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▶ 倉敷レーザー株式会社の特許一覧

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  • 特開-レーザー溶接方法 図1
  • 特開-レーザー溶接方法 図2
  • 特開-レーザー溶接方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008448
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】レーザー溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/14 20140101AFI20250109BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20250109BHJP
【FI】
B23K26/14
B23K26/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110629
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】594187105
【氏名又は名称】倉敷レーザー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 敢
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CB04
4E168CB08
4E168EA15
4E168FB03
(57)【要約】
【課題】ウォブリング溶接における溶接部位の酸化が防止されるレーザー溶接方法を提供する。
【解決手段】ロボットアーム31に取り付けられた照射ヘッド2からレーザー光を照射するレーザー溶接装置3により、レーザー光を細かく動かしながら照射ヘッド2を移動させて金属材料5をウォブリング溶接するに際し、同一直線上にある第1開口111及び第2開口121を結ぶ筒状の閉空間部1を、第1開口111を照射ヘッド2に密着させて取り付けた状態で、閉空間部1の内部にシールドガス6を供給しながら、第1開口111から第2開口121を経て放出するレーザー光4によりウォブリング溶接するレーザー溶接方法である。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームに取り付けられた照射ヘッドからレーザー光を照射するレーザー溶接装置により、レーザー光を細かく動かしながら照射ヘッドを移動させて金属材料をウォブリング溶接するに際し、
同一直線上にある第1開口及び第2開口を結ぶ筒状の閉空間部を、第1開口を照射ヘッドに密着させて取り付けた状態で、閉空間部の内部にシールドガスを供給しながら、第1開口から第2開口を経て放出するレーザー光によりウォブリング溶接するレーザー溶接方法。
【請求項2】
閉空間部は、第1開口から第2開口に向けて窄まる錐台状で、第1開口に寄せた位置からシールドガスが供給される請求項1記載のレーザー溶接方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォブリング溶接を用いたレーザー溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウォブリング溶接は、レーザー光を細かく動かして例えば楕円形を描きながら照射位置を移動させて、見た目が綺麗で、強度に優れた溶接ビードを作り出せるレーザー溶接方法である。レーザー光は、照射位置を細かく動かす駆動手段(例えばガルバノミラーを用いた光学系)を備えた照射ヘッドから照射される。照射ヘッドは、ロボットアームに取り付けられ、ロボットアームに従ってレーザー光の照射位置を移動させる。これにより、レーザー光は、細かく動かしながら照射位置を移動させられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-123008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウォブリング溶接は、見た目が綺麗で、強度に優れた溶接ビードを作り出せることから、多種多様な金属材料の溶接に用いられる。ウォブリング溶接による溶接ビードは、従来に比べ、溶け込み量の幅及び深さが大きくなることで、見た目が綺麗で、優れた強度を得る。しかし、溶け込み量の幅及び深さが大きくなると、溶接部位の熱量が高くなり、材料によって溶接部位の酸化を招き、溶接品質の低下をもたらすことがあった。そこで、ウォブリング溶接における溶接部位の酸化が防止されるレーザー溶接方法を検討した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
検討の結果開発したものが、ロボットアームに取り付けられた照射ヘッドからレーザー光を照射するレーザー溶接装置により、レーザー光を細かく動かしながら照射ヘッドを移動させて金属材料をウォブリング溶接するに際し、同一直線上にある第1開口及び第2開口を結ぶ筒状の閉空間部を、第1開口を照射ヘッドに密着させて取り付けた状態で、閉空間部の内部にシールドガスを供給しながら、第1開口から第2開口を経て放出するレーザー光によりウォブリング溶接するレーザー溶接方法である。
【0006】
同一直線上にある第1開口及び第2開口を結ぶ筒状の閉空間部は、照射ヘッドの照射口を囲んだ状態で第1開口を照射ヘッドに密着させて取り付ける。閉空間部の内部に供給されたシールドガスは、上昇する内圧に押されて第2開口からレーザー光の照射位置の周辺に放出される。第2開口から放出されたシールドガスは、レーザー光が照射される溶接部位を中心とする周囲に一時滞留し、その後周囲に拡散する。本発明のシールドガスは、金属材料の酸化を抑制する窒素ガスやアルゴンガスである。
【0007】
閉空間部の外形状は問わず、シールドガスの供給位置も自由である。しかし、閉空間部は、第1開口から第2開口に向けて窄まる錐台状で、第1開口に寄せた位置からシールドガスが供給される構成が好ましい。シールドガスは、内部空間の大きな第1開口寄りに溜まり、内圧の上昇に加えて、自身の重みにより、相対的に第1開口より下方に位置する第2開口からより多くが放出され、溶接部位を囲む広い範囲に一時滞留し、溶接部位を外気から広い範囲で遮断できる。また、閉空間部は、照射ヘッドに密着させる第1開口は大きいので、照射ヘッドに対する取付部位の数を増やしやすい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレーザー溶接方法は、ウォブリング溶接における溶接部位の酸化を防止させる。これは、照射ヘッドに取り付けた閉空間部の内部に供給したシールドガスを、第2開口を経て放出されるレーザー光に沿わせて溶接位置に放出、一時滞留させることによる効果である。第1開口から第2開口に向けて窄まる錐台状で、第1開口に寄せた位置からシールドガスが供給される閉空間部は、シールドガスを第2開口からより多く放出させて溶接部位を外気から広い範囲で遮断し、溶接部位の酸化をよりよく防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に利用されるレーザー溶接装置の一例を表す斜視図である。
図2】閉空間部を取り付けた本例の照射ヘッドを表す正面図である。
図3】ウォブリング溶接をする状態における本例の照射ヘッドの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明のレーザー溶接方法は、図1に見られるように、照射ヘッド2をロボットアーム31に取り付けた溶接装置3によりウォブリング溶接する場合に用いられる。照射ヘッド2は、ロボットアーム31に従ってレーザー光を細かく動かしながら照射位置を移動させ、例えば作業台32に載せられた2枚の板材である金属材料5をウォブリング溶接して接合する。本発明のレーザー溶接方法に重要な閉空間部1は、照射ヘッド2に取り付けられる。
【0011】
本例の閉空間部1は、図2及び図3に見られるように、上段の取付用外筒11と下段の錐台状本体12とからなる筒体である。第1開口111は、取付用外筒11の円形である上端開口である。第2開口121は、錐台状本体12の円形である下端開口である。取付用外筒11は、錐台状本体12を照射ヘッド2に安定かつ強固に取り付ける接続部材である。閉空間部1が錐台状本体12を照射ヘッド2に直接取り付けることのできる構成であれば、取付用外筒11はなくても構わない。
【0012】
本例の取付用外筒11は、錐台状本体12の上端開口から上方へ延びる金属製の円筒部材で、錐台状本体12との境界に、半径方向外向きに張り出した環状の支持用段差112を設けている。本例の取付用外筒11は、錐台状本体12と一体の部材であるが、錐台状本体12と別体として、従来公知の接続手段(例えばボルト及びナット)により錐台状本体12と接続、一体にしてもよい。
【0013】
取付用外筒11は、照射口21を中心として照射ヘッド2の下面から下方に突出させた取付用内筒22に外嵌し、同じく照射ヘッド2の下面から吊り棒231で吊り下げられた環状の支持用リング23を支持用段差112に下方から掛合させることにより、照射ヘッド2に取り付けられる。取付用外筒11及び取付用内筒22の隙間は、シール(図示略)を施すことにより、閉空間部1の上端側における密閉性を高め、シールドガス6が第1開口111から漏れ出ないようにしている。
【0014】
本例の錐台状本体12は、下方に向かって窄み、下端に第2開口121を設けた金属製の逆さ円錐台部材で、取付用外筒11との境界に隣接した高さの点対象位置に2つの第1供給口122を設け、第2開口121に寄せた高さに1つの第2供給口123を設けている。第1供給口122及び第2供給口123は、それぞれガス供給手段(図示略)から延びるガス供給ホース(図示略)が接続される。シールドガス6は、第1供給口122及び第2供給口123から閉空間部1の内部に供給される。
【0015】
閉空間部1は、円形である第1開口111及び第2開口121が中心を同一直線上に揃えており、第1開口111の中心を照射口21に一致させて照射ヘッド2に取り付けられる。また、第2開口121は、ウォブリング溶接のためにレーザー光4を動かす範囲(図3中太実線及び仮想線参照)が収まる大きさに形成されている。これにより、照射ヘッド2の照射口21から照射されたレーザー光4は、ウォブリング溶接のために動かされても、第1開口111から第2開口112を経て溶接部位51に放射される。
【0016】
本例の溶接装置3は、図3に見られるように、第1供給口122及び第2供給口123から閉空間部1の内部に供給されたシールドガス6を第2開口121から放出しながら、細かく動かすレーザー光4により、例えば2枚の金属材料5を突き合わせた側縁を溶接部位51としてウォブリング溶接する。閉空間部1は、上端の第1開口111が照射ヘッド2に塞がれ、下端の第2開口121だけが開放されている。また、閉空間部1は、錐台状本体12の大径部分にある2つの第1供給口122から、錐台状本体12の小径部分にある1つの第2供給口123より多くのシールドガス6が供給される。
【0017】
レーザー光4は、ロボットアーム31の姿勢により、多少の傾斜をもって照射される場合もあるが、概ね下向きに照射される。これにより、閉空間部1はだいたいにおいて第2開口121を下方に向けることから、閉空間部1の内圧を上昇させシールドガス6は、唯一開放された第2開口121に向けて押し出され、十分な流量で放出される。ウォブリング溶接するレーザー光4は、第2開口121の範囲で細かく動くが、十分な流量で放出されるシールドガス6が溶接部位51を含む広い範囲を遮断するので、溶接部位51の酸化を防止したウォブリング溶接が実現される。
【符号の説明】
【0018】
1 閉空間部
11 取付用外筒
111 第1開口
112 支持用段差
12 錐台状本体
121 第2開口
122 第1供給口
123 第2供給口
2 照射ヘッド
21 照射口
22 取付用内筒
23 支持用リング
231 吊り棒
3 溶接装置
31 ロボットアーム
32 作業台
4 レーザー光
5 金属材料
51 溶接部位
6 シールドガス

図1
図2
図3