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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025084068
(43)【公開日】2025-06-02
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20250526BHJP
   H01C 7/18 20060101ALI20250526BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
H01C7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024178570
(22)【出願日】2024-10-11
(31)【優先権主張番号】10-2023-0161893
(32)【優先日】2023-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヒュン ソーン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョウン ウク
(72)【発明者】
【氏名】ジン、へ ジン
(72)【発明者】
【氏名】コー、ボン ヒェオン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE00
5E001AE01
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC40
5E082EE04
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082GG10
5E082PP03
5E082PP10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】等価直列抵抗を最小化しながら高いQ値を有するC0G特性を満たす積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、誘電体層111及び内部電極121を含む本体110と、本体上に配置される外部電極131、132と、を含む。誘電体層は、(Ca、Sr1-x)(Zr、Ti1-y)Oを主成分として含み、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)のうち少なくとも一つを含む希土類元素を含む第1副成分、ケイ素(Si)を含む第2副成分並びに原子価可変アクセプタ元素を含む第3副成分を含み、第1副成分の希土類元素含量は、主成分100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、(Ca、Sr1-x)(Zr、Ti1-y)Oを主成分として含み、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、及びテルビウム(Tb)のうち少なくとも一つを含む希土類元素を含む第1副成分、ケイ素(Si)を含む第2副成分、及び原子価可変アクセプタ元素を含む第3副成分を含み、
前記第1副成分の希土類元素含量は、前記主成分の100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下である、積層型電子部品。
【請求項2】
前記xは0.5≦x<1.0を満たし、前記yは0.950≦y<1.00を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第2副成分のケイ素(Si)含量は、前記主成分の100モルに対して0.95モル以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第2副成分のケイ素(Si)含量は、前記主成分の100モルに対して0.95モル以上1.35モル以下である、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記原子価可変アクセプタ元素は、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及び亜鉛(Zn)のうち少なくとも一つを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記第3副成分の原子価可変アクセプタ元素含量は、前記主成分の100モルに対して1.0モル以上3.0モル以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記誘電体層の平均焼結密度は4.66g/cm以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、ABOで表されるペロブスカイト構造の主成分、及び副成分を含み、
前記ペロブスカイト構造のAサイトはカルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)を含み、前記ペロブスカイト構造のBサイトはジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)を含み、
前記副成分は、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、及びテルビウム(Tb)のうち少なくとも一つを含む希土類元素を含む第1副成分、ケイ素(Si)を含む第2副成分、及び原子価可変アクセプタ元素を含む第3副成分を含み、
前記第1副成分の希土類元素含量は、前記ペロブスカイト構造のBサイト100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下である、積層型電子部品。
【請求項9】
前記ペロブスカイト構造のAサイト中のカルシウム(Ca)の割合をx、ストロンチウム(Sr)の割合を1-x、前記ペロブスカイト構造のBサイト中のジルコニウム(Zr)の割合をy、チタン(Ti)の割合を1-yとするとき、
前記xは0.5≦x<1.0を満たし、前記yは0.950≦y<1.00を満たす、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記第2副成分のケイ素(Si)含量は、前記ペロブスカイト構造のBサイト100モルに対して0.95モル以上である、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記第2副成分のケイ素(Si)含量は、前記ペロブスカイト構造のBサイト100モルに対して0.95モル以上1.35モル以下である、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記原子価可変アクセプタ元素は、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及び亜鉛(Zn)のうち少なくとも一つを含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記第3副成分の原子価可変アクセプタ元素含量は、前記ペロブスカイト構造のBサイト100モルに対して1.0モル以上3.0モル以下である、請求項8から11のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記誘電体層の平均焼結密度は4.66g/cm以上である、請求項8から11のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話などの様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用されることができる。コンピュータ、モバイル機器など、各種の電子機器が小型化及び高出力化されるにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求が増大している。
【0004】
このような積層セラミックキャパシタは、高い安定度及び低損失のキャパシタとして高い信頼性や安定性が要求される回路に使用される製品群であるClass Iと、少ない体積で高い効率を有するキャパシタとしてバイパス(bypass)やカップリング(coupling)などの用途に使用される製品群であるClass IIとに区分することができる。
【0005】
最近、Class Iのうち消費電力を最小化するために等価直列抵抗(Equivalent Series Resistance、ESR)を最小化しながら、高いQ(Quality factor)値を有するC0G特性を満たす製品の需要が増大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-077678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、等価直列抵抗(ESR)の低い積層型電子部品を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、高いQ値を有する積層型電子部品を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、C0G特性を満たす積層型電子部品を提供することである。
【0010】
但し、本発明が解決しようとするいくつかの課題は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、(Ca、Sr1-x)(Zr、Ti1-y)Oを主成分として含み、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、及びテルビウム(Tb)のうち少なくとも一つを含む希土類元素を含む第1副成分、ケイ素(Si)を含む第2副成分、及び原子価可変アクセプタ元素を含む第3副成分を含み、上記第1副成分の希土類元素含量は、上記主成分100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下であることができる。
【0012】
本発明の他の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、ABOで表されるペロブスカイト構造の主成分、及び副成分を含み、上記ペロブスカイト構造のAサイトはカルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)を含み、上記ペロブスカイト構造のBサイトはジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)を含み、上記副成分はイットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、及びテルビウム(Tb)のうち少なくとも一つを含む希土類元素を含む第1副成分、ケイ素(Si)を含む第2副成分、及び原子価可変アクセプタ元素を含む第3副成分を含み、上記第1副成分の希土類元素含量は、上記ペロブスカイト構造のBサイト100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下であることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のいくつかの効果の一つは、積層型電子部品が低い等価直列抵抗(ESR)を有することである。
【0014】
本発明のいくつかの効果の一つは、積層型電子部品が高いQ値を有することである。
【0015】
本発明のいくつかの効果の一つは、積層型電子部品がC0G特性を満たすことである。
【0016】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものである。
図2】内部電極の積層構造を示す分離斜視図を概略的に示すものである。
図3図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示すものである。
図4図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示すものである。
図5】(a)~(c)は試験例のSTEP-IRグラフである。
図6】(a)~(c)は試験例のSTEP-IRグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張することができ、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0019】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素に対しては、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0020】
図において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0021】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものであり、図2は、内部電極の積層構造を示す分離斜視図を概略的に示すものであり、図3は、図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示すものであり、図4は、図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示すものである。
【0022】
以下、図1図4を参照して、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品について詳細に説明する。但し、積層型電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は、誘電体組成物を利用する様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用することができる。
【0023】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体110上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層111は(Ca、Sr1-x)(Zr、Ti1-y)Oを主成分として含み、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、及びテルビウム(Tb)のうち少なくとも一つを含む希土類元素(rare earth elements)を含む第1副成分、ケイ素(Si)を含む第2副成分、及び原子価可変アクセプタ元素(variable valence acceptor elements)を含む第3副成分を含むことができる。
【0024】
あるいは、本発明の他の一実施形態に係る積層型電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体110上に配置される外部電極131、132と、を含み、誘電体層111は、ABOで表されるペロブスカイト構造の主成分、及び副成分を含み、ペロブスカイト構造のAサイトはカルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)を含み、ペロブスカイト構造のBサイトはジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)を含み、副成分はイットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、及びテルビウム(Tb)のうち少なくとも一つを含む希土類元素を含む第1副成分、ケイ素(Si)を含む第2副成分、及び原子価可変アクセプタ元素を含む第3副成分を含むことができる。
【0025】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていてもよい。
【0026】
より具体的に、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量を形成する容量形成部Acを含むことができる。
【0027】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粒子の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0028】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1面1及び第2面2、第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに対向する第3面3及び第4面4、第1面1、第2面2、第3面3及び第4面4と連結され、第3方向に互いに対向する第5面5及び第6面6を有することができる。
【0029】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0030】
最近、等価直列抵抗(Equivalent Series Resistance、ESR)を最小化しながらも、高いQ(Quality factor)値を有するC0G特性を満たす製品の需要が増大するにつれて、最適な組成比率を設計することが必要な実情である。
【0031】
ここで、Q値はQ=1/DF=(1/ESR)*(1/ωC)(但し、ω=2πf)で表すことができ、誘電損失(Dissipation Factor、DF)の逆数に相当する。一方、誘電損失は誘電正接(dielectric loss)とも呼ばれ、損失タンジェント(tanδ)で表すこともできる。誘電損失の定義は、経時的に変化する電場を印加したとき、誘電体の内部で電気エネルギーが熱に変換される時間率を意味する。
【0032】
C0G特性は、EIA規格で定義するC0G特性を意味するものであることができ、温度範囲-55℃~125℃内において、静電容量変化率である温度係数α(10-6/K)が0であり、温度係数の乗数が-1であり、温度係数の許容誤差が±30ppmに相当することを意味することができる。言い換えれば、C0G特性は、温度範囲-55℃~125℃において0±30ppm/℃を満たすことを意味することができる。
【0033】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り限定されず、一般にペロブスカイト(ABO)系材料を使用することができるが、C0G特性を満たすために、誘電体層111は(Ca、Sr1-x)(Zr、Ti1-y)O(CSZT)を主成分として含み、副成分として希土類元素を含む第1副成分、ケイ素(Si)を含む第2副成分、及び原子価可変アクセプタ元素を含む第3副成分を含むことができる。
【0034】
また、C0G特性を満たすために、誘電体層111は、ペロブスカイト構造のAサイト中のカルシウム(Ca)の割合をx、ストロンチウム(Sr)の割合を1-x、上記ペロブスカイト構造のBサイト中のジルコニウム(Zr)の割合をy、チタン(Ti)の割合を1-yと定義するとき、副成分として希土類元素を含む第1副成分、ケイ素(Si)を含む第2副成分、及び原子価可変アクセプタ元素を含む第3副成分を含むことができる。
【0035】
誘電体層111を形成する原料は、CSZTの主成分に本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0036】
本発明において、積層型電子部品100の各構成に含まれた元素の含量を測定するより具体的な方法の一例として、破壊工法の場合、走査電子顕微鏡(SEM)のEDSモード、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)のEDSモード、又は走査透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope、STEM)のEDSモードを用いて成分を分析することができる。まず、焼結済みの誘電体物質の断面(cross-section)のうち、誘電体結晶粒などの誘電体微細構造を含む領域において集束イオンビーム(Focused Ion Beam、FIB)装備を用いて薄片化された分析試料を準備する。そして、薄片化された試料をキセノン(Xe)又はアルゴン(Ar)イオンミリングを用いて表面のダメージ層を除去し、その後、SEM-EDS、TEM-EDS、又はSTEM-EDSを用いて得られたイメージにおいて、測定しようとする各成分をマッピング(mapping)して定性/定量分析を行う。この場合、各成分の定性/定量分析グラフは、各元素の質量百分率(wt%)、原子百分率(at%)、又はモル百分率(mol%)に換算して表すこともできる。このとき、特定成分のモル数に対する他の特定成分のモル数を換算して表すことができる。
【0037】
さらに別の方法としては、チップを粉砕して誘電体微細構造が含まれた領域を選別し、このように選別された誘電体微細構造が含まれた部分を誘導結合プラズマ分光分析器(ICP-OES)、誘導結合プラズマ質量分析器(ICP -MS)などの装置を用いて、誘電体微細構造が含まれた領域の成分を分析することができる。
【0038】
ここで、xは0.5≦x<1.0を満たしてもよく、yは0.950≦y<1.00を満たしてもよく、好ましくは、xは0.6≦x≦0.8を満たしてもよく、yは0.960≦y≦0.980を満たしてもよく、より好ましくは、xは0.7であってもよく、yは0.97であってもよい。
【0039】
ここで、xが0.5≦x<1.0を満たし、yが0.950≦y<1.00を満たすことにより、C0G特性を満たすことができる。
【0040】
副成分は、希土類元素(rare earth elements)を含む第1副成分を含むことができる。
【0041】
CSZTを含むC0G材料は、チタン酸バリウム(BaTiO)系誘電体物質とは異なり、双極子(dipole)分極ではなく、イオン(ion)分極により誘電率が実現される。したがって、C0G誘電体物質に希土類元素を添加する場合、希土類元素が界面抵抗を増加させ、信頼性の面では改善されることができるが、格子内に一部が置換・固溶される場合、イオン分極を妨げる欠陥(defect)として作用するため、イオン分極の面では逆効果となり、誘電率の実現に必要なエネルギー消耗が増加するため、誘電損失が増加し、それに伴ってQ値も減少する可能性がある。
【0042】
よって、第1副成分を添加することにより、誘電体結晶粒(grain)の粒成長の制御及びサイズ分布を均一にすることで信頼性を向上させることができる。
【0043】
ここで、希土類元素は、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、及びテルビウム(Tb)のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0044】
このとき、第1副成分の希土類元素含量は、CSZT主成分100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下であってもよく、又はペロブスカイト構造のBサイト100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下であってもよい。
【0045】
以下では、説明の便宜上、副成分のモル数による効果をCSZT主成分のモル数基準として説明するが、副成分のモル数はペロブスカイト構造のBサイトのモル数に対する説明にも同様に適用できることは通常の技術者に自明なものである。
【0046】
第1副成分の希土類元素含量がCSZT主成分100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下を満たすことにより、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0047】
第1副成分の希土類元素含量がCSZT主成分100モルに対して1.0モル未満である場合、信頼性が十分でないおそれがあり、第1副成分の含量がCSZT主成分100モルに対して2.0モルを超える場合はQ値が低下するおそれがある。
【0048】
次に、副成分は、ケイ素(Si)を含む第2副成分を含むことができる。
【0049】
第2副成分は焼結助剤の役割を果たすものであって、焼結温度を低下させ、主成分又は他の副成分と反応して焼結性を促進させる役割を果たすことができる。
【0050】
第2副成分のケイ素(Si)含量は、CSZT主成分100モルに対して0.95モル以上であってもよく、又はペロブスカイト構造のBサイト100モルに対して0.95モル以上であってもよい。
【0051】
第2副成分のケイ素(Si)含量がCSZT主成分100モルに対して0.95モル以上を満たすことにより、誘電体層の焼結密度を十分に実現することができ、例えば、誘電体層の平均焼結密度を4.66g/cm以上に実現することができる。
【0052】
第2副成分のケイ素(Si)含量の上限値は、誘電体層の焼結密度を十分に実現するために特に限定されないが、例えば、1.35モル以下であってもよい。
【0053】
ここで、焼結密度とは、真密度、見掛け密度、及びバルク密度のうちバルク密度を意味することができるが、特にこれに限定されるものではなく、真密度又は見掛け密度を意味することができる。密度の種類間には実質的に密度値の差はほとんどない可能性がある。
【0054】
焼結密度を測定する方法は、例えば、浮力方式のアルキメデス法を用いて測定することができる。より具体的に、アルキメデスの原理を用いた比重計兼用の電子ミラーを用いて密度を測定することができ、水の密度を1と仮定したとき、焼結密度の一つであるバルク密度を計算して求めることができる。ここで、バルク密度は{乾燥重量/(飽水重量-水中重量)}で表すことができ、乾燥重量は水を含まない状態でのサンプルの重量であり、水中重量は水中でサンプルを吊り下げて測定した重量であり、飽水重量は水中に浸したサンプルの表面のみを拭き取って測定した重量に相当する。
【0055】
さらに別の方式としては、サンプルの重量(g)を測定し、サンプルの第1方向のサイズ、第2方向のサイズ、第3方向のサイズを測定し、体積を求めて密度を計算する方式を用いることができるが、特に前述の方法に限定されるものではない。
【0056】
次に、副成分は、原子価可変アクセプタ元素(variable valence acceptor elements)を含む第3副成分を含むことができる。
【0057】
ここで、原子価可変アクセプタ元素は、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及び亜鉛(Zn)のうち少なくとも一つを含むことができ、好ましくは、マンガン(Mn)を含むことができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0058】
このとき、第3副成分の原子価可変アクセプタ元素含量は、上記主成分100モルに対して1.0モル以上3.0モル以下であってもよく、又はペロブスカイト構造のBサイト100モルに対して1.0モル以上3.0モル以下であってもよい。
【0059】
第3副成分は、耐還元性を付与し、誘電体微細構造の緻密化を向上させ、安定的な高温加速寿命を維持させる役割を果たすことができる。
【0060】
第3副成分の原子価可変アクセプタ元素含量がCSZT主成分100モルに対して1.0モル以上3.0モル以下を満たすことにより、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0061】
第3副成分の原子価可変アクセプタ元素含量がCSZT主成分100モルに対して1.0モル未満の場合、緻密度が低下して信頼性が十分でないおそれがあり、第3副成分の含量がCSZT主成分100モルに対して3.0モルを超える場合、高温加速寿命に劣るおそれがある。
【0062】
一方、積層型電子部品の誘電体層111の微細構造は、誘電体結晶粒と隣接する誘電体結晶粒との間に配置される誘電体結晶粒界を含むことができる。
【0063】
C0G特性の誘電体材料の信頼性を向上させるためには、誘電体結晶粒界(grain boundary)の分率を増加させ、相対的に多くの誘電体結晶粒界を確保することにより、絶縁抵抗の低下を防止する必要がある。
【0064】
誘電体微細構造の内部における抵抗を比較してみると、相対的に結晶粒内の抵抗値に比べて結晶粒界の抵抗値がより大きいことが知られている。
【0065】
このように、結晶粒界の抵抗値が結晶粒内の抵抗値より大きい理由は、界面(interface)領域におけるショットキー障壁(schottky barrier)モデルで説明することができる。一般に、結晶粒界の隣接付近では、イオン(ion)又は電子(electron)の濃度が高い空間電荷層(space charge layer)、すなわち、欠乏層(depletion layer)が形成されるが、特定元素を結晶粒界に高濃度で分布させると、フェルミレベル(fermi level)が上昇し、これによりショットキー障壁の高さ(schottky barrier height)が増加し、欠乏層が大きくなり得る。
【0066】
よって、熱イオン活性化(thermionic activation)による電荷キャリア(charge carrier)のトンネリング(tunneling)現象が抑制されるため、信頼性が向上するという効果を期待することができる。
【0067】
本発明では、誘電体物質である主成分及び第1~第3副成分の組成と含量を提示するにあたり、CSZT内の固溶、あるいは粒界偏析(segregation)時の電荷密度を下げる又は結晶粒界の分率を高めることで、信頼性の改善を期待することができる。
【0068】
誘電体層111の厚さtdは特に限定する必要はない。
【0069】
積層型電子部品100の高電圧環境下での信頼性を確保するために、誘電体層111の厚さは10.0μm以下とすることができる。また、積層型電子部品100の小型化及び高容量化を達成するために、誘電体層111の厚さは3.0μm以下であってもよく、超小型化及び高容量化をより容易に達成するために、誘電体層111の厚さは1.0μm以下であってもよく、好ましくは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0070】
ここで、誘電体層111の厚さtdは、第1内部電極121及び第2内部電極122の間に配置される誘電体層111の厚さtdを意味することができる。
【0071】
一方、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の第1方向のサイズを意味することができる。また、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の平均厚さtdを意味することができ、誘電体層111の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0072】
誘電体層111の第1方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの誘電体層111の第1方向の平均サイズは、スキャンされたイメージにおいて、一つの誘電体層111を第2方向に等間隔である10個の地点で第1方向のサイズを測定して計算した平均値を意味することができる。上記等間隔である10個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0073】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層されてもよい。
【0074】
内部電極121、122は第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1内部電極121及び第2内部電極122は本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ露出することができる。
【0075】
より具体的に、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出することができ、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体110の第3面3には第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0076】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されずに第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されずに第2外部電極132と連結されることができる。このとき、第1内部電極121及び第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0077】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0078】
内部電極121、122を形成する材料は特に限定されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0079】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
一方、内部電極121、122の厚さteは特に限定する必要はない。
【0081】
積層型電子部品100の高電圧環境下での信頼性を確保するために、内部電極121、122の厚さteは3.0μm以下とすることができる。また、積層型電子部品100の小型化及び高容量化を達成するために内部電極121、122の厚さは1.0μm以下であってもよく、超小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0082】
ここで、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の第1方向のサイズを意味することができる。また、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さteを意味することができ、内部電極121、122の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0083】
内部電極121、122の第1方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの内部電極の第1方向の平均サイズは、スキャンされたイメージにおいて、一つの内部電極を第2方向に等間隔である10個の地点で第1方向のサイズを測定して計算した平均値であることができる。上記等間隔である10個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極に拡張して平均値を測定すると、内部電極の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0084】
一方、本発明の一実施形態において、複数の誘電体層111のうち少なくとも一つの平均厚さtd、及び複数の内部電極121、122のうち少なくとも一つの平均厚さteは、2×te<tdを満たすことができる。
【0085】
言い換えれば、誘電体層111の一つの平均厚さtdは、内部電極121、122の一つの平均厚さteの2倍よりさらに大きくてもよい。好ましくは、複数の誘電体層111の平均厚さtdは、複数の内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりさらに大きくてもよい。
【0086】
一般に、高電圧電装用電子部品は、高電圧環境下で絶縁破壊電圧(Breakdown Voltage、BDV)の低下による信頼性の問題が主なイシューである。
【0087】
したがって、高電圧環境下で絶縁破壊電圧の低下を防止するために、誘電体層111の平均厚さtdを内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりも大きくすることにより、内部電極間の距離である誘電体層の厚さを増加させることができ、絶縁破壊電圧特性を向上させることができる。
【0088】
誘電体層111の平均厚さtdが内部電極121、122の平均厚さteの2倍以下である場合には、内部電極間の距離である誘電体層の平均厚さが薄くなり、絶縁破壊電圧が低下することがあり、内部電極間の短絡が発生する可能性がある。
【0089】
一方、本体110は、容量形成部Acの第1方向の両端面(end-surface)上に配置されるカバー部112、113を含むことができる。
【0090】
具体的に、容量形成部Acの第1方向の一面に配置される第1カバー部112、及び容量形成部Acの第1方向の他面に配置される第2カバー部113を含むことができる。より具体的には、容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112、及び容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0091】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部Acの上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0092】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0093】
一方、カバー部112、113の厚さtcは特に限定する必要はない。
【0094】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましくは20μm以下であってもよい。
【0095】
ここで、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の第1方向のサイズを意味することができる。なお、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の平均厚さtcを意味し、カバー部112、113の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0096】
カバー部112、113の第1方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つのカバー部をスキャンしたイメージにおいて、第2方向に等間隔である10個の地点で第1方向のサイズを測定して計算した平均値を意味することができる。
【0097】
なお、上述した方法で測定したカバー部の第1方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)において、カバー部の第1方向の平均サイズと実質的に同じサイズを有することができる。
【0098】
一方、積層型電子部品100は、本体110の第3方向の両端面(end-surface)上に配置されるサイドマージン部114、115を含むことができる。
【0099】
より具体的に、サイドマージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1サイドマージン部114及び本体110の第6面6に配置された第2サイドマージン部115を含むことができる。
【0100】
サイドマージン部114、115は、図示のように、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を基準として、第1内部電極121及び第2内部電極122の第3方向の両端面(end-surface)と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0101】
サイドマージン部114、115は、容量形成部Acに適用されるセラミックグリーンシート上にサイドマージン部114、115が形成される箇所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極121、122を形成し、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部Acの第3方向の両端面(end-surface)上に第3方向に積層して形成することもできる。
【0102】
サイドマージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0103】
第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0104】
一方、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115の幅wmは特に限定する必要はない。
【0105】
但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、サイドマージン部114、115の幅wmは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましくは20μm以下であってもよい。
【0106】
ここで、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の第3方向のサイズを意味することができる。また、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の平均幅wmを意味することができ、サイドマージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができる。
【0107】
サイドマージン部114、115の第3方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つのサイドマージン部をスキャンしたイメージにおいて、第1方向に等間隔である10個の地点で第3方向のサイズを測定して計算した平均値を意味することができる。
【0108】
本発明の一実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0109】
外部電極131、132は本体110上に配置され、内部電極121、122と連結されることができる。
【0110】
より具体的に、外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ配置され、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結される第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は本体の第3面3に配置されて第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は本体の第4面4に配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0111】
また、外部電極131、132は、本体110の第1面1及び第2面2上の一部に延びて配置されることができ、又は本体110の第5面5及び第6面6上の一部に延びて配置されることができる。すなわち、第1外部電極131は、本体110の第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6上の一部、及び本体110の第3面3上に配置されることができ、第2外部電極132は、本体110の第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6上の一部、及び本体110の第3面3上に配置されることができる。
【0112】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに多層構造を有してもよい。
【0113】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層及び電極層上に配置されるめっき層を含むことができる。
【0114】
電極層に対するより具体的な例として、電極層は、第1導電性金属及びガラスを含む焼成電極である第1電極層131a、132aを含むか、又は第2導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極である第2電極層131b、132bを含むことができる。
【0115】
ここで、第1電極層131a、132aに含まれた導電性金属を第1導電性金属と呼び、第2電極層131b、132bに含まれた導電性金属を第2導電性金属と呼ぶことができる。このとき、第1導電性金属及び第2導電性金属は互いに同一又は異なってもよく、複数の導電性金属を含む場合、一部のみが同じ導電性金属を含んでもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0116】
なお、電極層131a、132a、131b、132bは、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であってもよい。
【0117】
また、電極層131a、132a、131b、132bは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、又は焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0118】
電極層131a、132a、131b、132bに含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を使用することができ、例えば、導電性金属はニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、特にこれに限定されない。
【0119】
本発明の一実施形態において、電極層131a、132a、131b、132bは、第1電極層131a、132a及び第2電極層131b、132bを含む2層の構造を有することができ、これにより、外部電極131、132は、第1導電性金属及びガラスを含む第1電極層131a、132a及び上記第1電極層131a、132a上に配置され、第2導電性金属及び樹脂を含む第2電極層131b、132bを含むことができる。
【0120】
第1電極層131a、132aは、ガラスを含むことにより本体110との接合性を向上させる役割を果たし、第2電極層131b、132bは樹脂を含むことにより曲げ強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0121】
第1電極層131a、132aに含まれる第1導電性金属は、静電容量の形成のために上記内部電極121、122と電気的に連結できる材質であれば特に限定されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0122】
第1電極層131a、132aは、第1導電性金属粒子にガラスフリット(glass frit)を添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することにより形成することができる。
【0123】
第2電極層131b、132bに含まれる第2導電性金属は、第1電極層131a、132aと電気的に連結されるようにする役割を果たすことができる。
【0124】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、電極層131a、132aと電気的に連結できる材質であれば特に限定されず、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0125】
第2電極層131b、132bに含まれる第2導電性金属は、球状粒子及びフレーク状粒子のうち1以上を含むことができる。すなわち、導電性金属はフレーク状粒子のみからなるか、又は球状粒子のみからなることができ、フレーク状粒子と球状粒子とが混合された形態であってもよい。ここで、球状粒子は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク状粒子とは、平たいかつ細長い形態を有する粒子を意味し、特に限定されるものではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。上記球状粒子及びフレーク状粒子の長軸と短軸の長さは、積層型電子部品の第3方向の中央部で切断した第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして得られたイメージから測定することができる。
【0126】
第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性の確保及び衝撃吸収の役割を果たすことができる。第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は接合性及び衝撃吸収性を有し、第2導電性金属粒子と混合してペーストを作製できるものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ系樹脂を含むことができる。
【0127】
また、第2電極層131b、132bは、複数の金属粒子、金属間化合物(intermetallic compound)及び樹脂を含むことができる。金属間化合物を含むことにより、第1電極層131a、132aとの電気的連結性をより向上させることができる。金属間化合物は、複数の金属粒子を連結して電気的連結性を向上させる役割を果たし、複数の金属粒子を囲んで互いに連結する役割を果たすことができる。
【0128】
このとき、金属間化合物は、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むことができる。すなわち、金属間化合物が樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むため、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属が乾燥及び硬化工程を経る過程で溶融し、金属粒子の一部と金属間化合物を形成して金属粒子を囲むようになる。このとき、金属間化合物は、好ましくは300℃以下の低融点金属を含むことができる。
【0129】
例えば、213~220℃の融点を有するSnを含むことができる。乾燥及び硬化工程を経る過程でSnが溶融し、溶融したSnがAg、Ni又はCuのような高融点の金属粒子を毛細管現象により湿らせ、Ag、Ni又はCu金属粒子の一部と反応してAgSn、NiSn、CuSn、CuSnなどの金属間化合物を形成するようになる。反応に関与しなかったAg、Ni又はCuは金属粒子の形態で残る。
【0130】
したがって、上記複数の金属粒子は、Ag、Ni及びCuのうち一つ以上を含み、上記金属間化合物は、AgSn、NiSn、CuSn及びCuSnのうち一つ以上を含むことができる。
【0131】
めっき層131c、132cは、実装特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0132】
めっき層131c、132cの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む単一層のめっき層131c、132cであってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0133】
めっき層131c、132cに対するより具体的な例として、めっき層131c、132cは、Niめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよい。また、めっき層131c、132cは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0134】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0135】
但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、3216(長さ×幅:3.2mm×1.6mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において本発明による効果はより顕著になり得る。
【0136】
以下、実施例を通じて本発明についてより詳細に説明するが、これは本発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0137】
(試験例)
以下の[表1]は、第1副成分である希土類元素の種類及び含量によるQ値を測定したものである。
【0138】
各試験例は、第1副成分である希土類元素の種類及び含量を異ならせて適用したことを除いては、主成分及び他の副成分を同様に添加した。第1~第3副成分の含量は、主成分100モルを基準として添加した。
【0139】
主成分は誘電体物質である(Ca、Sr1-x)(Zr、Ti1-y)O(CSZT)を使用し(但し、x=0.7、y=0.97)、第2副成分として、ケイ素(Si)をCSZT主成分100モルに対して0.95モル以上添加し、第3副成分として、マンガン(Mn)をCSZT主成分100モルに対して2.0モル添加した。
【0140】
試験例1-1~1-4は、それぞれCSZT主成分100モルに対してイットリウム(Y)0.5モル、1.0モル、2.0モル、2.6モルを添加し、試験例2-1~2-4は、それぞれCSZT主成分100モルに対してジスプロシウム(Dy)0.5モル、1.0モル、2.0モル、2.6モルを添加し、試験例3-1~3-4は、それぞれCSZT主成分100モルに対してテルビウム0.5モル、1.0モル、2.0モル、2.6モルを添加した。
【0141】
作製したサンプルチップ(chip)についてQ値を測定した後、Q値が10,000以上の場合は良好と評価して「O」と記載し、Q値が10,000未満の場合、不良と評価して「X」と記載した。Q値は、LCR meter測定装備であるKeithley社の4268Aを用いて測定した。
【0142】
【表1】
【0143】
希土類元素の含量が2.0モルを超える2.6モルに相当する試験例1-4、2-4、3-4の場合、Q値が10,000未満と測定され、誘電損失が大きいことが分かる。一方、希土類元素の含量が2.0モル以下に相当する試験例1-1~1-3、試験例2-1~2-3、試験例3-1~3-3の場合、Q値が10,000以上と測定され、誘電損失が小さいことが分かる。
【0144】
これにより、希土類元素の含量がCSZT主成分100モルに対して2.0モル以下である場合、Q値が低下せず、誘電損失が小さいことが分かる。
【0145】
次に、図5の(a)は試験例1-1のSTEP-IRグラフであり、図5の(b)は試験例1-2のSTEP-IRグラフであり、図5の(c)は試験例1-3のSTEP-IRグラフである。
【0146】
図6の(a)は試験例2-1のSTEP-IRグラフであり、図6の(b)は試験例2-2のSTEP-IRグラフであり、図6の(c)は試験例2-3のSTEP-IRグラフである。
【0147】
STEP-IR評価は、温度条件150℃において、5分当たり10Vずつ昇圧する過酷条件でチップ(chip)の短絡(short)が発生するか否かを判別したものであり、平均故障時間(Mean Time To Failure、MTTF)によって信頼性に優れる又は劣ることが分かる。
【0148】
希土類元素の含量が1.0モル未満である0.5モルに相当する試験例1-1及び2-1の場合、比較的早い時間内にチップ(chip)の短絡(short)が発生した時間である平均故障時間(MTTF)が短いことから、過酷条件で信頼性に劣ることが分かる。一方、希土類元素の含量が1.0モル以上2.0モル以下に相当する試験例1-2、1-3、2-2、及び2-3の場合、試験例1-1及び2-1と比較して、チップ(chip)に短絡(short)が発生した時間である平均故障時間(MTTF)が増加したことから、過酷条件でも信頼性に優れることが分かる。
【0149】
これにより、希土類元素の含量がCSZT主成分100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下である場合、信頼性に優れることが分かる。
【0150】
試験例1-1~1-3、試験例2-1~2-3及び試験例3-1~3-3から、希土類元素の含量がCSZT主成分100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下である場合、Q値に優れながらも信頼性も改善されたことが分かり、これによりC0G材料において要求されるHigh-Q特性及び信頼性の両方を確保できることが分かる。
【0151】
以下の[表2]は、第1副成分である希土類元素の含量及び第2副成分であるケイ素(Si)の含量によるサンプルチップの焼結密度を測定したものである。
【0152】
各試験例は、第1副成分である希土類元素の含量と第2副成分であるケイ素(Si)の含量を異ならせて適用したことを除いては、主成分及び第3副成分を同様に添加した。第1~第3副成分の含量は、主成分100モルを基準として添加した。
【0153】
主成分は誘電体物質である(Ca、Sr1-x)(Zr、Ti1-y)O(CSZT)を使用し(但し、x=0.7、y=0.97)、第3副成分として、マンガン(Mn)をCSZT主成分100モルに対して2.0モル添加した。
【0154】
試験例4-1~4-4は、CSZT主成分100モルに対してイットリウム(Y)1.0モルを添加し、それぞれCSZT主成分100モルに対してケイ素(Si)0.75モル、0.95モル、1.15モル、1.35モルを添加した。
【0155】
試験例5-1~5-4は、CSZT主成分100モルに対してイットリウム(Y)2.0モルを添加し、それぞれCSZT主成分100モルに対してケイ素(Si)0.75モル、0.95モル、1.15モル、1.35モルを添加した。
【0156】
作製したサンプルチップ(chip)について平均焼結密度値(g/cm)を測定した後、CSZT誘電体物質の理論密度である4.8g/cmの95%以上に相当する4.56g/cm以上を良好と評価して「O」と記載し、4.56g/cm未満の場合、不良と評価して「X」と記載した。
【0157】
【表2】
【0158】
希土類元素の含量が1.0モル以上2.0モル以下を満たす条件において、ケイ素(Si)の含量が0.75モルに相当する試験例4-1及び5-1の場合、平均焼結密度値がそれぞれ4.53g/cm、4.52g/cmと測定され、これにより焼結密度に優れておらず、誘電体微細構造の緻密度に劣り、誘電損失が大きいことが予測できる。一方、希土類元素の含量が1.0モル以上2.0モル以下を満たす条件において、ケイ素(Si)の含量が0.95モル以上である試験例4-2~4-4、試験例5-2~5-4の場合、平均焼結密度値が4.66g/cmと測定され、これにより焼結密度に優れ、誘電体微細構造の緻密度に優れ、誘電損失が小さいことを予測することができる。
【0159】
これにより、ケイ素(Si)の含量がCSZT主成分100モルに対して0.95モル以上の場合、平均焼結密度値に優れ、誘電損失が小さいことを予測することができ、これによってC0G材料において要求されるHigh-Q特性が確保できることを予測することができる。
【0160】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0161】
また、本発明において使用される「一実施形態」という表現は、互いに同じ実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態において説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明として理解することができる。
【0162】
本発明において使用される用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0163】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:サイドマージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6