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特開2025-83856データ処理装置、データ処理方法及びデータ処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025083856
(43)【公開日】2025-06-02
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理方法及びデータ処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/903 20190101AFI20250526BHJP
【FI】
G06F16/903
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197492
(22)【出願日】2023-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】591280485
【氏名又は名称】ソフトバンクグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂上 拓磨
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175DA10
5B175HB03
5B175KA11
(57)【要約】
【課題】生成モデルにより生成されたコンテンツによって不当に利益を得ることを防止することができる装置、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】データ処理装置は、コンテンツを生成するために生成モデルに入力する命令を監視する監視部と、前記命令に基づいて、前記生成モデルにより生成された前記コンテンツの盗作を検知する検知部と、前記検知された結果と前記コンテンツとを関連付ける関連部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツを生成するために生成モデルに入力する命令を監視する監視部と、
前記命令に基づいて、前記生成モデルにより生成された前記コンテンツの盗作を検知する検知部と、
前記検知された結果と前記コンテンツとを関連付ける関連部と、
を備える、データ処理装置。
【請求項2】
前記命令及び前記コンテンツは、ブロックチェーン上でやり取りされる、
請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
APIを介して前記命令を前記生成モデルへ供給し、前記APIを介して前記コンテンツを前記生成モデルから取得するインタフェース部を更に備える、
請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記命令から予め登録された1又は複数の禁止ワードが抽出された場合に、前記コンテンツが盗作であることを検知する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記関連部は、盗作であることが検知された前記コンテンツにフラグを付与する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記関連部は、前記コンテンツに盗作の度合いを数値化したスコアを付与する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記検知された結果に基づいて、前記コンテンツの出品可否を判断する判断部を更に備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
コンピュータが、
コンテンツを生成するために生成モデルに入力する命令を監視することと、
前記命令に基づいて、前記生成モデルにより生成された前記コンテンツの盗作を検知することと、
前記検知された結果と前記コンテンツとを関連付けることと、
を含む処理を実行する、データ処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
コンテンツを生成するために生成モデルに入力する命令を監視することと、
前記命令に基づいて、前記生成モデルにより生成された前記コンテンツの盗作を検知することと、
前記検知された結果と前記コンテンツとを関連付けることと、
を含む処理を実行させるための、データ処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、データ処理装置、データ処理方法及びデータ処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、少なくとも一つのプロセッサにより遂行される、ペルソナチャットボット制御方法であって、ユーザ発話を受信するステップと、前記ユーザ発話を、チャットボットのキャラクターに関する説明と関連した指示文を含むプロンプトに追加するステップと前記プロンプトをエンコードするステップと、前記エンコードしたプロンプトを言語モデルに入力して、前記ユーザ発話に応答するチャットボット発話を生成するステップ、を含む、方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-180282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、AI(Artificial Intelligence)の目覚ましい進歩により、生成モデルによりコンテンツを生成する様々な生成AIが登場している。これにより、生成AIを用いてコンテンツを生成するクリエイタ(「AIクリエイタ」ともいう。)は、コンテンツを比較的簡単に生成することができる。一方で、生成AIを用いずにコンテンツを制作するクリエイタ(「非AIクリエイタ」や「手書きクリエイタ」ともいう。)は、自身が制作した作品が生成AIにより簡単に盗作されてしまうという問題を抱えている。
【0005】
そこで、本開示の技術は、生成モデルにより生成されたコンテンツによって不当に利益を得ることを防止することができる装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の技術に係る第1の態様は、コンテンツを生成するために生成モデルに入力する命令を監視する監視部と、前記命令に基づいて、前記生成モデルにより生成された前記コンテンツの盗作を検知する検知部と、前記検知された結果と前記コンテンツとを関連付ける関連部と、を備える、データ処理装置である。
【0007】
前記命令及び前記コンテンツは、ブロックチェーン上でやり取りされてもよい。
【0008】
前記データ処理装置は、APIを介して前記命令を前記生成モデルへ供給し、前記APIを介して前記コンテンツを前記生成モデルから取得するインタフェース部を更に備えてもよい。
【0009】
前記検知部は、前記命令から予め登録された1又は複数の禁止ワードが抽出された場合に、前記コンテンツが盗作であることを検知してよい。
【0010】
前記関連部は、盗作であることが検知された前記コンテンツにフラグを付与してもよい。
【0011】
前記関連部は、前記コンテンツに盗作の度合いを数値化したスコアを付与してもよい。
【0012】
前記データ処理装置は、前記検知された結果に基づいて、前記コンテンツの出品可否を判断する判断部を更に備えてもよい。
【0013】
本開示の技術に係る第2態様は、コンピュータが、コンテンツを生成するために生成モデルに入力する命令を監視することと、前記命令に基づいて、前記生成モデルにより生成された前記コンテンツの盗作を検知することと、前記検知された結果と前記コンテンツとを関連付けることと、を含む処理を実行する、データ処理方法である。
【0014】
本開示の技術に係る第3態様は、コンピュータに、コンテンツを生成するために生成モデルに入力する命令を監視することと、前記命令に基づいて、前記生成モデルにより生成された前記コンテンツの盗作を検知することと、前記検知された結果と前記コンテンツとを関連付けることと、を含む処理を実行させるための、データ処理プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】データ処理システムの構成の一例を示す概念図である。
図2】データ処理装置及びユーザ端末の要部機能の一例を示す概念図である。
図3】特定処理の概要を示す。
図4】データ処理装置の特定処理部の機能構成を概略的に示す。
図5】データ処理装置による特定処理の動作フローの一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本開示の技術に係るデータ処理装置、データ処理方法及びデータ処理プログラムの実施形態の一例について説明する。
【0017】
先ず、以下の説明で使用される文言について説明する。
【0018】
以下の実施形態において、符号付きのプロセッサ(以下、単に「プロセッサ」と称する)は、1つの演算装置であってもよいし、複数の演算装置の組み合わせであってもよい。また、プロセッサは、1種類の演算装置であってもよいし、複数種類の演算装置の組み合わせであってもよい。演算装置の一例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units)、APU(Accelerated Processing Unit)、又はTPU(Tensor Processing Unit)等が挙げられる。
【0019】
以下の実施形態において、符号付きのRAM(Random Access Memory)は、一時的に情報が格納されるメモリであり、プロセッサによってワークメモリとして用いられる。
【0020】
以下の実施形態において、符号付きのストレージは、各種プログラム及び各種パラメータ等を記憶する1つ又は複数の不揮発性の記憶装置である。不揮発性の記憶装置の一例としては、フラッシュメモリ(SSD(Solid State Drive))、磁気ディスク(例えば、ハードディスク)、又は磁気テープ等が挙げられる。
【0021】
以下の実施形態において、符号付きの通信I/F(Interface)は、通信プロセッサ及びアンテナ等を含むインタフェースである。通信I/Fは、複数のコンピュータ間での通信を司る。通信I/Fに対して適用される通信規格の一例としては、5G(5th Generation Mobile Communication System)、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等を含む無線通信規格が挙げられる。
【0022】
以下の実施形態において、「A及び/又はB」は、「A及びBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「A及び/又はB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、A及びBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「及び/又は」で結び付けて表現する場合も、「A及び/又はB」と同様の考え方が適用される。
【0023】
図1には、実施形態に係るデータ処理システム10の構成の一例が示されている。
【0024】
図1に示すように、データ処理システム10は、データ処理装置12及びユーザ端末14を備えている。データ処理装置12の一例としては、サーバが挙げられる。ユーザ端末14の一例としては、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等が挙げられる。データ処理装置12は、本開示の技術に係る「データ処理装置」の一例である。
【0025】
データ処理装置12は、コンピュータ22、データベース24、及び通信I/F26を備えている。コンピュータ22は、本開示の技術に係る「コンピュータ」の一例である。コンピュータ22は、プロセッサ28、RAM30、及びストレージ32を備えている。プロセッサ28、RAM30、及びストレージ32は、バス34に接続されている。また、データベース24及び通信I/F26も、バス34に接続されている。通信I/F26は、ネットワーク54に接続されている。ネットワーク54の一例としては、WAN(Wide Area Network)及び/又はLAN(Local Area Network)等が挙げられる。
【0026】
ユーザ端末14は、コンピュータ36、受付装置38、出力装置40、カメラ42、及び通信I/F44を備えている。コンピュータ36は、プロセッサ46、RAM48、及びストレージ50を備えている。プロセッサ46、RAM48、及びストレージ50は、バス52に接続されている。また、受付装置38、出力装置40、及びカメラ42も、バス52に接続されている。
【0027】
受付装置38は、タッチパネル38A及びマイクロフォン38B等を備えており、ユーザ入力を受け付ける。タッチパネル38Aは、指示体(例えば、ペン又は指等)の接触を検出することにより、指示体の接触によるユーザ入力を受け付ける。マイクロフォン38Bは、ユーザの音声を検出することにより、音声によるユーザ入力を受け付ける。制御部46Aは、タッチパネル38A及びマイクロフォン38Bによって受け付けたユーザ入力を示すデータをデータ処理装置12に送信する。データ処理装置12では、特定処理部290が、ユーザ入力を示すデータを取得する。
【0028】
出力装置40は、ディスプレイ40A及びスピーカ40B等を備えており、データをユーザが知覚可能な表現形(例えば、音声及び/又はテキスト)で出力することでデータをユーザに対して提示する。ディスプレイ40Aは、プロセッサ46からの指示に従ってテキスト及び画像等の可視情報を表示する。スピーカ40Bは、プロセッサ46からの指示に従って音声を出力する。カメラ42は、レンズ、絞り、及びシャッタ等の光学系と、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の撮像素子とが搭載された小型デジタルカメラである。
【0029】
通信I/F44は、ネットワーク54に接続されている。通信I/F44及び26は、ネットワーク54を介してプロセッサ46とプロセッサ28との間の各種情報の授受を司る。
【0030】
図2には、データ処理装置12及びユーザ端末14の要部機能の一例が示されている。
【0031】
図2に示すように、データ処理装置12では、プロセッサ28によって特定処理が行われる。ストレージ32には、特定処理プログラム56が格納されている。特定処理プログラム56は、本開示の技術に係る「データ処理プログラム」の一例である。プロセッサ28は、ストレージ32から特定処理プログラム56を読み出し、読み出した特定処理プログラム56をRAM30上で実行する。特定処理は、プロセッサ28がRAM30上で実行する特定処理プログラム56に従って特定処理部290として動作することによって実現される。
【0032】
ユーザ端末14では、プロセッサ46によって受付出力処理が行われる。ストレージ50には、受付出力プログラム62が格納されている。受付出力プログラム62は、データ処理システム10によって特定処理プログラム56と併用される。プロセッサ46は、ストレージ50から受付出力プログラム62を読み出し、読み出した受付出力プログラム62をRAM48上で実行する。受付出力処理は、プロセッサ46がRAM48上で実行する受付出力プログラム62に従って、制御部46Aとして動作することによって実現される。
【0033】
次に、データ処理装置12がコンテンツの盗作を検知する特定処理を行う際の、特定処理部290の処理について説明する。なお、ここでいう「コンテンツ」とは、デジタル形式で構成されているいわゆる「デジタルコンテンツ」を示している。これより先、コンテンツが画像である場合を一例として説明するが、これに限定されるものではない。コンテンツは、動画、音楽、電子書籍、ゲーム等の様々なコンテンツであってよい。
【0034】
図3には、コンテンツの盗作を検知する特定処理の概要が示されている。一般に、(1)クリエイタがコンテンツを生成、(2)クリエイタがコンテンツを出品、(3)購入ユーザがコンテンツを購入する取引が行われている。このような取引において、コンテンツをNFT(Non-Fungible Token)としてNFTプラットフォーム(「NFTマーケットプレイス」ともいう)上で取引するモデルが知られている。
【0035】
NFTとは、ブロックチェーンを基盤として作成された代替不可能なデジタルデータである。これまで、デジタルコンテンツは簡単に複製・改ざんすることができたため、資産価値を持たせることが困難であった。これに対して、ブロックチェーンを活用したNFTは、デジタルコンテンツにもアナログコンテンツと同様に唯一無二の資産価値を持たせることが可能になるため、注目を集めている。
【0036】
近年、AIの目覚ましい進歩により、AIによりこのようなコンテンツを生成する様々な生成ツール16が登場している。生成ツール16においては、生成モデル58により様々なコンテンツを生成する。生成モデル58は、本開示の技術に係る「生成モデル」の一例である。
【0037】
コンテンツが画像である場合、生成モデル58の一例としては、Stable Diffusion(インターネット検索<URL: https://stablediffusionweb.com/>)、DALL-E2(インターネット検索<URL: https://openai.com/dall-e-2>)、Midjourney(インターネット検索<URL:https://www.midjourney.com/>)等の生成AIが挙げられる。このような生成AIにおいては、プロンプトと呼ばれる命令が生成モデル58に入力されると、生成モデル58が命令に応じたコンテンツを生成してこれを出力する。
【0038】
本実施形態における特定処理では、このように生成モデル58に入力する命令を監視して生成モデル58によって生成されたコンテンツの盗作を検知することで、生成モデル58により生成されたコンテンツによって不当な利益を得ることを防止しようとするものである。
【0039】
これを実現するため、NFTプラットフォームには、生成ツール16がAPI連携されていてよい。API(Application Programming Interface)連携とは、外部のアプリケーションやシステムを、APIを使ってデータ連携させることをいう。
【0040】
この場合、AIクリエイタは、NFTプラットフォームにウォレット接続(いわゆる、ログイン)し、拡張機能としてデータ連携されている生成ツール16を選択することで、あたかも直接アクセスしているかのように生成AIを利用することができる。一方で、AIクリエイタと生成モデル58との間のやり取りは全てAPIを介することとなるため、NFTプラットフォームに実装されたデータ処理装置12は、このようなやり取りを監視することができる。そこで、本実施形態に係るデータ処理装置12は、生成モデル58によるコンテンツの生成ルートをトラッキングすることで、生成されたコンテンツの盗作を検知する。これについて詳細に説明する。
【0041】
図4には、データ処理装置の特定処理部の機能構成が概略的に示されている。特定処理部290は、インタフェース部291と、監視部292と、検知部293と、関連部294と、判断部295とを備えている。
【0042】
インタフェース部291は、APIを介してコンテンツを生成するための命令を生成モデル58へ供給し、APIを介してコンテンツを生成モデル58から取得する。
【0043】
監視部292は、コンテンツを生成するために生成モデル58に入力する命令を監視する。
【0044】
検知部293は、命令に基づいて、生成モデル58により生成されたコンテンツの盗作を検知する。
【0045】
関連部294は、検知された結果とコンテンツとを関連付ける。
【0046】
判断部295は、検知された結果に基づいて、コンテンツの出品可否を判断する。
【0047】
次に、データ処理システム10の作用について説明する。
【0048】
図5には、データ処理装置による特定処理の動作フローの一例が概略的に示されている。本図を参照しながら特定処理の流れを説明する。なお、本図に示す特定処理の流れは、本開示の技術に係る「データ処理方法」の一例である。
【0049】
本動作フローは、AIクリエイタがNFTプラットフォームにウォレット接続し、生成ツール16を選択することにより開始されてよい。
【0050】
ステップS301において、コンピュータ22は、インタフェース部291として、APIを介してコンテンツを生成するための命令を生成モデル58へ供給する。これに応じて、生成モデル58は、入力された命令に応じたコンテンツを生成してこれを出力する。そして、コンピュータ22は、インタフェース部291として、APIを介してコンテンツを生成モデル58から取得する。
【0051】
ここで、コンテンツが画像である場合、命令は、例えば次のようなプロンプトであってよい。
<プロンプト1>
「A氏(原作者)が制作しそうな画像を作って下さい。」
<プロンプト2>
「X(作品名)を真似した画像を作って下さい。」
<プロンプト3>
「3歳の子どもが庭で両親と雪遊びをしている画像をデフォルメタッチで作ってください。」
【0052】
プロンプト1がAIクリエイタにより入力されると、コンピュータ22は、APIを介してこれを生成モデル58へ供給してよい。そして、コンピュータ22は、APIを介してプロンプト1に応じて生成モデル58が生成した画像1を取得してよい。同様に、プロンプト2がAIクリエイタにより入力されると、コンピュータ22は、APIを介してこれを生成モデル58へ供給してよい。そして、コンピュータ22は、APIを介してプロンプト2に応じて生成モデル58が生成した画像2を取得してよい。同様に、プロンプト3がAIクリエイタにより入力されると、コンピュータ22は、APIを介してこれを生成モデル58へ供給してよい。そして、コンピュータ22は、APIを介してプロンプト3に応じて生成モデル58が生成した画像3を取得してよい。
【0053】
上述のとおり、生成ツール16は、ブロックチェーンを活用したNFTプラットフォームにAPI連携されているので、AIクリエイタと生成モデル58との間でやり取りする命令及びコンテンツは、全てブロックチェーン上でやり取りされることとなる。このように、ブロックチェーンのもとでコンテンツを生成する場合、コンテンツがどのような命令により生成されたものであるかを改ざんすることは、事実上不可能である。
【0054】
ステップS302において、コンピュータ22は、監視部292として、コンテンツを生成するために生成モデル58に入力する命令を監視する。
【0055】
ステップS303において、コンピュータ22は、監視部292として、命令から予め登録された1又は複数の禁止ワードが抽出されたか否か判定する。そして、コンピュータ22は、検知部293として、命令から予め登録された1又は複数の禁止ワードが抽出された(Yes)と判定された場合、コンテンツが盗作であることを検知してよい。コンテンツが盗作であることが検知された場合、コンピュータ22は、処理をステップS304へ進める。一方、禁止ワードが抽出されていない(No)と判定された場合、コンピュータ22は、処理をステップS305へ進める。
【0056】
この際、禁止ワードには、「A氏」、「グループB」等、コンテンツの原作者の名前(個人名や団体名を含む)やアーティスト名が含まれていてよい。また、禁止ワードには、「X」、「Y」等、コンテンツの作品の名称が含まれていてよい。また、禁止ワードには、「真似」、「模倣」等、盗作を窺わせる用語が含まれていてよい。コンピュータ22は、例えばこのような禁止ワードを用いて命令を検索(あいまい検索を含む)することにより、命令から禁止ワードを抽出してよい。
【0057】
ここで、プロンプト1をあいまい検索した結果、「A氏」という禁止ワードが抽出されたとする。この場合、コンピュータ22は、画像1が盗作であることを検知してよい。同様に、プロンプト2をあいまい検索した結果、「X」及び「真似」という禁止ワードが抽出されたとする。この場合、コンピュータ22は、画像2が盗作であることを検知してよい。コンピュータ22は、このように命令から予め登録された1又は複数の禁止ワードが抽出された場合に、コンテンツが盗作であることを検知してよい。
【0058】
そして、ステップS304において、コンピュータ22は、関連部294として、画像1及び画像2に盗作であることを示すフラグを付与する。コンピュータ22は、例えばこのようにして、盗作であることが検知されたコンテンツにフラグを付与してよい。これにより、コンピュータ22は、検知された結果とコンテンツとを関連付けることができる。
【0059】
一方、プロンプト3をあいまい検索した結果、いずれの禁止ワードも抽出されなかったとする。この場合、コンピュータ22は、ステップS304の処理を省略する。
【0060】
ステップS305において、コンピュータ22は、コンテンツを格納する。例えば、コンピュータ22は、フラグが付与された画像1及び画像2と、フラグが付与されていない画像3とを、NFTプラットフォームのコレクションボックスに格納する。
【0061】
そうすると、AIクリエイタは、コレクションボックスに格納されているコンテンツの中から出品を希望するコンテンツを選択することができるようになる。換言すれば、コレクションボックスに格納されていないコンテンツは出品することができない。したがって、NFTプラットフォーム上で取引されるコンテンツは、データ処理装置12が生成ルートをトラッキングしている状況下において、生成AIを用いて生成したコンテンツに限定されることとなる。
【0062】
ステップS306において、コンピュータ22は、ユーザ端末14から出品指示を受領する。ここでは、コンピュータ22は、NFTプラットフォームのコレクションボックスに格納されている画像1、画像2及び画像3の出品を希望する指示を受領したものとする。
【0063】
ステップS307において、コンピュータ22は、判断部295として、出品を希望するコンテンツにフラグが付与されているか否か判定する。例えば、コンピュータ22は、画像1及び画像2にはフラグが付与されているため、画像1及び画像2は出品できないと判断する。出品できないと判断された場合、コンピュータ22は、処理をステップS308へ進める。一方、コンピュータ22は、画像3にはフラグが付与されていないため、画像3は出品できると判断する。出品できると判断された場合、コンピュータ22は、処理をステップS309へ進める。コンピュータ22は、例えばこのようにして、検知された結果に基づいて、コンテンツの出品可否を判断することができる。
【0064】
ステップS308において、コンピュータ22は、コンテンツの出品を拒否する。ここでは、コンピュータ22は、画像1及び画像2の出品を拒否し、ユーザ端末14へ画像1及び画像2の出品が拒否された旨のメッセージを送信する。
【0065】
一方、ステップS309において、コンピュータ22は、コンテンツの出品を許可する。ここでは、コンピュータ22は、画像3の出品を許可し、ユーザ端末14へ画像3が出品された旨のメッセージを送信する。これにより、購入ユーザは、NFTプラットフォーム上で画像3を購入することができる。そして、コンピュータ22は、特定処理を終了する。
【0066】
なお、上述の説明では、コンピュータ22が、ステップS301においてコンテンツを取得した後に監視処理を実行する場合を一例として示した。しかしながら、コンテンツの生成に時間を要する場合には、コンピュータ22は、監視処理をコンテンツの取得に先立って実行してもよい。
【0067】
また、上述の説明では、コンピュータ22が、盗作であることが検知されたコンテンツに対してフラグを付与する場合を一例として示した。しかしながら、これに限定されるものではない。コンピュータ22は、画像1に対して1つの禁止ワードが抽出されたことを示すスコア1を付与してもよい。同様に、コンピュータ22は、画像2に対して2つの禁止ワードが抽出されたことを示すスコア2を付与してもよい。コンピュータ22は、例えばこのようにして、コンテンツに盗作の度合いを数値化したスコアを付与してもよい。
【0068】
この場合、ステップS307において、コンピュータ22は、スコアが予め定められた閾値を超えるか否か判定してよい。そして、スコアが予め定められた閾値を超えるコンテンツは出品できないと判断し、スコアが予め定められた閾値以下のコンテンツは出品できると判断してよい。
【0069】
また、上述の説明では、盗作であることが検知されたコンテンツに対してのみフラグやスコアを付与する一方、盗作であることが検知されなかったコンテンツに対しては何も付与しない、すなわち、コンテンツが盗作ではないことを暗示的に示す場合を一例として示した。しかしながら、盗作であることが検知されなかったコンテンツに対して盗作ではないことを示すフラグを付与したり、抽出された禁止ワードの数が0であることを示すスコア0を付与したりすることで、コンテンツが盗作ではないことを明示的に示してもよい。
【0070】
このように、本実施形態に係るデータ処理装置12は、コンテンツを生成するために生成モデル58に入力する命令を監視し、生成モデル58により生成されたコンテンツの盗作を検知し、検知結果とコンテンツとを関連付ける。これにより、本実施形態に係るデータ処理装置12によれば、生成AIによる盗作を検知してコンテンツと紐付けることができるので、生成されたコンテンツによって不当に利益を得ることを防止することができる。したがって、法規制によってAIの進化を止めることなく、手書きクリエイタは、自分が制作した作品の権利が侵害されることを心配せずにこれまでどおり作品の制作に励むことができる。
【0071】
また、生成モデルに入力する命令及び生成モデルにより生成されたコンテンツの両者は、ブロックチェーン上でやり取りされてもよい。これにより、コンテンツがどのような命令により生成されたものであるかを改ざんすることが、事実上不可能となる。そのため、データ処理装置12によれば、盗作を検知するために監視対象とする情報が改ざんされることを防止することができる。
【0072】
また、データ処理装置12は、APIを介して命令を生成モデルへ供給し、APIを介してコンテンツを生成モデルから取得してもよい。これにより、データ処理装置12によれば、生成モデル58によるコンテンツの生成ルートをトラッキングすることができると共に、AIクリエイタに対しては、あたかも生成ツール16に直接アクセスしているかのように生成AIを利用できる環境を提供することができる。特に、既存の生成AIを用いる場合、既存の生成AI自体をブロックチェーンに実装することはできない。これに対して、データ処理装置12によれば、API連携を用いることで、ブロックチェーンに新たな生成AIを設計することなく、既存の生成AIをブロックチェーンに取り込むことができる。
【0073】
また、データ処理装置12は、命令から禁止ワードが抽出された場合に、コンテンツが盗作であることを検知してもよい。これにより、禁止ワードを検索するという比較的簡単な処理により、コンテンツの盗作を検知することができる。
【0074】
また、データ処理装置12は、盗作であることが検知されたコンテンツにフラグを付与してもよい。これにより、データ処理装置12によれば、フラグの有無のみでコンテンツが盗作であるか否かを識別することができる。
【0075】
また、データ処理装置12は、コンテンツに盗作の度合いを数値化したスコアを付与してもよい。これにより、データ処理装置12によれば、盗作であるか否かがあいまいな場合であっても、客観的な数値をコンテンツに関連付けることができる。
【0076】
また、データ処理装置12は、検知された結果に基づいて、コンテンツの出品可否を判断してもよい。これにより、データ処理装置12によれば、盗作の検知機能と出品機能とを連携させた一体のサービスを提供することができる。したがって、データ処理装置12によれば、生成AIによるコンテンツが手書きクリエイタの作品の権利を侵害している等の訴訟を起こされるリスクを未然に防ぐことができる。
【0077】
また、上述のとおり、NFTプラットフォーム上で取引されるコンテンツは、データ処理装置12が生成ルートをトラッキングしている状況下において、生成AIを用いて生成したコンテンツに限定されてよい。これにより、データ処理装置12によれば、生成AIによるコンテンツのみが存在するNFTプラットフォームを作成することができる。したがって、クリエイタを本業としている手書きクリエイタの作品と、生成AIを用いたAIクリエイタのコンテンツとを棲み分けすることができる。そのため、手書きクリエイタの作品はオリジナルの物として価値が担保されつつも、AIクリエイタのコンテンツは生成AIによるコンテンツとして楽しまれる世の中を実現することができる。
【0078】
以上、本開示に係るシステムをデータ処理装置12の機能を主として説明したが、本開示に係るシステムはサーバに実装されているとは限らない。本開示に係るシステムは、一般的な情報処理システムとして実装されていてもよい。本開示は、例えば、パーソナルコンピュータで動作するソフトウェアプログラム、スマートフォン等で動作するアプリケーションとして実装されてもよい。本開示に係る方法はSaaS(Software as a Service)形式でユーザに対して提供されてもよい。
【0079】
上記実施形態では、1台のコンピュータ22によって特定処理が行われる形態例を挙げたが、本開示の技術はこれに限定されず、コンピュータ22を含めた複数のコンピュータによる特定処理に対する分散処理が行われるようにしてもよい。
【0080】
上記実施形態では、ストレージ32に特定処理プログラム56が格納されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、特定処理プログラム56がUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの可搬型のコンピュータ読み取り可能な非一時的格納媒体に格納されていてもよい。非一時的格納媒体に格納されている特定処理プログラム56は、データ処理装置12のコンピュータ22にインストールされる。プロセッサ28は、特定処理プログラム56に従って特定処理を実行する。
【0081】
また、ネットワーク54を介してデータ処理装置12に接続されるサーバ等の格納装置に特定処理プログラム56を格納させておき、データ処理装置12の要求に応じて特定処理プログラム56がダウンロードされ、コンピュータ22にインストールされるようにしてもよい。
【0082】
なお、ネットワーク54を介してデータ処理装置12に接続されるサーバ等の格納装置に特定処理プログラム56の全てを格納させておいたり、ストレージ32に特定処理プログラム56の全てを記憶させたりしておく必要はなく、特定処理プログラム56の一部を格納させておいてもよい。
【0083】
特定処理を実行するハードウェア資源としては、次に示す各種のプロセッサを用いることができる。プロセッサとしては、例えば、ソフトウェア、すなわち、プログラムを実行することで、特定処理を実行するハードウェア資源として機能する汎用的なプロセッサであるCPUが挙げられる。また、プロセッサとしては、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路が挙げられる。何れのプロセッサにもメモリが内蔵又は接続されており、何れのプロセッサもメモリを使用することで特定処理を実行する。
【0084】
特定処理を実行するハードウェア資源は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、又はCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、特定処理を実行するハードウェア資源は1つのプロセッサであってもよい。
【0085】
1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが、特定処理を実行するハードウェア資源として機能する形態がある。第2に、SoC(System-on-a-chip)などに代表されるように、特定処理を実行する複数のハードウェア資源を含むシステム全体の機能を1つのICチップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、特定処理は、ハードウェア資源として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて実現される。
【0086】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路を用いることができる。また、上記の特定処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0087】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0088】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0089】
10 データ処理システム
12 データ処理装置
14 ユーザ端末
58 生成モデル
290 特定処理部
291 インタフェース部
292 監視部
293 検知部
294 関連部
295 判断部
図1
図2
図3
図4
図5