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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025083946
(43)【公開日】2025-06-02
(54)【発明の名称】液位計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/22 20060101AFI20250526BHJP
【FI】
G01F23/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197644
(22)【出願日】2023-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】新井 皓也
(72)【発明者】
【氏名】大矢 剛嗣
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AA14
2F014AB02
2F014AB03
2F014AB04
2F014CA03
2F014CA10
(57)【要約】
【課題】構造が簡単で簡易に、液体の液面位置を計測可能な液位計測装置を提供する。
【解決手段】液体の液面位置を計測する液位計測装置10であって、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体からなる熱電材料含有多孔質体20と、熱電材料含有多孔質体20の下端側に接続された下端電極部11と、熱電材料含有多孔質体20の上端側に接続された上端電極部12と、を備え、熱電材料含有多孔質体20に接続された下端電極部11と上端電極部12との間に液面が位置した際に、液体に浸漬された下端側で液体が吸い上げられるとともに、吸い上げられた液体が上端側で揮発する際の気化熱によって温度差が生じ、この温度差によって生じる起電力により変化する電気信号を検知することにより、液面位置を計測することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の液面位置を計測する液位計測装置であって、
ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体からなる熱電材料含有多孔質体と、前記熱電材料含有多孔質体の下端側に接続された下端電極部と、前記熱電材料含有多孔質体の上端側に接続された上端電極部と、を備え、
前記熱電材料含有多孔質体に接続された前記下端電極部と前記上端電極部との間に前記液面が位置した際に、前記液体に浸漬された前記下端側で前記液体が吸い上げられるとともに、吸い上げられた前記液体が前記上端側で揮発する際の気化熱によって温度差が生じ、この温度差によって生じる起電力により変化する電気信号を検知することにより、前記液面位置を計測することを特徴とする液位計測装置。
【請求項2】
前記熱電材料含有多孔質体が上下方向に複数配列されていることを特徴とする請求項1に記載の液位計測装置。
【請求項3】
上下方向に隣接する前記熱電材料含有多孔質体において、下方の前記熱電材料含有多孔質体の前記上端電極部と上方の前記熱電材料含有多孔質体の前記下端電極部が水平方向に離間して配置されていることを特徴とする請求項2に記載の液位計測装置。
【請求項4】
前記熱電材料含有多孔質体に接続された前記下端電極部と前記上端電極部との間に、更に1つ以上の中間電極部を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液位計測装置。
【請求項5】
前記熱電材料が、カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液位計測装置。
【請求項6】
前記熱電材料が、有機熱電材料であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液位計測装置。
【請求項7】
前記熱電材料が、化合物半導体またはシリコン半導体による、ナノチューブまたはナノワイヤであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液位計測装置。
【請求項8】
前記多孔質体が、紙、糸、不織布、布のいずれか一種であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液位計測装置。
【請求項9】
前記液体が、常温で揮発可能な揮発性液体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液位計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体の液面位置を計測する液位計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ダム、貯水池、水田等の水面位置や、各種液体の貯留タンクなどにおける液体の液面位置を管理するために、液体の液面位置を計測する液位計測装置が用いられている。
例えば、特許文献1には、貯留した液面上に浮くフロートを利用したフロート式の液位計測装置が提案されている。
また、特許文献2には、ダイヤフラムを備える差圧測定圧力センサを液体中に投入し、測定された液体圧を用いて液面位置を求める圧力式の液位計測装置が提案されている。
【0003】
さらに、特許文献3においては、測定対象の誘電率の変化に基づいて、測定対象の水分量を測定することで水面位置を求める静電容量式の液位計測装置が提案されている。
また、特許文献4においては、レーザー光を用いたレーザー式の液位計測装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-039842号公報
【特許文献2】特開2018-194511号公報
【特許文献3】特開2012-122909号公報
【特許文献4】特許第6809684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されたフロート式の液位計測装置や特許文献2に記載された圧力式の液位計測装置は、設備自体が大型であって、設置する場所を確保する必要があった。
また、特許文献3に記載された静電容量式の液位計測装置や特許文献4に記載されたレーザー式の液面位置計測装置においては、部品数が多く回路や計器などの設備構成が複雑であり、導入コストおよび操業コストが高くなるといった問題があった。
【0006】
最近では、ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用して、省力化・精密化や高品質生産を実現するスマート農業が試行されており、水田の水位管理を行うためのセンシング技術が求められている。ここで、水田等は、地形等によって構造も異なることから、簡便に設置可能であり、安定して水(液体)の液面位置を計測する液位計測装置が求められている。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、構造が簡単で簡易に、液体の液面位置を計測可能な液位計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の態様1の液位計測装置は、液体の液面位置を計測する液位計測装置であって、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体からなる熱電材料含有多孔質体と、前記熱電材料含有多孔質体の下端側に接続された下端電極部と、前記熱電材料含有多孔質体の上端側に接続された上端電極部と、を備え、前記熱電材料含有多孔質体に接続された前記下端電極部と前記上端電極部との間に前記液面が位置した際に、前記液体に浸漬された前記下端側で前記液体が吸い上げられるとともに、吸い上げられた前記液体が前記上端側で揮発する際の気化熱によって温度差が生じ、この温度差によって生じる起電力により変化する電気信号を検知することにより、前記液面位置を計測することを特徴としている。
【0009】
本発明の態様1の液位計測装置によれば、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体からなる熱電材料含有多孔質体と、前記熱電材料含有多孔質体の下端側に接続された下端電極部と、前記熱電材料含有多孔質体の上端側に接続された上端電極部と、を備えているので、前記熱電材料含有多孔質体に接続された前記下端電極部と前記上端電極部との間に前記液面が位置した際に、前記熱電材料含有多孔質体の下端側で吸い上げられた液体が前記熱電材料含有多孔質体の上端側で揮発する際の気化熱によって生じる温度差で起電力が生じることになり、これにより変化する電気信号を検知することで、液体の液面位置を計測することが可能となる。検知できる電気信号としては、電圧、電流、電気抵抗等がある。
また、熱電材料含有多孔質体に接続された前記下端電極部と前記上端電極部との間に発生する電気信号を検知することで液面位置を計測することから、設備構成が非常に簡単であり、導入コストおよび操業コストを低く抑えることができる。
【0010】
本発明の態様2の液位計測装置は、態様1の液位計測装置において、前記熱電材料含有多孔質体が上下方向に複数配列されていることを特徴としている。
本発明の態様2の液位計測装置によれば、前記熱電材料含有多孔質体が上下方向に複数配列されていることから、気化熱による温度差によって起電力が生じた熱電材料含有多孔質体を特定することで、液体の液面位置を広い範囲で計測することが可能となる。
【0011】
本発明の態様3の液位計測装置は、態様2の液位計測装置において、上下方向に隣接する下方の前記熱電材料含有多孔質体の前記上端電極部と上方の前記熱電材料含有多孔質体の前記下端電極部が水平方向に離間して配置されていることを特徴としている。
本発明の態様3の液位計測装置によれば、上下方向に隣接する下方の前記熱電材料含有多孔質体の前記上端電極部と上方の前記熱電材料含有多孔質体の前記下端電極部が水平方向に離間して配置されていることから、上下方向に複数配列された前記熱電材料含有多孔質体に接続する配線同士が干渉することを抑制でき、さらに容易な構造となり、液位計測装置を簡便に設置することができる。
【0012】
本発明の態様4の液位計測装置は、態様1から態様3のいずれかひとつの液位計測装置において、前記熱電材料含有多孔質体に接続された前記下端電極部と前記上端電極部との間に、更に1つ以上の中間電極部を備えたことを特徴としている。
本発明の態様4の液位計測装置によれば、前記熱電材料含有多孔質体に接続された前記下端電極部と前記上端電極部との間に1つ以上中間電極部を備えていることから、各電極間の電気信号を検知することでより細かい液面位置を計測することが可能となる。
【0013】
本発明の態様5の液位計測装置は、態様1から態様4のいずれかひとつの液位計測装置において、前記熱電材料が、カーボンナノチューブであることを特徴としている。
本発明の態様5の液位計測装置によれば、前記熱電材料が、カーボンナノチューブとされているので、カーボンナノチューブ自体を多孔質構造とすることにより熱電材料含有多孔質体を構成することも可能であるし、絶縁性の多孔質体にカーボンナノチューブを含有させることで前記熱電材料含有多孔質体を構成することも可能である。
また、熱電材料含有多孔質体の下端側から液体を確実に吸い上げることができ、この液体の気化熱によって熱電材料含有多孔質体の下端側と上端側で温度差を確保することができる。
さらに、使用後には、熱電材料含有多孔質体を焼却して廃棄することができ、環境負荷を低減することができる。
【0014】
本発明の態様6の液位計測装置は、態様1から態様4のいずれかひとつの液位計測装置において、前記熱電材料が、有機熱電材料であることを特徴としている。
本発明の態様6の液位計測装置によれば、前記熱電材料が、有機熱電材料とされているので、有機熱電材料自体を多孔質構造とすることにより熱電材料含有多孔質体を構成することも可能であるし、絶縁性の多孔質体に有機熱電材料を含有させることで前記熱電材料含有多孔質体を構成することも可能である。
また、熱電材料含有多孔質体の下端側から液体を確実に吸い上げることができ、この液体の気化熱によって熱電材料含有多孔質体の下端側と上端側で温度差を確保することができる。
【0015】
本発明の態様7の液位計測装置は、態様1から態様4のいずれかひとつの液位計測装置において、前記熱電材料が、化合物半導体またはシリコン半導体による、ナノチューブまたはナノワイヤであることを特徴としている。
本発明の態様7の液位計測装置によれば、前記熱電材料が、化合物半導体またはシリコン半導体による、ナノチューブまたはナノワイヤとされているので、ナノチューブまたはナノワイヤ自体を多孔質構造とすることにより熱電材料含有多孔質体を構成することも可能であるし、絶縁性の多孔質体にナノチューブまたはナノワイヤを含有させることで前記熱電材料含有多孔質体を構成することも可能である。
また、熱電材料含有多孔質体の下端側から液体を確実に吸い上げることができ、この液体の気化熱によって熱電材料含有多孔質体の下端側と上端側で温度差を確保することができる。
【0016】
本発明の態様8の液位計測装置は、態様1から態様7のいずれかひとつの液位計測装置において、前記多孔質体が、紙、糸、不織布、布、リードスティックのいずれか一種であることを特徴としている。
本発明の態様8の液位計測装置によれば、前記多孔質体が、紙、糸、不織布、布、リードスティック(吸液芯)のいずれか一種とされているので、これら紙、糸、不織布、布、リードスティック(吸液芯)に熱電材料を含有させることで容易に熱電材料含有多孔質体を作製することができる。
また、熱電材料含有多孔質体の下端側から液体を確実に吸い上げることができ、この液体の気化熱によって熱電材料含有多孔質体の下端側と上端側で温度差を確保することができる。
【0017】
本発明の態様9の液位計測装置は、態様1から態様8のいずれかひとつの液位計測装置において、前記液体が、常温で揮発可能な揮発性液体であることを特徴としている。
本発明の態様9の液位計測装置によれば、前記液体が、常温で揮発可能な揮発性液体とされているので、常温で使用しても熱電材料含有多孔質体の上端側において液体を気化させることができ、気化熱による温度差によって確実に起電力を生じさせることができ、この起電力により変化する電気信号の変化を検知することで液面位置を計測することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、構造が簡単で簡易に、液体の液面位置を計測可能な液位計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態である液位計測装置の概略説明図である。
図2】本発明の液位計測装置に用いられる熱電材料含有多孔質体の製造方法の概略説明図である。
図3】本発明の実施形態である液位計測装置による液面位置の計測方法の概略説明図である。
図4】本発明の他の実施形態である液位計測装置の概略説明図である。
図5】本発明の他の実施形態である液位計測装置の概略説明図である。
図6】本発明の他の実施形態である液位計測装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0021】
本実施形態である液位計測装置10は、ダム、貯水池、水田、各種液体の貯留タンクなどにおいて、貯留した液体の液面位置を計測するものである。
ここで、対象とする液体は、常温(20℃)で揮発する揮発性液体であることが好ましい。揮発性液体としては、例えば、水、各種アルコール、有機溶剤、揮発油等が挙げられる。なお、本実施形態では、水田等における水位を計測するものとされている。
【0022】
本実施形態である液位計測装置10は、図1に示すように、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体からなる熱電材料含有多孔質体20と、この熱電材料含有多孔質体20の下端側に接続された下端電極部11と、熱電材料含有多孔質体20の上端側に接続された上端電極部12と、下端電極部11と上端電極部12との間の電位を測定する電位計15と、を備えている。
【0023】
ここで、本実施形態においては、図1に示すように、熱電材料含有多孔質体20が上下方向に複数配列されている。
すなわち、本実施形態では、第1熱電材料含有多孔質体20A(および、第1熱電材料含有多孔質体20Aに接続される第1下端電極部11A、第1上端電極部12A、第1電位計15A)、第2熱電材料含有多孔質体20B(および、第2熱電材料含有多孔質体20Bに接続される第2下端電極部11B、第2上端電極部12B、第2電位計15B)、第3熱電材料含有多孔質体20C(および、第3熱電材料含有多孔質体20Cに接続される第3下端電極部11C、第3上端電極部12C、第3電位計15C)、が、上下方向に配列されている。
なお、本実施形態においては、図1に示すように、上下方向に複数配列された第1熱電材料含有多孔質体20A(第1下端電極部11A、第1上端電極部12A)、第2熱電材料含有多孔質体20B(第2下端電極部11B、第2上端電極部12B)、第3熱電材料含有多孔質体20C(第3下端電極部11C、第3上端電極部12C)は、並列接続されている。
また、本実施形態においては、上下方向に隣接する熱電材料含有多孔質体20において、下方に位置する熱電材料含有多孔質体20の上端電極部12と上方に位置する熱電材料含有多孔質体20の下端電極部11とは、鉛直方向での位置が重複するように配置されていることが好ましい。
【0024】
また、本実施形態においては、図1に示すように、熱電材料含有多孔質体20が鉛直方向に対して斜向するように配置されており、上下方向に隣接する熱電材料含有多孔質体20において、下方に位置する熱電材料含有多孔質体20の上端電極部12と上方に位置する熱電材料含有多孔質体20の下端電極部11とが水平方向に離間して配置されている。すなわち、第1熱電材料含有多孔質体20Aの第1上端電極部12Aと第2熱電材料含有多孔質体20Bの第2下端電極部11B、および、第2熱電材料含有多孔質体20Bの第2上端電極部12Bと第3熱電材料含有多孔質体20Cの第3下端電極部11Cが、それぞれ水平方向に離間して配置されている。
【0025】
上述のように、熱電材料含有多孔質体20は、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体で構成されている。
ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料は、半導体としての特性を有しており、p型半導体又はn型半導体としての特性を有している。なお、本実施形態においては、熱電材料含有多孔質体20は、p型半導体又はn型半導体のいずれであってもよい。
【0026】
ここで、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料としては、(a)カーボンナノチューブ(CNT),(b)有機熱電材料、(c)化合物半導体またはシリコン半導体によるナノチューブやナノワイヤ、(d)貴金属化合物、(e)カーボン材料、(f)Bi,Co,Fe,Ni等の金属、などが挙げられる。
なお、熱電材料含有多孔質体20に含まれる熱電材料は、ゼーベック係数の絶対値が40μV/K以上であることが好ましい。また、(a)から(f)の熱電材料を複合化させて用いても良い。
【0027】
ここで、(a)カーボンナノチューブにおいては、カーボンナノチューブ自体を多孔質構造(紙、糸、不織布、布、リードスティック等)とすることで熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。また、他の多孔質体にカーボンナノチューブを含有させることで、熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。
なお、カーボンナノチューブのゼーベック係数は5~170μV/K程度である。
【0028】
(b)有機熱電材料としては、PEDOT系(PEDOT:PSS、PEDOT:Tos等)、π共役ニッケル錯体系(poly(nickel-ethylenetetrathiolate)、N-DMBI系(N,N-dimethyl-2-phenyl-2,3-dihydro-1H-benzoimidazole)等が挙げられる。
なお、PEDOT:PSSのゼーベック係数は10~100μV/K程度である。また、PEDOT:Tosのゼーベック係数は40~210μV/K程度である。π共役ニッケル錯体系のゼーベック係数は-16~-140μV/K程度である。
有機熱電材料においては、有機熱電材料自体を多孔質構造(紙、糸、不織布、布、リードスティック等)とすることで熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。また、他の多孔質体に有機熱電材料を含有させることで、熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。
【0029】
(c)化合物半導体またはシリコン半導体によるナノチューブやナノワイヤにおいては、他の多孔質体に窒化ホウ素ナノチューブや、SiナノワイヤやBiTeナノワイヤなどの化合物半導体、または、シリコン半導体からなるナノチューブまたはナノワイヤを1種類以上含有させることで、熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。
【0030】
(d)貴金属化合物としては、銅化合物、銀化合物、金化合物、白金化合物等が挙げられる。具体的には、貴金属元素(Cu,Ag,Au,Pt)と、S,Se,Teの化合物であることが好ましい。なお、本願では標準水素電極と比較して高い正極電位をもつ金属を貴金属とした。
貴金属化合物においては、他の多孔質体に貴金属化合物を含有させることで、熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。
【0031】
(e)カーボン材料としては、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
カーボン材料においては、他の多孔質体にカーボン材料を含有させることで、熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。
【0032】
(f)Bi,Co,Fe,Ni等の金属においては、他の多孔質体にBi,Co,Fe,Ni等の金属を含有させることで、熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。なお、めっき法によってBi,Co,Fe,Ni等の金属を他の多孔質体に含有させることが好ましい。
【0033】
本実施形態においては、熱電材料含有多孔質体20は、多孔質体にカーボンナノチューブ(CNT)が含浸されたものであり、半導体としての特性を有しており、p型半導体又はn型半導体としての特性を有している。なお、本実施形態においては、熱電材料含有多孔質体20は、p型半導体又はn型半導体のいずれであってもよい。
【0034】
多孔質体としては、紙、糸、不織布、布、リードスティック等の繊維質のものが好ましい。本実施形態においては、多孔質体は紙とされており、熱電材料含有多孔質体20は、CNT含有紙とされている。なお、繊維としては天然繊維でも人工繊維でもよく、複数の繊維を組み合わせた紙、糸、不織布、布、リードスティック等を用いても良い。
また、多孔質体としては、毛細管現象が生じる構造体であることが好ましく、紙、糸、不織布、布、リードスティック以外にも板、フィルム、網、中空糸等が使用可能である。なお、多孔質体は、絶縁性多孔質体であることが好ましい。多孔質体は吸湿発熱体であることが好ましく、濡れることで生じる材料表面の水和反応による発熱や、材料の膨潤に伴う歪の解放による発熱の効果を有するものであればよい。
【0035】
ここで、熱電材料含有多孔質体20(CNT含有紙)の製造方法の一例について、図2を参照して説明する。
【0036】
図2(1)に示すように、純水にパルプ繊維を投入して十分に撹拌することにより、パルプ繊維が分散したパルプ懸濁液51を得る。
また、図2(2)に示すように、純水に単層カーボンナノチューブを投入して十分撹拌することにより、カーボンナノチューブ分散液52を得る。このとき、単層カーボンナノチューブは、紙原料であるパルプ繊維の重さに対して0.8質量%以上8.0質量%以下の割合とすることが好ましい。また、分散剤を添加する必要はない。また、カーボンナノチューブ分散液52を得る際には、超音波処理を30分間程度行うことが好ましい。
【0037】
次に、図2(3)に示すように、上述のパルプ懸濁液51とカーボンナノチューブ分散液52とを混合して攪拌することによって混合液53を得る。このとき、パルプ繊維にカーボンナノチューブが付着することになる。
そして、図2(4),(5)に示すように、上述の混合液53を紙漉きして乾燥させることにより、熱電材料含有多孔質体20(CNT含有紙)を得る。
【0038】
次に、図3を参照して、本実施形態である液位計測装置10により電圧を検知する液面位置の計測方法について説明する。
図3(a)に示すように、液位計測装置10の最も下方に位置する第1熱電材料含有多孔質体20Aに接続された第1下端電極部11Aよりも液面が低い場合には、第1電位計15A、第2電位計15B、第3電位計15Cの値は、いずれも変化しない。
【0039】
図3(b)に示すように、第1熱電材料含有多孔質体20Aに接続された第1下端電極部11Aと第1上端電極部12Aとの間に液面が位置した場合には、第1熱電材料含有多孔質体20Aのうち液体に浸漬された下端側において当該液体が吸い上げられるとともに、吸い上げられた液体が、液体に浸漬されていない上端側で揮発することになる。このときの気化熱によって第1熱電材料含有多孔質体20Aの上端側と下端側とで温度差が生じ、この温度差によって、第1下端電極部11Aと第1上端電極部12Aとの間に起電力が発生する。よって、第1電位計15Aの値が変化することになり、第2電位計15B、第3電位計15Cの値は変化しない。これにより、液面が、第1下端電極部11Aと第1上端電極部12Aの間に位置していることが分かる。
【0040】
図3(c)に示すように、第2熱電材料含有多孔質体20Bに接続された第2下端電極部11Bと第2上端電極部12Bとの間に液面が位置した場合には、第2熱電材料含有多孔質体20Bの下端側において吸い上げられた液体が、液体に浸漬されていない上端側で揮発し、このときの気化熱によって第2熱電材料含有多孔質体20Bの上端側と下端側とで温度差が生じ、この温度差によって第2下端電極部11Bと第2上端電極部12Bとの間に起電力が発生する。なお、液体中に浸漬された第1熱電材料含有多孔質体20Aにおいては温度差が生じず、起電力は発生しない。よって、第2電位計15Bの値が変化し、第1電位計15A、第3電位計15Cの値は変化しない。これにより、液面が、第2下端電極部11Bと第2上端電極部12Bの間に位置していることが分かる。
【0041】
図3(d)に示すように、第3熱電材料含有多孔質体20Cに接続された第3下端電極部11Cと第3上端電極部12Cとの間に液面が位置した場合には、第3熱電材料含有多孔質体20Cの下端側において吸い上げられた液体が、液体に浸漬されていない上端側で揮発し、このときの気化熱によって第3熱電材料含有多孔質体20Cの上端側と下端側とで温度差が生じ、この温度差によって第3下端電極部11Cと第3上端電極部12Cとの間に起電力が発生する。なお、液体中に浸漬された第1熱電材料含有多孔質体20Aおよび第1熱電材料含有多孔質体20Aにおいては温度差が生じず、起電力は発生しない。よって、第3電位計15Cの値が変化し、第1電位計15A、第2電位計15Bの値は変化しない。これにより、液面が、第3下端電極部11Cと第3上端電極部12Cの間に位置していることが分かる。
【0042】
上述のように、熱電材料含有多孔質体20(第1熱電材料含有多孔質体20A、第2熱電材料含有多孔質体20B、第3熱電材料含有多孔質体20C)に接続された下端電極部11(第1下端電極部11A、第2下端電極部11B、第3下端電極部11C)と上端電極部12(第1上端電極部12A、第2上端電極部12B、第3上端電極部12C)と間の起電力により変化する電気信号を電位計15(第1電位計15A、第2電位計15B、第3電位計15C)で測定することにより、液面位置を計測することが可能となる。
【0043】
以上のような構成とされた本実施形態である液位計測装置10によれば、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体からなる熱電材料含有多孔質体20と、熱電材料含有多孔質体20の下端側に接続された下端電極部11と、熱電材料含有多孔質体20の上端側に接続された上端電極部12と、を備えているので、下端電極部11と上端電極部12との間に液面が位置した際に、熱電材料含有多孔質体20の下端側で吸い上げられた液体が熱電材料含有多孔質体20の上端側で揮発する際の気化熱による温度差によって、下端電極部11と上端電極部12との間に起電力が発生することになる。よって、下端電極部11と上端電極部12とに接続された電位計15によって、上述の起電力により変化する電気信号を検知することで、液体の液面位置を計測することが可能となる。
また、熱電材料含有多孔質体20に接続された下端電極部11と上端電極部12との間に発生する起電力を測定することで液面位置を計測することから、設備構成が非常に簡単であり、導入コストおよび操業コストを低く抑えることができる。起電力により変化する電圧を検知することによる計測方法を説明したが、電流や電気抵抗の変化を検知することにより液面位置を計測してもよい。
【0044】
本実施形態である液位計測装置10において、図1に示すように、熱電材料含有多孔質体20が上下方向に複数配列されている場合には、気化熱による温度差によって起電力が発生した熱電材料含有多孔質体20(第1熱電材料含有多孔質体20A、第2熱電材料含有多孔質体20B、第3熱電材料含有多孔質体20C)を特定することで、液体の液面位置を広い範囲で計測することが可能となる。
【0045】
本実施形態である液位計測装置10において、図1に示すように、熱電材料含有多孔質体20が鉛直方向に対して斜向するように配置されており、上下方向に隣接する熱電材料含有多孔質体20において、下方に位置する熱電材料含有多孔質体20の上端電極部12と上方に位置する熱電材料含有多孔質体20の下端電極部11とが水平方向に離間して配置されている場合には、上下方向に複数配列された熱電材料含有多孔質体20の下端電極部11および上端電極部12に接続する配線同士が干渉することを抑制でき、さらに容易に設備を構成することができる。
【0046】
本実施形態である液位計測装置10において、熱電材料含有多孔質体20を構成する熱電材料が、カーボンナノチューブである場合には、熱電材料含有多孔質体20の下端側から液体を確実に吸い上げることができ、この液体の気化熱によって熱電材料含有多孔質体20の下端側と上端側で温度差を確保することができる。
さらに、使用後には、熱電材料含有多孔質体20を焼却して廃棄することができ、環境負荷を低減することができる。
また、カーボンナノチューブ自体を多孔質構造とすることにより熱電材料含有多孔質体20を構成することも可能であるし、絶縁性の多孔質体にカーボンナノチューブを含有させることで熱電材料含有多孔質体20を構成することも可能である。
【0047】
本実施形態である液位計測装置10において、熱電材料含有多孔質体20を構成する熱電材料が、有機熱電材料である場合には、熱電材料含有多孔質体20の下端側から液体を確実に吸い上げることができ、この液体の気化熱によって熱電材料含有多孔質体20の下端側と上端側で温度差を確保することができる。
また、有機熱電材料自体を多孔質構造とすることにより熱電材料含有多孔質体20を構成することも可能であるし、絶縁性の多孔質体に有機熱電材料を含有させることで熱電材料含有多孔質体20を構成することも可能である。
【0048】
本実施形態である液位計測装置10において、熱電材料含有多孔質体20を構成する熱電材料が、化合物半導体またはシリコン半導体による、ナノチューブまたはナノワイヤである場合には、熱電材料含有多孔質体20の下端側から液体を確実に吸い上げることができ、この液体の気化熱によって熱電材料含有多孔質体20の下端側と上端側で温度差を確保することができる。
また、ナノチューブまたはナノワイヤ自体を多孔質構造とすることにより熱電材料含有多孔質体20を構成することも可能であるし、絶縁性の多孔質体にナノチューブまたはナノワイヤを含有させることで熱電材料含有多孔質体20を構成することも可能である。
【0049】
本実施形態である液位計測装置10において、多孔質体が、紙、糸、不織布、布、リードスティックのいずれか一種である場合には、これら紙、糸、不織布、布、リードスティック(吸液芯)に熱電材料を含有させることで容易に熱電材料含有多孔質体20を作製することができる。
また、熱電材料含有多孔質体20の下端側から液体を確実に吸い上げることができ、この液体の気化熱によって熱電材料含有多孔質体20の下端側と上端側で温度差を確保することができる。
【0050】
本実施形態である液位計測装置10において、液体が、常温で揮発可能な揮発性液体である場合には、常温で使用しても熱電材料含有多孔質体20の上端側において液体を気化させることができ、気化熱による温度差によって確実に起電力を発生させることができ、この起電力により変化する電気信号を検知することで液面位置を計測することが可能となる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、複数(3つ)の熱電材料含有多孔質体を上下方向に配設したものとして説明したが、これに限定されることはなく、図4に示すように、一つの熱電材料含有多孔質体のみで構成したものであってもよい。また、2つでもよいし、4つ以上であってもよい。
【0052】
また、本実施形態では、図1に示すように、熱電材料含有多孔質体20に下端電極部11と上端電極部12とを設けたものとして説明したが、これに限定されることはなく、図5に示すように、下端電極部11と上端電極部12との間に中間電極部13を形成したものであってもよい。この場合、下端電極部11と中間電極部13との間に配設した電位計151、中間電極部13と上端電極部12との間に配設した電位計152によって、各電極間の電気信号を検知することでより細かい液面位置を計測することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態では、図1に示すように、上下方向に複数配列された第1熱電材料含有多孔質体20A(第1下端電極部11A、第1上端電極部12A)、第2熱電材料含有多孔質体20B(第2下端電極部11B、第2上端電極部12B)、第3熱電材料含有多孔質体20C(第3下端電極部11C、第3上端電極部12C)は並列接続されたものとして説明したが、図6に示すように、これらを直列接続したものであってもよい。
【0054】
さらに、本実施形態では、多孔質体を紙とした熱電材料含有多孔質体(熱電材料含有紙)を用いるものとして説明したが、これに限定されることはなく、多孔質体を糸とした熱電材料含有多孔質体(熱電材料含有糸)であってもよいし、多孔質体を布とした熱電材料含有多孔質体(熱電材料含有布)であってもよいし、多孔質体をリードスティックとした熱電材料含有多孔質体(熱電材料含有リードスティック)であってもよい。
なお、熱電材料としてカーボンナノチューブを含侵させた熱電材料含有糸(CNT含有糸)は、以下に示す手法によって製造することができる。
【0055】
カーボンナノチューブの糸への含有方法については、基本的には手工染色等の手法と同様である。ベースとなる糸をカーボンナノチューブ分散液に浸し、この状態で分散液を沸騰しない程度に加熱(60℃前後)し、水分を飛ばすことで濃縮されたカーボンナノチューブが糸をコーティングするような手法を取ることもできる。このような含浸法によれば、より多くのカーボンナノチューブが糸に含浸される。
【0056】
なお、CNT含有糸を作製するのに必要なベースとなる糸(基材)には、一般的に使用されている綿糸,麻糸,羊毛,絹等の自然由来の糸もしくは化学合成由来のポリエステル,ナイロン等の合成繊維糸が用いられるが、これらの混合糸が用いられてもよい。
ここで、合成繊維のように染料が染みこまないタイプの糸については、その表面にカーボンナノチューブ分散液を塗布して、乾燥させることにより、CNT含有糸を作製してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 液位計測装置
11 下端電極部
12 上端電極部
13 中間電極部
20 熱電材料含有多孔質体
図1
図2
図3
図4
図5
図6