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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008446
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】グリス吐出装置
(51)【国際特許分類】
   F16N 3/12 20060101AFI20250109BHJP
   F04B 49/02 20060101ALI20250109BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F16N3/12
F04B49/02 311
F04B49/06 321A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110627
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 佑樹
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA03
3H145AA22
3H145BA12
3H145BA33
3H145CA09
3H145CA29
3H145DA05
3H145EA17
3H145EA34
(57)【要約】
【課題】グリス吐出装置において、プランジャの往復動に伴う吐出口からのグリスの吐出量を、精度よく検出できるようにする。
【解決手段】グリス吐出装置は、モータの回転により往復動されるプランジャを備え、プランジャの往復動によりグリスを吐出させるポンプと、モータを駆動してプランジャを往復動させる駆動部と、駆動部を介してモータを所定回転速度で駆動することによりプランジャを往復動させてプランジャの往復回数を計測し、往復回数の計測値が予め設定された設定値に達すると、モータの駆動を停止させる制御部とを備える。制御部は、往復回数の計測値と設定値との差に応じて、モータの回転速度を低下させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの回転により往復動されるプランジャを備え、前記プランジャの往復動により、タンクから供給されるグリスを吐出口から吐出させるように構成されたポンプと、
前記モータを駆動して前記プランジャを往復動させるように構成された駆動部と、
外部から前記グリスの吐出指令を受けると、前記駆動部を介して前記モータを所定回転速度で駆動することにより前記プランジャを往復動させて、前記プランジャの往復回数を計測し、前記往復回数の計測値が予め設定された設定値に達すると、前記モータの駆動を停止させるように構成された制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記モータを前記所定回転速度で駆動した後、前記往復回数の前記計測値と前記設定値との差に応じて、前記モータの回転速度を低下させるように構成されている、グリス吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のグリス吐出装置であって、
前記制御部は、前記往復回数の前記計測値と前記設定値との差が小さくなるほど前記モータの回転速度が小さくなるように、前記モータの回転速度を、前記所定回転速度から連続的又は段階的に低下させるように構成されている、グリス吐出装置。
【請求項3】
請求項1に記載のグリス吐出装置であって、
前記制御部は、前記プランジャの前記往復回数を表すパラメータとして前記モータの回転回数を計測し、前記モータを前記所定回転速度で駆動した後、前記回転回数の前記計測値と前記設定値に対応する回転回数設定値との差に応じて、前記モータの回転速度を低下させ、前記回転回数の前記計測値が前記回転回数設定値に達すると、前記モータの駆動を停止させるように構成されている、グリス吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載のグリス吐出装置であって、
前記制御部は、前記回転回数の前記計測値と前記回転回数設定値との差が小さくなるほど前記モータの回転速度が小さくなるように、前記モータの回転速度を、前記所定回転速度から連続的又は段階的に低下させるように構成されている、グリス吐出装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1項に記載のグリス吐出装置であって、
前記グリスの前記吐出指令を外部操作によって入力するよう構成された操作部を備え、
前記制御部は、前記モータを駆動しているときに、前記操作部からの前記吐出指令の入力が停止されると、前記モータの駆動を停止して、前記計測値をクリアするように構成されている、グリス吐出装置。
【請求項6】
請求項1~請求項4の何れか1項に記載のグリス吐出装置であって、
前記グリスの前記吐出指令を外部操作によって入力するよう構成された操作部を備え、
前記制御部は、前記モータを駆動しているときに、前記操作部からの前記吐出指令の入力が停止されると、前記モータの駆動を停止して、前記計測値を保持し、前記操作部からの前記吐出指令の入力が再開されると、前記計測値に基づく前記モータの駆動及び前記計測値の計測を再開するように構成されている、グリス吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グリスガン等のグリス吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のグリス吐出装置には、モータの回転により往復動されるプランジャを備え、プランジャの往復動により、タンクから供給されるグリスを吐出口から吐出させるように構成されたポンプが設けられている。そして、特許文献1には、モータを駆動してグリスを吐出口から吐出させているときに、プランジャの往復回数を計測し、その往復回数が設定値に達すると、モータの駆動を停止させることが記載されている。
【0003】
つまり、吐出口からのグリスの吐出量は、ポンプ内でプランジャが往復動するシリンダの容積と往復回数とで決まる。このため、特許文献1に記載のグリス吐出装置は、ポンプ内でのプランジャの往復回数を計測することで、グリスの吐出量を監視し、往復回数が設定に達すると、吐出口から所望量のグリスが吐出されたと判定して、モータの駆動を停止させるのである。従って、特許文献1に記載の装置によれば、吐出口から吐出されるグリスの量を所望量に制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US8528782B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、グリス吐出装置において、グリスの吐出作業を効率よく行うために、吐出口からのグリスの吐出速度(換言すれば、単位時間当たりのグリスの吐出量)を高めるには、グリス吐出時のモータの回転速度を高くすればよい。
【0006】
しかしながら、グリス吐出時にモータを高速で回転させると、モータの駆動を停止する際にブレーキをかけたとしても、モータの回転を速やかに停止させることができず、モータの回転が停止されるまでに時間がかかる。そして、モータの駆動を停止してから、モータの回転が停止するまでの間は、モータの回転によりプランジャが往復動されることから、グリスが余分に吐出されてしまい、グリスの吐出量を所望量に制御することができなくなる、という問題が生じる。
【0007】
本開示の一局面は、グリス吐出装置において、グリス吐出時のモータの回転速度が高く設定されても、グリスの吐出量が所望量に達したときにモータの回転を速やかに停止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一局面のグリス吐出装置は、モータと、ポンプと、駆動部と、制御部と、を備える。
このうち、ポンプは、モータの回転により往復動されるプランジャを備え、プランジャの往復動により、タンクから供給されるグリスを吐出口から吐出させる。また、駆動部は、モータを駆動してプランジャを往復動させる。
【0009】
そして、制御部は、外部からグリスの吐出指令を受けると、駆動部を介してモータを所定回転速度で駆動することによりプランジャを往復動させて、プランジャの往復回数を計測し、往復回数の計測値が予め設定された設定値に達すると、モータの駆動を停止させる。また、制御部は、モータを所定回転速度で駆動した後、往復回数の計測値と設定値との差に応じて、モータの回転速度を低下させる。
【0010】
このため、本開示のグリス吐出装置によれば、制御部にグリスの吐出指令が入力されると、モータは所定回転速度で駆動されて、ポンプ内でプランジャが往復動されるものの、その後、モータの回転速度は、往復回数の計測値と設定値との差に応じて低下する。
【0011】
従って、プランジャの往復回数の計測値が設定値に達して、モータの駆動を停止させるときには、モータは所定回転速度よりも低い回転速度で回転していることになり、モータの駆動停止後、モータの回転が停止するまでの時間を短くすることができる。
【0012】
よって、モータの駆動停止後、吐出口から余分に吐出されるグリスの量を少なくして、グリスの吐出量を所望量に制御することが可能となる。また、モータの駆動停止後、吐出口から余分に吐出されるグリスの量を少なくするために、モータの所定回転速度を低く設定する必要がないので、グリスの吐出作業を効率よく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態のグリス吐出装置の外観を表す斜視図である。
図2図1に示すグリス吐出装置の中央縦断面図である。
図3図1に示すグリス吐出装置の操作パネルを表す平面図である。
図4】グリス吐出装置におけるモータ駆動系全体の構成を表す電気回路図である。
図5図4に示す制御回路の機能構成を表す機能ブロック図である。
図6】モータの回転速度を一定に制御する従来技術の問題点を説明するタイムチャートである。
図7】第1実施形態のモータの回転速度の変化を表すタイムチャートである。
図8】第1実施形態の制御回路にて実行される制御処理を表すフローチャートである。
図9】第1実施形態のモータ駆動制御を表すフローチャートである。
図10】第1実施形態のモータ駆動制御の第1変形例を表すフローチャートである。
図11】第1実施形態の第1変形例のモータの回転速度の変化を表すタイムチャートである。
図12】第1実施形態のモータ駆動制御の第2変形例を表すフローチャートである。
図13】第1実施形態のモータ駆動制御の第3変形例を表すフローチャートである。
図14】第1実施形態の第3変形例のモータの回転速度の変化を表すタイムチャートである。
図15】第1実施形態の第4変形例の制御処理を表すフローチャートである。
図16】第2実施形態の制御回路の機能構成を表す機能ブロック図である。
図17】第2実施形態の制御回路にて実行される制御処理を表すフローチャートである。
図18】第2実施形態のモータ駆動制御を表すフローチャートである。
図19】第2実施形態のモータ駆動制御の第1変形例を表すフローチャートである。
図20】第2実施形態のモータ駆動制御の第2変形例を表すフローチャートである。
図21】第2実施形態のモータ駆動制御の第3変形例を表すフローチャートである。
図22】第2実施形態の第4変形例の制御処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施形態の総括
ある実施形態は、以下の特徴1~5のうちの少なくともいずれか1つを備えているグリス吐出装置を提供してもよい。
【0015】
・特徴1:モータ。
・特徴2:前記モータの回転により往復動されるプランジャを備え、前記プランジャの往復動により、タンクから供給されるグリスを吐出口から吐出させるように構成されたポンプ。
【0016】
・特徴3:前記モータを駆動して前記プランジャを往復動させるように構成された駆動部。
・特徴4:外部から前記グリスの吐出指令を受けると、前記駆動部を介して前記モータを所定回転速度で駆動することにより前記プランジャを往復動させて、前記プランジャの往復回数を計測し、前記往復回数の計測値が予め設定された設定値に達すると、前記モータの駆動を停止させるように構成された制御部。
【0017】
・特徴5:前記制御部は、前記モータを前記所定回転速度で駆動した後、前記往復回数の計測値と前記設定値との差に応じて、前記モータの回転速度を低下させるように構成されている。
【0018】
少なくとも特徴1~5を備えているグリス吐出装置では、制御部にグリスの吐出指令が入力されると、モータは所定回転速度で駆動されて、ポンプ内でプランジャが往復動され、その後、モータの回転速度は、往復回数の計測値と設定値との差に応じて低下する。
【0019】
従って、プランジャの往復回数の計測値が設定値に達して、モータの駆動を停止させるときには、モータは所定回転速度よりも低い回転速度で回転していることになり、モータの駆動停止後、モータの回転が停止するまでの時間を短くすることができる。
【0020】
よって、モータの駆動停止後、吐出口から余分に吐出されるグリスの量を少なくして、グリスの吐出量を所望量に制御することが可能となる。また、モータの駆動停止後、吐出口から余分に吐出されるグリスの量を少なくするために、モータの所定回転速度を低く設定する必要がないので、グリスの吐出作業を効率よく実施することができる。
【0021】
ある実施形態は、上記特徴1~5のうちの少なくとも何れか1つに加えて、または代えて、以下の特徴6を備えてもよい。
・特徴6:前記制御部は、前記往復回数の計測値と前記設定値との差が小さくなるほど前記モータの回転速度が小さくなるように、前記モータの回転速度を、前記所定回転速度から連続的又は段階的に低下させるように構成されている。
【0022】
少なくとも特徴1~6を備えているグリス吐出装置では、モータが所定回転速度で駆動されて、ポンプ内でプランジャが往復動されると、その後、モータの回転速度が、往復回数の計測値と設定値との差に応じて、連続的又は段階的に低下するようになる。
【0023】
このため、プランジャの往復回数の計測値が設定値に達して、モータの駆動を停止させるときには、モータの回転速度が充分低くなっており、モータの回転をより速やかに停止させることができる。よって、グリス吐出装置からのグリスの吐出量を、より精度よく所望量に制御することが可能となる。
【0024】
また、モータ駆動開始後、モータの回転速度を上昇させる際の所定回転速度を、より高い回転速度に設定しても、グリスの吐出量を所望量に制御することができる。このため、所定回転速度をより高い回転速度に設定することで、グリスの吐出作業をより効率よく実施することが可能となる。
【0025】
ある実施形態は、上記特徴1~5のうちの少なくとも何れか1つに加えて、または代えて、以下の特徴7を備えてもよい。
・特徴7:前記制御部は、前記プランジャの往復回数を表すパラメータとして前記モータの回転回数を計測し、前記モータを前記所定回転速度で駆動した後、前記回転回数の計測値と前記設定値に対応する回転回数設定値との差に応じて、前記モータの回転速度を低下させ、前記回転回数の計測値が前記回転回数設定値に達すると、前記モータの駆動を停止させるように構成されている。
【0026】
少なくとも上記特徴1~5及び7を備えているグリス吐出装置では、制御部は、プランジャの往復回数を表すパラメータとしてモータの回転回数を計測する。これは、プランジャの往復回数とモータの回転回数とは比例するためであり、制御部は、モータの回転回数を計測することで、プランジャの往復回数を取得する。
【0027】
そして、制御部は、モータを所定回転速度で駆動して、プランジャを往復動させると、その後、モータの回転回数の計測値と回転回数設定値との差に応じて、モータの回転速度を低下させ、回転回数の計測値が回転回数設定値に達すると、モータの駆動を停止させる。
【0028】
従って、このグリス吐出装置においても、モータの駆動を停止させるときには、モータは所定回転速度よりも低い回転速度で回転していることになり、モータの駆動停止後、モータの回転が停止するまでの時間を短くすることができる。
【0029】
よって、モータの駆動停止後、吐出口から余分に吐出されるグリスの量を少なくして、グリスの吐出量を所望量に制御することが可能となる。また、モータの駆動停止後、吐出口から余分に吐出されるグリスの量を少なくするために、モータの所定回転速度を低く設定する必要がないので、グリスの吐出作業を効率よく実施することができる。
【0030】
ある実施形態は、上記特徴1~5及び7のうちの少なくとも何れか1つに加えて、または代えて、以下の特徴8を備えてもよい。
・特徴8:前記制御部は、前記回転回数の計測値と前記回転回数設定値との差が小さくなるほど前記モータの回転速度が小さくなるように、前記モータの回転速度を、前記所定回転速度から連続的又は段階的に低下させるように構成されている。
【0031】
少なくとも特徴1~5、7及び8を備えているグリス吐出装置では、モータが所定回転速度で駆動されて、プランジャが往復動されると、その後、モータの回転速度が、回転回数の計測値と回転回数設定値との差に応じて、連続的又は段階的に低下するようになる。
【0032】
このため、プランジャの往復回数の計測値が設定値に達して、モータの駆動を停止させるときには、モータの回転速度が充分低くなっており、モータの回転をより速やかに停止させることができる。よって、グリス吐出装置からのグリスの吐出量を、より精度よく所望量に制御することが可能となる。
【0033】
また、モータ駆動開始後、モータの回転速度を上昇させる際の所定回転速度を、より高い回転速度に設定しても、グリスの吐出量を所望量に制御することができる。このため、所定回転速度をより高い回転速度に設定することで、グリスの吐出作業をより効率よく実施することが可能となる。
【0034】
ある実施形態は、上記特徴1~8のうちの少なくとも何れか1つに加えて、または代えて、以下の特徴9~11の少なくとも1つを備えてもよい。
・特徴9:グリスの吐出指令を外部操作によって入力するよう構成された操作部。
【0035】
・特徴10:前記制御部は、前記モータを駆動しているときに、前記操作部からの前記吐出指令の入力が停止されると、前記モータの駆動を停止して、前記計測値をクリアするように構成されている。
【0036】
・特徴11:前記制御部は、前記モータを駆動しているときに、前記操作部からの前記吐出指令の入力が停止されると、前記モータの駆動を停止して、前記計測値を保持し、前記トリガからの前記吐出指令の入力が再開されると、前記計測値に基づく前記モータの駆動及び前記計測値の計測を再開するように構成されている。
【0037】
少なくとも特徴1~5、9及び10を備えているグリス吐出装置では、モータの駆動中に操作部からの吐出指令の入力が停止されると、制御部は、モータの駆動を停止して、計測値をクリアする。従って、次に操作部から吐出指令が入力された際には、制御部は、モータを所定回転速度で駆動することにより、吐出口からのグリスの吐出動作を最初から実施させるようになる。
【0038】
少なくとも特徴1~5、9及び11を備えているグリス吐出装置では、モータの駆動中に操作部からの吐出指令の入力が停止されると、制御部は、モータの駆動を停止して、計測値を保持する。そして、操作部からの吐出指令の入力が再開されると、モータの駆動停止時に保持した計測値に基づくモータの駆動及び計測値の計測を再開する。
【0039】
このため、使用者は、グリス吐出装置からグリスを吐出させている途中で、操作部の操作によって吐出指令の入力を停止させても、その後操作部を操作して吐出指令を入力させることで、グリス吐出装置からのグリスの吐出を再開させることができる。そして、グリス吐出装置からのグリスの吐出量が所望量になったときに、モータの駆動(換言すればグリスの吐出)を自動で停止させることができる。
【0040】
2.特定の例示的な実施形態
以下に、本開示特定の例示的な実施形態を図面と共に説明する。
2-1.第1実施形態
本実施形態のグリス吐出装置1は、図1図2に示すように、使用者が操作部としてのトリガ9を引き操作することによりグリスを吐出するよう構成された、いわゆるグリスガンであり、ハウジング2を有する。
【0041】
ハウジング2は、左右の半割ハウジング2a,2bを複数のネジ3,3・・によって組み付けることにより構成される。ハウジング2の上下方向の中央部には、筒状のモータハウジング部4が前後方向に形成されている。ハウジング2の上部には、グリップ部5が前後方向に形成されている。モータハウジング部4の前側には、前結合部6が形成されている。前結合部6には、下向きに折曲するグリップ部5の前端が結合される。モータハウジング部4の後側は、上向きに立ち上がる後結合部7となっている。グリップ部5の後端は、後結合部7に結合されてループ状となっている。
【0042】
グリップ部5内には、トリガスイッチ8が収容されている。トリガスイッチ8は、グリスの吐出指令を入力するためのものであり、下向きに突出するトリガ9に接続されている。グリップ部5の前面には、LEDを用いたライト10が設けられている。グリップ部5の前部上面には、ライト10をON/OFF操作したり、グリスの吐出量を設定したりするための操作パネル70が設けられている。なお、この操作パネル70については、後に詳しく説明する。
【0043】
トリガ9の前方でグリップ部5には、トリガ9の引き込み状態を維持できるロックオンボタン12が設けられている。ロックオンボタン12の下方でトリガ9の前方には、トリガ9の引き操作を規制するロックオフボタン13が設けられている。
【0044】
後結合部7の後側には、バッテリ保持部14が形成されている。バッテリ保持部14の後側に、バッテリパック(例えば定格電圧36V)15が上方からスライド装着可能となっている。バッテリ保持部14内には、装着されたバッテリパック15が電気的に接続される端子台16が上下方向に設けられている。
【0045】
端子台16の前側でバッテリ保持部14内には、コントローラ17が上下方向に設けられている。コントローラ17は、マイコンなどの制御回路80を構成する電子部品が実装された制御回路基板18を備える。そして、コントローラ17は、使用者によるトリガ9や操作パネル70の操作に従い、ライト10や後述するモータ20の作動を制御し、操作パネル70の表示回路72に各種情報を表示させる。
【0046】
モータハウジング部4内には、モータ20が収容されている。モータ20は、ステータ21と、ステータ21の内側に位置するロータ22とを有するインナロータ型のブラシレスモータである。
【0047】
ステータ21は、前後端面に設けたインシュレータ23A,23Bを介して巻回される複数(ここでは6つ)のコイル24,24を有している。後側のインシュレータ23Bは、各コイル24を形成するワイヤがヒュージングされる図示しない端子と、短絡部材25とを備えている。
【0048】
短絡部材25は、三相の電源線27,27・・がそれぞれ接続される3つの短絡金具26,26・・をインサート成形している。各短絡金具26を各端子に接続することで、各コイル24は三相結線される。インシュレータ23Bと短絡部材25との間には、センサ回路基板28が設けられている。
【0049】
センサ回路基板28には、ロータ22の回転位置を検出するための回転検出素子(例えば3つのホール素子28A~28C)が搭載されて、複数の信号線29,29・・が接続されている。電源線27と信号線29とは、バッテリ保持部14側へ引き出されて、コントローラ17の制御回路基板18に接続されている。
【0050】
ロータ22は、軸心に回転軸30を備えている。回転軸30の周囲には、複数の永久磁石31,31・・が埋め込まれている。回転軸30の前部には、ファン32が直交状に取り付けられている。
【0051】
後結合部7の左右の側面には、複数の吸気口33,33・・・・が形成されている。吸気口33は、ファン32の回転により外部の空気を吸い込む。モータハウジング部4における左右の側面には、複数の排気口34,34・・が形成されている。排気口34は、ファン32の径方向外側及びその前方に位置して、モータハウジング部4内に吸い込んだ空気を外部に排出する。
【0052】
短絡部材25の後方で後結合部7内には、回転軸30の後端を支持する軸受35が設けられている。
モータ20の前方には、ギヤハウジング40が設けられている。ギヤハウジング40は筒状で、後端開口には、ブラケット板41が取り付けられている。回転軸30の前端は、ブラケット板41を貫通してギヤハウジング40内に突出している。ブラケット板41は、回転軸30を支持する軸受42を保持している。
【0053】
ギヤハウジング40内には、減速機構43が収容されている。減速機構43は、遊星歯車を利用して回転軸30の回転を三段階に減速し、前端に設けたスピンドル44に出力する。ギヤハウジング40の前側には、上下方向に延びるクランクハウジング45が設けられている。スピンドル44は、ギヤハウジング40からクランクハウジング45内に突出している。
【0054】
クランクハウジング45内でスピンドル44の前端には、クランク盤46が一体に設けられている。クランク盤46は、前方へ突出する偏心ピン47を備えている。クランク盤46の前方には、左右方向の長孔49を備えたスライダ48が設けられている。スライダ48は、クランクハウジング45内で上下動可能に支持されて、長孔49に偏心ピン47が挿入している。スライダ48の下端中央には、上下方向に延びる棒状のプランジャ50の上端が連結されている。
【0055】
よって、スピンドル44と共にクランク盤46が回転すると、偏心ピン47が偏心運動する。すると、偏心ピン47の上下方向のストロークでスライダ48が上下動してプランジャ50が一体に上下動する。
【0056】
クランクハウジング45の下部には、円筒状の前ホルダ51が形成されている。モータハウジング部4の下部で前ホルダ51の後方には、下方へ突出する後ホルダ52が設けられている。後ホルダ52は、前後に脚部53,53を有している。
【0057】
前ホルダ51及び後ホルダ52によって、タンク54が支持されている。タンク54は、前端を開口して後ホルダ52を後方から貫通し、前端が前ホルダ51の後面に螺合される。この状態でタンク54は、モータハウジング部4の下方で前後方向に延びる姿勢で前ホルダ51に連結される。
【0058】
タンク54内には、前端にピストン56を備えたロッド55が、前後方向へ移動可能に収容されている。ロッド55の後端は、タンク54の後端から突出し、ハンドル57が設けられている。タンク54内でピストン56の後方には、コイルバネ58が設けられて、ピストン56を前方へ付勢している。タンク54内でピストン56の前側には、グリスを充填した図示しないカートリッジが収容される。カートリッジは、コイルバネ58の付勢によって前進するピストン56に押圧されて、グリスを前ホルダ51内に供給する。
【0059】
前ホルダ51内には、ポンプ60が設けられている。ポンプ60は、プランジャ50の上下動によってタンク54から供給されるグリスを圧力を持って吐出する。ポンプ60は、プランジャ50に加え、上筒部61と下筒部62とを含む。上筒部61と下筒部62との隙間がタンク54と連通している。下筒部62内には、縦吐出路63が形成されている。縦吐出路63の下部には、逆止弁64が設けられている。
【0060】
次に、下筒部62には、縦吐出路63と連通する横吐出路66が前向きに形成されている。前ホルダ51の前面には、前方へ突出する前筒部67が形成されている。横吐出路66は、前筒部67の中心に形成され、前端がグリスの吐出口66Aとして開口されている。そして、前筒部67には、吐出口66Aから吐出されるグリスを所望の場所に導くホース68が接続されている。
【0061】
また、前筒部67の右側には、リリーフ弁69が設けられている。リリーフ弁69は、横吐出路66内のグリスの圧力が所定圧以上となるとグリスを外部に逃がすものである。
上記のように構成されたグリス吐出装置1では、カートリッジを収容したタンク54を前ホルダ51に連結した状態で、使用者がトリガ9が引き操作すると、制御回路基板18に実装された制御回路80(図4参照)がモータ20を駆動し、回転軸30を回転させる。
【0062】
すなわち、制御回路80は、本開示の制御部の一例に相当し、センサ回路基板28の回転検出素子から出力される回転検出信号に基づき、ロータ22の回転状態を検出する。そして、制御回路80は、検出したロータ22の回転状態に応じて、ステータ21の各コイル24に対し順番に三相電流を流すことでロータ22(換言すれば回転軸30)を回転させる。
【0063】
回転軸30の回転は、減速機構43で減速されてスピンドル44に伝わり、スピンドル44と共にクランク盤46を減速回転させる。これにより、偏心ピン47が偏心運動してスライダ48が上下動し、プランジャ50を上下に往復動させる。
【0064】
すると、ポンプ60では、下筒部62の縦吐出路63内を下方に押し込まれたグリスが、横吐出路66に流入し、吐出口66Aからホース68を介して吐出される。この吐出動作は、プランジャ50の往復動に伴って繰り返される。
【0065】
このため、制御回路80は、モータ20を駆動して吐出口66Aからグリスを吐出させているとき、プランジャ50の往復回数を計測することで、グリスの吐出量を制御する。
つまり、制御回路80は、プランジャ50の往復回数と、プランジャ50の一往復当たりのグリスの吐出量を表す基準吐出量とから、吐出口66Aからのグリスの実吐出量を制御することができる。
【0066】
そこで、本実施形態のグリス吐出装置1においては、使用者が、プランジャ50の往復回数を設定し、制御回路80が、使用者が設定した往復回数だけプランジャ50を往復動させることで、グリスの吐出量を制御するように構成されている。
【0067】
なお、プランジャ50の往復回数を計測するため、クランクハウジング45には、クランク盤46の回転若しくはプランジャ50の位置変化を検出してプランジャ50の一往復毎に検出信号を発生する往復回数検出素子65(図4参照)が設けられている。この往復回数検出素子65は、例えば、ホールセンサ、或いは、近接スイッチなどにて構成されている。
【0068】
そして、制御回路80は、モータ20を駆動して、吐出口66Aからグリスを吐出させているときに、往復回数検出素子65からの検出信号から計測されるプランジャ50の往復回数計測値が、所定の往復回数設定値に達すると、モータ20の駆動を停止する。
【0069】
次に、操作パネル70は、吐出口66Aからグリスを吐出させる際のモータ20の回転速度や、プランジャ50の往復回数を外部操作によって設定したり、その設定値を表示したりするのに利用される。
【0070】
上述したように、操作パネル70は、グリップ部5の前部上面に設けられている。そして、操作パネル70には、図3に示すように、3つの7セグメントディスプレイ72A,72B,72Cを含む表示回路72と、3つのボタンスイッチ74,76,78が配置されている。
【0071】
7セグメントディスプレイ72A,72B,72Cは、操作パネル70の上面の前側で、左右方向に並設されており、操作パネル70の上方から、透明な樹脂板にて覆われている。ボタンスイッチ74,76,78は、7セグメントディスプレイ72A,72B,72Cの後側で左右方向に並設されている。
【0072】
3つのボタンスイッチ74,76,78のうち、ボタンスイッチ74は、表示回路72に表示させる設定値の変更指令を入力するのに用いられるスイッチ(以下、表示切替スイッチという)である。
【0073】
また、ボタンスイッチ76及び78は、表示回路72に表示された設定値の値を変更するのに用いられるスイッチ(以下、設定スイッチという)である。つまり、設定スイッチ76は、設定値を増加させる設定スイッチ(+スイッチ)であり、設定スイッチ76は、設定値を減少させる設定スイッチ(-スイッチ)である。なお、表示切替スイッチ74は、設定スイッチ76、78の操作によって変更された設定値を確定するのにも利用される。
【0074】
従って、使用者は、操作パネル70の表示切替スイッチ74を操作することで、モータ20を駆動して吐出口66Aからグリスを吐出させる際のプランジャ50の往復回数を表示回路72に表示させることができる。また、使用者は、操作パネル70の設定スイッチ76、78を操作することで、プランジャ50の往復回数の設定値を変更することもできる。
【0075】
次に、制御回路基板18には、本開示の制御部としての制御回路80に加えて、本開示の駆動部としてのインバータ82、電源回路84、及び、4つのプルアップ抵抗Rが実装されている。また、制御回路基板18は、バッテリパック15の正極側に接続される電源ラインと、バッテリパック15の負極側に接続されるグラウンドラインとを備える。
【0076】
インバータ82は、モータ20の3つの端子と制御回路基板18の電源ラインとの間に設けられたハイサイドスイッチQ1~Q3と、モータ20の3つの端子と制御回路基板18のグラウンドラインとの間に設けられたローサイドスイッチQ4~Q6を備える。
【0077】
そして、インバータ82は、制御回路80からの駆動制御信号にて各スイッチQ1~Q6がオン・オフされることで、モータ20のステータ21の各コイルに三相電流を流し、モータ20を駆動する。なお、ハイサイドスイッチQ1~Q3及びローサイドスイッチQ4~Q6は、FET或いはバイポーラトランジスタなどの半導体スイッチの形態である。
【0078】
電源回路84は、制御回路基板18の電源ラインとグラウンドラインとの間に設けられて、制御回路80に電力供給を行うための直流定電圧(以下、電源電圧という)Vcを生成する。そして、電源回路84にて生成された電源電圧Vcは、制御回路80の他、操作パネル70の表示回路72、センサ回路基板28、及び、往復回数検出素子65にも供給される。
【0079】
そして、操作パネル70の表示回路72は、制御回路80から出力される表示制御信号を受けて、3つの7セグメントディスプレイ72A,72B,72Cに情報を表示する。また、センサ回路基板28は、図5に示すように、回転検出素子として、例えば、モータ20のロータ22の周囲に配置された3つのホール素子28A、28B、28Cを備える。この3つのホール素子28A~28Cからは、モータ20の各相に対応し、ロータ22が電気角180度回転する度に増減方向が反転する回転信号が出力される。
【0080】
センサ回路基板28若しくは制御回路80には、3つのホール素子28A~28Cからの回転信号を波形整形することで、電気角60度間隔でロータ22の回転位置を表す回転検出信号を生成する波形整形回路(図示せず)が設けられている。そして、制御回路80は、この波形整形回路からの回転検出信号に基づき、モータ20の回転位置を検知し、モータ20の回転速度を算出する。
【0081】
次に、4つのプルアップ抵抗Rは、トリガスイッチ8、表示切替スイッチ74、設定スイッチ76、78の一端に電源電圧Vcを印加することで、各スイッチ8、74~78のオン・オフ状態を制御回路80に入力する。
【0082】
つまり、各スイッチ8、74~78の他端は、制御回路基板のグラウンドラインに接続されている。従って、スイッチ8、74~78がオフ状態であれば、各スイッチ8、74~78とプルアップ抵抗Rとの接続点が電源電圧Vcと同電位のハイレベルとなる。また、スイッチ8、74~78がオン状態であれば、各スイッチ8、74~78とプルアップ抵抗Rとの接続点がグラウンドラインと同電位のローレベルとなる。
【0083】
このため、制御回路80には、各スイッチ8、74~78とプルアップ抵抗Rとの接続点が接続されており、制御回路80は、その接続点の電位に基づき、各スイッチ8、74~78のオン・オフ状態を検知することができる。
【0084】
次に、制御回路80は、例えば、CPU80Aと、ROM、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ80Bと、を有する周知のマイクロコンピュータを含む。そして、制御回路80は、CPU80Aが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することで、各種機能を実現する。なお、この例では、半導体メモリ80Bが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、制御回路80を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
【0085】
制御回路80は、CPU80Aがプログラムを実行することで実現される機能には、図5に示す機能が含まれる。すなわち、この機能には、スイッチ検出部91、往復回数設定部92、表示制御部93、往復回数計算部94、往復回数差分計算部95、モータ駆動制御部96、及び、動作制御部97としての機能が含まれる。
【0086】
なお、制御回路80によるこれらの機能は、ソフトウェアに限るものではなく、その一部又は全部の機能は、論理回路やアナログ回路等を組み合わせたハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0087】
ここで、スイッチ検出部91は、上記4つのスイッチ8、74~78のオン・オフ状態を検出する機能である。また、往復回数設定部92は、表示切替スイッチ74、設定スイッチ76、78からの入力に従い、グリス吐出時のプランジャ50の往復回数を設定する機能である。また、表示制御部93は、往復回数設定部92にて設定されたプランジャ50の往復回数を表示回路72に表示させる機能である。
【0088】
一方、往復回数計算部94は、往復回数検出素子65から入力される検出信号をカウントすることでプランジャ50の往復回数を計測する機能である。また、往復回数差分計算部95は、往復回数設定部92にて設定された往復回数設定値と、往復回数計算部94にて計測された往復回数計測値との差分、つまり、グリス吐出時にプランジャ50を往復動させるべき残りの往復回数、を算出する機能である。
【0089】
次に、モータ駆動制御部96は、動作制御部97からの指令に従い、モータ20の回転位置に応じてインバータ82内の各スイッチQ1~Q6のオン・オフタイミングを表す駆動制御信号を生成し、インバータ82に出力する機能である。そして、この機能により制御回路80から駆動制御信号が出力されると、インバータ82内の各スイッチQ1~Q6がオン・オフされて、モータ20の各相に電流が流れ、モータ20が回転する。
【0090】
また、動作制御部97は、スイッチ検出部91にてトリガスイッチ8がオン状態であることが検出されると、モータ駆動制御部96に駆動指令を出力し、トリガスイッチ8がオフ状態に切り替わると、モータ駆動制御部96に停止指令を出力する機能である。従って、この機能によりモータ駆動制御部96に駆動指令が出力されているときに、モータ20が回転し、その回転速度に応じた速度でプランジャ50が往復動して、吐出口66Aからグリスが吐出されることになる。
【0091】
また、動作制御部97からモータ駆動制御部96に出力される駆動指令には、モータ20の駆動時の目標回転速度が含まれる。そして、モータ駆動制御部96は、センサ回路基板28からの回転検出信号に基づきモータ20の回転速度を算出し、モータ20の回転速度が目標回転速度となるように、モータ20を駆動する。
【0092】
ところで、グリス吐出装置1において、吐出口66Aからのグリスの吐出速度は、モータ20の回転速度に応じて変化する。このため、図6Aに示すように、モータ20の目標回転速度を低速に設定すると、プランジャ50の往復回数で規定される一定量のグリスを吐出口66Aから吐出させるのに要する時間が長くなり、グリスの吐出作業を効率よく行うことができなくなる。
【0093】
一方、グリスの吐出作業を効率よく行うために、図6Bに示すように、モータ20の目標回転速度を高速に設定すると、作業時間を短縮することはできる。しかし、この場合、モータ20の回転によりプランジャ50が高速に往復動することから、吐出口66Aから一定量のグリスが吐出されて、モータ20の駆動を停止し、更にブレーキをかけたとしても、モータ20を速やかに停止させることができない。
【0094】
従って、モータ20の駆動を停止してから、プランジャ50が実際に停止して、グリスが吐出されなくなるまでの時間が長くなり、その間、グリスが余分に吐出されて、グリスの吐出量を所望量に制御することができなくなる。
【0095】
そこで、本実施形態では、図7に示すように、トリガスイッチ8がオン状態になって、モータ20の駆動を開始するときには、目標回転速度を高速に設定して、グリスを高速に吐出させる。そして、往復回数差分計算部95にて算出される往復回数の差分、つまり、プランジャ50を往復動させるべき残りの往復回数、が所定の閾値まで低下すると(時点t1)、目標回転速度を低速に切り替える。
【0096】
この結果、プランジャ50の往復回数計測値が往復回数設定値に到達して(時点t2)、モータ20の駆動を停止すると、その後、短時間で(時点t3)、モータ20及びプランジャ50が停止するようになり、グリスが余分に吐出されるのを抑制できる。
【0097】
次に、このようにグリスの吐出量を制御するために制御回路80にて実行される制御処理について、図8及び図9に示すフローチャートに沿って説明する。なお、このフローチャートは、上述した各機能を実現するために、CPU80Aにおいて実行されるプログラムを表している。また、この制御処理は、トリガスイッチ8が操作されることにより、モータ20を回転させて、グリスを吐出させる処理であるため、表示回路72には、グリスの吐出量を表すプランジャ50の往復回数設定値が表示されているものとする。
【0098】
図8に示すように、上記制御処理が開始されると、まずS110にて、プランジャ50の往復回数設定値と往復回数計測値との差分(往復回数設定値-往復回数計測値)を算出する、往復回数差分計算部95としての処理を実行する。
【0099】
次に、S120では、トリガスイッチ8がオン状態であるか否かを判定し、トリガスイッチ8がオン状態であれば、S200に移行し、トリガスイッチ8がオン状態でなければ、S130に移行する。
【0100】
S130では、トリガスイッチ8がオフ状態であるので、モータ20の駆動を停止し、S140に移行する。なお、S130では、モータ20の回転を速やかに停止させるために、単にモータ20への通電を停止するだけでなく、所謂短絡ブレーキによりモータ20に制動力を発生させる。
【0101】
S140では、S110にて算出されたプランジャ50の往復回数差分が、「0」であるか否か、つまり、往復回数計測値が往復回数設定値に達しているか否かを判定する。そして、往復回数差分が「0」であれば、S150に移行して、往復回数計測値をリセットした後、S160に移行し、往復回数差分が「0」でなければ、そのままS160に移行する。
【0102】
S160では、設定スイッチ76、78が操作されたか否かを判定する。そして、設定スイッチ76、78が操作されていれば、S170にて、往復回数計測値をリセットし、続くS180にて、設定スイッチ76、78の操作に応じて往復回数設定値を変更した後、S190に移行する。また、設定スイッチ76、78が操作されていなければ、そのままS190に移行する。そして、S190では、S180にて変更された往復回数設定値を、表示回路72に表示し、S110に移行する。
【0103】
次に、S200では、S140と同様、S110にて算出されたプランジャ50の往復回数差分が「0」であるか否かを判定する。そして、S200にて、往復回数差分が「0」で、往復回数計測値が往復回数設定値に達していると判定すると、S210に移行して、モータ20の駆動を停止し、S190に移行する。なお、S210においても、上述したS130と同様、モータ20の回転を速やかに停止させるために、モータ20に制動力を発生させる。
【0104】
一方、S200にて、往復回数差分は「0」ではないと判定されると、吐出口66Aからグリスを吐出させる必要があるので、S300に移行し、図9に示す手順で、モータ駆動制御を実施する。そして、S300のモータ駆動制御が終了すると、S190に移行する。
【0105】
図9に示すように、モータ駆動制御は、S310にて、S110にて算出された往復回数差分が、予め設定された閾値未満であるか否かを判定することにより開始される。そして、S310にて、往復回数差分は閾値未満であると判定されると、S320に移行し、モータ20の回転速度が第1速度となるように、モータ20を駆動する。
【0106】
また、S310にて、往復回数差分は閾値未満ではない(つまり、閾値以上である)と判定されると、S330に移行し、モータ20の回転速度が、第1速度よりも大きい第2速度となるように、モータ20を駆動する。
【0107】
第1速度及び第2速度は、モータ20を駆動する際の目標回転速度であり、第2速度は第1速度よりも高いことから、図7に示すように、モータ20の駆動開始後、往復回数差分が閾値以上となる時点t1までの間、モータ20は、第2速度で高速駆動される。
【0108】
そして、モータ20が高速駆動されているときに、往復回数差分が閾値まで減少すると、モータ20の目標回転速度が第1速度に切り替えられて、モータ20は、第1速度で低速駆動される。
【0109】
S320若しくはS330にて、モータ20が第1速度若しくは第2速度となるように駆動されると、S400に移行し、プランジャ50の往復回数を計測して往復回数計測値を更新し、当該モータ駆動制御を終了する。
【0110】
従って、図7に示すように、時点t1でモータ20の低速駆動が開始されてから、時点t2で往復回数差分が「0」になると、モータ20の駆動が停止され、短絡ブレーキによりモータ20に発生する制動力によって、モータ20の回転が停止する。
【0111】
そして、このようにモータ20の駆動を停止する際には、モータ20の回転速度は第2速度まで低下していることから、モータ20の駆動停止後、モータ20が実際に停止するまでの時間が、図6Bに示した停止時間に比べて短くなる。
【0112】
このため、本実施形態のグリス吐出装置1によれば、グリスの吐出作業開始直後からモータ20を高速回転させることで、作業時間が長くなるのを抑制しつつ、モータ20の駆動停止後に吐出されるグリスの量を抑制することができる。よって、グリスの吐出作業を、効率よく、しかも、より適正に実施することが可能となる。
【0113】
ここで、本実施形態では、S300のモータ駆動制御において、モータ20の回転速度は、往復回数差分に応じて、高速の第2速度と、低速の第1速度との2段階に切り替えるものとして説明した。
【0114】
しかし、S300のモータ駆動制御においては、往復回数差分に応じて、モータ20の回転速度を、3段階以上の多段階に切り替えることで、モータ20を段階的に減速させるようにしてもよい。また、モータ20の回転速度は、往復回数差分が低下するに従い、連続的に減速させるようにしてもよい。
【0115】
そこで、このようにモータ20の回転速度を制御する際に実施されるモータ駆動制御について、本第1実施形態の第1変形例~第3変形例として説明する。
2-1-1.第1変形例
図10に示すように、第1変形例のモータ駆動制御においては、S312にて、往復回数差分が予め設定された第1閾値未満であるか否かを判定し、第1閾値未満であれば、S320にて、回転速度が第1速度となるようにモータ20を駆動する。
【0116】
また、S312にて、往復回数差分が第1閾値未満ではない(つまり、第1閾値以上である)と判定されると、S314に移行し、往復回数差分は、第1閾値よりも大きい第2閾値未満であるか否かを判定する。
【0117】
そして、S314にて、往復回数差分は第2閾値未満であると判定されると、S330に移行して、回転速度が第1速度よりも大きい第2速度となるように、モータ20を駆動する。
【0118】
また、S314にて、往復回数差分は第2閾値未満ではない(つまり、第2閾値以上である)と判定されると、S340に移行して、回転速度が第2速度よりも更に大きい第3速度となるように、モータ20を駆動する。
【0119】
そして、S320~S340にて、モータ20が第1~第3速度となるように駆動されると、S400に移行し、プランジャ50の往復回数を計測して往復回数計測値を更新し、当該モータ駆動制御を終了する。
【0120】
このように、第1変形例のモータ駆動制御によれば、モータ20の駆動開始後、プランジャ50の往復回数差分に応じて、モータ20の回転速度が、第3速度から、第2速度、第1速度、というように順に切り替えられることになる。
【0121】
よって、本第1変形例では、モータ20の駆動を停止するまでの間に、モータ20の回転速度を段階的に低下させることができるようになり、モータ20の駆動停止後、モータ20が実際に停止するまでの時間を、より確実に短くすることができる。
【0122】
なお、図10に示すモータ駆動制御では、モータ20の目標回転速度を3段階に切り替えるようにしているが、図11に例示するように、モータ20の目標回転速度は、4段階以上の多段階に切り替えるようにしてもよい。
【0123】
つまり、図11においては、モータ20の目標回転速度を6段階に切り替えた場合のモータ20の回転速度とプランジャ50の往復回数の変化を表している。そして、この場合には、図10に示すモータ駆動制御において、S312、S314での往復回数差分と閾値との判定処理を5段階に行うようにすることで、上記と同様に実施することができる。
【0124】
そして、このようにモータ20の目標回転速度の切替段数を多くすることで、グリスの吐出量が少なく、プランジャ50の往復回数設定値が小さくなる場合でも、モータ20の駆動停止前の高速動作の区間を確保することが可能となる。
【0125】
2-1-2.第2変形例
図12に示すように、第2変形例のモータ駆動制御においては、まず、S350にて、プランジャ50の往復回数差分に基づき、モータ20の駆動速度(つまり目標回転速度)を算出する。具体的には、往復回数差分と、予め設定された係数と、予め設定された最低速度とをパラメータとする次式(1)を用いて、モータ20の目標回転速度を算出する。
【0126】
目標回転速度=往復回数差分×係数+最低速度 …(1)
次に、S360では、S350にて算出した駆動速度でモータ20を駆動する。そして、S400にて、プランジャ50の往復回数を計測して、往復回数計測値を更新し、当該モータ駆動制御を終了する。
【0127】
このように、第2変形例では、モータ20の駆動速度を、プランジャ50の往復回数差分に基づき設定することから、モータ20の駆動開始直後には、モータ20の駆動速度が、プランジャ50の往復回数設定値に対応した最大速度に設定される。そして、モータ20の駆動開始後、往復回数計測値が増加して、往復回数差分が小さくなるに従い、モータ20の駆動速度が低下する。
【0128】
従って、モータ20の駆動速度は、モータ20の駆動開始後、往復回数差分に応じて連続的に低下することになり、モータ20の駆動を停止するときのモータ20の回転速度を、モータ20の駆動開始直後の回転速度から充分低下させることができる。
【0129】
よって、本第2変形例においても、グリス吐出装置1によるグリスの吐出作業時間が長くなるのを抑制しつつ、モータ20の駆動停止後に吐出されるグリスの量を抑制することができ、グリスの吐出作業を、効率よく、適正に実施することが可能となる。
【0130】
2-1-3.第3変形例
図13に示すように、第3変形例のモータ駆動制御においては、まずS310にて、プランジャ50の往復回数差分が、予め設定された閾値未満であるか否かを判定する。そして、S310にて、往復回数差分は閾値未満ではない(つまり閾値以上である)と判定されると、S370に移行して、モータ20を予め設定された最高速度で駆動し、S400に移行する。
【0131】
一方、S310にて、往復回数差分は閾値未満であると判定されると、S380に移行して、プランジャ50の往復回数差分に基づき、上述した(1)式を用いて、モータ20の駆動速度(つまり目標回転速度)を算出し、S390に移行する。
【0132】
S390では、S380にて算出した駆動速度でモータ20を駆動し、S400に移行する。そして、S400では、上記実施形態及び上記各変形例と同様、プランジャ50の往復回数を計測して、往復回数計測値を更新し、当該モータ駆動制御を終了する。
【0133】
このように、第3変形例では、図14に示すように、モータ20の駆動を開始してから、プランジャ50の往復回数差分が閾値未満となる時点t1までの間、モータ20は、予め設定された最高速度となるように駆動される。そして、時点t1以降は、往復回数差分に応じて、モータ20の目標回転速度が設定されることから、モータ20の回転速度は、往復回数差分が小さくなるに従い低下する。
【0134】
従って、本第3変形例においても、モータ20の駆動を停止するときのモータ20の回転速度を、モータ20の駆動開始直後の最高速度から充分低下させることができ、第2変形例と同様の効果を得ることができる。また、本第3変形例では、モータ20の駆動開始後、往復回数差分が閾値に達するまでの間、モータ20は最高速度で駆動されることから、第2変形例に比べて、グリスの吐出作業時間を短くすることができる。
【0135】
2-1-4.第4変形例
次に、図8に示した制御処理では、モータ20の駆動を開始してから、トリガスイッチ8がオフ状態となって、モータ20の駆動を停止しても、S140にて、往復回数差分が「0」であると判定されるまでは、往復回数計測値をリセットしないようにされている。
【0136】
これは、モータ20の駆動によって、往復回数差分が「0」になるまでは、往復回数計測値を保持することで、次にトリガスイッチ8がオン状態となってから、グリスの吐出作業を継続できるようにするためである。
【0137】
これに対し、第4変形例では、制御処理を図15に示す手順で実施し、S120にて、トリガスイッチ8がオフ状態であると判定されると、S140にて往復回数差分が「0」か否かを判定することなく、S150にて往復回数計測値をリセットする。
【0138】
このため、本第4変形例では、トリガスイッチ8が一旦オフ状態に切り替えられて、次にトリガスイッチ8がオン状態になったときには、グリスの吐出作業を最初から実施することができるようになる。
【0139】
なお、図15に示す本第4変形例の制御処理では、トリガスイッチ8がオフ状態に切り替えられると、往復回数計測値がリセットされるので、図8に示すS170の処理は実施しない。
【0140】
また、トリガスイッチ8がオフ状態であるときには、S140での往復回数差分の判定は実施されないことから、S110での往復回数差分の計算処理は、S120にてトリガスイッチ8がオン状態であると判定されたときに、S220にて実行する。
【0141】
そして、S220にて、往復回数差分が算出されると、S230に移行して、S220にて算出されたプランジャ50の往復回数差分が「0」であるか否かを判定し、往復回数差分が「0」であれば、S240に移行して、モータ20の駆動を停止する。
【0142】
また、S230にて、往復回数差分が「0」ではないと判定されると、S300に移行して、上述したモータ駆動制御を実施する。そして、S240又はS300の処理実行後は、S190に移行する。なお、S300のモータ駆動制御は、図9に示した手順で実施されてもよいし、第1変形例~第3変形例と同様の手順で実施されてもよい。
【0143】
2-2.第2実施形態
次に、本開示の第2実施形態について説明する。
本実施形態のグリス吐出装置1は、第1実施形態とほぼ同様に構成されており、第1実施形態との相違点は、図16に示すように、往復回数検出素子65が備えられていない点と、制御回路80の機能構成及び制御処理の一部が第1実施形態と異なる点である。
【0144】
そこで、本実施形態では、第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同じ点については、説明を省略する。
図16に示すように、本実施形態では、往復回数検出素子65がなく、往復回数検出素子65からの検出信号を用いて、プランジャ50の往復回数を計測することができない。このため、制御回路80には、プランジャ50の往復回数計算部94及び往復回数差分計算部95の機能に代えて、モータ20の回転回数計算部98及び回転回数差分計算部99の機能が備えられている。
【0145】
ここで、回転回数計算部98は、センサ回路基板28からの回転検出信号に基づき、駆動開始後のモータ20の回転回数をカウントすることで、プランジャ50の往復回数に対応する、モータ20の回転回数を計測する機能である。
【0146】
また、回転回数差分計算部99は、減速機構43の減速比(以下、ギヤ比という)に基づき、プランジャ50の往復回数設定値をモータ20の回転回数目標値に換算し、その回転回数目標値と回転回数計算部98による計測値との差分を算出する機能である。
【0147】
そして、動作制御部97は、モータ20の高速駆動を開始してから、回転回数差分計算部99にて算出される回転回数の差分が所定の閾値まで低下すると、モータ20の回転速度を低速に切り替える。また、動作制御部97は、モータ20の回転回数計測値が回転回数目標値に到達すると、モータ20の駆動を停止する。このため、本実施形態においても、モータ20の駆動を停止すると、モータ20及びプランジャ50が短時間で停止するようになり、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0148】
次に、このようにグリスの吐出量を制御するために実行される本実施形態の制御処理について、図17及び図18に示すフローチャートに沿って説明する。
図17に示すように、本実施形態の制御処理においては、まずS500にて、プランジャ50の往復回数設定値と、減速機構43のギヤ比とに基づき、モータ20の回転回数目標値を算出する。そして、続くS510では、モータ20の回転回数目標値と計測値との差分(回転回数目標値-回転回数計測値)を算出する、回転回数差分計算部99としての処理を実行する。
【0149】
次に、S520では、上述したS120と同様、トリガスイッチ8がオン状態であるか否かを判定し、トリガスイッチ8がオン状態であれば、S600に移行し、トリガスイッチ8がオン状態でなければ、S530に移行する。
【0150】
S530では、トリガスイッチ8がオフ状態であるので、上述した130と同様、モータ20の駆動を停止し、S540に移行する。S540では、S510にて算出されたプランジャ50の回転回数差分が、「0」であるか否かを判定する。そして、回転回数差分が「0」であれば、S550に移行して、回転回数計測値をリセットした後、S560に移行し、回転回数差分が「0」でなければ、そのままS560に移行する。
【0151】
S560では、設定スイッチ76、78が操作されたか否かを判定する。そして、設定スイッチ76、78が操作されていれば、S570にて、回転回数計測値をリセットし、続くS580にて、設定スイッチ76、78の操作に応じて往復回数設定値を変更した後、S590に移行する。また、設定スイッチ76、78が操作されていなければ、そのままS590に移行する。そして、S590では、上述したS190と同様、S580にて変更された往復回数設定値を、表示回路72に表示し、S500に移行する。
【0152】
次に、S600では、S510にて算出されたモータ20の回転回数差分が「0」であるか否かを判定する。そして、S600にて、回転回数差分が「0」で、回転回数計測値が回転回数目標値に達していると判定すると、S610に移行して、上述したS210と同様、モータ20の駆動を停止し、S590に移行する。
【0153】
一方、S600にて、回転回数差分は「0」ではないと判定されると、吐出口66Aからグリスを吐出させる必要があるので、S700に移行し、図18に示す手順で、モータ駆動制御を実施する。そして、S700のモータ駆動制御が終了すると、S590に移行する。
【0154】
図18に示すように、モータ駆動制御は、S710にて、S510にて算出された回転回数差分が、予め設定された閾値未満であるか否かを判定することにより開始される。そして、S710にて、回転回数差分は閾値未満であると判定されると、S720に移行し、モータ20の回転速度が第1速度となるように、モータ20を駆動する。
【0155】
また、S710にて、回転回数差分は閾値未満ではない(つまり、閾値以上である)と判定されると、S730に移行し、モータ20の回転速度が、第1速度よりも大きい第2速度となるように、モータ20を駆動する。
【0156】
この結果、モータ20の駆動開始後、回転回数差分が閾値以上の間、モータ20は、第2速度で高速駆動され、回転回数差分が閾値まで低下すると、目標回転速度が第1速度に切り替えられて、モータ20は、第1速度で低速駆動されるようになる。
【0157】
そして、S720若しくはS730にて、モータ20が第1速度若しくは第2速度となるように駆動されると、S800に移行し、モータ20の回転回数を計測して、回転回数計測値を更新し、当該モータ駆動制御を終了する。
【0158】
このため、本実施形態において、モータ20の回転速度は、モータ20の回転回数差分が「0」になって、モータ20の駆動を停止するまでの間に、高速から低速に切り替えられるようになる。
【0159】
従って、本実施形態においても、モータ20の駆動停止後、モータ20の回転が停止するまでの時間を、図6Bに示した停止時間に比べて短くすることができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0160】
ここで、図18に示すモータ駆動制御処理は、第1実施形態の第1~第3変形例と同様に変更することができる。また、図17に示す制御処理についても、第1実施形態の第4変形例と同様に変更することができる。
【0161】
そこで、次に、第1実施形態の第1~第4変形例に対応して、本実施形態の第1~第4変形例について説明する。
2-2-1.第1変形例
図19に示すように、第1変形例のモータ駆動制御においては、S712にて、回転回数差分が予め設定された第1閾値未満であるか否かを判定し、第1閾値未満であれば、S720にて、回転速度が第1速度となるようにモータ20を駆動する。
【0162】
また、S712にて、回転回数差分が第1閾値未満ではない(つまり、第1閾値以上である)と判定されると、S714に移行し、回転回数差分は、第1閾値よりも大きい第2閾値未満であるか否かを判定する。
【0163】
そして、S714にて、回転回数差分は第2閾値未満であると判定されると、S730に移行して、回転速度が第1速度よりも大きい第2速度となるように、モータ20を駆動する。
【0164】
また、S714にて、回転回数差分は第2閾値未満ではない(つまり、第2閾値以上である)と判定されると、S740に移行して、回転速度が第2速度よりも更に大きい第3速度となるように、モータ20を駆動する。
【0165】
そして、S720~S740にて、モータ20が第1~第3速度となるように駆動されると、S800に移行し、モータ20の往復回数を計測して往復回数計測値を更新し、当該モータ駆動制御を終了する。
【0166】
このように、第1変形例のモータ駆動制御によれば、モータ20の駆動開始後、モータ20の回転回数差分に応じて、モータ20の回転速度が、第3速度から、第2速度、第1速度、というように順に切り替えられることになる。
【0167】
よって、本第1変形例では、モータ20の駆動を停止するまでの間に、モータ20の回転速度を段階的に低下させることができるようになり、モータ20の駆動停止後、モータ20が実際に停止するまでの時間を、より確実に短くすることができる。
【0168】
なお、図19に示すモータ駆動制御では、モータ20の目標回転速度を3段階に切り替えるようにしているが、第1実施形態の第1変形例と同様、モータ20の目標回転速度は、4段階以上の多段階に切り替えるようにしてもよい。
【0169】
2-2-2.第2変形例
図20に示すように、第2変形例のモータ駆動制御においては、まず、S750にて、モータ20の回転回数差分に基づき、モータ20の駆動速度(つまり目標回転速度)を算出する。具体的には、回転回数差分と、予め設定された係数と、予め設定された最低速度とをパラメータとする次式(2)を用いて、モータ20の目標回転速度を算出する。
【0170】
目標回転速度=回転回数差分×係数+最低速度 …(2)
次に、S760では、S750にて算出した駆動速度でモータ20を駆動する。そして、S800にて、モータ20の回転回数を計測して、回転回数計測値を更新し、当該モータ駆動制御を終了する。
【0171】
このように、第2変形例では、モータ20の駆動速度を、モータ20の回転回数差分に基づき設定することから、モータ20の駆動開始直後には、モータ20の駆動速度が、モータ20の回転回数目標値に対応した最大速度に設定される。そして、モータ20の駆動開始後、回転回数計測値が増加して、回転回数差分が小さくなるに従い、モータ20の駆動速度が低下する。
【0172】
従って、モータ20の駆動速度は、モータ20の駆動開始後、回転回数差分に応じて連続的に低下することになり、モータ20の駆動を停止するときのモータ20の回転速度を、モータ20の駆動開始直後の回転速度から充分低下させることができる。よって、本第2変形例においても、第1実施形態の第2変形例と同様の効果を得ることができる。
【0173】
2-2-3.第3変形例
図21に示すように、第3変形例のモータ駆動制御においては、まずS710にて、モータ20の回転回数差分が、予め設定された閾値未満であるか否かを判定する。そして、S710にて、回転回数差分は閾値未満ではない(つまり閾値以上である)と判定されると、S770に移行して、モータ20を予め設定された最高速度で駆動し、S800に移行する。
【0174】
一方、S710にて、回転回数差分は閾値未満であると判定されると、S780に移行して、モータ20の回転回数差分に基づき、上述した(2)式を用いて、モータ20の駆動速度(つまり目標回転速度)を算出し、S790に移行する。
【0175】
S790では、S780にて算出した駆動速度でモータ20を駆動し、S800に移行する。そして、S800では、モータ20の往復回数を計測して、往復回数計測値を更新し、当該モータ駆動制御を終了する。
【0176】
このように、第3変形例では、モータ20の駆動を開始してから、モータ20の回転回数差分が閾値未満となる時点t1までの間、モータ20は、予め設定された最高速度となるように駆動される。そして、時点t1以降は、回転回数差分に応じて、モータ20の目標回転速度が設定されることから、モータ20の回転速度は、回転回数差分が小さくなるに従い低下する。
【0177】
従って、本第3変形例においても、モータ20の駆動を停止するときのモータ20の回転速度を、モータ20の駆動開始直後の最高速度から充分低下させることができ、第2変形例と同様の効果を得ることができる。また、本第3変形例では、モータ20の駆動開始後、回転回数差分が閾値に達するまでの間、モータ20は最高速度で駆動されることから、第2変形例に比べて、グリスの吐出作業時間を短くすることができる。
【0178】
2-2-4.第4変形例
第4変形例では、制御回路80が、図17に示した制御処理に代えて、図22に示す制御処理を実施する。
【0179】
すなわち、本第4変形例において、制御処理が開始されると、まずS520にて、トリガスイッチ8がオフ状態であるか否かを判定する。そして、S520にて、トリガスイッチ8がオフ状態であると判定されると、S530にて、モータ20の駆動を停止し、その後、S540の判定処理を実施することなく、S550にて、回転回数計測値をリセットする。
【0180】
このため、本第4変形例では、第1実施形態の第4変形例と同様、トリガスイッチ8が一旦オフ状態に切り替えられて、次にトリガスイッチ8がオン状態になったときには、グリスの吐出作業を最初から実施することができるようになる。
【0181】
なお、本第4変形例の制御処理は、図17に示した制御処理とほぼ同じであるが、トリガスイッチ8がオフ状態に切り替えられると、往復回数計測値がリセットされるので、図17に示すS570の処理は実施しない。
【0182】
また、トリガスイッチ8がオフ状態であるとき、S540での往復回数差分の判定は実施されないことから、図17に示したS500、S510の計算処理は、S520にてトリガスイッチ8がオン状態であると判定されたときに、S620、S630にて実行する。
【0183】
そして、S630にて、モータ20の回転回数差分が算出されると、S640に移行して、モータ20の回転回数差分が「0」であるか否かを判定し、回転回数差分が「0」であれば、S650に移行して、モータ20の駆動を停止する。
【0184】
また、S640にて、回転回数差分が「0」ではないと判定されると、S700に移行して、上述したモータ駆動制御を実施する。そして、S650又はS700の処理実行後は、S590に移行する。
【0185】
なお、第4変形例の制御処理において、S700のモータ駆動制御は、図18に示した手順で実施されてもよいし、図19図21に記載の、第1変形例~第3変形例と同様の手順で実施されてもよい。
【0186】
2-3.他の実施形態
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0187】
例えば、上記実施形態では、制御回路80は、モータ20の目標回転速度を設定し、プランジャ50の往復回数設定値と計測値との差分、若しくは、モータ20の回転回数設定値と計測値との差分に応じて、目標回転速度を低下させるものとして説明した。
【0188】
しかし、モータ20の回転速度は、モータ20への通電電流を制御するために設定されるインバータ82の駆動デューティによって変化することから、目標回転速度に代えて、インバータ82の駆動デューティを設定するようにしてもよい。そして、上記実施形態と同様、この駆動デューティを、目標回転速度に対応した初期値から、往復回数差分或いは回転回数差分に応じて低下させるようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0189】
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0190】
また、本開示は、グリス吐出装置の他、グリス吐出装置を構成要素とするシステム、グリス吐出装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、グリス吐出量検出方法など、種々の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0191】
1…グリス吐出装置、20…モータ、50…プランジャ、60…ポンプ、80…制御回路、82…インバータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22