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特開2025-84133セルロースナノファイバーを含むゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025084133
(43)【公開日】2025-06-02
(54)【発明の名称】セルロースナノファイバーを含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20250526BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20250526BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20250526BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250526BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20250526BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L1/02
C08L71/00 Y
B60C1/00 Z
F16F15/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】38
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024203260
(22)【出願日】2024-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2023197421
(32)【優先日】2023-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024033382
(32)【優先日】2024-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】栗下 佑香
(72)【発明者】
【氏名】樽谷 淳禎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 敦志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 颯太
(72)【発明者】
【氏名】河原 一文
【テーマコード(参考)】
3D131
3J048
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131BA02
3D131BA07
3D131BA18
3D131BC47
3J048AA01
3J048BB10
4J002AC01Y
4J002AC02W
4J002AC03W
4J002AC06W
4J002AC06X
4J002AC06Y
4J002AC08W
4J002AC08X
4J002AC08Y
4J002AC11X
4J002CH02Z
4J002FD31Z
4J002GC00
4J002GM01
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】セルロースナノファイバーの分散性及び配向性に優れるゴム組成物、ゴム複合体及びゴム硬化物の提供、及び、一態様において、良好な物性(特に、引張特性及びモジュラス)並びに表面平滑性を示すゴム硬化物の提供。
【解決手段】一態様において、セルロースナノファイバーと、第1のゴムと、第2のゴムとを含むゴム組成物であって、前記第1のゴム及び前記第2のゴムが、液状ゴムであり、38℃において、前記第1のゴムの粘度η1が前記第2のゴムの粘度よりも小さい、ゴム組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースナノファイバーと、第1のゴムと、第2のゴムとを含むゴム組成物であって、
前記第1のゴム及び前記第2のゴムが、液状ゴムであり、
38℃において、前記第1のゴムの粘度η1が前記第2のゴムの粘度よりも小さい、ゴム組成物。
【請求項2】
38℃において、前記第1のゴムの粘度η1が5,000mPa・s~100,000mPa・sであり、前記第2のゴムの粘度η2が100,000mPa・s~800,000mPa・sである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記第2のゴムの数平均分子量が、4,500~150,000である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記第2のゴム100質量部に対し、前記第1のゴムを5質量部~300質量部含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項5】
セルロースナノファイバー100質量部に対し、前記第1のゴムを5質量部~100質量部含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項6】
セルロースナノファイバー100質量部に対し、前記第2のゴムを10質量部~300質量部含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記第2のゴムを5質量%~60質量%含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記第1のゴムが、芳香族ビニル単量体単位を含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記第2のゴムが、無水マレイン酸変性液状ポリイソプレンである、請求項1又は2のゴム組成物。
【請求項10】
分散剤を更に含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記分散剤が、ノニオン性である、請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項12】
分散剤/第2のゴムの重量比が、0.01~2.0である、請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項13】
第3のゴムを更に含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項14】
前記第3のゴムが、天然ゴムである、請求項13に記載のゴム組成物。
【請求項15】
乾燥体である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項16】
破砕物メジアン径が、10μm~8.0mmである、請求項15に記載のゴム組成物。
【請求項17】
破砕物ゆるめ嵩密度が、0.01g/cm~0.80g/cmである、請求項15に記載のゴム組成物。
【請求項18】
ゴム組成物の化学結合度が、0.01~4.0である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項19】
請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法であって、
セルロースナノファイバーと、前記第1のゴムとを混合して予備組成物を得る第1の工程、及び
前記予備組成物と、前記第2のゴムとを混合してゴム組成物を得る第2の工程、
を含む、方法。
【請求項20】
請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法であって、
前記第1のゴムと、前記第2のゴムとを混合して予備組成物を得る第1の工程、及び、
前記予備組成物と、前記セルロースナノファイバーとを混合してゴム組成物を得る第2の工程、
を含む、方法。
【請求項21】
前記第2の工程において、第3のゴムを更に混合する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
請求項13に記載のゴム組成物の製造方法であって、
セルロースナノファイバーと、前記第1のゴムとを混合して予備組成物を得る工程、
前記予備組成物と、前記第2のゴムとを混合して乾燥体を得る工程、及び
前記乾燥体と第3のゴムとを混合してゴム組成物を得る工程、
を含む、方法。
【請求項23】
請求項13に記載のゴム組成物の製造方法であって、
前記第1のゴムと、前記第2のゴムとを混合して予備組成物を得る工程、
前記予備組成物と、前記セルロースナノファイバーとを混合して乾燥体を得る工程、及び
前記乾燥体と、第3のゴムとを混合してゴム組成物を得る工程、
を含む、方法。
【請求項24】
請求項1又は2に記載のゴム組成物を含む、乾燥体。
【請求項25】
ゴム組成物の製造方法であって、
請求項24に記載の乾燥体と、第3のゴムとを混合してゴム組成物を得る工程を含む、ゴム組成物の方法。
【請求項26】
前記第3のゴムが、天然ゴムである、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記第3のゴムが、天然ゴムである、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記第3のゴムが、天然ゴムである、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記第3のゴムが、天然ゴムである、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
請求項1又は2に記載のゴム組成物と、第4のゴムとの混練物である、ゴム複合体。
【請求項31】
請求項13に記載のゴム組成物と、第4のゴムとの混練物である、ゴム複合体。
【請求項32】
ゴム複合体の製造方法であって、
請求項1又は2に記載のゴム組成物と、第4のゴムを混合することを含む、方法。
【請求項33】
ゴム複合体の製造方法であって、
請求項13に記載のゴム組成物と、第4のゴムを混合することを含む、方法。
【請求項34】
請求項30に記載のゴム複合体の硬化物である、ゴム硬化物。
【請求項35】
請求項34に記載のゴム硬化物を含む、タイヤ。
【請求項36】
請求項34に記載のゴム硬化物を含む、防振ゴム。
【請求項37】
請求項34に記載のゴム硬化物を含む、シューズアウトソール。
【請求項38】
請求項34に記載のゴム硬化物を含む、搬送用ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一態様は、セルロースナノファイバーを含むゴム組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム成形体においては、機械強度、柔軟性、耐摩耗性、加工性等の種々の特性を高度にバランスさせることが求められており、例えば、弾性率、硬度,耐摩耗性等を向上させる目的で、ゴム成形体中にフィラーを含有させることが一般的に行われている。このようなフィラーを含むゴム成形体が所望の特性を発揮するためには、フィラーがゴム中に良好に分散していることが重要である。近年、環境問題への意識の高まりから、ゴム成形体に含有させるフィラーとして、低比重且つ再生可能な材料であるセルロースの利用が種々模索されている。中でも、セルロースナノファイバーは、各種ポリマーと組合せてポリマー成形体を構成した際の当該ポリマー成形体に与える使用量当たりの補強効果が良好であることから、ポリマー成形体用のフィラーとして極めて有望である。セルロースナノファイバーをゴム成形体に利用できれば、低比重で且つ各種物性に優れ、多様な用途に利用でき、輸送コスト及び廃棄コストの点でも有利であるゴム成形体を提供できる。しかし、セルロースナノファイバーは、セルロース中の水酸基の寄与によって本質的に親水性であることから、一般に疎水性が高い材料であるゴムとの混和は困難である。そこで、セルロースナノファイバーとゴムとの混和性を向上させるための種々の試みが行われてきた。
【0003】
例えば、特許文献1は、ゴム成分、セルロース繊維であってよいミクロフィブリル化植物繊維、及び当該ミクロフィブリル化植物繊維と共有結合可能な修飾剤を含むタイヤ用ゴム組成物を記載する。
【0004】
また、特許文献2は、極性基を0.1モル%以上有する変性ジエン系ゴムを5質量%以上含むジエン系ゴム100質量部に、酸化セルロースナノファイバーを1~50質量部配合することを特徴とするタイヤ用ゴム組成物を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-41076号公報
【特許文献2】特開2019-147877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載される技術は、セルロース繊維をゴム組成物中に分散させて当該ゴム組成物の機械特性を向上させようとするものである。しかし、これらの技術によっても、ゴム組成物中でのセルロースナノファイバーの分散性は未だ十分ではなく、機械特性にはなお改善の余地があった。加えて、各種成形体においてセルロースナノファイバーを配合する際には、当該成形体の外観、摺動性等の観点から、良好な表面平滑性が求められる場合がある。良好な表面平滑性を得るためには成形体中でセルロースナノファイバーを良好に配向させることが有利である。しかし、特許文献1及び2においてセルロースナノファイバーの配向性には着目されていない。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決し、一態様において、セルロースナノファイバーの分散性及び配向性に優れるゴム組成物、ゴム複合体及びゴム硬化物の提供を目的とし、一態様において、良好な物性(特に、引張特性及びモジュラス)並びに表面平滑性を示すゴム硬化物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の項目を包含する。
[項目1]
セルロースナノファイバーと、第1のゴムと、第2のゴムとを含むゴム組成物であって、
前記第1のゴム及び前記第2のゴムが、液状ゴムであり、
38℃において、前記第1のゴムの粘度η1が前記第2のゴムの粘度よりも小さい、ゴム組成物。
[項目2]
38℃において、前記第1のゴムの粘度η1が5,000mPa・s~100,000mPa・sであり、前記第2のゴムの粘度η2が100,000mPa・s~800,000mPa・sである、項目1に記載のゴム組成物。
[項目3]
前記第2のゴムの数平均分子量が、4,500~150,000である、項目1又は2に記載のゴム組成物。
[項目4]
前記第2のゴム100質量部に対し、前記第1のゴムを5質量部~300質量部含む、項目1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
[項目5]
セルロースナノファイバー100質量部に対し、前記第1のゴムを5質量部~100質量部含む、項目1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
[項目6]
セルロースナノファイバー100質量部に対し、前記第2のゴムを10質量部~300質量部含む、項目1~5のいずれかに記載のゴム組成物。
[項目7]
前記第2のゴムを5質量%~60質量%含む、項目1~6のいずれかに記載のゴム組成物。
[項目8]
前記第1のゴムが、芳香族ビニル単量体単位を含む、項目1~7のいずれかに記載のゴム組成物。
[項目9]
前記第2のゴムが、無水マレイン酸変性液状ポリイソプレンである、項目1~8のいずれかに記載のゴム組成物。
[項目10]
分散剤を更に含む、項目1~9のいずれかに記載のゴム組成物。
[項目11]
前記分散剤が、ノニオン性である、項目10に記載のゴム組成物。
[項目12]
分散剤/第2のゴムの重量比が、0.01~2.0である、項目10又は11に記載のゴム組成物。
[項目13]
第3のゴムを更に含む、項目1~12のいずれかに記載のゴム組成物。
[項目14]
前記第3のゴムが、天然ゴムである、項目13に記載のゴム組成物。
[項目15]
乾燥体である、項目1~14のいずれかに記載のゴム組成物。
[項目16]
破砕物メジアン径が、10μm~8.0mmである、項目15に記載のゴム組成物。
[項目17]
破砕物ゆるめ嵩密度が、0.01g/cm~0.80g/cmである、項目15又は16に記載のゴム組成物。
[項目18]
ゴム組成物の化学結合度が、0.01~4.0である、項目1~17のいずれかに記載のゴム組成物。
[項目19]
項目1~18のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法であって、
セルロースナノファイバーと、前記第1のゴムとを混合して予備組成物を得る第1の工程、及び
前記予備組成物と、前記第2のゴムとを混合してゴム組成物を得る第2の工程、
を含む、方法。
[項目20]
項目1~18のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法であって、
前記第1のゴムと、前記第2のゴムとを混合して予備組成物を得る第1の工程、及び、
前記予備組成物と、前記セルロースナノファイバーとを混合してゴム組成物を得る第2の工程、
を含む、方法。
[項目21]
前記第2の工程において、第3のゴムを更に混合する、項目19又は20に記載の方法。
[項目22]
項目13又は14に記載のゴム組成物の製造方法であって、
セルロースナノファイバーと、前記第1のゴムとを混合して予備組成物を得る工程、
前記予備組成物と、前記第2のゴムとを混合して乾燥体を得る工程、及び
前記乾燥体と第3のゴムとを混合してゴム組成物を得る工程、
を含む、方法。
[項目23]
項目13又は14に記載のゴム組成物の製造方法であって、
前記第1のゴムと、前記第2のゴムとを混合して予備組成物を得る工程、
前記予備組成物と、前記セルロースナノファイバーとを混合して乾燥体を得る工程、及び
前記乾燥体と、第3のゴムとを混合してゴム組成物を得る工程、
を含む、方法。
[項目24]
項目1~18のいずれかに記載のゴム組成物を含む、乾燥体。
[項目25]
ゴム組成物の製造方法であって、
項目24に記載の乾燥体と、第3のゴムとを混合してゴム組成物を得る工程を含む、ゴム組成物の方法。
[項目26]
前記第3のゴムが、天然ゴムである、項目21に記載の方法。
[項目27]
前記第3のゴムが、天然ゴムである、項目22に記載の方法。
[項目28]
前記第3のゴムが、天然ゴムである、項目23に記載の方法。
[項目29]
前記第3のゴムが、天然ゴムである、項目25に記載の方法。
[項目30]
項目1~18のいずれかに記載のゴム組成物と、第4のゴムとの混練物である、ゴム複合体。
[項目31]
項目13に記載のゴム組成物と、第4のゴムとの混練物である、ゴム複合体。
[項目32]
ゴム複合体の製造方法であって、
項目1~18のいずれかに記載のゴム組成物と、第4のゴムとを混合することを含む、方法。
[項目33]
ゴム複合体の製造方法であって、
項目13に記載のゴム組成物と、第4のゴムを混合することを含む、方法。
[項目34]
項目30に記載のゴム複合体の硬化物である、ゴム硬化物。
[項目35]
項目34に記載のゴム硬化物を含む、タイヤ。
[項目36]
項目34に記載のゴム硬化物を含む、防振ゴム。
[項目37]
項目34に記載のゴム硬化物を含む、シューズアウトソール。
[項目38]
項目34に記載のゴム硬化物を含む、搬送用ベルト。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一態様において、セルロースナノファイバーの分散性及び配向性に優れるゴム組成物、ゴム複合体及びゴム硬化物を提供でき、一態様において、良好な物性(特に、引張特性及びモジュラス)及び表面平滑性を示すゴム硬化物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示の実施の形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について説明するが、本発明はこれら実施形態に何ら限定されない。なお本開示の特性値は、特記がない限り、本開示の[実施例]の項に記載される方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される値である。
【0011】
≪ゴム組成物≫
本開示の一態様は、セルロースナノファイバーと、第1のゴムと、第2のゴムとを含むゴム組成物を提供する。第1のゴム及び第2のゴムは液状ゴムである。セルロースナノファイバーは、その水酸基に起因して本質的に親水性である一方、ゴムは本質的に疎水性であり、通常、セルロースナノファイバーをゴム中に均一に分散させることは困難である。本発明者らは、種々検討した結果、特定のゴムの組合せが、セルロースナノファイバーの分散性及び配向性に優れるゴム組成物の調製に有用であることを見出した。当該ゴム組成物を例えばゴム用マスターバッチの形態とし、追加のゴムと混練してゴム複合体を製造することもできる。本開示のゴム組成物、ゴム複合体、又はゴム硬化物は、セルロースナノファイバーの良好な分散性及び配向性を示し得る。またこれにより、本開示のゴム硬化物においては、良好な物性(特に、引張特性及びモジュラス)と、良好な表面平滑性とが両立され得る。
【0012】
一態様では、38℃において、第1のゴムの粘度η1は第2のゴムの粘度η2よりも小さい。本開示では、第1のゴムを低粘度液状ゴム、第2のゴムを高粘度液状ゴムということもある。ゴムを含む各種成形体においては、液状ゴムではないゴムをマトリクスゴムとして用いるとともに、液状ゴムを更に用い、当該液状ゴムをセルロースナノファイバーとマトリクスゴムとの間に介在させることで、マトリクスゴムに対するセルロースナノファイバーの分散性向上が期待される。しかし、本発明者らの検討によれば、単に液状ゴムを使用するのみではセルロースナノファイバーの分散性向上効果が所望の程度得られない場合があることが見出された。理論に拘束されるものではないが、ゴム硬化物の機械特性を良好に向上させる観点で有用な液状ゴムは、比較的高分子量である傾向があり、及び/又はしばしば変性基(より具体的には反応性基)を有する。このような、高分子量の、及び/又は変性基を有する、液状ゴムは、一般に高粘度である。高粘度の液状ゴムは、マトリクスゴムとの良好な親和性を有し得るものの、セルロースナノファイバーと均一且つ十分に混和することがしばしば困難である。また、各種成形体においてセルロースナノファイバーを配合する際には、当該成形体の外観、摺動性等の観点から、良好な表面平滑性が求められる場合がある。良好な表面平滑性を得るためには成形体中でセルロースナノファイバーを良好に配向させることが有利である。成形体製造時のゴム組成物中又はゴム複合体中でのセルロースナノファイバーの移動性が良好であれば、セルロースナノファイバーの良好な配向性を実現し易い。しかし、セルロースナノファイバーと液状ゴムとの混和が不十分又は不均一であると、セルロースナノファイバーの所望の移動が阻害されて配向性が低下し得る。そこで、本発明者らが更に検討したところ、粘度が異なる2種の液状ゴム、すなわち、相対的に低粘度である第1のゴムと、相対的に高粘度である第2のゴムとを少なくとも使用することで上記のような問題を解決できることが見出された。第1のゴムは、低粘度の液状ゴムであることで流動性に優れ、且つ、液状ゴムであることによって第2のゴムと良好に親和し得る。このような第1のゴムは、第2のゴム同士、又は第2のゴムとセルロースナノファイバーとの間に入り込み易い。一態様において、第1のゴムは、セルロースナノファイバーを良好に被覆することができる。一方、第2のゴムは、高粘度の液状ゴムであって、適度な(すなわち高過ぎない)流動性を有することで、マトリクスゴムの近傍に相当量留まって当該マトリクスゴムとの架橋を形成し得る。また、第2のゴムは、流動性が必ずしも高くないが、第1のゴムが介在することで、セルロースナノファイバーに適度に接近できる。セルロースナノファイバーは、このような第1のゴムと第2のゴムとを介してマトリクスゴム中に分散することで、良好な分散性及び配向性を実現し得る。
【0013】
以下、ゴム組成物の各成分について説明する。なお、本実施形態のゴム組成物成分中の値として記載する各成分の量は、本実施形態のゴム組成物中の各成分の量と見做してもよい。
【0014】
<セルロースナノファイバー>
セルロースナノファイバーはセルロース繊維原料を解繊処理等により微細化された繊維である。セルロース繊維原料としては、天然セルロース及び再生セルロースを用いることができる。天然セルロースとしては、木材種(広葉樹又は針葉樹)から得られる木材パルプ、非木材種(綿、竹、麻、バガス、ケナフ、コットンリンター、サイザル、ワラ等)から得られる非木材パルプ、動物(例えばホヤ類)や藻類、微生物(例えば酢酸菌)が産生するセルロース繊維集合体を使用できる。再生セルロースとしては、再生セルロース繊維(ビスコース、キュプラ、テンセル等)、セルロース誘導体繊維、エレクトロスピニング法により得られた再生セルロース又はセルロース誘導体の極細糸等を使用できる。
【0015】
一態様において、解繊は乾式又は湿式の機械的処理であり、好ましくは、セルロース繊維原料を液体媒体に分散して得たスラリーに機械的処理を施す湿式処理である。解繊には単独の装置を1回以上用いても良いし、複数の装置をそれぞれ1回以上用いても良い。解繊に用いる装置は特に限定されないが、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられ、高圧又は超高圧ホモジナイザー、リファイナー、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザー、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、ボールミル、振動ミル、ビーズミル、コニカルリファイナー、ディスクリファイナー、1軸、2軸又は多軸の混練機・押出機等があげられる。
セルロース繊維原料は解繊前に前処理に供されてもよい。前処理によって繊維径、繊維長、フィブリル化度等を調整したり、セルロース以外の成分(リグニン等の酸不溶成分、ヘミセルロース等のアルカリ可溶多糖類、等)の含有率を調整したり、分子量、結晶化度等を調整したりすることができる。
前処理は、一態様において、化学処理、粉砕、磨砕、及び分級等から選ばれる1つ以上であってよい。化学処理は薬品を用いた処理であり、例えば蒸解、漂白、精製、加水分解処理、酵素処理、再生セルロース化、化学修飾があげられる。粉砕は、セルロース繊維原料を乾式で粉砕する処理である。磨砕は、セルロース繊維原料を液体媒体に分散して得たスラリーに粉砕処理を施す処理であり、湿式である点で上記粉砕とは区別される。分級は、セルロース繊維原料の繊維長を揃えるための分離操作であり、乾式分級又は湿式分級であってよい。
【0016】
前記液体媒体としては、水並びに/又は他の媒体(例えば、有機溶媒、無機酸、塩基及び/若しくはイオン液体)が挙げられ、1種類又は2種類以上の媒体を含んでいても良い。
【0017】
有機溶媒としては、一般的に用いられる有機溶媒として、例えば:アルコール(例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等);エーテル(例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等);カルボン酸(例えばギ酸、酢酸、乳酸等);エステル(例えば酢酸エチル、酢酸ビニル等);ケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等);含窒素溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル等);含硫黄溶媒(ジメチルスルホキシド)のうち1種以上が挙げられる。典型的な態様においては、スラリー中の液体媒体は実質的に水のみである。
【0018】
[比表面積]
セルロースナノファイバーの比表面積は、セルロースナノファイバーによる物性向上効果を良好に得る観点から、好ましくは2m2/g以上、好ましくは3m2/g以上、好ましくは5m2/g以上、好ましくは7m2/g以上、好ましくは10m2/g以上、好ましくは12m2/g以上、好ましくは15m2/g以上、好ましくは17m2/g以上、好ましくは20m2/g以上、好ましくは22m2/g以上、好ましくは25m2/g以上、好ましくは27m2/g以上である。また、ゴム組成物及びゴム硬化物へセルロースナノファイバーを良好に分散させる観点から、好ましくは400m2/g以下、好ましくは350m2/g以下、好ましくは300m2/g以下、好ましくは250m2/g以下、好ましくは200m2/g以下、好ましくは170m2/g以下、好ましくは150m2/g以下、好ましくは120m2/g以下、好ましくは100m2/g以下である。
【0019】
セルロースナノファイバーの比表面積は、セルロースナノファイバーの多孔質シートのBET比表面積を比表面積・細孔分布測定装置(例えば、Nova-4200e,カンタクローム・インスツルメンツ社製)で窒素ガスを用いて測定する。具体的には、多孔質シート約0.2gを真空下で105℃、5時間乾燥した後、液体窒素の沸点における窒素ガスの吸着量を相対蒸気圧(P/P0)が0.05以上0.2以下の範囲にて5点測定し(多点法)、同装置プログラムによりBET比表面積(m2/g)を算出する。
多孔質シートは、後述の[多孔質シート]の項で説明する方法で作製する。
【0020】
セルロースナノファイバーの比表面積はセルロースナノファイバーを円筒と仮定することで、下記式よりセルロースナノファイバーの換算繊維径を算出することができる。
セルロースの密度は1.5(g/cm3)であるため、セルロース1g当たりの体積は、6.67×10-7(m3/g)である。
セルロースナノファイバーの換算繊維径をr(m)とすると、セルロースナノファイバーの平均外周長=πr、セルロースナノファイバーの平均断面積=0.25πr2、であるので、セルロースナノファイバー1g当たりでは、合計繊維長=6.7×10-7(m3/g)/平均断面積(=0.25πr2
総表面積=比表面積(m2/g)=6.67×10-7(m3/g)/平均断面積(=0.25πr2)×平均外周長(=πr)=6.67×10-7(m3/g)/0.25r =26.68×10-7(m3/g)/r
従って、
換算繊維径r(m)=26.68×10-7(m3/g)/比表面積(m2/g)
であり、例えば多孔質シートのBET比表面積が40m2のセルロースナノファイバーの換算繊維径rは66.7nmと算出される。
【0021】
一態様において、セルロースナノファイバーの換算繊維径は、セルロースナノファイバーによる物性向上効果を良好に得る観点から、好ましくは2~1000nmである。セルロースナノファイバーの換算繊維径は、より好ましくは4nm以上、又は5nm以上、又は10nm以上、又は15nm以上、又は20nm以上であり、より好ましくは900nm以下、又は800nm以下、又は700nm以下、又は600nm以下、又は500nm以下、又は400nm以下、又は300nm以下、又は200nm以下である。
【0022】
[数平均繊維長]
一態様において、セルロースナノファイバーの数平均繊維長Lは、セルロースナノファイバーによる物性向上効果を良好に発現する観点から、好ましくは、100nm以上、又は500nm以上、1μm以上、又は5μm以上、又は10μm以上、又は20μm以上であり、樹脂組成物中でセルロースナノファイバーを良好に分散させる観点から、好ましくは、1000μm以下、又は800μm以下、又は500μm以下、又は400μm以下、又は300μm以下、又は200μm以下である。
【0023】
一態様において、セルロースナノファイバーの数平均繊維径Dは、セルロースナノファイバーによる物性向上効果を良好に得る観点から、好ましくは2~1000nmである。セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、より好ましくは4nm以上、又は5nm以上、又は10nm以上、又は15nm以上、又は20nm以上であり、より好ましくは900nm以下、又は800nm以下、又は700nm以下、又は600nm以下、又は500nm以下、又は400nm以下、又は300nm以下、又は200nm以下である。
【0024】
セルロースナノファイバーの平均繊維長(L)/繊維径(D)比は、セルロースナノファイバーを含むゴム複合体の機械的特性を少量のセルロースナノファイバーで良好に向上させる観点から、好ましくは、30以上、又は50以上、又は80以上、又は100以上、又は120以上、又は150以上である。上限は特に限定されないが、取扱い性の観点から好ましくは5000以下、又は3000以下、又は2000以下、又は1000以下である。
【0025】
本開示で、セルロースナノファイバーの繊維長、繊維径、及びL/D比は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて以下の手順で測定される値である。セルロースナノファイバーの水分散液をtert-ブタノールで置換し、0.001~0.1質量%まで希釈し、高剪断ホモジナイザー(例えばIKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」)を用い、処理条件:回転数15,000rpm×3分間で分散させ、オスミウム蒸着したシリコン基板上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとし、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)で計測して求める。具体的には、少なくとも100本のセルロースナノファイバーが観測されるように倍率が調整された観察視野にて、無作為に選んだ100本のセルロースナノファイバーの長さ(L)及び径(D)を計測し、比(L/D)を算出する。そして、それぞれの数平均値を数平均繊維径L及び数平均繊維径Dとし、比(L/D)を算出する。
【0026】
[結晶多型]
セルロースの結晶形としては、I型、II型、III型、IV型などが知られており、その中でも特にI型及びII型は汎用されており、III型、IV型は実験室スケールでは得られているものの工業スケールでは汎用されていない。本開示のセルロースナノファイバーとしては、構造上の可動性が比較的高く、当該セルロースナノファイバーをゴムに分散させることにより、線膨張係数がより低く、引っ張り、曲げ変形時の強度及び伸びがより優れた成形体が得られることから、セルロースI型結晶又はセルロースII型結晶を含有するセルロースナノファイバーが好ましく、セルロースI型結晶を含有し、かつ結晶化度が55%以上のセルロースナノファイバーがより好ましい。
【0027】
[結晶化度]
セルロースナノファイバーの結晶化度は、好ましくは55%以上である。結晶化度が大きいほど、セルロース自体の力学物性(強度、寸法安定性)が高いため、セルロースナノファイバーをゴムに分散した際に、ゴム複合体の強度、寸法安定性が高い傾向にある。より好ましい結晶化度の下限は、60%であり、さらにより好ましくは70%であり、最も好ましくは80%である。セルロースナノファイバーの結晶化度について上限は特に限定されず、高い方が好ましいが、生産上の観点から好ましい上限は99%である。
【0028】
ここでいう結晶化度は、セルロースナノファイバーがセルロースI型結晶(天然セルロース由来)である場合には、サンプルを広角X線回折により測定した際の回折パターン(2θ/deg.が10~30)からSegal法により、以下の式で求められる。
結晶化度(%)=[I(200)-I(amorphous)]/I(200)×100
(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
【0029】
また結晶化度は、セルロースがセルロースII型結晶(再生セルロース由来)である場合には、広角X線回折において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0 とこの面間隔におけるベースライン(2θ=8°及び15°を結ぶ線)のピーク強度h1 とから、下記式によって求められる。
結晶化度(%) =(h0-h1) /h0 ×100
【0030】
[重合度]
また、セルロースナノファイバーの重合度は、好ましくは100以上、より好ましくは150以上、より好ましくは200以上、より好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは450以上であり、好ましくは3500以下、より好ましく3000以下、より好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下、より好ましくは1200以下、より好ましくは1000以下である。
【0031】
加工性と機械的特性発現との観点から、セルロースナノファイバーの重合度を上述の範囲内とすることが望ましい。加工性の観点から、重合度は高すぎない方が好ましく、機械的特性発現の観点からは低すぎないことが望まれる。
【0032】
セルロースナノファイバーの重合度は、JIS P8215:1998 セルロース希薄溶液- 極限粘度数測定方法- 銅エチレンジアミン法で測定される極限粘度数を用いたStaudingerの粘度則より求まる平均重合度を意味する。
【0033】
一態様において、セルロースナノファイバーの重量平均分子量(Mw)は100000以上であり、より好ましくは200000以上である。重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は6以下であり、好ましくは5.6以下、又は5.4以下である。重量平均分子量が大きいほどセルロース分子の末端基の数は少ないことを意味する。また、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は分子量分布の幅を表すものであることから、Mw/Mnが小さいほどセルロース分子の末端の数は少ないことを意味する。セルロース分子の末端は熱分解の起点となるため、セルロースナノファイバーのセルロース分子の重量平均分子量が大きいだけでなく、重量平均分子量が大きいと同時に分子量分布の幅が狭い場合に、特に高耐熱性のセルロースナノファイバー、及びセルロースナノファイバーとゴムとを含むゴム組成物が得られる。セルロースナノファイバーの重量平均分子量(Mw)は、セルロース原料の入手容易性の観点から、例えば600000以下、又は500000以下、又は400000以下であってよい。セルロースナノファイバーの数平均分子量(Mn)は、セルロース繊維原料の入手容易性の観点から、例えば200000以下、又は150000以下、又は100000以下、又は80000以下、又は60000以下であってよい。重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)はセルロースナノファイバーの製造容易性の観点から、例えば1.5以上、又は1.7以上、又は2以上であってよい。Mwは、目的に応じたMwを有するセルロース原料を選択すること、セルロース原料に対して物理的処理及び/又は化学的処理を適度な範囲で適切に行うこと、等によって上記範囲に制御できる。Mw/Mnもまた、目的に応じたMw/Mnを有するセルロース原料を選択すること、セルロース原料に対して物理的処理及び/又は化学的処理を適度な範囲で適切に行うこと、等によって上記範囲に制御できる。セルロース原料のMw及びMw/Mnの各々は一態様において上記範囲内であってもよい。
【0034】
ここでいうセルロースナノファイバーの重量平均分子量及び数平均分子量とは、セルロースナノファイバーを塩化リチウムが添加されたN,N-ジメチルアセトアミドに溶解させたうえで、N,N-ジメチルアセトアミドを溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィによって求めた値である。
【0035】
[アルカリ可溶多糖類]
セルロースナノファイバーが含み得るアルカリ可溶多糖類は、ヘミセルロースのほか、β-セルロース及びγ-セルロースも包含する。アルカリ可溶多糖類とは、植物(例えば木材)を溶媒抽出及び塩素処理して得られるホロセルロースのうちのアルカリ可溶部として得られる成分(すなわちホロセルロースからα-セルロースを除いた成分)として当業者に理解される。アルカリ可溶多糖類は、水酸基を含む多糖であり耐熱性が悪く、熱がかかった場合に分解すること、熱エージング時に黄変を引き起こすこと、セルロースナノファイバーの強度低下の原因になること等の不都合を招来し得ることから、セルロースナノファイバー中のアルカリ可溶多糖類含有量は少ない方が好ましい。
【0036】
一態様において、セルロースナノファイバー中のアルカリ可溶多糖類平均含有率は、セルロースナノファイバーの良好な分散性を得る観点から、セルロースナノファイバー100質量%に対して、好ましくは、20質量%以下、又は18質量%以下、又は15質量%以下、又は12質量%以下である。上記含有率は、セルロースナノファイバーの製造容易性の観点から、1質量%以上、又は2質量%以上、又は3質量%以上であってもよい。
【0037】
アルカリ可溶多糖類平均含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載の手法より求めることができ、ホロセルロース含有率(Wise法)からαセルロース含有率を差し引くことで求められる。なおこの方法は当業界においてヘミセルロース量の測定方法として理解されている。1つのサンプルにつき3回アルカリ可溶多糖類含有率を算出し、算出したアルカリ可溶多糖類含有率の数平均をアルカリ可溶多糖類平均含有率とする。
【0038】
[酸不溶成分]
一態様において、セルロースナノファイバー中の酸不溶成分平均含有率は、セルロースナノファイバーの耐熱性低下及びそれに伴う変色を回避する観点から、セルロースナノファイバー100質量%に対して、好ましくは、10質量%以下、又は5質量%以下、又は3質量%以下である。上記含有率は、セルロースナノファイバーの製造容易性の観点から、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってもよい。
【0039】
酸不溶成分平均含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載のクラーソン法を用いた酸不溶成分の定量として行う。なおこの方法は当業界においてリグニン量の測定方法として理解されている。硫酸溶液中でサンプルを撹拌してセルロース及びヘミセルロース等を溶解させた後、ガラスファイバーろ紙で濾過し、得られた残渣が酸不溶成分に該当する。この酸不溶成分重量より酸不溶成分含有率を算出する。そして、1つのサンプルにつき3回酸不溶成分含有率を測定し、その数平均を酸不溶成分平均含有率とする。
【0040】
[化学修飾]
セルロースナノファイバーは、化学修飾されたセルロースナノファイバー(化学修飾セルロースナノファイバーともいう)であってよい。化学修飾セルロースナノファイバーとして、例えば硝酸エステル、硫酸エステル、リン酸エステル、ケイ酸エステル、ホウ酸エステル等の無機エステル化物、アセチル化、プロピオニル化等の有機エステル化物、メチルエーテル、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、ヒドロキシブチルエーテル、カルボキシメチルエーテル、シアノエチルエーテル等のエーテル化物、セルロースの一級水酸基を酸化してなるTEMPO酸化物等が挙げられる。化学修飾セルロースナノファイバーは1種類又は2種類以上修飾基を含んでいても良い。
好ましい態様において、化学修飾は、エステル化剤を用いたアシル化であり、特に好ましくはアセチル化である。エステル化剤としては、酸ハロゲン化物、酸無水物、及びカルボン酸ビニルエステル、カルボン酸が好ましい。これらエステル化反応剤の中でも、特に、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、及び酢酸からなる群から選択された少なくとも一種、中でも無水酢酸及び酢酸ビニルが、反応効率の観点から好ましい。セルロースナノファイバーは、修飾化剤によって例えばセルロース繊維原料の段階、解繊処理中、又は解繊処理後に化学修飾されたものであっても良いし、分散体としてのスラリーの調製中又はその後、或いは乾燥工程中又はその後に化学修飾されてもよい。
【0041】
[アシル置換度(DS)]
セルロースナノファイバーが化学修飾(例えばアシル化等の疎水化によって)されている場合、セルロースナノファイバーのゴム中での分散性は良好である傾向がある。一方、例えば分散剤と組合される場合、セルロースナノファイバーが非置換又は低置換度であってもゴム中で良好な分散性を示すことが容易である。セルロースナノファイバーがエステル化セルロースナノファイバーである場合、アシル置換度(DS)は、熱分解開始温度が高いエステル化セルロースナノファイバーを得る点で、好ましくは、0.1以上、又は0.2以上、又は0.25以上、又は0.3以上、又は0.5以上であり、エステル化セルロースナノファイバー中に未修飾のセルロース骨格が残存するため、セルロース由来の高い引張強度及び寸法安定性と化学修飾由来の高い熱分解開始温度を兼ね備えたエステル化セルロースナノファイバーを得ることができる点で、好ましくは、2.0以下、又は1.8以下、又は1.5以下、又は1.2以下、又は1.0以下、又は0.8以下、又は0.7以下、又は0.6以下、又は0.5以下である。
【0042】
化学修飾セルロースナノファイバーの修飾基がアシル基の場合のアシル置換度(DS)は、エステル化セルロースナノファイバーの反射型赤外吸収スペクトルから、アシル基由来のピークとセルロース骨格由来のピークとのピーク強度比に基づいて算出することができる。アシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピークは1730cm-1に出現し、セルロース骨格鎖に基づくC-Oの吸収バンドのピークは1030cm-1に出現する。エステル化セルロースナノファイバーのDSは、後述するエステル化セルロースナノファイバーの固体NMR測定から得られるDSと、セルロース骨格鎖C-Oの吸収バンドのピーク強度に対するアシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピーク強度の比率で定義される修飾化率(IRインデックス1030)との相関グラフを作製し、相関グラフから算出された検量線
置換度DS = 4.13 × IRインデックス(1030)
を使用することで求めることができる。
IRインデックス(1030)= H1730/H1030
式中、H1730及びH1030は1730cm-1、1030cm-1(セルロース骨格鎖C-O伸縮振動の吸収バンド)における吸光度である。ただし、それぞれ1900cm-1と1500cm-1を結ぶ線と800cm-1と1500cm-1を結ぶ線をベースラインとして、このベースラインを吸光度0とした時の吸光度を意味する。
【0043】
固体NMRによるエステル化セルロースナノファイバーのDSの算出方法は、凍結粉砕したエステル化セルロースナノファイバーについて13C固体NMR測定を行い、50ppmから110ppmの範囲に現れるセルロースのピラノース環由来の炭素C-Cに帰属されるシグナルの合計面積強度(Inp)に対する修飾基由来の1つの炭素原子に帰属されるシグナルの面積強度(Inf)より下記式で求めることができる。
DS=(Inf)×6/(Inp)
たとえば、修飾基がアセチル基の場合、-CH3に帰属される23ppmのシグナルを用いれば良い。
用いる13C固体NMR測定の条件は例えば以下の通りである。
装置 :Bruker Biospin Avance500WB
周波数 :125.77MHz
測定方法 :DD/MAS法
待ち時間 :75sec
NMR試料管 :4mmφ
積算回数 :640回(約14Hr)
MAS :14,500Hz
化学シフト基準:グリシン(外部基準:176.03ppm)
【0044】
[熱分解開始温度(TD),1%重量減少時温度(T1%),250℃重量減少率(T250℃)]
セルロースナノファイバーの熱分解開始温度(TD)は、ゴム混練及び硬化時の微細セルロース繊維の熱劣化を回避し、優れた補強性を発揮できるという観点から、一態様において好ましくは、200℃以上、又は210℃以上、220℃以上、又は230℃以上、又は240℃以上、又は250℃以上、又は260℃以上、又は270℃以上、又は275℃以上、又は280℃以上、又は285℃以上である。熱分解開始温度は高いほど好ましいが、セルロースナノファイバーの製造容易性の観点から、例えば、320℃以下、又は310℃以下、又は300℃以下、又は290℃以下、又は280℃以下であってもよい。
【0045】
セルロースナノファイバーの1wt%重量減少時の温度(T1%)は、ゴム混練及び硬化時の熱劣化を回避し、機械強度を発揮できるという観点から、一態様において好ましくは、230℃以上、又は240℃以上、又は250℃以上、又は260℃以上、又は270℃以上、又は275℃以上、又は280℃以上、又は285℃以上、又は290℃以上である。T1%は高いほど好ましいが、セルロースナノファイバーの製造容易性の観点から、例えば、330℃以下、又は320℃以下、又は310℃以下であってもよい。
【0046】
セルロースナノファイバーの250℃重量減少率(T250℃)はゴム混練及び硬化時の熱劣化を回避し、機械強度を発揮できるという観点から、一態様において好ましくは、15%以下、又は12%以下、又は10%以下、又は8%以下、又は6%以下、又は5%以下、又は4%以下、又は3%以下である。T250℃は低いほど好ましいが、セルロースナノファイバーの製造容易性の観点から、例えば、0.1%以上、又は0.5%以上、又は0.7%以上、又は1.0%以上であってもよい。
【0047】
本開示で、TDとは、熱重量(TG)分析における、横軸が温度、縦軸が重量残存率%のグラフから求めた値である。窒素フロー中のセルロースナノファイバーの150℃(水分がほぼ除去された状態)での重量(重量減少量0wt%)を起点としてさらに昇温を続け、1wt%重量減少時の温度(T1%)と2wt%重量減少時の温度(T2%)とを通る直線を得る。この直線と、重量減少量0wt%の起点を通る水平線(ベースライン)とが交わる点の温度をTDと定義する。
【0048】
1%重量減少温度(T1%)は、上記TDの手法で昇温を続けた際の、150℃の重量を起点とした1重量%重量減少時の温度である。具体的な測定方法は、微細セルロース繊維の多孔質シート10mgを窒素フロー100ml/min中で、室温から150℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、150℃で1時間保持した後、150℃から450℃まで昇温速度:10℃/minで昇温する。
【0049】
セルロースナノファイバーの250℃重量減少率(T250℃)は、TG分析において、セルロースナノファイバーを250℃、窒素フロー下で2時間保持した時の重量減少率である。セルロースナノファイバーの多孔質シート10mgを窒素フロー100ml/min中で、室温から150℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、150℃で1時間保持した後、150℃から250℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、そのまま250℃で2時間保持する。250℃に到達した時点での重量W0を起点として、2時間250℃で保持した後の重量をW1とし、下記式より求める。
250℃重量変化率(%):(W1-W0)/W0×100
【0050】
[多孔質シート]
セルロースナノファイバーの各種物性(比表面積、結晶化度、結晶多形、重合度、Mw、Mn、Mw/Mn、アルカリ可溶多糖類平均含有率、酸不溶成分平均含有率、TD、T1%、T250℃等)の測定は測定サンプルの形態によって数値が大きく変動することがある。安定した再現性のある測定をするために、測定サンプルは歪みのない多孔質シートを用いる。多孔質シートの作製方法は以下のとおりである。
【0051】
まず、液体媒体が水である固形分率が10質量%以上のセルロースナノファイバーの濃縮ケーキをtert-ブタノール中に添加し、微細セルロース繊維固形分濃度0.5質量%、総重量100gとなるように調整する。次にミキサー等(例えば、高剪断ホモジナイザー(例えばIKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」、処理条件:回転数15,000rpm×3分間))で凝集物が無い状態まで分散処理を行う。セルロースナノファイバー固形分重量0.5gに対し、濃度が0.5質量%となるように調整する。得られたtert-ブタノール分散液100gをろ紙上で濾過する。濾過物はろ紙から剥離させずに、ろ紙と共により大きなろ紙2枚の間に挟み、かつ、そのより大きなろ紙の縁をおもりで押さえつけながら、150℃のオーブンにて5分間乾燥させる。その後、ろ紙を剥離して歪みの少ない多孔質シートを得る。このシートの透気抵抗度Rがシート目付10g/m2あたり100sec/100ml以下のものを多孔質シートとし、測定サンプルとして使用する。
【0052】
透気抵抗度Rの測定は、23℃、50%RHの環境で1日静置した多孔質シートサンプルの目付W(g/m2)を測定した後、王研式透気抵抗試験機(例えば、旭精工(株)製、型式EG01)を用いて透気抵抗度R(sec/100ml)を測定することで行う。この時、下記式に従い、10g/m2目付あたりの値を算出する。
目付10g/m2あたり透気抵抗度(sec/100ml)=R/W×10
【0053】
ゴム組成物、ゴム複合体等に含まれるセルロースナノファイバーの各種物性(数平均繊維長、数平均繊維径、L/D比、結晶化度、結晶多形、重合度、Mw、Mn、Mw/Mn、アルカリ可溶分含有率、酸不溶成分平均含有率、TD、T1%、T250℃、DS等)は以下の方法で分析する。
ゴム組成物、ゴム複合体等に含まれるに含まれるポリマー成分を溶解できる有機又は無機の溶媒に当該ポリマー成分を溶解させ、セルロースナノファイバーを分離し、前記溶媒で充分に洗浄した後、溶媒をtert-ブタノールに置換する。その後、セルロースナノファイバーtert-ブタノールスラリーを前記手法と同様の測定法を用いて分析し、ゴム組成物、ゴム複合体中のセルロースナノファイバーの各種物性を算出する。
【0054】
一態様において、セルロースナノファイバーは液体媒体を含むスラリーの形態、又は粒子、フィルム、バルク等の乾燥体の形態として供されても良い。液体媒体としては水並びに/又は沸点を有する有機溶媒が挙げられ、1種類又は2種類以上の媒体を含んでいても良い。スラリーの形態は液体媒体含有率が50質量%以上であり、乾燥体中の液体媒体含有率は50質量%未満である。液体媒体含有率は、赤外加熱式水分計(例えばエー・アンド・デー株式会社製、商品名「MX-50」)を用いて180℃で加熱した際に測定される値である。
【0055】
<第1のゴム及び第2のゴム>
一態様において、第1のゴム及び第2のゴムは液状ゴムである。一態様では、38℃において、第1のゴムの粘度η1は第2のゴムの粘度η2よりも小さい。本開示を通じ、液状ゴムとは、23℃において流動性を有しており、且つ架橋(より具体的には加硫)及び/又は鎖延長によってゴム弾性体を形成する物質を意味する。すなわち液状ゴムは一態様において未硬化物である。また流動性を有しているとは、一態様において、シクロヘキサンに溶解させた液状ゴムを23℃にて胴径21mm×全長50mmのバイアル瓶に入れた後乾燥させることによって、液状ゴムを当該バイアル瓶内に高さ1mmまで充填して密閉し、当該バイアル瓶を上下逆にした状態で24時間静置したときに高さ方向に0.1mm以上の物質の移動が確認できることを意味する。液状ゴムは、一般的なゴムの単量体組成を有してよく、取り扱いの容易性、及び良好なセルロースナノファイバーの分散性が得られる観点から、比較的低分子量であることが好ましい。液状ゴムは、一態様において、数平均分子量(Mn)が150,000以下であることによって液体形状を呈する。なお、本開示で、ゴム成分の分子量及び分子量分布は、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラム3本を連結して用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィを使用してクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用して検量線により計算して得られる値である。なお溶媒としてはテトラヒドロフランを使用する。
【0056】
ゴム組成物を硬化させてゴム硬化物とする場合、ゴム硬化物の力学物性を向上させる観点から、液状ゴムは硬化時に加硫されることが望ましい。又は、液状ゴムは熱等により硬化してもよい。
【0057】
液状ゴムの粘度を増減させる要因としては、構成モノマー種、分子量、変性基の有無、変性基の種類等が挙げられる。したがって、これらを調整することで、第1のゴムと第2のゴムとの所望の組合せを得てよい。一態様において、変性液状ゴムは、変性基による他の基との結合又は相互作用に起因して、同様の構成モノマー及び分子量の未変性液状ゴムと比べて高粘度であり得る。一態様において、第1のゴムと第2のゴムとの粘度の違いは、第1のゴムと第2のゴムとの分子量が異なることによって、又は、第1のゴムが未変性液状ゴムであり、第2のゴムが変性液状ゴムであることによって、又はこれらの組合せによって、調整してよい。
【0058】
第2のゴムの数平均分子量/第1のゴムの数平均分子量の比は、1超であってよく、第1及び第2のゴムの併用による効果を良好に得る観点から、好ましくは、1.1以上、又は1.2以上、又は1.3以上である。一方、ゴム組成物、ゴム複合体又はゴム硬化物の機械特性を良好にする観点で、上記比は、好ましくは、10.0以下、又は9.0以下、又は8.0以下である。
【0059】
第1のゴムの数平均分子量は、ゴム組成物、ゴム複合体又はゴム硬化物の機械特性を良好に得る観点から、好ましくは、1,000以上、又は1,500以上、又は2,000以上であり、流動性の観点、及び、硬くなり過ぎず良好なゴム弾性を有するゴム硬化物を得る観点から、好ましくは、150,000以下、又は145,000以下、又は140,000以下である。
【0060】
第2のゴムの数平均分子量は、ゴム組成物、ゴム複合体又はゴム硬化物の機械特性を良好に得る観点から、好ましくは、4,500以上、又は5,000以上、又は5,500以上であり、流動性の観点、及び、硬くなり過ぎず良好なゴム弾性を有するゴム硬化物を得る観点から、好ましくは、150,000以下、又は140,000以下、又は130,000以下である。
【0061】
第1のゴムの38℃での粘度η1は、流動性の観点、及び、硬くなり過ぎず良好なゴム弾性を有するゴム硬化物を得る観点から、好ましくは、100,000mPa・s以下、又は95,000mPa・s以下、又は90,000mPa・s以下であり、ゴム組成物、ゴム複合体又はゴム硬化物の機械特性を良好に得る観点から、好ましくは、5,000mPa・s以上、又は8,000mPa・s以上、又は10,000mPa・s以上である。
【0062】
第2のゴムの38℃での粘度η2は、流動性の観点、及び、硬くなり過ぎず良好なゴム弾性を有するゴム硬化物を得る観点から、好ましくは、800,000mPa・s以下、又は700,000mPa・s以下、又は600,000mPa・s以下であり、ゴム組成物、ゴム複合体又はゴム硬化物の機械特性を良好に得る観点から、好ましくは、100,000mPa・s以上、又は120,000mPa・s以上、又は140,000mPa・s以上である。
【0063】
なお本開示で、粘度は、B型粘度計を用いて、測定される値である。
【0064】
38℃において、第1のゴムの粘度η1に対する第2のゴムの粘度η2の比η2/η1は、第2のゴム同士の間、又は、第2のゴムとセルロースナノファイバーとの間に第1のゴムが入り込み易い点で、一態様において1超であり、好ましくは、1.2以上、又は1.3以上、又は1,4以上であり、第1のゴムと第2のゴムとの良好な親和性を得る観点から、好ましくは、160以下、又は140以下、又は120以下、又は100以下、又は80以下、又は60以下、又は40以下、又は20以下、又は15以下である。
【0065】
液状ゴムは、共役ジエン系重合体若しくは非共役ジエン系重合体又はこれらの水素添加物であってよい。上記の重合体又はその水素添加物はオリゴマーであってもよい。
【0066】
[共役ジエン系重合体]
共役ジエン系重合体は、単独重合体であってよく、又は、2種以上の共役ジエン単量体の共重合体若しくは共役ジエン単量体と他の単量体との共重合体であってよい。共重合体はランダム、ブロックいずれでもよい。
【0067】
共役ジエン単量体としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘプタジエン、及び1,3-ヘキサジエンが挙げられ、これらを1種単独又は2種以上の組合せで用いてよい。
【0068】
一態様において、共役ジエン系重合体は、上記の共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との共重合体である。
芳香族ビニル単量体としては、共役ジエン単量体と共重合可能な単量体であれば特に限定されず、例えば、スチレン、m又はp-メチルスチレン、α-メチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、及びジビニルベンゼンが挙げられ、これらを1種単独又は2種以上の組合せで用いてよい。ゴム組成物の成形加工性、及び成形体の耐衝撃性の観点からは、スチレンが好ましい。
【0069】
ランダム共重合体としては、ブタジエン-イソプレンランダム共重合体、ブタジエン-スチレンランダム共重合体、イソプレン-スチレンランダム共重合体、及びブタジエン-イソプレン-スチレンランダム共重合体が挙げられる。共重合体鎖中の各単量体の組成分布としては、統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、及び組成分布に勾配があるテーパー(勾配)ランダム共重合体が挙げられる。共役ジエン系重合体の結合様式、すなわち1,4-結合、1,2-結合等の組成は、分子間で均一又は異なっていてよい。
【0070】
ブロック共重合体は、2つ以上のブロックからなる共重合体であってよい。例えば、芳香族ビニル単量体のブロックAと、共役ジエン単量体のブロック及び/又は芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体との共重合体のブロックであるブロックBとが、A-B、A-B-A、A-B-A-B等の構造を構成しているブロック共重合体であってよい。なお各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はなく、例えば、ブロックBが芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体との共重合体である場合、ブロックB中の芳香族ビニル単量体は均一又はテーパー状に分布してよい。また、ブロックBに、芳香族ビニル単量体が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数存在してもよい。さらに、ブロックBに、芳香族ビニル単量体含有量が異なるセグメントが複数存在してもよい。共重合体中にブロックA、ブロックBがそれぞれ複数存在する場合、それらの分子量及び組成は同一でも異なってもよい。
【0071】
ブロック共重合体は、結合形式、分子量、芳香族ビニル化合物種、共役ジエン化合物種、1,2-ビニル含量又は1,2-ビニル含量と3,4-ビニル含量との合計量、芳香族ビニル化合物成分含有量、水素添加率等のうち1つ以上が互いに異なる2種以上の混合物でもよい。
【0072】
共役ジエン系重合体における共役ジエン結合単位中のビニル結合量(例えばブタジエンの1,2-又は3,4-結合)は、好ましくは、5モル%以上、又は10モル%以上、又は13モル%以上、又は15モル%以上であり、好ましくは、80モル%以下、又は75モル%以下、又は65モル%以下、又は50モル%以下、又は40モル%以下である。
共役ジエン結合単位中のビニル結合量(例えばブタジエンの1,2-結合量)は、13C-NMR法(定量モード)によって求めることができる。すなわち、13C-NMRにおいて下記に現れるピーク面積を積分すれば、各構造単位のカーボン量に比例する値を得ることができ、結果として各構造単位の質量%に換算することができる。
スチレン 145~147ppm
ビニル 110~116ppm
ジエン(シス) 24~28ppm
ジエン(トランス) 29~33ppm
【0073】
共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との共重合体において、共役ジエン単量体と結合した芳香族ビニル単量体の量(本開示で、芳香族ビニル結合量ともいう。)は、共役ジエン系重合体の総質量に対して、好ましくは、5.0質量%以上70質量%以下、又は10質量%以上50質量%以下であってよい。芳香族ビニル結合量は、フェニル基の紫外線吸光度によって求めることができ、またこれに基づき共役ジエン結合量も求めることができる。
【0074】
共役ジエン系重合体は、部分水添又は完全水添されていてもよい。水素添加物の水素添加率は、加工時の熱劣化抑制の観点から、好ましくは、50%以上、又は80%以上、又は98%以上であり、低温靭性の観点からは、好ましくは、50%以下、又は20%以下、又は0%(すなわち非水添物)である。共役ジエン系重合体の水素添加物としては、上記で例示した共役ジエン系重合体の水素添加物が挙げられ、例えば、ブタジエン単独重合体、イソプレン単独重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体の水素添加物であってよい。
【0075】
[非共役ジエン系重合体]
非共役ジエン系重合体は、単独重合体であってよく、又は、2種以上の非共役ジエン単量体の共重合体若しくは非共役ジエン単量体と他の単量体との共重合体であってよい。共重合体はランダム、ブロックいずれでもよい。非共役ジエン系重合体としては、
エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-ブテン-ジエンゴム、エチレン-αオレフィン共重合体等のオレフィン系重合体、
ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α,β-不飽和ニトリル-アクリル酸エステル-共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
【0076】
エチレン-α-オレフィン共重合体において、エチレン単位と共重合できるモノマーとしては:プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、ノネン-1、デセン-1、ウンデセン-1、ドデセン-1、トリデセン-1、テトラデセン-1、ペンタデセン-1、ヘキサデセン-1、ヘプタデセン-1、オクタデセン-1、ノナデセン-1、エイコセン-1、イソブチレンなどの脂肪族置換ビニルモノマー;スチレン、置換スチレンなどの芳香族系ビニルモノマー;酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、グリシジルアクリル酸エステル、グリシジルメタアクリル酸エステル、ヒドロキシエチルメタアクリル酸エステルなどのエステル系ビニルモノマー;アクリルアミド、アリルアミン、ビニル-p-アミノベンゼン、アクリロニトリルなどの窒素含有ビニルモノマー;ブタジエン、シクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、イソプレンなどのジエン、などを挙げることができる。
【0077】
好ましくはエチレンと炭素数3~20のα-オレフィン1種以上とのコポリマーであり、更に好ましくはエチレンと炭素数3~16のα-オレフィン1種以上とのコポリマーであり、最も好ましくはエチレンと炭素数3~12のα-オレフィン1種以上とのコポリマーである。また、エチレン-α-オレフィン共重合体の数平均分子量は、耐衝撃性発現の観点から、10,000以上であることが好ましく、より好ましくは10,000~100,000であり、より好ましくは10,000~80,000であり、更に好ましくは20,000~60,000である。また、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量:Mw/Mn)は、流動性と耐衝撃性との両立の観点から、3以下が好ましく、さらには1.8~2.7がより好ましい。
【0078】
また、エチレン-α-オレフィン共重合体の好ましいエチレン単位の含有率は、加工時の取り扱い性の観点から、エチレン-α-オレフィン共重合体全量に対し30~95質量%である。
【0079】
これら好ましいエチレン-α-オレフィン共重合体は、例えば、特公平4-12283号公報、特開昭60-35006号公報、特開昭60-35007号公報、特開昭60-35008号公報、特開平5-155930号公報、特開平3-163088号公報、米国特許第5272236号明細書等に記載されている製造方法で製造可能である。
【0080】
液状ゴムは、好ましくは、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、ファルネセンゴム、及びイソプレンゴムからなる群から選択される1種以上である。
【0081】
一態様において、液状ゴムは変性液状ゴムであってよい。変性液状ゴムは、上記で例示した各重合体に対して少なくとも1種の変性基が導入された構造を有してよい。変性基は、エポキシ基、酸無水物基、カルボキシ基、アルデヒド基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトロ基、イソシアナト基、チオ基、メルカプト基等のうち1種又は2種以上であってよい。変性基は、好ましくは、無水マレイン酸基及び無水コハク酸基からなる群から選択される1種以上であり、又は無水マレイン酸基である。変性液状ゴムとしては、エポキシ変性天然ゴム、エポキシ変性ブタジエンゴム、エポキシ変性スチレンブタジエンゴム、エポキシ変性イソプレンゴム、カルボキシ変性天然ゴム、カルボキシ変性ブタジエンゴム、カルボキシ変性スチレンブタジエンゴム、カルボキシ変性イソプレンゴム、酸無水物変性天然ゴム、酸無水物変性ブタジエンゴム、酸無水物変性スチレンブタジエンゴム、酸無水物変性イソプレンゴム等が例示される。
【0082】
変性液状ゴムは、両末端に反応性基(例えば、水酸基、カルボキシ基、イソシアナト基、チオ基、アミノ基及びハロ基からなる群から選択される1種以上)を有してよく、したがって2官能性であってよい。これら反応性基は変性液状ゴムの架橋及び/又は鎖延長に寄与する。
【0083】
変性液状ゴムは、液状ゴムであることによる良好な流動性と、変性基を有することによる官能性とを有することができる。このよう変性液状ゴムは、本開示の第3及び/又は第4のゴムに対するセルロースナノファイバーの分散性を向上させる効果を示すことが期待される。しかし、変性液状ゴムの変性基同士、又は変性液状ゴムの変性基とセルロースナノファイバーの水酸基との間で、過剰な結合若しくは相互作用が局所的に生じ、変性液状ゴム同士、又は変性液状ゴムとセルロースナノファイバーとが密な構造を形成してしまう場合がある。特に、高粘度の変性液状ゴムでは、変性液状ゴム同士が密な構造を形成し易い可能性がある。このような密な構造は、セルロースナノファイバーの分散性又は配向性を低下させ得ることから、少ないことが望ましい。
【0084】
好ましい一態様においては、第1のゴムが未変性液状ゴムであり、第2のゴムが変性液状ゴムである。未変性液状ゴムは、セルロースナノファイバーとの結合又は相互作用を実質的に生じないことができる。未変性液状ゴムは、上記の密な構造を形成しないという利点を有する。一方、変性液状ゴムは、一態様において、セルロースナノファイバーに結合又は相互作用し得る。低粘度である第1のゴムが未変性液状ゴムであり、且つ高粘度である第2のゴムが変性液状ゴムであると、第1のゴムが、第2のゴム同士、又は第2のゴムとセルロースナノファイバーとの間に入り込み易く、第2のゴム及びセルロースナノファイバーが有する官能基が他の官能基と過剰に接近することを抑制できる。これにより、第2のゴムの利点であるセルロースナノファイバーの分散性向上効果が良好に発現するため、セルロースナノファイバーの良好な分散性及び配向性の実現が容易になる。
【0085】
変性液状ゴムにおいて、全単量体単位100モル%に対する変性基の量は、セルロースナノファイバーと変性液状ゴムとの親和性が良好であることによってセルロースナノファイバーの分散性及び配向性が良好である点で、好ましくは、0.1モル%以上、又は0.2モル%以上、又は0.3モル%以上である。一方、変性基量が過多であると、変性液状ゴム同士、又は、変性液状ゴムとセルロースナノファイバーとが、密な構造を形成し、セルロースナノファイバーの分散性及び配向性が低下する傾向がある。ゴム硬化物に所望の機械特性及び表面平滑性を付与するためには、このような密な構造の形成は抑制されることが望ましい。上記観点から、全単量体単位100モル%に対する変性基の量は、好ましくは、5モル%以下、又は3モル%以下である。上記変性基量は、赤外吸収分光、固体NMR(核磁気共鳴)、溶液NMR、又は、予め特定された単量体組成と未変性ゴムに含まれない元素の元素分析による定量とを組み合わせて変性基のモル比を算出する方法によって確認できる。
【0086】
変性液状ゴムの変性基含有量は、セルロースナノファイバーと変性液状ゴムとの親和性が良好であることによってセルロースナノファイバーの分散性及び配向性が良好である点で、好ましくは、0.5質量%以上、又は0.8質量%以上、又は1.0質量%以上であり、上記の密な構造の形成を抑制する観点から、好ましくは、20質量%以下、又は15質量%以下、又は10質量%以下である。この変性基含有量は、一態様においてNMRで確認できる。
【0087】
変性液状ゴムを製造する手段は特に限定されないが、例えば特開2016-172859号公報に記載された方法を用いることができる。
【0088】
一態様において、変性液状ゴムの変性基は、ゴム組成物、ゴム複合体又はゴム硬化物の製造時、特に加熱混合時にセルロースナノファイバー及び/又はゴムと化学結合(イオン結合、水素結合、共有結合等)、より好ましくは共有結合を形成し得る。特に、共有結合は、セルロースナノファイバーによる補強効果を一層高める点で有利であり得る。一態様においては、ゴム組成物又はゴム複合体の製造時に変性液状ゴムとセルロースナノファイバーとの化学結合が形成され、ゴム硬化物製造時(すなわち硬化時)に変性液状ゴムと第3及び/又は第4のゴムとの直接又は他の成分(一態様において加硫剤)を介した化学結合が形成されてよい。
【0089】
ゴム硬化物の機械特性を向上させる観点から、第1及び/又は第2のゴムは、ゴム組成物の硬化時に加硫剤を介してゴム(具体的には第3及び/又は第4のゴム)と化学結合されてよい。
一般的に柔らかいマトリックスゴムに高剛性なセルロースナノファイバーが含まれることで、セルロースナノファイバーの剛性がマトリックスゴムに伝搬し、物性が向上する。ここでセルロースナノファイバーとマトリックスゴムが化学結合することにより、この伝搬が効率的に機能すると推定され、より優れたゴム硬化物物性を発現する。また、セルロースナノファイバーと変性液状ゴムが化学結合した状態で第3及び/又は第4のゴムと混練する際、セルロースナノファイバー表面からグラフトされた変性液状ゴムが第3及び/又は第4のゴムに貫入することでアンカーとして機能し、乾燥により近接したセルロースナノファイバーに効果的にせん断力を与え、分散性が向上し、最終的に優れたゴム硬化物物性を発現すると推定される。
【0090】
一態様において、化学結合の存在は以下の方法で化学結合度として表現できる。一態様として、化学結合度はゴム組成物又はゴム複合体を溶媒(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、THF等)で除去した残渣について13C固体NMRで分析し、上記の残渣のセルロース成分量に対するセルロース以外の成分量の比率を化学結合度とする。
化学結合度 = 残渣のセルロース以外の成分量/残渣のセルロース成分量
【0091】
化学結合度は具体的には以下の様に測定する。バイアル瓶に1gのゴム組成物又はゴム複合体とTHF50mlを入れ、ホモジナイザ処理(IKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」、処理条件:回転数15,000rpm×3分間)を行った後、マグネチックスターラーで攪拌した(200rpm、24hr)。その後、ナイロンメッシュで濾過を行いメッシュ上の残渣にTHF20ml以上を2回掛けて洗浄した後、真空乾燥(80℃、12hr)を実施し、セルロースナノファイバー残渣乾固物を得る。
【0092】
つづいて、セルロースナノファイバー残渣乾固物を13C固体NMR測定し、100~110ppmのピーク面積(P1)、58~100ppmの全ピーク面積(P2)、110ppm~220ppm及び0ppm~58ppmの全ピーク面積(P3)を用いて化学結合度を下記式により算出する。
化学結合度 ={(P2-P1×5)+P3}/(P1×6)
13C固体NMR測定条件]
(1)試料管:ジルコニア製の7mm径
(2)磁場強度:11.75T
(3)観測核:13
(4)観測周波数:125.8MHz
(5)温度:室温
(6)MAS回転数:7kHz
(7)パルスシーケンス:DD/MAS法
(8)パルス幅:5.6マイクロ秒
(9)取り込み時間:0.047秒
(10)待ち時間:1000秒
(11)積算回数:150回
(12)測定装置:Avance500(ブルカージャパン株式会社製)
(13)化学シフト基準:アダマンタン(外部標準29.5ppm)
【0093】
58~110ppmのピークは主にセルロース由来の6つの炭素原子に由来し、100~110ppmのピークはセルロースC1炭素に帰属される。したがって、100~110ppmのピーク面積(P1)の6倍の値がセルロース由来の6つの炭素原子の全ピーク面積となる(P1×6)。一方、58~100ppmは様々な化合物由来のピークが頻出し、重なるため、58~100ppmのセルロースの5つの炭素原子由来のピーク面積は100~110ppmのピーク面積の5倍の値とし(P1×5)、58~100ppmの全ピーク面積(P2)からの差分をセルロース以外の炭素原子由来のピーク面積とする。また、110ppm~220ppm及び0ppm~58ppmのピークも全てセルロース以外の炭素原子に由来するため、この範囲の全ピーク面積(P3)と上述した差分のピーク面積の合計がセルロース以外の全炭素原子に由来するピーク面積((P2-P1×5)+P3)とする。以上より、上述したセルロース由来の6つの炭素原子のピーク面積に対するセルロース以外の全炭素原子に由来するピーク面積の比率を残渣のセルロース成分重量に対するセルロース以外の成分重量の比率と見なし、化学結合度とする。
【0094】
化学結合度は、セルロースナノファイバーによる補強性が化学結合により向上する観点から好ましくは0.01以上、又は0.03以上、又は0.05以上、又は0.1以上、又は0.15以上である。一方、ゴム組成物及び/又はゴム複合体用いてゴム硬化物を作製した際に、ゴム硬化物中のセルロースナノファイバーの分散性が優れる観点から、化学結合度は、好ましくは4.0以下、又は3.6以下、又は3.3以下、又は3.0以下、又は2.5以下である。化学結合度が4.0を超える場合、セルロースナノファイバーに結合する変性液状ゴム同士及び/又は未変性液状ゴム同士の架橋が過度に発生し、不溶化すると推定され、混練等でセルロースナノファイバーがマトリックスのゴム中に分散し難くなる傾向がある。
【0095】
一態様においては、ゴム硬化物は電子顕微鏡又は原子間力顕微鏡(AFM)で分析する。セルロースナノファイバーに結合しているゴムの存在は、セルロースナノファイバー近傍に存在する相として(一態様において、ゴム硬化物における第3及び/又は第4のゴムとは異なる物質の領域として)、一態様においてNMR、赤外吸収スペクトル又はNano-IRを用いた分析で確認される。
【0096】
一態様において、共有結合の存在は以下の方法で確認できる。ゴム組成物又はゴム複合体においては、ゴムを溶媒(例えば、ヘキサン又はシクロヘキサン等)で除去した残渣についてNano-IRを用いた分析で確認される。
【0097】
第1のゴムは、セルロースナノファイバーとの親和性が良好であることによってセルロースナノファイバーの分散性及び配向性が良好である点で、好ましくは、芳香族ビニル単量体単位を含む。
【0098】
第2のゴムは、第3のゴム及び/又は第4のゴムとの混和性、及びセルロースナノファイバーとの親和性の観点から、好ましくは、無水マレイン酸変性液状ポリイソプレンである。
【0099】
ゴム組成物において、第2のゴム100質量部に対する第1のゴムの量は、第1のゴムの利点を良好に得る観点から、好ましくは、5質量部以上、又は10質量部以上、又は15質量部以上であり、第2のゴムの利点を妨げないようにする観点から、好ましくは、500質量部以下、又は300質量部以下、又は280質量部以下、又は260質量部以下である。
【0100】
ゴム組成物において、セルロースナノファイバー100質量部に対する第1のゴムの量は、第1のゴムの利点を良好に得る観点から、好ましくは、1質量部以上、又は5質量部以上、又は10質量部以上であり、成形体の機械特性を良好に維持する観点から、好ましくは、300質量部以下、又は200質量部以下、又は100質量部以下、又は90質量部以下、又は80質量部以下である。
【0101】
ゴム組成物において、セルロースナノファイバー100質量部に対する第2のゴムの量は、第2のゴムの利点を良好に得る観点から、好ましくは、1質量部以上、又は5質量部以上、又は10質量部以上であり、第2のゴム同士、又は第2のゴムとセルロースナノファイバーとの過剰な結合又は相互作用を抑制する観点から、好ましくは、300質量部以下、又は200質量部以下、又は100質量部以下である。
【0102】
ゴム組成物中、第2のゴムの含有率は、第2のゴムの利点を良好に得る観点から、好ましくは、1質量%以上、又は5質量%以上、又は7質量%以上、又は10質量%以上であり、第2のゴム同士、又は第2のゴムとセルロースナノファイバーとの過剰な結合又は相互作用を抑制する観点から、好ましくは、60質量%以下、又は50質量%以下、又は40質量%以下である。
【0103】
ゴム組成物中、第1及び第2のゴムの合計含有率は、セルロースナノファイバーの分散性及び配向性を良好にする観点から、1質量%以上、又は10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上であり、セルロースナノファイバーを所望量存在させて良好な補強効果を得る観点から、好ましくは、90質量%以下、又は80質量%以下、又は70質量%以下である。
【0104】
<分散剤>
一態様において、ゴム組成物は分散剤を含む。一態様において、分散剤は親水性セグメント及び疎水性セグメントを同一分子内に有する(すなわち両親媒性分子である)ことが、ゴム組成物中にセルロースナノファイバーをより均一に分散させる観点で更に好ましい。
【0105】
[両親媒性分子]
両親媒性分子において、親水性セグメントは、親水性構造を含むことによって、セルロースナノファイバーとの良好な親和性を示す部分である。親水性構造としては、具体的には水酸基、チオール基、カルボキシ基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基、ボロン酸基、シラノール基、ソルビタン及びショ糖等の糖類に由来する基、グリセリンに由来する基、-OM、-COOM、-SO3M、-OSO3M、-HMPO4、及び-M2PO4(但し、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。)で表される基、並びに、1~3級アミン及び4級アンモニウム塩等を有する。上記4級アンモニウム塩のカウンターアニオンとしては、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、並びに、硝酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェート、及びテトラフルオロボレート等からなる群から選ばれる1つ以上の親水性基が挙げられる。
【0106】
親水性セグメントとしては、ポリエチレングリコールのセグメント、4級アンモニウム塩構造を含む繰り返し単位が含まれるセグメント、ポリビニルアルコールのセグメント、ポリビニルピロリドンのセグメント、ポリアクリル酸のセグメント、カルボキシビニルポリマーのセグメント、カチオン化グアガムのセグメント、ヒドロキシエチルセルロースのセグメント、メチルセルロースのセグメント、カルボキシメチルセルロースのセグメント、ポリウレタンのソフトセグメント(具体的にはジオールセグメント)等を例示できる。非イオン系のポリオキシエチレン誘導体は特に好ましく、ポリオキシエチレン誘導体のポリオキシエチレン鎖長は、3以上、又は5以上、又は10以上、又は15以上であってよい。鎖長が長いほどセルロースナノファイバーとの親和性が高まるが、樹脂成形体の所望の特性(例えば機械特性)とのバランスの観点から、ポリオキシエチレン鎖長は、60以下、又は50以下、又は40以下、又は30以下、又は20以下であってよい。
【0107】
疎水性セグメントとしては、炭化水素を有するセグメント、フッ化炭素を有するセグメント、炭素数3以上のアルキレンオキシド単位を有するセグメント(例えば、PPGブロック)、ポリマー構造を含むセグメント等を例示できる。
炭化水素を有するセグメントとしては、アルキル型、アルケニル型、アルキルエーテル型、アルケニルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型、アルケニルフェニルエーテル型、ロジンエステル型、ビスフェノールA型、βナフチル型、スチレン化フェニル型、及び硬化ひまし油型等が好ましい。疎水基のアルキル鎖、又はアルケニル鎖の炭素数(アルキルフェニル、又はアルケニルフェニルの場合はフェニル基を除いた炭素数)は、好ましくは、2以上、又は5以上、又は10以上、又は12以上、又は16以上である。
フッ化炭素を有するセグメントとしては、炭素数1~20の直鎖状又は分岐状のアルキル型等が好ましい。
ポリマー構造を含むセグメントとしては、アクリル系ポリマー、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ラクタムの開環重合物を含むアミノ酸ラクタム、ジアミンとジカルボン酸とから構成されるポリマー、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂等が好ましい。
これらの疎水性セグメントは、直鎖状構造又は分岐状構造のいずれであってもよい。また疎水性セグメントは、1本鎖状構造、又は2本以上の鎖状構造でもよく、2本以上の鎖状構造である場合は、複数種類の疎水性基を有していてもよい。
【0108】
両親媒性分子の構造は特に限定されないが、親水性セグメントをA、疎水性セグメントをBとしたときに、AB型ブロック共重合体、ABA型ブロック共重合体、BAB型ブロック共重合体等の線状共重合体、AとBを含む3分岐型共重合体、AとBを含む4分岐型共重合体、AとBを含む星型共重合体、AとBを含む単環状共重合体、AとBを含む多環状共重合体、AとBを含むかご型共重合体、AとBを含むグラフト共重合体等が挙げられる。
分子中に複数存在する場合の親水性セグメントの分子構造は、1種単独又は2種以上の組合せであってよい。同様に、分子中に複数存在する場合の疎水性セグメントの分子構造は、1種単独又は2種以上の組合せであってよい。
【0109】
[界面活性剤]
両親媒性分子としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のいずれも使用可能である。分散剤は、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等であってもよい。
【0110】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ジアルカノールアミド(例:ラウリン酸ジエタノールアミド)、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド(例:ポリオキシエチレンステアリン酸アミド)、ポリオキシアルキレンアリールエーテル(例:ポリオキシエチレンフェニルエーテル)、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル(例:ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル(例:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル)、多価アルコールの脂肪酸エステル(例:ポリエチレングリコールモノ又はジステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールモノ又はジラウリン酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)、グリセリン脂肪酸エステル(例:モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン)、ソルビタン脂肪酸エステル(例:モノラウリル酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
【0111】
アニオン性界面活性剤(乳化剤)は、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等であってよく、例として、カルボン酸塩としては、脂肪族モノカルボン酸、アルキルエーテルカルボン酸塩、スルホン酸塩としては、ジアルキルスルホこはく酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、硫酸エステル塩としては、アルキル硫酸塩、油脂硫酸エステル塩、リン酸エステル塩としては、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩が挙げられる。
【0112】
カチオン性界面活性剤としては、アミン塩、アミドアミン塩、4級アンモニウム塩、及びイミダゾリニウム塩等が挙げられる。具体例としては、特に限定されないが、アルキルアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩、アルキルアミドアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の4級アンモニウム塩型界面活性剤等が挙げられる。
【0113】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミンオキシド類、アラニン類、イミダゾリニウムベタイン類、アミドベタイン類、酢酸ベタイン等が挙げられ、具体的には、長鎖アミンオキシド、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0114】
[親水性高分子]
一態様において、分散剤は、親水性高分子であることが好ましい。一態様において、親水性高分子は、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アンモニウム基、スルホン酸基、リン酸基等から成る群から選択される親水性基を有する高分子である。親水性高分子としては、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、カチオン化グアガム、水溶性ポリウレタン、4級アンモニウム塩構造を含むポリマー、アミド、アミン等からなる群から選択される1種以上を使用することができる。中でも、セルロース誘導体、ポリアルキレングリコールがより好ましく、ポリアルキレングリコールが特に好ましい。
【0115】
ゴム組成物中の分散剤の量は、セルロースナノファイバー100質量部に対して、好ましくは、1質量部以上、又は3質量部以上、又は5質量部以上、又は10質量部以上であり、好ましくは、200質量部以下、又は100質量部以下、又は80質量部以下、又は60質量部以下、又は50質量部以下である。
【0116】
ゴム組成物成分中の分散剤の含有率は、一態様において、0.1質量%以上、又は1質量%以上、又は3質量%以上であってよく、一態様において、50質量%以下、又は40質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0117】
一態様において、ゴム組成物成分中の分散剤/第2のゴム重量比は、セルロースナノファイバーと第2のゴムとの化学結合を形成させるため、好ましくは2.0以下、又は1.0以下、又は0.8以下、又は0.75以下、又は0.7以下であってよい。一方、セルロースナノファイバーの分散性の観点で、一定以上の分散剤の存在が望ましく、上記重量比は、好ましくは0.01以上、又は0.03以上、又は0.05以上であってよい。また、分散剤は親水性官能基である水酸基等を含む、あるいは、混練中に分子切断により水酸基等が新たに形成されることがある。この水酸基等は第2のゴムの無水マレイン酸基と反応し消費され、第2のゴムとセルロースナノファイバーの化学結合度を低下させる場合があることから、上記範囲が好ましい。
【0118】
<第3のゴム>
一態様において、ゴム組成物は、第3のゴムを更に含む。第3のゴムは、天然ゴム、共役ジエン系重合体若しくは非共役ジエン系重合体又はこれらの水素添加物からなる群から選ばれる1種以上であってよい。上記の重合体又はその水素添加物は変性ゴムであってよく、オリゴマーであってもよい。第3のゴムとしては、熱可塑性エラストマーも例示できる。一態様において、第3のゴムは、本実施形態の第1及び第2のゴムではないゴム、より具体的には23℃において流動性を有していない(言い換えると固体の)ゴムである。第1及び/又は第2のゴムと第3のゴムとは、構成モノマー成分種、構成モノマー成分比率及び分子量の1つ以上において互いに異なる(異種である)ことができる。
【0119】
[天然ゴム]
天然ゴムとしては特に限定されないが、例えば、高分子量成分が多く破壊強度に優れる観点から:スモーク乾燥タイプであるRSS(Ribbed Smoked Sheet)3~5号;機械乾燥のTSR(Technically Specified Rubber)として、SIR(Standard Indonesian Rubber)(インドネシア産)、STR(Standard Thai Rubber)(タイ産)、SMR(Standard Malaysian Rubber)(マレーシア産)等;及びエポキシ化天然ゴム等が挙げられる。
【0120】
[共役ジエン系重合体]
共役ジエン系重合体は、単独重合体であってよく、又は、2種以上の共役ジエン単量体の共重合体若しくは共役ジエン単量体と他の単量体との共重合体であってよい。共重合体はランダム、ブロックいずれでもよい。
【0121】
共役ジエン単量体としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘプタジエン、及び1,3-ヘキサジエンが挙げられ、これらを1種単独又は2種以上の組合せで用いてよい。
【0122】
一態様において、共役ジエン系重合体は、上記の共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との共重合体である。
芳香族ビニル単量体としては、共役ジエン単量体と共重合可能な単量体であれば特に限定されず、例えば、スチレン、m又はp-メチルスチレン、α-メチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、及びジビニルベンゼンが挙げられ、これらを1種単独又は2種以上の組合せで用いてよい。ゴム複合体の成形加工性、及び成形体の耐衝撃性の観点からは、スチレンが好ましい。
【0123】
ランダム共重合体としては、ブタジエン-イソプレンランダム共重合体、ブタジエン-スチレンランダム共重合体、イソプレン-スチレンランダム共重合体、及びブタジエン-イソプレン-スチレンランダム共重合体が挙げられる。共重合体鎖中の各単量体の組成分布としては、統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、及び組成分布に勾配があるテーパー(勾配)ランダム共重合体が挙げられる。共役ジエン系重合体の結合様式、すなわち1,4-結合、1,2-結合等の組成は、分子間で均一又は異なっていてよい。
【0124】
ブロック共重合体は、2つ以上のブロックからなる共重合体であってよい。例えば、芳香族ビニル単量体のブロックAと、共役ジエン単量体のブロック及び/又は芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体との共重合体のブロックであるブロックBとが、A-B、A-B-A、A-B-A-B等の構造を構成しているブロック共重合体であってよい。なお各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はなく、例えば、ブロックBが芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体との共重合体である場合、ブロックB中の芳香族ビニル単量体は均一又はテーパー状に分布してよい。また、ブロックBに、芳香族ビニル単量体が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数存在してもよい。さらに、ブロックBに、芳香族ビニル単量体含有量が異なるセグメントが複数存在してもよい。共重合体中にブロックA、ブロックBがそれぞれ複数存在する場合、それらの分子量及び組成は同一でも異なってもよい。
【0125】
ブロック共重合体は、結合形式、分子量、芳香族ビニル化合物種、共役ジエン化合物種、1,2-ビニル含量又は1,2-ビニル含量と3,4-ビニル含量との合計量、芳香族ビニル化合物成分含有量、水素添加率等のうち1つ以上が互いに異なる2種以上の混合物でもよい。
【0126】
共役ジエン系重合体における共役ジエン結合単位中のビニル結合量(例えばブタジエンの1,2-又は3,4-結合)は、好ましくは、5モル%以上、又は10モル%以上、又は13モル%以上、又は15モル%以上であり、好ましくは、80モル%以下、又は75モル%以下、又は65モル%以下、又は50モル%以下、又は40モル%以下である。
共役ジエン結合単位中のビニル結合量(例えばブタジエンの1,2-結合量)は、13C-NMR法(定量モード)によって求めることができる。すなわち、13C-NMRにおいて下記に現れるピーク面積を積分すれば、各構造単位のカーボン量に比例する値を得ることができ、結果として各構造単位の質量%に換算することができる。
スチレン 145~147ppm
ビニル 110~116ppm
ジエン(シス) 24~28ppm
ジエン(トランス) 29~33ppm
【0127】
共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との共重合体において、共役ジエン単量体と結合した芳香族ビニル単量体の量(本開示で、芳香族ビニル結合量ともいう。)は、共役ジエン系重合体の総質量に対して、好ましくは、5.0質量%以上70質量%以下、又は10質量%以上50質量%以下であってよい。芳香族ビニル結合量は、フェニル基の紫外線吸光度によって求めることができ、またこれに基づき共役ジエン結合量も求めることができる。
【0128】
共役ジエン系重合体は、部分水添又は完全水添されていてもよい。水素添加物の水素添加率は、加工時の熱劣化抑制の観点から、好ましくは、50%以上、又は80%以上、又は98%以上であり、低温靭性の観点からは、好ましくは、50%以下、又は20%以下、又は0%(すなわち非水添物)である。共役ジエン系重合体の水素添加物としては、上記で例示した共役ジエン系重合体の水素添加物が挙げられ、例えば、ブタジエン単独重合体、イソプレン単独重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体の水素添加物であってよい。
【0129】
[非共役ジエン系重合体]
非共役ジエン系重合体は、単独重合体であってよく、又は、2種以上の非共役ジエン単量体の共重合体若しくは非共役ジエン単量体と他の単量体との共重合体であってよい。共重合体はランダム、ブロックいずれでもよい。非共役ジエン系重合体としては、
エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-ブテン-ジエンゴム、エチレン-αオレフィン共重合体等のオレフィン系重合体、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α,β-不飽和ニトリル-アクリル酸エステル-共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
【0130】
エチレン-α-オレフィン共重合体において、エチレン単位と共重合できるモノマーとしては:プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、ノネン-1、デセン-1、ウンデセン-1、ドデセン-1、トリデセン-1、テトラデセン-1、ペンタデセン-1、ヘキサデセン-1、ヘプタデセン-1、オクタデセン-1、ノナデセン-1、エイコセン-1、イソブチレンなどの脂肪族置換ビニルモノマー;スチレン、置換スチレンなどの芳香族系ビニルモノマー;酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、グリシジルアクリル酸エステル、グリシジルメタアクリル酸エステル、ヒドロキシエチルメタアクリル酸エステルなどのエステル系ビニルモノマー;アクリルアミド、アリルアミン、ビニル-p-アミノベンゼン、アクリロニトリルなどの窒素含有ビニルモノマー;ブタジエン、シクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、イソプレンなどのジエン、などを挙げることができる。
【0131】
好ましくはエチレンと炭素数3~20のα-オレフィン1種以上とのコポリマーであり、更に好ましくはエチレンと炭素数3~16のα-オレフィン1種以上とのコポリマーであり、最も好ましくはエチレンと炭素数3~12のα-オレフィン1種以上とのコポリマーである。また、エチレン-α-オレフィン共重合体の数平均分子量は、耐衝撃性発現の観点から、10,000以上であることが好ましく、より好ましくは10,000~100,000であり、より好ましくは10,000~80,000であり、更に好ましくは20,000~60,000である。また、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量:Mw/Mn)は、流動性と耐衝撃性との両立の観点から、3以下が好ましく、さらには1.8~2.7がより好ましい。
【0132】
また、エチレン-α-オレフィン共重合体の好ましいエチレン単位の含有率は、加工時の取り扱い性の観点から、エチレン-α-オレフィン共重合体全量に対し30~95質量%である。
【0133】
これら好ましいエチレン-α-オレフィン共重合体は、例えば、特公平4-12283号公報、特開昭60-35006号公報、特開昭60-35007号公報、特開昭60-35008号公報、特開平5-155930号公報、特開平3-163088号公報、米国特許第5272236号明細書等に記載されている製造方法で製造可能である。
【0134】
[変性ゴム]
第3のゴムは、変性ゴムであってもよく、例えば、前述で例示した共役ジエン系重合体又は非共役ジエン系重合体において、エポキシ基、酸無水物基、カルボキシ基、アルデヒド基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトロ基、イソシアネート基、メルカプト基等の変性基が導入されていてもよい。変性ゴムとしては、エポキシ変性天然ゴム、エポキシ変性ブタジエンゴム、エポキシ変性スチレンブタジエンゴム、カルボキシ変性天然ゴム、カルボキシ変性ブタジエンゴム、カルボキシ変性スチレンブタジエンゴム、酸無水物変性天然ゴム、酸無水物変性ブタジエンゴム、酸無水物変性スチレンブタジエンゴム等が例示される。
【0135】
全単量体単位100モル%に対する変性基の量は、セルロースナノファイバーとの親和性の観点から、好ましくは、0.1モル%以上、又は0.2モル%以上、又は0.3モル%以上であり、また好ましくは、5モル%以下、又は3モル%以下である。上記変性基量は、赤外吸収分光、固体NMR(核磁気共鳴)、溶液NMR、又は、予め特定された単量体組成と未変性ゴムに含まれない元素の元素分析による定量とを組み合わせて変性基のモル比を算出する方法によって確認できる。
【0136】
[熱可塑性エラストマー]
一態様において、第3のゴムは、熱可塑性エラストマーを含み又は熱可塑性エラストマーであることができる。本開示で、エラストマーとは、一態様において、室温(23℃)において弾性体である物質(具体的には天然又は合成の重合体物質)である。また、弾性体であるとは、一態様において、動的粘弾性測定で測定される23℃、10Hzでの貯蔵弾性率が1MPa以上100MPa以下であることを意味する。熱可塑性エラストマーは、共役ジエン系重合体又は非共役ジエン系重合体であってよく、一態様において架橋物である。熱可塑性エラストマーの好適な単量体組成は、上記の(共役ジエン系重合体)及び(非共役ジエン系重合体)の項で前述したのと同様であってよい。
【0137】
熱可塑性エラストマーの数平均分子量(Mn)は、衝撃強度と流動性との両立の観点から、好ましくは、10,000~500,000、又は40,000~250,000である。
【0138】
熱可塑性エラストマーは、コアシェル構造を有してもよい。コアシェル構造を有するエラストマーとしては、粒子状のゴムであるコアと、当該コアの外部に形成された、ガラス質のグラフト層であるシェルとを持つコア-シェル型のエラストマーが挙げられる。コアとしては、ブタジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン・アクリル複合系ゴム等が好適である。また、シェルとしては、スチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリル樹脂等のガラス状高分子が、好適である。
【0139】
熱可塑性エラストマーは、第1及び/又は第2のゴムとの相溶性に優れる観点から、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-イソプレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレンの単独重合体(ポリスチレン)から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、及びポリスチレンからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。
【0140】
一態様においては、熱可塑性エラストマーの少なくとも一部が酸性官能基を有してよい。本開示で、熱可塑性エラストマーが酸性官能基を有しているとは、当該エラストマーの分子骨格中に、酸性官能基が化学結合を介して付加していることを意味する。また本開示で、酸性官能基とは、塩基性官能基などと反応可能な官能基を意味し、具体例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホ基、酸無水物基等が挙げられる。
【0141】
エラストマー中の酸性官能基の付加量は、変性液状ゴム等との親和性の観点から、エラストマー100質量%基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%未満である。なお、酸性官能基の数は、あらかじめ酸性物質を混合した検量線用サンプルを赤外吸収スペクトル測定装置により測定し、酸の特性吸収帯を用いて作成しておいた検量線を元に、当該試料を測定することで得られる値である。
【0142】
酸性官能基を有するエラストマーとしては、アクリル酸等を共重合成分として用いて形成した層をシェルとして有するコアシェル構造を有するエラストマー、アクリル酸等をモノマーとして含むエチレン-αオレフィン共重合体、ポリオレフィン、芳香族化合物-共役ジエン共重合体、又は芳香族化合物-共役ジエン共重合体水素添加物に、過酸化物の存在下又は非存在下で、α,β-不飽和ジカルボン酸又はその誘導体をグラフトさせた変性物であるエラストマー等が挙げられる。
【0143】
好ましい態様において、エラストマーは、酸無水物変性されたエラストマーである。
【0144】
これらの中では、ポリオレフィン、芳香族化合物-共役ジエン共重合体、又は芳香族化合物-共役ジエン共重合体水素添加物に、過酸化物の存在下又は非存在下で、α,β-不飽和ジカルボン酸又はその誘導体をグラフトさせた変性物がより好ましく、中でも特にエチレン-α-オレフィンの共重合体、又は芳香族化合物-共役ジエンブロック共重合体水素添加物に、過酸化物の存在下又は非存在下で、α,β-不飽和ジカルボン酸及びその誘導体をグラフトさせた変性物が特に好ましい。
【0145】
α,β-不飽和ジカルボン酸及びその誘導体の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、及び無水フマル酸が挙げられ、これらの中で無水マレイン酸が特に好ましい。
【0146】
一態様において、エラストマーは、酸性官能基を有するエラストマーと酸性官能基を有さないエラストマーとの混合物であってよい。酸性官能基を有するエラストマーと酸性官能基を有さないエラストマーとの混合割合は、両者の合計を100質量%としたとき、酸性官能基を有するエラストマーが、ゴム硬化物の高靭性及び物性安定性を良好に維持する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらにより好ましくは30質量%以上、最も好ましくは40質量%以上である。上限は特に限定されず、実質的にすべてのエラストマーが酸性官能基を有するエラストマーであってもよいが、流動性に課題を生じさせない観点から、80質量%以下が望ましい。
【0147】
第3のゴムは、機械強度に優れるゴム硬化物を与える観点から、好ましくは、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、及びイソプレンゴムからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくは、天然ゴムである。
【0148】
ゴム組成物成分において、セルロースナノファイバーと、第1及び第2のゴムとの合計量と、第3のゴムとの質量比率[(セルロースナノファイバーと第1及び第2のゴムとの合計)/第3のゴム]は、一態様において、1/99~99/1、又は5/95~95/5、又は10/90~90/10、又は20/80~80/20、又は30/70~70/30であってよい。
【0149】
例えば、セルロースナノファイバーと第1及び第2のゴムとを含む予備組成物がゴム組成物の製造に供される場合、ゴム組成物成分における、予備組成物と第3のゴムとの質量比率(予備組成物/第3のゴム)は、一態様において、1/99~99/1、又は5/95~95/5、又は10/90~90/10、又は20/80~80/20、又は30/70~70/30であってよい。
【0150】
ゴム組成物成分中、第3のゴムの含有率は、好ましくは、10質量%以上、又は20質量%以上であり、好ましくは、90質量%以下、又は85質量%以下、又は80質量%以下である。
【0151】
ゴム組成物成分中、第1、第2及び第3のゴムの合計含有率は、好ましくは、40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上であり、好ましくは、99質量%以下、又は95質量%以下、又は90質量%以下である。
【0152】
ゴム組成物成分中、第1、第2及び第3のゴムの合計100質量部に対する、第1及び第2のゴムの合計含有量は、好ましくは、5質量部以上、又は10質量部以上、又は15質量部以上であり、好ましくは、70質量部以下、又は65質量部以下、又は60質量部以下である。
【0153】
ゴム組成物成分中のセルロースナノファイバーの量は、第1、第2及び第3のゴムの合計100質量部に対して、好ましくは、1質量部以上、又は2質量部以上、又は3質量部以上であり、好ましくは、70質量部以下、又は65質量部以下、又は60質量部以下である。
【0154】
ゴム組成物成分中の[セルロースナノファイバー]/[第1、第2及び第3のゴムの合計]の質量比率は、好ましくは、1/99~60/40、又は2/98~50/50、又は3/97~40/60である。
【0155】
[加硫剤、加硫促進剤]
ゴム組成物成分が未硬化ゴムを含む場合、ゴム組成物成分は、典型的には加硫剤を含み、任意に加硫促進剤を含んでよい。加硫剤及び加硫促進剤としては、従来公知のものをゴム組成物成分中の未硬化ゴムの種類に応じて適宜選択してよい。加硫剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物等を使用できる。硫黄化合物としては、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が挙げられる。
【0156】
ゴム組成物成分中の加硫剤の量は、ゴム組成物成分中の未硬化ゴム100質量部に対して、好ましくは、0.01質量部~20質量部、又は0.1質量部~15質量部である。
【0157】
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系等の加硫促進剤が挙げられる。なお加硫助剤として亜鉛華、ステアリン酸等を使用してもよい。加硫促進剤の量は、ゴム組成物成分中の未硬化ゴム100質量部に対して、好ましくは、0.01質量部~20質量部、又は0.1質量部~15質量部である。
【0158】
[ゴム用添加剤]
ゴム組成物成分は、従来公知の各種ゴム用添加剤(安定剤、軟化剤、老化防止剤等)を含んでもよい。ゴム用安定剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、2-メチル-4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤を1種又は2種以上用いてよい。また、ゴム用軟化剤としては、プロセスオイル、エクステンダーオイル等を1種又は2種以上用いてよい。但し、本実施形態のゴム組成物は、一態様において柔軟な成形体を形成可能であり、したがってゴム組成物成分は一態様においてゴム用軟化剤を含まないことができる。
【0159】
なお、加硫剤、加硫促進剤、及びゴム用添加剤は、典型的には、ゴム複合体の製造時に添加されるが、添加の態様はこれに限定されない。
【0160】
<ゴム組成物成分の追加の成分>
ゴム組成物成分は、追加の成分を更に含んでもよい。追加の成分としては、追加のポリマー、有機又は無機のフィラー、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤等が挙げられる。任意の追加の成分のゴム組成物成分中の含有割合は、本発明の所望の効果が損なわれない範囲で適宜選択されるが、例えば0.01~50質量%、又は0.1~30質量%であってよい。
【0161】
<ゴム組成物の製造>
ゴム組成物は、セルロースナノファイバー、第1のゴム、及び第2のゴムを含むゴム組成物成分を混合する方法で製造できる。ゴム組成物の製造方法としては、
(1)セルロースナノファイバーと、低粘度液状ゴムである第1のゴムとを混合して予備組成物を得る第1の工程、及び
当該予備組成物と、高粘度液状ゴムである第2のゴムとを混合してゴム組成物を得る第2の工程、を含む方法、
(2)低粘度液状ゴムである第1のゴムと、高粘度液状ゴムである第2のゴムとを混合して予備組成物を得る第1の工程、及び、
当該予備組成物と、セルロースナノファイバーとを混合してゴム組成物を得る第2の工程、を含む方法、
(3)セルロースナノファイバーと、低粘度液状ゴムである第1のゴムとを混合して得た予備組成物を乾燥し、セルロースナノファイバー乾燥体を得る第1の工程、及び
当該セルロースナノファイバー乾燥体と、高粘度液状ゴムである第2のゴムとを混合してゴム組成物を得る第2の工程、を含む、方法、
(4)セルロースナノファイバーと、低粘度液状ゴムである第1のゴムと、高粘度液状ゴムである第2のゴムとを混合してゴム組成物を得る工程、を含む方法、
等が挙げられる。
【0162】
混合条件は特に限定されないが、例えば、ゴム組成物を構成する成分を、自転・公転式ミキサー、プラネタリミキサー、攪拌混合機、攪拌造粒機、プロペラ式攪拌装置、ロータリー攪拌装置、電磁攪拌装置、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混合手段より選択される少なくとも1種以上を用いて混合して、ゴム組成物を得てよい。また、剪断を効率的に行うために加熱下で撹拌してもよい。
【0163】
上記(1)の方法では、第1のゴムを予めセルロースナノファイバーと組合せることで、セルロースナノファイバーと第2のゴムとの接触機会がより適度且つ均一になるため、ゴム組成物、ゴム複合体又はゴム硬化物の物性向上がより良好であり得る。
ゴム組成物を得た後これを乾燥させてもよく、乾燥条件を制御することで粉体を形成してもよい。また、上記(1)の方法においては、予備組成物を得た後、高粘度液状ゴムとの混合前に予備組成物を乾燥させ乾燥体(後述のCNF-第1のゴム乾燥体)を製造後、高粘度液状ゴムを混合してもよい。
【0164】
一態様においては、本開示のゴム組成物の乾燥体(一態様において、粉体)が提供される。一態様においては、本開示のゴム組成物を含む乾燥体(一態様において、粉体)が提供される。
【0165】
一態様において、上記方法で製造されたゴム組成物は破砕工程を含んでも良い。混合機から排出されたゴム組成物が粗大粒子状又は塊状である場合、ゴム複合体及びゴム硬化物を製造する際のセルロースナノファイバーの分散性及び作業性に悪影響を与えることがあり、破砕工程により微細化しても良い。破砕工程には、粗粉砕機、中間粉砕機、微粉砕機等を使用できる。粗粉砕機としては、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コ-ンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としてはボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル等が挙げられる。また、必要に応じて分級機を利用しても良い。
【0166】
ゴム組成物が第3のゴムを含む場合、一態様においては、上記(1)又は(2)の方法の第2の工程において第3のゴムを更に混合してよい。この際の混合条件は特に限定されないが、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロールなどの一般的なゴム混練で使用される混練機を使用することができる。混練機のロータは噛合式ロータ、接線式ロータを使用することができ、樹脂混練用として設計されたロータを使用することもできる。噛合式ロータとしては、株式会社神戸製鋼所製KIR-II、三菱重工業株式会社製EX7型等が挙げられる。接線式ロータとしては、株式会社神戸製鋼所製5THR、4WN、4WH、三菱重工業株式会社製E型等が挙げられる。樹脂混練用ロータとしては、東洋精機製作所製ローラー形R500B等が挙げられる。
【0167】
また、上記(1)~(3)の方法で、第2の工程の後(ゴム組成物を一旦調製した後)、当該ゴム組成物と第3のゴムとを混合して、第3のゴムを更に含むゴム組成物を得てもよい。この際の混合条件は、ゴム組成物が第3のゴムを含む場合について前述したのと同様であってよい。
【0168】
特に、上記(1)の方法の第2の工程において、更に第3のゴムをゴム混練機で混練する場合、セルロースナノファイバーの分散が特に促進され得る。すなわち、このような第2の工程においては、第3のゴムの存在によって混練物の粘度を増大させることができるため、混練物に掛かる剪断力を増大させることができる。また、ゴム混練機によれば、高粘度のゴムを使用しても分配が良好に進行する。したがって、第2のゴムとセルロースナノファイバーとが適度な速度でかつ十分に接触するため、セルロースナノファイバーの分散が促進され得る。
以上例示したゴム組成物は、いずれも、例えばマスターバッチとして好適に利用でき、種々のゴム複合体の製造に適用され得る。
【0169】
上述したセルロースナノファイバーと第1のゴム及び/又は第2のゴムとを混合する方法として、一態様において、セルロースナノファイバーはセルロースナノファイバー乾燥体(本開示で、CNF乾燥体ともいう。)の形態として添加しても良い。一態様において、セルロースナノファイバーをスラリー又はケーキの形態で第1のゴム及び/又は第2のゴムと混合し、含まれる液体媒体を乾燥し除去し、セルロースナノファイバーを含む予備組成物又はゴム組成物を得ても良い。
【0170】
<乾燥工程>
一態様において、セルロースナノファイバーを含む乾燥体(セルロースナノファイバー乾燥体、セルロースナノファイバーを含む予備組成物又はゴム組成物であってよい。)はセルロースナノファイバースラリー又はケーキを乾燥させることによって製造できる。セルロースナノファイバーを含む乾燥体は、例えば、セルロースナノファイバーと第1のゴムとを含む乾燥体(本開示で、「CNF-第1のゴム乾燥体」ともいう。)(当該乾燥体は、一態様において第2~第4のゴムを含まない。)、セルロースナノファイバー、第1のゴム及び第2のゴムを含む乾燥体(本開示で、「CNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体」ともいう。)(当該乾燥体は、一態様において第3及び第4のゴムを含まない。)、又は、セルロースナノファイバー、第1のゴム、第2のゴム及び第3のゴムを含む乾燥体(本開示で、「CNF-第1のゴム-第2のゴム-第3のゴム乾燥体」ともいう。)(当該乾燥体は、一態様において第4のゴムを含まない。)であってよい。
乾燥機としては、特に限定はされないが、ニーダー、プラネタリミキサー、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、パドルドライヤー、プロペラミキサー、リボンミキサー、単軸又は二軸のスクリュー押出機、バンバリーミキサー、凍結乾燥機、棚乾燥機、スプレー噴霧乾燥機、気流式乾燥機、流動層乾燥機、ドラムドライヤー等が挙げられる。前記乾燥機は単独又は少なくとも2種以上を併用しても良い。一態様において、セルロースナノファイバーと第1のゴム及び/又は第2のゴムとを混合した後、乾燥する際に、混合操作と乾燥操作とを前記乾燥機単独で実施してもよく、それぞれの操作を混練機と前記乾燥機で実施してもよい。
混練機としては特に限定されないが、例えば、自転・公転式ミキサー、プラネタリミキサー、攪拌混合機、攪拌造粒機、プロペラ式攪拌装置、ロータリー攪拌装置、電磁攪拌装置、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混合手段より選択される少なくとも1種以上の撹拌手段が挙げられる。また、混合を効率的に行うために加熱下で撹拌してもよい。
【0171】
乾燥温度は、乾燥効率、ゴム組成物及びゴム硬化物中のセルロースナノファイバーの分散性に優れる粉体特性のセルロースナノファイバーを含む乾燥体を形成する観点から、例えば20℃以上、又は30℃以上、又は40℃以上、又は50℃以上であってよく、セルロースナノファイバー及び追加の成分の熱劣化を生じ難くする観点、及びスラリーの急速乾燥によるセルロースナノファイバーを含む乾燥体の過度な微粉化を回避する観点から、例えば600℃以下、又は400℃以下、又は300℃以下、又は200℃以下、又は180℃以下、又は160℃以下、又は140℃以下、又は120℃以下、又は100℃以下であってよい。
乾燥温度は、スラリーに接触する熱源の温度であり、例えば、乾燥装置の温調ジャケットの表面温度、加熱シリンダーの表面温度、又は熱風の温度で定義される。
【0172】
圧力は、大気圧、又は減圧どちらでも良いが、乾燥効率、ゴム組成物及びゴム硬化物中のセルロースナノファイバーの分散性に優れる粉体特性のセルロースナノファイバーを含む乾燥体を形成する観点から、-1kPa以下、又は-10kPa以下、又は-20kPa以下、又は-30kPa以下、又は-40kPa以下、又は-50kPa以下であってよく、スラリーの急速乾燥によるセルロースナノファイバーを含む乾燥体の過度な微粉化を回避する観点から、-100kPa以上、又は-95kPa以上、又は-90kPa以上であってよい。
大気圧乾燥は、空気雰囲気、又は不活性雰囲気であってよく、経済性の観点から空気雰囲気が好ましい。一態様において、セルロースナノファイバーを含む乾燥体の酸化劣化防止の観点から、好ましくは不活性雰囲気、より好ましくは窒素雰囲気である。
【0173】
乾燥工程に供するセルロースナノファイバースラリー中のセルロースナノファイバーの濃度は、乾燥時のプロセス効率の観点から、好ましくは、1質量%以上、又は2質量%以上、又は3質量%以上、又は5質量%以上、又は10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上であり、添加剤の均一混合の観点、スラリーの粘度の過度な増大、及び凝集による固化を回避して良好な取扱い性を保持する観点から、好ましくは、50質量%以下、又は45質量%以下、又は40質量%以下、又は35質量%以下である。例えば、セルロースナノファイバーの製造は希薄な分散液中で行われることが多いが、このような希薄分散液を濃縮することで、スラリー中のセルロースナノファイバー濃度を前記好ましい範囲に調整してもよい。濃縮には、吸引ろ過、加圧ろ過、遠心脱液、加熱等の方法を用いることができる。なお、セルロースナノファイバースラリーのセルロースナノファイバー濃度が10質量%以上の場合は、セルロースナノファイバーケーキとも言う。
【0174】
一態様において、セルロースナノファイバーを含む乾燥体には第1のゴム及び/又は第2のゴム、任意の追加の成分(例えば、上述した分散剤)が含まれていても良く、セルロースナノファイバースラリーの乾燥前、乾燥中、及び/又は乾燥後に添加してよい。
一態様において、セルロースナノファイバーを含む乾燥体はセルロースナノファイバーと分散剤とを含む乾燥体(本開示で、「CNF-分散剤乾燥体」ともいう。)(当該乾燥体は、一態様において第1~第4のゴムを含まない。)であってよい。
一態様において、第1のゴム及び/又は第2のゴム、並びに/或いは任意の追加の成分が、水及び/又は有機溶媒に分散、又は溶解した状態で添加されても良い。有機溶媒としては特に限定されるものではないが、第1のゴム及び第2のゴムが溶解する溶媒が好ましく、クロロホルム、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等の非水溶性溶媒が挙げられる。
【0175】
より具体的な工程順の例としては、以下を例示できる。
(i)セルロースナノファイバー及び任意に分散剤を含むスラリーを調製→乾燥して乾燥体(CNF乾燥体)を調製→当該乾燥体及び第1のゴムを含む予備組成物(CNF-第1のゴム乾燥体)を調製→当該予備組成物及び第2のゴムを含むゴム組成物(CNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体)を調製
(ii)セルロースナノファイバー及び任意に分散剤を含むスラリーを調製→乾燥して乾燥体(CNF乾燥体)を調製→当該乾燥体、第1のゴム、及び第2のゴムを含むゴム組成物(CNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体)を調製
(iii)セルロースナノファイバー、第1のゴム、及び任意に分散剤を含むスラリーを調製→乾燥して乾燥体(CNF-第1のゴム乾燥体)を調製→当該乾燥体及び第2のゴムを含むゴム組成物(CNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体)を調製
(iv)セルロースナノファイバー、第1のゴム、第2のゴム、及び任意に分散剤を含むスラリーを調製→乾燥して、ゴム組成物(CNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体)を調製
【0176】
[液体媒体含有率]
セルロースナノファイバーを含む乾燥体の液体媒体含有率は、第3のゴム(セルロースナノファイバーを含む乾燥体が第3のゴムを含まない場合)及び/又は第4のゴムと混練される場合の混練時の作業性及び液体を気化させる為の時間及びエネルギー低減の観点で好ましくは、90質量%以下、又は80質量%以下、又は70質量%以下、又は60質量%以下、又は50質量%以下、又は40質量%以下、又は30質量%以下、又は20質量%以下、又は10質量%以下であってよい。液体媒体含有率は、0質量%であってよいが、セルロースナノファイバーを含む乾燥体の製造容易性及び液体の存在によるゴム組成物及び/又はゴム硬化物への分散性向上の観点から、例えば、0.1質量%以上、又は1質量%以上、又は1.5質量%以上であってよい。液体媒体含有率は、赤外加熱式水分計を用いて加熱温度120℃で測定される値である。
前記液体媒体としては、水並びに/又は他の媒体(例えば、有機溶媒、無機酸、塩基及び/若しくはイオン液体)が挙げられ、1種類又は2種類以上の媒体を含んでいても良いが、好ましくは水である。
【0177】
[平均粒径]
一態様において、セルロースナノファイバーを含む乾燥体の平均粒径は、製造容易性の観点から好ましくは、1μm以上、又は10μm以上、50μm以上、又は100μm以上、又は200μm以上、又は500μm以上であり、セルロースナノファイバーを含む乾燥体がゴム組成物及び/又はゴム硬化物中で容易に崩壊してセルロースナノファイバーが良好に分散できる点で好ましくは、10000μm以下、又は5000μm以下、又は4000μm以下、又は3000μm以下、又は2000μm以下である。上記平均粒径は、動的画像解析式粒径分布測定装置(Microtrac社製 CAMSIZER X2)で測定される値である。
【0178】
[ゆるめ嵩密度]
一態様において、セルロースナノファイバーを含む乾燥体のゆるめ嵩密度は、セルロースナノファイバーを含む乾燥体の流動性が良好でフィード性に優れる点、分散剤のゴム組成物及び/又はゴム硬化物への移行抑制の観点から、好ましくは、0.01g/cm3以上、又は0.05g/cm3以上、又は0.10g/cm3以上、又は0.15g/cm3以上、又は0.20g/cm3以上、又は0.25g/cm3以上、又は0.30g/cm3以上、又は0.35g/cm3以上、又は0.40g/cm3以上、又は0.45g/cm3以上、又は0.50g/cm3以上であり、セルロースナノファイバーを含む乾燥体がゴム組成物及び/又はゴム硬化物中で容易に崩壊してセルロースナノファイバーが良好に分散できる点、及び、セルロースナノファイバーを含む乾燥体が重質過ぎずセルロースナノファイバーを含む乾燥体とゴム組成物及び/又はゴム硬化物との混合不良を回避できる点で、好ましくは、0.85g/cm3以下、又は0.80g/cm3以下、又は0.75g/cm3以下である。
【0179】
[かため嵩密度]
一態様において、セルロースナノファイバーを含む乾燥体のかため嵩密度は、ゆるめ嵩蜜度及び圧縮度を本開示の範囲に制御するのに有用である点、微細セルロース繊維乾燥体がゴム組成物及びゴム硬化物中で容易に崩壊して微細セルロース繊維が良好に分散できる点から制御され、一態様において、好ましくは、0.01g/cm3以上、又は0.1g/cm3以上、又は0.15g/cm3以上、又は0.2g/cm3以上、又は0.3g/cm3以上、又は0.4g/cm3以上、又は0.5g/cm3以上、又は0.6g/cm3以上であり、好ましくは、0.95g/cm3以下、又は0.9g/cm3以下、又は0.85g/cm3以下、又は0.80g/cm3以下、又は0.70g/cm3以下である。
【0180】
[圧縮度]
圧縮度は、圧縮度=(かため嵩密度-ゆるめ嵩密度)/かため嵩密度、で算出される値である。ゆるめ嵩密度及びかため嵩密度は、本開示の[実施例]の項に記載した方法で測定される値である。
一態様において、圧縮度は嵩減りの程度を表す。一態様において、セルロースナノファイバーを含む乾燥体の圧縮度は、セルロースナノファイバーを含む乾燥体の流動性が高過ぎない点で、好ましくは、1%以上、又は5%以上、又は10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上である。また、セルロースナノファイバーを含む乾燥体の流動性が良好でフィード性に優れる点、及び取扱い性に優れる(具体的には、飛散、浮遊、又は粉塵形成が生じ難い)点、ゴム組成物及び/又はゴム硬化物中にセルロースナノファイバーを含む乾燥体を良好に分散させる点、分散剤のゴムへの移行抑制の点で、圧縮度は、好ましくは、50%以下、又は45%以下、又は40%以下、又は35%以下、又は30%以下である。
【0181】
上記、ゆるめ嵩密度、かため嵩密度、及び圧縮度はホソカワミクロン株式会社製パウダーテスター(型番:PT-X)を用いて測定される。かため嵩密度測定のタッピング回数は180回で行う。なお、カップに粉体を詰める際に篩での篩過は行わず、カップ上面と漏斗の足の端部との距離を10-20cm離した状態で粉を漏斗から落下させる。
【0182】
[破砕物メジアン径]
一態様において、セルロースナノファイバーを含む乾燥体の破砕物のメジアン径(50%径D50、破砕物メジアン径とも言う)が好ましくは8.0mm以下、又は7.0mm以下、又は6.0mm以下である。ゴム組成物を第3及び/又は第4のゴムと混練する際にゴム組成物が粒子状で小さいことにより全体に容易に分配しやすくなり、製造ムラを小さくすることができる点で優れる。一方、メジアン径の下限は、製造容易性、及び粉塵爆発性低減のため、好ましくは10μm以上、又は50μm以上、又は100μm以上である。破砕物メジアン径とは、プラネタリミキサーによる破砕工程を経たセルロースナノファイバーを含む乾燥体の破砕物の粒径である。一態様において、セルロースナノファイバーを含む乾燥体は、粒子状であるが液状ゴムを含むため粘着質な固体であり、手で砕ける程度の緩い塊となっている場合がある。そこで、破砕工程を経て破砕されたセルロースナノファイバーを含む乾燥体が上述の範囲にあることが好ましい。
【0183】
プラネタリミキサーでの破砕は、ハイビスミックス(登録商標)2P-1型(プライミクス株式会社)でセルロースナノファイバーを含む乾燥体200gを50rpm、25℃の条件で15分間攪拌して実施する。つづいて、この破砕物の粒度分布は、まずミニふるい振とう機(アズワン製、MVS-1N)に下段よりステンレスふるい(75φ×20mm、平織)の目開き(1)2.00mm、(2)3.35mm、(3)4.75mm、(4)6.7mm、(5)9.5mmの順で組立て評価を行う。破砕されたセルロースナノファイバーを含む乾燥体約15gを目開き9.5mmの篩上に入れ、振動スピードを最速にして3分間振動させる。その後、各篩の重量を測定し単独重量の差分より各篩での篩下積算分布を算出する。この篩下積算分布より破砕物メジアン径(50%径D50)を算出する。
なお、破砕されたセルロースナノファイバーを含む乾燥体のうち、目開き2.00mmを通過する粉体の重量が分級に投入した全粉体の40質量%を超えるものについては動的画像解析式粒径分布測定装置(Microtrac社製 CAMSIZER X2)で測定し、積算分布での50%径D50を破砕物メジアン径に採用する。
【0184】
[破砕物ゆるめ嵩密度]
一態様において、破砕されたセルロースナノファイバーを含む乾燥体のゆるめ嵩密度は、第3及び/又は第4のゴムと混練する際の装置へのフィード性に優れる点から、好ましくは、0.01g/cm以上、又は0.05g/cm以上、又は0.1g/cm以上、又は0.15g/cm以上、又は0.20g/cm以上、第3及び/又は第4のゴムと混練する際に容易に崩壊し、かつ、かさ高くなることでセルロースナノファイバーが良好に分散できる点で、好ましくは0.80g/cm以下、又は0.7g/cm以下、又は0.6g/cm以下、又は0.55g/cm以下、又は0.5g/cm以下である。低嵩密度の乾燥体は粒子が異方的で毛羽立っている場合がある。このような粉体は混練時の剪断力が効果的に乾燥体に印加され、セルロースナノファイバーの分散性が向上する。
破砕されたセルロースナノファイバーを含む乾燥体のゆるめ嵩密度とは、プラネタリミキサーによる破砕工程を経たセルロースナノファイバーを含む乾燥体のゆるめ嵩密度である。一態様において、破砕されたセルロースナノファイバーを含む乾燥体は、粒子状であるが液状ゴムを含むため粘着質な固体であり、手で砕ける程度の緩い塊となっている場合がある。そこで、破砕工程を経て破砕されたセルロースナノファイバーを含む乾燥体のゆるめ嵩密度が上述の範囲にあることが好ましい。ゆるめ嵩密度は、前述の方法で得られた破砕物をJIS K 7365(プラスチック-規定漏斗から注ぐことができる材料の見掛け密度の求め方)に従い測定する。
【0185】
≪ゴム複合体、ゴム硬化物及び成形体≫
本開示の一態様は、本実施形態のゴム組成物と第4のゴム(ベースゴム)との混練物であるゴム複合体、及び当該ゴム複合体の硬化物であるゴム硬化物を提供する。ゴム組成物と第4のゴムとの混合条件は特段限定されず、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロールなどの一般的なゴム混練で使用される混練機を使用することができる。
【0186】
<第4のゴム>
第4のゴムの具体的態様は、第3のゴムと同様であってよい。第3及び第4のゴムの合計100質量部に対する、セルロースナノファイバー、第1及び第2のゴムの合計含有量は、好ましくは、1質量部以上、又は3質量部以上、又は5質量部以上であり、好ましくは、50質量部以下、又は45質量部以下、又は40質量部以下である。一態様において、第4のゴムは、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、及びブタジエンゴムからなる群から選択される1種以上であってよく、例えば、天然ゴムであってよい。ゴム組成物が第3のゴムを含む場合、第3のゴムと第4のゴムの構成モノマーの一部又は全部が同じであることが好ましい。
【0187】
一態様においては、JIS K6299に準拠した加硫プレスによりゴム硬化物を得ることができる。ゴム複合体を単独で又は他の成分とともに所望の形状に成形することで、所望の成形体を製造してよい。配合成分の組合せ方法及び成形方法は特に限定されず、所望の成形体に応じて選択してよい。成形方法としては、これらに限定されないが、
(1)第3及び/又は第4のゴムが未硬化ゴムを含み、ゴム複合体を単独で、又は追加成分とともに成形する際の成形前、成形中及び/又は成形後に当該未硬化ゴムを硬化させることによって、ゴム硬化物を含む成形体を得る方法、
(2)第3及び/又は第4のゴムが未硬化ゴムを含み、ゴム複合体中の未硬化ゴムを硬化させてなるゴム硬化物を形成した後、これを追加成分とともに成形して、成形体を得る方法、
(3)第3及び第4のゴムが熱可塑性エラストマーであり、当該ゴム複合体を単独で又は追加成分とともに溶融成形して成形体を得る方法、
等が挙げられる。成形は、射出成形、押出成形、押出異形成形、中空成形、圧縮成形等により行ってよい。
【0188】
<ゴム硬化物の物性>
ゴム硬化物の100%伸び時引張応力(モジュラス)(M100)は、一態様において、2.0MPa以上、又は3.0MPa以上、又は4.0MPa以上であってよく、一態様において、10.0MPa以下、又は9.0MPa以下、又は8.0MPa以下であってよい。
【0189】
ゴム硬化物の300%伸び時引張応力(M300)は、一態様において、3.0MPa以上、又は5.0MPa以上、又は6.0MPa以上であってよく、一態様において、20.0MPa以下、又は15.0MPa以下、又は13.0MPa以下であってよい。
【0190】
ゴム硬化物の100%伸び時引張応力(M100)に対する300%伸び時引張応力(M300)の比(M300/M100)は、一態様において、1.3以上、又は1.4以上、又は1.5以上であってよく、一態様において、2.0以下、又は1.8以下であってよい。
【0191】
ゴム硬化物の貯蔵弾性率は、一態様において、2.0MPa以上、又は2.5MPa以上であってよく、一態様において、4.0MPa以下、又は3.5MPa以下、又は3.0MPa以下であってよい。
【0192】
ゴム硬化物の損失正接が所定以下であることは、例えばタイヤ用途における燃費性能、低発熱等の観点で有利である。この観点から、損失正接は、一態様において、0.18以下、又は0.15以下、又は0.10以下であってよい。一方、ゴム硬化物の損失正接が所定以上であることは、例えば防振ゴム用途における防振性能の観点で有利である。この観点から、損失正接は、一態様において、0.02以上、又は0.03以上、又は0.04以上であってよい。上記貯蔵弾性率及び損失正接は、レオメータを用い、ねじり方式で50℃、10Hzにて測定される値である。
【0193】
ゴム硬化物は各種形状の成形体を形成してよい。成形体は、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両・船舶・航空宇宙関連部品、電子・電気部品、建築・土木材料、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材、容器・包装部材等の広範な用途で使用可能である。用途例としては、自動車部品(例えば、タイヤ、バンパー、フェンダー、ドアーパネル、各種モール、エンブレム、エンジンフード、ホイールキャップ、ルーフ、スポイラー、各種エアロパーツ等の外装部品、及び、インストゥルメントパネル、コンソールボックス、トリム等の内装部品)、電池部品(車載用二次電池部品、リチウムイオン二次電池部品、固体メタノール電池用燃料ケース、燃料電池用配管等)、電子・電気機器部品(例えば、各種コンピューター及びその周辺機器、ジャンクションボックス、各種コネクター、各種OA機器、テレビ、ビデオ、ディスクプレーヤー、シャーシ、冷蔵庫、エアコン、液晶プロジェクター等の部品)、生活用品(シューズアウトソール等)等の成形品として形成されてよい。本開示の一態様は、本開示のゴム硬化物を含む、タイヤ、防振ゴム、シューズアウトソール、又は搬送用ベルトを提供する。
【実施例0194】
以下、実施例を挙げて本発明の例示の態様を更に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0195】
≪評価方法≫
<セルロースナノファイバー>
[多孔質シートの作製]
後述の各種評価を実施するためにセルロースナノファイバーの多孔質シートを作製した。まず、セルロースナノファイバースラリーをブフナー漏斗で固形分率10質量%まで濃縮した濃縮ケーキを作製した(必要に応じて圧搾機を使用した)。つづいて、濃縮ケーキをtert-ブタノール中に添加し、微細セルロース繊維固形分濃度0.5質量%、総重量100gとなるように調整した。次に、高剪断ホモジナイザー(IKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」、処理条件:回転数15,000rpm×3分間)で凝集物が無い状態まで分散処理を行った。得られたtert-ブタノール分散液100gをろ紙上で濾過した。濾過物はろ紙から剥離させずに、ろ紙と共により大きなろ紙2枚の間に挟み、かつ、そのより大きなろ紙の縁をおもりで押さえつけながら、150℃のオーブンにて5分間乾燥させた。その後、ろ紙を剥離して歪みの少ない多孔質シートを得た。このシートの透気抵抗度がシート目付10g/m2あたり100sec/100ml以下のものを多孔質シートとし、測定サンプルとして使用した。
23℃、50%RHの環境で1日静置したサンプルの目付W(g/m2)を測定した後、王研式透気抵抗試験機(旭精工(株)製、型式EG01)を用いて透気抵抗度R(sec/100ml)を測定した。この時、下記式に従い、10g/m2目付あたりの値を算出した。
目付10g/m2あたり透気抵抗度(sec/100ml)=R/W×10
【0196】
[セルロースナノファイバーの比表面積]
セルロースナノファイバーの比表面積は比表面積・細孔分布測定装置(Nova-4200e,カンタクローム・インスツルメンツ社製)にて、多孔質シート試料約0.2gを真空下、105℃で5時間乾燥し、液体窒素の沸点における窒素ガスの吸着量を相対蒸気圧(P/P0)が0.05以上0.2以下の範囲にて5点測定した後(多点法)、同装置プログラムによりBET比表面積(m2/g)を算出した。
【0197】
[重合度]
微細セルロース繊維の重合度は、JIS P8215:1998 セルロース希薄溶液- 極限粘度数測定方法- 銅エチレンジアミン法で測定される極限粘度数を用いたStaudingerの粘度則より算出した。
【0198】
[結晶化度]
多孔質シートのX線回折測定を行い、下記式より結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=[I(200)-I(amorphous)]/I(200)×100
(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
(X線回折測定条件)
装置 MiniFlex(株式会社リガク製)
操作軸 2θ/θ
線源 CuKα
測定方法 連続式
電圧 40kV
電流 15mA
開始角度 2θ=5°
終了角度 2θ=30°
サンプリング幅 0.020°
スキャン速度 2.0°/min
サンプル:試料ホルダー上に多孔質シートを貼り付け
【0199】
[アルカリ可溶多糖類平均含有率]
アルカリ可溶多糖類平均含有率は、セルロースナノファイバーについて、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載の手法より、ホロセルロース含有率(Wise法)からαセルロース含有率を差し引くことで求めた。1つのサンプルにつき3回アルカリ可溶多糖類含有率を算出し、その数平均をセルロースナノファイバーのアルカリ可溶多糖類平均含有率とした。
【0200】
[酸不溶成分平均含有率]
酸不溶成分の定量は、微細セルロース繊維について非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載のクラーソン法で行った。絶乾させた微細セルロース繊維を精秤し、所定の容器に入れて72質量%濃硫酸を加え、内容物が均一になるようにガラス棒で適宜押した後、オートクレーブしてセルロース及びヘミセルロースを酸溶液中に溶解させた。放冷後に内容物をガラスファイバーろ紙で濾過し、酸不溶成分を残渣として得た。この酸不溶成分重量より酸不溶成分含有率を算出し、そして、3サンプルについて算出した酸不溶成分含有率の数平均を酸不溶成分平均含有率とした。
【0201】
[セルロースナノファイバーの熱分解開始温度(TD)]
セルロースナノファイバーのTDは多孔質シートを以下の測定法にて評価した。
装置:Rigaku社製、Thermo plus EVO2
サンプル:多孔質シートから円形に切り抜いたものをアルミ試料パン中に10mg分重ねて入れた。
サンプル量:10mg
測定条件:窒素フロー100ml/min中で、室温から150℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、150℃で1時間保持した後、そのまま450℃まで昇温速度:10℃/minで昇温した。
D算出方法:横軸が温度、縦軸が重量残存率%のグラフから求めた。多孔質シートの150℃(水分がほぼ除去された状態)での重量(重量減少量0wt%)を起点としてさらに昇温を続け、1wt%重量減少時の温度と2wt%重量減少時の温度とを通る直線を得た。この直線と、重量減少量0wt%の起点を通る水平線(ベースライン)とが交わる点の温度を熱分解開始温度(TD)とした。
【0202】
<ゴム>
[38℃における粘度]
ゴムの粘度は、B型粘度計を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0203】
[数平均分子量(Mn)]
製品カタログの値を示した。
【0204】
<ゴム組成物>
ゴム組成物について、下記評価を行った。
【0205】
<第1及び第2のゴムを含むゴム組成物>
[セルロースナノファイバーの分散性]
ゴム組成物について、以下の条件で光学顕微鏡観察を行った。試料1mgを2枚のカバーガラスで挟み、均一な厚みになるように押しつぶして広げた。オリンパス社製偏光顕微鏡BX51Pのステージ上に上記の試料を乗せた。オリンパス社製微分干渉プリズムU-DICRを挿入し、微分干渉観察を行った。セルロースナノファイバーの分散性を以下の基準で評価した。
A:概ね均一に分散している。
B:分散しているが、凝集が見られる。
C:凝集が多数確認される。
【0206】
[セルロースナノファイバー含有率]
下記式に従って算出した。
セルロースナノファイバー含有率(%)= セルロースナノファイバー重量/ゴム組成物重量×100
[分散剤/第2のゴム重量比]
下記式に従って算出した
分散剤/第2のゴム重量比 = 分散剤質量部/第2のゴム質量部
【0207】
[破砕物メジアン粒径]
ゴム組成物200gをハイビスミックス(登録商標)2P-1型(プライミクス株式会社)に入れ、50rpm、25℃の条件で15分間攪拌し破砕物を得た。つづいて、この破砕物の粒度分布は、まずミニふるい振とう機(アズワン製、MVS-1N)に下段よりステンレスふるい(75φ×20mm、平織)の目開き(1)2.00mm、(2)3.35mm、(3)4.75mm、(4)6.7mm、(5)9.5mmの順で組立てて評価を行った。破砕したゴム組成物約15gを目開き9.5mmの篩上に入れ、振動スピードを最速にして3分間振動させた。その後、各篩の重量を測定し単独重量の差分より各篩での篩下積算分布を算出した。この篩下積算分布より破砕物メジアン径(50%径D50)を算出した。
なお、篩過後に目開き2.00mmを通過した粉体重量が振とう機に投入した全粉体重量の40質量%を超えるものについては動的画像解析式粒径分布測定装置(Microtrac社製 CAMSIZER X2)で測定し、50%径D50を破砕したゴム組成物のメジアン径に採用した。
【0208】
[破砕物ゆるめ嵩密度]
前述の方法で得られた破砕物をJIS K 7365(プラスチック-規定漏斗から注ぐことができる材料の見掛け密度の求め方)に従い測定した。
【0209】
[化学結合度]
バイアル瓶に1gのゴム組成物とTHF50ml入れ、ホモジナイザ処理(IKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」、処理条件:回転数15,000rpm×3分間)を行った後、マグネチックスターラーで攪拌した(200rpm、24hr)。その後、ナイロンメッシュで濾過しメッシュ上の残渣にTHF20ml以上を2回掛けて洗浄した後、真空乾燥(80℃、12hr)を実施し、セルロースナノファイバー残渣乾固物を得た。
つづいて、セルロースナノファイバー残渣乾固物を13C固体NMR測定し、100~110ppmのピーク面積(P1)、58~100ppmの全ピーク面積(P2)、110ppm~220ppm及び0ppm~58ppmの全ピーク面積(P3)を用いて化学結合度を下記式により算出した。
化学結合度 ={(P2-P1×5)+P3}/(P1×6)
13C固体NMR測定条件]
(1)試料管:ジルコニア製、7mm径
(2)磁場強度:11.75T
(3)観測核: 13
(4)観測周波数: 125.8 MHz
(5)温度:室温
(6)MAS回転数:7kHz
(7)パルスシーケンス:DD/MAS法
(8)パルス幅:5.6マイクロ秒
(9)取り込み時間:0.047秒
(10)待ち時間:1000秒
(11)積算回数:150回
(12)測定装置:Avance500(ブルカージャパン株式会社製)
(13)化学シフト基準:アダマンタン(外部標準29.5ppm)
【0210】
<第3のゴムを更に含むゴム組成物(マスターバッチ)>
[セルロースナノファイバーの分散性]
ゴム組成物について、X線CTによって観察した一辺2mmの立方体のうち、ランダムに選んだ10枚の断面像において、各断面中の20,000μm以上のサイズのセルロースナノファイバー凝集物の数をカウントして、1断面当たりの平均凝集物の数を算出し、下記の基準でセルロースナノファイバー分散状態をランク分けした。
A:5個以下
B:5個超10個以下
C:10個超
なお、実施例5においては下記の基準を用いた
S:2個以下
A:3~5個
B:5~8個
C:9~10個
D:10個超
X線CTの測定条件は以下のとおりである。
装置 :ブルカー社X-CT Skyscan1272
管電圧 :40kV,管電流:100μA
画素数 :2452×1640、ピクセル分解能:1.2 μm、積算回数:8回
スキャン:0.2度毎、180度スキャン
【0211】
<ゴム硬化物>
ゴム硬化物について、下記評価を行った。
(1)表面平滑性
ゴム硬化物シートから小片をハサミで切り出し、共焦点レーザー顕微鏡(キーエンス社、VK-X250)のステージに置き、10倍の対物レンズを用いて表面凹凸像を取得した。ISO25178に準じて算術平均高さ(Sa)を算出し、基準比較例の結果を100として指数化した。指数が小さいほど表面平滑性が良好であることを示す。
【0212】
(2)引張強度、引張応力(モジュラス)
JIS K-6251の引張試験法により、引張強度、100%伸び時引張応力(100%モジュラス、M100)及び300%伸び時引張応力(300%モジュラス、M300)、を測定し、基準比較例の結果を100として指数化した。指数が大きいほど引張強度、引張応力が良好であることを示す。
【0213】
(3)セルロースナノファイバーの分散性
ゴム硬化物について、X線CTによって観察した一辺2mmの立方体のうち、ランダムに選んだ10枚の断面像において、ゴム組成物に係る前述の[セルロースナノファイバーの分散性]と同様の手順で評価した。評価基準は実施例5と同様の基準を使用した。
【0214】
(4)セルロースナノファイバーの配向性
透過型電子顕微鏡によって観察されるセルロースナノファイバーについて、次のようにデータ処理をして、セルロースナノファイバーの配向度を算出した。
ゴム硬化物シートのロール混練方向をMD、ロール混練方向と垂直な方向をTD、シートの厚み方向をNDとした時に、試料のMD-ND面について、クライオミクロトームを用いて、設定厚み500μmの切片を採取し、透過型電子顕微鏡(日本電子社JEM-1400)を用いて1000倍で観察し、ランダムな視野5か所について像を取得した。観察されたセルロースナノファイバーについて、画像処理ソフトImageJを用いて二値化処理、粒子解析を行った。粒子解析ではセルロースナノファイバーを楕円として近似し、各セルロースナノファイバーについて楕円の長軸方向の角度とMDのなす角θを得た。5枚のTEM像から得たセルロースナノファイバーについて、(3(cosθ)^2-1)/2を計算し、その平均値を配向度とした。セルロースナノファイバーの配向性を以下の基準で評価した。
A:配向度が0.7以上
B:配向度が0.5以上0.7未満
C:配向度が0.5未満
なお、実施例6においては下記の基準を使用した。
S:配向度が0.8以上
A:配向度が0.7以上0.8未満
B:配向度が0.6以上0.7未満
C:配向度が0.5以上0.6未満
D:配向度が0.5未満
【0215】
≪使用材料≫
<セルロースナノファイバー>
[セルロースナノファイバーA]
コットンリンターパルプ3質量部を水27質量部に浸漬させて、パルパーで分散を行った。パルパー処理したコットンリンターパルプスラリー30質量部(内、コットンリンターパルプ3質量部)に水を170質量部入れて水中に分散させて(固形分率1.5質量%)、ディスクリファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmとして該水分散体を30分間叩解処理した。それに引き続き、クリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で徹底的に叩解を行い、叩解水分散体(固形分濃度:1.5質量%)を得た。得られた叩解水分散体を、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NSO15H)を用いて操作圧力100MPa下で10回微細化処理し、セルロースナノファイバーAスラリー(固形分濃度:1.5質量%)を得た。そして、脱水機により固形分率10質量%まで濃縮し、セルロースナノファイバーAのケーキを得た。
比表面積:53m/g
結晶化度:82%
重合度:1050
アルカリ可溶多糖類平均含有率:3.6%
酸不溶成分平均含有率:0.9%
d:260℃
【0216】
[セルロースナノファイバーB]
針葉樹パルプ乾燥重量200gに、水15L、臭化ナトリウム25g、TEMPOを2.5gを加え、充分撹拌して分散させた後、13質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、次亜塩素酸ナトリウムとして6.5mmol/gとなるように加え、反応を開始した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10~11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見られなくなるまで反応させた。反応終了後、0.1N塩酸を添加してpHを7.0に調整し、ろ過と水洗を繰り 返して精製し、カルボキシル基量1.83mmol/gである繊維表面が酸化されたセルロース繊維を得た。次いで、上記セルロース繊維を、固形分濃度が1重量%となるように純水で 希釈し、超高圧ホモジナイザーにより、液温20℃から140MPaの圧力で2回処理し、処理液の透明性を目視確認した後、セルロース繊維の解繊工程を終了とし、TEMPO酸化セルロースナノファイバーを得た。
比表面積:94m/g
結晶化度:74%
重合度:780
アルカリ可溶多糖類平均含有率:12.9%
酸不溶成分平均含有率:1.5%
d:205℃
【0217】
[セルロースナノファイバーC]
株式会社スギノマシンより入手した(BinFis:BMa-10010)
比表面積:76m/g
結晶化度:76%
重合度:810
アルカリ可溶多糖類平均含有率:12.6%
酸不溶成分平均含有率:3.2%
d:220℃
【0218】
<第1のゴム又は第2のゴムとしての液状ゴム>
液状ゴム-1:クレイバレー社製Ricon184(液状ブタジエン-スチレンランダム共重合体、Mn=9,400)
液状ゴム-2:クラレ社製LIR-30(液状ポリイソプレン、Mn=28,000)
液状ゴム-3:クラレ社製LBR-305(液状ポリブタジエン、Mn=26,000)
液状ゴム-4:クラレ社製L-FR-107(液状ファルネセンゴム、Mn=130,000)
液状ゴム-5:クレイバレー社製Ricon153(液状ポリブタジエン、Mn=6,700)
液状ゴム-6:クラレ社製LIR-403(無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン、Mn=34000、1分子鎖あたりの変性基の数は3個)
液状ゴム-7:クラレ社製LIR-410(カルボキシ変性液状ポリイソプレン、Mn=30,000、1分子鎖あたりの変性基の数は10個)
液状ゴム-8:クレイバレー社製Ricon184MA6(無水マレイン酸変性液状スチレンブタジエン共重合体、Mn=9,200、1分子鎖あたりの変性基の数は6個)
液状ゴム-9:クレイバレー社製Ricon131MA20(無水マレイン酸変性液状ポリブタジエン、Mn=7,000、1分子鎖あたりの変性基の数は11個)
液状ゴム-10:クラレ社製LIR-50(液状ポリイソプレン、Mn=54,000)
【0219】
<第3のゴム及び第4のゴム>
天然ゴム:RSS No.3(生産者:UNIMAC RUBBER CO.,LTD.(タイ)、供給者:丸紅テクノラバー)
ポリイソプレン:JSR社製IR2200
SBR-1:下記[SBR-1の製造]の項に記載の手順で製造した。
SBR-2:旭化成社製 アサプレン(登録商標)Y031
【0220】
[SBR-1の製造]
内容積が10Lであり、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であり、底部に入口を有し、頂部に出口を有し、撹拌機及び温度調整用のジャケットを有するオートクレーブ1基を使用した。さらに反応器の原料入口手前に、スタティックミキサーを1基連結した。予め水分等の不純物を除去した、1,3-ブタジエンを、20.2g/分、スチレンを16.8g/分、n-ヘキサンを137.6g/分で混合し、混合液を得た。この混合液が1基目の反応器に入る直前で、不純物不活性化処理用のn-ブチルリチウムを0.020phmで供給し、スタティックミキサーで混合した後、1基目の反応器の底部に連続的に供給した。さらに、極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.320phmと、重合開始剤としてNBL(ノルマルブチルリチウム)を0.102phmとして、反応器の底部へ連続的に供給し、反応器内の温度を82℃に保持し、ゴム溶液を得た。
反応器内で製造されたゴム溶液は、反応器の頂部よりスタティックミキサーへ供給し、スタティックミキサーの手前で、重合開始剤として供給したNBLのリチウムに対して、変性剤としてM1(1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン)を1.0当量(ただし、M1が1molに対し、NBLが4mol反応するものとして添加量を算出した)の比で連続的に供給して反応を行い、SBR-1を得た。
【0221】
<分散剤>
ノニオン性分散剤:三洋化成社製サンニックスGL-3000(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリオール)
【0222】
<加硫助剤>
酸化亜鉛:富士フィルム和光純薬(株)より入手可能
ステアリン酸:富士フィルム和光純薬(株)より入手可能
【0223】
<ワックス>
サンノック:精選特殊ワックス(大内新興化学(株)より入手可能)
【0224】
<老化防止剤>
ノクラック6C:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(大内新興化学(株)より入手可能)
【0225】
<加硫促進剤>
ノクセラーCZ:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学(株)より入手可能)
ノクセラーD:1,3-ジフェニルグアニジン(大内新興化学(株)より入手可能)
【0226】
≪ゴム組成物の製造≫
<第1及び第2のゴムを含むゴム組成物-1>
[実施例1-1~1-12]
10質量%のセルロースナノファイバーケーキAを200mlPPカップに入れたのち、表2に示す配合比となるように低粘度液状ゴム及び分散剤を加え、最終的な組成として、セルロースナノファイバーの濃度が10質量%となるように水分散体を調製した。200mlPPカップを株式会社シンキー製自転公転ミキサーARE-310にセットし、15分間攪拌モード(公転2000rpm、自転800rpm)で混合した。次に表2に示す配合比となるように高粘度液状ゴムを加え、さらに15分間攪拌モード(公転2000rpm、自転800rpm)で混合した。
得られた組成物を、離型フィルム上に薄く伸ばし、エスペック株式会社製SPH-201を用いて80℃で乾燥させ、次いでラボネクト株式会社製ミニスピードミルMS-05で30秒間粉砕して、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、光学顕微鏡を用いた分散性評価を行った。
【0227】
[実施例1-13]
ビーカーにてクロロホルム2314質量部に、液状ブタジエン-スチレンランダム共重合体(液状ゴム-1)57.1質量部、無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン(液状ゴム-6)200質量部を溶解させ、攪拌した。次に液状ゴム溶液をテフロン(登録商標)製のバットに広げ、80℃で真空乾燥を行い、予備組成物を得た。
10質量%のセルロースナノファイバーケーキAを200mlPPカップに入れたのち、表2に示す配合比となるように予備組成物及び分散剤を加え、最終的な組成として、セルロースナノファイバーの濃度が10質量%となるように水分散体を調製した。200mlPPカップを株式会社シンキー製自転公転ミキサーARE-310にセットし、15分間攪拌モード(公転2000rpm、自転800rpm)で混合した。
得られた組成物を、離型フィルム上に薄く伸ばし、エスペック株式会社製SPH-201を用いて80℃で乾燥させ、次いでラボネクト株式会社製ミニスピードミルMS-05で30秒間粉砕して、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、光学顕微鏡を用いた分散性評価を行った。
【0228】
[実施例1-14~1-22]
クロロホルムの量を1414質量部、低粘度液状ゴムと高粘度液状ゴムの量と種類を表2に記載の通りに変えた以外は、実施例1-12と同様にしてゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、光学顕微鏡を用いた分散性評価を行った。
【0229】
[比較例1-1~1-10]
10質量%のセルロースナノファイバーケーキを200mlPPカップに入れたのち、表3に示す配合比となるように低粘度液状ゴム又は高粘度液状ゴム、分散剤を加え、最終的な組成として、セルロースナノファイバーの濃度が10質量%となるように水分散体を調製した。200mlPPカップを株式会社シンキー製自転公転ミキサーARE-310にセットし、15分間攪拌モード(公転2000rpm、自転800rpm)で混合した。
得られた組成物を、離型フィルム上に薄く伸ばし、エスペック株式会社製SPH-201を用いて80℃で乾燥させ、次いでラボネクト株式会社製ミニスピードミルMS-05で30秒間粉砕して、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、光学顕微鏡を用いた分散性評価を行った。
【0230】
<第3のゴムを更に含むゴム組成物(マスターバッチ)-1>
[実施例2-1~2-22、比較例2-1~2-16]
10質量%のセルロースナノファイバーケーキを200mlPPカップに入れたのち、表4~6に示す配合比となるように低粘度液状ゴム及び分散剤を加え、最終的な組成として、セルロースナノファイバーの濃度が10質量%となるように水分散体を調製した。200mlPPカップを株式会社シンキー製自転公転ミキサーARE-310にセットし、15分間攪拌モード(公転2000rpm、自転800rpm)で混合した。
得られた組成物を、離型フィルム上に薄く伸ばし、エスペック株式会社製SPH-201を用いて80℃で乾燥させ、次いでラボネクト株式会社製ミニスピードミルMS-05で30秒間粉砕して、予備組成物を得た。
【0231】
温度制御装置を備える密閉混練機(内容量0.35L)を使用し、充填率65%で、表4~6に示す組成に従い、第3のゴム、予備組成物、高粘度液状ゴムを加えて140℃で5分混練りした。得られた混練り物を回収し、ロールを通して、シート状のゴム組成物(マスターバッチ)を得た。シートから一部を切り出し、X線CTによるセルロースナノファイバー分散性の評価を行った。結果を表4~6に示す。
【0232】
[実施例2-23]
混練温度を120℃に変えた以外は、実施例2-1と同様にしてシート状のゴム組成物(マスターバッチ)を得た。シートから一部を切り出し、X線CTによるセルロースナノファイバー分散性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0233】
[実施例2-24]
混練温度を130℃に変えた以外は、実施例2-1と同様にしてシート状のゴム組成物(マスターバッチ)を得た。シートから一部を切り出し、X線CTによるセルロースナノファイバー分散性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0234】
[実施例2-25]
混練温度を160℃に変えた以外は、実施例2-1と同様にしてシート状のゴム組成物(マスターバッチ)を得た。シートから一部を切り出し、X線CTによるセルロースナノファイバー分散性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0235】
[実施例2-26]
実施例2-1と同様にして予備組成物を得た。
温度制御装置を備える密閉混練機(内容量0.35L)を使用し、第一段の混練りとして、充填率65%で、表5に示す組成に従い、第3のゴム、予備組成物、変性液状ゴムを加えて120℃で5分混練りした。次に第二段の混練りとして、得られた混練り物を室温まで冷却後、セルロースナノファイバーの分散を向上させるため再度120℃で3分混練りした。得られた混練り物を回収し、ロールを通して、シート状のゴム組成物(マスターバッチ)を得た。シートから一部を切り出し、X線CTによるセルロースナノファイバー分散性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0236】
[実施例2-27]
第二段の混練りの時間を3分間に代えて5分間とした以外は、実施例2-26と同様にしてシート状のゴム組成物(マスターバッチ)を得た。シートから一部を切り出し、X線CTによるセルロースナノファイバー分散性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0237】
[実施例2-28]
第一段及び第二段の混練りの温度を120℃に代えて140℃とした以外は、実施例2-26と同様にしてシート状のゴム組成物(マスターバッチ)を得た。シートから一部を切り出し、X線CTによるセルロースナノファイバー分散性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0238】
[実施例2-29]
第一段及び第二段の混練りの温度を120℃に代えて140℃とした以外は、実施例2-27と同様にしてシート状のゴム組成物(マスターバッチ)を得た。シートから一部を切り出し、X線CTによるセルロースナノファイバー分散性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0239】
[実施例2-30]
充填率を55%に変えた以外は、実施例2-1と同様にしてシート状のゴム組成物(マスターバッチ)を得た。シートから一部を切り出し、X線CTによるセルロースナノファイバー分散性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0240】
[実施例2-31]
充填率を75%に変えた以外は、実施例2-1と同様にしてシート状のゴム組成物(マスターバッチ)を得た。シートから一部を切り出し、X線CTによるセルロースナノファイバー分散性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0241】
[実施例2-32]
実施例2-1と同様にして予備組成物を得た。
1.6Lバンバリーミキサーを使用し、充填率65%で、表5に示す組成に従い、第3のゴム、予備組成物、変性液状ゴムを加えて120℃で5分混練りした。得られた混練り物を回収し、ロールを通して、シート状のゴム組成物(マスターバッチ)を得た。シートから一部を切り出し、X線CTによるセルロースナノファイバー分散性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0242】
[実施例2-33]
混練温度を140℃に変えた以外は、実施例2-32と同様にしてシート状のゴム組成物(マスターバッチ)を得た。シートから一部を切り出し、X線CTによるセルロースナノファイバー分散性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0243】
[実施例2-34]
実施例2-1と同様にして予備組成物を得た。
0.5Lニーダーを使用し、充填率65%で、表5に示す組成に従い、第3のゴム、予備組成物、変性液状ゴムを加えて120℃で5分混練りした。得られた混練り物を回収し、ロールを通して、シート状のゴム組成物(マスターバッチ)を得た。シートから一部を切り出し、X線CTによるセルロースナノファイバー分散性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0244】
[実施例2-35]
混練温度を140℃に変えた以外は、実施例2-34と同様にしてシート状のゴム組成物(マスターバッチ)を得た。シートから一部を切り出し、X線CTによるセルロースナノファイバー分散性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0245】
<ゴム硬化物-1>
[実施例3-1~3-26、比較例3-1~3-14]
温度制御装置を備える密閉混練機(内容量0.35L)を使用し、第一段の混練りとして、充填率65%で、表7~10に示す配合に従い、ゴム組成物、第4のゴム、亜鉛華、ステアリン酸、ワックス、安定剤を加えて140℃で3分混練した。次に第二段の混練りとして、得られた混練り物を室温まで冷却後、セルロースナノファイバーの分散を向上させるため再度140℃で3分混練りした。冷却後、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を加えて混練し、シート状に成型した。その後、シート状の混練り物を厚み2.0mmの金型により、160℃で15分間、加硫プレスにて加硫し、ゴム硬化物シートを得た。得られたゴム硬化物シートについて、各種評価を行った。その結果を表7~10に示す。基準比較例は第4のゴム種ごとに異なり、比較例3-6、3-12、3-14が該当する。
【0246】
[実施例4-1~4-47、比較例4-1~4-16]
温度制御装置を備える密閉混練機(内容量0.35L)を使用し、第一段の混練りとして、充填率65%で、表11~16に示す配合に従い、マスターバッチ、第4のゴム、亜鉛華、ステアリン酸、ワックス、安定剤を加えて140℃で3分混練した。次に第二段の混練りとして、得られた混練り物を室温まで冷却後、セルロースナノファイバーの分散を向上させるため再度140℃で3分混練りした。冷却後、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を加えて混練し、シート状に成型した。その後、シート状の混練り物を厚み2.0mmの金型により、160℃で15分間、加硫プレスにて加硫し、ゴム硬化物シートを得た。得られたゴム硬化物シートについて、各種評価を行った。その結果を表11~16に示す。基準比較例は第4のゴム種ごとに異なり、比較例4-6、4-12、4-15が該当する。
【0247】
<CNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体>
[実施例5-1~5-4、5-6~5-21、比較例5-1~5-11]
表17~19に示す配合比となるように10質量%のセルロースナノファイバーケーキ及び第1のゴム及び分散剤を200mlPPカップに入れたのち、自転公転ミキサー(株式会社シンキー製、ARE-310)の攪拌モード(公転2000rpm、自転800rpm)で混合した。得られた混合ケーキをプラネタリミキサー(プライミクス製、ハイビスミクス2P-1)で50rpm、80℃で真空乾燥し、CNF-第1のゴム乾燥体を得た。つづいて、表17~19に示す組成に従い、CNF-第1のゴム乾燥体及び第2のゴムを、温度制御装置を備える密閉混練機(内容量0.35L)で充填率65%、装置温度120℃で混練を開始し、回転数を調整しながら10分かけて品温を160℃に昇温させたのち、5分間さらに混練し、本開示のゴム組成物としての、CNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体(又は、比較例については比較の乾燥体)を得た。なお、第2のゴムを含まない組成は本工程を実施しなかった。
【0248】
[実施例5-5]
実施例5-4で作製したCNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体15gを卓上ミル(ラボネクト製、ミニスピードミルMS-05)で10秒処理を2回行い、粉砕物を得た。実施例5-4と比較すると、粉砕処理によりメジアン粒径とゆるめ嵩密度が共に低下し、綿化した。
【0249】
実施例5-1は、比較例5-1と比較すると、無水マレイン酸基を含む第2のゴムを使用しているが、第1のゴムを使用しておらずCNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体又は比較の乾燥体の製造においてセルロースナノファイバーの繊維間に第2のゴムが浸透しにくいと推定され、化学結合度が低くなった。また、比較例5-2は無水マレイン酸基を有する第2のゴムを含まず、化学結合が存在しなかった。
【0250】
実施例5-1~実施例5-10を比較すると、セルロースナノファイバー含有率が多く、かつ、分散剤/第2のゴム重量比が低いほど化学結合度が高かった。セルロースナノファイバー含有率が多いとCNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体に含まれる第1のゴム及び第2のゴムそのものの粘度が高くなり、混練時のせん断力が掛かりやすくなるため分散性に優れる。また、剪断力が掛かりやすくなったことで、CNF-第1のゴム乾燥体製造での乾燥で近接したセルロースナノファイバーをほぐし第2のゴムが浸透しやすくなり、化学結合度が高くなったと推定される。一方、分散剤は、水酸基を有する、あるいは、混練中に分子切断により水酸基が新たに形成されると考えられる。この水酸基は第2のゴムの無水マレイン酸基と反応し消費され、第2のゴムとセルロースナノファイバーとの結合度合の低下につながったと推定される。したがって、分散剤/第2のゴム重量比が低いほど化学結合度が高くなる傾向にあった。また、セルロースナノファイバー含有率が高いと破砕物メジアン粒径及び破砕物ゆるめ嵩密度は小さい。これは高粘度な液状ゴムは接着剤として機能するため、量が多い程(セルロースナノファイバー含有率が低い程)、粗大な粒子を形成したと推定される。
【0251】
実施例5-3、実施例5-11、実施例5-12を比較すると、セルロースナノファイバー種の繊維径が小さくなるほどCNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体のメジアン粒径が小さくなり、ゆるめ嵩密度が最も大きくなった。繊維径が小さくなる事により乾燥時のセルロースナノファイバーの凝集力が強くなり、微粉になりやすく、ゆるめ嵩密度が大きくなったと推定される。さらにこの凝集力の強さにより第2のゴムが繊維間に浸透しにくいと推定され、化学結合度が低くなった。また、セルロースナノファイバーBについてはTEMPO酸化セルロースナノファイバーであって繊維表面に高密度でカルボキシ基が存在する。この多数のカルボキシ基の存在により第2のゴムの無水マレイン酸基とセルロースナノファイバーの水酸基との接触確率が減ることに加え、静電反発により反応性が低く、化学結合度が低くなったと推定される。さらに化学結合度が低い理由として、セルロースナノファイバーB,Cに含まれる低分子多糖であるアルカリ可溶成分が多く、無水マレイン酸が消費されセルロースナノファイバーと直接結合できていないことも推定される。
【0252】
実施例5-4、実施例5-13を比較すると、分散剤が含まれない場合は、乾燥時に疎水的な第1のゴムがセルロースナノファイバー繊維間から排出されやすく、凝集する。その結果、第2のゴムを混練しても、セルロースナノファイバー繊維間に浸透しにくく、化学結合度が低くなったと推定される。また、高粘度の第2のゴムが繊維間に浸透しにくいため余剰の第2のゴムが多いと推定され、粉体のタック性が高く、メジアン粒径も大きくなり、セルロースナノファイバーの分散には不利な傾向であった。
【0253】
実施例5-4と実施例5-14~実施例5-21及び比較例5-3~比較例5-10とを比較すると、第1のゴム種又は第2のゴム種が異なるが、液状ゴムの粘度が増加する事で粉体のタック性が高くなると推定され、メジアン粒径及びゆるめ嵩密度が増加した。一方、比較例5-3~比較例5-6について、セルロースナノファイバー含有率が高いため、破砕物メジアン粒径及びゆるめ嵩密度が小さかった。比較例5-7~比較例5-10について、セルロースナノファイバー含有率が低いため、破砕物メジアン粒径及びゆるめ嵩密度が大きくなった。実施例5-18~実施例5-20と比較し、化学結合度は低い。これは第1のゴムの不在により第2のゴムの浸透が不十分であるため分散性が悪く、化学結合度が低くなったと思われる。なお、実施例5-18及び実施例5-21については、用いた液状ゴムはカルボキシ変性液状ポリイソプレン及び液状ポリイソプレンである。前者は加温により無水化されないと水酸基との反応が起きないため化学結合度は低くなる。後者は変性基を含まないためセルロースナノファイバーとの結合ができず化学結合度は0となる。
【0254】
比較例5-11は第1のゴムの粘度が第2のゴムよりも大きい。比較の乾燥体においてセルロースナノファイバー繊維間に極めて高粘度の第1のゴムが含まれる状態の中、低粘度の第2のゴムが繊維間内に浸透しにくい。そのため、化学結合度は低く、粉体のタック性が高く、メジアン粒径も大きくなり、セルロースナノファイバーの分散に不利であった。
【0255】
[実施例5-22]
装置温度160℃で混練を開始し、160℃到達後15分間混練し、CNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体を得た以外は実施例5-20と同等の手法でCNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体を製造した。強力な剪断力で混練をしたため、反応が促進し化学結合度が高い値を示した。
【0256】
[実施例5-23]
表18に示す組成に従い、実施例5-1と同様に作製したCNF-第1のゴム乾燥体と、第2のゴムとを、1.6Lバンバリーミキサーで充填率65%、装置温度120℃で混練を開始し、回転数を調整しながら10分かけて品温を160℃に昇温させたのち、5分間さらに混練し、CNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体を得た。
【0257】
[実施例5-24]
表18に示す組成に従い、実施例5-1と同様に作製したCNF-第1のゴム乾燥体と、第2のゴムとを、0.5Lニーダーで充填率65%、装置温度120℃で混練を開始し、回転数を調整しながら10分かけて品温を160℃に昇温させたのち、5分間さらに混練し、CNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体を得た。
【0258】
[実施例5-25、比較例5-12]
10質量%のセルロースナノファイバーケーキAを200mlPPカップに入れたのち、表18及び表19に示す配合比となるように第1のゴム及び分散剤を加え、最終的な組成として、セルロースナノファイバーの濃度が10質量%となるように水分散体を調製した。200mlPPカップを株式会社シンキー製自転公転ミキサーARE-310にセットし、15分間攪拌モード(公転2000rpm、自転800rpm)で混合した。次に第2のゴムを加え、さらに15分間攪拌モード(公転2000rpm、自転800rpm)で混合した。
得られたゴム組成物を、離型フィルム上に薄く伸ばし、エスペック株式会社製SPH-201を用いて80℃で乾燥させ、次いでラボネクト株式会社製ミニスピードミルMS-05で30秒間粉砕して、CNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体(実施例5-25)及び比較の乾燥体(比較例5-12)を得た。
第2のゴムは無水マレイン酸基を有しているが、自転公転ミキサー混合中にセルロースナノファイバー由来の水で開環したと推定され、化学結合度が低く抑制された。
【0259】
<CNF-第1のゴム-第2のゴム-第3のゴム乾燥体(マスターバッチ)>
[実施例5-26~5-37、比較例5-13]
表20に示す組成に従い、CNF-第1のゴム乾燥体又はCNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体と第2のゴム及び/又は第3のゴムとを温度制御装置を備える密閉混練機(内容量0.35L)で充填率65%、装置温度120℃で混練を開始し、回転数を調整しながら10分かけて品温を160℃に昇温させたのち、5分間さらに混練し、CNF-第1のゴム-第2のゴム-第3のゴム乾燥体(マスターバッチ)を得た。得られた乾燥体は塊状であり、プラネタリミキサーによる破砕ができず粒径及び嵩密度測定ができなかった。また、化学結合度は実施例5-1、実施例5-25、比較例5-2、比較例5-12と比較し、かなり高い値を示した。これは第2のゴムとセルロースナノファイバーの化学結合に加え、第3のゴム混練中に第3のゴム自身が少量架橋し不溶化したためと推定される。また、マスターバッチでのX-CTでの分散性評価において、実施例5-26が優れ、実施例5-30はやや優れ、実施例5-34は悪かった。これは用いたゴム組成物(CNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体、比較の乾燥体)の性能に依拠している。
【0260】
<ゴム硬化物-2>
[実施例6-1~実施例6-40、比較例6-1~比較例6-15]
温度制御装置を備える密閉混練機(内容量0.35L)を使用し、第一段の混練りとして、充填率65%で、表21~24に示す配合に従い、CNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体(本開示のゴム組成物を含む乾燥体として)(又は比較の乾燥体)又はCNF-第1のゴム-第2のゴム-第3のゴム乾燥体(マスターバッチ)、第4のゴム、亜鉛華、ステアリン酸、ワックス、安定剤を加えて140℃で3分混練した(ゴム硬化物中のセルロースナノファイバーが5質量部となる)。次に第二段の混練りとして、得られた混練り物を室温まで冷却後、セルロースナノファイバーの分散を向上させるため再度140℃で3分混練りした。冷却後、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を加えて混練し、シート状に成型した。その後、シート状の混練り物を厚み2.0mmの金型により、160℃で15分間、加硫プレスにて加硫し、ゴム硬化物シートを得た。得られたゴム硬化物シートについて、各種評価を行った。その結果を表21~24に示す。基準比較例は第4のゴム種ごとに異なり、比較例6-1、比較例6-12~比較例6-14が該当する。
【0261】
実施例6-1と比較例6-1を比較すると、比較例6-1は第1のゴムを使用しておらず、CNF-第1のゴム乾燥体製造時にセルロースナノファイバー表面を第1のゴムで被覆できないため凝集性が高い。また、化学結合度は低く補強性が限定的であるとともに、化学結合による剪断力向上も限定的であり分散性や配向性が不十分であった。また、実施例6-18~実施例6-21及び比較例6-7~比較例6-10、実施例6-28及び比較例6-15、実施例6-29及び比較例6-16を比較しても同様である。
【0262】
実施例6-1と比較例6-2を比較すると、比較例6-2は第2のゴムを使用しておらず、かつ、化学結合を形成する変性基もないため、化学結合度は低く補強性が限定的であるとともに、化学結合による剪断力向上も限定的であり分散性や配向性が不十分であった。また、実施例6-14~実施例6~17及び比較例6-3~比較例6-6を比較しても同様である。
【0263】
実施例6-4、実施例6-13を比較すると、分散剤が含まれない実施例6-13は硬化物物性の向上が限定的であった。分散剤を添加せずにCNF乾燥体を作製した場合、親水的なセルロースナノファイバー繊維間に疎水的な第1のゴム及び第2のゴムの浸透が難しいと推定され、化学結合度が低く、凝集もしやすく、セルロースナノファイバーの分散には不利な乾燥体となった。以上の様に、第1のゴム、第2のゴム、分散剤が全て含まれることで優れた物性を発現した。
【0264】
実施例6-1~実施例6-10において、セルロースナノファイバー含有率が高く、かつ、分散剤/第2のゴム重量比が低い化学結合度の高いCNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体を用いた硬化物は優れた物性であった。セルロースナノファイバー含有率が多く、化学結合度が高いと混練時のせん断力が掛かりやすくセルロースナノファイバーの分散が向上した。また、化学結合の存在により機械物性も向上した。
【0265】
実施例6-4と実施例6-5を比較すると、粉砕によりメジアン粒径が小さく、かつ、ゆるめ嵩密度が小さくなる(綿化する)ことにより、混練時のせん断力が乾燥体に効率的に掛かりやすくなりセルロースナノファイバーの分散性と配向性及び機械物性が向上した。
【0266】
実施例6-3、実施例6-11,実施例6-12を比較すると、メジアン粒径が小さくても、ゆるめ嵩密度が大きい微粉状のCNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体は硬化物物性の向上は限定的であった。また、セルロースナノファイバーの繊維径が小さいことにより凝集性が高く、微粉状の乾燥体は硬い粒子と考えられ分散に不利であった。また、化学結合度が低いことで、さらに硬化物物性の向上が限定的となった。
【0267】
実施例6-18及び実施例6-21については、用いた液状ゴムはカルボキシ変性液状ポリイソプレン及び液状ポリイソプレンであった。前者は化学結合度が低く、後者は変性基を含まないためセルロースナノファイバーとの結合ができず化学結合度は0の乾燥体であり、この化学結合度の低さが他の第1及び第2のゴム種よりも硬化物物性の向上を限定的にした。
【0268】
比較例6-11は第1のゴムの粘度が第2のゴムよりも大きいことにより、化学結合度が低く、粉体のタック性が高く、メジアン粒径も大きい乾燥体であった。そのため、セルロースナノファイバーの分散・配向が悪く硬化物物性は不利であった。
【0269】
実施例6-20と実施例6-22とを比較すると、実施例6-22は強力な剪断力で混練したことで化学結合度は著しく向上した乾燥体であったが、セルロースナノファイバーの分散・配向が悪い傾向であり硬化物物性の向上は限定的であった。強力な混練によって第1のゴム及び/又は第2のゴム同士の架橋が部分的に発生し不溶化し、第4のゴムと混練する際の分散・配向が阻害されたと推定される。
【0270】
実施例6-1と実施例6-28とを比較すると、それぞれ組成が同一ではあるが実施例6-28は化学結合度が低く抑制されたためセルロースナノファイバーの分散・配向が悪い傾向であり硬化物物性の向上は限定的であった。比較例6-15についても比較例6-1と比較すると同様の理由により低程度の性能となったと推測される。
【0271】
実施例6-29~実施例6-40、比較例6-16は、CNF-第1のゴム-第2のゴム-第3のゴム乾燥体であるマスターバッチを用いて、4種の第4のゴムについてゴム硬化物を作製した。CNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体から直接作製する場合(実施例6-1及び実施例6-25~実施例6-27)と比較し、セルロースナノファイバーの分散・配向が悪い傾向であり硬化物物性の向上は限定的であった。破砕ができない塊状であるため混練時の分散・分配が低程度になったと考えられる。また、化学結合度が著しく高い値を示し、第3のゴム混練中に第3のゴム自身が少量架橋し不溶化したと推測されるが、その不溶化によりセルロースナノファイバーの分散・配向が低程度になったと考えられる。さらに、マスターバッチを作製するために用いたCNF-第1のゴム-第2のゴム乾燥体(比較例においては比較の乾燥体)の種類によってマスターバッチ時点の分散性が異なった。実施例5-1に比して、実施例5-25は化学結合度の低い分散性が低い原料であり、比較例5-2は第2のゴムを含まない更に分散性が低い原料であるため、最終的なゴム硬化物物性に影響を与えたと考えられる。
【0272】
【表1】
【0273】
【表2】
【0274】
【表3】
【0275】
【表4】
【0276】
【表5】
【0277】
【表6】
【0278】
【表7】
【0279】
【表8】
【0280】
【表9】
【0281】
【表10】
【0282】
【表11】
【0283】
【表12】
【0284】
【表13】
【0285】
【表14】
【0286】
【表15】
【0287】
【表16】
【0288】
【表17】
【0289】
【表18】
【0290】
【表19】
【0291】
【表20】
【0292】
【表21】
【0293】
【表22】
【0294】
【表23】
【0295】
【表24】
【産業上の利用可能性】
【0296】
本開示に係るゴム組成物は、良好な物性を有する成形体を形成し得ることから、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両・船舶・航空宇宙関連部品、電子・電気部品、建築・土木材料、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材、容器・包装部材、等の広範な用途に好適に適用され得る。