(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008442
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】エレベーターおよびエレベーター制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 1/18 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B66B1/18 P
B66B1/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110622
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 直也
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 貴大
【テーマコード(参考)】
3F502
【Fターム(参考)】
3F502HB03
3F502JA25
3F502JA72
3F502JA74
3F502KA07
3F502KA10
3F502MA03
(57)【要約】
【課題】乗り場での待機人数および利用者の待機時間の偏りを解消し、乗り場全体での待機時間を短縮し得るエレベーターを提供する。
【解決手段】各かごに割り振られている利用者の人数である利用者人数を示す情報を出発階ごとに記憶する記憶部と、記憶部により記憶されている利用者人数を示す情報に基づいて、各かごについて、乗車可能な利用者の人数である乗車可能人数を出発階ごとに算出する演算部と、演算部により算出された乗車可能人数に基づいて、行先階登録装置により登録された行先階を何れかのかごに割り当てる割当処理部と、を設けるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のかごの中から利用者により指定されたかごの行先階を登録可能な行先階登録装置を備えるエレベーターであって、
各かごに割り振られている利用者の人数である利用者人数を示す情報を出発階ごとに記憶する記憶部と、
前記記憶部により記憶されている利用者人数を示す情報に基づいて、各かごについて、乗車可能な利用者の人数である乗車可能人数を出発階ごとに算出する演算部と、
前記演算部により算出された乗車可能人数に基づいて、前記行先階登録装置により登録された行先階を何れかのかごに割り当てる割当処理部と、
を備えるエレベーター。
【請求項2】
前記記憶部は、各かごに割り振られている利用者の人数である利用者人数を示す情報を、出発階ごと、かつ、行先階ごとに記憶し、
前記演算部は、前記記憶部により記憶されている利用者人数を示す情報に基づいて、各かごについて、乗車可能な利用者の人数である乗車可能人数を、出発階ごと、かつ、行先階ごとに算出する、
請求項1に記載のエレベーター。
【請求項3】
前記記憶部は、乗場に待機している利用者の人数である待機人数を示す情報を記憶し、
前記演算部は、前記記憶部に記憶されている待機人数を示す情報に基づいて、乗場における混雑の度合いを示す混雑度を算出し、算出した混雑度に基づいて乗車可能人数を算出する、
請求項1に記載のエレベーター。
【請求項4】
第1の階床に設けられた行先階登録装置において、前記第1の階床とは異なる第2の階床が利用者により指示された場合、
前記第1の階床が出発階であり、前記第2の階床が行先階であり、
前記割当処理部は、前記出発階および前記行先階と同じ出発階および行先階が割り当てられているかごを割当優先かごとして設定する、
請求項1に記載のエレベーター。
【請求項5】
前記割当処理部は、乗車可能人数が0人であるかごを割当除外かごとして設定し、前記行先階登録装置により登録された行先階を、設定した割当除外かご以外の何れかのかごに割り当てる、
請求項1に記載のエレベーター。
【請求項6】
複数のかごの中から利用者により指定されたかごの行先階を登録可能な行先階登録装置を備えるエレベーターのエレベーター制御方法であって、
前記エレベーターは、各かごに割り振られている利用者の人数である利用者人数を示す情報を出発階ごとに記憶する記憶部を備え、
演算部が、前記記憶部により記憶されている利用者人数を示す情報に基づいて、各かごについて、乗車可能な利用者の人数である乗車可能人数を出発階ごとに算出することと、
割当処理部が、前記演算部により算出された乗車可能人数に基づいて、前記行先階登録装置により登録された行先階を何れかのかごに割り当てることと、
を含むエレベーター制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、行先階登録装置により行先階が登録されるエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーター群管理システムは、複数のかごを1つのグループとして扱うことで、利用者に対してより効果的な運行サービスを提供する。より具体的には、複数のかごを1つのグループとして管理し、ある階床において乗り場呼びが発生した場合に、当該グループの中から最適なかごを1つ選択し、選択したかごに上記乗り場呼びを割り当てる処理を実施する。
【0003】
行先階予約システム式の群管理(以下、行先階予約式群管理と称する)とは、かごに乗車する前に、乗り場に設けられている行先階登録装置で行先階を登録する方式の群管理である。一般のエレベーター群管理では、乗り場で上方向の呼びまたは下方向の呼びを登録して、到着したかごに乗った後に行先階を登録するのに対して、行先階予約式群管理では、利用者の行先階が事前に分かるので、行先階に応じてより最適なかごを割り当てることができる。
【0004】
特許文献1には、行先階登録装置を備えたエレベーター群管理システムに関し、任意の階床の乗場において、利用者がHDC(乗場行先階登録装置)を操作して行先階を指定すると、その行先階と出発階を対にした行先呼びがHDCから発行され、この行先呼びを用いて群管理制御装置に備えられた割当制御部が待機時間、乗車時間等をベースとする評価式Eに基づいて最適な乗りかごに当該行先呼びを割り当てることが開示されている。
【0005】
特許文献2には、行先階登録装置を備えたエレベーター群管理システムに関し、同乗グループかご割当部により同乗グループ単位にかごの割当を行うことにより、同一乗車階および同一行先階の乗客であっても異なる同乗グループに設定することができるため、同一乗車階および同一行先階の乗客が多数出現した場合でも、積み残しなく適切なかご割当処理を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-125189号公報
【特許文献2】国際公開第10/032625号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、割当決定時および割当変更時に同一出発階および同一行先階が割り当てられているかごに優先して行先呼びを割り当てるため、フロア間での待機人数に偏りが生じ、建物全体での待機時間が悪化する問題がある。
【0008】
特許文献2に記載の方法では、同乗グループの作成に関して、出発階ごとの待機人数の偏りや、混雑階で満員になった場合に、混雑階と行先階との間にある途中階を出発階とする利用者が乗車できなくなることについては何ら考慮されていない。
【0009】
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、乗り場での待機人数および利用者の待機時間の偏りを解消し、乗り場全体での待機時間を短縮し得るエレベーター等を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明においては、複数のかごの中から利用者により指定されたかごの行先階を登録可能な行先階登録装置を備えるエレベーターであって、各かごに割り振られている利用者の人数である利用者人数を示す情報を出発階ごとに記憶する記憶部と、前記記憶部により記憶されている利用者人数を示す情報に基づいて、各かごについて、乗車可能な利用者の人数である乗車可能人数を出発階ごとに算出する演算部と、前記演算部により算出された乗車可能人数に基づいて、前記行先階登録装置により登録された行先階を何れかのかごに割り当てる割当処理部と、を設けるようにした。
【0011】
上記構成では、各階の出発階ごとに乗車可能人数を設定することで満遍なく利用者を輸送するため、極端に待機人数が増加することを抑制できる。利用者の待機時間が平準化されることで、乗り場全体での待機時間の短縮につながる。また、利用者数の多い出発階と行先階との途中にある階床で待機している利用者が乗車しやすくなり、乗り場全体での待機時間の短縮につながる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、利便性の高いエレベーターを実現することができる。上記以外の課題、構成、および効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施の形態によるエレベーターに係る構成の一例を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態による情報の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態による情報の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施の形態による群管理処理の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施の形態による情報の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施の形態による情報の一例を示す図である。
【
図7】第1の実施の形態による情報の一例を示す図である。
【
図8】第2の実施の形態による群管理処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(I)第1の実施の形態
以下、本発明の一実施の形態を詳述する。ただし、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。
【0015】
本実施の形態のエレベーターは、複数のかごの運行を管理する群管理装置と、乗場に設けられ、かごの利用者の行先階を登録可能な行先階登録装置とを備える。群管理装置は、記憶部と、演算部と、割当処理部とを備える。記憶部は、各かごに割り振られている利用者の人数(利用者人数)を出発階ごとに格納する。演算部は、利用者人数を用いて、かごへ乗車可能な利用者の人数(乗車可能人数)を出発階ごとに算出する。割当処理部は、演算部の出力を用いて、複数のかごに行先階を割り当てる。
【0016】
上記構成において、記憶部は、出発階ごとの行先階別の利用者人数を格納してもよい。演算部は、出発階ごとの行先階別の利用者人数を用いて、各かごについての乗車可能人数を出発階および行先階ごとに算出してもよい。
【0017】
上記構成において、例えば、乗車可能人数の上限値(定員)が出発階ごとに異なってもよい。この場合、演算部は、出発階ごとの行先階別の待機人数に基づいて各階床の混雑度を算出し、各階床の混雑度に基づいて出発階ごとに上限値を設定し、設定した上限値に応じて乗車可能人数を出発階ごとに算出してよい。
【0018】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数または順序を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は、文脈毎に用いられ、1つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0019】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は、単数でも複数でも構わない。
【0020】
なお、以下の説明では、図面において同一要素については、同じ番号を付し、説明を適宜省略する。また、同種の要素を区別しないで説明する場合には、枝番を含む参照符号のうちの共通部分(枝番を除く部分)を使用し、同種の要素を区別して説明する場合は、枝番を含む参照符号を使用することがある。例えば、行先階登録装置を特に区別しないで説明する場合には、「行先階登録装置110」と記載し、個々の行先階登録装置を区別して説明する場合には、「行先階登録装置110A」、「行先階登録装置110B」のように記載することがある。
【0021】
図1において、1は、全体として第1の実施の形態によるエレベーターを示す。
【0022】
図1は、エレベーター1に係る構成の一例を示す図である。エレベーター1は、群管理装置100、行先階登録装置110、かご120、およびかご制御装置130を含んで構成される。
【0023】
群管理装置100は、複数の階床にサービスする複数のかご120の運行を管理する。群管理装置100は、かご情報入出力部101、階情報受信部102、記憶部103、演算部104、割当処理部105、および乗車かご情報送信部106を備える。
【0024】
かご情報入出力部101は、かご120の情報(かご120の乗車人数、かご120の現在階、かご120の移動方向等)を入出力する。例えば、かご情報入出力部101は、かご制御装置130からかご120の情報を受信する。階情報受信部102は、行先階登録装置110により登録された行先階の情報(出発階を示す情報、行先階を示す情報等を含む行先呼び)を受信する。記憶部103は、かご情報入出力部101により入出力された情報、階情報受信部102により受信された情報等を記憶する。演算部104は、記憶部103に記憶された情報を用いて所定の演算を実施し、その結果を割当処理部105に通知する。割当処理部105は、演算部104から受け取った情報をもとに、行先呼びを割り当てないかご120(割当除外かご)を決定し、割当候補かごグループを作成した後、行先呼びを割り当てるかご120(実際に利用者を乗車させる乗車かご)を決定し、決定した乗車かごの情報を乗車かご情報送信部106に通知する。乗車かご情報送信部106は、割当処理部105から受け取った情報を行先階登録装置110に送信する。
【0025】
行先階登録装置110は、乗場に設けられ、かご120の利用者により指定された行先階を登録し、登録した行先階の情報を群管理装置100に送信する。利用者により行先階登録装置110が操作されると、行先階登録装置110は、利用者により指定された行先階と群管理装置100から受信した乗車かご名とを利用者に対して一定時間表示する。なお、本実施の形態では、行先階登録装置110を操作する全ての利用者が個別に行先階を指定する場合を例に挙げて説明する。
【0026】
以降で説明するように、本実施の形態は、かご台数、階床数に限定されることなく実施可能であることは明白である。
【0027】
図2および
図3は、記憶部103において記憶(管理)される情報の一例を示す図である。記憶部103は、例えば、各かご内乗客情報201、各かご情報202、出発階行先階別待機人数情報301、各かご割当済利用者数情報302、全呼び履歴情報303等を記憶している。
【0028】
各かご内乗客情報201および各かご情報202については、各かご120の情報が随時反映されているものとする。各かご内乗客情報201は、例えば、かご120内の乗客について、出発階および行先階の情報を記憶しておくものとする。各かご情報202は、例えば、各かご120の現在階、各かご120の移動方向、各かご120の定員等を記憶しておくものとする。
【0029】
出発階行先階別待機人数情報301は、利用者による操作に応じて行先階登録装置110により行先階が登録されるたびに更新される。各かご割当済利用者数情報302は、割当処理部105により行先呼びがかご120に割り当てられるたびに更新される。全呼び履歴情報303は、所定の期間の行先呼びの履歴を示す情報であり、行先階登録装置110により行先階が登録されるたびに更新される。なお、全呼び履歴情報303は、出発階および行先階ごとの情報を示しているが、出発階ごとの情報であってもよい。
【0030】
次に、上述した構成を有する群管理装置100の動作例(群管理処理)について、
図4を用いて説明する。
【0031】
図4は、群管理処理の一例を示す図である。例えば、群管理処理は、行先階登録装置110により行先階が登録された際に開始する。
【0032】
ステップS401では、階情報受信部102は、行先階登録装置110から行先呼びを受信する。
【0033】
ステップS402では、演算部104は、記憶部103に記憶されている情報を取得する。演算部104は、各かご内乗客情報201、各かご情報202、出発階行先階別待機人数情報301、各かご割当済利用者数情報302、全呼び履歴情報303等を取得する。
【0034】
ステップS403では、演算部104は、混雑度を算出する。混雑度は、例えば、行先呼びが発生した時点で、行先呼びの発生階でこれまでに発生した行先呼びと同方向の行先呼びのうち、乗車を完了していない利用者の割合としてもよい。この割合は、例えば、出発階行先階別待機人数情報301と全呼び履歴情報303とを用いて算出することが可能である。ただし、混雑度の算出方法はこれに限定されるものではない。例えば、その他の方法として、ある任意の時間区間内に行先呼びの発生階で発生した行先呼びの回数としてもよいし、全乗り場の待機人数に対する行先呼びの発生階での待機人数の割合としてもよいし、単純に出発階行先階別待機人数情報301を用いてもよい。
【0035】
ステップS404では、演算部104は、ステップS402において記憶部103から取得した情報およびステップS403において算出した混雑度に基づいて、行先呼びの発生階での乗車可能人数を各かご120について算出する。
【0036】
各階からかご120に乗車可能な人数の上限(上限値)は、
図5の乗車人数上限値情報500のように、混雑度に応じて設定されていてもよい。乗車人数上限値情報500における混雑度の「小」、「中」、「大」に関しては、現場の状況に合わせて任意の値が設定されてよい。また、このような上限値と混雑度との関係テーブルは、
図6の乗車人数上限値情報600のように、時間帯に応じて設定されてもよいし、
図7の乗車人数上限値情報700のように、出発階と行先階との組み合わせごとに設定してもよい。付言するならば、乗車人数上限値情報500、乗車人数上限値情報600、乗車人数上限値情報700は、記憶部103により記憶されている。
【0037】
ここで、6階から2階に向かう行先呼び(行先呼びA)が発生したケースについて説明する。行先呼びAの発生階(6階)でこれまで発生した同方向の行先呼び数が20回とし、行先呼びAの発生階での未乗車の利用者の人数が13人とし、混雑度を行先呼びAの発生階での未乗車率とすると、混雑度は65%(=13/20×100)となる。このとき、仮に、混雑度が60%以上である場合に、各かご120における出発階で上限値を5人として設定していた場合、かご120A(かごA)、かご120B(かごB)、およびかご120C(かごC)の各々に割り当てられている利用者の人数が5人、5人、3人であったとき、かごAおよびかごBの乗車可能人数はそれぞれ0人と算出され、かごCの乗車可能人数は2人と算出される。
【0038】
ステップS405では、割当処理部105は、乗車人数が上限値に達しているかご120があるか否か(乗車可能人数が0人であるかご120があるか否か)を判定する。割当処理部105は、あると判定した場合、ステップS406に処理を移し、ないと判定した場合、ステップS407に処理を移す。
【0039】
ステップS406では、割当処理部105は、乗車人数が上限値に達しているかご120を割当除外かごとして設定する。なお、上述のケースの場合、かごAおよびかごBが割当除外かごとして設定される。
【0040】
ステップS407では、割当処理部105は、行先呼びを割り当て可能なかご120について評価値を算出し、算出した評価値に基づいて、行先呼びを割り当てるかごを選択する。なお、行先呼びを割り当て可能なかご120には、割当除外かごが含まれない。付言するならば、評価値を算出するための評価式等については、既存の評価式を用いてもよい。
【0041】
本実施の形態によれば、出発階ごとに乗車人数を制限できるようになる。例えば、同じ階に行く人を同じかごに乗せることを優先し過ぎると、混雑階から混雑階に行くかごが多くなってしまうが、本実施の形態によれば、出発階ごとに乗車人数を制限できるので、かごの割当に偏りが生じてしまう事態を回避することができる。
【0042】
また、本実施の形態では、例えば、乗場で待機している利用者の待機時間の情報を出発階ごと、または、出発階および行先階ごとに記憶し、待機時間に応じて上限値を変更することで、行先呼びの発生からの経過時間が閾値を超える利用者に対して割当変更を実施しなくてよくなる。この場合、割当変更を実施された利用者の待機時間は、元々乗り込む予定だったかごに対する待機時間と割当変更後のかごに対する待機時間の加算値分となってしまうという問題、割当変更の確認の負担を強いるという問題等が生じない。
【0043】
(II)第2の実施の形態
本実施の形態では、第1の実施の形態と異なる部分について主に説明する。
【0044】
図8は、
図4に示した行先呼びの発生から乗車かごの選択までの手順において、一部のステップが異なっているものとなる。ステップS801、ステップS802、ステップS804、ステップS805、ステップS808は、ステップS401、ステップS402、ステップS405~ステップS407の各々と同一である。
図8が
図4と異なる点は、ステップS803、ステップS806、ステップS807であるので、以降、これらのステップにおける処理について説明する。
【0045】
ステップS803では、演算部104は、ステップS802において記憶部103から取得した情報に基づいて、行先呼びの発生階での乗車可能人数を各かご120について算出する。例えば、演算部104は、乗車人数上限値情報600を参照し、各かご120について、行先呼びの発生階での乗車可能人数を出発階ごとに算出する。また、例えば、乗車人数上限値情報700を参照し、各かご120について、行先呼びの発生階での乗車可能人数を出発階かつ行先階ごとに算出してもよい。付言するならば、演算部104は、第1の実施の形態において示したように、混雑度を算出し、混雑度に応じて乗車可能人数を算出してもよい。
【0046】
ステップS806では、割当処理部105は、発生した行先呼びと同一の出発階および行先階の組み合わせの行先呼びが割り当てられたかご120があるかを判定する。割当処理部105は、あると判定した場合は、ステップS807に処理を移し、ないと判定した場合は、ステップS808に処理を移す。
【0047】
ステップS807では、割当処理部105は、ステップS807の判定に該当したかご120を割当優先かごに設定する。例えば、発生した行先呼びが4階から2階に向かうものであった場合、各かご割当済利用者数情報302より、かごCが割当優先かごとして設定される。割当優先かごの設定については、例えば、ステップS808の評価値の計算において、より良い評価値が算出されるように重みを設定する方法が考えられるが、これに限定されるものではない。
【0048】
本実施の形態によれば、乗車人数が上限値に達していない場合は、同じ階床から同じ階床に向かう人が同じかごに乗車するように、かごを割り当てることができるので、乗り場全体での待機時間の短縮につながる。
【0049】
(III)付記
上述の実施の形態には、例えば、以下のような内容が含まれる。
【0050】
上述の実施の形態においては、本発明をエレベーターに適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々のシステム、装置、方法、プログラムに広く適用することができる。
【0051】
群管理装置100は、情報処理装置(コンピュータ)の一例であり、ノートパソコン、サーバ装置等であり、図示は省略するCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、通信部等を含んで構成されてもよい。
【0052】
群管理装置100の機能(かご情報入出力部101、階情報受信部102、記憶部103、演算部104、割当処理部105、乗車かご情報送信部106等)は、例えば、CPUがROMに格納されたプログラムをRAMに読み出して実行すること(ソフトウェア)により実現されてもよいし、専用の回路等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが組み合わされて実現されてもよい。群管理装置100の機能は、コンピュータで動作するVM(Virtual Machine)であってもよいし、OS(Operating System)上で動作するコンテナであってもよいし、OS上で動作するアプリケーションであってもよい。なお、群管理装置100の1つの機能は、複数の機能に分けられていてもよいし、複数の機能は、1つの機能にまとめられていてもよい。また、群管理装置100の機能の一部は、別の機能として設けられてもよいし、他の機能に含められていてもよい。また、群管理装置100の機能の全部または一部は、群管理装置100と通信可能な他のコンピュータにより実現されてもよいし、クラウドシステム上で実現されてのよい。群管理装置100は、上記の機能に加えて、例えば、オペレーティングシステム、デバイスドライバ、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)等の機能を更に備えていてもよい。
【0053】
また、上述の実施の形態において、プログラムの一部または全ては、プログラムソースから、群管理装置100を実現するコンピュータのような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、ネットワークで接続されたプログラム配布サーバまたはコンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。また、上述の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0054】
また、上述の実施の形態において、各テーブルの構成は一例であり、1つのテーブルは、2以上のテーブルに分割されてもよいし、2以上のテーブルの全部または一部が1つのテーブルであってもよい。
【0055】
また、上述の実施の形態において、説明の便宜上、エレベーターに係る情報を、テーブルを用いて説明したが、データ構造はテーブルに限定されるものではない。エレベーターに係る情報は、XML(Extensible Markup Language)、YAML(YAML Ain't a Markup Language)、ハッシュテーブル、木構造等、テーブル以外のデータ構造によって表現されてもよい。
【0056】
また、上記の説明において、各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0057】
上述した実施の形態は、例えば、以下の特徴的な構成を有する。
【0058】
(1)
本実施の形態のエレベーターは、複数のかご(例えば、かご120)の中から利用者により指定されたかごの行先階を登録可能な行先階登録装置(例えば、行先階登録装置110)を備えるエレベーター(例えば、エレベーター1)であって、各かごに割り振られている利用者の人数である利用者人数を示す情報(例えば、各かご割当済利用者数情報302)を出発階ごとに記憶する記憶部(例えば、記憶部103)と、上記記憶部により記憶されている利用者人数を示す情報に基づいて、各かごについて、乗車可能な利用者の人数である乗車可能人数を出発階ごとに算出する演算部(例えば、演算部104)と、上記演算部により算出された乗車可能人数に基づいて、上記行先階登録装置により登録された行先階を何れかのかごに割り当てる割当処理部(例えば、割当処理部105)と、を備える。
【0059】
上記構成では、各階の出発階ごとに乗車可能人数を設定することで満遍なく利用者を輸送するため、極端に待機人数が増加することを抑制できる。利用者の待機時間が平準化されることで、乗り場全体での待機時間の短縮につながる。また、利用者数の多い出発階と行先階との途中にある階床で待機している利用者が乗車しやすくなり、乗り場全体での待機時間の短縮につながる。
【0060】
(2)
上記記憶部は、各かごに割り振られている利用者の人数である利用者人数を示す情報を、出発階ごと、かつ、行先階ごとに記憶し(例えば、
図3参照)、上記演算部は、上記記憶部により記憶されている利用者人数を示す情報に基づいて、各かごについて、乗車可能な利用者の人数である乗車可能人数を、出発階ごと、かつ、行先階ごとに算出する(例えば、
図4~
図8参照)。
【0061】
上記構成によれば、例えば、乗車可能人数を出発階および行先階ごとに設定することで、利用者の輸送をより詳細に制御できるので、より満遍なく利用者を輸送でき、乗り場全体での待機時間の短縮につながる。
【0062】
(3)
上記記憶部は、乗場に待機している利用者の人数である待機人数を示す情報(例えば、出発階行先階別待機人数情報301)を記憶し、上記演算部は、上記記憶部に記憶されている待機人数を示す情報に基づいて、乗場における混雑の度合いを示す混雑度を算出し、算出した混雑度に基づいて乗車可能人数を算出する(例えば、
図4参照)。
【0063】
上記構成によれば、利用者の発生の傾向が変化した場合であっても、例えば、混雑度に応じた乗車可能人数を設定することで、利用者の待機時間が平準化されるので、乗り場全体での待機時間の短縮につながる。
【0064】
(4)
第1の階床に設けられた行先階登録装置において、上記第1の階床とは異なる第2の階床が利用者により指示された場合、上記第1の階床が出発階であり、上記第2の階床が行先階であり、上記割当処理部は、上記出発階および上記行先階と同じ出発階および行先階が割り当てられているかごを割当優先かごとして設定する(例えば、
図8参照)。
【0065】
上記構成によれば、例えば、乗車人数が上限値に達していない場合は、同じ階床に向かう人が同じかごに乗るように割当優先かごが設定されるので、乗り場全体での待機時間の短縮につながる。
【0066】
(5)
上記割当処理部は、乗車可能人数が0人であるかごを割当除外かごとして設定し、上記行先階登録装置により登録された行先階を、設定した割当除外かご以外の何れかのかごに割り当てる(例えば、
図4、
図8参照)。
【0067】
上記構成によれば、例えば、乗車可能人数が0人であるかごについては、当該かご自体に空きがあったとしても、当該かごに行先階を割り当てないので、特定の階床から乗車させ過ぎてしまう事態を回避することができる。
【0068】
また上述した構成については、本発明の要旨を超えない範囲において、適宜に、変更したり、組み替えたり、組み合わせたり、省略したりしてもよい。
【0069】
「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」という形式におけるリストに含まれる項目は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、B、およびC)を意味することができると理解されたい。同様に、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」の形式においてリストされた項目は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、B、およびC)を意味することができる。
【符号の説明】
【0070】
1……エレベーター、103……記憶部、104……演算部、105……割当処理部、110……行先階登録装置、120……かご。