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特開2025-84036積層セラミックキャパシタ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025084036
(43)【公開日】2025-06-02
(54)【発明の名称】積層セラミックキャパシタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20250526BHJP
【FI】
H01G4/30 512
H01G4/30 515
H01G4/30 517
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024077305
(22)【出願日】2024-05-10
(31)【優先権主張番号】10-2023-0161948
(32)【優先日】2023-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】金 兌炯
(72)【発明者】
【氏名】金 南▲ウン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 孝柱
(72)【発明者】
【氏名】李 相▲ヒョン▼
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AH01
5E001AH09
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC39
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG26
5E082GG28
5E082LL01
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】薄層での信頼性に優れた積層セラミックキャパシタ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一実施形態による積層セラミックキャパシタは誘電体層と、内部電極層と、を含むキャパシタボディー、及び前記キャパシタボディーの外側に配置される外部電極を含み、前記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、前記誘電体結晶粒のうちの少なくとも一つはコア部及び前記コア部の少なくとも一部を囲むシェル部を含み、前記シェル部はバリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分と、スズ(Sn)を含む副成分と、を含み、前記シェル部はスズ(Sn)を含むSn濃縮領域と、前記Sn濃縮領域より低い原子%のスズ(Sn)を含むSn非濃縮領域と、を含み、前記Sn非濃縮領域に含まれているスズ(Sn)に対する前記Sn濃縮領域に含まれているスズ(Sn)の原子比は2.0以上6.0以下である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と、内部電極層と、を含むキャパシタボディー、及び
前記キャパシタボディーの外側に配置される外部電極を含み、
前記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、
前記誘電体結晶粒のうちの少なくとも一つはコア部及び前記コア部の少なくとも一部を囲むシェル部を含み、
前記シェル部はバリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分と、スズ(Sn)を含む副成分と、を含み、
前記シェル部はスズ(Sn)を含むSn濃縮領域と、前記Sn濃縮領域より低い原子%のスズ(Sn)を含むSn非濃縮領域と、を含み、
前記Sn非濃縮領域に含まれているスズ(Sn)に対する前記Sn濃縮領域に含まれているスズ(Sn)の原子比は2.0以上6.0以下である、積層セラミックキャパシタ。
【請求項2】
前記シェル部は、前記誘電体結晶粒の最外郭から内部に15nm以上25nm以下の深さまでの領域である、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項3】
前記誘電体結晶粒の最外郭の一地点から中心を横切って他の最外郭の地点までの直線区間に対してTEM-EDS(透過電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)ライン分析時、前記Sn濃縮領域はスズ(Sn)の原子%のピークが最も高く現れる、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項4】
前記Sn非濃縮領域は、スズ(Sn)を前記シェル部に含まれる全元素の原子の総量に対して0.8原子%以下で含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項5】
前記Sn濃縮領域の長さは、前記誘電体結晶粒の長軸長さの40%以上100%以下である、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項6】
30個以上50個以下の誘電体結晶粒を含む誘電体層内で、前記Sn濃縮領域は前記誘電体結晶粒の個数の30%以上100%以下で含まれる、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項7】
前記誘電体結晶粒の平均粒径は80nm以上160nm以下である、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項8】
前記コア部は、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分を含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項9】
スズ(Sn)が、前記シェル部内で前記チタン酸バリウム系主成分100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれる、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項10】
前記副成分は、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、バリウム(Ba)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、又はこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項11】
前記チタン酸バリウム系主成分100モル部に対して、
前記ジスプロシウム(Dy)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、
前記テルビウム(Tb)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、
前記マンガン(Mn)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、
前記バナジウム(V)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、
前記バリウム(Ba)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、
前記ケイ素(Si)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、
前記アルミニウム(Al)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、
前記カルシウム(Ca)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれる、請求項10に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項12】
チタン酸バリウム系主成分粉末、及びスズ(Sn)含有化合物を含む副成分粉末を混合して誘電体スラリーを製造する段階;
前記誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートを製造し、前記誘電体グリーンシート表面に導電性ペースト層を形成する段階;
前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階;
前記誘電体グリーンシート積層体を焼成して誘電体層と内部電極層を含むキャパシタボディーを製造する段階;及び
前記キャパシタボディーの一面に外部電極を形成する段階を含み、
前記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、前記誘電体結晶粒のうちの少なくとも一つはコア部及び前記コア部の少なくとも一部を囲むシェル部を含み、
前記シェル部はスズ(Sn)を含むSn濃縮領域、及び前記Sn濃縮領域より低い原子%のスズ(Sn)を含むSn非濃縮領域を含み、
前記Sn非濃縮領域に含まれているスズ(Sn)に対する前記Sn濃縮領域に含まれているスズ(Sn)の原子比は2.0以上6.0以下である、積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項13】
前記スズ(Sn)含有化合物は、前記チタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で混合される、請求項12に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項14】
前記副成分粉末は、ジスプロシウム(Dy)含有化合物、テルビウム(Tb)含有化合物、マンガン(Mn)含有化合物、バナジウム(V)含有化合物、バリウム(Ba)含有化合物、ケイ素(Si)含有化合物、アルミニウム(Al)含有化合物、カルシウム(Ca)含有化合物、又はこれらの組み合わせをさらに含む、請求項12に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項15】
前記チタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して、
前記ジスプロシウム(Dy)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、
前記テルビウム(Tb)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、
前記マンガン(Mn)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、
前記バナジウム(V)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、
前記バリウム(Ba)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、
前記ケイ素(Si)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、
前記アルミニウム(Al)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、
前記カルシウム(Ca)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれる、請求項14に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層セラミックキャパシタ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料を使用する電子部品としてキャパシタ、インダクタ、圧電素子、バリスタ又はサーミスタなどがある。このようなセラミック電子部品のうちの積層セラミックキャパシタ(multilayer ceramic capacitor、MLCC)は小型でありながら高容量が保障され実装が容易であるという長所によって多様な電子装置に使用できる。
【0003】
例えば、積層セラミックキャパシタ(MLCC)は、液晶表示装置(liquid crystal display、LCD)、プラズマ表示装置パネル(plasma display panel、PDP)、有機発光ダイオード(organic light-emitting diode、OLED)などの映像機器、コンピュータ、個人携帯用端末器及びスマートフォンのような様々の電子製品の基板に装着されて電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサに使用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、IT向け超小型高容量のMLCC需要が増加するにつれて、超薄層設計下で高い信頼性が要求されている。
【0005】
一実施形態は、薄層での信頼性に優れた積層セラミックキャパシタを提供する。
【0006】
他の一実施形態は、前記積層セラミックキャパシタの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態は、誘電体層と内部電極層を含むキャパシタボディー、及び前記キャパシタボディーの外側に配置される外部電極を含み、前記誘電体層は複数の誘電体結晶粒(grain)を含み、前記誘電体結晶粒のうちの少なくとも一つはコア部及び前記コア部の少なくとも一部を囲むシェル部を含み、前記シェル部はバリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分と、スズ(Sn)を含む副成分とを有し、前記シェル部はスズ(Sn)を含むSn濃縮領域と、前記Sn濃縮領域より低い原子%のスズ(Sn)を含むSn非濃縮領域と、を含み、前記Sn非濃縮領域に含まれているスズ(Sn)に対する前記Sn濃縮領域に含まれているスズ(Sn)の原子比は2.0以上6.0以下である、積層セラミックキャパシタを提供する。
【0008】
前記シェル部は、前記誘電体結晶粒の最外郭から内部に15nm以上25nm以下の深さまでの領域であってもよい。
【0009】
前記誘電体結晶粒の最外郭の一地点から中心を横切って他の最外郭の地点までの直線区間に対してTEM-EDS(透過電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)ライン分析時、前記Sn濃縮領域はスズ(Sn)の原子%のピークが最も高く現れることができる。
【0010】
前記Sn非濃縮領域は、スズ(Sn)を前記シェル部に含まれる全元素の原子の総量に対して0.8原子%以下で含むことができる。
【0011】
前記Sn濃縮領域の長さは、前記誘電体結晶粒の長軸長さの40%以上100%以下であってもよい。
【0012】
30個以上50個以下の誘電体結晶粒を含む誘電体層内で、前記Sn濃縮領域は前記誘電体結晶粒の個数の30%以上100%以下で含まれてもよい。
【0013】
前記誘電体結晶粒の平均粒径は80nm以上160nm以下であってもよい。
【0014】
前記コア部は、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分を含むことができる。
【0015】
スズ(Sn)は、前記シェル部内で前記チタン酸バリウム系主成分100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよい。
【0016】
前記副成分は、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、バリウム(Ba)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、又はこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0017】
前記チタン酸バリウム系主成分100モル部に対して、前記ジスプロシウム(Dy)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、前記テルビウム(Tb)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、前記マンガン(Mn)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、前記バナジウム(V)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、前記バリウム(Ba)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、前記ケイ素(Si)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれ、前記アルミニウム(Al)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、前記カルシウム(Ca)は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよい。
【0018】
他の一実施形態は、チタン酸バリウム系主成分粉末、及びスズ(Sn)含有化合物を含む副成分粉末を混合して誘電体スラリーを製造する段階;前記誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートを製造し、前記誘電体グリーンシート表面に導電性ペースト層を形成する段階;前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階;前記誘電体グリーンシート積層体を焼成して誘電体層と内部電極層を含むキャパシタボディーを製造する段階;及び前記キャパシタボディーの一面に外部電極を形成する段階を含み、前記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、前記誘電体結晶粒のうちの少なくとも一つはコア部及び前記コア部の少なくとも一部を囲むシェル部を含み、前記シェル部はスズ(Sn)を含むSn濃縮領域、及び前記Sn濃縮領域より低い原子%のスズ(Sn)を含むSn非濃縮領域を含み、前記Sn非濃縮領域に含まれているスズ(Sn)に対する前記Sn濃縮領域に含まれているスズ(Sn)の原子比は2.0以上6.0以下である、積層セラミックキャパシタの製造方法を提供する。
【0019】
前記スズ(Sn)含有化合物は、前記チタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で混合できる。
【0020】
前記副成分粉末は、ジスプロシウム(Dy)含有化合物、テルビウム(Tb)含有化合物、マンガン(Mn)含有化合物、バナジウム(V)含有化合物、バリウム(Ba)含有化合物、ケイ素(Si)含有化合物、アルミニウム(Al)含有化合物、カルシウム(Ca)含有化合物、又はこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0021】
前記チタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して、前記ジスプロシウム(Dy)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、前記テルビウム(Tb)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、前記マンガン(Mn)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、前記バナジウム(V)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、前記バリウム(Ba)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、前記ケイ素(Si)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、前記アルミニウム(Al)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、前記カルシウム(Ca)含有化合物は0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよい。
【発明の効果】
【0022】
一実施形態による積層セラミックキャパシタは、誘電体結晶粒の粒成長を抑制させ粒界の抵抗を向上させることによって、薄層での信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す斜視図である。
図2図1のI-I’線に沿って切断した積層セラミックキャパシタの断面図である。
図3図1のII-II’線に沿って切断した積層セラミックキャパシタの断面図である。
図4】一実施形態による誘電体層内の一つの誘電体結晶粒の構造を示す概略図である。
図5】実施例1による誘電体層のTEMイメージである。
図6a】実施例1による誘電体層内誘電体結晶粒を示すTEMイメージである。
図6b図6aの誘電体結晶粒に対するEDS-ライン分析グラフである。
図7】実施例1による誘電体層のSEMイメージである。
図8】比較例1による誘電体層のSEMイメージである。
図9】実施例1による積層セラミックキャパシタの加速寿命を評価したグラフである。
図10】比較例1による積層セラミックキャパシタの加速寿命を評価したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施形態を詳しく説明する。図面で本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一又は類似の構成要素については同一の参照符号を付した。また、添付図面において一部構成要素は誇張されるか省略されるか又は概略的に図示され、各構成要素の大きさは実際の大きさを完全に反映するものではない。
【0025】
添付された図面は本明細書に開示された実施形態を容易に理解することができるようにするためのものに過ぎず、添付された図面によって本明細書に開示された技術的思想が制限されず、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0026】
第1、第2などのように序数を含む用語は多様な構成要素を説明するのに使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0027】
また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分「の上に」又は「上に」あるという時、これは他の部分「の直上に」ある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分「の直上に」あるという時には中間に他の部分がないことを意味する。また、基準となる部分「の上に」又は「上に」あるというのは基準となる部分の上又は下に位置することであり、必ずしも重力反対方向側に「の上に」又は「上に」位置することを意味するのではない。
【0028】
明細書全体で、「含む」又は「有する」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在するのを指定しようとするものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。したがって、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対になる記載がない限り他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0029】
また、明細書全体で、「平面上」という時、これは対象部分を上から見た時を意味し、「断面上」という時、これは対象部分を垂直に切断した断面を横から見た時を意味する。
【0030】
また、明細書全体で、「連結される」という時、これは二つ以上の構成要素が直接的に連結されることのみを意味するのではなく、二つ以上の構成要素が他の構成要素を通じて間接的に連結されること、物理的に連結されることだけでなく電気的に連結されること、又は位置や機能によって異なる名称で称されたが、一体であるのを意味することができる。
【0031】
以下、一実施形態による積層セラミックキャパシタについて図1図3を参照して説明する。
【0032】
図1は一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す斜視図であり、図2図1のI-I’線に沿って切断した積層セラミックキャパシタの断面図であり、図3図1のII-II’線に沿って切断した積層セラミックキャパシタの断面図である。
【0033】
図1図3に表示されたL軸、W軸、及びT軸はそれぞれキャパシタボディー110の長さ方向、幅方向、及び厚さ方向を示す。ここで、厚さ方向(T軸方向)はシート形状の構成要素の広い面(主面)に垂直な方向であってもよく、一例として誘電体層111が積層される積層方向と同一な概念として使用できる。長さ方向(L軸方向)はシート形状の構成要素の広い面(主面)に平行に延長される方向で厚さ方向(T軸方向)と略垂直な方向であってもよく、一例として両側に第1外部電極131及び第2外部電極132が位置する方向であってもよい。幅方向(W軸方向)はシート形状の構成要素の広い面(主面)に平行に延長される方向で厚さ方向(T軸方向)及び長さ方向(L軸方向)と略垂直な方向であってもよく、シート形状の構成要素の長さ方向(L軸方向)の長さは幅方向(W軸方向)の長さよりさらに長くてもよい。
【0034】
図1図3を参照すれば、本実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、キャパシタボディー110、及びキャパシタボディー110の外側に配置される外部電極131、132を含む。外部電極131、132は、キャパシタボディー110の長さ方向(L軸方向)に対向する両端に配置される第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。
【0035】
キャパシタボディー110は一例として、略六面体形状であってもよい。
【0036】
一実施形態に関する説明の便宜のために、キャパシタボディー110で厚さ方向(T軸方向)に互いに対向する両面を第1面及び第2面と、第1面及び第2面と連結され長さ方向(L軸方向)に互いに対向する両面を第3面及び第4面と、第1面及び第2面と連結され第3面及び第4面と連結され幅方向(W軸方向)に互いに対向する両面を第5面及び第6面と定義する。
【0037】
一例として、下面である第1面が実装方向に向かう面になり得る。また、第1面~第6面は平らであってもよいが、一実施形態がこれに限定されるのではない。例えば、第1面~第6面は中央部が凸の曲面であってもよく、各面の境界である角は丸い形状を有することができる。
【0038】
キャパシタボディー110の形状、寸法、及び誘電体層111の積層数が本実施形態の図面に示されたものに限定されるのではない。
【0039】
キャパシタボディー110は、複数の誘電体層111及び内部電極層121、122を含む。具体的に、キャパシタボディー110は、複数の誘電体層111と誘電体層111を挟んで厚さ方向(T軸方向)に交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含む。
【0040】
この時、キャパシタボディー110の互いに隣接するそれぞれの誘電体層111の間の境界は、走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)を使用しなければ確認しにくい程度に一体化されてもよい。
【0041】
キャパシタボディー110は、アクティブ領域を有することができる。アクティブ領域は誘電体層111と内部電極層121、122が互いに交互に配置された領域であって、積層セラミックキャパシタ100の容量形成に寄与する部分である。具体的に、アクティブ領域は厚さ方向(T軸方向)に沿って積層される第1内部電極121又は第2内部電極122が重畳(overlap)した領域であってもよい。
【0042】
また、キャパシタボディー110は、カバー部及びサイドマージン部をさらに含むことができる。
【0043】
カバー部は厚さ方向マージン部であって厚さ方向(T軸方向)にアクティブ領域の第1面及び第2面側にそれぞれ配置することができる。このようなカバー部は、単一誘電体層111又は二つ以上の誘電体層111がアクティブ領域の上面及び下面にそれぞれ積層されたものであってもよい。
【0044】
サイドマージン部は側面カバー部と見ることができ、幅方向(W軸方向)にアクティブ領域の互いに対向した両側端部、即ち、第5面及び第6面側にそれぞれ配置することができる。前記サイドマージン部は誘電体グリーンシート表面に内部電極層用導電性ペースト層を塗布する時、誘電体グリーンシート表面の一部領域にのみ導電性ペースト層を塗布し、誘電体グリーンシート表面の両側面には導電性ペースト層を塗布していない誘電体グリーンシートを積層した後、焼成することによって形成できるが、このような形成方法に限定されるのではない。
【0045】
カバー部及びサイドマージン部は、物理的又は化学的ストレスによる第1内部電極121及び第2内部電極122の損傷を防止する役割を果たす。
【0046】
誘電体層111は複数の誘電体結晶粒を含む。
【0047】
一実施形態による誘電体結晶粒は図4を参照して説明する。
【0048】
図4は、一実施形態による誘電体層内の一つの誘電体結晶粒の構造を示す概略図である。
【0049】
図4を参照すれば、複数の誘電体結晶粒のうちの少なくとも一つはコア部10及びコア部10の少なくとも一部を囲むシェル部20を含む。
【0050】
コア部10は、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分を含むことができる。
【0051】
シェル部20は、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分と、スズ(Sn)を含む副成分とを含むことができる。
【0052】
コア部10及びシェル部20に含まれるチタン酸バリウム系主成分は誘電体母材であって、高い誘電率を有し、積層セラミックキャパシタ100の誘電率形成に寄与する。
【0053】
チタン酸バリウム系主成分は例えば、BaTiO、Ba(Ti,Zr)O、Ba(Ti,Sn)O、(Ba,Ca)TiO、(Ba,Ca)(Ti,Ca)O、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O、(Ba,Ca)(Ti,Sn)O、(Ba,Sr)TiO、(Ba,Sr)(Ti,Zr)O、(Ba,Sr)(Ti,Sn)O、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0054】
シェル部20は、Sn濃縮領域A及びSn非濃縮領域Bを含む。Sn濃縮領域Aは、スズ(Sn)を含みスズ(Sn)の濃度が相対的に高い領域である。Sn非濃縮領域Bは、スズ(Sn)を含まないか又はスズ(Sn)の濃度が相対的に低い領域である。
【0055】
具体的に、シェル部20は、スズ(Sn)の濃度が高い、即ち、スズ(Sn)の原子%含量が高いSn濃縮領域Aと、スズ(Sn)の濃度が相対的に低い、即ち、スズ(Sn)の原子%含量がSn濃縮領域Aより低いSn非濃縮領域Bとを含むことができる。
【0056】
一般に、積層セラミックキャパシタの信頼性向上のためには誘電体結晶粒の大きさが小さく、かつ誘電体層の層当り結晶粒個数が多くなければならない。しかし、薄層では誘電体層の厚さが薄いため粒成長された誘電体結晶粒によって層当り1つ~2つ程度の誘電体結晶粒のみ存在する場合が発生することがあり、これによって信頼性が劣化することがある。一実施形態によれば、チタン酸バリウム系主成分にスズ(Sn)のドーピングによって誘電体結晶粒の粒成長を抑制することができる。また、スズ(Sn)のバンドギャップエネルギーがチタン酸バリウム系主成分より大きいため、スズ(Sn)が濃縮されて誘電体結晶粒内のシェル部20にSn濃縮領域Aが存在する場合、粒界抵抗を増加させることができる。
【0057】
言い換えれば、誘電体結晶粒内のシェル部20にスズ(Sn)の濃度が高いSn濃縮領域Aと、スズ(Sn)の濃度が相対的に低いSn非濃縮領域Bとが存在する場合、誘電体結晶粒の粒成長を抑制させ粒界の抵抗を増加させることによって、薄層での信頼性を改善することができる。
【0058】
具体的に、Sn非濃縮領域Bに含まれているスズ(Sn)に対するSn濃縮領域Aに含まれているスズ(Sn)の原子比は2.0以上6.0以下であってもよく、例えば2.1以上5.5以下、2.2以上5.0以下であってもよい。前記範囲内の原子比を有する場合、誘電体結晶粒の粒成長を抑制させ粒界の抵抗を増加させることによって、薄層での信頼性を向上させることができる。
【0059】
シェル部20は、誘電体結晶粒の最外郭から内部に15nm以上25nm以下、例えば17nm以上23nm以下の深さまでの領域であってもよい。即ち、シェル部20の厚さtが15nm以上25nm以下、例えば17nm以上23nm以下であってもよい。
【0060】
前述した、シェル部20の厚さt、シェル部20に存在するSn濃縮領域A及びSn非濃縮領域B、Sn濃縮領域A及びSn非濃縮領域B間のスズ(Sn)の原子比は全てTEM-EDS(透過電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)ライン分析を通じて確認することができる。
【0061】
TEM-EDS(透過電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)ライン分析は次のような方法で行うことができる。積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディー110のW軸及びT軸方向面(WT面)をL軸方向に1/2深さまで研磨(polishing)し、固定後、真空雰囲気チャンバー内に維持して、誘電体層111と内部電極層121、122が交差するアクティブ領域を観察することができるように断面サンプルを得ることができる。次いで、断面サンプルのアクティブ領域に対して誘電体層111が少なくとも1層、例えば1層以上5層以下が見えるように透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)で測定することができる。例えば、TEMは誘電体層111内の約300nm×300nm領域でXe-FIB(focused ion beam)を使用して加速電圧200kVの条件で測定することができる。次いで、測定された断面サンプルのTEMイメージで、誘電体結晶粒の最外郭の一地点から中心を横切って他の最外郭の地点までの直線区間に対して、EDS-ライン分析を行った。EDS-ライン分析を通じて、コア-シェル構造、Sn濃縮領域A及びSn非濃縮領域B間のスズ(Sn)の原子比などを確認することができる。
【0062】
前述の方法で行われたTEM-EDS(透過電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)ライン分析で、Sn濃縮領域Aはスズ(Sn)の原子%のピークが最も高く現れる区間であってもよい。
【0063】
Sn濃縮領域Aではスズ(Sn)がシェル部20の総量に対して0.1原子%以上3原子%以下で含まれてもよく、例えば0.5原子%以上2.8原子%以下で含まれてもよい。また、Sn非濃縮領域Bではスズ(Sn)がシェル部20の総量に対して0.8原子%以下で含まれてもよく、例えば0.01原子%以上0.8原子%以下、0.1原子%以上0.6原子%以下で含まれてもよい。それぞれのSn濃縮領域A及びSn非濃縮領域Bでのスズ(Sn)が前記含量範囲内に含まれている場合、誘電体結晶粒の粒成長が抑制され粒界の抵抗が増加して薄層での高い信頼性を確保することができる。
【0064】
Sn濃縮領域Aは、所定の長さlと厚さを有する形態で存在し得る。
【0065】
Sn濃縮領域Aの長さlは誘電体結晶粒の長軸長さの40%以上100%以下であってもよく、例えば50%以上100%以下、60%以上100%以下であってもよい。Sn濃縮領域Aの長さが前記範囲内である場合、粒界の抵抗特性が向上できる。
【0066】
Sn濃縮領域Aは一つの誘電体結晶粒内に、具体的には一つの誘電体結晶粒のシェル部20内に、1つ以上4つ以下、例えば2つ以上3つ以下存在し得る。
【0067】
また、一つの誘電体層111内に誘電体結晶粒が30個以上50個以下存在するTEMイメージ上で、Sn濃縮領域Aは前記誘電体結晶粒の個数の30%以上100%以下に該当する個数で存在し得る。Sn濃縮領域Aが誘電体層111内に前記個数範囲で存在する場合、誘電体結晶粒の粒成長が抑制されるだけでなく、粒界の抵抗が増加して薄層での信頼性が向上できる。ここでのTEMイメージは誘電体層111が見える約1.3μm×1.3μm領域でXe-FIBを使用して加速電圧200kVの条件で測定できる。
【0068】
一実施形態による誘電体結晶粒の平均粒径は80nm以上160nm以下であってもよく、例えば90nm以上150nm以下であってもよい。誘電体結晶粒の平均粒径が前記範囲内である場合、誘電体結晶粒の粒成長が抑制されて薄層での信頼性が向上できる。
【0069】
誘電体結晶粒の平均粒径はSEM(走査電子顕微鏡)分析によって得ることができる。具体的に、積層セラミックキャパシタをエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディーのW軸及びT軸方向面(WT面)をL軸方向に1/2地点まで研磨(polishing)し、固定後、真空雰囲気チャンバー内で維持して、誘電体層と内部電極層が交差するアクティブ部を観察することができるように断面サンプルを得ることができる。次いで、断面サンプルのアクティブ部で誘電体層が少なくとも2層出るように、走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)で測定することができる。例えば、SEMはthermofisher scientific社のVerios G4製品を使用し、2つの誘電体層が見える約2.2μm×2.2μm領域でXe-FIBを使用して加速電圧200kVの条件で測定することができる。
【0070】
前記断面サンプルのSEMイメージで少なくとも100個の誘電体結晶粒の最大長軸の直径を測定して平均値を算出することができる。
【0071】
スズ(Sn)はシェル部20内でチタン酸バリウム系主成分100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。スズ(Sn)がシェル部20内に前記含量範囲内に含まれる場合、誘電体結晶粒の粒成長が抑制されることによって、薄層でも誘電体層の層当り誘電体結晶粒の個数が多くなり得るので信頼性が向上できる。
【0072】
シェル部20に含まれる副成分はスズ(Sn)外にも、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、バリウム(Ba)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、又はこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0073】
ジスプロシウム(Dy)はチタン酸バリウム系主成分100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。テルビウム(Tb)はチタン酸バリウム系主成分100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。マンガン(Mn)はチタン酸バリウム系主成分100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。バナジウム(V)はチタン酸バリウム系主成分100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。バリウム(Ba)はチタン酸バリウム系主成分100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。ケイ素(Si)はチタン酸バリウム系主成分100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。アルミニウム(Al)はチタン酸バリウム系主成分100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。カルシウム(Ca)はチタン酸バリウム系主成分100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。それぞれの副成分が前記含量範囲内で含まれる場合、薄層での信頼性が向上できる。
【0074】
誘電体層111の平均厚さは0.1μm以上8.0μm以下であってもよく、例えば0.3μm以上3.0μm以下であってもよい。誘電体層111の平均厚さが前記範囲内である場合、信頼性の高い薄層の積層セラミックキャパシタを確保することができる。
【0075】
誘電体層111の平均厚さは、積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後にポリシング(polishing)した後、イオンミリングして走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)分析によって測定できる。走査電子顕微鏡は例えば、thermofisher scientific社のVerios G4製品を使用し、測定条件は10kV、0.2nAであり、分析倍率は100倍であってもよく、少なくとも1層以上、3層以上、5層以上、又は10層以上の誘電体層111が出るように測定することができる。走査電子顕微鏡(SEM)イメージで、誘電体層111の長さ方向(L軸方向)又は幅方向(W軸方向)中央地点を基準点とし、基準点から所定間隔で離れた10地点での、誘電体層111厚さの算術平均値であってもよい。10地点の間隔は走査電子顕微鏡(SEM)イメージのスケール(scale)によって調節することができ、例えば1μm以上100μm以下、1μm以上50μm以下、又は1μm以上10μm以下の間隔であってもよい。この時、10地点は全て誘電体層111内に位置しなければならず、10地点が全て誘電体層111内に位置しない場合、基準点の位置を変更するか、又は10地点の間隔を調節することができる。
【0076】
第1内部電極121と第2内部電極122は互いに異なる極性を有する電極であって、誘電体層111を挟んでT軸方向に沿って互いに対向するように交互に配置され、一端がキャパシタボディー110の第3面及び第4面を通じてそれぞれ露出される。
【0077】
第1内部電極121と第2内部電極122は中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に絶縁される。
【0078】
キャパシタボディー110の第3面及び第4面を通じて交互に露出される第1内部電極121及び第2内部電極122の端部は、第1外部電極131及び第2外部電極132とそれぞれ接続されて電気的に連結される。
【0079】
第1内部電極121及び第2内部電極122は導電性金属を含み、例えばNi、Cu、Ag、Pd、Auなどの金属、又はこれらの合金、例えばAg-Pd合金を含むことができる。
【0080】
また、第1内部電極121及び第2内部電極122は、誘電体層111に含まれるセラミック材料と同一組成系の誘電体粒子を含むこともできる。
【0081】
第1内部電極121及び第2内部電極122は、導電性金属を含む導電性ペーストを使用して形成できる。導電性ペーストの印刷方法はスクリーン印刷法又はグラビア印刷法を用いることができる。
【0082】
第1内部電極121及び第2内部電極122の平均厚さは0.1μm以上2μm以下であってもよい。第1内部電極121及び第2内部電極122の平均厚さは走査電子顕微鏡(SEM)分析によって測定できる。ここで、走査電子顕微鏡(SEM)分析は前述の誘電体層111の平均厚さ測定時の方法と同一なので、その説明を省略する。
【0083】
キャパシタボディー110は、複数の誘電体層111と内部電極層121、122が積層された積層体を焼成して形成できる。
【0084】
第1外部電極131及び第2外部電極132は互いに異なる極性の電圧が提供され、第1内部電極121及び第2内部電極122の露出される部分とそれぞれ接続されて電気的に連結される。
【0085】
前記のような構成により、第1外部電極131及び第2外部電極132に所定の電圧を印加すれば、互いに対向する第1内部電極121及び第2内部電極122の間に電荷が蓄積される。この時、積層セラミックキャパシタ100の静電容量はアクティブ領域でT軸方向に沿って互いに重畳する第1内部電極121及び第2内部電極122の重畳する部分の面積と比例するようになる。
【0086】
第1外部電極131及び第2外部電極132は、キャパシタボディー110の第3面及び第4面にそれぞれ配置されて第1内部電極121及び第2内部電極122と接続される第1接続部及び第2接続部と、キャパシタボディー110の第3面及び第4面と、第1面及び第2面又は第5面及び第6面が接する角に配置される第1バンド部及び第2バンド部をそれぞれ含むことができる。
【0087】
第1バンド部及び第2バンド部は第1接続部及び第2接続部からキャパシタボディー110の第1面及び第2面又は第5面及び第6面の一部までそれぞれ延長される。第1バンド部及び第2バンド部は第1外部電極131及び第2外部電極132の固着強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0088】
第1外部電極131及び第2外部電極132はそれぞれキャパシタボディー110と接触する焼結金属層、焼結金属層を覆うように配置される伝導性樹脂層、及び伝導性樹脂層を覆うように配置されるメッキ層を含むことができる。
【0089】
焼結金属層は、導電性金属及びガラスを含むことができる。
【0090】
導電性金属は銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、これらの合金、又はこれらの組み合わせを含むことができ、例えば銅(Cu)は銅(Cu)合金を含むことができる。導電性金属が銅を含む場合、銅以外の金属は銅100モル部に対して5モル部以下で含まれてもよい。
【0091】
ガラスは酸化物が混合された組成を含むことができ、例えばケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物、遷移金属酸化物、アルカリ金属酸化物、及びアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択された一つ以上であってもよい。遷移金属は亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni)からなる群より選択され、アルカリ金属はリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)からなる群より選択され、アルカリ土類金属はマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)からなる群より選択された一つ以上であってもよい。
【0092】
選択的に、伝導性樹脂層は焼結金属層の上に形成され、例えば焼結金属層を完全に覆う形態に形成できる。一方、第1外部電極131及び第2外部電極132は焼結金属層を含まなくてもよく、この場合、伝導性樹脂層がキャパシタボディー110と直接接触することになる。
【0093】
伝導性樹脂層はキャパシタボディー110の第1面及び第2面又は第5面及び第6面に延長され、伝導性樹脂層がキャパシタボディー110の第1面及び第2面又は第5面及び第6面に延長して配置された領域(即ち、バンド部)の長さは焼結金属層がキャパシタボディー110の第1面及び第2面又は第5面及び第6面に延長して配置された領域(即ち、バンド部)の長さより長くてもよい。即ち、伝導性樹脂層は焼結金属層の上に形成され、焼結金属層を完全に覆う形態に形成できる。
【0094】
伝導性樹脂層は、樹脂及び導電性金属を含む。
【0095】
伝導性樹脂層に含まれる樹脂は接合性及び衝撃吸収性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを作ることができるものであれば特に制限されず、例えばフェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂を含むことができる。
【0096】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、第1内部電極121及び第2内部電極122又は焼結金属層と電気的に連結されるようにする役割を果たす。
【0097】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、球形、フレーク形、又はこれらの組み合わせの形態を有することができる。即ち、導電性金属はフレーク形のみからなるか、又は球形のみからなってもよく、フレーク形と球形が混合された形態であってもよい。
【0098】
ここで、球形は完全な球形でない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下である形態を含むことができる。フレーク形粉末は平たくて細長い形態を有する粉末を意味し、特に制限されるわけではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。
【0099】
第1外部電極131及び第2外部電極132は、伝導性樹脂層外側に配置されるメッキ層をさらに含むことができる。
【0100】
メッキ層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、タングステン(W)、チタン(Ti)又は鉛(Pb)の単独又はこれらの合金を含むことができる。例えば、メッキ層はニッケル(Ni)メッキ層又はスズ(Sn)メッキ層であってもよく、ニッケル(Ni)メッキ層及びスズ(Sn)メッキ層が順次に積層された形態であってもよく、スズ(Sn)メッキ層、ニッケル(Ni)メッキ層及びスズ(Sn)メッキ層が順次に積層された形態であってもよい。また、メッキ層は複数のニッケル(Ni)メッキ層及び/又は複数のスズ(Sn)メッキ層を含むこともできる。
【0101】
メッキ層は、積層型キャパシタ100の基板との実装性、構造的信頼性、外部に対する耐久度、耐熱性及び等価直列抵抗値(equivalent series resistance、ESR)を改善することができる。
【0102】
以下では、一実施形態による積層セラミックキャパシタ100の製造方法について説明する。
【0103】
一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、チタン酸バリウム系主成分粉末、及びスズ(Sn)含有化合物を含む副成分粉末を混合して誘電体スラリーを製造する段階;前記誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートを製造し、前記誘電体グリーンシート表面に導電性ペースト層を形成する段階;前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階;前記誘電体グリーンシート積層体を焼成して誘電体層と内部電極層を含むキャパシタボディーを製造する段階;及び前記キャパシタボディーの一面に外部電極を形成する段階を経て製造できる。
【0104】
まず、チタン酸バリウム系主成分粉末、及びスズ(Sn)含有化合物を含む副成分粉末を混合して誘電体スラリーを製造する。
【0105】
チタン酸バリウム系主成分粉末は、チタン(Ti)前駆体及びバリウム(Ba)前駆体の混合で製造できる。
【0106】
チタン(Ti)前駆体はチタンの酸化物、塩(salt)、アルコキシドなどであってもよく、例えば、二酸化チタン、チタンジイソプロポキシドジアセチルアセトネート(TPA)、チタンアルコキシド、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0107】
バリウム(Ba)前駆体は、BaO、BaTiO、BaCO、BaO、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0108】
バリウム(Ba)前駆体は、チタン(Ti)前駆体1モルに対して0.9モル以上1.1モル以下で含まれてもよい。
【0109】
副成分粉末であるスズ(Sn)含有化合物は酸化物、窒化物、又は塩化合物であってもよく、又は有機溶媒に分散したゾル形態で使用することもできる。
【0110】
スズ(Sn)含有化合物はチタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で混合されてもよく、例えば0.1モル部以上3モル部以下で混合されてもよい。スズ(Sn)含有化合物が前記含量範囲内で混合される場合、誘電体結晶粒の粒成長を抑制させることによって薄層での信頼性を向上させることができる。
【0111】
副成分粉末は、ジスプロシウム(Dy)含有化合物、テルビウム(Tb)含有化合物、マンガン(Mn)含有化合物、バナジウム(V)含有化合物、バリウム(Ba)含有化合物、ケイ素(Si)含有化合物、アルミニウム(Al)含有化合物、カルシウム(Ca)含有化合物、又はこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0112】
ジスプロシウム(Dy)含有化合物はチタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。テルビウム(Tb)含有化合物はチタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。マンガン(Mn)はチタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。バナジウム(V)はチタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。バリウム(Ba)はチタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。ケイ素(Si)はチタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。アルミニウム(Al)はチタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。カルシウム(Ca)はチタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.01モル部以上5モル部以下で含まれてもよく、例えば0.1モル部以上4モル部以下で含まれてもよい。それぞれの副成分粉末が前記含量範囲内で含まれる場合、薄層での信頼性が向上できる。
【0113】
誘電体スラリーは、分散剤、バインダー、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤などの添加剤と溶媒を追加的に混合して製造できる。
【0114】
分散剤は例えば、リン酸エステル系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、又はこれらの組み合わせを含むことができる。分散剤はチタン酸バリウム系主成分粉末100重量部に対して0.1重量部以上5重量部以下で混合されてもよく、例えば0.3重量部以上3重量部以下で混合されてもよい。分散剤が前記含量範囲内で混合される場合、誘電体スラリーの分散性に優れ、製造された誘電体層内に含まれる不純物の量を減らすことができる。
【0115】
バインダーは例えば、アクリル樹脂、ポリビニルブチル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチルセルロース樹脂などであってもよい。バインダーはチタン酸バリウム系主成分粉末100重量部に対して0.1重量部以上50重量部以下で添加されてもよく、例えば3重量部以上30重量部以下で添加されてもよい。バインダーが前記含量範囲内で混合される場合、誘電体スラリーの分散性に優れ、製造された誘電体層内に含まれる不純物の量を減らすことができる。
【0116】
可塑剤は例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジ(2-エチルブチル)などのフタル酸系化合物;アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)などのアジピン酸系化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール系化合物;トリエチレングリコールジブチレート、トリエチレングリコールジ(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ(2-エチルヘキサノエート)などのグリコールエステル系化合物などであってもよい。可塑剤はチタン酸バリウム系主成分粉末100重量部に対して0.1重量部以上20重量部以下で添加されてもよく、例えば1重量部以上10重量部以下で添加されてもよい。可塑剤が前記含量範囲内で混合される場合、誘電体スラリーの分散性に優れ、製造された誘電体層内に含まれる不純物の量を減らすことができる。
【0117】
溶媒は、水などの水系溶媒;エタノール、メタノール、ベンジルアルコール、メトキシエタノールなどのアルコール系溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのエステル系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒などであってもよい。溶媒は例えば、誘電体スラリーに含まれる各種添加剤の溶解性や分散性を考慮して、アルコール系溶媒又は芳香族系溶媒を使用することができる。溶媒はチタン酸バリウム系主成分粉末100重量部に対して50重量部以上1000重量部以下で混合されてもよく、例えば100重量部以上500重量部以下で混合されてもよい。溶媒が前記含量範囲内で混合される場合、誘電体スラリー成分が十分に混合され、以後溶媒の除去も容易である。
【0118】
チタン酸バリウム系主成分粉末及び副成分粉末の混合は湿式ボールミル又は攪拌ミルを用いることができる。湿式ボールミルでジルコニアボールを用いる場合、直径0.1mm以上10mm以下の多数のジルコニアボールを用いて8時間以上48時間以下、又は10時間以上24時間以下湿式混合することができる。
【0119】
製造された誘電体スラリーは焼成後に誘電体層として形成される。
【0120】
製造された誘電体スラリーをシート形状に成形する方法としてはドクターブレード法、カレンダーロール法などのテープ成形法など、例えばヘッド吐出方式のオン-ロール(on roll)成形コーター(coater)を用いることができ、その後、成形体を乾燥することによって誘電体グリーンシートを得ることができる。
【0121】
焼成後に内部電極層になる導電性ペースト層を形成するために、導電性金属又はその合金からなる導電性粉末、バインダー及び溶媒を混合して導電性ペーストを製造することができる。また、必要によって共材としてチタン酸バリウム粉末が共に混合されてもよい。共材は焼成過程で導電性粉末の焼結を抑制する作用を果たすことができる。誘電体グリーンシート表面にスクリーン印刷などの各種印刷法や転写法によって導電性ペーストを所定のパターンで塗布して導電性ペースト層を形成する。
【0122】
前記導電性粉末は、ニッケル(Ni)又はニッケル(Ni)合金を含むことができる。
【0123】
次いで、内部電極パターンを形成した誘電体グリーンシートを複数層にわたって積層した後、積層方向にプレスすることによって誘電体グリーンシート積層体を製造する。この時、誘電体グリーンシート積層体の積層方向の上面及び下面には誘電体グリーンシートが位置するように誘電体グリーンシートと内部電極パターンを積層することができる。
【0124】
製造された誘電体グリーンシート積層体をダイシングなどによって所定の寸法に切断する段階を選択的に行うことができる。
【0125】
また、誘電体グリーンシート積層体は必要によって可塑剤などを除去するために固化乾燥することができ、固化乾燥後に水平遠心バレル研磨機などを用いてバレル研磨することができる。バレル研磨では、誘電体グリーンシート積層体をメディア及び研磨液と共にバレル容器内に投入し、そのバレル容器に対して回転運動や振動などを付与することによって、切断時に発生したバリ(burr)などの不必要部分を研磨することができる。また、バレル研磨後、誘電体グリーンシート積層体は水などの洗浄液で洗浄して乾燥することができる。
【0126】
次いで、誘電体グリーンシート積層体を脱バインダー処理及び焼成してキャパシタボディーを製造することができる。
【0127】
脱バインダー処理条件は、誘電体層の成分や内部電極層の成分によって適切に調節することができる。例えば、脱バインダー処理時の昇温速度は5℃/時間以上300℃/時間以下、支持温度は180℃以上400℃以下、温度維持時間は0.5時間以上24時間以下であってもよい。脱バインダー処理時、雰囲気は空気又は還元性雰囲気であってもよい。
【0128】
焼成処理の条件は、誘電体層の主成分組成や内部電極の主成分組成によって適切に調節することができる。例えば、焼成は1100℃以上1400℃以下の温度で行うことができ、例えば1150℃以上1300℃以下の温度で行うことができる。また、焼成は0.5時間以上8時間以下、例えば1時間以上3時間以下行うことができる。また、焼成は還元性雰囲気、例えば、窒素及び水素の混合ガスを加湿した雰囲気で行うことができる。内部電極がニッケル(Ni)又はニッケル(Ni)合金を含む場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は1.0×10-14MPa以上1.0×10-10MPa以下であってもよい。
【0129】
焼成処理後、必要によってアニーリングを行うことができる。アニーリングは誘電体層を再酸化させるための処理であり、還元性雰囲気で焼成処理した場合、アニーリングを行うことができる。アニーリング処理の条件も誘電体層の成分によって適切に調節することができる。例えば、アニーリング時の温度は950℃以上1150℃以下であってもよく、時間は0時間以上20時間以下であってもよく、昇温速度は50℃/時間以上500℃/時間以下であってもよい。アニーリング雰囲気は加湿した窒素ガス(N)雰囲気であってもよく、酸素分圧は1.0×10-9MPa以上1.0×10-5MPa以下であってもよい。
【0130】
脱バインダー処理、焼成処理、又はアニーリング処理で、窒素ガスや混合ガスなどを加湿するためには例えばウェッター(wetter)などを使用することができ、この場合、水温は5℃以上75℃以下であってもよい。脱バインダー処理、焼成処理、及びアニーリング処理は連続して行うことができ、独立的に行うこともできる。
【0131】
選択的に、製造されたキャパシタボディー110の第3面及び第4面に対して、サンドブラスティング処理、レーザー照射、バレル研磨などの表面処理を行うことができる。このような表面処理を行うことによって、第3面及び第4面の最表面に第1内部電極及び第2内部電極の端部が露出され、これにより第1外部電極及び第2外部電極と第1内部電極及び第2内部電極の電気的接合が良好になり、合金部が形成されやすくなり得る。
【0132】
次いで、製造されたキャパシタボディー110の一面に外部電極を形成する。
【0133】
一例として、外部電極として焼結金属層形成用ペーストを塗布した後に焼結させて焼結金属層を形成することができる。
【0134】
焼結金属層形成用ペーストは、導電性金属とガラスを含むことができる。導電性金属とガラスに関する説明は前述のものと同一なので、繰り返される説明は省略する。また、焼結金属層形成用ペーストは選択的にバインダー、溶媒、分散剤、可塑剤、酸化物粉末などを含むことができる。バインダーは例えばエチルセルロース、アクリル、ブチラール(butyral)などを使用することができ、溶媒は例えばテルピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、トルエンなどの有機溶媒や、水系溶媒を使用することができる。
【0135】
焼結金属層形成用ペーストをキャパシタボディー110の外面に塗布する方法としては、ディップ法、スクリーン印刷などの各種印刷法、ディスペンサーなどを用いた塗布法、スプレーを用いた噴霧法などを使用することができる。焼結金属層形成用ペーストは少なくともキャパシタボディー110の第3面及び第4面に塗布され、選択的に第1外部電極及び第2外部電極のバンド部が形成される第1面、第2面、第5面、又は第6面の一部にも塗布できる。
【0136】
その後、焼結金属層形成用ペーストが塗布されたキャパシタボディー110を乾燥させ、700℃以上1000℃以下の温度で0.1時間以上3時間以下焼結させて、焼結金属層を形成する。
【0137】
選択的に、得られたキャパシタボディー110の外面に、伝導性樹脂層形成用ペーストを塗布した後に硬化させて、伝導性樹脂層を形成することができる。
【0138】
伝導性樹脂層形成用ペーストは、樹脂、及び選択的に導電性金属又は非伝導性フィラーを含むことができる。導電性金属と樹脂に関する説明は前述のものと同一なので、繰り返される説明は省略する。また、伝導性樹脂層形成用ペーストは選択的にバインダー、溶媒、分散剤、可塑剤、酸化物粉末などを含むことができる。バインダーは例えばエチルセルロース、アクリル、ブチラール(butyral)などを使用することができ、溶媒はテルピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、トルエンなどの有機溶媒や、水系溶媒を使用することができる。
【0139】
一例として、伝導性樹脂層の形成方法は、伝導性樹脂層形成用ペーストにキャパシタボディー110をディッピングして形成した後に硬化させるか、又は伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディー110の表面にスクリーン印刷法又はグラビア印刷法などで印刷するか、又は伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディー110の表面に塗布した後に硬化させて形成することができる。
【0140】
その次に、伝導性樹脂層の外側にメッキ層を形成する。
【0141】
一例として、メッキ層はメッキ法によって形成することができ、スパッタ又は電解メッキ(electric deposition)によって形成することもできる。
【0142】
以下、実施例を通じて前述の実施形態をより詳細に説明する。但し、下記の実施例は単に説明の目的のためのものであり、権利範囲を制限するものではない。
【0143】
[実施例]
(積層セラミックキャパシタ製造)
実施例1~3及び比較例1~5
チタン酸バリウム(BaTiO)主成分粉末、及び副成分粉末として酸化スズ(SnO)及び酸化ジスプロシウム(Dy)を混合して誘電体スラリーを製造した。この時、酸化スズ(SnO)及び酸化ジスプロシウム(Dy)はチタン酸バリウム(BaTiO)主成分粉末100モル部に対してそれぞれ1.5モル部で混合された。混合は、ジルコニウムボール(ZrO- ball)を分散媒として使用して、エタノール/トルエンと湿潤分散剤(wetting dispersant)及びバインダーとしてポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)樹脂を共に投入した後、機械的ミリング(milling)して行われた。
【0144】
製造された誘電体スラリーをヘッド吐出方式のオン-ロール(on roll)成形コーター(coater)を用いて誘電体グリーンシートを製造した。
【0145】
誘電体グリーンシートの表面にニッケル(Ni)を含む導電性ペースト層を印刷し、導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシート(横×縦×高さ=3.2mm×2.5mm×2.5mm)を積層及び圧着して誘電体グリーンシート積層体を製造した。
【0146】
誘電体グリーンシート積層体を400℃以下、窒素雰囲気で可塑工程を経て焼成温度1300℃以下、水素濃度1.0% H以下条件で焼成した。具体的に、比較例1~3の場合、1140℃以上1160℃以下の温度で、実施例1~3の場合、1160℃超過1220℃以下の温度で、比較例4及び5の場合、1220℃超過1240℃以下の温度でそれぞれ焼成した。
【0147】
次いで、外部電極、メッキなどの工程を経て積層セラミックキャパシタを製造した。
【0148】
評価1:TEM分析
実施例1で製造された積層セラミックキャパシタに対してTEM(透過電子顕微鏡)分析を行って、その結果を図5に示した。
【0149】
具体的に、実施例1で製造された積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディー110のW軸及びT軸方向面(WT面)をL軸方向に1/2深さまで研磨(polishing)し、固定後、真空雰囲気チャンバー内で維持して、誘電体層111と内部電極層121、122が交差するアクティブ領域を観察することができるように断面サンプルを得た。次いで、断面サンプルのアクティブ領域に対して誘電体層111が少なくとも1層見えるように透過電子顕微鏡(TEM)で測定した。TEMは誘電体層111が見える約1.3μm×1.3μm領域でXe-FIBを使用して加速電圧200kVの条件で測定された。
【0150】
図5は実施例1による誘電体層に対するTEMイメージである。
【0151】
図5を参照すれば、実施例1による誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、これらのうちの少なくとも一つはコア-シェル構造でのシェル部にSnの濃度が高いSn濃縮領域が存在するのを確認することができる。
【0152】
評価2:TEM-EDSライン分析
実施例1~3及び比較例1~5で製造された積層セラミックキャパシタに対してTEM-EDS(透過電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)ライン分析を行って、その結果を図6a及び図6bと下記表1に示した。
【0153】
具体的に、実施例1~3及び比較例1~5で製造された積層セラミックキャパシタを用いて評価1と同様な方法でそれぞれの断面サンプルを得た。次いで、断面サンプルのアクティブ領域に対して誘電体層111が少なくとも1層見えるように透過電子顕微鏡(TEM)で測定した。TEMは誘電体層111内の約300nm×300nm領域でXe-FIBを使用して加速電圧200kVの条件で測定された。次いで、測定された断面サンプルのTEMイメージで、図6aでのように、誘電体結晶粒の最外郭の一地点から中心を横切って他の最外郭の地点までの直線区間に対して、EDS-ライン分析を行った。
【0154】
図6aは実施例1による誘電体層内誘電体結晶粒を示すTEMイメージであり、図6bは図6aの誘電体結晶粒に対するEDS-ライン分析グラフである。
【0155】
図6a及び図6bを参照すれば、実施例1の場合、一つの誘電体結晶粒はコア部及びシェル部を有し、シェル部は誘電体結晶粒の最外郭から内部に約20nmの深さまでの領域であるのを確認することができる。また、シェル部内にEDS-ライン分析グラフでスズ(Sn)の原子%のピークが最も高く現れる区間であるSn濃縮領域を含み、また、Sn濃縮領域より低い原子%のスズ(Sn)を含む区間であるSn非濃縮領域を含むのを確認することができる。
【0156】
前述のTEM-EDSライン分析を通じて、Sn濃縮領域Aに含まれているスズ(Sn)とSn非濃縮領域Bに含まれているスズ(Sn)の原子%含量比、即ち、原子比を求めて下記表1に示した。
【0157】
下記表1で、Sn濃縮領域Aの長さは、誘電体結晶粒の長軸長さに対する百分率値である。
【0158】
【表1】
【0159】
評価3:SEM分析
実施例1及び比較例1で製造された積層セラミックキャパシタに対してSEM(走査電子顕微鏡)分析を行って、誘電体結晶粒の平均粒径を測定してその結果を図7及び図8に示した。
【0160】
具体的に、実施例1及び比較例1で製造された積層セラミックキャパシタをエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディーのW軸及びT軸方向面(WT面)をL軸方向に1/2地点まで研磨(polishing)し、固定後、真空雰囲気チャンバー内で維持して、誘電体層と内部電極層が交差するアクティブ部を観察することができるように断面サンプルを得た。次いで、断面サンプルのアクティブ部で誘電体層が少なくとも2層出るように、走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)で測定した。SEMはthermofisher scientific社のVerios G4製品を使用し、2つの誘電体層が見える約2.2μm×2.2μm領域でXe-FIBを使用して加速電圧200kVの条件で測定した。前記断面サンプルのSEMイメージで少なくとも100個の誘電体結晶粒の最大長軸の直径を測定して平均値を算出することによって、誘電体結晶粒の平均粒径を求めた。
【0161】
図7は実施例1による誘電体層に対するSEMイメージであり、図8は比較例1による誘電体層に対するSEMイメージである。
【0162】
図7及び図8を参照すれば、誘電体結晶粒のシェル部内にSn濃縮領域及びSn非濃縮領域を含み、Sn非濃縮領域に対するSn濃縮領域でのスズ(Sn)の原子比が2.0以上6.0以下の範囲内にある実施例1の場合、誘電体結晶粒の平均粒径が120nmである反面、比較例1による誘電体結晶粒の平均粒径は170nmであるのが分かる。これから、一実施形態による誘電体結晶粒は粒成長が抑制されて、薄層での信頼性が向上することが分かる。
【0163】
評価4:信頼性
実施例1~3及び比較例1~5で製造された積層セラミックキャパシタに対して加速寿命評価を行って、その結果を下記表2と図9及び図10に示した。
【0164】
具体的に、40個のサンプルチップを信頼性基板に実装した後、温度125℃及び電圧6Vの条件で、10時間以内にチップの故障(fail)が発生する故障率(fail%)を求めた。また故障率が5%以下である場合は○と、故障率が5%超過20%以下である場合は△と、故障率が20%超過である場合はXと判定した。
【0165】
【表2】
【0166】
図9は実施例1による積層セラミックキャパシタの加速寿命を評価したグラフであり、図10は比較例1による積層セラミックキャパシタの加速寿命を評価したグラフである。
【0167】
前記表2と図9及び図10を参照すれば、誘電体結晶粒のシェル部内にSn濃縮領域及びSn非濃縮領域を含み、Sn非濃縮領域に対するSn濃縮領域でのスズ(Sn)の原子比が2.0以上6.0以下の範囲内にある実施例1の場合、比較例1に比べて加速寿命特性に優れているのが分かる。したがって、一実施形態による積層セラミックキャパシタは薄層での信頼性が優れていることを確認できる。
【0168】
以上を通じて本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲と発明の説明及び添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属するのは当然である。
【符号の説明】
【0169】
100:積層セラミックキャパシタ
110:キャパシタボディー
111:誘電体層
121:第1内部電極
122:第2内部電極
131:第1外部電極
132:第2外部電極
10:コア
20:シェル
A:Sn濃縮領域
B:Sn非濃縮領域
t:シェル部20の厚さ
l:Sn濃縮領域Aの長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10