(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025084039
(43)【公開日】2025-06-02
(54)【発明の名称】積層型キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250526BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
H01G4/30 515
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084102
(22)【出願日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】10-2023-0161947
(32)【優先日】2023-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】柳 龍周
(72)【発明者】
【氏名】李 明佑
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 海率
(72)【発明者】
【氏名】金 珍成
(72)【発明者】
【氏名】韓 宰旻
(72)【発明者】
【氏名】洪 承俊
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AC10
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】
【課題】誘電体結晶粒コアでの主成分の平均モル比率および誘電体結晶粒シェルの平均面積比率を制御することによって、誘電率を改善した積層型キャパシタを提供する。
【解決手段】一実施形態による積層型キャパシタは誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディーと、前記キャパシタボディーの外側に配置される外部電極とを含み、前記誘電体層はチタン酸バリウムを主成分として含む複数の誘電体結晶粒を含み、前記複数の誘電体結晶粒のうちの少なくとも一つ以上はコア-シェル構造を有し、前記誘電体結晶粒のコアでチタンに対するバリウムの平均モル比率(Ba/Ti mole ratio)は0.9975~1.0055であり、前記誘電体層内の単位面積(1μm×1μm)当り前記コアの平均個数が25個~35個である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディーと、
前記キャパシタボディーの外側に配置される外部電極とを含み、
前記誘電体層はチタン酸バリウムを主成分として含む複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒のうちの少なくとも一つ以上はコア-シェル構造を有し、
前記誘電体結晶粒のコアでチタンに対するバリウムの平均モル比率(Ba/Ti mole ratio)は0.9975~1.0055であり、
前記誘電体層内の単位面積(1μm×1μm)当りの前記コアの平均個数が25個~35個である、積層型キャパシタ。
【請求項2】
前記誘電体結晶粒のコアでチタンに対するバリウムの平均モル比率(Ba/Ti mole ratio)は0.9980~1.0050である、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項3】
前記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つの平均面積に対する、前記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つが含むシェルの平均面積比率は30%~50%である、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項4】
前記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つの平均面積に対する、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つが含むシェルの平均面積比率は38%~46%である、請求項3に記載の積層型キャパシタ。
【請求項5】
前記主成分は、BaTiO3、Ba(Ti,Zr)O3、Ba(Ti,Sn)O3、(Ba,Ca)TiO3、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3、(Ba,Ca)(Ti,Sn)O3、(Ba,Sr)TiO3、(Ba,Sr)(Ti,Zr)O3、(Ba,Sr)(Ti,Sn)O3、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項6】
前記誘電体結晶粒は副成分をさらに含み、
前記副成分はジスプロシウム(Dy)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項7】
前記副成分は、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ランタン(La)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項6に記載の積層型キャパシタ。
【請求項8】
前記誘電体結晶粒は前記主成分100モル部に対してDy2O30.5モル部~1.5モル部、MnO20.05モル部~0.15モル部、V2O50.05モル部~0.15モル部、BaCO31.0モル部~2.5モル部、SiO20.5モル部~1.0モル部、またはAl2O30.2モル部~1.0モル部を副成分として含む、請求項6に記載の積層型キャパシタ。
【請求項9】
前記シェルは前記主成分100モルに対して前記副成分全体を0.1モル超30.0モル以下で含み、
前記コアは前記主成分100モルに対して前記副成分全体を0.1モル以下で含む、請求項6に記載の積層型キャパシタ。
【請求項10】
前記コアの平均直径は50nm~500nmである、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項11】
前記誘電体層の平均厚さは0.15μm~10μmである、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項12】
誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディーと、
前記キャパシタボディーの外側に配置される外部電極とを含み、
前記誘電体層はチタン酸バリウムを主成分として含む複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒のうちの少なくとも一つ以上はコア-シェル構造を有し、
前記誘電体結晶粒のコアでチタンに対するバリウムの平均モル比率(Ba/Ti mole ratio)は0.9975~1.0055であり、
前記誘電体層内の単位面積(1μm×1μm)当りの前記コアの平均個数が27個~35個であり、
前記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つの平均面積に対する、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つが含むシェルの平均面積の比率は30%~50%である、積層型キャパシタ。
【請求項13】
前記誘電体結晶粒のコアでチタンに対するバリウムの平均モル比率(Ba/Ti mole ratio)は0.9980~1.0050である、請求項12に記載の積層型キャパシタ。
【請求項14】
前記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つの平均面積に対する、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つが含むシェルの平均面積の比率は38%~46%である、請求項12に記載の積層型キャパシタ。
【請求項15】
前記主成分は、BaTiO3、Ba(Ti,Zr)O3、Ba(Ti,Sn)O3、(Ba,Ca)TiO3、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3、(Ba,Ca)(Ti,Sn)O3、(Ba,Sr)TiO3、(Ba,Sr)(Ti,Zr)O3、(Ba,Sr)(Ti,Sn)O3、またはこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の積層型キャパシタ。
【請求項16】
前記誘電体結晶粒は副成分をさらに含み、
前記副成分はジスプロシウム(Dy)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の積層型キャパシタ。
【請求項17】
前記誘電体結晶粒は、前記主成分100モル部に対してDy2O30.5モル部~1.5モル部、MnO20.05モル部~0.15モル部、V2O50.05モル部~0.15モル部、BaCO31.0モル部~2.5モル部、SiO20.5モル部~1.0モル部、またはAl2O30.2モル部~1.0モル部を副成分として含む、請求項16に記載の積層型キャパシタ。
【請求項18】
前記シェルは前記主成分100モルに対して前記副成分全体を0.1モル超30.0モル以下で含み、
前記コアは前記主成分100モルに対して前記副成分全体を0.1モル以下で含む、請求項16に記載の積層型キャパシタ。
【請求項19】
前記コアの平均直径は50nm~500nmである、請求項12に記載の積層型キャパシタ。
【請求項20】
前記誘電体層の平均厚さは0.15μm~10μmである、請求項12に記載の積層型キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、積層型キャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、電子機器の多機能化および小型化が急速に行われるにつれて、電子部品の小型化と性能向上も急速に行われている。また、自動車またはネットワーク設備などに使用される電気装置、および産業用として使用されるための電子部品の高信頼性に対する要求も大きく増加している。
【0003】
このような市場要求に応えるために、インダクタ(Inductor)、キャパシタ(Capacitor)、またはレジスター(Resistor)のような受動部品の技術開発競争が加速化している。特に、受動部品であってその用途と使用量が持続的に増加している積層型キャパシタ(Multilayer Ceramic Capacitor、MLCC)の多様な製品開発で市場を先取りするための多くの努力が要求されている。
【0004】
また、積層型キャパシタは誘電体層と内部電極を積み重ねた形態に製造された蓄電器であって、携帯電話機、ノートパソコン、LCD TVなど各種電子機器に使用されている。特に、自動車の電子制御技術発展により車両用需要が増加しており、車両用電子機器の小型化、高機能化が行われるにつれて積層型キャパシタの高温耐湿特性が要求されている。
【0005】
積層型キャパシタの主要材料の一つであるBaTiO3(チタン酸バリウム)は圧電材料、光電材料であって、最近は積層型キャパシタに主に使用されている。しかし、全世界的にチタン酸バリウム粉末を供給する企業は限定されており、その製造技術も制約的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態は、誘電体結晶粒コアでの主成分の平均モル比率および誘電体結晶粒シェルの平均面積比率を制御することによって、誘電率を改善した積層型キャパシタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態による積層型キャパシタは誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディーと、前記キャパシタボディーの外側に配置される外部電極とを含み、
前記誘電体層はチタン酸バリウムを主成分として含む複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒のうちの少なくとも一つ以上はコア-シェル構造を有し、
前記誘電体結晶粒のコアでチタンに対するバリウムの平均モル比率(Ba/Ti mole ratio)は0.9975~1.0055であり、
前記誘電体層内の単位面積(1μm×1μm)当り前記コアの平均個数が25個~35個である。
【0008】
前記誘電体結晶粒のコアでチタンに対するバリウムの平均モル比率(Ba/Ti mole ratio)は0.9980~1.0050であってもよい。
【0009】
前記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つの平均面積に対する、前記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つが含むシェルの平均面積比率は30%~50%であってもよい。
【0010】
前記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つの平均面積に対する、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つが含むシェルの平均面積比率は38%~46%であってもよい。
【0011】
前記主成分は、BaTiO3、Ba(Ti,Zr)O3、Ba(Ti,Sn)O3、(Ba,Ca)TiO3、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3、(Ba,Ca)(Ti,Sn)O3、(Ba,Sr)TiO3、(Ba,Sr)(Ti,Zr)O3、(Ba,Sr)(Ti,Sn)O3、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0012】
前記誘電体結晶粒は副成分をさらに含み、
前記副成分はジスプロシウム(Dy)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0013】
前記副成分は、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ランタン(La)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0014】
前記誘電体結晶粒は、前記主成分100モル部に対してDy2O30.5モル部~1.5モル部、MnO20.05モル部~0.15モル部、V2O50.05モル部~0.15モル部、BaCO31.0モル部~2.5モル部、SiO20.5モル部~1.0モル部、またはAl2O30.2モル部~1.0モル部を副成分として含むことができる。
【0015】
前記シェルは前記主成分100モルに対して前記副成分全体を0.1モル超30.0モル以下で含み、前記コアは前記主成分100モルに対して前記副成分全体を0.1モル以下で含むことができる。
【0016】
前記コアの平均直径は50nm~500nmであってもよい。
【0017】
前記誘電体層の平均厚さは0.15μm~10μmであってもよい。
【0018】
他の一実施形態による積層型キャパシタは誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディーと、前記キャパシタボディーの外側に配置される外部電極とを含み、
前記誘電体層はチタン酸バリウムを主成分として含む複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒のうちの少なくとも一つ以上はコア-シェル構造を有し、
前記誘電体結晶粒のコアでチタンに対するバリウムの平均モル比率(Ba/Ti mole ratio)は0.9975~1.0055であり、
前記誘電体層内の単位面積(1μm×1μm)当り前記コアの平均個数が27個~35個であり、
前記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つの平均面積に対する、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つが含むシェルの平均面積比率は30%~50%である。
【0019】
前記誘電体結晶粒のコアでチタンに対するバリウムの平均モル比率(Ba/Ti mole ratio)は0.9980~1.0050であってもよい。
【0020】
前記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つの平均面積に対する、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1つが含むシェルの平均面積比率は38%~46%であってもよい。
【0021】
前記主成分は、BaTiO3、Ba(Ti,Zr)O3、Ba(Ti,Sn)O3、(Ba,Ca)TiO3、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3、(Ba,Ca)(Ti,Sn)O3、(Ba,Sr)TiO3、(Ba,Sr)(Ti,Zr)O3、(Ba,Sr)(Ti,Sn)O3、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0022】
前記誘電体結晶粒は副成分をさらに含み、
前記副成分はジスプロシウム(Dy)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0023】
前記誘電体結晶粒は、前記主成分100モル部に対してDy2O30.5モル部~1.5モル部、MnO20.05モル部~0.15モル部、V2O50.05モル部~0.15モル部、BaCO31.0モル部~2.5モル部、SiO20.5モル部~1.0モル部、またはAl2O30.2モル部~1.0モル部を副成分として含むことができる。
【0024】
前記シェルは前記主成分100モルに対して前記副成分全体を0.1モル超30.0モル以下で含み、前記コアは前記主成分100モルに対して前記副成分全体を0.1モル以下で含むことができる。
【0025】
前記コアの平均直径は50nm~500nmであってもよい。
【0026】
前記誘電体層の平均厚さは0.15μm~10μmであってもよい。
【発明の効果】
【0027】
一実施形態による積層型キャパシタによれば、誘電体結晶粒コアでの主成分の平均モル比率および誘電体結晶粒シェルの平均面積比率を制御することによって、誘電率が非常に優れた積層型キャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態による積層型キャパシタを示す斜視図である。
【
図2】
図1のI-I’線に沿って切断した積層型キャパシタの断面図である。
【
図3】
図1のキャパシタボディーで内部電極層の積層構造を示した分離斜視図である。
【
図4】誘電体層の誘電体結晶粒の構成を概略的に示した図である。
【
図5】実施例3のキャパシタに対する誘電体層の単位面積(1μm×1μm)内での成分分析結果であって、副成分であるDyを基準にしてTEMマッピング(Mapping)を行ったイメージである。
【
図7】実施例3のキャパシタに含まれる誘電体層の誘電体結晶粒を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で観察して得た走査電子顕微鏡イメージである。
【
図8】実施例3のキャパシタに対するTEMイメージ分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付した図面を参照して本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施形態を詳しく説明する。図面で本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付した。また、添付された図面は本明細書に開示された実施形態を容易に理解することができるようにするためのものに過ぎず、添付された図面によって本明細書に開示された技術的な思想が制限されず、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0030】
第1、第2などのように序数を含む用語は多様な構成要素を説明するのに使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的としてのみ使用される。
【0031】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」または「接続されて」いると言及された時には、その他の構成要素に直接的に連結されているか、接続されているか、または対向していることもあるが、中間に他の構成要素が存在することもあると理解されなければならない。反面、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」または「直接接続されて」いると言及された時には、中間に他の構成要素が存在しないと理解されなければならない。
【0032】
明細書全体で、「含む」または「有する」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。したがって、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対になる記載がない限り他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0033】
図1は一実施形態による積層型キャパシタ100を示す斜視図であり、
図2は
図1のI-I’線に沿って切断した積層型キャパシタ100の断面図であり、
図3は
図1のキャパシタボディー110で内部電極の積層構造を示した分離斜視図である。
【0034】
本実施形態を明確に説明するために方向を定義すれば、図面に表示されたL軸、W軸およびT軸はそれぞれキャパシタボディー110の長さ方向、幅方向および厚さ方向を示す。ここで、厚さ方向(T軸方向)はシート形状の構成要素の広い面(主面)に垂直な方向であってもよく、一例として誘電体層111が積層される積層方向と同一な概念として使用できる。長さ方向(L軸方向)はシート形状の構成要素の広い面(主面)に平行に延長される方向で厚さ方向(T軸方向)と大略的に垂直な方向であってもよく、一例として両側に第1外部電極131および第2外部電極132が位置する方向であってもよい。幅方向(W軸方向)はシート形状の構成要素の広い面(主面)に平行に延長される方向で厚さ方向(T軸方向)および長さ方向(L軸方向)と大略的に垂直な方向であってもよく、シート形状の構成要素の長さ方向(L軸方向)の長さは幅方向(W軸方向)の長さよりさらに長くてもよい。
【0035】
図1~
図3を参照すれば、本実施形態による積層型キャパシタ100は、キャパシタボディー110、そしてキャパシタボディー110の長さ方向(L軸方向)に対向する両端に配置される第1外部電極131および第2外部電極132を含むことができる。
【0036】
キャパシタボディー110は一例として、大略的な六面体形状であってもよい。
【0037】
本実施形態では説明の便宜のために、キャパシタボディー110で厚さ方向(T軸方向)に互いに対向する両面を第1面および第2面と、第1面および第2面と連結され長さ方向(L軸方向)に互いに対向する両面を第3面および第4面と、第1面および第2面と連結され第3面および第4面と連結され幅方向(W軸方向)に互いに対向する両面を第5面および第6面と定義する。
【0038】
一例として、下面である第1面が実装方向に向かう面になり得る。また、第1面~第6面は平らであってもよいが、本実施形態がこれに限定されるものではなく、例えば、第1面~第6面は中央部が凸の曲面であってもよく、各面の境界である角はラウンド(round)されていてもよい。
【0039】
キャパシタボディー110の形状、寸法および誘電体層111の積層数が本実施形態の図面に示されたものに限定されるものではない。
【0040】
キャパシタボディー110は複数の誘電体層111を厚さ方向(T軸方向)に積層した後に焼成したものであって、複数の誘電体層111と誘電体層111を挟んで厚さ方向(T軸方向)に交互に配置される第1内部電極層121および第2内部電極層122を含む。
【0041】
この時、キャパシタボディー110の互いに隣接するそれぞれの誘電体層111の間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を使用せずに確認することが困難な程度に一体化できる。
【0042】
また、キャパシタボディー110は、アクティブ領域とカバー領域112、113とを含むことができる。
【0043】
アクティブ領域は、積層型キャパシタ100の容量形成に寄与する部分である。一例として、アクティブ領域は、厚さ方向(T軸方向)に沿って積層される第1内部電極層121または第2内部電極層122が重畳(overlap)した領域であってもよい。
【0044】
カバー領域112、113は厚さ方向マージン部であって厚さ方向(T軸方向)にアクティブ領域の第1面および第2面側にそれぞれ配置できる。このようなカバー領域112、113は、単一誘電体層111または二つ以上の誘電体層111がアクティブ領域の上面および下面にそれぞれ積層されたものであってもよい。
【0045】
また、キャパシタボディー110は、側面カバー領域をさらに含むことができる。側面カバー領域は幅方向マージン部であって幅方向(W軸方向)にアクティブ領域の第5面および第6面側にそれぞれ配置できる。このような側面カバー領域は、誘電体グリーンシート表面に内部電極層形成用導電性ペースト層を塗布する時、誘電体グリーンシート表面の一部領域にのみ導電性ペースト層を塗布し、誘電体グリーンシート表面の両方の側面には導電性ペースト層を塗布していない誘電体グリーンシートを積層した後、焼成することによって形成することができる。
【0046】
カバー領域112、113と側面カバー領域は、物理的または化学的ストレスによる第1内部電極層121および第2内部電極層122の損傷を防止する役割を果たす。
【0047】
図4は、誘電体層111の誘電体結晶粒1111の構成を概略的に示した図である。以下、
図4を参照して、誘電体層111を詳細に説明する。
【0048】
誘電体層111は、複数の誘電体結晶粒1111を含む。
【0049】
誘電体結晶粒1111は、チタン酸バリウムを主成分として含む。主成分は誘電体母材であって、高い誘電率を有し、積層型キャパシタ100の誘電率形成に寄与する。
【0050】
一例として、前記主成分は、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1-xCax)m(Ti1-yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1-xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)、(Ba1-xCax)m(Ti1-ySny)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、またはこれらの組み合わせを含む誘電材料であってもよい。
【0051】
一例として、前記主成分は、BaTiO3、Ba(Ti,Zr)O3、Ba(Ti,Sn)O3、(Ba,Ca)TiO3、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3、(Ba,Ca)(Ti,Sn)O3、(Ba,Sr)TiO3、(Ba,Sr)(Ti,Zr)O3、(Ba,Sr)(Ti,Sn)O3、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0052】
誘電体結晶粒は主成分と共に、副成分をさらに含むことができる。
【0053】
副成分は、ジスプロシウム(Dy)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0054】
また、副成分は、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ランタン(La)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0055】
例えば、誘電体結晶粒は主成分100モル部に対して、Dy2O30.5モル部~1.5モル部、MnO20.05モル部~0.15モル部、V2O50.05モル部~0.15モル部、BaCO31.0モル部~2.5モル部、SiO20.5モル部~1.0モル部、またはAl2O30.2モル部~1.0モル部を副成分として含むことができる。この場合、誘電体変化に対する相対比較が容易である。
【0056】
誘電体結晶粒1111内で主成分に対する副成分のモル比率が互いに異なる部分が存在でき、一例として複数の誘電体結晶粒1111のうちの少なくとも一つ以上はコア-シェル(core-shell)構造を有する。コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1111は、1つの誘電体結晶粒1111内に誘電体コア1111aおよびコア1111aの少なくとも一部を囲むシェル1111bを含む。
【0057】
コア1111aとシェル1111bは主成分に対する副成分のモル比率が互いに異なり、例えば、コア1111aとシェル1111bの境界で主成分に対する副成分のモル比率が急激に変化してもよい。これにより、コア1111aとシェル1111bの境界を容易に区分することができ、透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析(TEM-EDX)を通じてこれを確認することができる。
【0058】
一例として、キャパシタボディー110のW軸方向の中央からL軸方向およびT軸方向に切断した断面で、アクティブ領域中央に位置した誘電体層111の誘電体結晶粒1111を透過電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)に設定されたEDS(Energy Disperse X-Ray Spectrometer)を用いてライン(line)分析時、誘電体結晶粒1111のコア1111aの中心から誘電体結晶粒1111のいずれかの側の結晶粒界方向に、副成分全体含量が急激に増加し始める部分をコア1111aとシェル1111bとの境界として、コア1111aとシェル1111bを区分することができる。
【0059】
ここで、コア1111aの中心は、コア1111aの最大長軸とこれに直交する短軸のうちの最大短軸とが交わる点として決定することができる。また、EDS(Energy Disperse X-Ray Spectrometer)ライン(line)分析は、誘電体結晶粒1111のコア1111aの中心を通る最大長軸に沿って行うことができる。または、透過電子顕微鏡イメージを二値化するなどの方法で、明暗差がある部分を区分してコア1111aとシェルの境界またはシェルと結晶粒界の境界を定義することもできる。
【0060】
一例として、コア1111aは主成分100モル部に対して副成分全体を0.1モル部以下で含み、シェル1111bは主成分100モル部に対して副成分全体を0.1モル部超30.0モル部以下、または0.1モル部超20.0モル部以下で含むことができる。コア1111aが主成分100モル部に対して副成分を0.1モル部超で含む場合、純粋な誘電体材料(例えば、BaTiO3)の材料的特性が変わることがあり、シェル1111bが主成分100モル部に対して副成分を0.1モル部以下で含む場合、温度による誘電率の変化幅が大きくなることがあり、30.0モル部超で含む場合、初期絶縁抵抗が低下することがある。
【0061】
即ち、コア1111aには副成分が存在しないか、または存在しても微量のみが存在することになる。したがって、コア1111aは不純物を含まず純粋な主成分のみからなり、純粋な主成分は一般に不純物元素がドーピングされた主成分に比べて高い誘電率を有することができる。これにより、コア1111aは誘電率を維持する役割を果たすことができる。
【0062】
シェル1111bは、副成分をコア1111aより多く含む。シェル1111bで主成分(ペロブスカイトABO3構造)のBサイト(B-site)にドーピングされた副成分は、他の希土類およびドーピング元素が誘電体結晶粒1111内部に拡散するバンドギャップエネルギー(Band gap energy)を高める効果がある。これにより、他の希土類およびドーピング元素が誘電体結晶粒1111内部に拡散することを抑制する障壁(barrier)の役割を果たすことができる。シェル1111bは、誘電体結晶粒1111が成長することを抑制する役割を果たして誘電体結晶粒1111の微粒化に寄与できる。また、シェル1111bで主成分のAサイト(A-site)にドーピングされた副成分は信頼性および誘電率を向上させる役割を果たすことができる。
【0063】
誘電体結晶粒1111は誘電体結晶粒のコア1111aでチタンに対するバリウムの平均モル比率(Ba/Ti mole ratio)が0.9975~1.0055である。一例として、誘電体結晶粒のコア1111aでチタンに対するバリウムの平均モル比率(Ba/Ti mole ratio)は0.9980~1.0050であってもよい。誘電体結晶粒のコア1111aでチタンに対するバリウムの平均モル比率(Ba/Ti mole ratio)が0.9975未満であるか、または1.0055を超過する場合には、キャパシタの誘電率が低下することがある。
【0064】
誘電体結晶粒のコア1111aでの特定元素(例えば、BaおよびTi)の成分はナノXRF(nano-XRF)、例えばナノシンクロトロンX線蛍光(Nano-Synchrotron X-Ray Fluorescence、Nano-SXRF)を用いて測定することができる。この時、測定設備はESRF(European Synchrotron Radiation Facility)のID16A-NI(UPBL04)を使用することができる。
【0065】
一例として、積層型キャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディー110のL軸方向およびT軸方向の側面をW軸方向に1/2地点まで研磨(Polishing)し、固定後真空雰囲気チャンバー内に維持して、キャパシタボディー110のW軸方向の中央からL軸方向およびT軸方向に切断した断面サンプルを準備する。
【0066】
準備されたキャパシタボディー110の断面サンプルにシンクロトロンX線(Synchrotron X-ray)(10keV以上)を照射して誘電体結晶粒のコア1111aで特定元素(例えば、BaおよびTi)の含量を3回繰り返し測定して平均値を得て、同じ誘電層内に位置する少なくとも10個の異なる誘電体結晶粒で測定した最小値と最大値の平均値を最終特定元素の含量とすることができる。一例として、同じ誘電層内に位置する少なくとも10個の異なる誘電体結晶粒を選択する時には、アクティブ領域中央に位置した誘電体層111の誘電体結晶粒を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で観察して得た走査電子顕微鏡イメージから選択することができる。
【0067】
コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1111一つの平均面積に対する、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1111一つが含むシェル1111bの平均面積比率は30%~50%、例えば35%~50%、35%~46%、または38%~46%であってもよい。誘電体結晶粒1111一つが含むシェル1111bの平均面積比率が30%未満であるか、または50%を超過する場合にはキャパシタの誘電率が低下することがある。
【0068】
前記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1111一つが含むシェル1111bの平均面積比率は次の方法によって測定することができる。
【0069】
キャパシタボディー110のL軸方向およびT軸方向の面(第5面または第6面)をW軸方向に誘電体層111が露出されるまで、例えば約1/2地点まで研磨して、L軸方向およびT軸方向の断面を露出させ、L軸方向およびT軸方向の断面で任意の誘電体層111を選択し、アクティブ領域中の1μm×1μmの大きさ(単位面積)の領域を測定対象とする。または、キャパシタボディー110のL軸方向およびW軸方向の面(第1面または第2面)をT軸方向に誘電体層111が露出されるまで、例えば約1/2地点まで研磨して、L軸方向およびW軸方向の断面に誘電体層111を露出させ、アクティブ領域中の1μm×1μmの大きさ(単位面積)の領域を測定対象とすることもできる。但し、単位面積は少なくとも一つのコア-シェル構造を有する誘電体結晶粒を含む領域に設定する。
【0070】
測定対象に対して、透過電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)を用いて、加速電圧200kV、WD115mmの条件で、誘電体結晶粒1111一つの直径および誘電体結晶粒1111一つの面積を測定する。この時、誘電体結晶粒1111一つの直径は最大長軸とこれに直交する短軸のうちの最大短軸の平均値で計算することができ、誘電体結晶粒1111一つの面積は誘電体結晶粒1111を円と仮定して直径を用いて計算することができる。
【0071】
また、測定対象に対して、透過電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)に設置されたEDS(Energy Disperse X-Ray Spectrometer)を用いて、加速電圧200kV、WD 115mm、マッピングスキャン(Mapping scan)(ドエルタイム(Dwell time))30usの条件で、誘電体結晶粒1111一つの組成および元素分布を測定して、コア1111aとシェル1111bを区分することによって、コア1111aの直径、コア1111aの面積、およびシェル1111bの面積を測定する。この時、コア1111aの直径は長軸とこれに直交する短軸の平均値で計算することができ、コア1111aの面積はコア1111aを円と仮定して直径を用いて計算することができる。また、シェル1111bの面積は、誘電体結晶粒1111の面積からコア1111aの面積を除いて計算することができる。
【0072】
また、測定された誘電体結晶粒1111の直径、コア1111aの直径、誘電体結晶粒1111の面積、コア1111aの面積、およびシェル1111bの面積の平均値は、前記得られたL軸方向およびT軸方向の断面でそれぞれ異なる3つの誘電体層111で測定した誘電体結晶粒1111三つの値の算術平均値であるか、またはL軸方向およびT軸方向の断面でそれぞれ異なる3つの誘電体層111でアクティブ領域の中央、一端、および他の一端で測定した誘電体結晶粒1111の合計9つの値の算術平均値であってもよい。
【0073】
誘電体層111の単位面積(1μm×1μm)当りのコア1111aの平均個数は25個~35個である。一例として、誘電体層111の単位面積(1μm×1μm)当りのコア1111aの平均個数は27個~35個であってもよい。誘電体層111の単位面積(1μm×1μm)当りのコア1111aの平均個数が25個未満であるか、または35個超である場合には、キャパシタの誘電率が低下することがある。
【0074】
図5は一実施形態(実施例3)による積層型キャパシタに含まれる誘電体層111の単位面積(1μm×1μm)内での成分分析結果であって、副成分であるDyを基準にしてTEMマッピング(Mapping)を行ったイメージであり、
図6は
図5でコア1111aを表示したイメージである。
図6を参照すれば、誘電体層111の単位面積(1μm×1μm)内で平均直径が約50nm以上であるコア1111a部分の個数を測定することができる。
【0075】
コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1111の平均直径は100nm~1,000nmであってもよく、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1111が含むコア1111a一つの平均直径は50nm~500nmであってもよい。
【0076】
一例として、誘電体層111の平均厚さは0.15μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、または2.0μm以上であってもよく、10μm以下、8.0μm以下、または5.0μm以下であってもよい。
【0077】
誘電体層111の平均厚さは、以下のような方法で測定することができる。
【0078】
まず、断面サンプルを走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で観察して得た走査電子顕微鏡イメージを準備する。
【0079】
断面サンプルの走査電子顕微鏡(SEM)イメージで、誘電体層111のL軸方向またはW軸方向の中央地点を基準点にし、基準点から所定間隔で離れた10個の地点での誘電体層111の厚さの算術平均値を求めて、誘電体層111の平均厚さとすることができる。
【0080】
10個の地点の間隔は走査電子顕微鏡(SEM)イメージのスケール(scale)により調節することができ、例えば、1μm~100μm、1μm~50μm、または1μm~10μmの間隔であってもよい。
【0081】
この時、10個の地点は全て誘電体層111内に位置しなければならず、10個の地点が全て誘電体層111内に位置しない場合、基準点の位置を変更するか、または10個の地点の間の間隔を調節することができる。
【0082】
第1内部電極121と第2内部電極122は互いに異なる極性を有する電極であって、誘電体層111を挟んでT軸方向に沿って互いに対向して交互に配置され、一端がキャパシタボディー110の第3面および第4面を通じてそれぞれ露出される。
【0083】
第1内部電極121と第2内部電極122は中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に絶縁される。
【0084】
キャパシタボディー110の第3面および第4面を通じて交互に露出される第1内部電極121および第2内部電極122の端部は、第1外部電極131および第2外部電極132とそれぞれ接続されて電気的に連結できる。
【0085】
第1内部電極121および第2内部電極122は導電性金属を含み、例えばNi、Cu、Ag、Pd、またはAuなどの金属またはこれらの合金、例えばAg-Pd合金を含むことができる。
【0086】
また、第1内部電極121および第2内部電極122は誘電体層111に含まれるセラミック材料と同一組成系の誘電体粒子を含むこともできる。
【0087】
第1内部電極121および第2内部電極122は、導電性金属を含む導電性ペーストを使用して形成できる。導電性ペーストの印刷方法はスクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができる。
【0088】
一例として、第1内部電極121および第2内部電極122の平均厚さは0.1μm~2μmであってもよい。
【0089】
第1内部電極121または第2内部電極122の平均厚さは、前記断面サンプルの走査電子顕微鏡(SEM)イメージで、第1内部電極121または第2内部電極122の長さ方向(L軸方向)または幅方向(W軸方向)中央地点を基準点にして、基準点から所定間隔で離れた10個の地点での、第1内部電極121または第2内部電極122の厚さの算術平均値であってもよい。10個の地点の間隔は走査電子顕微鏡(SEM)イメージのスケール(scale)によって調節することができ、例えば1μm~100μm、1μm~50μm、または1μm~10μmの間隔であってもよい。この時、10個の地点は全て第1内部電極121または第2内部電極122内に位置しなければならず、10個の地点が全て第1内部電極121または第2内部電極122内に位置しない場合、基準点の位置を変更するか、または10個の地点の間の間隔を調節することができる。
【0090】
第1外部電極131および第2外部電極132は互いに異なる極性の電圧が提供され、第1内部電極121および第2内部電極122の露出される部分とそれぞれ接続されて電気的に連結できる。
【0091】
前述のような構成により、第1外部電極131および第2外部電極132に所定の電圧を印加すると、互いに対向する第1内部電極121および第2内部電極122の間に電荷が蓄積される。この時、積層型キャパシタ100の静電容量はアクティブ領域でT軸方向に沿って互いに重畳する第1内部電極121および第2内部電極122のオーバーラップされた面積と比例するようになる。
【0092】
第1外部電極131および第2外部電極132は、キャパシタボディー110の第3面および第4面にそれぞれ配置されて第1内部電極121および第2内部電極122と接続される第1接続部および第2接続部と、キャパシタボディー110の第3面および第4面と、第1面および第2面または第5面および第6面が接する角に配置される第1バンド部および第2バンド部をそれぞれ含むことができる。
【0093】
第1バンド部および第2バンド部は、第1接続部および第2接続部からキャパシタボディー110の第1面および第2面または第5面および第6面の一部までそれぞれ延長できる。第1バンド部および第2バンド部は、第1外部電極131および第2外部電極132の固着強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0094】
一例として、第1外部電極131および第2外部電極132はそれぞれキャパシタボディー110と接触する焼結金属層、焼結金属層を覆うように配置される伝導性樹脂層、および伝導性樹脂層を覆うように配置されるメッキ層を含むことができる。
【0095】
焼結金属層は、導電性金属およびガラスを含むことができる。
【0096】
一例として、焼結金属層は導電性金属として銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、これらの合金、またはこれらの組み合わせを含むことができ、例えば、銅(Cu)は銅(Cu)合金を含むことができる。導電性金属が銅を含む場合、銅以外の金属は銅100モル部に対して5モル部以下で含まれてもよい。
【0097】
一例として、焼結金属層はガラスに酸化物が混合された組成を含むことができ、例えばケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物、遷移金属酸化物、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択された一つ以上であってもよい。遷移金属は亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)およびニッケル(Ni)からなる群より選択され、アルカリ金属はリチウム(Li)、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)からなる群より選択され、アルカリ土類金属はマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)からなる群より選択された一つ以上であってもよい。
【0098】
選択的に、伝導性樹脂層は焼結金属層の上に形成され、例えば、焼結金属層を完全に覆う形態に形成できる。一方、第1外部電極131および第2外部電極132は焼結金属層を含まなくてもよく、この場合、伝導性樹脂層がキャパシタボディー110と直接接触できる。
【0099】
伝導性樹脂層はキャパシタボディー110の第1面および第2面または第5面および第6面に延長され、伝導性樹脂層がキャパシタボディー110の第1面および第2面または第5面および第6面に延長して配置された領域(即ち、バンド部)の長さは焼結金属層がキャパシタボディー110の第1面および第2面または第5面および第6面に延長して配置された領域(即ち、バンド部)の長さより長くてもよい。即ち、伝導性樹脂層は焼結金属層の上に形成され、焼結金属層を完全に覆う形態に形成できる。
【0100】
伝導性樹脂層は、樹脂および導電性金属を含む。
【0101】
伝導性樹脂層に含まれる樹脂は接合性および衝撃吸収性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを作ることができるものであれば特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、またはポリイミド樹脂を含むことができる。
【0102】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、第1内部電極121および第2内部電極122または焼結金属層と電気的に連結されるようにする役割を果たす。
【0103】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、球形、フレーク形、またはこれらの組み合わせの形態を有することができる。即ち、導電性金属はフレーク形のみからなるか、または球形のみからなってもよく、フレーク形と球形が混合された形態であってもよい。
【0104】
ここで、球形は完全な球形でない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下である形態を含むことができる。フレーク形粉末は平たく細長い形態を有する粉末を意味し、特に制限されるわけではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。
【0105】
第1外部電極131および第2外部電極132は、伝導性樹脂層外側に配置されるメッキ層をさらに含むことができる。
【0106】
メッキ層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、タングステン(W)、チタン(Ti)または鉛(Pb)などの単独またはこれらの合金を含むことができる。一例として、メッキ層は、ニッケル(Ni)メッキ層またはスズ(Sn)メッキ層であってもよく、ニッケル(Ni)メッキ層およびスズ(Sn)メッキ層が順次に積層された形態であってもよく、スズ(Sn)メッキ層、ニッケル(Ni)メッキ層およびスズ(Sn)メッキ層が順次に積層された形態であってもよい。また、メッキ層は、複数のニッケル(Ni)メッキ層および/または複数のスズ(Sn)メッキ層を含むこともできる。
【0107】
メッキ層は、積層型キャパシタ100の基板との実装性、構造的信頼性、外部に対する耐久度、耐熱性および等価直列抵抗値(Equivalent Series Resistance、ESR)を改善することができる。
【0108】
積層型キャパシタの製造方法は、誘電体粉末を製造する段階、誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディーを製造する段階、そしてキャパシタボディーの外側に外部電極を形成する段階を含む。
【0109】
まず、誘電体粉末を製造する方法について説明する。
【0110】
バリウム(Ba)前駆体とチタン(Ti)前駆体を湿式混合しながら、チタンに対するバリウムのモル比率(Ba/Ti mole ratio)が0.9975~1.0055になるようにバリウム(Ba)前駆体またはチタン(Ti)前駆体を追加投入する。
【0111】
これによって、チタンに対するバリウムのモル比率が均一なチタン酸バリウム粉末を製造することができ、これを用いて誘電体層を形成することによって、チタンに対するバリウムのモル比率が均一な誘電体結晶粒を形成して信頼性特性を改善することができる。
【0112】
バリウム(Ba)前駆体は、BaO2、BaTiO3、BaCO3、BaO、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0113】
チタン(Ti)前駆体はチタンの酸化物、塩(salt)、またはアルコキシドなどであってもよく、例えば二酸化チタン(TiO2)、チタンジイソプロポキシドジアセチルアセトネート(TPA)、チタンアルコキシド、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0114】
この時、誘電体粉末がCa、Sr、Sn、またはZrなどの追加元素をさらに含む場合、バリウム(Ba)前駆体およびチタン(Ti)前駆体と共に、これら追加元素の前駆体をさらに投入することができる。一例として、追加元素の前駆体はこれら追加元素を含む酸化物または炭酸塩などの化合物であってもよい。
【0115】
湿式混合は例えば、ビーズミル、またはボールミルなどの分散機を用いるか、または高圧分散処理を行って溶媒と共に湿式で分散させることができる。一例として、ビーズミルを用いて分散させる場合、直径0.03mm~0.1mmのビーズを使用して5m/s~15m/sの周速で5パス~30パスで分散処理することができる。
【0116】
湿式混合に使用される溶媒としては、例えばイオン交換水、純水、超純水、または蒸留水などの水系溶媒を使用するか、またはアルコール系溶媒、アンモニア、または有機アミンなどのアミン系溶媒を水と共に使用することができる。
【0117】
選択的に、原料混合段階で分散剤をさらに添加することができ、分散剤は例えば、ポリビニルブチル系分散剤、ポリビニルアセタール系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、マレイン酸系分散剤、ポリエチレングリコール系分散剤、アリルエーテルコポリマー系分散剤などであってもよい。
【0118】
選択的に、原料混合物を乾燥および乾式粉砕することができる。
【0119】
その次に、原料混合物をか焼(calcination)して誘電体粉末を製造する。
【0120】
か焼は、800℃~1000℃で、1時間~8時間、または840℃~900℃で、2時間~6時間行うことができる。
【0121】
か焼は、真空雰囲気または常圧雰囲気下、例えば10000Pa~1000000Paの雰囲気で行うことができる。真空雰囲気は例えば、20000Pa以下、または100Pa以下の真空雰囲気であってもよい。
【0122】
か焼温度が800℃未満であるか、またはか焼時間が1時間未満である場合、未反応およびばらつきが問題になることがあり、か焼温度が1000℃を超過するか、またはか焼時間が1時間未満である場合、粗大粉末が合成されることがある。
【0123】
選択的に、誘電体粉末を湿式粉砕した後、乾燥および乾式粉砕することができる。
【0124】
その次に、キャパシタボディーの製造について説明する。
【0125】
キャパシタボディーの製造工程では、焼成後に誘電体層になる誘電体用ペーストと、焼成後に内部電極になる導電性ペーストを準備する。
【0126】
誘電体用ペーストは例えば以下のような方法で製造する。前記製造された誘電体粉末を湿式混合などの手段によって均一に混合し、乾燥させた後、所定の条件で熱処理することによって、可塑粉末を得る。得られた可塑粉末に、有機ビヒクルまたは水系ビヒクルを追加して混練し誘電体用ペーストを調製する。
【0127】
得られた誘電体用ペーストをドクターブレード法などの技法によってシート化することによって、誘電体グリーンシートを得る。また、誘電体用ペーストには、必要によって各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、またはガラスなどから選択される添加物が含まれていてもよい。
【0128】
内部電極用導電性ペーストは、導電性金属またはその合金からなる導電性粉末とバインダーや溶剤を、混練して調製する。内部電極用導電性ペーストには、必要によって共材としてセラミック粉末(例えば、チタン酸バリウム粉末)が含まれてもよい。共材は焼成過程で導電性粉末の焼結を抑制する作用を果たすことができる。
【0129】
誘電体グリーンシート表面に、スクリーン印刷などの各種印刷法や転写法によって、内部電極用導電性ペーストを所定のパターンで塗布する。そして内部電極パターンを形成した誘電体グリーンシートを複数層にわたって積層した後、積層方向にプレスすることによって誘電体グリーンシート積層体を得る。この時、誘電体グリーンシート積層体の積層方向の上面および下面には、誘電体グリーンシートが位置するように、誘電体グリーンシートと内部電極パターンを積層することができる。
【0130】
選択的に、得られた誘電体グリーンシート積層体をダイシングなどによって所定の寸法に切断することができる。
【0131】
また、誘電体グリーンシート積層体は必要によって可塑剤などを除去するために固化乾燥することができ、固化乾燥後に水平遠心バレル研磨機などを用いてバレル研磨することができる。バレル研磨では、誘電体グリーンシート積層体をメディアおよび研磨液と共にバレル容器内に投入し、そのバレル容器に対して回転運動や振動などを付与することによって、切断時に発生したバーなどの不必要部分を研磨することができる。また、バレル研磨後、誘電体グリーンシート積層体は水などの洗浄液で洗浄して乾燥することができる。
【0132】
誘電体グリーンシート積層体を脱バインダー処理および焼成処理してキャパシタボディーを得る。
【0133】
脱バインダー処理の条件は、誘電体層の主成分組成や内部電極の主成分組成によって適切に調節することができる。例えば、脱バインダー処理時の昇温速度は5℃/時間~300℃/時間、支持温度は180℃~400℃、温度維持時間は0.5時間~24時間であってもよい。脱バインダー雰囲気は、空気または還元性雰囲気であってもよい。
【0134】
焼成処理の条件は、誘電体層の主成分組成や内部電極の主成分組成によって適切に調節することができる。例えば、焼成時の温度は1200℃~1350℃、または1220℃~1300℃であってもよく、時間は0.5時間~8時間、または1時間~3時間であってもよい。焼成雰囲気は還元性雰囲気であってもよく、例えば、窒素ガス(N2)と水素ガス(H2)の混合ガスを加湿した雰囲気であってもよい。内部電極がニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)合金を含む場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は1.0×10-14MPa~1.0×10-10MPaであってもよい。
【0135】
焼成処理後には、必要に応じてアニーリングを実施することができる。アニーリングは誘電体層を再酸化させるための処理であり、焼成処理を還元性雰囲気で実施した場合には、アニーリングを実施することができる。アニーリング処理の条件も誘電体層の主成分組成などによって適切に調節することができる。例えば、アニーリング時の温度は950℃~1150℃であってもよく、時間は0時間~20時間であってもよく、昇温速度は50℃/時間~500℃/時間であってもよい。アニーリング雰囲気は加湿した窒素ガス(N2)雰囲気であってもよく、酸素分圧は1.0×10-9MPa~1.0×10-5MPaであってもよい。
【0136】
脱バインダー処理、焼成処理、またはアニーリング処理で、窒素ガスや混合ガスなどを加湿するためには例えばウェッター(wetter)などを使用することができ、この場合、水温は5℃~75℃であってもよい。脱バインダー処理、焼成処理、およびアニーリング処理は連続して行うことができ、独立的に行うこともできる。
【0137】
選択的に、得られたキャパシタボディーの第3面および第4面に対して、サンドブラスティング処理、レーザー照射、またはバレル研磨などの表面処理を実施することができる。このような表面処理を実施することによって、第3面および第4面の最表面に第1内部電極および第2内部電極の端部が露出され、これにより第1外部電極および第2外部電極と第1内部電極および第2内部電極との電気的接合が良好になり、合金部が形成されやすくなり得る。
【0138】
得られたキャパシタボディーの外面に、外部電極として焼結金属層形成用ペーストを塗布した後に焼結させて、焼結金属層を形成することができる。
【0139】
焼結金属層形成用ペーストは、導電性金属とガラスとを含むことができる。導電性金属とガラスに関する説明は前述のものと同一なので、繰り返される説明は省略する。また、焼結金属層形成用ペーストは選択的にバインダー、溶剤、分散剤、可塑剤、または酸化物粉末などの副成分を含むことができる。例えば、バインダーはエチルセルロース、アクリル、またはブチラール(butyral)などを使用することができ、溶剤はテルピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、またはトルエンなどの有機溶剤や、水系溶剤を使用することができる。
【0140】
焼結金属層形成用ペーストをキャパシタボディー外面に塗布する方法としては、ディップ法、またはスクリーン印刷などの各種印刷法、ディスペンサーなどを用いた塗布法、またはスプレーを用いた噴霧法などを使用することができる。焼結金属層用ペーストは少なくともキャパシタボディーの第3面および第4面に塗布され、選択的に第1外部電極および第2外部電極のバンド部が形成される第1面、第2面、第5面、または第6面の一部にも塗布できる。
【0141】
その後、焼結金属層形成用ペーストが塗布されたキャパシタボディーを乾燥させ、700℃~1000℃の温度で0.1時間~3時間焼結させて、焼結金属層を形成する。
【0142】
選択的に、得られたキャパシタボディーの外面に、伝導性樹脂層形成用ペーストを塗布した後に硬化させて、伝導性樹脂層を形成することができる。
【0143】
伝導性樹脂層形成用ペーストは、樹脂、および選択的に導電性金属または非伝導性フィラーを含むことができる。導電性金属と樹脂に関する説明は前述のものと同一なので、繰り返される説明は省略する。また、伝導性樹脂層形成用ペーストは選択的にバインダー、溶剤、分散剤、可塑剤、または酸化物粉末などの副成分を含むことができる。例えば、バインダーはエチルセルロース、アクリル、またはブチラール(butyral)などを使用することができ、溶剤はテルピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、またはトルエンなどの有機溶剤や、水系溶剤を使用することができる。
【0144】
一例として、伝導性樹脂層の形成方法は、伝導性樹脂層形成用ペーストにキャパシタボディー110をディッピングして形成した後に硬化させるか、または伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディー110の表面にスクリーン印刷法またはグラビア印刷法などで印刷するか、または伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディー110の表面に塗布した後に硬化させて形成することができる。
【0145】
その次に、伝導性樹脂層外側にメッキ層を形成する。
【0146】
一例として、メッキ層はメッキ法によって形成することができ、スパッタまたは電解メッキ(Electric Deposition)によって形成することもできる。
【0147】
以下では発明の具体的な実施例を提示する。但し、下記に記載された実施例は発明を具体的に例示するかまたは説明するためのものに過ぎず、これによって発明の範囲が制限されてはならない。
【実施例0148】
(製造例)
製造例1:誘電体粉末の製造
バリウム(Ba)前駆体としてBaCO3粉末、チタン(Ti)前駆体としてTiO2粉末を準備し、準備した粉末を下記表1のような含量比になるように称量する。称量したBaCO3の粉末とTiO2粉末をビーカーに入れ、水を添加してミキサーで湿式混合する。この時、バリウム(Ba)とチタン(Ti)の比率を調節しながらバリウム(Ba)前駆体とチタン(Ti)前駆体を追加投入しながら、ビーズミルで分散させて原料混合物を製造する。
【0149】
製造された原料混合物を乾燥させ凝集した原料混合物を乾式粉砕する。
【0150】
原料混合物を常圧下、950℃で、3時間か焼(calcination)して誘電体粉末を製造する。
【0151】
か焼後凝集した誘電体粉末を湿式粉砕した後、乾燥させ凝集した原料混合物を乾式粉砕して誘電体粉末を得る。
【0152】
【0153】
製造例2:積層型キャパシタの製造
誘電体母材の主成分として製造例1で製造されたチタン酸バリウム粉末を使用し、副成分としては下記表2に示した組成を使用する。
【0154】
誘電体母材の主成分粉末および副成分粉末をジルコニウムボール(ZrO2 ball)を分散媒として使用し、エタノール/トルエンと分散剤(dispersant)およびバインダー(binder)を混合した後に機械的ミリング(milling)して誘電体用スラリーを製造する。
【0155】
製造された誘電体用スラリーを使用し、ヘッド吐出方式のオンロール(on roll)成形コーター(coater)を用いて誘電体グリーンシートを製造する。
【0156】
誘電体グリーンシート表面にニッケル(Ni)を含む導電性ペースト層を印刷し、導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシート(横×縦×高さ=3.2mm×2.5mm×2.5mm)を積層およびプレスして誘電体グリーンシート積層体を製造する。
【0157】
誘電体グリーンシート積層体を400℃以下、窒素雰囲気で可塑工程を経て焼成温度1300℃以下、水素濃度1.0% H2以下の条件で焼成して実施例および比較例による積層型キャパシタを製造する。
【0158】
【0159】
(実験例)
実験例1
実施例および比較例で製造された積層型キャパシタで誘電体結晶粒のコア中のバリウム(Ba)およびチタン(Ti)のモル比率を測定し、その結果を表3および表4に示す。
【0160】
実施例および比較例で製造された積層型キャパシタをそれぞれ10個ずつ準備し、積層型キャパシタをエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディー110のL軸方向およびT軸方向の側面をW軸方向に1/2地点まで研磨(Polishing)し、固定後真空雰囲気チャンバー内で維持してキャパシタボディー110の断面サンプルを得る。
【0161】
得られたキャパシタボディー110の断面サンプルに対してESRF(European Synchrotron Radiation Facility)のID16A-NI(UPBL04)を用いてナノシンクロトロンX線蛍光(Nano-Synchrotron X-Ray Fluorescence、Nano-SXRF)分析をする。この時、シンクロトロンX線(Synchrotron X-ray)(10keV以上)を照射して誘電体結晶粒のコアでバリウム(Ba)およびチタン(Ti)のモル比率を3回繰り返し測定して平均値を計算する。
【0162】
また、同じ誘電層内に位置する10個の異なる誘電体結晶粒で測定した最小値と最大値の平均値を最終バリウム(Ba)およびチタン(Ti)のモル比率とする。例として、
図7は実施例3のキャパシタに含まれる誘電体層の誘電体結晶粒を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で観察して得た走査電子顕微鏡イメージである。
図7のように同じ誘電層内に位置する少なくとも10個の異なる誘電体結晶粒を選択することができる。
【0163】
図7で選択した10個の地点でのバリウム(Ba)およびチタン(Ti)のモル比率を表3に示す。
【0164】
また、実施例および比較例で測定した誘電体結晶粒の中心でのバリウム(Ba)およびチタン(Ti)のモル比率の最小値(Min.)、最大値(Max.)、および平均値(Avg.)を表4に整理する。
【0165】
【0166】
表3を参照すれば、実施例3に使用された表1のチタン酸バリウム粉末でのチタンに対するバリウムのモル比率(Ba/Ti mole ratio)が、誘電体結晶粒中心でのモル比率と類似しており、誤差範囲が±0.0003以内であるのを確認することができる。
【0167】
【0168】
表4を参照すれば、実施例で製造された積層型キャパシタは誘電体結晶粒の中心でチタンに対するバリウムのモル比率(Ba/Ti mole ratio)が0.9975~1.0055であることが分かる。
【0169】
実験例2
実施例および比較例で製造された積層型キャパシタのコア-シェル構造を有する誘電体結晶粒が含むシェルの平均面積比率を測定し、その結果を表5に示す。
【0170】
実施例および比較例で製造された積層型キャパシタをそれぞれ10個ずつ準備し、キャパシタボディー110のL軸方向およびT軸方向面(第5面または第6面)をW軸方向に誘電体層111が露出されるまで、例えば約1/2地点まで研磨して、L軸方向およびT軸方向の断面を露出させ、L軸方向およびT軸方向の断面で任意の誘電体層111を選択し、アクティブ領域中の1μm×1μmの大きさ(単位面積)の領域を測定対象にする。
【0171】
測定対象に対して、透過電子顕微鏡の一種であるCs STEM(Cs corrected Scanning Transmission Electron Microscope)設備を用いて、加速電圧80kVの条件でTEMイメージ分析およびEDSマッピング成分分析を行う。
【0172】
一例として、
図8は実施例3のキャパシタに対するTEMイメージ分析結果を示し、
図5は実施例3のキャパシタに対する誘電体層111の単位面積(1μm×1μm)内で、副成分であるDyを基準にしてTEMマッピング(Mapping)を行ったイメージである。
【0173】
前記TEMイメージ分析を通じて誘電体結晶粒シェル1111bの面積を測定し、それぞれ異なる3つの誘電体層で測定した3つの値のシェル面積比率範囲およびシェル平均面積比率を下記表5に示す。
【0174】
前記TEMマッピング(Mapping)分析を通じて誘電体層111の単位面積(1μm×1μm)内で平均直径が約50nm以上であるコア1111a部分の個数を測定して下記表5に示す。
【0175】
また、実施例および比較例で製造された積層型キャパシタの誘電率を測定して、その結果を表5に示す。
【0176】
実施例および比較例で製造された積層型キャパシタをそれぞれ50個ずつ準備し、LCRメーター(LCR Meter)設備としてKeysight technologies社のE4980A製品を用いて、1kHz、1V条件で測定する。誘電体厚さ、内部電極面積、積層数からMLCCチップ(chip)の誘電率を計算して下記表5に示す。
【0177】
【0178】
表5を参照すれば、実施例1~実施例8の場合、シェルの平均面積比率が35%~50%であり、誘電体層単位面積当りのコアの個数が27個~35個であるので、キャパシタの誘電率が2000以上に実現されるのを確認することができる。
【0179】
実験例3
実施例および比較例で製造された積層型キャパシタの絶縁破壊電圧(Breakdown Voltage、BDV)を評価し、その結果を表6に示す。
【0180】
実施例および比較例で製造された積層型キャパシタをそれぞれ50個ずつ準備し、keithely測定器2410モデルを用いて0Vから1.00000Vずつ1100Vまでスイープ(Sweep)方式で電圧を印加しながら電流値が20mAになる瞬間の電圧値を絶縁破壊電圧値として測定する。絶縁破壊電圧はシリコーンオイルバス(bath)内で測定する。
【0181】
また、実施例で製造された積層型キャパシタの高温苛酷信頼性および耐湿信頼性を評価し、その結果を表7に示す。
【0182】
実施例および比較例で製造された積層型キャパシタをそれぞれ40個ずつ準備し、測定基板に実装し、高温苛酷信頼性(HALT)はESPEC(PV-222、HALT)設備を用いて150℃、150時間、100V条件で測定し、耐湿信頼性はESPEC(PR-3J、8585)設備を用いて85℃、相対湿度(R.H.)85%、32V、24時間条件で測定する。
【0183】
【0184】
【0185】
上記表6および表7を参照すれば、実施例の場合、誘電率が2000以上でありながら、比較例と類似の水準の誘電損失率およびBDV値を有することを確認することができる。
【0186】
また実施例は高温苛酷信頼性(HALT)および耐湿信頼性も比較例と類似の水準であることを確認することができる。
【0187】
以上を通じて本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属するのは当然である。