(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025000084
(43)【公開日】2025-01-07
(54)【発明の名称】作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム、作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
E02F9/22 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099737
(22)【出願日】2023-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 祥平
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 遼太
(72)【発明者】
【氏名】井上 嵩之
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA01
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
2D003DB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】作業機械の作業中に発生する油圧シリンダのストロークエンドでの衝撃を緩和しつつ操作性の良い作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システムと作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械の制御方法は、油圧シリンダのストロークが一方側に変化する一方操作において、ストロークの位置情報が第1位置に至るまで油圧シリンダの方向切換弁のスプールの開口量をレバー操作の操作量に応じて設定された面積に設定する第1制御を実行し、位置情報が第1位置を越えてストロークエンド手前の前記第2位置に至るまでは、開口量を所定の方法で減少させる第2制御を実行し、第2位置を越えてストロークエンドに至るまで第1制御を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプから吐出する作動油が流れる方向切換弁のスプールの開口量を制御することにより油圧シリンダのストロークを変化させる作業機械の制御方法であって、 前記油圧シリンダのストロークの変化に関連する位置情報を検知することと、 前記油圧シリンダのストロークが一方側に変化する一方操作において、前記位置情報が第1位置に至るまで前記開口量をレバー操作の操作量に応じて設定された面積に設定する第1制御を実行することと、 前記一方操作で、規定の操作量より大きい場合、前記位置情報が前記第1位置を越えてストロークエンド手前の前記第2位置に至るまで、前記開口量を所定の方法で減少させる第2制御を実行することと、 前記一方操作において、前記第2位置を越えて前記ストロークエンドに至るまで前記第1制御を実行することと、を有する作業機械の制御方法。
【請求項2】
前記第1制御中の開口量が、前記第2制御中の開口量に比べて大きい請求項1記載の作業機械の制御方法。
【請求項3】
前記所定の方法が段階的に、開口量を減少させる請求項2記載の作業機械の制御方法。
【請求項4】
前記油圧ポンプの流量が操作量に応じて制御されている請求項1から3記載の何れか1項に記載の作業機械の制御方法。
【請求項5】
前記油圧ポンプの最大設定圧力の上限が前記操作量に応じて制御されており、前記油圧ポンプの圧力が前記最大設定圧力を越えない用に前記油圧ポンプの流量を制御する請求項1から3記載の何れか1項に記載の作業機械の制御方法。
【請求項6】
請求項1から請求項3記載の何れか1項に記載の建設機械の制御方法を1以上の演算装置で実行させるための建設機械用制御プログラム。
【請求項7】
油圧ポンプから吐出する作動油が流れる方向切換弁のスプールの開口量を制御することにより油圧シリンダのストロークを変化させる制御部と、前記油圧シリンダのストロークの変化に関連する位置情報を検知するセンサと、を備える作業機械の制御システムであって、 前記制御部は、前記油圧シリンダのストロークが一方側に変化する一方操作において、前記位置情報が第1位置に至るまで前記開口量をレバー操作の操作量に応じて設定された面積に設定する第1制御を実行し、前記一方操作で、規定の操作量より大きい場合、前記位置情報が前記第1位置を越えてストロークエンド手前の前記第2位置に至るまで、前記開口量を所定の方法で減少させる第2制御を実行し、前記一方操作において、前記第2位置を越えて前記ストロークエンドに至るまで前記第1制御を実行する作業機械の制御システム。
【請求項8】
前記作業機械の制御システムと、前記油圧シリンダによって動作する作業機と、を備える作業機械。
【請求項9】
油圧シリンダのストロークを変化させる作業機械の制御方法であって、前記油圧シリンダのストロークの変化に関連する位置情報を検知することと、前記油圧シリンダのストロークが一方側に変化する一方操作において、前記位置情報が第1位置に至るまで操作レバーの操作量に応じて設定されたストローク速度に設定する第1制御を実行することと、前記一方操作で、前記位置情報が前記第1位置を越えてストロークエンド手前の前記第2位置に至るまで、前記ストローク速度を所定の方法で減少させる第2制御を実行することと、前記一方操作において、前記第2位置を越えて前記ストロークエンドに至るまで前記第1制御を実行することと、を有する作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、アタッチメントを駆動する油圧シリンダのピストンがストロークエンドに近い程、油圧シリンダに作動油を供給するための制御弁の供給通路の開口面積を小さくするように制御する油圧ショベルが知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
関連技術の油圧ショベルを含む作業機械において、アタッチメントを先端に有する作業機のアーム部分を前方へ伸ばすダンプ動作を行うために操作レバーを完全に傾倒させた場合、アーム用の油圧シリンダのピストンがストロークエンドに近くなるほど、制御弁の供給通路の開口面積を小さくなり、アームのダンプ動作に伴うショックは低減される。一方作業機負荷に応じて操作レバーの操作量を増やしていくような操作特性を持つ作業機械が存在する。そのような作業機械は、作業機にかかる負荷によっては、アーム用の油圧シリンダがストロークエンド位置まで達さず、アームを最大展開位置まで伸ばせないという問題が発生する場合がある。そして同様な課題がブーム用油圧シリンダにおいても起こりうる。
【0005】
また、近年作業機械の低燃費化が進み、制御弁の供給通路の開口面積を小さくするに従い、油圧シリンダが要求する作動油の流量が下がることからポンプの流量を下げる制御を実行する作業機械もあり、これらの作業機械においては、顕著に上記問題が発生する場合がある。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、その課題は、作業機械の作業中に発生する油圧シリンダのストロークエンドでの衝撃を緩和しつつ操作性の良い作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システムと作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る作業機械の制御方法は、油圧ポンプから吐出する作動油が流れる方向切換弁のスプールの開口量を制御することにより油圧シリンダのストロークを変化させる作業機械の制御方法であって、前記油圧シリンダのストロークの変化に関連する位置情報を検知することと、前記油圧シリンダのストロークが一方側に変化する一方操作において、前記位置情報が第1位置に至るまで前記開口量をレバー操作の操作量に応じて設定された面積に設定する第1制御を実行することと、前記一方操作で、規定の操作量より大きい場合、前記位置情報が前記第1位置を越えてストロークエンド手前の前記第2位置に至るまで、前記開口量を所定の方法で減少させる第2制御を実行することと、前記一方操作において、前記第2位置を越えて前記ストロークエンドに至るまで前記第1制御を実行することと、を有する。
【0008】
本発明の一態様に係る作業機械用制御プログラムは、前記作業機械の制御方法を1以上の演算装置で実行させる。
【0009】
本発明の一態様に係る作業機械用制御システムは、油圧ポンプから吐出する作動油が流れる方向切換弁のスプールの開口量を制御することにより油圧シリンダのストロークを変化させる制御部と、前記油圧シリンダのストロークの変化に関連する位置情報を検知するセンサと、を備える作業機械の制御システムであって、前記制御部は、前記油圧シリンダのストロークが一方側に変化する一方操作において、前記位置情報が第1位置に至るまで前記開口量をレバー操作の操作量に応じて設定された面積に設定する第1制御を実行し、前記一方操作で、規定の操作量より大きい場合、前記位置情報が前記第1位置を越えてストロークエンド手前の前記第2位置に至るまで、前記開口量を所定の方法で減少させる第2制御を実行し、前記一方操作において、前記第2位置を越えて前記ストロークエンドに至るまで前記第1制御を実行する。
【0010】
本発明の一態様に係る作業機械は、作業機械の制御システムと、前記油圧シリンダによって動作する作業機と、を備える。
【0011】
本発明の一態様に係る作業機械の制御方法は、油圧シリンダのストロークを変化させる作業機械の制御方法であって、前記油圧シリンダのストロークの変化に関連する位置情報を検知することと、前記油圧シリンダのストロークが一方側に変化する一方操作において、前記位置情報が第1位置に至るまで操作レバーの操作量に応じて設定されたストローク速度に設定する第1制御を実行することと、前記一方操作で、前記位置情報が前記第1位置を越えてストロークエンド手前の前記第2位置に至るまで、前記ストローク速度を所定の方法で減少させる第2制御を実行することと、前記一方操作において、前記第2位置を越えて前記ストロークエンドに至るまで前記第1制御を実行することと、を有する作業機械の制御方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作業機械の作業中に発生する油圧シリンダのストロークエンドでの衝撃を緩和しつつ操作性の良い作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システムと建設機械を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの左側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの制御システムの模式図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの第1制御マップの一例である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの第2制御マップの一例である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの第2制御マップの他の例である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの第3制御マップの一例である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの設定圧マップの一例である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの操作量に対する油圧ポンプ流量の関係グラフである。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの制御装置の制御フローのフローチャート図である
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る作業機械の代表例として油圧ショベル100を例に挙げ添付図面を参照しつつ本発明にかかる第1の実施形態について詳細に説明する。なお上部旋回体300に対して作業機400が取り付けられている方向を前方としその反対方向を後方とする。
【0015】
図1で示すように油圧ショベル100は、自走可能な下部走行体200と、下部走行体200上に旋回可能に支持された上部旋回体300と、上部旋回体300の前方で上下に回動自在に支持された作業機400を備えて構成されており、さらに
図3の制御システム500をさらに備えている。
【0016】
下部走行体200は、センターフレーム(図示せず)とセンターフレームに左右対称に対をなし前後方向に延びるサイドフレーム210を有しており、左右のサイドフレーム210の後端には走行モータ211により駆動する駆動輪211が設置され、前方に向け複数の遊動輪212が配置されており、そして駆動輪212と遊動輪213は、履帯214が巻装されている。
【0017】
上部旋回体300は、機体前部から後端にかけて配置され、機体前方一方の側部には搭乗口を有する運転部310と、機体他方側部から機体後部にかけて形成され運転部310の下方に構成される機関室320と、機体前端の突設部に左右に回動自在に支持され、作業機400を上下に回動自在に支持するスイングポスト330から構成されている。
【0018】
作業機400は、スイングポスト330に上下に回動自在に支持されたブーム410と、ブーム410の先端に上下に回動可能に装着されたアーム420と、アーム420の先端に回動可能に装着されたバケット430と、上部旋回体300のフレーム右側方には、スイングポスト330を動かすスイングシリンダ(図示せず)が配置されており、ブーム410の基端部の左側面には、ブーム410の回動角を計測するポテンショメータ610と、ブーム410の先端部の左側面には、アーム410の回動角を計測するポテンショメータ620がそれぞれ装着されている。
【0019】
ブームシリンダ440は、ブーム410の前方かつ下方に設置され、ブームシリンダ440のロッド側油室へコントローバルブから作動油が供給されるとブームシリンダ440は縮短するためブーム410は、下降し、さらに作動油が供給され続けるとロッドの縮短方向のストロークエンドまでブームシリンダ440は縮短される。またブームシリンダ440のボトム側油室へコントローバルブから作動油が供給されるとブームシリンダ440は伸長するためブーム410は、上昇し、さらに作動油が供給され続けるとロッドの伸長方向のストロークエンドまでブームシリンダ440は伸長する。ここでポテンショメータ610は、ブーム410の回動角度を測定しているが、ブーム410の回動角に対応するブームシリンダ440のロッド位置を計測しているといえる。すなわちポテンショメータ610は、ブームシリンダ440のストロークの変化に関連する位置情報を検知している。
【0020】
アームシリンダ450は、ブーム410の上方に設置され、アームシリンダ450のロッド側油室へコントローバルブから作動油が供給されるとアームシリンダ450は縮短するためアーム420は、前方に向け回動するダンプ動作を行い、さらに作動油が供給され続けるとロッドの縮短方向のストロークエンドまでアームシリンダ450は縮短される。またアームシリンダ450のボトム側油室へコントローバルブから作動油が供給されるとアームシリンダ450は伸長するためアーム420は、後方に向けて回動するクラウド動作を行い、さらに作動油が供給され続けるとロッドの伸長方向のストロークエンドまでアームシリンダ450は伸長する。ここでポテンショメータ620は、アーム420の回動角度を測定しているが、アーム420の回動角に対応するアームシリンダ450のロッド位置を計測しているといえる。すなわちポテンショメータ620は、アームシリンダ450のストロークの変化に関連する位置情報を検知している。
【0021】
バケットシリンダ470は、アーム420の前方(上方)に配置され、バケットリンク460を介してアーム420とバケット430に接続し、バケットシリンダ470のロッド側油室へコントローバルブから作動油が供給されるとバケットシリンダ470は縮短するためバケット430は、前方に向け回動するダンプ動作を行い、さらに作動油が供給され続けるとロッドの縮短方向のストロークエンドまでバケットシリンダ470は縮短される。またバケットシリンダ470のボトム側油室へコントローバルブから作動油が供給されるとバケットシリンダ470は伸長するためバケット430は、後方に向けて回動するクラウド動作を行い、さらに作動油が供給され続けるとロッドの伸長方向のストロークエンドまでケットシリンダ470は伸長する。
【0022】
機関室320には、エンジン(図示せず)と、エンジンにより駆動し、ブームシリンダ440やアームシリンダ450等の油圧ショベル100を動かす複数のアクチュエータに作動油を圧送する可変容量ポンプ511と、対応するアクチュエータを制御する方向切換弁の集合体であるコントロールバルブ514、とコントロールバルブ514に入力される制御信号圧(パイロット圧)及び可変容量ポンプ511の流量を制御するレギュレータ511aに入力されるパイロット圧の1次圧を生成するパイロットポンプ512等の複数の機器が配置されている。
【0023】
運転部310は、座席311と、座席311の下方のシートマウント312の下部前面から前方に向けて延びる床材313と、操作装置314と、座席311の右前方に配置された表示装置315から形成される。
【0024】
操作装置314は、座席311の前方に左右に列設され、床材313から突設された左右の走行レバー314aと、座席311の左右に配置されたコンソールボックスに立設された左右の操作レバー314b1,314b2と左方の前記コンソールボックスから前方に向けて延設され、後方に向けて前記コンソールごと回動させることにより、油圧ショベル100のすべてのアクチュエータを操作不能にするカットオフレバー314cを含んでいる。
【0025】
続いて、
図2を用いて油圧ショベル100の制御システム500について説明する。
【0026】
制御システム500は、少なくとも油圧回路510と、制御装置520と、操作装置314と、ポテンショメータ610,620から構成されている。
【0027】
操作装置314は、各操作レバーの操作方向および操作量を操作信号として制御装置520に出力することにより、制御装置520は、電気信号を電磁比例弁517に出力し、電磁比例弁517は、パイロット圧をコントローバルブ514の入力ポートに出力し各アクチュエータを操作することができる。
【0028】
油圧回路510は、可変容量ポンプ511から延設される高圧の作動油配管を実線で表し、パイロットポンプ512から延設される低圧の作動油(パイロット圧)配管を点線で表す。
【0029】
油圧回路510は、電磁比例弁518によって減圧されたパイロット圧をレギュレータ511aに入力することにより吐出流量を制御する可変容量ポンプ511から延びるセンターバイパス流路513と、センターバイパス流路513から延びる油路とそれぞれ接続する各アクチュエータを制御する方向切換弁から構成されるコントロールバルブ514
からなり、油圧回路510は、方向切換弁のスプールの摺動位置にかかわらずセンターバイパス流路513からタンク515につながる流路は形成されないいわゆるクローズドセンター回路であるが、これに限定されるものではない。
【0030】
コントロールバルブ514は、ブームシリンダ440を制御する方向切換弁514aと、アームシリンダ450を制御する方向切換弁514bと、複数の他のアクチュエータ例えば、左右の走行モータ211、バケットシリンダ470、旋回モータ(図示せず)等をそれぞれ制御する複数の他の方向切換弁からなり、複数の他のアクチュエータと複数の他の方向切換弁については、油圧回路510には、記載を省略している。またコントロールバルブ514を構成する方向切換弁のパイロット圧の入力ポートには、電磁比例弁517から操作装置314の操作量に応じて設定された条件に従いパイロット圧が入力される。
【0031】
方向切換弁514aのパイロット圧の入力ポート514a1,514a2には、右操作レバー314b2の操作の方向と操作量(傾倒量)に応じて、設定された条件に従い電磁比例弁517a1,電磁比例弁517a2から出力されたパイロット圧が入力されることによって方向切換弁514aのスプールが摺動し、対応するスプールの開口量に応じた油がブームシリンダ440のロッド側油室又はボトム側油室へ油が流れ、ブームシリンダ440のストロークが変化し、変化するストロークの速度は、スプールの開口量に対応する。
【0032】
方向切換弁514bのパイロット圧の入力ポート514b1には、左操作レバー314b1の操作の方向と操作量(傾倒量)に応じて、事前に設定された条件に従い電磁比例弁517b1から出力したパイロット圧が入力されることによって方向切換弁514bのスプールが摺動し、対応するスプールの開口量に応じた油がアームシリンダ450のロッド側油室又はボトム側油室へ油が流れ、アームシリンダ450のストロークが変化し、変化するストロークの速度は、スプールの開口量に対応する。
【0033】
上記設定された条件は、後述する制御装置520の記憶部522に記憶された方向切換弁のスプールの開口量マップによって設定され、必要に応じて複数のマップを切り換える。
【0034】
油圧回路510の圧力は圧力センサ519によって検出され、検出結果は、制御装置520に送信される。
【0035】
圧力センサ519の検出結果に従い制御装置520は、油圧機器の破損を防止するために、任意に設定された設定圧力を越えないように可変容量ポンプ511の吐出流量を制御している。
【0036】
制御装置520は、ECU(電子制御ユニット)であり、少なくともデジタル入力信号の信号レベルの変換を行う入力バッファ及びアナログ入力信号のデジタル変換を行うADコンバータと、各種入力信号から制御量の演算を行うマイコンからなる演算部521と、マイコンの出力信号に従いアクチュエータを駆動させる駆動信号の形態に変換させる出力ドライバと通信ドライバ,通信レシーバ等から構成される。
【0037】
制御装置520に入力される信号は、制御装置520に向かう矢印が先端にある一点鎖線で表現され、制御装置520から出力される信号は、信号が入力される機器に向かう矢印が先端にある一点鎖線で表現される。
【0038】
演算部521は、記憶部522と、スプール開口量決定部523と、ポンプ流量演算部524を有する。
【0039】
記憶部522は、前述したスプールの開口量マップとポンプ流量を決定するための設定圧マップを有している。
【0040】
スプールの開口量マップは、操作装置314の操作量に応じて対応する操作装置314の方向切換弁のスプールの開口量を決定する第1制御マップと油圧シリンダのストロークの伸長変化に対してスプールの開口量を決定する第2制御マップと、油圧シリンダのストロークの縮短の変化に対してスプールの開口量を決定する第3制御マップとを含んでいる。つまり第2制御マップと第3制御マップは、油圧シリンダのストロークの一方側に変化する操作(伸長もしくは縮短)に関する制御マップである。
【0041】
図3は、第1制御マップの一例であり、操作レバー314b2を前方に傾倒した傾き(操作量)に対する方向切換弁514のスプールの開口量を示したもので、スプール開口量決定部523は、第1制御マップに従い電磁比例弁517b2への制御値を演算し、制御装置520は、電磁比例弁517b2に制御指令を発信する第1制御を油圧ショベル100に対して実行する。
【0042】
第1制御を実行により、操作量に応じてスプールの開口量は上昇して、アームシリンダ450のボトム側油室へ流れる作動油の流量は増加し、アームシリンダ450の伸長する速度(ストローク速度)は上昇する。
【0043】
図4は、第2制御マップの一例であり、操作レバー314b2を前方に傾倒した時(操作量100%)のアームシリンダ450のストロークの位置と方向切換弁514のスプールの開口量を示したものである。ここでストロークの位置は、本実施例では、ポテンショメータ620の検知した値を使用し、第2制御マップに従いスプール開口量決定部523は電磁比例弁517b2への制御値を演算する。
【0044】
図4では、ストローク位置が0(アームシリンダ450が最も縮短している位置)~S1では、ストロークの位置に関係なく、操作レバー314b2の傾倒量(操作量100%)によって方向切換弁514のスプールの開口量(100%)が決定している。
【0045】
図5は、第2制御マップの他の例であり、操作レバー314b2を前方に90%傾倒した時(操作量90%)のアームシリンダ450のストロークの位置と方向切換弁514のスプールの開口量を示したものであるが、ストローク位置が0(アームシリンダ450が最も縮短している位置)~S1では、ストロークの位置に関係なく、操作レバー314b2の傾倒量(操作量90%)によって方向切換弁514のスプールの開口量(90%)が決定する。
【0046】
つまり第2制御マップにおいて、ストローク位置が0~S1では、スプール開口量決定部523は、第1制御マップに従い電磁比例弁517b2への制御値を演算し、制御装置520は、第1制御を油圧ショベル100に対して実行する。すなわち第1制御により、アームシリンダ450のストローク速度が制御される。
【0047】
図4において、ストローク位置がS1を越えると、方向切換弁514のスプールの開口量は、100%(
図3では90%)から80%に下がりS2まで開口量を80%で維持し、S2を越えると方向切換弁514のスプールの開口量は、80%から20%に下がりストロークエンドSE(アームシリンダ450が最も伸長している位置)間際のS21まで、20%で開口量を維持する。
【0048】
つまりストローク位置がS1を越えて、ストロークエンドSE間際に至るまでは、スプール開口量決定部523は、スプールの開口量を減少させる(本実施例で段階的に減少させている。)第2制御マップに従い電磁比例弁517b2への制御値を演算し、制御装置520は、第2制御を油圧ショベル100に対して実行する。すなわち第2制御により、アームシリンダ450のストローク速度が制御される。
【0049】
さらにS21を超えると
図4においては、操作量相当のスプール開口量は100%、
図5においては、操作量相当の開口量は90%と上昇し、ストロークエンドSEまで維持する。
【0050】
つまり第2制御マップにおいて、ストローク位置がS21を超えストロークエンドSEに至るまで、スプール開口量決定部523は、第1制御マップに従い電磁比例弁517b2への制御値を演算し、制御装置520は、第1制御を油圧ショベル100に対して実行する。すなわち第1制御により、アームシリンダ450のストローク速度が制御される。
【0051】
続いて
図6は、第3マップの一例であり、操作レバー314b2を後方に傾倒した時(操作量100%)のアームシリンダ450のストロークの位置と方向切換弁514のスプールの開口量を示したものである。ここでストロークの位置は、本実施例では、ポテンショメータ620の検知した値を使用し、第2制御マップに従いスプール開口量決定部523は電磁比例弁517b1への制御値を演算する。
【0052】
図6では、ストローク位置が0(アームシリンダ450が最も伸長している位置)~S1では、ストロークの位置に関係なく、操作レバー314b2の傾倒量(操作量100%)によって方向切換弁514のスプールの開口量(100%)が決定している。
【0053】
つまり第3制御マップにおいて、ストローク位置が0~s1では、スプール開口量決定部523は、第1制御マップに従い電磁比例弁517b1への制御値を演算し、制御装置520は、第1制御を油圧ショベル100に対して実行する。すなわち第1制御により、アームシリンダ450のストローク速度が制御される。
【0054】
図6において、ストローク位置がs1を越えると、方向切換弁514のスプールの開口量は、100%から80%に下がりs2まで開口量を80%で維持し、s2を越えると方向切換弁514のスプールの開口量は、80%から20%に下がりストロークエンドse(アームシリンダ450が最も短縮している位置)間際のs21まで、20%で開口量を維持する。
【0055】
つまりストローク位置がs1を越えて、ストロークエンドse間際に至るまでは、スプール開口量決定部523は、スプールの開口量を減少させる(本実施例で段階的に減少させている。)第3制御マップに従い電磁比例弁517b2への制御値を演算し、制御装置520は、第2制御を油圧ショベル100に対して実行する。すなわち第2制御により、アームシリンダ450のストローク速度が制御される。
【0056】
さらにs21を超えると
図6においては、操作量相当のスプール開口量は100%に上昇し、ストロークエンドseまで維持する。
【0057】
つまり第3制御マップにおいて、ストローク位置がs21を超えストロークエンドseに至るまで、スプール開口量決定部523は、第1制御マップに従い電磁比例弁517b1への制御値を演算し、制御装置520は、第1制御を油圧ショベル100に対して実行する。すなわち第1制御により、アームシリンダ450のストローク速度が制御される。
【0058】
まとめると、本件発明にかかる制御は、第2制御マップ(油圧シリンダのボトム側油室へ作動油が供給される場合)もしくは第3制御マップ(油圧シリンダのロッド側油室へ作動油が供給される場合)であれ、油圧シリンダのストロークがストロークエンドに向けて変化する際、ストロークエンドから一定量離れた位置まで油圧シリンダへ作動油を供給する流量を操作量に応じた流量に増やす(操作量に応じたストローク速度にする)第1制御により油圧シリンダへ作動油を供給することにより、操作量に応じた作業機の動きを可能とし、前記位置を越えると第2制御により油圧シリンダへ作動油を供給する流量を減らす(ストローク速度を減少させる)ことにより、ストロークエンドに伴う作業機にかかる衝撃を緩和し、ストロークエンド間際で油圧シリンダへ作動油を供給する流量を操作量に応じた流量に増やす(操作量に応じたストローク速度にする)第1制御を実行することにより作業機に確実にオペレータが意図する動きをさせることができる。なお操作量が小さい場合は、ストロークエンドに伴う作業機にかかる衝撃は小さいことから、本件発明にかかる制御は、操作量の大きさを越える時に実行され、例えば、本実施例においては、操作量が80%より大きい場合に実行されるが操作量の値は任意に決めることができる。
【0059】
続いて
図7は、設定圧マップの一例であり、操作装置314の操作量に基づき、油圧ポンプ511の最大設定圧力が定められている。
【0060】
ポンプ流量演算部524は、圧力センサ519の検知した圧力が設定圧マップを越えない流量になるように油圧ポンプ511の流量を演算し、制御装置520から電磁比例弁518制御指令を出力し油圧ポンプ511の流量を制御する。この結果
図8で示すように、操作量に応じて油圧ポンプ511の流量は制御される。
【0061】
上記油圧ポンプの制御によれば、燃費性が向上するだけでなく、作業機の負荷に応じて操作レバーの操作量を増やしていくような操作が可能になり操作性を向上することができ、特にこのような制御を行うショベル100に第2制御マップ又は第3制御マップによる制御を実行することは、作業中に発生する油圧シリンダのストロークエンドでの衝撃緩和と良好な操作性を両立に寄与することができる。
【0062】
図9用いて制御フローについて説明する。
図9制御方法に係るフローチャートである。
【0063】
左操作レバー314bを前方に傾倒させ、アーム420のダンプ操作を実行する。(S1)
【0064】
左操作レバー314b1の操作量が80%より大きい場合(S2:YES)制御装置520は、第3制御マップに基づき、アームシリンダ450のボトム側油室に作動油を供給し、アーム420を最大展開位置までダンプさせる。(S3)
【0065】
左操作レバー314b1の操作量が80%以下の場合(S3:NO)制御装置520は、第1制御マップに基づき、アームシリンダ450のボトム側油室に作動油を供給し、アーム420を最大展開位置までダンプさせる。(S4)
【0066】
図9に示すフローチャートは一例に過ぎず、処理が適宜追加又は省略されてもよいし、処理を繰り返して実行してもよく、処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
【0067】
続いて本発明の第1の実施形態の変形例につい説明する
【0068】
第1の実施形態において第2制御は、スプールの開口量を2段階に分けて減少させているが、2段階以上の複数回に分けて減少させてもよく、1段階で減少させてもよく。さらにストローク位置に対して線形的に減少させてもよい。
【0069】
第1の実施形態におけるポンプ流量制御のほか、ポジティブコントロール制御やネガティブコントロール制御のような操作量に対してポンプ流量を制御するポンプ流量制御であってもよい。
【0070】
第1の実施形態における油圧シリンダのストロークの変化に関連する位置情報を検知するセンサは、ポテンショメータを使用しているが、油圧シリンダのストロークを直接検知するストロークセンサでもよく、加速度センサで作業機の姿勢を検知してもよい。
【0071】
本発明の実施形態にかかる発明は、以下の付記のように特定することができる。
【0072】
〈付記1〉油圧ポンプから吐出する作動油が流れる方向切換弁のスプールの開口量を制御することにより油圧シリンダのストロークを変化させる作業機械の制御方法であって、前記油圧シリンダのストロークの変化に関連する位置情報を検知することと、前記油圧シリンダのストロークが一方側に変化する一方操作において、前記位置情報が第1位置に至るまで前記開口量をレバー操作の操作量に応じて設定された面積に設定する第1制御を実行することと、前記一方操作で、規定の操作量より大きい場合、前記位置情報が前記第1位置を越えてストロークエンド手前の前記第2位置に至るまで、前記開口量を所定の方法で減少させる第2制御を実行することと、前記一方操作において、前記第2位置を越えて前記ストロークエンドに至るまで前記第1制御を実行することと、を有する作業機械の制御方法。
【0073】
〈付記2〉前記第1制御中の開口量が、前記第2制御中の開口量に比べて大きい付記1記載の作業機械の制御方法。
【0074】
〈付記3〉前記所定の方法が段階的に、開口量を減少させる付記1又は付記2記載の作業機械の制御方法。
【0075】
〈付記4〉前記油圧ポンプの流量が操作量に応じて制御されている付記1から付記3の何れかに記載の作業機械の制御方法。
【0076】
〈付記5〉前記油圧ポンプの最大設定圧力の上限が前記操作量に応じて制御されており、前記油圧ポンプの圧力が前記最大設定圧力を越えない用に前記油圧ポンプの流量を制御する付記1から付記4の何れかに記載の建設機械の制御方法。
【0077】
〈付記6〉付記1から付記5記載の何れか1項に記載の作業機械の制御方法を1以上の演算装置で実行させるための作業機械用制御プログラム。
【0078】
〈付記7〉油圧ポンプから吐出する作動油が流れる方向切換弁のスプールの開口量を制御することにより油圧シリンダのストロークを変化させる制御部と、前記油圧シリンダのストロークの変化に関連する位置情報を検知するセンサと、を備える作業機械の制御システムであって、前記制御部は、前記油圧シリンダのストロークが一方側に変化する一方操作において、前記位置情報が第1位置に至るまで前記開口量をレバー操作の操作量に応じて設定された面積に設定する第1制御を実行し、前記一方操作で、規定の操作量より大きい場合、前記位置情報が前記第1位置を越えてストロークエンド手前の前記第2位置に至るまで、前記開口量を所定の方法で減少させる第2制御を実行し、前記一方操作において、前記第2位置を越えて前記ストロークエンドに至るまで前記第1制御を実行する作業機械の制御システム。
【0079】
〈付記8〉付記7記載の作業機械の制御システムと、前記油圧シリンダによって動作する作業機と、を備える作業機械。
【0080】
〈付記9〉油圧シリンダのストロークを変化させる作業機械の制御方法であって、前記油圧シリンダのストロークの変化に関連する位置情報を検知することと、前記油圧シリンダのストロークが一方側に変化する一方操作において、前記位置情報が第1位置に至るまで操作レバーの操作量に応じて設定されたストローク速度に設定する第1制御を実行することと、前記一方操作で、前記位置情報が前記第1位置を越えてストロークエンド手前の前記第2位置に至るまで、前記ストローク速度を所定の方法で減少させる第2制御を実行することと、前記一方操作において、前記第2位置を越えて前記ストロークエンドに至るまで第1制御を実行することと、を有する作業機械の制御方法。
【0081】
上記で説明した第1の実施形態及びこれらの変形例で説明した種々の構成は、適宜組み合わせて採用可能である。
【0082】
以上では、作業機械として、油圧ショベルを例に挙げて説明したが、作業機械は油圧ショベルに限定されず、コンパクトトラックローダ、ホイルローダ、などの建設機械だけでなくトラクターなどの他の作業機械であってもよく、さらに原動機としてエンジンを挙げて説明したが電動モータでもよい。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で拡張又は、変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム、作業機械に関するものであり産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0085】
100 油圧ショベル(作業機械)450 アームシリンダ(油圧シリンダ)514b 方向切換弁520 制御装置(制御部)522 記憶部523 スプール開口量決定部620 ポテンショメータ(センサ)