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特開2025-8486水防設備操作支援システム、水防設備操作支援方法および水防設備操作支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008486
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】水防設備操作支援システム、水防設備操作支援方法および水防設備操作支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/00 20060101AFI20250109BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20250109BHJP
   G06Q 50/26 20240101ALI20250109BHJP
   G05D 9/12 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E02B3/00
G05B23/02 R
G05B23/02 X
G06Q50/26
G05D9/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110700
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 良
【テーマコード(参考)】
3C223
5H309
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C223AA06
3C223BA03
3C223BB12
3C223BB13
3C223CC03
3C223DD03
3C223EB01
3C223FF03
3C223FF05
3C223FF13
3C223FF14
3C223FF22
3C223FF26
3C223FF43
3C223FF52
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH29
5H309AA06
5H309BB05
5H309BB18
5H309CC09
5H309DD08
5H309DD22
5H309EE04
5H309EE05
5H309FF01
5H309FF09
5H309FF17
5H309GG03
5H309HH17
5H309HH21
5H309JJ06
5H309KK04
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】水防設備に対する適切な操作の実施を支援する水防設備操作支援システムを得ること。
【解決手段】水防設備操作支援システム1は、河川の複数地点における水位の計測値を含む河川の計測データ23を取得する計測データ取得部31と、河川の流域に設けられる河川設備400の稼働状況を含む周囲環境データを取得する周囲環境データ取得部41と、計測データ23および周囲環境データに基づいて河川の複数の地点における将来の水位を予測する水位予測部11と、水位予測部11が予測した複数の地点における水位に基づいて、河川設備400の制御方法を決定する制御提案決定部12と、制御提案決定部12が決定した河川設備400の制御方法をユーザに提案する提案部42と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の複数地点における水位の計測値を含む前記河川の計測データを取得する計測データ取得部と、
前記河川の流域に設けられる河川設備の稼働状況を含む周囲環境データを取得する周囲環境データ取得部と、
前記計測データおよび前記周囲環境データに基づいて前記河川の複数の前記地点における将来の水位を予測する水位予測部と、
前記水位予測部が予測した複数の前記地点における水位に基づいて、前記河川設備の制御方法を決定する制御提案決定部と、
前記制御提案決定部が決定した前記河川設備の制御方法をユーザに提案する提案部と、
を備えることを特徴とする水防設備操作支援システム。
【請求項2】
前記水位予測部は、前記河川設備の制御方法の候補となる複数の制御パターンのそれぞれに従って前記河川設備を制御した場合の将来の水位予測値を前記制御パターンごとに算出し、
前記制御提案決定部は、前記水位予測部が算出した前記制御パターンごとの水位予測値同士の比較結果に基づいて前記河川設備の制御方法を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の水防設備操作支援システム。
【請求項3】
前記制御提案決定部は、前記水位予測部が算出した前記制御パターンごとの水位予測値に基づき、前記河川設備の制御で使用した場合に洪水が発生しない制御パターンの有無を判定し、洪水が発生しない制御パターンが複数存在する場合、前記河川設備の制御で使用した場合の水位予測値と水位の予測地点の堤防高との差分が最も大きくなる制御パターンを前記河川設備の制御方法に決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の水防設備操作支援システム。
【請求項4】
前記制御提案決定部は、前記水位予測部が算出した前記制御パターンごとの水位予測値に基づき、前記河川設備の制御で使用した場合に洪水が発生しない制御パターンの有無を判定し、洪水が発生しない制御パターンが存在しない場合、洪水発生時刻が最も遅くなる制御パターンを前記河川設備の制御方法に決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の水防設備操作支援システム。
【請求項5】
前記制御提案決定部は、洪水が発生しない制御パターンが存在せず、かつ、洪水発生時刻が最も遅くなる制御パターンが複数存在する場合、洪水発生地点数が少ない制御パターンを前記河川設備の制御方法に決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の水防設備操作支援システム。
【請求項6】
前記提案部が前記河川設備の制御方法をユーザに提案した後、提案方法の再提示要求を受けた場合、
前記制御提案決定部は、ユーザに提案済みの制御方法に対応する制御パターンを除いた残りの制御パターンに基づいて前記河川設備の制御方法を再決定し、
前記提案部は、前記制御提案決定部が再決定した前記河川設備の制御方法をユーザに再提案する、
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか一つに記載の水防設備操作支援システム。
【請求項7】
前記提案部は、前記制御提案決定部が決定した前記河川設備の制御方法を提案する際、提案する制御方法で制御を行った場合の将来の水位予測値を併せて提示する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の水防設備操作支援システム。
【請求項8】
前記提案部は、前記制御提案決定部が決定した前記河川設備の制御方法を提案する際、提案する制御方法で制御を行った後に洪水の発生が予測される場合は洪水の発生が予測される地点と洪水の発生が予測される時刻とを併せて提示する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の水防設備操作支援システム。
【請求項9】
前記提案部は、前記制御提案決定部が決定した前記河川設備の制御方法を前記河川設備の制御を行う監視制御装置のユーザに対して提案する、
ことを特徴とする請求項1に記載の水防設備操作支援システム。
【請求項10】
前記監視制御装置は前記ユーザが使用する端末機器と無線通信を行う機能を有し、
前記提案部は、前記河川設備の制御方法を前記ユーザが使用する前記端末機器を介して提案する、
ことを特徴とする請求項9に記載の水防設備操作支援システム。
【請求項11】
水防設備操作支援システムが実行する水防設備操作支援方法であって、
河川の複数地点における水位の計測値を含む前記河川の計測データを取得する計測データ取得ステップと、
前記河川の流域に設けられる河川設備の稼働状況を含む周囲環境データを取得する周囲環境データ取得ステップと、
前記計測データおよび前記周囲環境データに基づいて前記河川の複数の前記地点における将来の水位を予測する水位予測ステップと、
前記水位予測ステップで予測した複数の前記地点における水位に基づいて、前記河川設備の制御方法を決定する制御提案決定ステップと、
前記制御提案決定ステップで決定した前記河川設備の制御方法をユーザに提案する提案ステップと、
を含むことを特徴とする水防設備操作支援方法。
【請求項12】
河川の複数地点における水位の計測値を含む前記河川の計測データを取得する計測データ取得ステップと、
前記河川の流域に設けられる河川設備の稼働状況を含む周囲環境データを取得する周囲環境データ取得ステップと、
前記計測データおよび前記周囲環境データに基づいて前記河川の複数の前記地点における将来の水位を予測する水位予測ステップと、
前記水位予測ステップで予測した複数の前記地点における水位に基づいて、前記河川設備の制御方法を決定する制御提案決定ステップと、
前記制御提案決定ステップで決定した前記河川設備の制御方法をユーザに提案する提案ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする水防設備操作支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水防活動における設備の操作作業を支援する水防設備操作支援システム、水防設備操作支援方法および水防設備操作支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動による水害リスクが増加する中、河川水位の急激な上昇に対し迅速かつ適切な水防活動が求められている。迅速かつ適切な水防活動の実現には、水防活動の対象範囲の将来の状態をできるだけ正確に予測することが重要となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、河川で計測した水位、雨量などの情報である河川情報と、排水機場のポンプの運転状態、水門の開閉状態などの情報である施設運用情報とを用いて、モデル化手法または機械学習により将来の水位を予測し、排水施設の制御を行うオペレータに対してガイダンスを行う技術が記載されている。特許文献1に記載の技術では、過去の河川の状況に基づいて、河川の様々な状況に合わせて運用ルールを作成してデータベース化しておき、現在の河川の状況に最も類似する運用ルールに基づいて排水施設の運用方法のガイダンスを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-133275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水防活動では、設備の操作方法を現在および将来の河川の状態などに応じて適切に決定して設備を操作することが要求される。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、水防設備に対する適切な操作の実施を支援する水防設備操作支援システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる水防設備操作支援システムは、河川の複数地点における水位の計測値を含む河川の計測データを取得する計測データ取得部と、河川の流域に設けられる河川設備の稼働状況を含む周囲環境データを取得する周囲環境データ取得部と、計測データおよび周囲環境データに基づいて河川の複数の地点における将来の水位を予測する水位予測部と、水位予測部が予測した複数の地点における水位に基づいて、河川設備の制御方法を決定する制御提案決定部と、制御提案決定部が決定した河川設備の制御方法をユーザに提案する提案部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、水防設備に対する適切な操作の実施を支援可能な水防設備操作支援システムを得ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】水防設備操作支援システムを含む水防システムの構成例を示す図
図2】水防設備操作支援システムの機能ブロック構成の一例を示す図
図3】水防設備操作支援システムの動作を示す図
図4】水防設備操作支援システムの水位予測部が水位を予測する河川の一例を示す図
図5】水防設備操作支援システムの制御提案決定部の動作の一例を示すフローチャート
図6】水防設備操作支援システムの制御提案決定部が最善の制御パターンを更新する動作の一例を示すフローチャート
図7】監視制御装置が河川設備を制御する動作の一例を示すフローチャート
図8】水防設備操作支援システムの水位予測部および制御提案決定部を実現するサーバのハードウェア構成例を示す図
図9】水防設備操作支援システムと接続して水防システムを実現する監視制御装置のハードウェア構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態にかかる水防設備操作支援システム、水防設備操作支援方法および水防設備操作支援プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態.
図1は、本実施の形態にかかる水防設備操作支援システム1を含む水防システムの構成例を示す図である。図1に示す水防システムは、クラウド上に設けられたサーバ10、データベース20、ゲートウェイ装置30および連携装置40で構成される水防設備操作支援システム1と、観測所などである複数のフィールド100のそれぞれに設けられたゲートウェイ装置110および計測機器150と、河川の流域に設けられた水門、排水機場、調整池、ダムなどである河川設備400と、将来の雨量の予測などを行う他システム300と、河川設備400の監視および制御を行う監視制御装置200とを含む。計測機器150は、河川などに設けられた水位計、流量計、濁度計などである。各計測機器150は、予め定められた周期で繰り返し計測を行う。各計測機器150による計測結果は、計測を行った計測機器150の識別情報、計測を行った時刻の情報(以下では計測時刻と称する場合がある)、計測値などを含む。例えば、計測機器150が水位計である場合、計測機器150による計測結果は、水位計の識別情報、水位を計測した時刻、水位の計測値などを含む。
【0012】
水防設備操作支援システム1のゲートウェイ装置30は、無線アクセス回線を有する通信事業者網に接続され、フィールド100のゲートウェイ装置110を介して、計測機器150による計測結果を取得する。なお、これ以降の説明では、計測機器150による計測結果を計測データと称する場合がある。ゲートウェイ装置30が取得した計測データはデータベース20に登録される。
【0013】
水防設備操作支援システム1の連携装置40は、他システム300および監視制御装置200と連携して動作するための処理を行う。連携装置40は、インターネット回線に接続され、例えば、監視制御装置200および他システム300から、河川設備400の稼働状況を示す河川設備稼働情報、他システム300で生成される情報である他システム情報などを取得する。他システム情報の例は、将来の降雨量の予測値、潮位の予測値、水位の予測値などである。なお、これ以降の説明では、連携装置40が監視制御装置200から取得する河川設備稼働情報と他システム300から取得する他システム情報とを纏めて周囲環境データと称する場合がある。連携装置40が取得した情報はデータベース20に登録される。
【0014】
水防設備操作支援システム1は、水防設備である複数の河川設備400それぞれの制御方法を、河川の将来の状態を予測した結果に基づいて決定し、決定した制御方法をユーザに提案する。なお、これ以降の説明において、「河川設備400の制御」と「河川設備400の操作」とは同じ意味であるとする。河川設備400の操作は人(ユーザ)が行い、河川設備400の制御は監視制御装置200が行う。すなわち、ユーザは、河川設備400の操作を監視制御装置200に対して行い、ユーザから操作を受け付けた監視制御装置200が河川設備400を制御する。
【0015】
水防設備操作支援システム1の機能ブロック構成を図2に示す。図2は、水防設備操作支援システム1の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【0016】
図2に示すように、水防設備操作支援システム1は、サーバ10が有する水位予測部11および制御提案決定部12と、計測機器150から計測データを取得する計測データ取得部31と、監視制御装置200および他システム300から周囲環境データを取得する周囲環境データ取得部41と、河川設備400の制御方法を監視制御装置200のユーザに提案する提案部42とを備える。水位予測部11は、データベース20に登録されている各種データに基づいて河川の定められた地点の将来の水位を予測する。水位予測部11が水位を予測する地点は複数存在する。制御提案決定部12は、データベース20に登録されている各種データに基づいて、提案部42が提案する複数の河川設備400それぞれの制御方法を決定する。制御提案決定部12が複数の河川設備400それぞれの制御方法を決定する際に使用するデータには、水位予測部11が予測した水位のデータも含まれる。なお、計測データ取得部31は図1に示したゲートウェイ装置30で実現される。周囲環境データ取得部41および提案部42は図1に示した連携装置40で実現される。
【0017】
データベース20は、周囲環境データ取得部41が取得した他システム情報21および河川設備稼働情報22と、計測データ取得部31が取得した計測データ23と、水位予測部11が水位を予測する際に使用する学習済モデル24と、水位予測部11による水位の予測結果を示す水位予測値25と、複数の河川設備400それぞれの制御内容を示す複数の制御パターンが登録された制御パターン表26と、制御提案決定部12で決定された河川設備400の制御方法を示す制御提案情報27と、を保持する。なお、計測データ23、学習済モデル24および水位予測値25は、それぞれ複数個存在する。制御パターン表26に登録されている各制御パターンは、ユーザに提案する制御方法の候補となる。制御提案情報27は、制御パターン表26に登録されている制御パターンの中の1つである。
【0018】
監視制御装置200は、水防設備操作支援システム1の提案部42が提案する河川設備400の制御方法を表示する制御提案表示部51と、スマートフォン、タブレット端末などの端末機器と無線通信を行う無線通信部52と、河川設備400を制御する設備制御部53と、を備える。
【0019】
図3は、水防設備操作支援システム1の動作を示す図である。図3に示すように、水位予測部11には、周囲環境データ28を構成する他システム情報21および河川設備稼働情報22と、計測データ23と、学習済モデル24とが入力される。
【0020】
学習済モデル24は、一定時間が経過する間の水位の変化量を他システム情報21、河川設備稼働情報22および計測データ23に基づいて推論するためのモデルである。学習済モデル24は、例えば外部の学習装置で生成される。この学習済モデル24は、他システム情報21および河川設備稼働情報22と、計測データ23から算出される一定時間の水位変化量との関係を学習することで生成される。学習済モデル24は、例えば、ニューラルネットワークモデルに従って、いわゆる教師あり学習により、他システム情報21および河川設備稼働情報22に対応する一定時間の水位変化量を学習する。一定時間の水位変化量が教師データとなる。なお、学習済モデル24は、一定時間が経過した時点の水位を推論する構成のモデルとしてもよい。すなわち、学習済モデル24は、所定時刻の他システム情報21、河川設備稼働情報22および計測データ23(所定時刻の水位)と、所定時刻から一定時間が経過した時点の計測データ23(所定時刻から一定時間が経過した時点の水位)との関係を学習することで生成されたモデルであってもよい。この場合、所定時刻から一定時間が経過した時点の計測データ23が教師データとなる。
【0021】
学習済モデル24の生成に用いる学習アルゴリズムは、特徴量そのものの抽出を学習する深層学習(Deep Learning)としてもよい。また、他の公知の方法、例えば遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、サポートベクターマシンなどに従って機械学習を実行して学習済モデル24が生成されてもよい。
【0022】
水位予測部11は、他システム情報21および河川設備稼働情報22を推論用データとして学習済モデル24に入力し、これに伴い学習済モデル24から出力される一定時間の水位変化量の予測値に基づき、一定時間経過後の水位の予測値を算出する。具体的には、水位予測部11は、他システム情報21および河川設備稼働情報22を入力したときに学習済モデル24から出力される水位変化量(予測値)を計測データ23が示す水位に加算して、一定時間経過後の水位の予測値を求める。また、水位予測部11は、一定時間経過後の水位の予測値を算出する処理を繰り返し実行する。例えば、水位予測部11は、現在時刻の30分後の水位の予測値を算出し、次に、さらに30分後の水位、すなわち、現在時刻から60分後の水位予測値を算出する。水位予測部11は、このようにして、30分ごとの水位予測値を繰り返し算出する。
【0023】
水位予測部11が水位を予測する地点は複数存在し、それぞれの地点に対して学習済モデル24が存在する。水位予測部11は、水位を予測する際、複数の学習済モデル24のうち、水位を予測する地点に対応する学習済モデル24を使用する。例えば、図4に示す河川を対象として水位を予測する場合、水位観測局A1~A9が水位予測の対象地点となる。この場合、学習済モデル24は、9箇所の対象地点それぞれに対して存在する。水位予測部11は、水位計測の対象地点それぞれの水位を対応する学習済モデル24を利用して予測する。なお、図4では水位計が設置される水位観測局のみを記載し、雨量計が設置される雨量観測局などの記載は省略している。水位計測の対象地点それぞれに対応する学習済モデル24は、対象地点ごとに異なる構成の学習用データを用いて生成される。河川の水位は上流側で変化が生じると下流側でも変化が生じる関係があるため、各対象地点では上流に存在する水位観測局で計測される水位を学習用データとして採用する。また、各対象地点では、対象地点を中心とする定められた範囲内の雨量観測局で計測される雨量を学習用データとして採用する。例えば、図4に示す水位観測局A1での一定時間経過後の水位予測に利用する学習済モデル24を生成する場合、水位観測局A2~A9のそれぞれで計測される水位と、水位観測局A1を中心とする定められた範囲内の雨量観測局で計測される雨量とを学習用データとして使用する。水位観測局A6での一定時間経過後の水位予測に利用する学習済モデル24を生成する場合、水位観測局A7~A9のそれぞれで計測される水位と、水位観測局A6を中心とする定められた範囲内の雨量観測局で計測される雨量とを学習用データとして使用する。濁度や潮位など、水位変化との相関が強い他の情報を学習用データに加えてもよい。
【0024】
水位予測部11は、水位予測の対象地点それぞれについての水位の予測結果を水位予測値25として出力する。水位予測部11が出力する水位予測値25はデータベース20に登録される。
【0025】
制御提案決定部12は、データベース20に登録されている水位予測値25および制御パターン表26に基づいて制御提案情報27を生成する。上述したように、制御パターン表26には複数の制御パターンが登録されている。河川設備400の制御方法の候補となる各制御パターンは、設備制御部53が制御する河川設備400それぞれの状態を示すビットを含む。例えば、河川設備400が水門であれば、開状態(ON)か閉状態(OFF)かを示すビットが含まれる。河川設備400が排水設備のポンプであれば動作状態(ON)か停止状態(OFF)かを示すビットが含まれる。簡単な例として、河川設備400が2つ存在し、これらが水門および排水設備である場合、制御パターン表26は、水門および排水設備の両方がONであることを示す2ビットを含む制御パターンと、水門がONかつ排水設備がOFFであることを示す2ビットを含む制御パターンと、水門がOFFかつ排水設備がONであることを示す2ビットを含む制御パターンと、水門および排水設備の両方がOFFであることを示す2ビットを含む制御パターンとで構成される。制御パターン表26は、水防業務の担当者などである水防設備操作支援システム1のユーザにより予め作成され、データベース20に登録される。
【0026】
制御提案決定部12は、制御パターン表26に登録された各制御パターンについて、制御パターンが示す制御方法を各河川設備400に対して実行した場合の将来の水位、すなわち、制御パターンが示す状態となるように各河川設備400を制御した場合の将来の水位を水位予測部11に予測させて得られる水位予測値25に基づいて、水位上昇の抑制に効果的な制御パターンを特定する。制御提案決定部12は、特定した制御パターンを制御提案情報27としてデータベース20に登録する。
【0027】
つづいて、水防設備操作支援システム1の制御提案決定部12の動作を説明する。図5は、水防設備操作支援システム1の制御提案決定部12の動作の一例を示すフローチャートである。
【0028】
制御提案決定部12は、まず、現在の制御パターンを最善の制御パターンに設定する(ステップS11)。現在の制御パターンとは、監視制御装置200が制御する河川設備400それぞれの稼働状況を示す制御パターンである。現在の制御パターンは河川設備稼働情報22に相当する。
【0029】
制御提案決定部12は、次に、制御パターンを選択する(ステップS12)。制御提案決定部12は、現在の制御パターンとは異なる制御パターンの1つを制御パターン表26から選択する。
【0030】
制御提案決定部12は、次に、選択した制御パターンに従って操作を行った場合の水位予測、すなわち、選択した制御パターンが示す稼働状況となるように監視制御装置200が河川設備400を制御した場合の一定時間後の水位の予測を水位予測部11に依頼する(ステップS13)。この依頼を受けた水位予測部11は、制御提案決定部12がステップS12で選択した制御パターンを河川設備稼働情報22の代わりに使用して、水位予測の対象地点それぞれ(図4に示す例の場合は水位観測局A1~A9が該当)について、一定時間経過後の水位を予測する。
【0031】
制御提案決定部12は、水位予測部11から水位予測値を取得し(ステップS14)、最善の制御パターンの更新処理を実行する(ステップS15)。
【0032】
このステップS15で制御提案決定部12が最善の制御パターンを更新する動作の詳細について、図6を参照しながら説明する。図6は、水防設備操作支援システム1の制御提案決定部12が最善の制御パターンを更新する動作の一例を示すフローチャートである。
【0033】
図5のステップS15に記載の最善の制御パターンの更新処理では、図6に示すように、制御提案決定部12は、まず、最善の制御パターンに従って操作を行った場合の水位予測値を取得する(ステップS51)。この時点の最善の制御パターンは現在の制御パターンであり河川設備稼働情報22に相当する。最善の制御パターンに従って河川設備400の操作を行った場合の水位予測値はデータベース20が保持する水位予測値25に対応する。このため、制御提案決定部12は、ステップS51ではデータベース20が保持する水位予測値25を取得する。なお、データベース20が保持する水位予測値25を水位予測部11が最後に算出してから長時間が経過している場合、制御提案決定部12は、最善の制御パターンに従って河川設備400の操作を行った場合の水位の予測を水位予測部11に要求し、これに伴い更新が行われた後の最新の水位予測値25をデータベース20から取得する。制御提案決定部12は、例えば、水位予測値25を水位予測部11が最後に算出してから10分以上経過している場合、最善の制御パターンに従って河川設備400を操作した場合の水位の予測を水位予測部11に要求する。
【0034】
制御提案決定部12は、最善の制御パターンの点数P1を計算する(ステップS52)。制御提案決定部12は、最善の制御パターンとなるように河川設備400を制御したときに、水位の予測地点のいずれにおいても将来洪水が発生しないと予測される場合、最善の制御パターンの点数を2点(P1=2)とする。また、制御提案決定部12は、最善の制御パターンとなるように河川設備400を制御したときに、水位の予測地点のいずれかにおいて将来洪水が発生すると予測される場合、最善の制御パターンの点数を1点(P1=1)とする。
【0035】
また、制御提案決定部12は、上記のステップS12で選択した制御パターンの点数P2を計算する(ステップS53)。制御提案決定部12は、上述したステップS52と同様の方法で点数P2を計算する。
【0036】
制御提案決定部12は、次に、ステップS52で計算した点数P1とステップS53で計算した点数P2と比較し(ステップS54)、P1≠P2の場合(ステップS54:No)、点数が高い方の制御パターンを最善の制御パターンに設定する(ステップS58)。すなわち、制御提案決定部12は、P1>P2であれば最善の制御パターンを変更せずに動作を終了し、P1<P2であれば最善の制御パターンを上記のステップS12で選択した制御パターンに更新して動作を終了する。
【0037】
また、制御提案決定部12は、P1=P2の場合(ステップS54:Yes)、P1およびP2が1点であるか否かを確認する(ステップS55)。制御提案決定部12は、P1およびP2が2点である場合(ステップS55:No)、2つの制御パターンそれぞれの水位予測値と堤防高との比較結果に基づいて最善の制御パターンを設定する(ステップS59)。
【0038】
ステップS59において、制御提案決定部12は、ステップS51で取得した複数地点の水位予測値のそれぞれについて、各地点の堤防高との差分を算出する。算出した差分(以下、この差分を第1の差分とする)は、各地点において洪水が発生するまでの余裕度に相当する。本実施の形態では、各地点の水位予測値として時刻が異なる水位予測値が複数存在するが、制御提案決定部12は、最も遅い時刻の水位予測値について、堤防高との差分を算出する。例えば、1つの地点について、10分ごとの水位予測値が60分後まで合計6つ存在する場合、制御提案決定部12は、各地点について、60分後の水位予測値と堤防高との差分を算出する。制御提案決定部12は、同様に、上記のステップS14で取得した複数地点の水位予測値のそれぞれについて、各地点の堤防高との差分(以下、この差分を第2の差分とする)を算出する。そして、制御提案決定部12は、第1の差分の中の最小値と第2の差分の中の最小値とを比較し、最小値が大きい方の差分に対応する制御パターン、すなわち、洪水が発生するまでの余裕度が大きい方の制御パターンを、最善の制御パターンに設定する。制御提案決定部12は、「第1の差分の最小値≧第2の差分の最小値」が成り立つ場合は最善の制御パターンを変更せずに動作を終了し、「第1の差分の最小値<第2の差分の最小値」が成り立つ場合は最善の制御パターンを上記のステップS12で選択した制御パターンに更新して動作を終了する。
【0039】
また、制御提案決定部12は、P1およびP2が1点である場合(ステップS55:Yes)、2つの制御パターンそれぞれに従って操作を行った場合に洪水が発生する時刻が同じか否かを確認する(ステップS56)。制御提案決定部12は、ステップS51で取得した複数地点の水位予測値を確認し、最善の制御パターン(更新前の現在の最善の制御パターン)に従って河川設備400を操作した場合に洪水が発生する時刻(以下、この時刻を第1の洪水発生時刻とする)を特定し、また、上記のステップS13で取得した複数地点の水位予測値を確認し、上記のステップS12で選択した制御パターンに従って河川設備400を操作した場合に洪水が発生する時刻(以下、この時刻を第2の洪水発生時刻とする)を特定し、第1の洪水発生時刻と第2の洪水発生時刻とを比較する。制御提案決定部12は、第1の洪水発生時刻と第2の洪水発生時刻とが異なる場合(ステップS56:No)、洪水発生時刻が遅い方の制御パターンを最善の制御パターンに設定する(ステップS60)。制御提案決定部12は、第1の洪水発生時刻が第2の洪水発生時刻よりも遅い場合は最善の制御パターンを変更せずに動作を終了し、第1の洪水発生時刻よりも第2の洪水発生時刻が遅い場合は最善の制御パターンを上記のステップS12で選択した制御パターンに更新して動作を終了する。
【0040】
また、制御提案決定部12は、第1の洪水発生時刻と第2の洪水発生時刻とが同じ場合(ステップS56:Yes)、2つの制御パターンそれぞれに従って操作を行った場合の洪水発生地点の数が同じか否かを確認する(ステップS57)。ここでの洪水発生地点の数は、洪水発生時刻における洪水発生地点の数である。以下、最善の制御パターン(更新前の現在の最善の制御パターン)に従って河川設備400を操作した場合に洪水が発生する地点の数を第1の洪水発生地点数とし、上記のステップS12で選択した制御パターンに従って河川設備400を操作した場合に洪水が発生する地点の数を第2の洪水発生地点数とする。制御提案決定部12は、第1の洪水発生地点数と第2の洪水発生地点数とが同じ場合(ステップS57:Yes)、最善の制御パターンを更新することなく動作を終了する。制御提案決定部12は、洪水発生地点の数が異なる場合(ステップS57:No)、洪水発生地点数が少ない方の制御パターンを最善の制御パターンに設定する(ステップS61)。制御提案決定部12は、「第1の洪水発生地点数≦第2の洪水発生地点数」が成り立つ場合は最善の制御パターンを変更せずに動作を終了し、「第1の洪水発生地点数>第2の洪水発生地点数」が成り立つ場合は最善の制御パターンを上記のステップS12で選択した制御パターンに更新して動作を終了する。
【0041】
図5の説明に戻り、制御提案決定部12は、ステップS15で最善の制御パターンの更新処理を実行した後、全ての制御パターンについて更新処理を完了したか否かを確認する(ステップS16)。すなわち、制御提案決定部12は、制御パターン表26に登録されている制御パターンのうち、ステップS11で最善の制御パターンに設定した制御パターンを除いた残りの制御パターンの全てについて、ステップS12~S15の処理を実行したか否かを確認する。
【0042】
制御提案決定部12は、ステップS11で最善の制御パターンに設定した制御パターンを除いた残りの制御パターンの中にステップS12~S15の処理を実行していない制御パターンが存在する場合(ステップS16:No)、ステップS12に戻り動作を継続する。制御提案決定部12は、ステップS11で最善の制御パターンに設定した制御パターンを除いた残りの制御パターンの全てに対してステップS12~S15の処理を実行した場合(ステップS16:Yes)、制御提案情報を生成して出力する(ステップS17)。このステップS17において、制御提案決定部12は、最善の制御パターンに設定されている制御パターンを制御提案情報27としてデータベース20に出力する。
【0043】
制御提案決定部12が生成した制御提案情報27は提案部42から監視制御装置200へ受け渡される。制御提案情報27を受け取った監視制御装置200は、制御提案情報27に基づいて河川設備400の制御方法を提案する表示を水防業務の担当者等であるユーザに対して行うとともに、ユーザより受け付けた操作の内容に従い河川設備400の制御などを行う。
【0044】
監視制御装置200が河川設備400を制御する動作の詳細について説明する。図7は、監視制御装置200が河川設備400を制御する動作の一例を示すフローチャートである。
【0045】
監視制御装置200は、制御提案情報27を水防設備操作支援システム1から取得し(ステップS21)、制御提案表示部51が制御提案を表示する(ステップS22)。制御提案表示部51は、例えば、制御提案情報27が示す各河川設備400の状態の一覧を画面に表示するとともに、提案内容に従った制御を実行してもよいか否か、すなわち、表示した状態となるように各河川設備400を操作してもよいか否かを問い合わせるダイアログ表示を行う。制御提案情報27が示す各河川設備400の状態の一覧は、水防設備操作支援システム1が提案する操作を実行した後の各河川設備400の状態の一覧である。このとき、制御提案表示部51は、各河川設備400の現在の状態と、操作を実行した後の各河川設備400の状態とを並べて表示してもよい。操作を行うことにより状態が変化する河川設備400の表示を強調したり、状態が変化しない河川設備400の表示色と状態が変化する河川設備400の表示色とを異ならせたりしてもよい。操作を実行しても状態が変化しない河川設備400については表示を省略し、状態が変化する河川設備400に絞り込んで表示を行うようにしてもよい。このようにすることで、水防設備操作支援システム1が提案する操作を実行した場合に複数の河川設備400の中のどの設備の状態が変化するのかをユーザが容易に認識できるようになり、提案内容が適切か否かの確認がしやすくなるなど、利便性の向上が図れる。また、制御提案表示部51は、ステップS22で制御提案を表示する際に、提案内容に従った操作を実行した場合の将来の各地点の水位予測値も一緒に表示するようにしてもよい。制御提案表示部51は、制御提案を表示する際、提案内容に従った操作を実行したとしても洪水が発生すると予測される場合には、洪水の発生が予測される地点および洪水の発生が予測される時刻をさらに表示するようにしてもよい。
【0046】
制御提案表示部51が制御提案を表示した後、監視制御装置200は、提案した制御の実行指示操作を受け付けたか否かを確認する(ステップS23)。実行指示操作を受け付けた場合(ステップS23:Yes)、設備制御部53が、各河川設備400に対し、制御提案情報27に従った制御を実行する(ステップS24)。実行指示操作を受け付けなかった場合(ステップS23:No)、監視制御装置200は、水防設備操作支援システム1に対して制御提案情報27の再提示の要求を行い(ステップS25)、ステップS21に戻る。すなわち、ステップS25において、監視制御装置200は、前回実行したステップS21で取得した制御提案情報27とは制御内容が異なる制御提案情報27の再送信を水防設備操作支援システム1に対して要求する。監視制御装置200は、過去に取得した制御提案情報27とは制御内容が異なる制御提案情報27をステップS21で新たに取得すると、新たに取得した制御提案情報27を使用してステップS22およびこれに続く処理を再度実行する。監視制御装置200は、ステップS24で各河川設備400の制御を実行するまで、ステップS21~S23,S25の処理を繰り返す。なお、監視制御装置200は、ステップS24で各河川設備400の制御を実行した場合、提案内容に従って各河川設備400を制御したことを水防設備操作支援システム1に通知するようにしてもよい。これにより、水防設備操作支援システム1は、各河川設備400の状態を把握して河川設備稼働情報22を最新の状態に更新することができる。
【0047】
水防設備操作支援システム1は、監視制御装置200から制御提案情報27の再送信の要求を受けた場合、前回送信した制御提案情報27に対応する制御パターンを制御パターン表26から削除して制御パターン表26を更新する。そして、制御提案決定部12が、更新後の制御パターン表26を使用して、図5および図6のフローチャートに従った動作を実行して新たな制御提案情報27を作成する。制御提案決定部12が新たな制御提案情報27を作成後、提案部42は新たな制御提案情報27を監視制御装置200へ送信する。なお、水防設備操作支援システム1の制御提案決定部12は、制御提案情報27の再送信の要求を受ける前に図5のステップS13およびS14を実行して取得した水位予測値を記憶しておき、制御提案情報27の再送信の要求を受けた場合には記憶しておいた水位予測値を使用して新たな制御提案情報27を作成してもよい。これにより、水位予測部11が水位を再予測する必要がなくなり、処理負荷の軽減、処理遅延時間の軽減などを実現できる。
【0048】
本実施の形態では監視制御装置200の制御提案表示部51が河川設備400の制御方法をユーザに提案する例について説明したが、ユーザへの提案は、ユーザが使用するスマートフォン、タブレット端末など、無線通信機能を有する端末機器を利用して行うようにしてもよい。この場合、上記のステップS22で制御提案表示部51が表示する画面と同様の画面を端末機器が表示し、提案した制御を実行するか否かの選択操作を端末機器が受け付ける。端末機器が表示等を行うために必要な情報は監視制御装置200の無線通信部52が端末機器へ送信する。
【0049】
つづいて、水防設備操作支援システム1の水位予測部11および制御提案決定部12を実現するサーバ10のハードウェア構成について説明する。図8は、水防設備操作支援システム1の水位予測部11および制御提案決定部12を実現するサーバ10のハードウェア構成例を示す図である。サーバ10は、例えば、図8に示すプロセッサ201、メモリ202および通信回路203で構成される。
【0050】
プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、システムLSI(Large Scale Integration)などである。メモリ202は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスクなどである。通信回路203は、通信ネットワークに有線または無線により接続してデータの送受信等を行うための電子回路である。
【0051】
サーバ10がプロセッサ201、メモリ202および通信回路203で構成される場合、上述した水位予測部11および制御提案決定部12は、これらの各部として動作するためのプログラムをプロセッサ201が実行することにより実現される。水位予測部11および制御提案決定部12として動作するためのプログラムはメモリ202に予め格納されている。プロセッサ201は、上記プログラムをメモリ202から読み出して実行することにより、水位予測部11および制御提案決定部12として動作する。
【0052】
なお、メモリ202に格納される、水位予測部11および制御提案決定部12として動作するためのプログラムは、例えば、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROMなどの記憶媒体に書き込まれた状態でユーザ等に提供される形態であってもよいし、ネットワークを介してユーザ等に提供される形態であってもよい。
【0053】
監視制御装置200のハードウェア構成について説明する。図9は、水防設備操作支援システム1と接続して水防システムを実現する監視制御装置200のハードウェア構成例を示す図である。監視制御装置200は、例えば、図9に示すプロセッサ301、メモリ302、通信回路303、表示装置304および入力装置305で構成される。プロセッサ301、メモリ302および通信回路303は、それぞれ、図8で示したプロセッサ201、メモリ202および通信回路203と同様のハードウェアである。表示装置304は、液晶モニタ、ディスプレイなどである。入力装置305は、マウス、キーボードなどである。
【0054】
監視制御装置200の制御提案表示部51および設備制御部53は、これらの各部として動作するためのプログラムをプロセッサ301が実行することにより実現される。制御提案表示部51および設備制御部53として動作するためのプログラムはメモリ302に予め格納されている。プロセッサ301は、上記プログラムをメモリ302から読み出して実行することにより、制御提案表示部51および設備制御部53として動作する。また、監視制御装置200の無線通信部52は通信回路303により実現される。
【0055】
なお、制御提案表示部51および設備制御部53として動作するためのプログラムは、水防設備操作支援システム1の水位予測部11および制御提案決定部12として動作するためのプログラムと同様に、記憶媒体に書き込まれた状態でユーザ等に提供される形態であってもよいし、ネットワークを介してユーザ等に提供される形態であってもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態にかかる水防設備操作支援システム1は、河川の水位、雨量、濁度などの計測値と、河川設備400の稼働状況と、将来の降雨量、潮位などの予測値とに基づいて河川の将来の水位を予測し、予測した水位に基づいて、河川設備400の制御方法を決定してユーザに提案する。水防設備操作支援システム1は、制御方法の決定処理では、予め準備された複数の制御パターンそれぞれに従って河川設備400を制御した場合の将来の水位を予測し、予測した水位同士の比較結果に基づいて、提案する制御方法を決定する。また、提案した制御方法が採用されなかった場合、他の制御方法を決定して再度提案を行う。本実施の形態にかかる水防設備操作支援システム1は、様々な河川設備400に対する適切な操作の実現を支援できる。
【0057】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0058】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0059】
(付記1)
河川の複数地点における水位の計測値を含む前記河川の計測データを取得する計測データ取得部と、
前記河川の流域に設けられる河川設備の稼働状況を含む周囲環境データを取得する周囲環境データ取得部と、
前記計測データおよび前記周囲環境データに基づいて前記河川の複数の前記地点における将来の水位を予測する水位予測部と、
前記水位予測部が予測した複数の前記地点における水位に基づいて、前記河川設備の制御方法を決定する制御提案決定部と、
前記制御提案決定部が決定した前記河川設備の制御方法をユーザに提案する提案部と、
を備えることを特徴とする水防設備操作支援システム。
(付記2)
前記水位予測部は、前記河川設備の制御方法の候補となる複数の制御パターンのそれぞれに従って前記河川設備を制御した場合の将来の水位予測値を前記制御パターンごとに算出し、
前記制御提案決定部は、前記水位予測部が算出した前記制御パターンごとの水位予測値同士の比較結果に基づいて前記河川設備の制御方法を決定する、
ことを特徴とする付記1に記載の水防設備操作支援システム。
(付記3)
前記制御提案決定部は、前記水位予測部が算出した前記制御パターンごとの水位予測値に基づき、前記河川設備の制御で使用した場合に洪水が発生しない制御パターンの有無を判定し、洪水が発生しない制御パターンが複数存在する場合、前記河川設備の制御で使用した場合の水位予測値と水位の予測地点の堤防高との差分が最も大きくなる制御パターンを前記河川設備の制御方法に決定する、
ことを特徴とする付記2に記載の水防設備操作支援システム。
(付記4)
前記制御提案決定部は、前記水位予測部が算出した前記制御パターンごとの水位予測値に基づき、前記河川設備の制御で使用した場合に洪水が発生しない制御パターンの有無を判定し、洪水が発生しない制御パターンが存在しない場合、洪水発生時刻が最も遅くなる制御パターンを前記河川設備の制御方法に決定する、
ことを特徴とする付記2または3に記載の水防設備操作支援システム。
(付記5)
前記制御提案決定部は、洪水が発生しない制御パターンが存在せず、かつ、洪水発生時刻が最も遅くなる制御パターンが複数存在する場合、洪水発生地点数が少ない制御パターンを前記河川設備の制御方法に決定する、
ことを特徴とする付記4に記載の水防設備操作支援システム。
(付記6)
前記提案部が前記河川設備の制御方法をユーザに提案した後、提案方法の再提示要求を受けた場合、
前記制御提案決定部は、ユーザに提案済みの制御方法に対応する制御パターンを除いた残りの制御パターンに基づいて前記河川設備の制御方法を再決定し、
前記提案部は、前記制御提案決定部が再決定した前記河川設備の制御方法をユーザに再提案する、
ことを特徴とする付記2から5のいずれか一つに記載の水防設備操作支援システム。
(付記7)
前記提案部は、前記制御提案決定部が決定した前記河川設備の制御方法を提案する際、提案する制御方法で制御を行った場合の将来の水位予測値を併せて提示する、
ことを特徴とする付記1から6のいずれか一つに記載の水防設備操作支援システム。
(付記8)
前記提案部は、前記制御提案決定部が決定した前記河川設備の制御方法を提案する際、提案する制御方法で制御を行った後に洪水の発生が予測される場合は洪水の発生が予測される地点と洪水の発生が予測される時刻とを併せて提示する、
ことを特徴とする付記1から7のいずれか一つに記載の水防設備操作支援システム。
(付記9)
前記提案部は、前記制御提案決定部が決定した前記河川設備の制御方法を前記河川設備の制御を行う監視制御装置のユーザに対して提案する、
ことを特徴とする付記1から8のいずれか一つに記載の水防設備操作支援システム。
(付記10)
前記監視制御装置は前記ユーザが使用する端末機器と無線通信を行う機能を有し、
前記提案部は、前記河川設備の制御方法を前記ユーザが使用する前記端末機器を介して提案する、
ことを特徴とする付記9に記載の水防設備操作支援システム。
(付記11)
水防設備操作支援システムが実行する水防設備操作支援方法であって、
河川の複数地点における水位の計測値を含む前記河川の計測データを取得する計測データ取得ステップと、
前記河川の流域に設けられる河川設備の稼働状況を含む周囲環境データを取得する周囲環境データ取得ステップと、
前記計測データおよび前記周囲環境データに基づいて前記河川の複数の前記地点における将来の水位を予測する水位予測ステップと、
前記水位予測ステップで予測した複数の前記地点における水位に基づいて、前記河川設備の制御方法を決定する制御提案決定ステップと、
前記制御提案決定ステップで決定した前記河川設備の制御方法をユーザに提案する提案ステップと、
を含むことを特徴とする水防設備操作支援方法。
(付記12)
河川の複数地点における水位の計測値を含む前記河川の計測データを取得する計測データ取得ステップと、
前記河川の流域に設けられる河川設備の稼働状況を含む周囲環境データを取得する周囲環境データ取得ステップと、
前記計測データおよび前記周囲環境データに基づいて前記河川の複数の前記地点における将来の水位を予測する水位予測ステップと、
前記水位予測ステップで予測した複数の前記地点における水位に基づいて、前記河川設備の制御方法を決定する制御提案決定ステップと、
前記制御提案決定ステップで決定した前記河川設備の制御方法をユーザに提案する提案ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする水防設備操作支援プログラム。
【符号の説明】
【0060】
1 水防設備操作支援システム、10 サーバ、11 水位予測部、12 制御提案決定部、20 データベース、21 他システム情報、22 河川設備稼働情報、23 計測データ、24 学習済モデル、25 水位予測値、26 制御パターン表、27 制御提案情報、28 周囲環境データ、30,110 ゲートウェイ装置、31 計測データ取得部、40 連携装置、41 周囲環境データ取得部、42 提案部、51 制御提案表示部、52 無線通信部、53 設備制御部、100 フィールド、150 計測機器、200 監視制御装置、300 他システム、400 河川設備。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9