(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008382
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】磁性体部品
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20250109BHJP
H01F 1/34 20060101ALI20250109BHJP
H01F 3/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H05K9/00 M
H01F1/34 140
H01F3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110516
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000155229
【氏名又は名称】株式会社明治ゴム化成
(74)【代理人】
【識別番号】100118119
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 大典
(72)【発明者】
【氏名】菅原 孝大
(72)【発明者】
【氏名】劉 嘉偉
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 輝一
(72)【発明者】
【氏名】河野 祐希
(72)【発明者】
【氏名】堀 浩之
【テーマコード(参考)】
5E041
5E321
【Fターム(参考)】
5E041AA01
5E041AA02
5E041AA07
5E041AB02
5E041BC05
5E041CA13
5E321AA23
5E321BB22
5E321BB44
5E321BB51
5E321GG11
(57)【要約】
【課題】電子機器から発生する電磁波や電子機器に影響する外部からの電磁波を低減、制御するための磁性体部品において、フェライト等の電磁波吸収体を確実に保護し、電磁波吸収体の破損を防止することを目的とする。
【解決手段】磁性体3としてのフェライトの一部分又は全面がエラストマー製保護部材2で覆われている磁性体部品1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の磁性体を備え、前記磁性体がエラストマー製保護部材で覆われていることを特徴とする磁性体部品。
【請求項2】
前記磁性体は一部分又は全面がエラストマー製保護部材で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の磁性体部品。
【請求項3】
前記磁性体はフェライトであることを特徴とする請求項1に記載の磁性体部品。
【請求項4】
前記磁性体はフェライトであり、前記磁性体の全面が前記エラストマー製保護部材で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性体部品。
【請求項5】
前記磁性体の少なくとも一部分が前記エラストマー製保護部材で覆われていると共に、前記磁性体と前記エラストマー製保護部材間に接着剤が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性体部品。
【請求項6】
前記磁性体の一部分が前記エラストマー製保護部材で覆われていると共に、前記磁性体の前記エラストマー製保護部材で覆われていない部分が接着剤で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の磁性体部品。
【請求項7】
前記エラストマー製保護部材は、ゴム製、熱可塑性エラストマー製又はゴム以外の熱硬化性エラストマー製であることを特徴とする請求項1から6のうち何れか1項に記載の磁性体部品。
【請求項8】
前記磁性体は板状、棒状、ブロック状又はリング状であることを特徴とする請求項1から6のうち何れか1項に記載の磁性体部品。
【請求項9】
前記磁性体は板状、棒状、ブロック状又はリング状であることを特徴とする請求項7に記載の磁性体部品。
【請求項10】
放熱体を備えていることを特徴とする請求項1から6のうち何れか1項に記載の磁性体部品。
【請求項11】
前記放熱体は粉状又は/及び粒状の熱伝導性物質であることを特徴とする請求項10に記載の磁性体部品。
【請求項12】
前記放熱体はシート状であることを特徴とする請求項10に記載の磁性体部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器から発生する電磁波や電子機器に影響する電磁波を低減、制御するための磁性体部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁波対策には電磁波を吸収するフェライト等の電磁波吸収体である磁性体が用いられている。そして、電磁波対策の部品として、平板状のフェライトコアを保護シートに粘着層を介して貼り付けたフェライトシートが提案されている(特許文献1)。そして、このフェライトシートにおいて、保護シートには電気絶縁性及び伸縮性を備えたポリエステルフィルムが用いられていた。又、保護シートはフェライトコアの一面にのみ貼り付けられ、フェライトコアは部分的にむき出しの状態で設置されていた。
【0003】
しかし、特許文献1の従来技術では、破損しやすいポリエステルフィルム製の保護シートが用いられているので、フェライトコアの保護が十分ではなく、フェライトコアが破損し易く、更に、その破片による他の部品の破損の恐れという問題点があった。又、フェライトコアが部分的にむき出しの状態で設置されているため、フェライトコアの保護が十分ではなく、フェライトコアが破損し易く、更に、その破片による他の部品の破損の恐れという問題点があった。
【0004】
又、他の電磁波対策の部品として、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂等の高分子材を用いた保護用シートの内部に、複数枚の小さな板状のフェライト板を水平方向に並べて設置した電磁波抑制シートが提案されている(特許文献2)。この特許文献2の従来技術によれば、フェライト板は保護用シートに完全に被覆されているので、特許文献1の従来技術に比べてフェライト板の破損を防止する効果が高くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-273671号公報
【特許文献2】特開2009-170548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載の電磁波抑制シートは、電磁波吸収体である磁性体の保護用のシートが硬い合成樹脂製のシートを用いて構成されているので、保護用のシートの弾性限界が小さく、弾性が充分ではないため、電磁波抑制シートに対する曲げや押圧等の応力により保護用のシート自体の破損が生じやすく、更に、保護用のシートの破損によりフェライトの保護が不十分になり、フェライトの破損が生じやすいという問題点があった。又、フェライトが破損した場合に、その破片が飛散することによる他の部品の破損や使用者の怪我等の恐れという問題点があった。
【0007】
又、特許文献1や特許文献2に記載の電磁波抑制シートは、電磁波吸収体の保護用のシートが合成樹脂製のシートを用いて構成されているので、保護用シートの弾性率が大きく、柔軟性が低いので、電磁波抑制シートに対する曲げや押圧等の応力によりフェライトに直接応力がかかり、フェライトの破損が生じやすいという問題点があった。又、電磁波抑制シートと他の部品との接触時に、保護用のシートで他の部品の凹凸の吸収が出来ず、設置場所が制限され、設置自由度が低いという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、電磁波を低減、制御するための磁性体部品において、フェライト等の電磁波吸収体である磁性体を確実に保護し、電磁波吸収体の破損を防止することを目的の一つとする。又、フェライト等の電磁波吸収体である磁性体が破損した場合であっても、その破片が飛散することを防止して、他の部品の破損や使用者の怪我等を防止することを目的とする。又、電磁波を低減、制御するための磁性体部品において、設置時における他の部品との接触時に、他の部品の凹凸を吸収することが出来、設置場所が制限されにくく、設置自由度を高くすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段としての本発明は、1又は複数の磁性体を備え、前記磁性体がエラストマー製保護部材で覆われている磁性体部品である。
【0010】
又、上記磁性体部品において、前記磁性体は一部分又は全面がエラストマー製保護部材で覆われている磁性体部品である。
【0011】
又、上記磁性体部品において、前記磁性体はフェライトである磁性体部品である。
【0012】
又、上記磁性体部品において、前記磁性体はフェライトであり、前記磁性体の全面が前記エラストマー製保護部材で被覆されている磁性体部品である。
【0013】
又、上記磁性体部品において、前記磁性体の少なくとも一部分が前記エラストマー製保護部材で覆われていると共に、前記磁性体と前記エラストマー製保護部材間に接着剤が積層されている磁性体部品である。
【0014】
又、上記磁性体部品において、前記磁性体の一部分が前記エラストマー製保護部材で覆われていると共に、前記磁性体の前記エラストマー製保護部材で覆われていない部分が接着剤で覆われている磁性体部品である。
【0015】
又、上記磁性体部品において、前記エラストマー製保護部材は、ゴム製、熱可塑性エラストマー製又はゴム以外の熱硬化性エラストマー製である磁性体部品である。
【0016】
又、上記磁性体部品において、前記磁性体は板状、棒状、ブロック状又はリング状である磁性体部品である。
【0017】
又、上記磁性体部品において、放熱体を備えている磁性体部品である。
【0018】
又、上記磁性体部品において、前記放熱体は粉状又は/及び粒状の熱伝導性物質である磁性体部品である。
【0019】
又、上記磁性体部品において、前記放熱体はシート状である磁性体部品である。
【発明の効果】
【0020】
以上のような本発明によれば、電磁波を低減、制御するための磁性体部品において、磁性体がエラストマー製保護部材で覆われているので、フェライト等の電磁波吸収体である磁性体を確実に保護し、磁性体の破損を防止することが可能となった。又、磁性体の全面を前記エラストマー製保護部材で被覆することにより、電磁波吸収体である磁性体をより確実に保護し、電磁波吸収体の破損を防止することが可能となった。又、フェライト等の電磁波吸収体である磁性体が破損した場合であっても、その破片が飛散することを防止して、他の部品の破損や使用者の怪我等を防止することが可能となった。又、電磁波を低減、制御するための磁性体部品において、磁性体がエラストマー製保護部材で覆われているので、設置時における他の部品との接触時に、他の部品の凹凸を吸収することが出来、設置場所が制限されにくく、設置自由度を高くすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の磁性体部品は、1又は複数の磁性体を備え、磁性体の一部分又は全面がエラストマー製保護部材で覆われている磁性体部品である。
【0023】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、磁性体部品1は、エラストマー製保護部材2の内部に磁性体3が設置されて構成されている。そして、磁性体3は板状の形状で、設置数は1枚とし、磁性体3はエラストマー製保護部材2から露出せず、磁性体3の全面がエラストマー製保護部材2に完全に被覆されて、エラストマー製保護部材2の内部に設置されている。
【0024】
エラストマー製保護部材2は、柔軟性、可撓性、ゴム状弾性を備えたエラストマー製の保護部材である。エラストマーとしては、ゴム、熱可塑性エラストマー、ゴム以外の熱硬化性エラストマーを用いることが出来る。エラストマーは他の高分子材料と比べて柔軟性、可撓性、弾性に優れ、低価格、配合内容を変えることにより様々な機能を付加することが可能であるので好ましい。又、エラストマーの中でも、ゴムは柔軟性、可撓性、弾性に優れ、配合内容を変えることにより様々な機能を付加することが容易に可能であるので好ましい。
【0025】
ゴムは特に限定されず、天然ゴムでも、合成ゴムでもよく、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴムのどちらでもよく、可撓性を有する範囲内の配合で構成されたゴムであればよい。
【0026】
熱可塑性エラストマーとしては、これらに限定されないが、共重合体エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等を用いることが出来る。又、熱硬化性エラストマーとしては、これに限定されないが、熱硬化性ウレタンエラストマー等を用いることが出来る。
【0027】
エラストマー製保護部材2の厚みは、特に限定されず、内蔵させる磁性体3の厚さに応じて所定の厚さとすることが出来るが、磁性体3を確実に保護するために、磁性体3の表面から0.1mm以上の厚みがあることが好ましい。
【0028】
磁性体3としては、軟質磁性体であれば特に限定されず、フェライト、鉄、パーマロイ、ケイ素鉄等を用いることが出来る。
【0029】
磁性体3は電磁波吸収能力が高く、電気抵抗が高いことから、フェライト(ソフトフェライト)で構成されていることが好ましい。又、フェライトは、電気抵抗が高いので、電流が流れ難く、絶縁体に近い物質であり、このため、発熱が少ない、言い換えれば発熱ロスが少ないという特徴があり、電磁波の磁気エネルギーの損失が少ないので、効率よく磁力(エネルギー)を伝達することも出来る。そのためフェライトは、電気自動車(EV)向けや無人搬送車(AGV)向けの充電用装置等においても好適に用いることが出来る。近年特にワイヤレス給電用コイルと共に使用する電磁波調整部材としてフェライトが使用されている場合が多いことからも、磁性体としては、フェライトを選定することが好ましい。
【0030】
フェライトは磁束をよく吸収する材料であるが、フェライトの中でも、比較的低周波数(1MHz以下)の電磁波に対して効果が高く、透磁率が高く、磁束密度も高いので、Mn-Zn系フェライトがより好ましい。
【0031】
磁性体3は、エラストマー製保護部材2から露出せず、エラストマー製保護部材2の内部に設置出来ればその大きさは特に限定されないが、特に磁性体3がフェライトである場合は、厚みが0.35~8mm程度が好ましく、厚みが1~5mm程度がより好ましい。厚みが0.35mm以上の方が、電磁波を吸収、制御する性能が周波数に関係なくよく、8mmより厚い場合には、磁性体部品1の重量が大きく増加するため、部品として重くなり好ましくないからである。
【0032】
ここで、磁性体部品1の製造方法について、エラストマー製保護部材がゴム製である場合を例に説明する。
図3に示すように、エラストマー製保護部材2と同じ材質であって、シート状の未加硫ゴムのエラストマー製シート20を2枚と1枚の磁性体3を準備し(
図3(a))、金型91内で、一方のエラストマー製シート20上に磁性体3を設置し(
図3(b))、磁性体3の上に他方のエラストマー製シート20を被せて設置し、磁性体3を2枚のエラストマー製シート20で挟み込む(
図3(c))。そして、金型91に金型92を合わせて金型9を閉じてゴムを加硫すると共に、磁性体3をエラストマー製保護部材2内に封入させた状態で固定する(
図3(d))。このようにして、磁性体3を備えた磁性体部品1が完成する。
【0033】
又、図示はしないが、エラストマー製保護部材2と磁性体3間に接着剤が積層され、エラストマー製保護部材2と磁性体3が接着剤で接着された構成としてもよい。このような構成とすることで、エラストマー製保護部材2内で磁性体3をより確実に固定することが出来る。接着剤は柔軟性、可撓性を有する合成樹脂製のものを用いることが出来る。
【0034】
又、
図1及び
図2に示す実施の形態では、磁性体3は板状の形状で、設置数は1枚としているが、この形態に限定されず、図示はしないが、2枚以上の同形状の磁性体を垂直方向に並べて設置してもよい。又、複数枚の磁性体を水平方向に並べて設置してもよく、又は複数枚の磁性体を水平方向に並べると共に複数枚の磁性体を垂直方向に並べて設置してもよい。又、複数の磁性体を設置する場合には、設置する複数の磁性体は全て同じ形状でもよいが、異なる形状でもよい。
【0035】
ここで、磁性体の水平方向の設置数に関わりなく、垂直方向に並べて設置する場合の磁性体部品の製造方法について、図示はしないが、エラストマー製シートがゴム製である場合を例に説明する。例えば垂直方向に2段に設置する場合、エラストマー製保護部材と同じ材質であって、未加硫ゴムのシート状のエラストマー製シートを3枚と2枚の磁性体を準備し、金型内で、第一のエラストマー製シート上に磁性体を設置し、その上に第二のエラストマー製シートを被せて設置し、第二のエラストマー製シート上に磁性体を設置し、その上に第三のエラストマー製シートを被せて設置し、2枚の磁性体を3枚のエラストマー製シートで交互に挟み込む。そして、金型を閉じてゴムを加硫し、磁性体を垂直方向に並べてエラストマー製保護部材内に封入させた状態で固定する。このようにして、垂直方向に設置された磁性体を備えた磁性体部品が完成する。
【0036】
図1及び
図2に示す磁性体部品1は、板状の磁性体3がシート状のエラストマー製保護部材2に内蔵されてシート状に構成されているが、磁性体部品及びエラストマー製保護部材の形状は特に限定されず、使用用途、設置場所、磁性体の形状等に応じて、板状、棒状、ブロック状又はリング状等の形状とすることが出来る。又、磁性体の形状はとくに限定されず、使用用途、設置場所等に応じて、板状、棒状、ブロック状又はリング状等とすることが出来る。尚、磁性体部品、エラストマー製保護部材、磁性体のリング状は切れ目がなく完全に円の形状の他、欧文字Cのように一部に開口部を有するものも含まれる。
【0037】
磁性体部品、エラストマー製保護部材及び磁性体の形状としては、これらに限定されないが、一部を
図3に示すように、夫々四角形の板状や、磁性体部品11、エラストマー製保護部材21及び磁性体31が円形の板状(
図4(a))等の板状とすることが出来、又、横断面が四角形等の多角形や円形等であると共に、磁性体部品12、エラストマー製保護部材22及び磁性体32が直線状の棒状(
図4(b))や、屈折状又は曲線状等の棒状とすることが出来る。又、磁性体部品13、エラストマー製保護部材23及び磁性体33が直方体のブロック状(
図4(c))や、円錐、角錐、円錐台、角錐台、球等のブロック状とすることが出来、又、磁性体部品14、エラストマー製保護部材24及び磁性体34が、断面が円形や方形であると共に、完全に円の形状のリング状(
図4(d))や、磁性体部品15、エラストマー製保護部材25及び磁性体35が一部に開口部を有するリング状(
図4(e))とすることが出来る。
【0038】
又、
図1から
図3に示す磁性体部品は、磁性体の形状と相似形や略同一形状としているが、磁性体部品の形状は、エラストマー製保護部材の厚み等を部分的に変化させ、或いは面取り等により、磁性体3の形状とは異なる形状としてもよい。
【0039】
又、磁性体部品は、磁性体の一部分のみがエラストマー製保護部材で覆われている構成としてもよい。このような構成として、特に限定されないが、
図5に示すように、磁性体34と平面視で同一形状の2枚のエラストマー製保護部材24間に磁性体34が積層されて、磁性体34の側面342が露出した構成の磁性体部品14(
図5(a))、1枚のエラストマー製保護部材25上に磁性体35が積層されて、磁性体35の上面351及び側面352が露出した構成の磁性体部品15(
図5(b))、1個のエラストマー製保護部材26内に、直方体の磁性体36の一面、ここでは上面361のみが露出した状態で埋設された構成の磁性体部品16(
図5(c))、棒状のエラストマー製保護部材27内に、棒状の磁性体37の両端面371が露出した状態で埋設された構成の磁性体部品17(
図5(d))等とすることが出来る。尚、磁性体の一部分のみがエラストマー製保護部材で覆われている構成においても、磁性体は上述のような、板状、棒状又はブロック状等の形状とすることが出来る。
【0040】
又、磁性体部品が、複数の磁性体を備える構成の場合、全ての磁性体の全面がエラストマー製保護部材で覆われている構成としてもよいが、一部の磁性体は一部分がエラストマー製保護部材で覆われると共に、一部の磁性体は全面がエラストマー製保護部材で覆われている構成、又は、全ての磁性体は一部分がエラストマー製保護部材で覆われている構成としてもよい。
【0041】
尚、複数の磁性体を水平方向又は垂直方向に並べて設置する場合、隣接する磁性体間にはエラストマー製保護部材が介在している構成とするが、介在していない構成としてもよい。隣接する磁性体間にエラストマー製保護部材が介在してない構成の場合であっても、全ての磁性体がエラストマー製保護部材で被覆され、磁性体部品の表面には磁性体が露出しない構成とすることも出来る。
【0042】
又、
図6(a)に示すように、磁性体部品191は放熱体5を備えることとしてもよい。放熱体5は磁性体部品191に放熱性を付与するための部材であり、粉状又は/及び粒状の熱伝導性物質を用いて構成することが出来る。熱伝導性物質としては、例えばアルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム等の熱伝導率[W/(m・K)]が2桁以上のセラミックス系固体物質を好適に用いることが出来る。一方、金属や合金は導電性があり、電流が流れやすいため本発明において放熱体へ使用されることはない。
【0043】
放熱体5はエラストマー製保護部材2の内部又は/及び表面に分散して設置されている。放熱体5は、エラストマー製保護部材2がゴム製の場合、ゴム100重量部に対し、50~200重量部を配合することが好ましい。これより配合量が少ないと熱伝導性が充分でなく、これより配合量が多いとエラストマー製保護部材2の柔軟性が悪化するからである。又、熱伝導性と柔軟性のバランスよい両立のためエラストマー製保護部材のゴム100重量部に対し、放熱体を75~200重量部配合することがより好ましい。
【0044】
又、
図6(b)に示すように、放熱体6はシート状に形成された公知の熱伝導シートを用いて構成することとしてもよい。シート状の放熱体6の設置位置は磁性体シート2の内部でも表面でもよいが、放熱性の観点から磁性体部品192の表面への設置が好ましい。
【0045】
更に、エラストマー製保護部材に難燃性物質を含有させて磁性体部品に難燃性を付与することとしてもよい。難燃性物質としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)等のハロゲン系化合物、トリフェニルホスフェート等のリン系化合物、三酸化アンチモン等のアンチモン系化合物等を用いることが出来る。尚、難燃性物質としては、金属箔、めっき等の金属や合金は導電性があり、電流が流れやすいため本発明においては除外される。又、磁性体部品には、公知の物質を配合して耐熱性、耐オゾン性等を付与することとしてもよい。
【0046】
磁性体部品に、粉状や粒状の放熱体、難燃性物質、耐熱性物質、耐オゾン性物質を含有させる場合、エラストマー製保護部材に保持、含有させることが出来る。その製造方法としては、エラストマー製保護部材がゴム製の場合、未加硫のゴムにそれらの物質の粒子を混練してエラストマー製シートを構成し、このエラストマー製シートを用いて、上述のように磁性体部品を製造することが出来る。
【0047】
又、磁性体部品の他の実施形態として、磁性体の一部分のみがエラストマー製保護部材で覆われている構成の場合、
図7(a)に示すように、磁性体部品181はエラストマー製保護部材28と磁性体38間に接着剤7が積層され、エラストマー製保護部材28と磁性体38が接着剤7で接着された構成としてもよい。又、
図7(b)に示すように、磁性体部品182は、エラストマー製保護部材28上に磁性体38が固定され、磁性体38の一部分がエラストマー製保護部材28で覆われると共に、磁性体38のエラストマー製保護部材2で覆われていない部分の一部分又が全部は接着剤7で覆われた構成とすることも出来る。又、
図7(c)に示すように、磁性体部品183は、エラストマー製保護部材2と磁性体3間に接着剤7が積層され、エラストマー製保護部材28と磁性体38が接着剤7で接着され、磁性体38の一部分がエラストマー製保護部材28で覆われると共に、磁性体38のエラストマー製保護部材28で覆われていない部分の一部分又は全部は接着剤7で覆われた構成としてもよい。このような構成とすることで、エラストマー製保護部材と磁性体をより確実に固定することが出来る。又、接着剤7は、磁性体の酸化防止、塩素系ガスの金属腐食防止の作用も備えている。接着剤7は柔軟性、可撓性を有する合成樹脂製のものを用いることが出来る。
【0048】
又、図示はしないが、磁性体部品の下面又は上面に粘着剤や接着剤等で構成される接着層を設けて、磁性体部品を電子機器や電子部品に接着可能に構成することとしてもよい。
【0049】
本発明の磁性体部品は、これらに限定されないが、ケーブルや基盤パターンからのノイズ輻射防止、基板間でのノイズの誘導防止、ワイヤレス給電システムの伝送効率低下の防止等に用いることが出来る。
【実施例0050】
表1に示す磁性体部品を作製し、耐衝撃性を測定した。実施例1の磁性体部品の作製は、
図3に示すように、エラストマー製保護部材2と同じ材質であって、シート状の未加硫ゴムのエラストマー製シート20を2枚と1枚の板状の磁性体3としてのMn-Zn系フェライトPC95(TDK株式会社製)を準備し(
図3(a))、金型91内で、一方のエラストマー製シート20上に磁性体3を設置し(
図3(b))、磁性体3の上に他方のエラストマー製シート20を被せて設置し、磁性体3を2枚のエラストマー製シート20で挟み込み(
図3(c))、金型91に金型92を合わせて金型9を閉じてゴムを加硫すると共に、磁性体3をエラストマー製保護部材2内に封入させた状態で固定し(
図3(d))、磁性体3を備えた磁性体部品1を作製した。比較例1として、保護部材を備えない、むき出しの板状のフェライトPC95を用い、比較例2として、市販のアクリル系樹脂製のアクリル板を保護部材とした磁性体部品を用いた。実施例1及び比較例2の保護部材の厚みは1mmとし、保護部材で縦100mm、横100mm、厚さ5mmの磁性体としてのフェライトを完全に被覆した。
【0051】
そして、実施例1、比較例1及び比較例2の部品を2mの高さから落下して、落下後の磁性体3の状態を観察した。磁性体3としてのフェライトが割れない場合を合格とし、表1中○で示し、フェライトが割れた場合に不合格として、表1中×で示した。結果を表1に示す。
【0052】
【0053】
表1から明らかなように、エラストマー製保護部材を用いた実施例1では、保護部材を用いない比較例1やアクリル系樹脂を保護部材として用いた比較例2と比較して、耐衝撃性が優れていることが分かる。
以上のような本発明の磁性体部品は、電磁波を吸収、遮蔽、低減、制御することが出来ると共に、フェライト等の電磁波吸収体である磁性体を確実に保護し、破損を防止することが出来るので、電子部品、電子機器の部品として極めて有用に利用することが出来る。