(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025084077
(43)【公開日】2025-06-02
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250526BHJP
H01C 7/02 20060101ALI20250526BHJP
H01C 7/108 20060101ALN20250526BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
H01G4/30 201C
H01G4/30 515
H01G4/30 512
H01G4/30 513
H01C7/02
H01C7/108
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024190327
(22)【出願日】2024-10-30
(31)【優先権主張番号】10-2023-0162208
(32)【優先日】2023-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェオン ユン
(72)【発明者】
【氏名】パク、イル ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】ジン、ヒェ ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョウン ウク
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヒュン ソーン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E034
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AH01
5E001AJ02
5E034AC07
5E034CC12
5E034DA07
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC35
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG26
5E082GG28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】X5R特性(TCC特性)を満たす積層型電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、本体上に配置される外部電極131、132と、を含み、誘電体層は、バナジウム(V)を含むアクセプタ元素、希土類元素を含むドナー元素及びチタン(Ti)を含み、チタン(Ti)100モルに対するアクセプタ元素のモル数をAm、チタン(Ti)100モルに対するドナー元素のモル数をDm、チタン(Ti)100モルに対するバナジウム(V)のモル数をVmとするとき、1.2≦Dm/Am≦1.4及び0.2≦Vm/Dmを満たす。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、バナジウム(V)を含むアクセプタ元素、希土類元素を含むドナー元素、及びチタン(Ti)を含み、
前記チタン(Ti)100モルに対する前記アクセプタ元素のモル数をAm、前記チタン(Ti)100モルに対する前記ドナー元素のモル数をDm、前記チタン(Ti)100モルに対する前記バナジウム(V)のモル数をVmとするとき、
1.2≦Dm/Am≦1.4及び0.2≦Vm/Dmを満たす、積層型電子部品。
【請求項2】
前記Vmは0モル<Vm≦1.0モルを満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記希土類元素は、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、イットリウム(Y)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ガドリニウム(Gd)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)及びツリウム(Tm)のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記希土類元素は、ジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)のうち少なくとも一つである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記アクセプタ元素は、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)及び亜鉛(Zn)のうち少なくとも一つをさらに含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記誘電体層はコア-シェル構造の誘電体結晶粒を含み、
前記コア-シェル構造の誘電体結晶粒の面積に対する前記コアの面積分率は60%以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記コア-シェル構造の誘電体結晶粒は希土類元素を含み、前記シェルの希土類元素の原子百分率は0at%超過0.5at%以下である、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記誘電体層は、チタン酸バリウム(BaTiO3)系誘電体物質を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記本体は複数の誘電体層を含み、前記複数の誘電体層のうち少なくとも一つの平均厚さは1.0μm以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記本体は複数の内部電極を含み、前記複数の内部電極のうち少なくとも一つの平均厚さは0.6μm以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記積層型電子部品の平均長さは1.0mm以下であり、平均幅は0.5mm以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話などの様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用されることができる。コンピュータ、モバイル機器など、各種の電子機器が小型化及び高出力化されるにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求が増大している。
【0004】
積層セラミックキャパシタの過速信頼性に直結する「劣化(deterioration)」メカニズムは、酸素空孔(oxygen vacancy)の移動に影響を受けるが、このような劣化を抑制するために酸素空孔の濃度自体を減らして高温環境下での絶縁抵抗の低下(insulation resistance degradation)を防止する方向への研究が盛んに行われている。絶縁抵抗の低下を最小化させるために、希土類元素(rare earth elements)を一定比率以上含むコア-シェル(core-shell)構造結晶粒のような微細構造を実現し、積層セラミックキャパシタの信頼特性を向上させることができる。但し、希土類元素を過剰に添加する場合、積層セラミックキャパシタの温度特性(TCC特性)を低下させるおそれがあり、適正含量の希土類元素の添加が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2022-0096951号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、X5R特性(TCC特性)を満たす積層型電子部品を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、信頼性が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0008】
但し、本発明が解決しようとするいくつかの課題は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、バナジウム(V)を含むアクセプタ元素、希土類元素を含むドナー元素、及びチタン(Ti)を含み、上記チタン(Ti)100モルに対する上記アクセプタ元素のモル数をAm、上記チタン(Ti)100モルに対する上記ドナー元素のモル数をDm、上記チタン(Ti)100モルに対する上記バナジウム(V)のモル数をVmとするとき、1.2≦Dm/Am≦1.4及び0.2≦Vm/Dmを満たすことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のいくつかの効果の一つは、積層型電子部品のX5R特性(TCC特性)を満たすことである。
【0011】
本発明のいくつかの効果の一つは、積層型電子部品の信頼性を向上させることである。
【0012】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものである。
【
図2】内部電極の積層構造を示す分離斜視図を概略的に示すものである。
【
図3】
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示すものである。
【
図4】
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示すものである。
【
図5】
図3のP領域の拡大図を概略的に示すものである。
【
図6】(a)は実施例の過速信頼性評価(HALT)グラフであり、(b)は比較例の過速信頼性評価(HALT)グラフであり、(c)は実施例及び比較例の容量温度変化(TCC)特性グラフである。
【
図7】(a)は、比較例の誘電体層の断面についてTEM-EDSを用いてジスプロシウム(Dy)を観察したイメージであり、(b)は、他の比較例の誘電体層の断面についてTEM-EDSを用いてジスプロシウム(Dy)を観察したイメージであり、(c)は、実施例の誘電体層の断面についてTEM-EDSを用いてジスプロシウム(Dy)を観察したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張することができ、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0015】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素に対しては、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0016】
図において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0017】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものであり、
図2は、内部電極の積層構造を示す分離斜視図を概略的に示すものであり、
図3は、
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示すものであり、
図4は、
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示すものであり、
図5は、
図3のP領域の拡大図を概略的に示すものである。
【0018】
以下、
図1~
図5を参照して、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品について詳細に説明する。但し、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は誘電体組成物を利用する様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用することができる。
【0019】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体110上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層111は、バナジウム(V)を含むアクセプタ元素、希土類元素を含むドナー元素、及びチタン(Ti)を含み、上記チタン(Ti)100モルに対する上記アクセプタ元素のモル数をAm、上記チタン(Ti)100モルに対する上記ドナー元素のモル数をDm、上記チタン(Ti)100モルに対する上記バナジウム(V)のモル数をVmとするとき、1.2≦Dm/Am≦1.4及び0.2≦Vm/Dmを満たすことができる。
【0020】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていてもよい。
【0021】
より具体的に、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量を形成する容量形成部Acを含むことができる。
【0022】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粒子の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0023】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1面1及び第2面2、第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに対向する第3面3及び第4面4、第1面1、第2面2、第3面3及び第4面4と連結され、第3方向に互いに対向する第5面5及び第6面6を有することができる。
【0024】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0025】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り限定されない。一般に、ペロブスカイト(ABO3)系材料を使用することができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粒子を含むことができ、セラミック粒子の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0026】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粒子に、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0027】
現在のX5R、X7R、X8R、Y5Vなどの高容量BME MLCCの誘電体は、BaTiO3母材、あるいはCa、Zrなどが一部固溶して修正された(Ba1-xCax)(Ti1-yCay)O3、(Ba1-xCax)(Ti1- yZry)O3、Ba(Ti1-yZry)O3などの母材に、Mg、Alなどのような原子価固定アクセプタ(fixed valence acceptor)元素と、Y、Dy、Ho、Erなどのようなドナー(donor)としての役割を果たす希土類元素を共にドーピング(co-doping)し、Mn、V、Crのような原子価可変アクセプタ(variable valence acceptor)元素、及び余分なBa、並びにSiO2あるいはこれを含む焼結助剤等をさらに添加して焼結された材料に基づいている。還元雰囲気で焼成する場合、高容量MLCCの正常な容量及び絶縁特性を実現するためには、粒成長の抑制及び耐還元性が実現されなければならず、Mgのような原子価固定アクセプタ元素を適正量添加することで、この2つの効果が実現されると知られている。しかし、Mgのような原子価固定アクセプタ元素のみが添加された場合には、誘電体の耐電圧特性と信頼性が良くないことがあり、Mn及びVのような原子価可変アクセプタ元素である遷移金属元素及び希土類元素を共に添加することで、耐電圧及び信頼性の向上効果が得られる。これらの元素はほとんど共にドーピング(co-doping)されており、BaTiO3母材結晶粒のシェル(shell)領域に固溶してコア-シェル(core-shell)構造を形成し、積層型電子部品の温度による安定した容量特性と信頼性を実現する。
【0028】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100において、誘電体層111は、バナジウム(V)を含むアクセプタ元素、希土類元素を含むドナー元素、及びチタン(Ti)を含むことができ、上記チタン(Ti)100モルに対する上記アクセプタ元素のモル数をAm、上記チタン(Ti)100モルに対する上記ドナー元素のモル数をDm、上記チタン(Ti)100モルに対する上記バナジウム(V)のモル数をVmとするとき、1.2≦Dm/Am≦1.4及び0.2≦Vm/Dmを満たすことができる。
【0029】
ここで、ドナー元素の役割を果たす希土類元素は、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、イットリウム(Y)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ガドリニウム(Gd)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)及びツリウム(Tm)のうち少なくとも一つを含むことができ、好ましくは、ジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)のうち少なくとも一つを含むことができ、より好ましくは、ジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)のうち少なくとも一つであることができる。
【0030】
希土類元素は酸素空孔の移動を抑制する役割を果たすことができ、酸素空孔の移動を抑制することにより、絶縁抵抗の劣化を抑制して信頼性を向上させることができる。
【0031】
また、アクセプタ元素はバナジウム(V)を含み、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)及び亜鉛(Zn)のうち少なくとも一つをさらに含むことができ、好ましくは、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、及びマンガン(Mn)のうち少なくとも一つをさらに含むことができ、より好ましくは、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、及びマンガン(Mn)のうち少なくとも一つであることができる。
【0032】
アクセプタ元素は耐還元性を付与する役割を果たすことができ、アクセプタ元素のうちバナジウム(V)はX5R特性を効果的に満たすことができる役割を果たすことができる。
【0033】
誘電体層111に含まれたチタン(Ti)100モルに対するドナー元素のモル数(Dm)、アクセプタ元素のモル数(Am)、及びバナジウム(V)のモル数(Vm)が1.2≦Dm/Am≦1.4及び0.2≦Vm/Dmを満たすことにより、X5R特性(-55℃~85℃の温度範囲での静電容量は25℃での静電容量に対して-15%以上+15%以下)を満たすことができ、又は積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0034】
Dm/Amの比率が1.2未満の場合(Dm/Am<1.2)、信頼性が低下するおそれがあり、Dm/Amの比率が1.4超過の場合(1.4<Dm/Am)X5R特性を満たさないおそれがある。
【0035】
また、Vm/Dmの比率が0.2未満の場合、信頼性が低下するおそれがある。Vm/Dmの上限は信頼性又はX5R特性を満たすためであれば特に限定されないが、誘電体層111に含まれたチタン(Ti)100モルに対するバナジウム(V)のモル数(Vm)は0モル超過1.0モル以下、すなわち、0モル<Vm≦1.0モルを満たすことができる。
【0036】
このとき、バナジウム(V)のモル数(Vm)が1.0モルを超える場合、信頼性が低下するおそれがある。
【0037】
一方、本発明の一実施形態に係る誘電体層111は、コア-シェル構造の誘電体結晶粒10を含み、コア-シェル構造の誘電体結晶粒10の面積に対するコア11の面積分率は60%以上であることができる。
【0038】
信頼性向上のためであれば、コア11の面積分率の上限値は特に限定されないが、95%以下、90%以下、又は85%以下であってもよく、より優れた容量特性を達成するために、コア11の面積分率の上限値は80%以下であってもよい。
【0039】
本発明において、誘電体層111は複数の誘電体結晶粒を含むことができ、複数の誘電体結晶粒はコア-シェル構造の誘電体結晶粒10とコア-シェル構造を有さない誘電体結晶粒20とを含む概念であることができる。
【0040】
また、コア-シェル構造の誘電体結晶粒10は、内側のコア11及びコア11を囲むシェル12を含む構造であることができ、ここで、コア11は希土類元素が検出されない領域を意味することができ、例えば、希土類元素の原子百分率が0at%である領域を意味することができる。そして、シェル12は、希土類元素の原子百分率が、例えば、0at%超過0.5at%以下である領域を意味することができる。
【0041】
誘電体層111又は誘電体結晶粒に含まれた各元素の含量を測定するより具体的な方法の一例として、破壊工法の場合、SEM-EDS、TEM-EDS又はSTEM-EDSなどの測定装備を用いてチップの中央部で誘電体層の成分を分析することができる。まず、焼結済みの本体の断面のうち誘電体層を含む領域において集束イオンビーム(Focused Ion Beam、FIB)装備を用いて薄片化された分析試料を準備する。そして、薄片化された試料をキセノン(Xe)イオン又はアルゴン(Ar)イオンミリング(ion milling)を用いて表面のダメージ層を除去し、その後、SEM、TEM又はSTEMを用いて得られたイメージにおいてEDSモードを適用し、測定しようとする元素の成分をマッピング(mapping)して定性/定量分析を行うこの場合、各成分の定性/定量分析グラフは、各元素の質量分率(wt%)、原子百分率(at%)、又はモル分率(mol%)に換算して表すこともできる。
【0042】
さらに別の方法としては、チップを粉砕し内部電極を除去した後、誘電体層部分を選別し、このように選別された誘電体層を誘導結合プラズマ分光分析器(ICP-OES)、誘導結合プラズマ質量分析器(ICP-MS)などの装置を用いて誘電体層の成分を分析することができる。
【0043】
コア-シェル構造の誘電体結晶粒10の面積に対するコア11の面積分率が60%以上を満たすことにより、目標とする誘電特性を満たすことができ、X5R特性を満たすことができ、又は積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0044】
コア-シェル構造の誘電体結晶粒10の面積に対するコア11の面積分率が60%未満である場合、目標とする誘電特性の実現が困難であるか、又はX5R特性を満たしにくくなる可能性がある。
【0045】
コア-シェル構造の誘電体結晶粒10の面積に対するコア11の面積分率を計算する方法は特に限定されるものではないが、以下のようにすることができる。例えば、誘電体層の断面をSEM、TEM又はSTEM測定装備を用いてイメージを得た後、EDSモードで各成分を観察する。このとき、全ピクセル(pixel)の数が10万個以上となるように各成分を観察した後、希土類元素の含量が0at%であるピクセルをコアと定義し、希土類元素の含量が0at%超過0.5at%以下であるピクセルをシェルと定義したとき、全ピクセル数に対する希土類元素の含量が0at%であるピクセルの数を計算して出た値を、コア-シェル構造の誘電体結晶粒の面積に対するコアの面積分率と定義することができる。
【0046】
コア以外の領域における希土類元素の含量が0at%であるピクセルの数は無視できる程度であり得るが、コア以外の領域における希土類元素の含量が0at%であるピクセルの数が多くなる場合、コア以外の領域において希土類元素の含量が0at%であるピクセルのうち、コア-シェル構造の結晶粒の内部又はコア-シェル構造の結晶粒の中央部に位置するピクセルのみを選択してコアの分率を求めることもできる。
【0047】
誘電体層111の厚さtdは特に限定する必要はない。
【0048】
積層型電子部品100の高電圧環境下での信頼性を確保するために、誘電体層111の厚さは10.0μm以下であってもよい。また、積層型電子部品100の小型化及び高容量化を達成するために、誘電体層111の厚さは3.0μm以下であってもよく、超小型化及び高容量化をより容易に達成するために、誘電体層111の厚さは1.0μm以下であってもよく、好ましくは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0049】
ここで、誘電体層111の厚さtdは、複数の誘電体層111のうち少なくとも一つの厚さtdを意味することができる。
【0050】
なお、誘電体層111の厚さtdは、第1内部電極121及び第2内部電極122の間に配置される誘電体層111の厚さtdを意味することができる。
【0051】
一方、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の第1方向のサイズを意味することができる。また、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の平均厚さtdを意味することができ、誘電体層111の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0052】
誘電体層111の第1方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの誘電体層111の第1方向の平均サイズは、スキャンされたイメージにおいて一つの誘電体層111を第2方向に等間隔である10個の地点で第1方向のサイズを測定して算出した平均値を意味することができる。上記等間隔である10個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0053】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層されてもよい。
【0054】
内部電極121、122は第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1内部電極121及び第2内部電極122は本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ露出することができる。
【0055】
より具体的に、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出することができ、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体110の第3面3には第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0056】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されずに第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されずに第2外部電極132と連結されることができる。このとき、第1内部電極121及び第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0057】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0058】
内部電極121、122を形成する材料は特に限定されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0059】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0060】
一方、内部電極121、122の厚さteは特に限定する必要はない。
【0061】
積層型電子部品100の高電圧環境下での信頼性を確保するために、内部電極121、122の厚さteは3.0μm以下であってもよい。また、積層型電子部品100の小型化及び高容量化を達成するために、内部電極121、122の厚さは1.0μm以下であってもよく、超小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0062】
ここで、内部電極121、122の厚さteは、複数の内部電極121、122のうち少なくとも一つの厚さteを意味することができる。
【0063】
また、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の第1方向のサイズを意味することができる。また、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さteを意味し、内部電極121、122の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0064】
内部電極121、122の第1方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの内部電極の第1方向の平均サイズは、スキャンされたイメージにおいて、一つの内部電極を第2方向に等間隔である10個の地点で第1方向のサイズを測定して計算した平均値であることができる。上記等間隔である10個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極に拡張して平均値を測定すると、内部電極の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0065】
一方、本発明の一実施形態において、複数の誘電体層111のうち少なくとも一つの平均厚さtd、及び複数の内部電極121、122のうち少なくとも一つの平均厚さteは、2×te<tdを満たすことができる。
【0066】
言い換えれば、誘電体層111の一つの平均厚さtdは、内部電極121、122の一つの平均厚さteの2倍よりさらに大きくてもよい。好ましくは、複数の誘電体層111の平均厚さtdは、複数の内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりさらに大きくてもよい。
【0067】
一般に、高電圧電装用電子部品は、高電圧環境下で絶縁破壊電圧(Breakdown Voltage、BDV)の低下による信頼性の問題が主なイシューである。
【0068】
したがって、高電圧環境下で絶縁破壊電圧の低下を防止するために、誘電体層111の平均厚さtdを内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりも大きくすることにより、内部電極間の距離である誘電体層の厚さを増加させることができ、絶縁破壊電圧特性を向上させることができる。
【0069】
誘電体層111の平均厚さtdが内部電極121、122の平均厚さteの2倍以下である場合には、内部電極間の距離である誘電体層の平均厚さが薄くなり、絶縁破壊電圧が低下することがあり、内部電極間の短絡が発生する可能性がある。
【0070】
一方、本体110は、容量形成部Acの第1方向の両端面(end-surface)上に配置されるカバー部112、113を含むことができる。
【0071】
具体的に、容量形成部Acの第1方向の一面に配置される第1カバー部112、及び容量形成部Acの第1方向の他面に配置される第2カバー部113を含むことができる。より具体的には、容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112、及び容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0072】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部Acの上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0073】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0074】
一方、カバー部112、113の厚さtcは特に限定する必要はない。
【0075】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましくは20μm以下であってもよい。
【0076】
ここで、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の第1方向のサイズを意味することができる。なお、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の平均厚さtcを意味し、カバー部112、113の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0077】
カバー部112、113の第1方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つのカバー部をスキャンしたイメージにおいて、第2方向に等間隔である10個の地点で第1方向のサイズを測定して計算した平均値を意味することができる。
【0078】
なお、上述した方法で測定したカバー部の第1方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)において、カバー部の第1方向の平均サイズと実質的に同じサイズを有することができる。
【0079】
一方、積層型電子部品100は、本体110の第3方向の両端面(end-surface)上に配置されるサイドマージン部114、115を含むことができる。
【0080】
より具体的に、サイドマージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1サイドマージン部114及び本体110の第6面6に配置された第2サイドマージン部115を含むことができる。
【0081】
サイドマージン部114、115は、図示のように、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を基準として、第1内部電極121及び第2内部電極122の第3方向の両端面(end-surface)と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0082】
あるいは、サイドマージン部114、115は、容量形成部Acに適用されるセラミックグリーンシート上にサイドマージン部114、115が形成される箇所を除いて、導電性ペーストを塗布して内部電極121、122を形成し、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部Acの第3方向の両端面(end-surface)上に第3方向に積層して形成することもできる。
【0083】
サイドマージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0084】
第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0085】
一方、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115の幅wmは特に限定する必要はない。
【0086】
但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、サイドマージン部114、115の幅wmは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましくは20μm以下であってもよい。
【0087】
ここで、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の第3方向のサイズを意味することができる。また、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の平均幅wmを意味することができ、サイドマージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができる。
【0088】
サイドマージン部114、115の第3方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つのサイドマージン部をスキャンしたイメージにおいて、第1方向に等間隔である10個の地点で第3方向のサイズを測定して計算した平均値を意味することができる。
【0089】
本発明の一実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0090】
外部電極131、132は本体110上に配置され、内部電極121、122と連結されることができる。
【0091】
より具体的に、外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ配置され、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結される第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は本体の第3面3に配置されて第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は本体の第4面4に配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0092】
また、外部電極131、132は、本体110の第1面1及び第2面2上の一部に延びて配置されることができ、又は本体110の第5面5及び第6面6上の一部に延びて配置されることができる。すなわち、第1外部電極131は、本体110の第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6上の一部、及び本体110の第3面3上に配置されることができ、第2外部電極132は、本体110の第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6上の一部、及び本体110の第3面3上に配置されることができる。
【0093】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに多層構造を有してもよい。
【0094】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層及び電極層上に配置されるめっき層を含むことができる。
【0095】
電極層に対するより具体的な例として、電極層は、導電性金属及びガラスを含む焼成電極である第1電極層131a、132aを含むか、又は導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極である第2電極層131b、132bを含むことができる。
【0096】
ここで、第1電極層131a、132aに含まれた導電性金属を第1導電性金属と呼び、第2電極層131b、132bに含まれた導電性金属を第2導電性金属と呼ぶことができる。このとき、第1導電性金属及び第2導電性金属は互いに同一又は異なってもよく、複数の導電性金属を含む場合、一部のみが同じ導電性金属を含んでもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0097】
なお、電極層131a、132a、131b、132bは、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であってもよい。
【0098】
また、電極層131a、132a、131b、132bは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、又は焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0099】
電極層131a、132a、131b、132bに含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を使用することができ、例えば、導電性金属はニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、特にこれに限定されない。
【0100】
本発明の一実施形態において、電極層131a、132a、131b、132bは、第1電極層131a、132a及び第2電極層131b、132bを含む2層の構造を有することができ、これにより、外部電極131、132は、第1導電性金属及びガラス(glass)を含む第1電極層131a、132a及び上記第1電極層131a、132a上に配置され、第2導電性金属及び樹脂を含む第2電極層131b、132bを含むことができる。
【0101】
第1電極層131a、132aは、ガラスを含むことにより本体110との接合性を向上させる役割を果たし、第2電極層131b、132bは樹脂を含むことにより、曲げ強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0102】
第1電極層131a、132aに含まれる第1導電性金属は、静電容量の形成のために上記内部電極121、122と電気的に連結できる材質であれば特に限定されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0103】
第1電極層131a、132aは、第1導電性金属粒子にガラスフリット(glass frit)を添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することにより形成することができる。
【0104】
第2電極層131b、132bに含まれる第2導電性金属は、第1電極層131a、132aと電気的に連結されるようにする役割を果たすことができる。
【0105】
第2電極層131b、132bに含まれる第2導電性金属は、電極層131a、132aと電気的に連結できる材質であれば特に限定されず、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0106】
第2電極層131b、132bに含まれる第2導電性金属は、球状粒子及びフレーク状粒子のうち1以上を含むことができる。すなわち、導電性金属はフレーク状粒子のみからなるか、又は球状粒子のみからなることができ、フレーク状粒子と球状粒子とが混合された形態であってもよい。ここで、球状粒子は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク状粒子とは、平たくかつ細長い形態を有する粒子を意味し、特に限定されるものではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。上記球状粒子及びフレーク状粒子の長軸と短軸の長さは、積層型電子部品の第3方向の中央部で切断した第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして得られたイメージから測定することができる。
【0107】
第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性の確保及び衝撃吸収の役割を果たすことができる。第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は接合性及び衝撃吸収性を有し、第2導電性金属粒子と混合してペーストを作製できるものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ系樹脂を含むことができる。
【0108】
また、第2電極層131b、132bは、複数の金属粒子、金属間化合物(intermetallic compound)及び樹脂を含むことができる。金属間化合物を含むことにより、第1電極層131a、132aとの電気的連結性をより向上させることができる。金属間化合物は、複数の金属粒子を連結して電気的連結性を向上させる役割を果たし、複数の金属粒子を囲んで互いに連結する役割を果たすことができる。
【0109】
このとき、金属間化合物は、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むことができる。すなわち、金属間化合物が樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むため、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属が乾燥及び硬化工程を経る過程で溶融し、金属粒子の一部と金属間化合物を形成して金属粒子を囲むようになる。このとき、金属間化合物は、好ましくは300℃以下の低融点金属を含むことができる。
【0110】
例えば、213~220℃の融点を有するSnを含むことができる。乾燥及び硬化工程を経る過程でSnが溶融し、溶融したSnがAg、Ni又はCuのような高融点の金属粒子を毛細管現象により湿らし、Ag、Ni又はCu金属粒子の一部と反応してAg3Sn、Ni3Sn4、Cu6Sn5、Cu3Snなどの金属間化合物を形成するようになる。反応に関与しなかったAg、Ni又はCuは金属粒子の形態で残る。
【0111】
したがって、上記複数の金属粒子は、Ag、Ni及びCuのうち一つ以上を含み、上記金属間化合物は、Ag3Sn、Ni3Sn4、Cu6Sn5及びCu3Snのうち一つ以上を含むことができる。
【0112】
めっき層131c、132cは、実装特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0113】
めっき層131c、132cの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む単一層のめっき層131c、132cであってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0114】
めっき層131c、132cに対するより具体的な例として、めっき層131c、132cは、Niめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよい。また、めっき層131c、132cは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0115】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0116】
但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、1005(長さ×幅:1.0mm×0.5mm)サイズ以下の積層型電子部品100において本発明による効果がより顕著になり得る。
【0117】
ここで、1005サイズ以下の積層型電子部品100は、積層型電子部品の平均長さは1.0mm以下であり、平均幅は0.5mm以下を意味することができるが、正確にこれを満たすことを意味するものではなく、5%程度の誤差を含む概念であることができる。
【0118】
(試験例)
実施例1は、約100nm以上300nmサイズのチタン酸バリウム(BaTiO3)粉末を含む誘電体原料粉末に、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)などの希土類元素を含むドナー元素とバナジウム(V)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)等のアクセプタ元素を含む添加剤、エタノール、トルエン、分散剤等を投入し混合して誘電体スラリー(dielectric slurry)を設けた後、誘電体スラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設けた。
【0119】
このとき、チタン酸バリウム(BaTiO3)100モルを基準として、アクセプタ元素のモル数(Am)に対するドナー元素のモル数(Dm)の比率(Dm/Am)は1.2となるように秤量して投入し、ドナー元素のモル数(Dm)に対するバナジウム(V)元素のモル数(Vm)の比率(Vm/Dm)は0.27となるように秤量して投入した。
【0120】
そして、セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを塗布して内部電極パターンを形成し、これを繰り返し積層して積層体を形成した後、積層体を圧着及び切断した。その後、切断された積層体を加熱してバインダーを除去した後、高温の還元雰囲気で焼成してセラミック本体を形成した。
【0121】
焼成過程は還元雰囲気(0.1%のH2/99.9%のN2、H2O/H2/N2雰囲気)で1100℃~1200℃の温度で約1時間焼成した後、0.03%のH2雰囲気で再酸化を12時間行って熱処理した。
【0122】
次に、焼成されたセラミック本体に銅(Cu)ペーストでターミネーション工程及び電極焼成を経て外部電極を完成し、チップ(chip)を作製した。
【0123】
このとき、誘電体層111の厚さは1.0μm以下となるように作製し、コア-シェル構造の誘電体結晶粒におけるコアの分率は60%以上となるように作製した。
【0124】
比較例1は、チタン酸バリウム(BaTiO3)100モルを基準として、アクセプタ元素のモル数(Am)に対するドナー元素のモル数(Dm)の比率(Dm/Am)が1.2未満となるように秤量して投入し、ドナー元素のモル数(Dm)に対するバナジウム(V)元素のモル数(Vm)の比率(Vm/Dm)は、0.2未満となるように秤量して投入した。添加剤の投入含量を除くその他の作製過程は、上述した実施例1と同様にチップ(chip)を作製した。
【0125】
実施例1及び比較例1について、過速信頼性評価(Highly Accelerated Life Test、HALT)、容量の温度変化特性(Temperature Coefficient of Capacitance、TCC)評価を行った。
【0126】
過速信頼性評価(HALT)は、温度条件105℃、電圧条件100Vを100時間印加し、短絡(short)が発生したチップ(chip)を不良と判定した。
【0127】
TCC特性グラフは、25℃での静電容量(capacitance)を基準として(0%基準)、-55℃での静電容量変化率(%)及び85℃での静電容量変化率(%)を測定して示した。
【0128】
図6の(a)は実施例1の過速信頼性評価(HALT)グラフであり、
図6の(b)は比較例1の過速信頼性評価(HALT)グラフであり、
図6の(c)は実施例1及び比較例1の容量温度変化(TCC)特性グラフである。
【0129】
図6の(a)及び(b)の比較から分かるように、比較例1の平均故障時間(Mean Time To Failure、MTTF)より実施例1の平均故障時間がさらに長いことが分かり、これにより1.2≦Dm/Am≦1.4及び0.2≦Vm/Dmの条件を満たす場合、信頼性が改善されることが分かる。
【0130】
また、
図6の(c)に示すように、比較例1は25℃での静電容量を基準として、-55℃での静電容量変化率は-15.83%、85℃での静電容量変化率は-20.21%と測定され、X5R特性を満たしていないのに対し、実施例1は、25℃での静電容量を基準として、-55℃での静電容量変化率は-14.83%、85℃での静電容量変化率は-13.29%と測定され、X5R特性を満たし、これにより1.2≦Dm/Am≦1.4及び0.2≦Vm/Dmの条件を満たす場合、X5R特性を満たすことが分かる。
【0131】
次に、比較例2、比較例3、及び実施例2を作製し、これらの誘電体層の断面をEDSで観察し、コアの分率によるTCC特性(X5R)を満たすか否かを測定した。
【0132】
より具体的に、
図7の(a)は、比較例の誘電体層の断面についてTEM-EDSでジスプロシウム(Dy)を観察したイメージであり、
図7の(b)は、他の比較例の誘電体層の断面についてTEM-EDSでジスプロシウム(Dy)を観察したイメージであり、
図7の(c)は、実施例の誘電体層の断面についてTEM-EDSでジスプロシウム(Dy)を観察したイメージである。
【0133】
比較例2の全ピクセル数は156,228個であり、コアのピクセル数は59,308個であり、コアの分率は約38%に相当する。比較例3の全ピクセル数は154,186個であり、コアのピクセル数は62,246個であり、コアの分率は約40%に相当する。実施例2の全ピクセル数は148,050個であり、コアのピクセル数は90,818個であり、コアの分率は約61%に相当する。ここで、ジスプロシウム(Dy)の原子百分率が0at%であるピクセルをコアに該当する領域のピクセルと定義し、コアの面積分率を計算した。
【0134】
このとき、比較例2及び実施例2について、温度変化による容量変化率を測定した。比較例2は、25℃での静電容量を基準として、-55℃での静電容量変化率は-15.83%、85℃での静電容量変化率は-19.21%と測定され、X5R特性を満たすことができなかった。実施例2は、25℃での静電容量を基準として、-55℃での静電容量変化率は-14.83%、85℃での静電容量変化率は-13.19%と測定され、X5R特性を満たした。
【0135】
これにより、コア-シェル構造の誘電体結晶粒においてコアの分率が60%以上を満たす場合、温度による静電容量変化率が改善され、X5R特性を満たすことが分かる。
【0136】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0137】
また、本発明において使用される「一実施形態」という表現は、互いに同じ実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態において説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明として理解することができる。
【0138】
本発明において使用される用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0139】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:サイドマージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極