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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008487
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】スリットチャンバーおよび微粒化装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/441 20220101AFI20250109BHJP
   B01F 23/41 20220101ALI20250109BHJP
   B01F 23/57 20220101ALI20250109BHJP
   B01F 23/45 20220101ALI20250109BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20250109BHJP
【FI】
B01F25/441
B01F23/41
B01F23/57
B01F23/45
B01F35/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110703
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】常本 真嗣
(72)【発明者】
【氏名】森岡 勇樹
【テーマコード(参考)】
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
4G035AB37
4G035AB40
4G035AB44
4G035AC26
4G035AE13
4G035AE17
4G037AA02
4G037DA12
4G037EA01
(57)【要約】
【課題】。原料の投入量が増加した場合にも大流量の原料を処理することができ、コンパクトかつ原料漏れを抑制できるスリットチャンバーおよび微粒化装置を提供する。
【解決手段】本発明のスリットチャンMを通過させる上流ノズル導水部6c有する上流ノズル6と、上流ノズル6よりも下流側に配置され原料Mを処理する中流ノズル用微粒化流路7eを有する中流ノズル7と、中流ノズル7よりも下流側に配置され中流ノズル7で処理しきれない原料Mを処理する下流ノズル用微粒化流路8dを有する下流ノズル8とを備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料が導入される導水ノズルと、
前記導水ノズルの下流側に配置されるとともに、前記原料を通過させる上流ノズル導水部を有する上流ノズルと、
前記上流ノズルよりも下流側に配置されるとともに、前記原料を微粒化する中流ノズル用微粒化流路を有する中流ノズルと、
前記中流ノズルよりも下流側に配置されるとともに、前記中流ノズルを流れた前記原料を微粒化する下流ノズル用微粒化流路を有する下流ノズルとを備えていることを特徴とするスリットチャンバー。
【請求項2】
請求項1に記載のスリットチャンバーにおいて、
前記中流ノズル用微粒化流路および前記下流ノズル用微粒化流路の少なくとも一方にテーパ部を有していることを特徴とするスリットチャンバー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスリットチャンバーにおいて、
前記中流ノズル用微粒化流路で微粒化された前記原料を下流に流す中流ノズル用貫通孔と、
前記下流ノズル用微粒化流路で微粒化された前記原料を下流に流す下流ノズル用貫通孔とを有していることを特徴とするスリットチャンバー。
【請求項4】
請求項3に記載のスリットチャンバーにおいて、
前記中流ノズル用貫通孔の内面に貫通孔テーパ部を有していることを特徴とする請求項3記載のスリットチャンバー。
【請求項5】
請求項1に記載のスリットチャンバーにおいて、
前記中流ノズルは、直列に複数配置されていることを特徴とするスリットチャンバー。
【請求項6】
請求項1に記載のスリットチャンバーにおいて、
前記中流ノズル用微粒化流路または前記下流ノズル用微粒化流路の少なくとも何れかは、複数形成されるとともに、放射状に配置されていることを特徴とするスリットチャンバー。
【請求項7】
請求項1に記載のスリットチャンバーにおいて、
前記中流ノズル用微粒化流路または前記下流ノズル用微粒化流路の少なくとも何れかは、断面積が次第に小さくなることを特徴とするスリットチャンバー。
【請求項8】
請求項1記載のスリットチャンバーにおいて、
前記中流ノズル用微粒化流路または前記下流ノズル用微粒化流路の少なくとも何れかは、一方端部の入口部が凹状または凸状の曲率を有して形成されていることを特徴とするスリットチャンバー。
【請求項9】
請求項1に記載のスリットチャンバーにおいて、
前記中流ノズルは、前記原料が入る中流ノズル用溝部と、
漏れた前記原料が流入する排出孔とを有していることを特徴とするスリットチャンバー。
【請求項10】
請求項1に記載のスリットチャンバーにおいて、
前記上流ノズル、前記中流ノズル、および前記下流ノズルを締結する締付具を有していることを特徴とするスリットチャンバー。
【請求項11】
請求項1に記載のスリットチャンバーにおいて、
前記上流ノズルと中流ノズルとの間、または、中流ノズルと下流ノズルとの間に配置されるシール部を有していることを特徴とするスリットチャンバー。
【請求項12】
請求項1に記載のスリットチャンバーにおいて、
前記中流ノズルは、複数の中流ノズルで形成され、
前記複数の中流ノズルの間に、シール部を有していることを特徴とするスリットチャンバー。
【請求項13】
前記原料を貯留する原料タンクと、
前記原料タンクの前記原料を圧送する給液ポンプと、
前記給液ポンプから圧送される前記原料を加圧する増圧機と、
請求項1または請求項2に記載のスリットチャンバーとを備えていることを特徴とする微粒化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットチャンバーおよび微粒化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールミル、コロイドミル、分散機、ホモジナイザー、微粒化装置等が、微粒化装置として用いられている。
原料の特性や付与する性能を調整するために、微粒化装置は、ノズルを有するチャンバーを備えている。先行技術文献によれば、スリットチャンバーと呼ばれるノズルやライナーの構造が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1や特許文献2に開示される乳化装置では、硬質のプレート材からなる2枚のライナー部材によって、流路を閉塞している。流入側に配設された第1のライナー部材には、板面中心に対して対称位置に、2つの第1の透孔が貫通して形成されている。ノズルから噴出された各混合液は、2つの第1の透孔を通過可能である。第1のライナー部材の一方の板面には、透孔の端部を連通させる溝部が形成されている。第2のライナー部材は、第1のライナー部材に密着して、流出側に配設される。第1のライナー部材との密着対向面には、第1の溝部と直交する第2の溝部が形成される。第2の溝部の両外方端には、排出用の2つの第2の透孔が貫通形成される。混合液が第1、第2のライナー部材を通過する間に、乳化を行う。
【0004】
また、特許文献3には、スリットチャンバーが開示されている。スリットチャンバーを構成する複数のノズルに対して、特定の部位に応力を集中させないように、上流ノズルと下流ノズルに形成する孔や溝等を工夫している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2788010号公報
【特許文献2】特公平05-012976号公報
【特許文献3】特開2022-63686号公報(図1図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の乳化装置では、時間当たりの処理量を増加させようとすると、スリットチャンバーの数を増やす、各種ノズルを大型化する、流路の増加または流路径の拡大等を施すといったノズル構造の改良が必要になる。しかし、チャンバーを複数並列配置する場合は、スペースの確保が必要となる。また、過度なノズルの大型化を招いてしまう可能性もあった。
【0007】
また、ノズルの数を増やした場合は、各ノズルの隙間が増え、原料の漏れが発生してしまう可能性がある。さらに、処理量が多くなったとしても、処理性能が落ちれば、大型化の効果が半減する。そのため、単にノズルの数を増やすだけでなく、処理性能を維持または向上することが求められている。
【0008】
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、原料の投入量が増加した場合にも大流量の原料を処理することができ、コンパクトかつ原料漏れを抑制できるスリットチャンバーおよび微粒化装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明のスリットチャンバーは、原料が導入される導水ノズルと、前記導水ノズルの下流側に配置されるとともに、前記原料を通過させる上流ノズル導水部を有する上流ノズルと、前記上流ノズルよりも下流側に配置されるとともに、前記原料を微粒化する中流ノズル用微粒化流路を有する中流ノズルと、前記中流ノズルよりも下流側に配置されるとともに、前記中流ノズルを流れた前記原料を微粒化する下流ノズル用微粒化流路を有する下流ノズルとを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原料の投入量が増加した場合にも大流量の原料を処理することができ、コンパクトかつ原料漏れを抑制できるスリットチャンバーおよび微粒化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る実施形態の微粒化装置の構成の模式的断面図。
図2】本発明に係る実施形態のスリットチャンバーの断面図。
図3A図2のI-I断面である上流ノズルの正面図を示す。
図3B図2のII-II断面である中間ノズルの正面図。
図3C図2のIII-III断面である下流ノズルの正面図。
図4】実施形態のスリットチャンバー1の主要部の拡大断面図。
図5】他例のスリットチャンバーの主要部の拡大断面図。
図6A】他例のスリットチャンバーの原料の流れの模式的断面図。
図6B】実施形態のスリットチャンバー1の原料の流れの模式的断面図。
図7】実施形態の変形例のスリットチャンバーの主要部の拡大断面図。
図8】変形形態1のスリットチャンバーの断面図。
図9A】変形形態2の中流ノズル用微粒化流路テーパ部を示す図。
図9B】変形形態2の下流ノズル用微粒化流路テーパ部を示す図。
図10A】変形形態3の図2のII-II断面である中間ノズルの拡大正面図。
図10B図10AのIV部拡大図。
図11A】変形形態3の変形例1の図2のII-II断面である中間ノズルの拡大正面図。
図11B】変形形態3の変形例2の図2のII-II断面である中間ノズルの拡大正面図。
図11C】変形形態3の変形例3の図2のII-II断面である中間ノズルの拡大正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、原料スラリーを微粒化処理するためのスリットチャンバーおよび微粒化装置に関する発明である。
【0013】
<<実施形態>>
以下、実施形態の微粒化装置100および微粒化装置100に用いられるスリットチャンバー1について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0014】
<微粒化装置100>
図1に、本発明に係る実施形態の微粒化装置100の構成の模式的断面図を示す。
実施形態の微粒化装置100は、原料タンク101と、給液ポンプ102と、増圧機103と、スリットチャンバー1とを具備している。スリットチャンバー1は、加圧されたスラリー状の原料Mを微粒化する装置である。スリットチャンバー1は、略円柱状等の柱形状を有している。なお、スリットチャンバー1の外形状は、略多角柱形状でもよく限定されない。
【0015】
原料タンク101には、スラリー状の原料Mが貯留されている。給液ポンプ102は、原料タンク101のスラリー状の原料Mを増圧機103に向けて圧送する。
増圧機103は、給液ポンプ102から圧送されるスラリー状の原料Mを加圧し、スリットチャンバー1に送る。
スリットチャンバー1は、加圧されたスラリー状の原料Mに対して、乳化処理を含む微粒化処理を行う。
【0016】
微粒化装置100には、スラリー状の原料Mが送られる高圧配管や高圧ホース等が接続される。
【0017】
次に、本実施形態の微粒化装置100における処理手順について説明する。
まず、原料タンク101内に微粒化対象となる原料Mを投入し、スラリー状に調整する。次に、原料タンク101内のスラリー状の原料Mが、給液ポンプ102によって、増圧機103の増圧室103z内に圧送される。圧送されたスラリー状の原料Mは、増圧機103のピストン103pの往復動作(図1の矢印α11)によって加圧される。
【0018】
図2に、本発明に係る実施形態のスリットチャンバー1の断面図を示す。
図3Aに、図2のI-I断面である上流ノズル6の正面図を示す。
図3Bに、図2のII-II断面である中間ノズル7の正面図を示す。
図3Cに、図2のIII-III断面である下流ノズル8の正面図を示す。
【0019】
スリットチャンバー1の先端部に第1の先端部2aが配置され、高圧配管や高圧ホース等が接続される。増圧機103で加圧されたスラリー状の原料Mは、高圧配管や高圧ホース等を介してスリットチャンバー1に供給される。
【0020】
スリットチャンバー1の第1の先端部2aに供給されたスラリー状の原料Mは、導水ノズル5内側の流路を通り、上流ノズル6の上流ノズル導水部6cに入る。その後、スラリー状の原料Mは、上流ノズル導水部6cを通過しながら中流ノズル7に入っていく。原料Mは、中流ノズル用微粒化流路7eで縮径される。これにより、原料Mは、せん断応力および衝突力が得られ、微粒化される。
また、中流ノズル7で処理しきれない原料Mは、中流ノズル導水部7cから下流ノズル8の端面に衝突し、直角状に軌道を変えて下流ノズル用微粒化流路8dで縮径される。これにより、原料Mは、せん断応力および衝突力が得られ、微粒化される。なお、衝突力には、原料M同士の衝突力という意味合いだけでなく、原料Mが流路(7e、8d)表面に衝突する衝突力という意味合いも含む。
【0021】
中流ノズル7および下流ノズル8で微粒化処理された原料Mは、中流ノズル用貫通孔7fと下流ノズル用貫通孔8eを介して、合流口9から噴射される。なお、微粒化処理は1回だけでなく、複数回繰り返してもよい。
【0022】
<スリットチャンバー1の構成>
図2に示すスリットチャンバー1では、スラリー状の原料Mが、入口側(IN)から出口側(OUT)に向かって供給される。スリットチャンバー1は、第1のチャンバー内側部材2と、第2のチャンバー内側部材3と、チャンバー外側部材4とを具備している。
第1のチャンバー内側部材2は、一方の端部をなす筒形状の第1の先端部2aと、他方の端部をなす筒形状の周縁部2bおよび窪み部2cと、柱形状の中央部2eとを有している。つまり、第1のチャンバー内側部材2は、後端部(下流側の端部)に、穴状の窪み部2cとフランジ状の周縁部2bとを有している。窪み部2cは、円筒形状であり、中央部2eの下流側に形成される。フランジ状の周縁部2bは、窪み部2cの外側に形成されている。中央部2eの中心には、原料Mが流れる貫通孔2e1が形成されている。
【0023】
前記したように、増圧機103で加圧されたスラリー状の原料Mは、図2に示すスリットチャンバー1における第1のチャンバー内側部材2に導入される。
これにより、第1の先端部2aからスラリー状の原料Mが中央部2eの貫通孔2e1に取り込まれる。なお、第1の先端部2aは、微粒化装置100の一部に連結しやすい形状であればよい。第1の先端部2aは、例えば、円筒形状、断面多角形の筒状である。また、第1の先端部2aを微粒化装置100の一部に、高圧配管や高圧ホース等が連結しやすいように、ワンタッチ式の固定具を配置してもよい。
【0024】
第1のチャンバー内側部材2の後端部(下流側の端部)には、第2のチャンバー内側部材3が連結される。
第2のチャンバー内側部材3には、一方側の穴部3a1(図2参照)と他方側の穴部3a2(図2参照)とが形成されている。一方側の穴部3a1には、略柱形状のノズル(5、6、7、8)が入る。ノズル(5、6、7、8)は原料Mを微粒化する機能をもつ。
第1のチャンバー内側部材2と第2のチャンバー内側部材3とは、嵌入や圧入等で連結されている。第1のチャンバー内側部材2と第2のチャンバー内側部材3との外側には、チャンバー外側部材4が配置されている。
【0025】
図2に示すように、第2のチャンバー内側部材3の穴部3a1には、導水ノズル5と、上流ノズル6と、中流ノズル7と、下流ノズル8とが設けられている。導水ノズル5の一方側の円錐台部5dは、第1のチャンバー内側部材2と密接されている。そして、導水ノズル5の下流側には、順に上流ノズル6、中流ノズル7および下流ノズル8が設けられている。
【0026】
図2に示すように、第2のチャンバー内側部材3のノズル(5、6、7、8)の後方には、中径の噴射液の合流口9と、小径の合流口9oと、合流口9より大径の穴部3a2とが配置されている。
【0027】
筒状のチャンバー外側部材4は、内側に円筒段状の係合部4aを有している。第1のチャンバー内側部材2のフランジ状の周縁部2bは、係合部4aと係合する。チャンバー外側部材4と第1のチャンバー内側部材2との係合によって、第1のチャンバー内側部材2と、各種ノズルの導水ノズル5、上流ノズル6、中流ノズル7、下流ノズル8と、第2のチャンバー内側部材3との位置決めの基準面が設定される。
【0028】
第1のチャンバー内側部材2の窪み部2cは、導水ノズル5を収容できるだけの深さを有する。第2のチャンバー内側部材3は、筒状の第2の先端部3aを有する。窪み部2cは、第2の先端部3aの外周面に接した状態で、強度や構造上の安定性を確保できればよい。
第1のチャンバー内側部材2の周縁部2bは、第1のチャンバー内側部材2とチャンバー外側部材4を安定して係合できればよい。
第1のチャンバー内側部材2の周縁部2bと、チャンバー外側部材4の係合部4aとは、互いに当接することから、剛性や硬度の高い材質で形成してもよい。また、これらの周縁部2bや係合部4aに、剛性や硬度の高い材質でのコーティングを施してもよい。周縁部2bや係合部4aは、互いに係合可能な幅や大きさを有している。また、第1のチャンバー内側部材2とチャンバー外側部材4との係合は、樹脂製部品を介して、行ってもよい。
【0029】
図2に示す第2のチャンバー内側部材3は、筒状の第2の先端部3aを有する。第2の先端部3aは、筒形状であり、上流側に形成されている。第2のチャンバー内側部材3の第2の先端部3aは、第1のチャンバー内側部材2の窪み部2cに接合される。
これによって、第1のチャンバー内側部材2内に形成される流路から、スラリー状の原料Mが各種ノズルの導水ノズル5、上流ノズル6、中流ノズル7、下流ノズル8に供給される。
【0030】
図2に示すチャンバー外側部材4の内側には、前記したように、第1のチャンバー内側部材2および第2のチャンバー内側部材3が配置される。チャンバー外側部材4は、第1のチャンバー内側部材2および第2のチャンバー内側部材3の位置を固定する。スリットチャンバー1の全体に対して、チャンバー外側部材4が締付力を与えることによって、スラリー状の原料Mが通過するための流路の位置が安定化する。
【0031】
図4に、実施形態のスリットチャンバー1の主要部の拡大断面図を示す。
図4に示すように、導水ノズル5は、各種ノズルである上流ノズル6、中流ノズル7、下流ノズル8の位置を安定させた状態で、第1のチャンバー内側部材2と第2のチャンバー内側部材3との締付位置を調整する。
【0032】
<導水ノズル5>
図4に示す導水ノズル5は、上流側に円錐形状のテーパ凸部5aを有している。第1のチャンバー内側部材2は、下流側に円錐穴形状のテーパ凹部2dを有している。テーパ凸部5aとテーパ凹部2dとは、面接触して密封するように、配置される。
【0033】
導水ノズル5は、下流側の外周に導水ノズル周縁部5bを有する。導水ノズル周縁部5bは、第2の先端部3aの穴部3a1の内径と同等の外径を有している。これにより、導水ノズル5は、第2の先端部3aに嵌合し、全周方向のブレが抑制される。なお、導水ノズル周縁部5bの表面に、コーティング等を施すことによって、第2の先端部3aの穴部3a1との接触による損傷等を防止してもよい。
【0034】
導水ノズル5は、変形例として、例えば、内側部材と外側部材に分割した構造とすることもできる。一例として、導水ノズル5の内側部材(不図示)は、導水ノズル外側部材(不図示)の内側に配置されている。例えば、導水ノズル5の内側部材は、原料処理に耐えるために、導水ノズル外側部材よりも硬度が高い材質で形成される。
【0035】
導水ノズル5は、上流ノズル6の上流ノズル導水部6c(図3A参照)に連通する流路5r(図4参照)を内側に有している。流路5rは、ストレート形状のほか、縮径形状等でもよい。流路5rの形状は、上流ノズル導水部6cの形状や通過させる原料Mの量に応じて、任意に設定できる。
【0036】
<上流ノズル6>
図2に示すように、上流ノズル6は、第2のチャンバー内側部材3の内側で、導水ノズル5の下流側に配置される。上流ノズル6は、円柱形状の上流ノズル内側部材6aと、円環形状の上流ノズル外側部材6bとを有している。上流ノズル内側部材6aは、上流ノズル外側部材6bの内側に配置される。上流ノズル内側部材6aは、原料処理に耐えるために、上流ノズル外側部材6bよりも硬度が高い材質で形成されている。
【0037】
図3A図4に示す上流ノズル内側部材6aは、貫通孔からなる上流ノズル導水部6c(図3A)を複数有している。上流ノズル導水部6cは、原料Mを下流の中流ノズル7(図4参照)に供給するためのものであり、周方向に間隔をあけて複数配置されている。上流ノズル導水部6cが複数配置されることで、原料Mを多方向から下流の中流ノズル7(図4参照)に向けて均等に供給することができる。
【0038】
図3Aに示す上流ノズル導水部6cは、断面円形の貫通孔または断面長穴状の貫通孔であることが好ましい。貫通孔の内径寸法、長さ寸法およびその個数は適宜設定できる。
【0039】
図4に示すように、中流ノズル7は、第2のチャンバー内側部材3の内側で、上流ノズル6の下流側に配置されている。
図3Bに示す中流ノズル7は、円柱形状の中流ノズル内側部材7aと、円環形状の中流ノズル外側部材7bとを有している。中流ノズル内側部材7aは、中流ノズル外側部材7bの内側に配置されている。中流ノズル内側部材7aは、原料が直接当たる構成であるので原料処理に耐えるために、中流ノズル外側部材7bよりも硬度が高い材質で形成されている。
【0040】
中流ノズル内側部材7aは、断面円形の貫通孔からなる中流ノズル導水部7cを複数有している。中流ノズル導水部7cは、周方向に間隔をあけて複数配置されることで、原料Mを多方向から中流ノズル内側部材7a内に供給することができる。例えば、図3Bに示すように、中流ノズル用微粒化流路7eは、放射状に形成されることで、多方向から均等に原料Mを中流ノズル内側部材7a内に供給することができる。
図2図4に示す中流ノズル用微粒化流路7eと中流ノズル導水部7cの外側には中流環状溝7mが形成されている。
【0041】
図4に示すように、上流ノズル6と中流ノズル7が連結した状態とすることで、上流ノズル導水部6cと中流ノズル導水部7cとは連通した導水部となり、原料Mを上流ノズル6と中流ノズル7とに通過させる。
【0042】
図3Bに示す中流ノズル導水部7cは、正面視で円形状または長穴状(縦長の長穴形状)の貫通孔であることが好ましい。貫通孔の内径寸法や長さ寸法、その数は適宜設定できる。また、中流ノズル導水部7cは、図4に示すストレート形状の貫通孔のほか、テーパ形状をもつ貫通孔等を設定できる。
【0043】
図3B図4に示すように、中流ノズル内側部材7aは、中流ノズル用微粒化流路7eと、中流ノズル用貫通孔7fとを有している。中流ノズル用貫通孔7fは、微粒化処理後の原料Mを排出するための孔である。
放射状に延びる中流ノズル用微粒化流路7eは、原料Mを微粒化するための通路である。中流ノズル用微粒化流路7eは、横断面が矩形等の切り込み形状であり、単数または複数形成されている。
本実施形態では、周方向に間隔をあけて複数の中流ノズル用微粒化流路7eが形成されている。上流ノズル導水部6cから流出した原料Mは、中流ノズル用微粒化流路7eに流入する。中流ノズル用微粒化流路7eの数は、中流ノズル導水部7cの数よりも多い。
上流ノズル導水部6cからの原料Mの一部は、中流ノズル用微粒化流路7e(図3B参照)を通過することで壁面に衝突等して、微粒化される。さらに、中流ノズル導水部7cを通過した原料Mの一部は、下流ノズル8に流れる。
図4に示すように、中流ノズル用微粒化流路7eで微粒化された原料Mは、中流ノズル用貫通孔7fから下流ノズル用貫通孔8eに供給され、出口側の合流口9に送り出される。
【0044】
図4に示すように、下流ノズル8は、第2のチャンバー内側部材3の内側で、中流ノズル7の下流側に配置されている。
図3C図4に示すように、下流ノズル8は、柱状の下流ノズル内側部材8aと、円環形状の下流ノズル外側部材8bとを有している。下流ノズル内側部材8aは、下流ノズル外側部材8bの内側に配置されている。下流ノズル内側部材8aは、原料Mが直接当たる構成であるので原料処理に耐えるために、下流ノズル外側部材8bよりも硬度が高い材質で形成するのが好ましい。
【0045】
図3Cに示す下流ノズル内側部材8aには、放射状に延びる下流ノズル用微粒化流路8dと、下流ノズル用貫通孔8eとを有している。
下流ノズル用微粒化流路8dは、切り込み形状を有しており、原料Mを微粒化するための通路である。
下流ノズル用貫通孔8eは、下流ノズル用微粒化流路8dで微粒化した原料Mを合流口9に向けて流す流路である。
本実施形態では、周方向に間隔をあけて複数の下流ノズル用微粒化流路8dが形成されている。
また、下流ノズル用貫通孔8eの外側には下流環状溝8mが形成されている。
中流ノズル導水部7cから流出した原料Mは、下流ノズル用微粒化流路8dに流入する。
【0046】
図4に示す導水ノズル5、上流ノズル6、中流ノズル7、下流ノズル8の材質は、各種金属、超硬合金、焼結ダイヤ、単結晶ダイヤ等の硬度が高いものが望ましい。また、上流ノズル6、中流ノズル7、下流ノズル8の一部に耐摩耗性やコンタミレス軸封構造等を考慮した部材を追加で配置することや、上流ノズル6、中流ノズル7、下流ノズル8の各表面にコーティングを施すこと等もできる。なお、原料Mが当たる箇所の表面または外力が加わる箇所の表面にのみコーティングを施してもよい。これにより、上流ノズル6、中流ノズル7、下流ノズル8の損耗が抑制される。
【0047】
<他例の微粒化流路(16e、17e)と実施形態の中流ノズル用微粒化流路7eおよび下流ノズル用微粒化流路8d>
図5に、他例のスリットチャンバー21の主要部の拡大断面図を示す。
他例のスリットチャンバー21は、図4に示す実施形態の中流ノズル用微粒化流路7eを上流ノズル用微粒化流路16eに変更し、実施形態の下流ノズル用微粒化流路8dを中流ノズル用微粒化流路17eに変更したものである。
【0048】
つまり、図4に示す実施形態のスリットチャンバー1は、上流ノズル6と中流ノズル7との境界面に対して、下流側に中流ノズル用微粒化流路7eを設けている。また、実施形態のスリットチャンバー1は、中流ノズル7と下流ノズル8の境界面に対して、下流側に下流ノズル用微粒化流路8dを設けている。
これに対して、他例の図5に示すスリットチャンバー21は、上流ノズル16と中流ノズル17との境界面に対して、上流側に上流ノズル用微粒化流路16eを設け、また、中流ノズル17と下流ノズル18との境界面に対して、上流側に中流ノズル用微粒化流路17eを設けている。
また、他例の図5に示すスリットチャンバー21は、上流ノズル16と中流ノズル17との境界面に対して、上流側に上流環状溝7m1を設け、また、中流ノズル17と下流ノズル18との境界面に対して、上流側に中流環状溝8m1を設けている。
【0049】
図5に示す他例のスリットチャンバー21においても、原料Mの微粒化を行える
図6Aに、図5に示す他例のスリットチャンバー21の原料Mの流れを模式的に示す。
他例のスリットチャンバー21では、中流ノズル導水部17cに一旦入り込んだ原料Mが上流ノズル用微粒化流路16eに下流側から流入する現象は確認されず、円滑に原料Mが上流ノズル用微粒化流路16eおよび中流ノズル用微粒化流路17eに流れる。
【0050】
図6Bに、実施形態のスリットチャンバー1の原料Mの流れを模式的に示す。
図4に示す実施形態のスリットチャンバー1では、中流ノズル導水部7cに一旦入り込んだ原料Mが中流ノズル用微粒化流路7eに下流側から流入する現象は確認されない。
よって、実施形態のスリットチャンバー1の方が、原料Mの流れにおいては、他例のスリットチャンバー21より優位性があり、原料Mが中流ノズル用微粒化流路7eまたは下流ノズル用微粒化流路8dに詰まり難いことが確認された。
【0051】
図7に、変形例のスリットチャンバー1Aの主要部の拡大断面図を示す。
スリットチャンバー1Aは、上流ノズル6と下流ノズル8との間に、複数の中流ノズル(図7では、第1の中流ノズル7Aと第2の中流ノズル7Bと第3の中流ノズル7C)を備えている。
変形例のスリットチャンバー1Aの上流ノズル6は、柱形状の上流ノズル内側部材6aと、環形状の上流ノズル外側部材6bとを有している。
柱形状の上流ノズル内側部材6aの下流側縁部6a1の中央には、中流ノズル7Aの中流ノズル用貫通孔7f1に対向して、円柱状の空間である凹部6mが形成されている。凹部6mの存在により、原料Mが上流ノズル内側部材6aの下流側縁部6a1に衝突することが緩和され、下流側縁部6a1の摩耗が抑制される。
【0052】
なお、図4に示す上流ノズル6の上流ノズル内側部材6aの下流側縁部6a1の中央に、第1の中流ノズル7Aの中流ノズル用貫通孔7f1に対向して、凹部6mと同様な凹部を形成するとよい。これにより、原料Mによる上流ノズル内側部材6aの下流側縁部6a1(図4参照)の摩耗が抑制される。
また、図7に示す中流ノズル用貫通孔7f1,7f2,7f3に対して、始めは径s1が小径で次第に径s1が大きくなる貫通孔テーパ部30を配置または形成することもできる。
【0053】
特に、図7に示すように、複数の第1の中流ノズル7Aと第2の中流ノズル7Bと第3の中流ノズル7Cを配置した場合、各中流ノズル(7A、7B、7C)に形成される中流ノズル用貫通孔7f1、7f2、7f3に処理後の原料Mが通過する。
ここで、中流ノズル用貫通孔7f1の入口側と、中流ノズル用貫通孔7f3の出口側の距離が長くなればなるだけ、中流ノズル用貫通孔7f1,7f2,7f3の合計体積が大きくなるとともに、合流口9からの排出に伴うエネルギーの流れを考慮すると、できるだけ中流ノズル用貫通孔7f1の入口側に処理後の原料Mが残らない工夫が必要になる。
【0054】
そこで、中流ノズル用貫通孔7f1の入口側から、中流ノズル用貫通孔7f3の出口側に向かうにしたがって、径s1が漸次的にまたは段階的に縮径または拡径させてもよい。
また、貫通孔テーパ部30は、第1の中流ノズル7A、第2の中流ノズル7B、および第3の中流ノズル7Cに形成することもできる。或いは、複数の第1の中流ノズル7Aと第2の中流ノズル7Bと第3の中流ノズル7Cが連結しやすい構造とするために、独立した貫通孔テーパ部材30bを、第1の中流ノズル7A、第2の中流ノズル7B、第3の中流ノズル7Cに形成した中流ノズル用貫通孔30kにはめ込み、貫通孔テーパ部材30bを、前後の少なくとも1か所で固定する構造とすることもできる。
【0055】
図3Bに示す中流ノズル内側部材7aには、環状孔の中流ノズル用溝部7gと、貫通孔の排出孔7hを形成することもできる。
上流ノズル6と中流ノズル7とが連結させた場合であっても、原料Mは、各上流ノズル6、中流ノズル7の内部から圧力がかかった状態となっており、原料Mが、上流ノズル6と中流ノズル7との隙間から漏れてしまう可能性がある。そこで、環状孔の中流ノズル用溝部7gを形成することで、中流ノズル7内で余分な量の原料Mを収容できる構成となる。そのため、上流ノズル6と中流ノズル7との間から、原料Mが漏れることが緩和される。
【0056】
さらに、中流ノズル内側部材7aに、貫通孔の排出孔7hを形成している。これにより、上流ノズル6と中流ノズル7との隙間に原料Mが漏れそうになった場合に、排出孔7hから排出することで、スリットチャンバー1の外部に原料Mが漏れることを抑制または防止できる。排出孔7hは、中流ノズル導水部7c(図4参照)に接続している。
【0057】
変形例の図7に示すように、上流ノズル6と中流ノズル7の間に環状の第1のシール部材40を配置することで、原料Mの漏れを防止できる。具体的には、上流ノズル6または中流ノズル7の接合面の内側に、環状孔のポケット17hを形成している。環状孔のポケット17hの中に環状の第1のシール部材40が配置されることで、原料Mの漏れを防止できる。第1のシール部材40は、例えばブタジエンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0058】
また、図4に示す中流ノズル7と下流ノズル8の間にも、第1のシール部材40と同様な環状の第2のシール部材を配置することもできる。これにより、中流ノズル7と下流ノズル8の間からの原料Mの漏れを防止できる。例えば、中流ノズル7と下流ノズル8の接合面の内側に環状孔のポケット(図示せず)を形成し、その中に第1のシール部材40と同様な環状の第2のシール部材が配置されることで、中流ノズル7と下流ノズル8との間の隙間から、原料Mの漏れを防止できる。
【0059】
図4に示すように、下流ノズル8は、中流ノズル7の下流側に配置される。図3Cに示すように、下流ノズル8は、下流ノズル内側部材8aと下流ノズル外側部材8bとを有する。下流ノズル内側部材8aは、下流ノズル外側部材8bの内側に配置されている。下流ノズル内側部材8aは、原料Mの微粒化処理に耐えるために、下流ノズル外側部材8bよりも硬度が高い材質で形成されている。
【0060】
図3Cに示す下流ノズル8は、放射状に延びる下流ノズル用微粒化流路8dと、下流ノズル用貫通孔8eとを有する。
下流ノズル用微粒化流路8dは、原料Mを微粒化するための流路である。下流ノズル用微粒化流路8dは、断面略矩形の切り込み形状であり、単数または複数形成される。なお、下流ノズル用微粒化流路8dの断面形状は、任意に選択できる。
図2に示す下流ノズル用微粒化流路8dの外側には、下流ノズル環状溝8mが形成されている。
【0061】
図3B図4に示す中流ノズル導水部7cから供給された原料Mは、下流ノズル用微粒化流路8d(図3C図4)を通過することで、中流ノズル7では微粒化処理しきれなかった原料Mを処理することができる。
【0062】
図3C図4に示す下流ノズル用貫通孔8eは、下流ノズル用微粒化流路8d等での微粒化処理後の原料Mを排出するための孔である。
【0063】
つまり、原料Mは、図4に示す上流ノズル導水部6cを通過することで、中流ノズル用微粒化流路7e(図4図3B参照)で処理される。中流ノズル用微粒化流路7eの処理で処理しきれなかった原料Mは、中流ノズル導水部7c(図3B図4参照)を通過することで、下流ノズル用微粒化流路8dで処理される。このような構造とすることによって、原料Mの微粒化の処理量を増加させることができる。また、微粒化の処理後の原料Mは、中流ノズル用貫通孔7fと下流ノズル用貫通孔8eを介して合流口9(図4参照)から排出される。
【0064】
ところで、従来、原料Mの処理量を増加させるためには、スリットチャンバーを複数、利用する方法等が存在した。
これに対して、変形例の図7に示すように、中流ノズル7を複数配置するとよい。例えば、図7に示す第1の中流ノズル7A、第2の中流ノズル7B、第3の中流ノズル7Cである。なお、中流ノズル7の数は限定されない。これにより、原料Mの微粒化の処理量をさらに増やすこともできる。
そして、中流ノズル用微粒化流路7e(図4図3B参照)と同様な各中流ノズル(7A、7B、7C)に設ける第1中流ノズル用微粒化流路7e11、第2中流ノズル用微粒化流路7e12、第3中流ノズル用微粒化流路7e13で微粒化処理を行うことができる。これによって、図1に示すスリットチャンバー1を含む微粒化装置100が大型化しない構成とすることができる。
【0065】
また、図7に示す各7A、7B、7Cの内壁面には、ポケット17hとシール部材40を配置することもできる。
上流ノズル6、中流ノズル(7A、7B、7C)、下流ノズル8の間に、シール部材40(図7参照)を配置することによって、原料Mの漏れを防止できる。
【0066】
上記構成によれば、原料Mのスリットチャンバー1への投入量が増加した場合であっても、原料Mに連続的にせん断応力および衝突力を与え、大流量の原料Mを微粒化処理することができる。また、原料Mの漏れを抑制できるスリットチャンバー1および微粒化装置100を提供することができる。
【0067】
<変形形態1>
図8に、変形形態1のスリットチャンバー21Aの断面図を示す。
変形形態のスリットチャンバー21Aは、加圧されたスラリー状の原料Mを微粒化する装置である。スリットチャンバー21Aは、略柱形状を有している。
スリットチャンバー21Aでは、スラリー状の原料Mが、入口側(IN)の第1の先端部22aから出口側(OUT)に向かって供給される。
【0068】
スリットチャンバー21Aは、第1のチャンバー内側部材22と、第2のチャンバー内側部材23と、チャンバー外側部材24とを有している。
第1のチャンバー内側部材22は、環状の第1の先端部22aを有している。
第2のチャンバー内側部材23は、第1のチャンバー内側部材22と連結される。チャンバー外側部材24は、第1のチャンバー内側部材22および第2のチャンバー内側部材23の一部の外側に配置される。
【0069】
第2のチャンバー内側部材23の内側には、導水ノズル25と、上流ノズル26と、下流ノズル27と、荷重受けノズル28と、合流口29とが配置されている。導水ノズル25は、第1のチャンバー内側部材22と接合される。上流ノズル26は、導水ノズル25の下流側に配置される。下流ノズル27は、上流ノズル26の下流側に配置される。荷重受けノズル28は、下流ノズル27の下流側に配置される。
【0070】
チャンバー外側部材24は、内側に円柱形状の空間である窪み部24cを有している。窪み部24cと第1のチャンバー内側部材22の外側で画定される空間に、締付調整部10が配置されている。
締付調整部10は、例えば、単数または複数の圧縮バネ等の弾性部材を有している。これにより、第1のチャンバー内側部材22、導水ノズル25、上流ノズル26、下流ノズル27、荷重受けノズル28等の過度な締付を回避するための弾性力を付加できる。
【0071】
また、図7に示す上流ノズル6、中流ノズル(7A、7B、7C)、および下流ノズル8を締結する締結具20を配置することもできる。特に、中流ノズル7として、第1の中流ノズル7A、第2の中流ノズル7B、第3の中流ノズル7C等を複数配置する場合には、各ノズル(7A、7B、7C)同士の接触面から原料Mの漏れが発生する可能性がある。そのため、締結具20(図7参照)を配置して、各ノズル(7A、7B、7C)間を締め付けて原料Mの漏れを防止または抑制することができる。締結具20としては、締め付けピン、ネジ等を利用できる。
【0072】
また、締結具20は、上流ノズル6と中流ノズル7、中流ノズル(7A、7B、7C)同士、中流ノズル7と下流ノズル8、上流ノズル6と下流ノズル8等に分割して配置することもできる。流路内にかかる外力等に応じて、最適な組み合わせを設定できる。
なお、締結具20は、一方向だけでなく、異なる複数方向に対して配置することもできる。
【0073】
<変形形態2>
図9Aに、変形形態2の中流ノズル用微粒化流路テーパ部7e1を示す。
図9Bに、変形形態2の下流ノズル用微粒化流路テーパ部8d1を示す。
変形形態2は、実施形態の図3Bに示す中流ノズル用微粒化流路7eと図3Cに示す下流ノズル用微粒化流路8dを、それぞれ中流ノズル用微粒化流路テーパ部7e1(図9A参照)と下流ノズル微粒化流路テーパ部8d1(図9B参照)とに変更して形成したものである。
【0074】
つまり、図3Bに示す中流ノズル用微粒化流路7eは、変形形態2の中流ノズル用微粒化流路テーパ部7e1(図9A参照)に代替して形成できる。
また、図3Cに示す下流ノズル用微粒化流路8dは、変形形態2の下流ノズル微粒化流路テーパ部8d1(図9B参照)に代替して形成できる。
中流ノズル用微粒化流路テーパ部7e1や下流ノズル微粒化流路テーパ部8d1を形成することで、原料Mに加わるせん断力を強化することができる。
【0075】
中流ノズル用微粒化流路テーパ部7e1(図9A参照)のテーパとしては、中流ノズル用微粒化流路テーパ部7e1から中流ノズル用貫通孔7fに原料Mが滑らかに供給されるように、外側が広く(広がっており、または、膨らんでおり)、内側が狭くなっているような形状が望ましい。
同様に、下流ノズル微粒化流路テーパ部8d1(図9B参照)のテーパとしては、下流ノズル微粒化流路テーパ部8d1から下流ノズル用貫通孔8e内に原料Mが滑らかに供給されるように、外側が広く(広がっており、または、膨らんでおり)、内側が狭くなっているような形状が望ましい。
【0076】
なお、本明細書においては、中流ノズル用微粒化流路テーパ部7e1や下流ノズル微粒化流路テーパ部8d1をテーパ部の場合を例示したが、段差形状等の流路を選択することもできる。
【0077】
<変形形態3>
図10Aに、図2のII-II断面である変形形態3の中間ノズル37の拡大正面図を示す。
変形形態3の中間ノズル37の円柱形状の中流ノズル内側部材37aには、貫通孔からなる中流ノズル導水部37cが周方向に間隔をあけて複数形成されている。
また、円柱形状の中流ノズル内側部材37aには、切り込み形状の断面略矩形状の中流ノズル用微粒化流路37eが多数または複数、放射状に延びて形成されている。
【0078】
図10Bに、図10AのIV部拡大図を示す。
中流ノズル用微粒化流路37eの入口部37e1は凸状の曲率を有した形状に形成されている。これにより、原料Mが中流ノズル用微粒化流路37eの入口部37e1に詰まることが抑制される。入口部37e1から下流の下流路37e2は同じ流路幅s11をもって直線状に形成されている。
なお、図3Cに示す下流ノズル内側部材8aの下流ノズル用微粒化流路8dの入口部8d0も、図10Bと同様な凸状の曲率を有した形状に形成することが好ましい。これにより、原料Mが下流ノズル用微粒化流路8dの入口部8d0に詰まることが抑制される。
【0079】
図11Aに、変形形態3の変形例1の図2のII-II断面である中間ノズル37の拡大正面図を示す。
変形形態3の変形例1の中流ノズル用微粒化流路37gは、下流に向かうに従い流路幅s12が狭まる形状に直線状に形成されている。なお、流路幅s12が狭まる割合(中流ノズル用微粒化流路37gの側壁の傾斜角)は適宜任意に決定できる。流路幅s12を上流側で大きくし、下流側に向かうに従って漸減させたほうが流路幅s12を一定とする場合よりも原料Mが詰まる現象が抑制される。
これにより、原料Mが中流ノズル用微粒化流路37gに詰まることが抑制される。
【0080】
図11Bに、変形形態3の変形例2の図2のII-II断面である中間ノズル37の拡大正面図を示す。
変形形態3の変形例2の中流ノズル用微粒化流路37hは、入口部37h1は凹状の曲率を有した形状に形成されている。入口部37h1から下流の下流部37h2は下流に向かうに従い流路幅s13が狭まる形状に形成されている。
これにより、原料Mが入口部37h1を含む中流ノズル用微粒化流路37hに詰まることが抑制される。
【0081】
図11Cに、変形形態3の変形例3の図2のII-II断面である中間ノズル37の拡大正面図を示す。
変形形態3の変形例3の中流ノズル用微粒化流路37iは、入口部37i1は凸状の曲率を有した形状に形成されている。入口部37i1から下流の下流部37i2は下流に向かうに従い流路幅s4が狭まる形状に形成されている。
これにより、原料Mが入口部37i1を含む中流ノズル用微粒化流路37iに詰まることが抑制される。
【0082】
なお、図11A図11Cの例は、図3Cに示す下流ノズル用貫通孔8eに適用することもできる。
【0083】
上述の実施形態、変形形態等によれば、原料Mの投入量が増加した場合であっても連続的にせん断応力および衝突力を原料Mに与え、大流量の原料Mを処理することができる。また、原料Mの漏れを防止または抑制することができるスリットチャンバー1および微粒化装置100を提供できる。
【0084】
<<その他の実施形態>>
1.本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
本発明は、前記した実施形態、変形形態の構成に限られることなく、添付の特許請求の範囲内で様々な変形形態、具体的形態が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 スリットチャンバー
2 第1のチャンバー内側部材
3 第2のチャンバー内側部材
4 チャンバー外側部材
5 導水ノズル
6 上流ノズル
6c 上流ノズル導水部
7 中流ノズル
7A 第1中流ノズル
7B 第2中流ノズル
7C 第3中流ノズル
7e 中流ノズル用微粒化流路
7e1 中流ノズル用微粒化流路テーパ部(テーパ部)
7e11 第1中流ノズル用微粒化流路(中流ノズル用微粒化流路)
7e12 第2中流ノズル用微粒化流路(中流ノズル用微粒化流路)
7e13 第3中流ノズル用微粒化流路(中流ノズル用微粒化流路)
7f 中流ノズル用貫通孔
7g 中流ノズル用溝部
7h 排出孔
8 下流ノズル
8D 下流ノズル用微粒化流路
8d0 入口部
8d1 下流ノズル用微粒化流路テーパ部(テーパ部)
8e 下流ノズル用貫通孔
9 合流口
20 締付具
30 貫通孔テーパ部
37h1 入口部(凹状の曲率を有した入口部)
37i1 入口部(凸状の曲率を有した入口部)
40 シール部
100 微粒化装置
101 原料タンク
102 給液ポンプ
103 増圧機
M 原料
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C