響が筒部のうちかしめ固定部の周りに波及することが想定される。この場合に、筒部の筒形状が部分的に歪んだり、筒部の径が大きくなってしまったりする可能性がある。このコネクタのように、筒部に、変形吸収開口が形成されていると、かしめによる変形の影響が変形吸収開口で吸収される。このため、筒部の筒形状が所望の形状に保たれ易い。これにより、筒部による弾性片の支持位置が安定し、コネクタ用導体を相手側コネクタに接続する際に、所望の接触荷重を得易い。
【0013】
(2)(1)のコネクタであって、前記筒形成部および前記第1端部は同径の筒形状をなすように連なっており、前記第2端部は前記筒部の径方向において前記第1端部に重ね合わされており、前記変形吸収開口は、前記筒部の周方向において、前記第1端部における前記かしめ固定部の位置よりも、前記筒形成部における周方向の中央寄りの位置に設けられていてもよい。
【0014】
筒形成部および第1端部が同径の筒形状をなすように連なっていると、第1端部に対するかしめの影響が、筒形成部に波及し易い可能性がある。変形吸収開口が、第1端部におけるかしめ固定部の位置よりも、筒形成部における周方向の中央寄りの位置に設けられていると、第1端部に対するかしめの影響が筒形成部のうち第2端部寄りの部分に波及し難くなり、筒形成部の筒形状が所望の形状に保たれ易い。
【0015】
(3)(2)のコネクタであって、前記変形吸収開口は、前記筒部の周方向において、前記第1端部と前記筒形成部との境界に位置してもよい。
【0016】
これにより、第1端部に対するかしめの影響が筒形成部により波及し難くなり、筒形成部の筒形状が所望の形状に保たれ易い。
【0017】
(4)(2)または(3)のコネクタであって、前記第1端部のうち前記開口縁側の部分が前記筒形成部に連なっていてもよい。
【0018】
この場合、第1端部のうち開口縁側の部分が筒形成部に連なっているため、第1端部近くで筒形成部の開口縁から延出する弾性片が一定位置に保たれ易い。
【0019】
(5)(4)のコネクタであって、前記弾性片は、前記筒形成部のうち前記第1端部と連なる端部分において前記開口縁から延出する端部弾性片を含み、前記端部弾性片は、相手側導体に接する接点部を有し、前記接点部は、前記筒部の径方向の内側および外側の一方側を向いており、前記第2端部は、前記第1端部に対して、前記筒部の径方向における前記接点部の向きとは逆側に重ね合わされていてもよい。
【0020】
この場合、第2端部は、第1端部に対して、接点部の向きとは逆側に重ね合わされているため、第2端部は、接点部を相手側導体に押付ける力を支えることができ、接点部を相手側導体に押付け易い。
【0021】
(6)(2)から(5)のいずれか1つのコネクタであって、前記第2端部は前記第1端部の内側に重ね合わされて、前記筒形成部よりも内周側に突出していてもよい。
【0022】
このように、第2端部を、筒形成部よりも内周側に突出させることで、当該第2端部を、筒部内の部材に対して位置決めし易い。
【0023】
(7)(2)から(6)のいずれか1つのコネクタであって、前記変形吸収開口は、スリット状の開口形状に形成されていてもよい。
【0024】
この場合、かしめによる変形の影響が、スリット状の変形吸収開口の長手方向全体で吸収される。このため、筒部の筒形状がより所望の形状に保たれ易い。
【0025】
(8)(7)のコネクタであって、前記変形吸収開口は、前記筒部の周方向に交差する方向に沿って延びていてもよい。
【0026】
これにより、かしめによる変形の影響が、筒部の周方向に交差する方向に沿って延びるスリット状の変形吸収開口の長手方向全体で吸収される。このため、筒部の大きさや筒形状の曲り具合の均一性に影響を与え難い。筒部による弾性片の支持位置が安定し、コネクタ用導体を相手側コネクタに接続する際に、所望の接触荷重を得易い。
【0027】
(9)(8)のコネクタであって、前記変形吸収開口は、前記筒部の中心軸の方向において、前記筒部のうち前記開口縁とは反対側の基端側開口縁から前記かしめ固定部を越える位置まで延びていてもよい。
【0028】
この場合、変形吸収開口は、中心軸方向において、筒部の基端側開口縁からかしめ固定部を越える位置まで延びているため、かしめによって第1端部または第2端部が変形しても、当該変形が変形吸収開口を境界として他の部分に波及し難い。また、変形吸収開口は、かしめ固定部を越える位置まで延びているので、かしめによる第1端部または第2端部の変形が周方向に波及しにくい。
【0029】
(10)(1)から(9)のいずれか1つのコネクタであって、内導体と、前記内導体が収容される絶縁体と、をさらに備え、前記筒部内には前記絶縁体が収容されていてもよい。
【0030】
この場合、内導体と、内導体が収容される絶縁体と、絶縁体を収容する外導体としてコネクタ用導体を備えるコネクタにおいて、コネクタ用導体を相手側の導体に良好に電気的に接続できる。
【0031】
(11)(10)のコネクタであって、前記絶縁体の外周面に凹みが形成され、前記第2端部は前記第1端部よりも前記筒部の内周側に位置し、前記第2端部は前記凹みに嵌っていてもよい。
【0032】
これにより、絶縁体に対して外導体が位置決めされ易い。
【0033】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0034】
[実施形態]
以下、実施形態に係るコネクタについて説明する。本実施形態では、コネクタが同軸コネクタである例が説明される。なお、同軸コネクタとは、外導体とその内部の内導体が同軸上に位置するコネクタである。コネクタが同軸コネクタであることは必須ではなく、例えば、外導体内に複数の内導体が位置していてもよい。
【0035】
<機器の全体構成について>
同軸コネクタ60を備える機器10の例について説明する。図1は同軸コネクタ60を備える機器10を示す斜視図である。図2図1のII-II線断面図である。
【0036】
機器10は、例えば、カメラ機器である。カメラ機器は、例えば、車載用の機器である。機器10は、カメラ機器でなくてもよい。
【0037】
機器10は、ケース12と、電気部品20とを備える。ケース12内に電気部品20が収容されている。電気部品20に同軸コネクタ60が固定されている。
【0038】
ケース12は、第1ケース13と、第2ケース14とを備えている。第1ケース13および第2ケース14は、例えば、樹脂によって形成される。第1ケース13と第2ケース14とが合体することで、電気部品20を収容する直方体箱状のケース12が構成される。機器10がカメラ機器である場合、第1ケース13は撮像用のレンズまたは窓を有しており、第2ケース14が外部接続用同軸コネクタ30を有していることが想定される。
【0039】
外部接続用同軸コネクタ30は、電気部品20と、外部の電気部品とを接続するための同軸コネクタである。例えば、外部接続用同軸コネクタ30は、外部の電気部品に接続されたケーブルが接続される同軸コネクタである。外部接続用同軸コネクタ30が接続されるケーブルは、例えば、同軸ケーブルである。
【0040】
より具体的には、ケース12の底部15に保持筒部16が突設されている。保持筒部16は、円筒であり、底部15の中央部から外側に突出している。保持筒部16の内側開口は第2ケース14内に開口し、保持筒部16の外側開口は第2ケース14外に開口している。保持筒部16の中心軸Xに沿った方向(軸方向)の中間部に保持仕切部17が形成されている。本実施形態では、保持筒部16の中心軸Xに沿った方向の中間部であって内側開口寄りの位置に保持仕切部17が形成されている。保持仕切部17は、保持筒部16のうち内側開口側の空間と、外側開口側の空間とを仕切っている。保持仕切部17に保持孔17hが形成されており、当該保持孔17hに外部接続用同軸コネクタ30が挿入されて保持される。
【0041】
本実施形態では、保持筒部16の外周部に、ケーブルの端部に取付けられたケーブルコネクタを保持するための係止突部18aが形成されている。係止突部18aが形成されることは必須ではない。
【0042】
外部接続用同軸コネクタ30は、外部接続用内導体32と、外部接続用絶縁体34と、外部接続用外導体36とを備える。
【0043】
外部接続用内導体32は、細長い棒状に形成されており、金属等の導電材料によって形成されている。外部接続用絶縁体34は、樹脂等の絶縁体によって形成されており、外部接続用内導体32の周りを囲んでいる。本実施形態では、外部接続用絶縁体34は、誘電体である。外部接続用外導体36は、金属等の導電材料によって形成されている。外部接続用外導体36は、外部接続用絶縁体34の周りを囲む筒状に形成されている。
【0044】
電気部品20は、例えば、基板に電子部品が実装された実装基板である。機器10がカメラ機器である場合、電気部品20は、回路基板21と、当該回路基板21に実装された撮像素子22であることが想定される。撮像素子22は、第1ケース13の撮像用のレンズまたは窓に対向し、当該レンズまたは窓を回して外側景色を撮像する。以下、撮像素子22が向く第1ケース13側を前側、それとは反対側の第2ケース14側を後側という場合がある。
【0045】
本実施形態では、同軸コネクタ60は、回路基板21のうち撮像素子22とは反対側の面に位置している。同軸コネクタ60は、回路基板21に固定され、当該回路基板21から上記外部接続用同軸コネクタ30に向けて突出している。同軸コネクタ60は、基板側同軸コネクタである。同軸コネクタ60は、例えば、内導体62と、絶縁体70と、外導体80とを備える。内導体62に後述する可動側内導体42が接続される。絶縁体70は、内導体62の周りを囲んでいる。外導体80は、絶縁体70の周りを囲んでいる。つまり、内導体62と絶縁体70と外導体80とは、この順で中心から外周側に向って同心円状に配置される。
【0046】
同軸コネクタ60と外部接続用同軸コネクタ30とが、中継コネクタ40を介して接続される。中継コネクタ40は、例えば、可動側内導体42と、可動側絶縁体44と、可動側外導体46とを備える。可動側内導体42の周囲を可動側絶縁体44が囲んでいる。本実施形態では、可動側絶縁体44は、誘電体である。可動側絶縁体44の周囲を可動側外導体46が囲んでいる。可動側内導体42は内導体62に接続される相手側内導体の一例であり、可動側外導体46は外導体80に接続される相手側外導体の一例であり、中継コネクタ40は同軸コネクタ60に接続される相手側同軸コネクタの一例である。
【0047】
可動側内導体42が内導体62に挿入接続されると共に、外導体80が可動側外導体46に挿入接続された状態で、中継コネクタ40が同軸コネクタ60に接続されている。この状態で、中継コネクタ40は、同軸コネクタ60からさらに外部接続用同軸コネクタ30に向けて突出している。外部接続用内導体32が可動側内導体42に挿入接続されると共に、可動側外導体46が外部接続用外導体36に挿入接続されることで、中継コネクタ40が外部接続用同軸コネクタ30に接続される。これにより、中継コネクタ40が、同軸コネクタ60と外部接続用同軸コネクタ30とを中継接続する。
【0048】
これにより、外部からのケーブルが、当該外部接続用同軸コネクタ30に接続されることで、当該ケーブルの接続先である外部の電気部品と、ケース12内の電気部品20とが電気的に接続される。
【0049】
上記中継コネクタ40と同軸コネクタ60との接続状態において、可動側内導体42は内導体62に対して傾いた状態で挿入接続される。また、外導体80は、可動側外導体46に対して傾いた状態で挿入接続される。つまり、中継コネクタ40は、同軸コネクタ60に対して傾いた状態で接続され得る(図2の矢印P1参照)。これにより、本機器10の組付作業時または完成状態において、同軸コネクタ60と外部接続用同軸コネクタ30とが同軸上で対向する位置からずれていたとしても(図2の矢印P2参照)、同軸コネクタ60に対して中継コネクタ40が傾くことで、当該位置ずれが吸収される。
【0050】
<同軸コネクタについて>
同軸コネクタ60について具体的に説明する。図3は同軸コネクタ60を示す斜視図である。図4は同軸コネクタ60を示す分解斜視図である。図5は同軸コネクタ60を示す底面図である。
【0051】
上記のように、同軸コネクタ60は、例えば、内導体62と、絶縁体70と、外導体80とを備える。
【0052】
内導体62は、細長い導電性部材である(図2および図4参照)。本実施形態では、内導体62は、金属板をプレス加工することによって形成されている。より具体的には、内導体62は、基端筒部64と、複数の弾性片66とを含む。
【0053】
基端筒部64は、筒状、より具体的には、円筒状に形成されている。基端筒部64は、絶縁体70の基端側に収容される。なお、同軸コネクタ60において先端とは可動側内導体42が接続される側の端であり、基端とは当該先端とは反対側の端、ここでは、回路基板21を向く側の端である。
【0054】
基端筒部64の基端側縁から基端筒部64の内側に向けて延長片64aが延出している。延長片64aは、例えば、回路基板21の回路に半田付される。
【0055】
基端筒部64は、周方向において部分的に外周側に突出する位置決め凸部64Pを有していてもよい。当該位置決め凸部64Pが絶縁体70内の凹部に嵌ることで、絶縁体70に対する内導体62の位置決めがなされてもよい。
【0056】
基端筒部64に係止突部64bが突設されている。係止突部64bは、基端筒部64の外周部から部分的に突出している。係止突部64bは、基端筒部64の先端から基端に向って徐々に突出寸法が大きくなる形状に形成されている。基端筒部64が絶縁体70内に挿入された状態で、係止突部64bが絶縁体70の内周部に引っ掛って、内導体62が絶縁体70から抜止め状態で保持される。
【0057】
複数の弾性片66は、基端筒部64の先端側開口からさらに先端側に突出している。好ましくは、複数の弾性片66は、筒部72の中心軸X周りに等間隔で位置する。本実施形態では、2つの弾性片66が基端筒部64の中心軸X周りで対向している。
【0058】
中継コネクタ40の可動側内導体42は、2つの弾性片66の先端側から当該2つの弾性片66間に向けて挿入される。可動側内導体42が、当該2つの弾性片66によって挟込まれた状態となることで、可動側内導体42が内導体62に接続される。
【0059】
絶縁体70は、樹脂等によって形成されている。誘電体は絶縁体の一種と把握でき、絶縁体70は、誘電体でもある。絶縁体70は、例えば、金型成形樹脂部品である。
【0060】
絶縁体70は、筒部72と、先端ガイド部76とを備える。
【0061】
筒部72は、内導体62を収容可能な筒状に形成されている。本実施形態では、筒部72は、円筒状に形成されており、その内部に円柱状空間が形成されている。当該円柱状空間内に、内導体が収容される。
【0062】
筒部72の外周面は、中心軸Xを中心とする円周面形状に形成されている。筒部72の外周側に外導体80が配置される。筒部72の外周部の周方向の一部に位置決め用の凹み72gが形成されている。凹み72gは、筒部72の周方向において互いに対向し合う一対の側面72g1と筒部72の基端側を向く面72g2とを有している(図4参照)。後述する第2端部88が当該凹み72gに嵌る。この状態で、第2端部88が一対の側面72g1と面72g2とによって位置規制される。これにより、絶縁体70に外嵌めされた外導体80が、当該絶縁体70に対して中心軸X周りに回転すること、および、先端側に移動することが規制される。
【0063】
筒部72の外周面には、複数(ここでは4つ)の細長い突状部72aが形成されている。各突状部72aは、中心軸Xと平行に延びている。複数の突状部72aは、筒部72の外周面において、中心軸X周りに均等間隔で位置していることが好ましい。突状部72aが、筒部82の内周面に対して周方向に分散した位置で接触する。筒部82に絶縁体70に係止する係止部82Pが形成されてもよい。
【0064】
先端ガイド部76は、筒部72の先端側に位置している。先端ガイド部76は、可動側内導体42を挿入可能な挿入孔77を有している。筒部72の中心軸Xは、挿入孔77の中心軸Xと一致している。
【0065】
挿入孔77の内周面は、筒部72内に向って徐々に縮径するテーパ状に形成されている。可動側内導体42の先端部が挿入孔77のテーパ状の内周面によって複数の弾性片66の間に向けて案内される。
【0066】
また、先端ガイド部76の外周部は、筒部72よりも外周側に突出している。先端ガイド部76の外周部に、基端側に向って徐々に拡径する外周側ガイド面78が形成されている。外周側ガイド面78は、可動側外導体46の筒形状部分を、外導体80の外側に案内する役割を果すことができる。
【0067】
先端ガイド部76のうち基端側を向く環状裏面は、筒部72の中心軸Xに対して直交するように延在している。後述する弾性片90、96は、環状裏面よりも基端側で、筒部72の径方向に弾性変形することができる。
【0068】
外導体80は、金属等の導電材料によって形成されおり、絶縁体70の周りを囲んでいる。外導体80は、例えば、金属板をプレス加工等することによって形成される。
【0069】
外導体80は、筒部82と、弾性片90、96とを備える。本実施形態では、外導体80は、弾性片として、端部弾性片90と付加弾性片96とを備える。
【0070】
筒部82は、内側に筒部72を配置可能な筒状に形成されている。筒部82のうち先端側開口縁から端部弾性片90および少なくとも1つの付加弾性片96が延出している。端部弾性片90および少なくとも1つの付加弾性片96は、筒部82の周方向において間隔をあけて並ぶ。本実施形態では、端部弾性片90は1つであり、付加弾性片96は7つである。これらの端部弾性片90および少なくとも1つの付加弾性片96が、筒部82の周方向において等間隔で並ぶ。
【0071】
筒部82内に絶縁体70の基端部が収容された状態で、これらの端部弾性片90および少なくとも1つの付加弾性片96は、先端ガイド部76と筒部82との間で、筒部72の周りを囲む。
【0072】
中継コネクタ40の可動側外導体46が先端ガイド部76の外周側ガイド面78によって、端部弾性片90および付加弾性片96の外周側に案内される。これにより、端部弾性片90および付加弾性片96が、可動側外導体46に対して内周側から接触し、外導体80と可動側外導体46とが接続される。
【0073】
<外導体について>
コネクタ用導体の一例である外導体80についてより具体的に説明する。図6は外導体80を示す斜視図である。図7図5のVII-VII線部分断面図である。
【0074】
図3から図7に示すように、外導体80は、筒部82と、筒部82の先端側の開口縁から延出する端部弾性片90および付加弾性片96とを備える。
【0075】
筒部82は、絶縁体70に外嵌めされる部分である。筒部82は、絶縁体70に対して一定位置に保持され、外導体80を絶縁体70に対して一定位置に支持する役割を果す。また、例えば、筒部82の基端側開口が回路基板21の回路、例えば、アース回路に半田付されていれば、可動側外導体46をアース回路に接地する役割を果すことができる。
【0076】
筒部82は、第1端部84と、筒形成部86と、第2端部88とを備える。
【0077】
筒形成部86は、筒形状をなしている。筒形成部86の周方向の一端側に第1端部84が連なっている。本実施形態では、筒形成部86が1周分の筒形状をなしている。また、筒形成部86は、第1端部84と連なった形態でも、1周分の筒形状をなす。
【0078】
本実施形態では、中心軸Xの方向において、筒形成部86の一端部の幅は、他端部よりも幅狭に形成されている。より具体的には、筒形成部86の一端部は、端部弾性片90が延出する側(開口縁側)のみで周方向に延在している。このため、筒形成部86の一端部は、端部弾性片90が延出する側(開口縁側)とは反対側では方形状に切り欠かれた形状とされている。
【0079】
第1端部84は、筒形成部86の一端部に対して端部弾性片90が延出する側(開口縁側)とは反対側に連なって、端部弾性片90が延出する側(開口縁側)とは反対側に延出している。つまり、第1端部84のうち開口縁側の部分が筒形成部86の一端部に連なっている。よって、筒形成部86と第1端部84とが1周分の筒形状をなした状態で、筒形成部86の一端部と第1端部84とが、筒形成部86の他端部とが筒部82の周方向において対向できる。
【0080】
第2端部88は、筒形成部86に対して第1端部84とは反対側に連なっている。第2端部88は、筒形成部86の周方向における他方の端部である。第2端部88は、筒部82の径方向において第1端部84に重ね合わされる。つまり、第1端部84と筒形成部86と第2端部88とは、1周の筒形状を越える形状に形成されており、当該1周を越えた分、筒部82の両端部が重ね合わされる。その重ね合わせ部分の一方が第1端部84であり、他方が第2端部88である。
【0081】
本実施形態では、第2端部88は、筒形成部86の他端部に対して弾性片90、96が延出する側とは反対側寄りの部分から周方向に沿って延出している。筒部82の中心軸Xの方向において、第1端部84の幅と第2端部88とは同じに設定されている。このため、第2端部88は、第1端部84に重なることができる。この状態で、筒部82の一端部82eには、第2端部88は重ね合わされておらず、筒部82の一端部82eは、筒部82の内周側に露出している。
【0082】
第2端部88は、第1端部84に対して内周側に重なってもよいし、外周側に重なってもよい。第2端部88は、第1端部84に対して接点部93aの向きとは逆側に重ね合わされていることが好ましい。本実施形態では、後述するように接点部93aは外周側を向いている。このため、第2端部88は、第1端部84の内周側に重なっている。
【0083】
上記とは逆に、弾性片が相手側導体に対して外周側から接触する場合、つまり、接点部が内周側を向く場合には、第2端部は第1端部に対して外周側に重なっていることが好ましい。
【0084】
本実施形態では、第1端部84と筒形成部86とは、同径の筒形状をなすように連なっている。つまり、第1端部84と筒形成部86とは、中心軸Xを中心として同じ曲率半径をなす形状に形成されている。第2端部88は、第1端部84の内側に重ね合わされて、筒形成部86よりも内周側に突出している。より具体的には、筒形成部86の一端部82eと第1端部84とは、中心軸Xの方向に沿って見て同じ弧を描いている。筒形成部86と第2端部88との間に段部87が形成されている。段部87の段差は、例えば、筒部82の厚み程度に設定される。第2端部88は、当該段部87を介して筒形成部86よりも内側に突出している。第2端部88は、筒部82の厚み分、第1端部84および筒形成部86に対して内周側に突出している。
【0085】
筒部82内に絶縁体70の筒部72が収容された状態で、第2端部88が筒部72の位置決め用の凹み72gに嵌り込む。この状態で、第2端部88が凹み72gの一対の側面72g1のいずれかに接触する範囲で、絶縁体70に対する外導体80の回転止がなされる。絶縁体70の外周方向における凹み72gの幅は、同方向における第2端部88の幅と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2端部88が凹み72gの面72g2に接触することで、絶縁体70の筒部72が外導体80の筒部82内に過挿入されることが抑制される。
【0086】
筒部82は、さらに、かしめ固定部83を備える。かしめ固定部83は、重ね合わされた第1端部84と第2端部88とをかしめて固定する部分である。かしめ固定部83は、第1端部84と第2端部88との少なくとも一方の塑性変形によって、第1端部84と第2端部88とを重ね合わせ状態に保つ。
【0087】
本実施形態では、第1端部84および第2端部88との一方に塑性変形によって凸部83aが形成され、他方に塑性変形によって凹部83bが形成されている。凸部83aが凹部83bに嵌り合うことによって、第1端部84と第2端部88とが重ね合わせ状態に保たれる。
【0088】
より具体的には、例えば、重ね合わされた第1端部84と第2端部88とが、凸部を有するプレス型と、凹部を有するプレス型との間に挟まれてプレスされる。すると、第1端部84および第2端部88の一部が、プレス型の凸部からプレス型の凹部に向けて同士に押出プレスされる。第1端部84および第2端部88に、嵌り合った凸部83aおよび凹部83bが同時にプレス成形される(図7参照)。例えば、第1端部84の外周面にプレス型の凸部が押付けられ、第2端部88の内周面にプレス型の凹部が配置される。プレス加工によって、第1端部84に、内周側に突出する凸部83aが形成される。また、第2端部88の外周面に凹部83bが形成される。第1端部84の凸部83aが第2端部88の凹部83bに嵌り込んで、第1端部84と第2端部88とが重ね合せ状態に保たれる。
【0089】
かかる接合構造は、例えば、スポットかしめと呼ばれる構造またはドローロックと呼ばれる構造であってもよい。
【0090】
筒部82に、筒部82の径方向に貫通する変形吸収開口82Sが形成されている。変形吸収開口82Sは、かしめ固定部83を形成する際のかしめによる変形の影響を吸収するための開口である。例えば、かしめ加工によって第1端部84が圧縮されると、第1端部84が圧縮によって伸びるように変形する可能性がある。当該変形が筒部82の全体に波及すると、筒部82の筒形状が歪んだり、筒部82の径が設計値よりも大きくなったりする可能性がある。変形吸収開口82Sは、かしめによる変形を吸収することで、かしめによる変形の影響が筒部82の全体に波及しないようにするための開口である。変形吸収開口82Sは、筒部82の部分的な変形によって伸びたり、変位したりした変形波及箇所を配置できる程度の空間を有することが好ましい。
【0091】
変形吸収開口82Sは、筒部82においてどの場所に形成されてもよい。変形吸収開口82Sが筒部82においてどの場所に形成されていても、変形部分が当該変形吸収開口内に配置されることになり、筒部82における変形原因箇所から他の部分に変形が波及することが抑制されるからである。
【0092】
好ましくは、本実施形態で説明するように、変形吸収開口82Sは、第1端部84におけるかしめ固定部83の位置よりも、筒形成部86における周方向の中央M(図6参照)寄りの位置に設けられる。これにより、第1端部84におけるかしめ固定部83を変形原因とする変形が、筒形成部86の他端側に波及していくことが抑制される。これにより、筒部82の筒形状が歪みの無い所定形状に保たれ易い。
【0093】
より好ましくは、本実施形態で説明するように、変形吸収開口82Sは、筒部82の周方向において、第1端部84と筒部82との境界に位置する。このため、第1端部84に対するかしめの影響が、筒形成部86に波及し難くなる。これにより、筒形成部86が初期の円筒形状に保たれ易く、筒部82の筒形状が歪みの無い所定形状により保たれ易い。
【0094】
変形吸収開口は、上記とは他の位置に形成されてもよい。例えば、変形吸収開口は、第1端部84のうち第2端部88と重なる箇所に形成されていてもよいし、筒形成部86におけるいずれかの位置であり第2端部88と重ならない箇所に形成されていてもよい。また、例えば、変形吸収開口は、第1端部88におけるかしめ固定部83の位置よりも、筒形成部86における周方向の中央寄りに位置してもよい。また、変形吸収開口は、筒部82の周方向において、第2端部と筒形成部86との境界に位置してもよい。また、変形吸収開口は、筒部82の中心軸Xの方向において、かしめ固定部83と弾性片90、96との間に位置してもよい。
【0095】
また、変形吸収開口82Sは、筒部82の変形波及箇所を配置できる程度の空間を有していればよく、その形状は特に限定されない。変形吸収開口は、例えば、幅を有するスリット状の開口であってもよいし、円形、楕円または多角形の貫通開口であってもよい。筒部82には、複数の変形吸収開口が形成されてもよい。この場合、複数の変形吸収開口が、直線状に間隔をあけて並んでもよいし、散点状に並んでもよい。
【0096】
本実施形態では、変形吸収開口82Sは、スリット状の開口形状に形成されている。変形吸収開口82Sは、自己の長手方向に沿う一対の内面を有しており、当該一対の内面は互いに間隔をあけた対向している。一対の内面の間に、変形波及箇所を配置可能な空間が形成される。
【0097】
変形吸収開口82Sは、筒部82の周方向に交差する方向に沿って延びていることが好ましい。本実施形態では、変形吸収開口82Sは、筒部82の中心軸Xの方向に沿って延びている。このため、かしめ固定部83において生じた変形波及箇所の影響が、筒部82の周方向に交差する方向に延びる変形吸収開口82Sの長手方向全体で吸収される。これにより、変形波及箇所の影響が、筒形成部86に対してより波及し難くなる。なお、変形吸収開口82Sは、中心軸Xの方向に対して斜め方向に延びていてもよいし、途中で曲りつつ延びていてもよい。
【0098】
また、変形吸収開口82Sは、中心軸Xの方向において、筒部82のうち基端側開口縁からかしめ固定部83を越える位置まで延びていることが好ましい。なお、基端側開口縁は、筒部82のうち弾性片90、96が延出する開口縁とは反対側の開口縁である。
【0099】
第1端部84における伸び変形は、かしめ固定部83を中心に発生する。このため、筒部82は、中心軸Xの方向におけるかしめ固定部83の位置を中心に、歪んだり、径が変ったりすることが考えられる。変形吸収開口82Sが、中心軸Xの方向において、筒部82の基端側開口縁からかしめ固定部83を越える位置まで延びていると、かしめ固定部83の伸び変形の影響が筒部82の周方向に波及し難くなる。なお、変形吸収開口は、中心軸Xの方向において、かしめ固定部83を越えない長さであってもよい。
【0100】
外導体80は、弾性片として、端部弾性片90と、付加弾性片96とを含む。
【0101】
端部弾性片90は、筒形成部86のうち第1端部84と連なる端部分である上記一端部82eにおいて、開口縁から延出している。
【0102】
端部弾性片90は、筒部82の一方側の開口縁から延出し、相手側の端子としての可動側外導体46に接続される部分である。
【0103】
すなわち、筒部82の開口縁側で、筒形成部86は、1周分の筒形状をなしており、端部弾性片90の少なくとも一部は、筒形成部86の一端部82eのうち前記開口縁から中心軸X方向一方側に延出している。
【0104】
端部弾性片90の基端部のうちの少なくとも一部が筒形成部86の一端部82eに連なっていればよい。本実施形態では、第1端部84と第2端部88とは、端部弾性片90の幅の半分以下の領域で互いに重ね合わされている。よって、筒形成部86のうち第1端部84と連なる一端部82eは、端部弾性片90の基端部のうち幅方向の半分または半分よりも小さいで端部弾性片90に連なっている。端部弾性片90は、より大きい幅で、一端部に連なっていてもよい。
【0105】
端部弾性片90は、傾斜部92と、膨出部93と、先端ガイド部94とを有する。傾斜部92と膨出部93と先端ガイド部94とは、筒部82から当該筒部82の中心軸Xの一方側に向けてこの順で連なっている。
【0106】
傾斜部92は、一端部82eと直接連なる板状部分であり、隣の付加弾性片96と隔てられた板状部分である。傾斜部92は、一端部82eから中心軸Xに傾斜(ここでは外周側に傾斜)するように延びている。よって、端部弾性片90は、主として一端部82eと傾斜部92との境界から先端側部分で筒部82の内外方向に弾性変形することができる。
【0107】
膨出部93は、傾斜部92の先端から外向きに凸となる曲面をなしつつ中心軸Xの一方側に向っている。膨出部93のうち最も外周側に突出する部分が、筒部82の径方向において外側を向き、可動側外導体46に接触する接点部93aである。
【0108】
先端ガイド部76は、膨出部93の先端から中心軸Xの一方側に向って内周側に傾斜している。
【0109】
外導体80が可動側外導体46内に挿入される際に、先端ガイド部76が可動側外導体46の開口縁に接触することで、端部弾性片90を可動側外導体46の内周側に案内する。外導体80が可動側外導体46内に挿入された状態で、主として傾斜部92が内周側に弾性変形する。傾斜部92が元の形状に戻ろうとする弾性力によって、接点部93aが可動側外導体46の内周面に弾性的に押付けられる。この状態で、端部弾性片90の傾斜部92には、内周側に向かう力が作用する。このため、傾斜部92を支持する一端部82eが内周側に変位しないようにしっかりと支持することが望まれる。
【0110】
本実施形態では、一端部82eに連なる第1端部84の内側に第2端部88が重ねられている。このため、第1端部84は、第2端部88によって内周側に変位しないようにしっかりと支持され、第1端部84に連なる一端部82eも内周側に変位しないようにしっかりと支持される。
【0111】
上記第2端部88は、第1端部84および筒形成部86よりも内周側に突出している。筒部82内に絶縁体70の筒部72が収容された状態で、第2端部88が筒部72の位置決め用の凹み72gに嵌っている。この状態で、第2端部88が凹み72gの一対の側面72g1のいずれかに接触する範囲で、絶縁体70に対する外導体80の回転止がなされる。
【0112】
また、第2端部88のうちの端部弾性片90側の面が凹み72gの面72g2に接触することで、絶縁体70の筒部72が外導体80の筒部82内に過挿入されることが抑制される。
【0113】
凹み72gの底面72gbは、第2端部88の内周側への変位を受止める位置に形成されていることが好ましい。
【0114】
本実施形態では、底面72gbは、中心軸Xに平行な面に形成されている。第2端部88が凹み72g内に配置された状態で、第2端部88の内周側部分が底面72gbに接するか間隔をあけて対向する。これにより、底面72gbが第2端部88の内周側への変位を受止めることができる。
【0115】
底面72gbと、第2端部88とが接していることは必須ではない。例えば、底面72gbと第2端部88との間に、1mm以下の隙間が形成されており、内周側へ変位した第2端部88が底面72gbに接することによって、当該底面72gbが第2端部88の内周側への変位を受止める構成であってもよい。
【0116】
上記したように、外導体80は、筒部82開口縁から延出する少なくとも1つの付加弾性片96をさらに含む。本実施形態では、外導体80は、複数の付加弾性片96を含んでおり、具体的には、7つの付加弾性片96を含む。つまり、外導体80は、複数の弾性片90、96を含み、より具体的には、8つの弾性片90、96を含む。
【0117】
付加弾性片96は、筒部82に支持された箇所を除き、端部弾性片90と同様形状に形成されている。
【0118】
複数の弾性片90、96は、当該筒部82の周方向において等間隔で並ぶように支持されている。なお、等間隔とは、誤差範囲内の同一性(例えば、中心軸X周りで±5度の範囲内で同じ)を含む。筒部82の中心軸Xに沿って見ると、複数の弾性片90、96は、当該筒部82の中心軸Xを中心として放射状に並ぶ。
【0119】
外導体80が可動側外導体46に挿入された状態で、複数の弾性片90、96が可動側外導体46の内周部にその周方向に沿って均等間隔で接する。複数の弾性片90、96が同じ形状であること、および、筒部82の周方向に沿って均等間隔で並ぶことから、複数の弾性片90、96は、同じ条件で可動側外導体46に押付けられる。また、仮に複数の弾性片が切れ目のある筒部材によって支持されている場合、当該切れ目近くでは筒部材が内外方向に弾性変形し得るため、弾性片を支える力が弱くなり、当該弾性片を相手側導体に押付ける弾性力が弱くなる可能性がある。本実施形態では、第1端部84は、第2端部88によって支持されているため、端部弾性片90の基端を一定位置に支持し易く、従って、端部弾性片90が可動側外導体46に所望の設計上の接触荷重で押付けた状態に保ち易い。
【0120】
また、かしめ固定部83のかしめの影響が、変形吸収開口82Sによって吸収され、他に波及し難い。このため、筒部82の筒形状が部分的に変形したり、筒の大きさが大きくなったりし難く、筒部82が所定の筒形状に保たれ易い。これにより、複数の弾性片90、96が同じ条件で可動側外導体46に押付けられ易い。
【0121】
<効果等>
以上のように構成された同軸コネクタ60によると、第1端部84および第2端部88をかしめて固定する際に、かしめによる変形の影響が筒部82のうちかしめ固定部83の周りに波及することが想定される。この場合、筒部82の筒形状が部分的に歪んだり、筒部82の径が大きくなったりする可能性がある。筒部82に変形吸収開口82Sが形成されていると、かしめによる変形波及箇所が変形吸収開口82S内に配置され、変形の影響の波及が当該変形吸収開口82Sを境界として抑制される。このため、筒部82の筒形状が所望の形状に保たれ易い。これにより、筒部82による弾性片90、96の支持位置が安定し、弾性片90、96が相手側の可動側外導体46との接続に適した一定位置にしっかりと保持され易く、所望の接触荷重を得易い。また、かしめ固定部83の変形波及箇所が筒部82に波及し難いため、かしめ固定部83の変形量を大きくして、しっかりと第1端部84と第2端部88とを固定できる。
【0122】
また、第1端部84と第2端部88とをかしめ固定部83で固定すれば、切削加工や板材の溶接加工によってコネクタ用導体を形成する場合と比較して、外導体80を低コストで製造できる。
【0123】
また、筒形成部86および第1端部84が同径の筒形状をなすように連なっていると、第1端部84に対するかしめの影響が、筒形成部86に波及し易い可能性がある。変形吸収開口82Sが、筒部82の周方向において、第1端部84におけるかしめ固定部83の位置よりも、筒形成部86における周方向の中央M寄りの位置に設けられると、第1端部84に対するかしめの影響が筒形成部86のうち第2端部88側に波及し難くなり、筒形成部86の筒形状が所望の形状に保たれ易い。
【0124】
また、変形吸収開口82Sが第1端部84と筒形成部86との境界に形成されていると、第1端部84に対するかしめの影響が筒形成部86により波及し難くなり、筒形成部86の筒形状がより所望の形状に保たれ易い。
【0125】
また、第1端部84が開口縁側で筒形成部86の一端部82eに連なっているため、第1端部84の近くで筒形成部86の開口縁から延出する端部弾性片90が一定位置に保たれ易い。
【0126】
また、第2端部88は、第1端部84に対して接点部93aの向きとは逆側に重ね合わされている。このため、第2端部88は、接点部93aを可動側外導体46に押付ける力を支えることができ、接点部93aを可動側外導体46に押付け易い。
【0127】
また、第2端部88は、第1端部84および筒形成部86よりも内周側に突出しているため、当該第2端部88を、筒部82内の部材、ここでは、絶縁体70に対して位置決めし易い。
【0128】
本実施形態では、絶縁体70の外周面に凹み72gが形成され、第2端部88が凹み72gに嵌っている。このため、絶縁体70に対して外導体80が位置決めされ易い。
【0129】
また、変形吸収開口82Sは、スリット状の開口形状に形成されているため、かしめによる変形の影響が、スリット状の変形吸収開口82Sの長手方向全体で吸収される。このため、筒部82の筒形状がより所望の形状に保たれ易い。
【0130】
また、かしめによる変形の影響が、筒部82の周方向に交差する方向に沿って延びるスリット状の変形吸収開口82Sの長手方向全体で吸収される。このため、筒部82の大きさや筒の均一性に影響を与え難い。また、筒部82による弾性片90、96の支持位置が安定し、外導体80を可動側外導体46に接続する際に、所望の接触荷重を得易い。
【0131】
また、変形吸収開口82Sは、中心軸Xの方向において、筒部82のうち開口縁とは反対側の基端側開口縁からかしめ固定部83を越える位置まで延びている。このため、かしめによって第1端部84が変形しても、当該変形が変形吸収開口82Sを境界として他の部分に波及し難い。また、変形吸収開口82Sは、かしめ固定部83を越える位置まで延びているので、かしめによる第1端部84の変形が周方向に波及しにくい。
【0132】
また、同軸コネクタ60は、内導体62と、絶縁体70とをさらに備える構成であり、当該絶縁体70を収容する外導体80を、可動側外導体46に良好に電気的に接続できる。
【0133】
また、第2端部88が絶縁体70の凹み72gに嵌ることで、第2端部を利用して、絶縁体70に対して外導体80を位置決めできる。
【0134】
[変形例]
上記実施形態において、外導体80の筒部82に係る構成が、他のコネクタ用導体の筒部に適用されてもよい。例えば、上記実施形態における内導体62の基端筒部64に、前記筒部82に係る第1端部と第2端部とを重ね合わせて固定し、かつ、変形吸収開口を形成する構成が適用されてもよい。
【0135】
なお、上記実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0136】
10 機器
12 ケース
13 第1ケース
14 第2ケース
15 底部
16 保持筒部
17 保持仕切部
17h 保持孔
18a 係止突部
20 電気部品
21 回路基板
22 撮像素子
30 外部接続用同軸コネクタ
32 外部接続用内導体
34 外部接続用絶縁体
36 外部接続用外導体
40 中継コネクタ
42 可動側内導体
44 可動側絶縁体
46 可動側外導体(相手側導体)
60 同軸コネクタ(コネクタ)
62 内導体
64 基端筒部
64P 位置決め凸部
64a 延長片
64b 係止突部
66 弾性片
70 絶縁体
72 筒部
72a 突状部
72g 凹み
72g1 側面
72g2 面
72gb 底面
76 先端ガイド部
77 挿入孔
78 外周側ガイド面
80 外導体(コネクタ用導体)
82 筒部
82P 係止部
82S 変形吸収開口
82e 一端部
83 かしめ固定部
83a 凸部
83b 凹部
84 第1端部
86 筒形成部
87 段部
88 第2端部
90 弾性片(端部弾性片)
92 傾斜部
93 膨出部
93a 接点部
94 先端ガイド部
96 弾性片(付加弾性片)
M 筒形成部の周方向の中央
X 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7