(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008413
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】混合溶剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 7/50 20060101AFI20250109BHJP
D06F 35/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C11D7/50
D06F35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110576
(22)【出願日】2023-07-05
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】509219224
【氏名又は名称】株式会社白洋舎
(71)【出願人】
【識別番号】506391509
【氏名又は名称】株式会社ジャヴス
(71)【出願人】
【識別番号】000174851
【氏名又は名称】三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 未希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健史
(72)【発明者】
【氏名】菊地 秀明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 芳友
(72)【発明者】
【氏名】木村 光伸
【テーマコード(参考)】
3B168
4H003
【Fターム(参考)】
3B168AC01
3B168BA25
3B168FA02
4H003AE01
4H003BA12
4H003DA01
4H003DC03
4H003ED19
4H003ED26
4H003FA03
4H003FA45
(57)【要約】
【課題】 次世代型の環境負荷の極めて少ない新規なドライクリーニング溶剤を提供する。
【解決手段】 40℃未満の沸点を有するフッ素系溶剤を含むドライクリーニング溶剤用組成物を使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
40℃未満の沸点を有するフッ素系溶剤を含む、ドライクリーニング溶剤用組成物。
【請求項2】
ソープを含む請求項1に記載のドライクリーニング溶剤用組成物。
【請求項3】
40℃未満の沸点を有するフッ素系溶剤が、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンおよび/または1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのいずれかを含む、請求項1または2に記載のドライクリーニング溶剤用組成物。
【請求項4】
40℃以上の沸点を有するフッ素系溶剤を更に含む、請求項1または2に記載のドライクリーニング溶剤用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なドライクリーニング用の溶剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライクリーニングとは、有機溶剤を使って汚れを落とすクリーニング方法である。ドライクリーニング用の有機溶剤(ドライクリーニング溶剤)は、その目的とする衣料によってさまざまの溶剤が選択されているが、塩素系(パークロロエチレン、など)、石油系(5号工業ガソリン、など)、フッ素系などが挙げることができる。
【0003】
この中でもフッ素系ドライクリーニング溶剤はその取扱い時の安全性、衣料へのダメージ防止、仕上げ後の風合いの良さなどの点から、特に高級衣料を中心に使用されてきている。しかしながら、昨今の環境への影響問題により、ドライクリーニングに使用されてきたハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFCs)は、先進国において既に全廃となっているし、またハイドロフルオロカーボン類(HFCs)もまた、パリ議定書、モントリオール議定書キガリ改正によりその生産が厳しく制限されてきている。さらに、ハイドロフルオロエーテル(HFE347pc、HFE-449などのハイドロフルオロエーテル類(HFEs)もドライクリーニング溶剤として一部使用されてきている(特許文献1)が、その安全性や、価格、供給面などの課題を有している。HFEsは、そのような欠点を補うためにHFCsとの混合物としても使用されているが、HFCsには前述のように生産規制が開始され、近い将来使用ができなくなる可能性もあるため、そのような混合物を今後とも使用できるのかは不明である。
また最近これらに替わるものとして、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFOs)も提案されている(特許文献2)が、衣料へのダメージが強いという問題を有している。
【0004】
ドライクリーニング溶剤としてフッ素系溶剤を選択する際には、環境への負荷の観点から選択することも必要である。
HCFCsの使用が先進国において全廃になっているのも、これらは高いオゾン破壊係数を持つオゾン層破壊物質であるからである。また、HFCsは、高いオゾン破壊係数は有していないが、地球温暖化係数は高いことが知られており、地球環境の観点からはその使用は推奨されない。
【0005】
さらに、フッ素系ドライクリーニング溶剤に限られるものではないが、ドライクリーニング溶剤全体の問題として、VOCへの配慮も必要である。
VOCとは、揮発性有機化合物のことであって、大気中に排出されまたは飛散したときに気体である有機化合物を意味し、光化学スモッグの原因となる光化学オキシダントや呼吸器系の健康に影響を及ぼす浮遊粒子状物質を生成する原因となる物質である(非特許文献1、2)。ドライクリーニング溶剤はVOCの発生源の一つであるとの指摘があり、クリーニング装置への溶剤蒸気回収装置の装着や沸点の高いドライクリーニング溶剤の使用(非特許文献3)など、様々な試みが行われているところである。大気汚染の防止の観点から、また、ドライクリーニング溶剤を扱う作業者の健康の観点から、VOC拡散の低いドライクリーニング溶剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3336356号公報
【特許文献2】特開2018-031011号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「クリーニング業界の現状とドライクリーニング溶剤削減への取組みについて」(全国クリーニング生活衛生同業組合連合会(https://www.env.go.jp/council/former2013/07air/y074-07/mat03_2.pdf)
【非特許文献2】「揮発性有機化合物対策の現状と問題点」(第10回東京都環境科学研究所 公開研究発表会)(https://www.tokyokankyo.jp/kankyoken_contents/research-meeting/h17-01/1701-pp.pdf)
【非特許文献3】「1,1,1-トリクロロエタン削減・全廃マニュアル」(オゾン層保護対策産業協議会、1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、次世代型の環境負荷の極めて少ない新規なドライクリーニング溶剤組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意検討した結果、特定のフッ素系溶媒をドライクリーニング溶剤として使用することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の点を特徴とする。
[1]40℃未満の沸点を有するフッ素系溶剤を含む、ドライクリーニング溶剤用組成物。
[2]ソープを含む、[1]のドライクリーニング溶剤用組成物。
[3]40℃未満の沸点を有するフッ素系溶剤が、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンおよび/または1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのいずれかを含む、[1]または[2]のドライクリーニング溶剤用組成物。
[4]40℃以上沸点を有するフッ素系溶剤を更に含む、[1]または[2]のドライクリーニング溶剤用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環境負荷の極めて少ない新規なドライクリーニング溶剤組成物を提供することができる。特に、大気汚染の防止の観点から、また、ドライクリーニング溶剤を扱う作業者の健康の観点から、VOC拡散の低いドライクリーニング溶剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明のドライクリーニング溶剤用組成物は、40℃未満の沸点を有するフッ素系溶剤を含むことに特徴がある。
ドライクリーニング用の洗濯装置では、洗浄物の取り出し、入れ込みを容易にする関係で、開口部の面積が広いものが一般に使用されている。そのようなドライクリーニング用の洗濯装置で使用されるフッ素系溶剤は、装置外への溶剤の持ち出し量(装置外への溶剤の揮散量)を低くするため、日本の気候(平均気温)に合わせて、40℃以上の沸点を持つ溶剤が選択することが、この分野の技術常識であり、ドライクリーニング溶剤用組成物として40℃未満の沸点を有するフッ素系溶剤を選択することは、当業者が想起し得ないものである。
【0012】
40℃未満の沸点を有するフッ素系溶剤であれば、本発明のドライクリーニング溶剤用組成物としての使用に制限はないが、特に、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの使用が望ましい。
1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンはHFO-1336mzzとも称される。該HFO-1336mzzには(E)体と(Z)体の2種類の異性体が存在する。(E)体の沸点は約7.5℃、(Z)体の沸点は約33℃であり、地球温暖化係数はいずれも10未満、オゾン破壊係数はいずれもゼロである。本発明の目的ではいずれでも使用することができ、また、それらの混合物としても使用できる。その(Z)体の構造は以下のとおりである。
【化1】
【0013】
1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、HCFO-1233zdとも称される、沸点39℃の化合物である。オゾン破壊係数は限りなくゼロに近く、また、地球温暖化係数は1未満である。(E)体と(Z)体とが存在するが、本発明の目的ではいずれでも使用することができ、また、それらの混合物としても使用できる。その(Z)体の構造は以下のとおりである。
【化2】
【0014】
1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、それぞれ単独でも使用できるし、これらを1:99~99:1(重量%)の範囲で組み合わせても使用することができる。
【0015】
また、他のドライクリーニング溶剤と共に使用することもできる。
そのようなドライクリーニング溶剤として、以下のものを例示できるが、これに限られるわけではない。
塩素系としては、パークロロエチレン(テトラクロロエチレン)、などを例示することができる。
石油系としては、5号工業ガソリン、などを例示することができる。
フッ素系としては、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエ-テル(HFE-347)、などを例示することができる。
本発明のドライクリーニング溶剤用組成物と他のドライクリーニング溶剤との混合の割合に限定はなく、本発明の組成物と他のドライクリーニング溶剤とを1:99~99:1(重量%)の範囲で組み合わせても使用することができる。
【0016】
また、本発明のドライクリーニング溶剤用組成物は、ソープと総称される界面活性剤と共に使用することができる。ソープと共に使用することで、洗浄力の向上が期待される。
本発明のドライクリーニング溶剤用組成物と共に使用できるソープに特に限定はないが
、たとえば、フロレンス365コンク(日華化学株式会社)、ハイフロールコンクS(ゲンブ株式会社)、ハイフロールNFコンク(ゲンブ株式会社)を使用することができる。
本発明のドライクリーニング溶剤用組成物に対するソープの使用量は、0.1~1.0vol%である。
【0017】
また目的に応じて本発明の特性を損なわない範囲において、他のアルコール類、炭化水素類、ケトン類、エーテル類、エステル類などの薬品類を添加しても良い。アルコ-ル類としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールなどが例示される。炭化水素類としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどが例示される。ケトン類としてはアセトン、メチルエチルケトンなどが例示される。エーテル類としてはジエチルエーテルなどが例示される。エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチルなどが例示される。
【0018】
また本発明の特性を損なわない範囲において、安定剤を添加しても良い。安定剤としてはニトロアルカン類、エポキシド類、フェノール類、炭化水素類などが挙げられる。ニトロアルカン類としては、ニトロメタンなどが例示される。エポキシド類としては、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ジオキソランなどが例示される。フェノール類としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールなどが例示される。炭化水素類としては、トリメチルペンタン類が例示される。
【実施例0019】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0020】
本発明で使用した各成分の特性等は以下の表1のとおりである。
【0021】
【0022】
<洗浄剤>
実施例、比較例で使用する洗浄剤組成物を下記に示す。
(本発明組成物1)HFO-1336
三井・ケマ-ズ フロロプロダクツ株式会社製 Opteon(登録商標)SF33。
(本発明組成物2)HFO-1336/HFE-347
HFO-1336とHFE-347を蓋つき金属缶(20L)に60:40(重量%)の割合となるように、HFO-1336を12.0kg、HFE-347を8.0kg入れ、振盪および撹拌により混合した。
(比較組成物1)HFC-365/HFE-347
HFC-365とHFE-347を蓋つき金属缶(20L)に60:40(重量%)の割合となるように、HFC-365を12.0kg、HFE-347を8.0kg入れ、振盪および撹拌により混合した。
【0023】
<ソ-プ>
実施例、比較例で使用するソープを下記に示す
・フロレンス365コンク(日華化学株式会社製)
・ハイフロールコンクS (ゲンブ株式会社製)
・ハイフロールNFコンク(ゲンブ株式会社製)
【0024】
<ソープ溶解性>
100mlの本発明組成物1または2、あるいは比較組成物1を、蓋つきガラス瓶(200ml)に各々入れ、表2に示すソープを0.2vol%加えて振盪撹拌した後、溶解性を目視にて確認し、可溶(白濁および液残り無し)の場合は〇、不溶(白濁および液残り有り)の場合には×とした。
【0025】
<洗浄性能評価>
下記の手順にて試験片(各汚染布および再汚染評価用の白布)を洗浄し、洗浄率を算出した。
1:試験片として使用する汚染布は下記を用いた。(1)水溶性汚れの汚染布
食用色素及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを溶解した水溶液をポリエステル布に染着させて自然乾燥し、5cm×5cmに裁断したものを用いた。
(2)湿式人工汚染布
株式会社双立より購入したもの(5cm×5cm)を用いた。
(3)再汚染評価用の白布
JIS L 0803準拠染色堅ろう度試験用添付白布の毛、ポリエステル、綿、および東レ・エクセーヌを全て5cm×5cmに裁断したものを用いた。
2:各汚染布及び再汚染評価用の白布は、20℃、65%相対湿度の環境下で24時間放置する。
3:100mlの本発明組成物1および2、または比較組成物1を、蓋つきガラス瓶(450ml)に各々入れ、0.2vol%のハイフロールコンクS(ゲンブ株式会社製)を溶解させた後、攪拌用のステンレス鋼球(直径約6mm)10個を入れる。
4:3のガラス瓶へ2の各汚染布と再汚染評価用の白布入れる。
5:撹拌には350rpm・30mm振幅(垂直方向)の往復振盪機を用い、20℃で所定時間(15分)、攪拌する。
6:攪拌後、各汚染布と再汚染評価用白布をガラス瓶から取り出し、室温にて一昼夜乾燥させる。
7: 乾燥した各汚染布及び再汚染評価用白布の洗浄前後での変化を、色差計(日本電色工業株式会社製 SE7700)を用いて反射率を測定する。
8:測定された反射率を用い、下記の数式にて洗浄率を算出する。
洗浄率(%)={(洗浄後の汚染布反射率-洗浄前の汚染布反射率)/(白布の反射率-洗浄前の汚染布反射率)}×100
【0026】
<衣料取り出し時の各洗浄剤組成物の室内への放出量> および
<各洗浄剤組成物の室内拡散量>
衣類(10kg)をドライクリーニング装置(NFZ-1000i、株式会社ジャヴス社製、乾燥時間の自動延長機能およびドア解放時の外気吸引機能有り)にいれ、下記洗浄プロセスに従いオート機能で洗浄を行い、クリーニング工程中、及び衣類を取り出した際に室内に放出されるフッ素系溶剤濃度を、フロンガス濃度測定器(理研計器株式会社製、モデルRI-413A)で測定する。
【0027】
<洗浄プロセス>
1:衣類投入口を開け、装置洗浄槽内に衣類を導入する。
2:洗浄
各洗浄剤組成物とソープの混合物を用いて衣類を洗浄し、付着した汚れを除去する。
3:すすぎ
各洗浄剤組成物を用いて、上記2で洗浄した衣類に残ったソープ及び汚れをすすぐ。
4:乾燥(熱風)
すすぎが終了した衣類を乾燥設定温度50℃で乾燥する。また、この際に熱によって気
化した各洗浄剤組成物の蒸気を、洗浄装置内にある回収装置(冷却管により各洗浄剤組成物の蒸気を冷却・凝縮させる装置及び活性炭による吸着・脱着させる装置)により回収、再利用を行う。
5:冷却
上記4で加温された衣類が室温になるまで冷却する。また、この際に気化した各洗浄剤組成物の蒸気を洗浄装置内にある回収装置(冷却管により溶剤蒸気を冷却・凝縮させる装置及び活性炭による吸着・脱着させる装置)により回収、再利用を行う。
6:取出し
衣類投入口を開け、衣類を取り出す。
【0028】
上記プロセスにおいて、衣類の取り出し時以外で各洗浄剤組成物の蒸気が装置外に漏れることはなく、各洗浄剤組成物の蒸気が室内拡散するのは、上記6の工程のみであるため、衣料取り出し時の各洗浄剤組成物の室内への放出量および各洗浄剤組成物の室内拡散量測定は、上記6のタイミングで行った。
【0029】
[実施例1および2、比較例1]
本発明組成物1および2と、比較組成物1を用いて、ソープの溶解性、洗浄性能、衣料取り出し時の各洗浄剤組成物の室内への放出量、および各洗浄剤組成物の室内拡散量を測定した。結果を表2に示す。
【0030】
【0031】
本発明組成物1、2および比較組成物1は、いずれも、三種類のソープを良好に溶解した。
本発明組成物1、2および比較組成物1に、ソープとして同量のハイフロールコンクSを添加して、洗浄性能を評価した。本発明組成物1および2は、水溶性汚れの汚染布、および湿式人工汚染布のいずれにおいても、比較組成物と比較して高い洗浄性能を示し、汚れの除去の点で異なる結果を示した。
本発明組成物1および2を使用した際の衣料取り出し時の洗浄剤放出量は、各溶剤メーカーが推奨する作業環境濃度(許容濃度)よりも低かった。いずれも、比較組成物1を使用した際の洗浄剤放出量よりもはるかに低く、本発明組成物1および2の室内への拡散量は比較組成物1よりもはるかに少なかった。これは、洗浄作業者の洗浄剤組成物のばく露濃度が低いことを意味している。ドライクリーニング用の溶剤は、通常は、蒸気圧が高い(沸点が低い)と揮発性が高いため、室内拡散量が多くなり、洗浄作業者へのばく露も高くなると考えられるので、本発明組成物1および2に含まれるHFO-1336の蒸気圧は、比較組成物1に含まれるHFC-365の蒸気圧よりも高い(HFO-1336の沸点は、HFC-365の沸点よりも低い)ことを考慮すれば、上記の結果は予想外のものといえる。
【0032】
本発明のドライクリーニング溶剤用組成物はソープの溶解性も良好であり、また、高い洗浄力を示すものであった。加えて、オゾン破壊係数がゼロで、地球温暖化係数も低く地球環境にやさしく、また、作業時の揮散性も低いものでもあった。本発明のドライクリーニング溶剤用組成物は、次世代型の環境負荷の極めて少ない、優秀なドライクリーニング溶剤である。