特開 2025-8372 コネクタ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2025008372

(43)【公開日】2025-01-20

(54)【発明の名称】コネクタ

(51)【国際特許分類】

   H01R 24/50 20110101AFI20250109BHJP

【ＦＩ】

H01R24/50

【審査請求】未請求

【請求項の数】12

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023110493

(22)【出願日】2023-07-05

(71)【出願人】

【識別番号】395011665

【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所

(71)【出願人】

【識別番号】000183406

【氏名又は名称】住友電装株式会社

(71)【出願人】

【識別番号】000002130

【氏名又は名称】住友電気工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100088672

【弁理士】

【氏名又は名称】吉竹 英俊

(74)【代理人】

【識別番号】100088845

【弁理士】

【氏名又は名称】有田 貴弘

(74)【代理人】

【識別番号】100117662

【弁理士】

【氏名又は名称】竹下 明男

(74)【代理人】

【氏名又は名称】福市 朋弘

(72)【発明者】

【氏名】浅野 泰徳

【テーマコード（参考）】

5E223

【Ｆターム（参考）】

5E223AA16

5E223AB21

5E223AB41

5E223AB43

5E223BA12

5E223BA15

5E223BA17

5E223CA13

5E223CA21

5E223CB22

5E223CC09

5E223CD01

5E223DB08

5E223EA01

5E223GA08

5E223GA52

5E223GA72

(57)【要約】

【課題】コネクタ用導体を相手側コネクタに接続する際に、所望の接触荷重を得られるようにすることを目的とする。
【解決手段】コネクタ用導体８０を備えるコネクタ６０であって、コネクタ用導体は、筒部８２と、筒部の開口縁から延出する弾性片９０と、を含み、筒部は、筒形状をなす筒形成部８６と、筒形成部における周方向の第１突出端部８４と、筒形成部における周方向の第２突出端部８８と、を有し、第１突出端部および第２突出端部は、筒形成部の径方向に沿って突出しており、第１突出端部および第２突出端部は、筒形成部の周方向に重ねられた状態で、相互に固定されている。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

コネクタ用導体を備えるコネクタであって、
前記コネクタ用導体は、筒部と、前記筒部の開口縁から延出する弾性片と、を含み、
前記筒部は、
筒形状をなす筒形成部と、
前記筒形成部における周方向の第１突出端部と、
前記筒形成部における周方向の第２突出端部と、
を有し、
前記第１突出端部および前記第２突出端部は、前記筒形成部の径方向に沿って突出しており、
前記第１突出端部および前記第２突出端部は、前記筒形成部の周方向に重ねられた状態で、相互に固定されている、コネクタ。

【請求項2】

請求項１に記載のコネクタであって、
前記第１突出端部および前記第２突出端部は、前記筒形成部の外周側に突出している、コネクタ。

【請求項3】

請求項１または請求項２に記載のコネクタであって、
前記第１突出端部および前記第２突出端部を、固定状態に保つ端部固定部材をさらに備え、
前記端部固定部材には、固定溝が形成され、
前記第１突出端部および前記第２突出端部が重ねられた状態で、前記固定溝に挿入されている、コネクタ。

【請求項4】

請求項３に記載のコネクタであって、
前記第１突出端部および前記第２突出端部の重ね合せ体は、前記筒部の中心軸方向に沿って延びる軸方向縁を有し、
前記固定溝は、前記軸方向縁を受ける軸方向内面を有し、
前記軸方向縁および前記軸方向内面の一方に軸方向位置決め凸部が形成され、
前記軸方向縁および前記軸方向内面の他方に軸方向位置決め凹部が形成され、
前記第１突出端部および前記第２突出端部が前記固定溝に挿入された状態で、前記軸方向位置決め凸部が前記軸方向位置決め凹部に係止している、コネクタ。

【請求項5】

請求項３に記載のコネクタであって、
前記第１突出端部および前記第２突出端部の重ね合せ体は、前記径方向に沿って延びる径方向縁を有し、
前記固定溝は、前記径方向縁を受ける径方向内面を有し、
前記径方向縁および前記径方向内面の一方に径方向位置決め凸部が形成され、
前記径方向縁および前記径方向内面の他方に径方向位置決め凹部が形成され、
前記第１突出端部および前記第２突出端部が前記固定溝に挿入された状態で、前記径方向位置決め凸部が前記径方向位置決め凹部に係止している、コネクタ。

【請求項6】

請求項４に記載のコネクタであって、
前記重ね合せ体は、前記径方向に沿って延びる径方向縁を有し、
前記固定溝は、前記径方向縁を受ける径方向内面を有し、
前記径方向縁に径方向位置決めガイド凸部が形成され、
前記径方向内面に径方向位置決めガイド凹部が形成され、
前記中心軸方向において、前記径方向位置決めガイド凸部が前記軸方向位置決め凸部を越える位置まで前記径方向位置決めガイド凹部にスライド挿入されている、コネクタ。

【請求項7】

請求項１または請求項２に記載のコネクタであって、
前記筒部は、
前記筒形成部における周方向の第１かしめ端部と、
前記筒形成部における周方向の第２かしめ端部と、
を有し、
前記第１かしめ端部は、前記筒部の中心軸方向において前記第１突出端部の隣に位置し、
前記第２かしめ端部は、前記中心軸方向において前記第２突出端部の隣に位置し、
前記筒部は、前記第１かしめ端部と前記第２かしめ端部とが前記径方向において重ね合された状態で、前記第１かしめ端部と前記第２かしめ端部とをかしめて固定するかしめ固定部をさらに有する、コネクタ。

【請求項8】

請求項７に記載のコネクタであって、
前記筒部のうち前記かしめ固定部と前記弾性片との間に、スリットが形成されている、コネクタ。

【請求項9】

請求項８に記載のコネクタであって、
前記スリットは、前記中心軸方向において、前記第１突出端部および前記第２突出端部の重ね合せ体と、前記第１かしめ端部および前記第２かしめ端部のかしめ重ね合せ体との間に位置している、コネクタ。

【請求項10】

請求項１または請求項２に記載のコネクタであって、
前記コネクタ用導体は、前記弾性片を複数含み、
前記複数の弾性片は、前記筒部の周方向において間隔をあけて並んでいる、コネクタ。

【請求項11】

請求項１または請求項２に記載のコネクタであって、
内導体と、
前記内導体が収容される絶縁体と、
をさらに備え、
前記筒部内には前記絶縁体が収容されている、コネクタ。

【請求項12】

請求項７に記載のコネクタであって、
内導体と、
前記内導体が収容される絶縁体と、
をさらに備え、
前記筒部内には前記絶縁体が収容されており、
前記筒形成部と前記第１かしめ端部とは、同径の筒形状をなすように連なっており、
前記第２かしめ端部は、前記筒形成部よりも内周側に突出するように、前記第１かしめ端部の内周側に重ねられており、
前記絶縁体の外周面に凹みが形成され、
前記第２かしめ端部は前記凹みに嵌っている、コネクタ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、コネクタに関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１は、コンタクトと、コンタクトを保持する合成樹脂製の絶縁体と、さらに絶縁体を収容する金属製のシェルとを備える同軸コネクタを開示している。金属製のシェルは、相手側の雄型コネクタと嵌合する嵌合部を有し、その嵌合部は、略円筒状に形成されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２００３－２９７４９１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献１に記載の金属製のシェルは、筒状の嵌合部を含むコネクタ用導体として機能し得る。このようなコネクタ用導体を相手側のコネクタに接続する際に所望の接触荷重を得られるようにすることが望まれている。

【0005】

そこで、本開示は、コネクタ用導体を相手側コネクタに接続する際に、所望の接触荷重を得られるようにすることを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本開示のコネクタは、コネクタ用導体を備えるコネクタであって、前記コネクタ用導体は、筒部と、前記筒部の開口縁から延出する弾性片と、を含み、前記筒部は、筒形状をなす筒形成部と、前記筒形成部における周方向の第１突出端部と、前記筒形成部における周方向の第２突出端部と、を有し、前記第１突出端部および前記第２突出端部は、前記筒形成部の径方向に沿って突出しており、前記第１突出端部および前記第２突出端部は、前記筒形成部の周方向に重ねられた状態で、相互に固定されている、コネクタである。

【発明の効果】

【0007】

本開示によれば、コネクタ用導体を相手側コネクタに接続する際に、所望の接触荷重を得易い。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】図１は実施形態に係る同軸コネクタを備える機器を示す斜視図である。

【図2】図２は図１のＩＩ－ＩＩ線断面図である。

【図3】図３は同軸コネクタを示す斜視図である。

【図4】図４は同軸コネクタを示す分解斜視図である。

【図5】図５は同軸コネクタを示す部分分解斜視図である。

【図6】図６は外導体を示す斜視図である。

【図7】図７は図３のＶＩＩ－ＶＩＩ線部分断面図である。

【図8】図８はＶＩＩＩ－ＶＩＩＩ線部分断面図である。

【図9】図９は変形例に係る突出端部及び端部固定部材を示す断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0009】

［本開示の実施形態の説明］
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。

【0010】

本開示のコネクタは、次の通りである。

【0011】

（１）コネクタ用導体を備えるコネクタであって、前記コネクタ用導体は、筒部と、前記筒部の開口縁から延出する弾性片と、を含み、前記筒部は、筒形状をなす筒形成部と、前記筒形成部における周方向の第１突出端部と、前記筒形成部における周方向の第２突出端部と、を有し、前記第１突出端部および前記第２突出端部は、前記筒形成部の径方向に沿って突出しており、前記第１突出端部および前記第２突出端部は、前記筒形成部の周方向に重ねられた状態で、相互に固定されている、コネクタである。

【0012】

このコネクタによると、第１突出端部および第２突出端部は、筒形成部の周方向に重ねられた状態で、相互に固定されているため、筒部が開いたり、閉じたりし難く、一定の形状に保たれ易い。よって、弾性片が相手側コネクタとの接続に適した一定位置にしっかりと保持され易く、コネクタ用導体を相手側コネクタに接続する際に、所望の接触荷重を得易い。

【0013】

（２）（１）のコネクタであって、前記第１突出端部および前記第２突出端部は、前記筒形成部の外周側に突出していてもよい。

【0014】

この場合、筒部の外周側で、第１突出端部および第２突出端部の固定を容易に行える。

【0015】

（３）（１）または（２）のコネクタであって、前記第１突出端部および前記第２突出端部を、固定状態に保つ端部固定部材をさらに備え、前記端部固定部材には、固定溝が形成され、前記第１突出端部および前記第２突出端部が重ねられた状態で、前記固定溝に挿入されていてもよい。

【0016】

この場合、第１突出端部および第２突出端部が重ねられた状態で、固定溝に挿入されることで、第１突出端部および第２突出端部を容易に固定状態に保つことができる。

【0017】

（４）（３）のコネクタであって、前記第１突出端部および前記第２突出端部の重ね合せ体は、前記筒部の中心軸方向に沿って延びる軸方向縁を有し、前記固定溝は、前記軸方向縁を受ける軸方向内面を有し、前記軸方向縁および前記軸方向内面の一方に軸方向位置決め凸部が形成され、前記軸方向縁および前記軸方向内面の他方に軸方向位置決め凹部が形成され、前記第１突出端部および前記第２突出端部が前記固定溝に挿入された状態で、前記軸方向位置決め凸部が前記軸方向位置決め凹部に係止していてもよい。

【0018】

この場合、軸方向位置決め凸部が軸方向位置決め凹部に係止しているので、端部固定部材が軸方向に沿って移動して筒部から脱落することが抑制される。

【0019】

（５）（３）または（４）のコネクタであって、前記第１突出端部および前記第２突出端部の重ね合せ体は、前記径方向に沿って延びる径方向縁を有し、前記固定溝は、前記径方向縁を受ける径方向内面を有し、前記径方向縁および前記径方向内面の一方に径方向位置決め凸部が形成され、前記径方向縁および前記径方向内面の他方に径方向位置決め凹部が形成され、前記第１突出端部および前記第２突出端部が前記固定溝に挿入された状態で、前記径方向位置決め凸部が前記径方向位置決め凹部に係止していてもよい。

【0020】

この場合、径方向位置決め凸部が径方向位置決め凹部に係止しているので、端部固定部材が径方向に沿って移動して筒部から脱落することが抑制される。

【0021】

（６）（４）のコネクタであって、前記重ね合せ体は、前記径方向に沿って延びる径方向縁を有し、前記固定溝は、前記径方向縁を受ける径方向内面を有し、前記径方向縁に径方向位置決めガイド凸部が形成され、前記径方向内面に径方向位置決めガイド凹部が形成され、前記中心軸方向において、前記径方向位置決めガイド凸部が前記軸方向位置決め凸部を越える位置まで前記径方向位置決めガイド凹部にスライド挿入されていてもよい。

【0022】

この場合、中心軸方向において、径方向位置決めガイド凸部が軸方向位置決め凸部を越える位置まで径方向位置決めガイド凹部にスライド挿入されているため、軸方向位置決め凸部が軸方向位置決め凹部に係止する状態が保たれ易い。これにより、第１突出端部および第２突出端部から端部固定部材が脱落し難い。

【0023】

（７）（１）から（６）のいずれか１つのコネクタであって、前記筒部は、前記筒形成部における周方向の第１かしめ端部と、前記筒形成部における周方向の第２かしめ端部と、を有し、前記第１かしめ端部は、前記筒部の中心軸方向において前記第１突出端部の隣に位置し、前記第２かしめ端部は、前記中心軸方向において前記第２突出端部の隣に位置し、前記筒部は、前記第１かしめ端部と前記第２かしめ端部とが前記径方向において重ね合された状態で、前記第１かしめ端部と前記第２かしめ端部とをかしめて固定するかしめ固定部をさらに有してもよい。

【0024】

このように、第１かしめ端部および第２かしめ端部がかしめ固定部によってかしめて固定されているため、筒形成部の両端が径方向に位置ずれし難い。よって、筒部がより一層一定の形状に保たれ易く、コネクタ用導体を相手側コネクタに接続する際に、より所望の接触荷重を得易い。

【0025】

（８）（７）のコネクタであって、前記筒部のうち前記かしめ固定部と前記弾性片との間に、スリットが形成されていてもよい。

【0026】

この場合、第１かしめ端部と第２かしめ端部とをかしめ固定部によってしっかりと固定しても、そのかしめ固定のための加工の影響が弾性片に及び難い。よって、弾性片が相手側コネクタとの接続に適した一定位置にしっかりと保持され易く、所望の接触荷重を得易い。

【0027】

（９）（８）のコネクタであって、前記スリットは、前記中心軸方向において、前記第１突出端部および前記第２突出端部の重ね合せ体と、前記第１かしめ端部および前記第２かしめ端部のかしめ重ね合せ体との間に位置していてもよい。

【0028】

これにより、かしめの影響を弾性片側に及び難くしつつ、第１突出端部および第２突出端部の重ね合せ体によって弾性片をしっかりと保持できる。

【0029】

（１０）（１）から（９）のいずれか１つのコネクタであって、前記コネクタ用導体は、前記弾性片を複数含み、前記複数の弾性片は、前記筒部の周方向において間隔をあけて並んでいてもよい。

【0030】

これにより、コネクタ用導体が相手側導体に良好に電気的に接続され得る。

【0031】

（１１）（１）から（１０）のいずれか１つのコネクタであって、内導体と、前記内導体が収容される絶縁体と、をさらに備え、前記筒部内には前記絶縁体が収容されていてもよい。

【0032】

この場合、内導体と、内導体が収容される絶縁体と、絶縁体を収容する外導体としてコネクタ用導体を備えるコネクタにおいて、コネクタ用導体を相手側の導体に良好に電気的に接続できる。

【0033】

（１２）（７）から（１０）のいずれか１つのコネクタであって、内導体と、前記内導体が収容される絶縁体と、をさらに備え、前記筒部内には前記絶縁体が収容されており、前記筒形成部と前記第１かしめ端部とは、同径の筒形状をなすように連なっており、前記第２かしめ端部は、前記筒形成部よりも内周側に突出するように、前記第１かしめ端部の内周側に重ねられており、前記絶縁体の外周面に凹みが形成され、前記第２かしめ端部は前記凹みに嵌っていてもよい。

【0034】

これにより、第２かしめ端部を利用して、絶縁体に対してコネクタ用導体を位置決めできる。

【0035】

［本開示の実施形態の詳細］
本開示のコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【0036】

[実施形態]
以下、実施形態に係るコネクタについて説明する。本実施形態では、コネクタが同軸コネクタである例が説明される。なお、同軸コネクタとは、外導体とその内部の内導体が同軸上に位置するコネクタである。コネクタが同軸コネクタであることは必須ではなく、例えば、外導体内に複数の内導体が位置していてもよい。

【0037】

＜機器の全体構成について＞
同軸コネクタ６０を備える機器１０の例について説明する。図１は同軸コネクタ６０を備える機器１０を示す斜視図である。図２は図１のＩＩ－ＩＩ線断面図である。

【0038】

機器１０は、例えば、カメラ機器である。カメラ機器は、例えば、車載用の機器である。機器１０は、カメラ機器でなくてもよい。

【0039】

機器１０は、ケース１２と、電気部品２０とを備える。ケース１２内に電気部品２０が収容されている。電気部品２０に同軸コネクタ６０が固定されている。

【0040】

ケース１２は、第１ケース１３と、第２ケース１４とを備えている。第１ケース１３および第２ケース１４は、例えば、樹脂によって形成される。第１ケース１３と第２ケース１４とが合体することで、電気部品２０を収容する直方体箱状のケース１２が構成される。機器１０がカメラ機器である場合、第１ケース１３は撮像用のレンズまたは窓を有しており、第２ケース１４が外部接続用同軸コネクタ３０を有していることが想定される。

【0041】

外部接続用同軸コネクタ３０は、電気部品２０と、外部の電気部品とを接続するための同軸コネクタである。例えば、外部接続用同軸コネクタ３０は、外部の電気部品に接続されたケーブルが接続される同軸コネクタである。外部接続用同軸コネクタ３０が接続されるケーブルは、例えば、同軸ケーブルである。

【0042】

より具体的には、ケース１２の底部１５に保持筒部１６が突設されている。保持筒部１６は、円筒であり、底部１５の中央部から外側に突出している。保持筒部１６の内側開口は第２ケース１４内に開口し、保持筒部１６の外側開口は第２ケース１４外に開口している。保持筒部１６の中心軸Ｘに沿った方向（軸方向）の中間部に保持仕切部１７が形成されている。本実施形態では、保持筒部１６の中心軸Ｘに沿った方向の中間部であって内側開口寄りの位置に保持仕切部１７が形成されている。保持仕切部１７は、保持筒部１６のうち内側開口側の空間と、外側開口側の空間とを仕切っている。保持仕切部１７に保持孔１７ｈが形成されており、当該保持孔１７ｈに外部接続用同軸コネクタ３０が挿入されて保持される。

【0043】

本実施形態では、保持筒部１６の外周部に、ケーブルの端部に取付けられたケーブルコネクタを保持するための係止突部１８ａが形成されている。係止突部１８ａが形成されることは必須ではない。

【0044】

外部接続用同軸コネクタ３０は、外部接続用内導体３２と、外部接続用絶縁体３４と、外部接続用外導体３６とを備える。

【0045】

外部接続用内導体３２は、細長い棒状に形成されており、金属等の導電材料によって形成されている。外部接続用絶縁体３４は、樹脂等の絶縁体によって形成されており、外部接続用内導体３２の周りを囲んでいる。本実施形態では、外部接続用絶縁体３４は、誘電体である。外部接続用外導体３６は、金属等の導電材料によって形成されている。外部接続用外導体３６は、外部接続用絶縁体３４の周りを囲む筒状に形成されている。

【0046】

電気部品２０は、例えば、基板に電子部品が実装された実装基板である。機器１０がカメラ機器である場合、電気部品２０は、回路基板２１と、当該回路基板２１に実装された撮像素子２２であることが想定される。撮像素子２２は、第１ケース１３の撮像用のレンズまたは窓に対向し、当該レンズまたは窓を回して外側景色を撮像する。以下、撮像素子２２が向く第１ケース１３側を前側、それとは反対側の第２ケース１４側を後側という場合がある。

【0047】

本実施形態では、同軸コネクタ６０は、回路基板２１のうち撮像素子２２とは反対側の面に位置している。同軸コネクタ６０は、回路基板２１に固定され、当該回路基板２１から上記外部接続用同軸コネクタ３０に向けて突出している。同軸コネクタ６０は、基板側同軸コネクタである。同軸コネクタ６０は、例えば、内導体６２と、絶縁体７０と、外導体８０とを備える。内導体６２に後述する可動側内導体４２が接続される。絶縁体７０は、内導体６２の周りを囲んでいる。外導体８０は、絶縁体７０の周りを囲んでいる。つまり、内導体６２と絶縁体７０と外導体８０とは、この順で中心から外周側に向かって同心円状に配置される。

【0048】

同軸コネクタ６０と外部接続用同軸コネクタ３０とが、中継コネクタ４０を介して接続される。中継コネクタ４０は、例えば、可動側内導体４２と、可動側絶縁体４４と、可動側外導体４６とを備える。可動側内導体４２の周囲を可動側絶縁体４４が囲んでいる。本実施形態では、可動側絶縁体４４は、誘電体である。可動側絶縁体４４の周囲を可動側外導体４６が囲んでいる。可動側内導体４２は内導体６２に接続される相手側内導体の一例であり、可動側外導体４６は外導体８０に接続される相手側外導体の一例であり、中継コネクタ４０は同軸コネクタ６０に接続される相手側同軸コネクタの一例であり、相手側コネクタの一例でもある。

【0049】

可動側内導体４２が内導体６２に挿入接続されると共に、外導体８０が可動側外導体４６に挿入接続された状態で、中継コネクタ４０が同軸コネクタ６０に接続されている。この状態で、中継コネクタ４０は、同軸コネクタ６０からさらに外部接続用同軸コネクタ３０に向けて突出している。外部接続用内導体３２が可動側内導体４２に挿入接続されると共に、可動側外導体４６が外部接続用外導体３６に挿入接続されることで、中継コネクタ４０が外部接続用同軸コネクタ３０に接続される。これにより、中継コネクタ４０が、同軸コネクタ６０と外部接続用同軸コネクタ３０とを中継接続する。

【0050】

これにより、外部からのケーブルが、当該外部接続用同軸コネクタ３０に接続されることで、当該ケーブルの接続先である外部の電気部品と、ケース１２内の電気部品２０とが電気的に接続される。

【0051】

上記中継コネクタ４０と同軸コネクタ６０との接続状態において、可動側内導体４２は内導体６２に対して傾いた状態で挿入接続される。また、外導体８０は、可動側外導体４６に対して傾いた状態で挿入接続される。つまり、中継コネクタ４０は、同軸コネクタ６０に対して傾いた状態で接続され得る（図２の矢印Ｐ１参照）。これにより、本機器１０の組付作業時または完成状態において、同軸コネクタ６０と外部接続用同軸コネクタ３０とが同軸上で対向する位置からずれていたとしても（図２の矢印Ｐ２参照）、同軸コネクタ６０に対して中継コネクタ４０が傾くことで、当該位置ずれが吸収される。

【0052】

＜同軸コネクタについて＞
同軸コネクタ６０について具体的に説明する。図３は同軸コネクタ６０を示す斜視図である。図４は同軸コネクタ６０を示す分解斜視図である。

【0053】

上記のように、同軸コネクタ６０は、例えば、内導体６２と、絶縁体７０と、外導体８０とを備える。

【0054】

内導体６２は、細長い導電性部材である（図２および図４参照）。本実施形態では、内導体６２は、金属板をプレス加工することによって形成されている。より具体的には、内導体６２は、基端筒部６４と、複数の弾性片６６とを含む。

【0055】

基端筒部６４は、筒状、より具体的には、円筒状に形成されている。基端筒部６４は、絶縁体７０の基端側に収容される。なお、同軸コネクタ６０において先端とは可動側内導体４２が接続される側の端であり、基端とは当該先端とは反対側の端、ここでは、回路基板２１を向く側の端である。

【0056】

基端筒部６４の基端側縁から基端筒部６４の内側に向けて延長片６４ａが延出している。延長片６４ａは、例えば、回路基板２１の回路に半田付される。

【0057】

基端筒部６４は、周方向において部分的に外周側に突出する位置決め凸部６４Ｐを有していてもよい。当該位置決め凸部６４Ｐが絶縁体７０内の凹部に嵌ることで、絶縁体７０に対する内導体６２の位置決めがなされてもよい。

【0058】

基端筒部６４に係止突部６４ｂが突設されている。係止突部６４ｂは、基端筒部６４の外周部から部分的に突出している。係止突部６４ｂは、基端筒部６４の先端から基端に向かって徐々に突出寸法が大きくなる形状に形成されている。基端筒部６４が絶縁体７０内に挿入された状態で、係止突部６４ｂが絶縁体７０の内周部に引っ掛って、内導体６２が絶縁体７０から抜止め状態で保持される。

【0059】

複数の弾性片６６は、基端筒部６４の先端側開口からさらに先端側に突出している。好ましくは、複数の弾性片６６は、筒部７２の中心軸Ｘ周りに等間隔で位置する。本実施形態では、２つの弾性片６６が基端筒部６４の中心軸Ｘ周りで対向している。

【0060】

中継コネクタ４０の可動側内導体４２は、２つの弾性片６６の先端側から当該２つの弾性片６６間に向けて挿入される。可動側内導体４２が、当該２つの弾性片６６によって挟込まれた状態となることで、可動側内導体４２が内導体６２に接続される。

【0061】

絶縁体７０は、樹脂等によって形成されている。誘電体は絶縁体の一種と把握でき、絶縁体７０は、誘電体でもある。絶縁体７０は、例えば、金型成形樹脂部品である。

【0062】

絶縁体７０は、筒部７２と、先端ガイド部７６とを備える。

【0063】

筒部７２は、内導体６２を収容可能な筒状に形成されている。本実施形態では、筒部７２は、円筒状に形成されており、その内部に円柱状空間が形成されている。当該円柱状空間内に、内導体が収容される。

【0064】

筒部７２の外周面は、中心軸Ｘを中心とする円周面形状に形成されている。筒部７２の外周側に外導体８０が配置される。筒部７２の外周部の周方向の一部に位置決め用の凹み７２ｇが形成されている。凹み７２ｇは、筒部７２の周方向において互いに対向し合う一対の第１側面７２ｇ１ａ、第２側面７２ｇ１ｂと、筒部７２の基端側を向く位置規制面７２ｇ２とを有している（図４参照）。後述する第２かしめ端部８９が当該凹み７２ｇに嵌る。この状態で、第２かしめ端部８９が一対の側面７２ｇ１ａ、７２ｇ１ｂと位置規制面７２ｇ２とによって位置規制される。これにより、絶縁体７０に外嵌めされた外導体８０が、当該絶縁体７０に対して中心軸Ｘ周りに大きく回転すること、および、先端側に移動することが規制される。

【0065】

筒部７２の外周面には、複数（ここでは４つ）の細長い突状部７２ａが形成されている。各突状部７２ａは、中心軸Ｘと平行に延びている。複数の突状部７２ａは、筒部７２の外周面において、中心軸Ｘ周りに均等間隔で位置していることが好ましい。突状部７２ａが、筒部８２の内周面に対して周方向に分散した位置で接触する。

【0066】

先端ガイド部７６は、筒部７２の先端側に位置している。先端ガイド部７６は、可動側内導体４２を挿入可能な挿入孔７７を有している。筒部７２の中心軸Ｘは、挿入孔７７の中心軸Ｘと一致している。

【0067】

挿入孔７７の内周面は、筒部７２内に向かって徐々に縮径するテーパ状に形成されている。可動側内導体４２の先端部が挿入孔７７のテーパ状の内周面によって複数の弾性片６６の間に向けて案内される。

【0068】

また、先端ガイド部７６の外周部は、筒部７２よりも外周側に突出している。先端ガイド部７６の外周部に、基端側に向かって徐々に拡径する外周側ガイド面７８が形成されている。外周側ガイド面７８は、可動側外導体４６の筒形状部分を、外導体８０の外側に案内する役割を果すことができる。

【0069】

先端ガイド部７６のうち基端側を向く環状裏面は、筒部７２の中心軸Ｘに対して直交するように延在している。後述する弾性片９０は、環状裏面よりも基端側で、筒部７２の径方向に弾性変形することができる。

【0070】

外導体８０は、金属等の導電材料によって形成されおり、絶縁体７０の周りを囲んでいる。外導体８０は、例えば、金属板をプレス加工等することによって形成される。

【0071】

外導体８０は、筒部８２と、弾性片９０とを備える。本実施形態では、外導体８０は、複数の弾性片９０を備える。

【0072】

筒部８２は、内側に筒部７２を配置可能な筒状に形成されている。筒部８２のうち先端側開口縁から弾性片９０が延出している。複数の弾性片９０は、筒部８２の周方向において間隔をあけて並ぶ。本実施形態では、外導体８０は、８つの弾性片９０を備え、８つの弾性片９０が筒部８２の周方向において等間隔で並ぶ。

【0073】

筒部８２内に絶縁体７０の基端部が収容された状態で、これらの弾性片９０は、先端ガイド部７６と筒部８２との間で、筒部７２の周りを囲む。

【0074】

中継コネクタ４０の可動側外導体４６が先端ガイド部７６の外周側ガイド面７８によって、複数の弾性片９０の外周側に案内される。これにより、複数の弾性片９０が、可動側外導体４６に対して内周側から接触し、外導体８０と可動側外導体４６とが接続される。

【0075】

＜外導体について＞
コネクタ用導体の一例である外導体８０についてより具体的に説明する。図５は同軸コネクタ６０を示す部分分解斜視図である。図６は外導体８０を示す斜視図である。図７は図３のＶＩＩ－ＶＩＩ線部分断面図である。図８はＶＩＩＩ－ＶＩＩＩ線部分断面図である。

【0076】

図２から図８に示すように、外導体８０は、筒部８２と、筒部８２の先端側の開口縁から延出する弾性片９０とを備える。

【0077】

筒部８２は、絶縁体７０に外嵌めされる部分である。つまり、筒部８２内に絶縁体７０が収容される。筒部８２は、絶縁体７０に対して一定位置に保持され、外導体８０を絶縁体７０に対して一定位置に支持する役割を果す。また、例えば、筒部８２の基端側開口が回路基板２１の回路、例えば、アース回路に半田付されていれば、可動側外導体４６をアース回路に接地する役割を果すことができる。

【0078】

筒部８２は、筒形成部８６と、第１突出端部８４と、第２突出端部８８とを備える。

【0079】

筒形成部８６は、筒形状、ここでは、１周分の筒形状をなしている。筒形成部８６の周方向の一端側に第１突出端部８４が連なっている。

【0080】

第２突出端部８８は、筒形成部８６に対して第１突出端部８４とは反対側に連なっている。第２突出端部８８は、筒形成部８６における周方向の他方の端部に連なっている。筒部８２の周方向において、第１突出端部８４と第２突出端部８８との間に筒形成部８６が位置している。

【0081】

第１突出端部８４と第２突出端部８８とは、筒形成部８６の径方向に沿って突出している。本実施形態では、第１突出端部８４と第２突出端部８８とは、筒形成部８６の径方向に沿って筒形成部８６の外周側に突出している例が説明される。第１突出端部８４と第２突出端部８８とは、筒形成部８６の径方向および中心軸Ｘ方向に沿って延びる板状部分である。

【0082】

第１突出端部８４と第２突出端部８８とは、筒形成部８６の周方向に重ねられている。本実施形態では、第１突出端部８４と第２突出端部８８とは、同じ大きさに広がる方形板状であり、相互に全体的に面接触した状態で重ね合わされる。

【0083】

第１突出端部８４と第２突出端部８８とは相互に固定されている。本実施形態では、第１突出端部８４と第２突出端部８８とは、端部固定部材９５によって相互に固定されている。第１突出端部８４と第２突出端部８８との固定のための構成は、特に限定されない。第１突出端部８４と第２突出端部８８とは、溶接またはかしめ固定によって固定されていてもよい。

【0084】

端部固定部材９５は、第１突出端部８４と第２突出端部８８とを固定状態に保つ部材である、例えば、樹脂の金型成形品であってもよい。

【0085】

端部固定部材９５には、固定溝９６が形成されている。固定溝９６は、一端が閉塞された溝形状に形成されている。固定溝９６の幅は、第１突出端部８４と第２突出端部８８との重ね合せ体８３の幅と同じまたは当該幅よりも小さい大きさに設定されている。好ましくは、固定溝９６の幅は、重ね合せ体８３を圧入可能な大きさに設定されている。

【0086】

より具体的には、端部固定部材９５は、直方体の角を丸めた形状に形成されている。１つの主面を筒部８２の外面に対向させた姿勢で、重ね合せ体８３に装着される。固定溝９６は、筒部８２に対向する主面および上側に開口している。固定溝９６の下側は閉じられている。つまり、固定溝９６は、筒部８２側および上側に開口する溝である。固定溝９６は、重ね合せ体８３の全体を収容可能な程度の大きさであることが好ましい。

【0087】

重ね合せ体８３が固定溝９６に圧入されることで、重ね合せ体８３と固定溝９６との間の摩擦力によって、端部固定部材９５が重ね合せ体８３に装着された状態に保たれてもよい。

【0088】

第１突出端部８４と第２突出端部８８とは、筒形成部８６の周方向に重ねられているので、筒部８２が縮径するように変形し難い。また、第１突出端部８４と第２突出端部８８との重ね合せ体８３が固定溝９６に挿入されているので、第１突出端部８４と第２突出端部８８とが離間する方向に移動し難く、筒部８２が拡径するように変形し難い。

【0089】

端部固定部材９５の脱落を防止するため、下記構成が採用されてもよい。

【0090】

重ね合せ体８３のうち筒部８２の中心軸Ｘの方向に沿って延びる縁を軸方向縁８３ａとする。本実施形態では、第１突出端部８４と第２突出端部８８それぞれの外周側の縁が軸方向縁８３ａである。

【0091】

固定溝９６のうち軸方向縁８３ａを受ける内面を軸方向内面９６ａとする。本実施形態では、固定溝９６のうち、筒部８２の外周側に位置し、軸方向内面９６ａと対向する内面が軸方向内面９６ａである。

【0092】

軸方向縁８３ａおよび軸方向内面９６ａの一方に軸方向位置決め凸部８３ａｐが形成される。軸方向縁８３ａおよび軸方向内面９６ａの他方に軸方向位置決め凹部９６ａｇが形成される。

【0093】

本実施形態では、軸方向縁８３ａに軸方向位置決め凸部８３ａｐが形成される。軸方向位置決め凸部８３ａｐは、中心軸Ｘに沿って上に向うにつれて徐々に突出寸法が大きくなり、その頂点からさらに向うにつれて徐々に突出寸法が小さくなる形状に形成されている。本実施形態では、頂点より上側の部分は、頂点よりも下側の部分より、中心軸Ｘに対する角度が大きい。なお、軸方向位置決め凸部は、第１突出端部８４と第２突出端部８８との一方の外周側の縁のみに形成されてもよい。

【0094】

また、軸方向内面９６ａに、上記軸方向位置決め凸部８３ａｐが嵌る軸方向位置決め凹部９６ａｇが形成される。

【0095】

そして、固定溝９６に重ね合せ体８３が嵌り込んだ状態で、軸方向位置決め凸部８３ａｐが軸方向位置決め凹部９６ａｇに嵌ることで、重ね合せ体８３に対する端部固定部材９５の中心軸Ｘの移動が規制される。特に、重ね合せ体８３に対する端部固定部材９５の下側への移動が規制される。

【0096】

なお、上記とは逆に軸方向内面に軸方向位置決め凸部が形成され、軸方向縁に軸方向位置決め凹部が形成されてもよい。

【0097】

また、重ね合せ体８３は、筒部８２の径方向に沿って延びる縁を径方向縁８３ｂとする。本実施形態では、第１突出端部８４と第２突出端部８８それぞれの下側（弾性片９０とは反対側）の縁が径方向縁８３ｂである。

【0098】

固定溝９６のうち径方向縁８３ｂを受ける内面を径方向内面９６ｂとする。本実施形態では、固定溝９６のうち弾性片９０とは反対側に位置し、径方向縁８３ｂと対向する下側の内面が径方向内面９６ｂである。

【0099】

径方向縁８３ｂおよび径方向内面９６ｂの一方に径方向位置決め凸部９６ｂｐが形成される。径方向縁８３ｂおよび径方向内面９６ｂの他方に径方向位置決め凹部８３ｂｇが形成される。

【0100】

本実施形態では、径方向内面９６ｂに径方向位置決め凸部９６ｂｐが形成される。径方向位置決め凸部９６ｂｐは、半円状の凸形状に形成されている。

【0101】

また、径方向縁８３ｂに、上記径方向位置決め凸部９６ｂｐが嵌る径方向位置決め凹部８３ｂｇが形成される。径方向位置決め凹部８３ｂｇは、第１突出端部８４と第２突出端部８８との一方の下側の縁のみに形成されてもよい。

【0102】

そして、固定溝９６に重ね合せ体８３が嵌り込んだ状態で、径方向位置決め凸部９６ｂｐが径方向位置決め凹部８３ｂｇに嵌ることで、重ね合せ体８３に対する端部固定部材９５の径方向の移動が規制される。特に、重ね合せ体８３に対する端部固定部材９５の外周側への移動が規制される。

【0103】

なお、上記とは逆に径方向縁に径方向位置決め凸部が形成され、径方向内面に径方向位置決め凹部が形成されてもよい。

【0104】

筒部８２は、筒形成部８６における周方向の一方側の第１かしめ端部８５と、筒形成部８６における周方向の他方側の第２かしめ端部８９とを有する。

【0105】

第１かしめ端部８５は、筒部８２の中心軸Ｘの方向において第１突出端部８４の下側の隣に位置する。第１かしめ端部８５は、筒形成部８６の周方向において第１突出端部８４よりも内側に位置している。

【0106】

第２かしめ端部８９は、筒部８２の中心軸Ｘの方向において第２突出端部８８の下側の隣に位置する。第２かしめ端部８９は、筒形成部８６の周方向において第２突出端部８８よりも外側に延出し、第１かしめ端部８５に対して筒部８２の径方向において重ね合わされている。

【0107】

本実施形態では、第１かしめ端部８５は、筒形成部８６と共に、同径の１周分の筒形状をなるように連なっている。第２かしめ端部８９は、筒形成部８６よりも内周側に突出するように、第１かしめ端部８５の内周側に重ねられている。

【0108】

第１かしめ端部８５と第２かしめ端部８９とがかしめ固定部９９によってかしめ固定されている。かしめ固定部９９は、第１かしめ端部８５と第２かしめ端部８９との少なくとも一方の塑性変形によって、第１かしめ端部８５と第２かしめ端部８９とを重ね合わせ状態に保つ。

【0109】

本実施形態では、第１かしめ端部８５と第２かしめ端部８９との一方に塑性変形によって凸部９９ａが形成され、他方に塑性変形によって凹部９９ｂが形成されている（図８参照）。凸部９９ａが凹部９９ｂに嵌り合うことによって、第１かしめ端部８５と第２かしめ端部８９とが重ね合わせ状態に保たれる。

【0110】

より具体的には、例えば、重ね合わされた第１かしめ端部８５と第２かしめ端部８９とが、凸部を有するプレス型と、凹部を有するプレス型との間に挟まれてプレスされる。すると、第１かしめ端部８５と第２かしめ端部８９の一部が、プレス型の凸部からプレス型の凹部に向けて同士に押出プレスされる。第１かしめ端部８５と第２かしめ端部８９に、嵌り合った凸部９９ａおよび凹部９９ｂが同時にプレス成形される。例えば、第１かしめ端部８５の外周面にプレス型の凸部が押付けられ、第２かしめ端部８９の内周面にプレス型の凹部が配置される。プレス加工によって、第１かしめ端部８５に、内周側に突出する凸部９９ａが形成される。また、第２かしめ端部８９の外周面に凹部９９ｂが形成される。第１かしめ端部８５の凸部９９ａが第２かしめ端部８９の凹部９９ｂに嵌り込んで、第１かしめ端部８５と第２かしめ端部８９とが重ね合せ状態に保たれる。

【0111】

かかる接合構造は、例えば、スポットかしめと呼ばれる構造またはドローロックと呼ばれる構造であってもよい。

【0112】

筒部８２のうちかしめ固定部９９と弾性片９０との間にスリット８２Ｓが形成されている。スリット８２Ｓは、中心軸Ｘの方向において、第１突出端部８４と第２突出端部８８との重ね合せ体８３と、第１かしめ端部８５と第２かしめ端部とのかしめ重ね合せ体９９Ｗとの間に位置している。

【0113】

より具体的には、筒形成部８６の周方向の一端のうち弾性片９０寄りの部分に第１突出端部８４が繋がっている。筒形成部８６の周方向の一端のうち弾性片９０から離れた部分に第１かしめ端部８５が位置している。筒形成部８６の周方向の一端のうち第１突出端部８４が繋がる弾性片９０寄りの部分と、第１かしめ端部８５との間に、スリット８２Ｓが位置している。スリット８２Ｓは、筒部８２の周方向の一端から筒部８２の周方向に沿って延びて、第１かしめ端部８５の基端に達している。

【0114】

このため、かしめ端部８５と弾性片９０との間を横切るようにスリット８２Ｓが延在する。よって、かしめ固定部９９のかしめ固定による変形等の影響が弾性片９０に及び難い。また、第１かしめ端部８５に影響を及すことなく、第２突出端部８８を外周側に曲げ変形させ易い。

【0115】

第２かしめ端部８９は、その厚み分、筒形成部８６および第１かしめ端部８５よりも内周側に突出している。

【0116】

筒部８２内に絶縁体７０の筒部７２が収容された状態で、第２かしめ端部８９が筒部７２の位置決め用の凹み７２ｇに嵌り込む。この状態で、第２かしめ端部８９が凹み７２ｇの一対の側面７２ｇ１ａ、７２ｇ１ｂのいずれかに接触する範囲で、絶縁体７０に対する外導体８０の回転止がなされる。

【0117】

第２かしめ端部８９のうちの弾性片９０側の面が凹み７２ｇの位置規制面７２ｇ２に接触することで、絶縁体７０の筒部７２が外導体８０の筒部８２内に過挿入されることが抑制される。

【0118】

凹み７２ｇの底面７２ｇｂは、第２かしめ端部８９の内周側への変位を受止める位置に形成されていることが好ましい。

【0119】

本実施形態では、底面７２ｇｂは、中心軸Ｘに平行な面に形成されている。第２かしめ端部８９が凹み７２ｇ内に配置された状態で、第２かしめ端部８９の内周側部分が底面７２ｇｂに接するか間隔をあけて対向する。これにより、底面７２ｇｂが第２かしめ端部８９の内周側への変位を受止めることができる。

【0120】

底面７２ｇｂと、第２かしめ端部８９とが接していることは必須ではない。例えば、底面７２ｇｂと第２かしめ端部８９との間に、１ｍｍ以下の隙間が形成されており、内周側へ変位した第２かしめ端部８９が底面７２ｇｂに接することによって、当該底面７２ｇｂが第２かしめ端部８９の内周側への変位を受止める構成であってもよい。

【0121】

なお、絶縁体７０は、凹み７２ｇよりも弾性片９０に近い位置で、筒形成部８６の内周面に接し、外導体８０の内周側への変位を受止める受止めてもよい。

【0122】

複数の弾性片９０は、筒形成部８６の一方側の開口縁から筒部８２の中心軸方向の一方側に向かって延出している。複数の弾性片９０は、筒部８２の一方側の開口縁から延出し、相手側の端子としての可動側外導体４６に接続される部分である。

【0123】

弾性片９０は、傾斜部９２と、膨出部９３と、先端ガイド部９４とを有する。傾斜部９２と膨出部９３と先端ガイド部９４とは、筒部８２から当該筒部８２の中心軸Ｘの一方側に向けてこの順で連なっている。

【0124】

傾斜部９２は、筒形成部８６と直接連なり、当該筒形成部８６からさらに延出する板状部分である。

【0125】

傾斜部９２は、筒形成部８６のうち開口側の縁から中心軸Ｘに対して傾斜（ここでは外周側に傾斜）するように延びている。よって、弾性片９０の傾斜部９２と筒形成部８６との間に曲げ箇所９１Ｖが形成されている。弾性片９０は、主として当該曲げ箇所９１Ｖから先端側部分で筒部８２の内外方向に弾性変形することができる。

【0126】

膨出部９３は、傾斜部９２の先端から外向きに凸となる曲面をなしつつ中心軸Ｘの一方側に向かっている。膨出部９３のうち最も外周側に突出する部分が、筒部８２の径方向において外側を向き、可動側外導体４６に接触する接点部９３ａである。

【0127】

先端ガイド部７６は、膨出部９３の先端から中心軸Ｘの一方側に向かって内周側に傾斜している。

【0128】

外導体８０が可動側外導体４６内に挿入される際に、先端ガイド部７６が可動側外導体４６の開口縁に接触することで、弾性片９０を可動側外導体４６の内周側に案内する。外導体８０が可動側外導体４６内に挿入された状態で、主として傾斜部９２が内周側に弾性変形する。傾斜部９２が元の形状に戻ろうとする弾性力によって、接点部９３ａが可動側外導体４６の内周面に弾性的に押付けられる。この状態で、筒形成部８６のうち弾性片９０の基端に連なる部分には、内周側に向かう力が作用する。このため、筒形成部８６、特に、筒形成部８６の端部が内周側に変位しないようにしっかりと支持することが望まれる。上記のように、第１突出端部８４と第２突出端部８８との重ね合せ固定構造と、第１かしめ端部８５と第２かしめ端部８９とのかしめ固定構造とによって、筒形成部８６の両端が固定される。このため、筒部８２が初期形状から変形し難いようにしっかりと支持される。

【0129】

上記したように、複数の弾性片９０は、当該筒部８２の周方向において等間隔で並ぶように支持されている。なお、等間隔とは、誤差範囲内の同一性（例えば、中心軸Ｘ周りで±５度の範囲内で同じ）を含む。筒部８２の中心軸Ｘに沿って見ると、複数の弾性片９０は、当該筒部８２の中心軸Ｘを中心として放射状に並ぶ。

【0130】

外導体８０が可動側外導体４６に挿入された状態で、複数の弾性片９０が可動側外導体４６の内周部にその周方向に沿って均等間隔で接する。複数の弾性片９０が同じ形状であること、および、筒部８２の周方向に沿って均等間隔で並ぶことから、複数の弾性片９０は、同じ条件で可動側外導体４６に押付けられる。また、仮に複数の弾性片が切れ目のある筒部材によって支持されている場合、当該切れ目近くでは筒部材が内外方向に弾性変形し得るため、弾性片を支える力が弱くなり、当該弾性片を相手側導体に押付ける弾性力が弱くなる可能性がある。本実施形態では、筒部８２が一定形状に保たれ易く、従って、複数の弾性片９０が同条件で可動側外導体４６に所望の設計上の接触荷重で押付けられた状態に保たれ易い。

【0131】

＜効果＞
以上のように構成された同軸コネクタ６０によると、第１突出端部８４および第２突出端部８８は、筒形成部８６の周方向に重ねられた状態で、相互に固定されているため、筒部８２が開いたり、閉じたりし難く、一定の形状に保たれ易い。よって、複数の弾性片９０が相手側の可動側内導体４２との接続に適した一定位置にしっかりと保持され易く、所望の接触荷重を得易い。

【0132】

また、第１突出端部８４および第２突出端部８８は、筒形成部８６の外周側に突出しているため、第１突出端部８４および第２突出端部８８の固定を容易に行える。

【0133】

また、第１突出端部８４および第２突出端部８８が重ねられた状態で、端部固定部材９５の固定溝９６に挿入されているため、第１突出端部８４および第２突出端部８８が容易に固定状態に保たれる。また、第１突出端部８４および第２突出端部８８がより確実に開かないように保持される。

【0134】

また、第１突出端部８４および第２突出端部８８が固定溝９６に挿入された状態で、軸方向位置決め凸部８３ａｐが軸方向位置決め凹部９６ａｇに係止しているため、端部固定部材９５が中心軸Ｘの方向に沿って移動して筒部８２から脱落することが抑制される。

【0135】

また、第１突出端部８４および第２突出端部８８が固定溝９６に挿入された状態で、径方向位置決め凸部９６ｂｐが径方向位置決め凹部８３ｂｇに係止しているため、端部固定部材９５が外周側に移動して筒部８２から脱落することが抑制される。

【0136】

また、第１かしめ端部８５と第２かしめ端部８９とが、径方向において重ね合された状態で、かしめ固定部９９によってかしめ固定されているため、筒形成部８６の両端が径方向に位置ずれし難い。よって、筒部８２が一定の形状に保たれ易く、弾性片９０を相手側の可動側外導体４６に接続する際に、より所望の接触荷重を得易い。

【0137】

また、かしめ固定部９９と弾性片９０との間にスリット８２Ｓが形成されているため、第１かしめ端部８５と第２かしめ端部８９とをかしめ固定部９９によってしっかりと固定しても、そのかしめ固定のための加工の影響が弾性片９０に及び難い。よって、弾性片９０が相手側の外導体８０との接続に適した一定位置にしっかりと保持され易く、所望の接触荷重を得易い。

【0138】

スリット８２Ｓは、中心軸Ｘの方向において、第１突出端部８４および第２突出端部８８の重ね合せ体８３と、第１かしめ端部８５および第２かしめ端部８９のかしめ重ね合せ体９９Ｗとの間に位置している。このため、かしめの影響を弾性片９０側に及び難くしつつ、第１突出端部８４および第２突出端部８８の重ね合せ体９９Ｗによって弾性片９０をしっかりと保持できる。

【0139】

また、複数の弾性片９０が筒部８２の周方向において間隔をあけて並んでいるため、複数の弾性片９０が相手側の可動側外導体４６に良好に電気的に接続され得る。

【0140】

また、内導体６２と、内導体６２を収容する絶縁体７０と備えており、筒部８２内に絶縁体７０が収容されている同軸コネクタ６０において、外導体８０を相手側の可動側外導体４６に良好に電気的に接続できる。

【0141】

絶縁体７０の外周面に凹み７２ｇが形成され、第２かしめ端部８９が凹み７２ｇに嵌っているため、第２かしめ端部８９を利用して、絶縁体７０に対して外導体８０を位置決めできる。

【0142】

[変形例]
上記実施形態において、図９に示す変形例のように、径方向位置決め凸部９６ｂｐに対応する径方向位置決めガイド凸部１９６ｂｐおよび径方向位置決め凹部８３ｂｇに対応する径方向位置決めガイド凹部１８３ｂｇが、中心軸Ｘの方向においてより長く形成されてもよい。

【0143】

具体的には、径方向位置決めガイド凸部１９６ｂｐが弾性片９０側に向ってより大きく突出し、径方向位置決めガイド凹部１８３ｂｇが弾性片９０側に向ってより深く形成されている。中心軸Ｘの方向において、径方向位置決めガイド凸部１９６ｂｐおよび径方向位置決めガイド凹部１８３ｂｇは軸方向位置決め凸部８３ａｐを越えている。

【0144】

そして、第１突出端部８４および第２突出端部８８の重ね合せ体８３が端部固定部材９５の上側から固定溝９６に挿入される。この際、径方向位置決めガイド凸部１９６ｂｐが径方向位置決めガイド凹部１８３ｂｇに嵌った状態で、軸方向位置決め凸部８３ａｐが固定溝９６の内面に位置する軸方向位置決め凹部９６ａｇに係止する。このため、軸方向位置決め凸部８３ａｐと軸方向位置決め凹部９６ａｇとの係止状態が保たれ易く、端部固定部材９５が脱落し難い。

【0145】

なお、軸方向位置決め凹部９６ａｇは、軸方向位置決め凸部８３ａｐが固定溝９６の内面を削るか、変形させることによって形成された凹部であってもよい。

【0146】

第１突出端部と第２突出端部とは、筒形成部の径方向に沿って筒形成部の内周側に突出していてもよい。この場合、内周側突出する第１突出端部と第２突出端部とが、端部固定部材によって筒部の内周側で固定されていてもよい。

【0147】

なお、上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。

【符号の説明】

【0148】

１０ 機器
１２ ケース
１３ 第１ケース
１４ 第２ケース
１５ 底部
１６ 保持筒部
１７ 保持仕切部
１７ｈ 保持孔
１８ａ 係止突部
２０ 電気部品
２１ 回路基板
２２ 撮像素子
３０ 外部接続用同軸コネクタ
３２ 外部接続用内導体
３４ 外部接続用絶縁体
３６ 外部接続用外導体
４０ 中継コネクタ
４２ 可動側内導体
４４ 可動側絶縁体
４６ 可動側外導体
６０ 同軸コネクタ（コネクタ）
６２ 内導体
６４ 基端筒部
６４Ｐ 位置決め凸部
６４ａ 延長片
６４ｂ 係止突部
６６ 弾性片
７０ 絶縁体
７２ 筒部
７２ａ 突状部
７２ｇ 凹み
７２ｇ１ａ 第１側面
７２ｇ１ｂ 第２側面
７２ｇ２ 位置規制面
７２ｇｂ 底面
７６ 先端ガイド部
７７ 挿入孔
７８ 外周側ガイド面
８０ 外導体（コネクタ用導体）
８２ 筒部
８２Ｓ スリット
８３ 重ね合せ体
８３ａ 軸方向縁
８３ａｐ 軸方向位置決め凸部
８３ｂ 径方向縁
８３ｂｇ 径方向位置決め凹部
８４ 第１突出端部
８５ 第１かしめ端部
８６ 筒形成部
８８ 第２突出端部
８９ 第２かしめ端部
９０ 弾性片
９１Ｖ 曲げ箇所
９２ 傾斜部
９３ 膨出部
９３ａ 接点部
９４ 先端ガイド部
９５ 端部固定部材
９６ 固定溝
９６ａ 軸方向内面
９６ａｇ 軸方向位置決め凹部
９６ｂ 径方向内面
９６ｂｐ 径方向位置決め凸部
９９ かしめ固定部
９９Ｗ かしめ重ね合せ体
９９ａ 凸部
９９ｂ 凹部
１８３ｂｇ 径方向位置決めガイド凹部
１９６ｂｐ 径方向位置決めガイド凸部
Ｘ 中心軸

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】