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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008495
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/663 20180101AFI20250109BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20250109BHJP
   F21S 41/151 20180101ALI20250109BHJP
   F21W 102/10 20180101ALN20250109BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20250109BHJP
【FI】
F21S41/663
F21S41/143
F21S41/151
F21W102:10
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110717
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】赤津 達郎
(57)【要約】
【課題】小型化を実現しつつ多様な配光パターンを実現できる車両用灯具を提供する。
【解決手段】前方に光を照射する車両用灯具であって、第1入射部および第1出射部を有する第1光学系と、前後方向と直交する方向において第1光学系と並んで配置され、第2入射部および第2出射部を有する第2光学系と、第1入射部と対向する第1光源部と、第2入射部と対向する第2光源部と、を備え、第1光源部は、第1主発光部と第1副発光部とを有し、第2光源部は、第2主発光部と第2副発光部とを有し、第1主発光部は、第1入射部の光軸上に配置され、第2主発光部は、第2入射部の光軸上に配置され、第1副発光部は、第1入射部の光軸に対し左方にずれて配置され、第2副発光部は、第2入射部の光軸に対し右方にずれて配置される、車両用灯具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に光を照射する車両用灯具であって、
第1入射部および第1出射部を有する第1光学系と、
前後方向と直交する方向において前記第1光学系と並んで配置され、第2入射部および第2出射部を有する第2光学系と、
前記第1入射部と対向する第1光源部と、
前記第2入射部と対向する第2光源部と、を備え、
前記第1光源部は、第1主発光部と第1副発光部とを有し、
前記第2光源部は、第2主発光部と第2副発光部とを有し、
前記第1主発光部は、前記第1入射部の光軸上に配置され、
前記第2主発光部は、前記第2入射部の光軸上に配置され、
前記第1副発光部は、前記第1入射部の光軸に対し左方にずれて配置され、
前記第2副発光部は、前記第2入射部の光軸に対し右方にずれて配置される、
車両用灯具。
【請求項2】
前記第1副発光部は、前記第1入射部の光軸に対し上方にずれて配置され、
前記第2副発光部は、前記第2入射部の光軸に対し下方にずれて配置される、
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第1入射部の光軸と前記第1副発光部の中心との距離は、前記第2入射部の光軸と前記第2副発光部の中心との距離と等しい、
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第1主発光部、前記第1副発光部、前記第2主発光部、および前記第2副発光部は、同一の回路基板上に実装される、
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第1光源部および前記第2光源部を制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記第1主発光部および前記第2主発光部を点灯させ、前記第1副発光部および前記第2副発光部を消灯させて前方に第1配光パターンを形成する第1モードと、
前記第1副発光部および前記第2副発光部を点灯させ、前記第1主発光部および前記第2主発光部を消灯させて前方に第2配光パターンを形成する第2モードと、を切り替え可能である、
請求項1~4の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
光源とレンズ体とを組み合わせた車両用灯具が知られている。このような車両用灯具では、レンズ体が光を屈折させることで前方に所望の配光パターンを形成する。このような車両用灯具で、複数の配光パターンを形成する場合、複数のレンズ体を用意する必要が生じ、車両用灯具が大型化してしまう。特許文献1には、1つのレンズ体の入射部に異なる方向から光を入射させる複数の発光素子を配置し、少ないレンズ体でハイビームとロービームの配光パターンを形成する車両用灯具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6690961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用灯具では、ハイビーム用などの狭い範囲に光を集中させる配光パターンと、昼間点灯(DRL)用ビームなどの広範囲に光を照射する配光パターンとを、少ないレンズ体で形成することができなかった。すなわち、従来の車両用灯具では、形成される複数の配光パターンのバリエーションに限界があった。
【0005】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、小型化を実現しつつ多様な配光パターンを実現できる車両用灯具の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1] 前方に光を照射する車両用灯具であって、第1入射部および第1出射部を有する第1光学系と、前後方向と直交する方向(複数ある)において前記第1光学系と並んで配置され、第2入射部および第2出射部を有する第2光学系と、前記第1入射部と対向する第1光源部と、前記第2入射部と対向する第2光源部と、を備え、前記第1光源部は、第1主発光部と第1副発光部とを有し、前記第2光源部は、第2主発光部と第2副発光部とを有し、前記第1主発光部は、前記第1入射部の光軸上に配置され、前記第2主発光部は、前記第2入射部の光軸上に配置され、前記第1副発光部は、前記第1入射部の光軸に対し左方にずれて配置され、前記第2副発光部は、前記第2入射部の光軸に対し右方にずれて配置される、車両用灯具。
[2] 前記第1副発光部は、前記第1入射部の光軸に対し上方にずれて配置され、前記第2副発光部は、前記第2入射部の光軸に対し下方にずれて配置される、[1]に記載の車両用灯具。
[3] 前記第1入射部の光軸と前記第1副発光部の中心との距離は、前記第2入射部の光軸と前記第2副発光部の中心との距離と等しい、[1]に記載の車両用灯具。
[4] 前記第1主発光部、前記第1副発光部、前記第2主発光部、および前記第2副発光部は、同一の回路基板上に実装される、[1]に記載の車両用灯具。
[5] 前記第1光源部および前記第2光源部を制御する制御部を有し、前記制御部は、前記第1主発光部および前記第2主発光部を点灯させ、前記第1副発光部および前記第2副発光部を消灯させて前方に第1配光パターンを形成する第1モードと、前記第1副発光部および前記第2副発光部を点灯させ、前記第1主発光部および前記第2主発光部を消灯させて前方に第2配光パターンを形成する第2モードと、を切り替え可能である、[1]~[4]の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型化を実現しつつ多様な配光パターンを実現できる車両用灯具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の車両用灯具1の斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う車両用灯具の断面図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿う車両用灯具の断面図であり、第1モードで照射される光の光路を示す図である。
図4図4は、図1のIII-III線に沿う車両用灯具の断面図であり、第2モードで照射される光の光路を示す図である。
図5図5は、一実施形態の第1光源部を後方から見た正面図である。
図6図6は、一実施形態の第2光源部を後方から見た正面図である。
図7図7は、一実施形態の車両用灯具が投影する第1配光パターンを示す図である。
図8図8は、一実施形態の車両用灯具が投影する第2配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0010】
以下の説明では、水平な路面上に位置する車両に搭載された車両用灯具を基に、車両用灯具の各部の位置を説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。各図において、Z軸方向は、鉛直方向であり、+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。本明細書では、+X側を単に「上方」と呼び、鉛直方向下側を単に「下方」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって、本実施形態の車両用灯具1が搭載される車両の前後方向である。また、+X側は、車両前方であり、-X側は、車両後方である。本明細書では、+X側を単に「前方」と呼び、-X側を単に「後方」と呼ぶ。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。+Y側は、車両左方であり、-Y側は、車両右方である。本明細書では、+Y側を単に「左方」と呼び、-Y側を単に「右方」と呼ぶ。
【0011】
図1は、本実施形態の車両用灯具1の斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿う車両用灯具1の断面図である。図3および図4は、図1のIII-III線に沿う車両用灯具1の断面図である。
【0012】
本実施形態の車両用灯具1は、ハイビームと昼間点灯(DRL)用ビームとを車両前方(+X)に向けて切り替え自在に照射する車両用前照灯(ヘッドライト)を構成するものである。本明細書においては、車両用灯具1の光の照射方向を前方として各部の方向を規定する。すなわち、車両用灯具1は、前方(+X)側に光を照射する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の車両用灯具1は、制御部2と、光源ユニット5と、第1光学系10と、第2光学系20と、を備える。光源ユニット5は、第1光源部30、第2光源部40、および回路基板50を有する。さらに、第1光源部30は、第1主発光部31および第1副発光部32を有し、第2光源部40は、第2主発光部41および第2副発光部42を有する。
【0014】
第1光学系10と第2光学系20とは、左右方向(Y軸方向)に並んで配置される。第1光学系10は、前後方向(X軸方向)と略平行な第1基準軸(光軸)AX1に沿って延びる。第1光学系10は、第1後方レンズ部11と、第1前方レンズ部15と、を有する。第1後方レンズ部11と第1前方レンズ部15とは、第1基準軸AX1に沿って並んで配置される。同様に、第2光学系20は、前後方向(X軸方向)と略平行な第2基準軸(光軸)AX2に沿って延びる。第2光学系20は、第2後方レンズ部21と、第2前方レンズ部25と、を有する。第2後方レンズ部21と第2前方レンズ部25とは、第2基準軸AX2に沿って並んで配置される。
【0015】
本実施形態において、第1後方レンズ部11と第2後方レンズ部21とは、一体的に形成されて、後方レンズ体3を構成する。同様に、第1前方レンズ部15と第2前方レンズ部25とは、一体的に形成されて、前方レンズ体4を構成する。後方レンズ体3および前方レンズ体4は、それぞれ多面レンズ体である。前方レンズ体4は、後方レンズ体3の前方に位置する。後方レンズ体3および前方レンズ体4は、例えば、ポリカーボネイトやアクリル(PMMA)等の空気よりも屈折率の高い透明樹脂材料から構成される。後方レンズ体3および前方レンズ体4は、それぞれ金型を用いた射出成形によって成形される。なお、後方レンズ体3および前方レンズ体4は、ガラス材料から構成されていてもよい。
【0016】
(第1光学系)
第1光学系10は、第1入射部12と、第1出射部19と、を有する。第1出射部19は、第1中間出射面13と、第1中間入射面16と、第1出射面17と、を有する。本実施形態において、第1入射部12および第1中間出射面13は、第1後方レンズ部11の表面に形成される。一方で、第1中間入射面16および第1出射面17は、第1前方レンズ部15の表面に形成される。第1入射部12、第1中間出射面13、第1中間入射面16、および第1出射面17は、第1基準軸AX1に沿ってこの順で配置される。
【0017】
本実施形態において、第1基準軸AX1は、第1入射部12、および第1出射部19の光軸を構成する。第1基準軸AX1に沿って第1入射部12に入射する光は、第1基準軸AX1に沿って第1光学系10の内部を通過し、第1基準軸AX1に沿って第1出射部19から前方に出射する。
【0018】
図2に示すように、第1入射部12は、第1後方レンズ部11の後端(後面)側に位置する。第1入射部12は、光源ユニット5と前後方向に対向する。第1入射部12は、正面入射面12aと、側方入射面12bと、内面反射面12cと、を有する。
【0019】
正面入射面12aは、第1基準軸AX1上に配置される。正面入射面12aは、第1基準軸AX1を中心として後方(-X)に凸となる自由曲面(非球面)により構成されている。正面入射面12aは、レンズ面を構成する。側方入射面12bは、正面入射面12aの外縁から後方(-X)に向かって延びる。側方入射面12bは、円錐面状の内周面により構成されている。側方入射面12bは、前方から後方に向かうに従い第1基準軸AX1から離れるように傾斜する。これにより、側方入射面12bにより後方に向けて開口する開口面積が、後方(-X)に向かうに従って大きくなり、側方入射面12bは、光源ユニット5から照射された光を効率よく捕捉できる。内面反射面12cは、側方入射面12bの後端部から前方に向かって延びる。内面反射面12cは、前後方向に沿う方向を中心軸とする略放物面形状を有する。内面反射面12cは、正面入射面12aおよび側方入射面12bを径方向外側から囲む。
【0020】
光源ユニット5の第1主発光部31から出射された光のうち、比較的出射角の小さい光LA1は、正面入射面12aに入射する。この光LA1は、正面入射面12aにおいて、屈折して第1光学系10の内部に導かれる。正面入射面12aは、第1主発光部31から出射された光LA1を、第1基準軸AX1上の第1焦点F1に集光させる。一方で、第1主発光部31から出射された光のうち、比較的出射角の大きい光L2は、側方入射面12bに入射する。この光L2は、側方入射面12bで屈折して第1光学系10の内部に導かれ、内面反射面12cで前方に向かって内面反射(全反射)する。すなわち、内面反射面12cは、側方入射面12bから入射した光L2を前方に内面反射させる。側方入射面12bおよび内面反射面12cは、第1主発光部31から入射した光L2を第1焦点F1に集光させるように構成されていてもよい。
【0021】
第1中間出射面13は、第1後方レンズ部11の前端(前面)側に位置する。第1後方レンズ部11の内部を通過する光は第1中間出射面13から出射される。第1中間出射面13は、図1に示すように、出射する光を鉛直方向(Z軸方向)および水平方向に集光させるように前方(+X)に凸となる自由曲面(非球面)により構成されている。
【0022】
第1中間入射面16は、第1前方レンズ部15の後端(後面)側に位置する。第1中間入射面16は、後方(-X)を向き、前後方向において第1中間出射面13と対向する。第1中間入射面16には、第1中間出射面13から出射した光が入射する。本実施形態の第1中間入射面16は、水平方向に延びる円柱軸を中心として後方に凸となるシリンドリカルレンズ面である。
【0023】
第1出射面17は、第1前方レンズ部15の前端(前面)に位置する。第1出射面17は、前方(+X)側を向く。第1出射面17は、第1前方レンズ部15の内部を通過する光を前方に向けて出射する。第1出射面17は、第1光学系10の最終出射面として機能する。本実施形態の第1出射面17は、水平方向に延びる円柱軸を中心として後方に凸となるシリンドリカルレンズ面である。
【0024】
本実施形態において、第1中間出射面13、第1中間入射面16、および第1出射面17は、第1焦点F1を結ぶ合成レンズを構成する。したがって、第1入射部12から第1光学系10に入射する光の中で、第1焦点F1を通過する光は、第1出射面17から略平行光として前方に出射される。なお、本実施形態の第1中間出射面13、第1中間入射面16、および第1出射面17の構成は一例であり、各面の形状および配置は、全体として一つの合成レンズを構成できるものであれば本実施形態に限定されない。
【0025】
(第2光学系)
第2光学系20は、第1光学系10と同様に、第2入射部22と、第2出射部29と、を有する。第2出射部29は、第2中間出射面23と、第2中間入射面26と、第2出射面27と、を有する。第2入射部22および第2中間出射面23は、第2後方レンズ部21の表面に形成される。第2中間入射面26および第2出射面27は、第2前方レンズ部25の表面に形成される。第2入射部22、第2中間出射面23、第2中間入射面26、および第2出射面27は、第2基準軸AX2に沿ってこの順で配置される。
【0026】
本実施形態において、第2基準軸AX2は、第2入射部22、および第2出射部29の光軸を構成する。第2基準軸AX2に沿って第2入射部22に入射する光は、第2基準軸AX2に沿って第2光学系20の内部を通過し、第2基準軸AX2に沿って第2出射部29から前方に出射する。
【0027】
図3に示すように、第1光学系10と第2光学系20とは、第1基準軸AX1および第2基準軸AX2と平行な仮想境界面VPを基準面とする面対照形状を有する。したがって、第2光学系20は、第1光学系10の各部と面対照な各部を有する。より具体的には、第1入射部12と第2入射部22とが互いに対照形状を有し、第1中間出射面13と第2中間出射面23とが互いに対照形状を有し、第1中間入射面16と第2中間入射面26とが互いに対照形状を有し、第1出射面17と第2出射面27とが互いに対照形状を有する。このため、本明細書では、第2光学系20の各部については、以下に簡単に説明し、詳細な説明を省略する。
【0028】
図2に示すように、第2入射部22は、第2後方レンズ部21の後端(後面)側に位置する。第2入射部22は、光源ユニット5と前後方向に対向する。第2入射部22は、第1光学系10と同様に、正面入射面22aと、側方入射面22bと、内面反射面22cと、を有する。第2入射部22に入射する光のうち、少なくとも正面入射面22aに入射する光は、第2基準軸AX2上の第2焦点F2に集光する。
【0029】
第2中間出射面23は、第2後方レンズ部21の前端(前面)側に位置する。第2中間入射面26は、第2前方レンズ部25の後端(後面)側に位置する。第2出射面27は、第2前方レンズ部25の前端(前面)に位置する。本実施形態において、第2中間出射面23、第2中間入射面26、および第2出射面27は、第2焦点F2を結ぶ合成レンズを構成する。したがって、第2入射部22から第2光学系20に入射する光の中で、第2焦点F2を通過する光は、第2出射面27から平行光として前方に出射される。
【0030】
(光源ユニット)
光源ユニット5の回路基板50は、第1基準軸AX1および第2基準軸AX2と直交する平面に沿って延びる矩形平板状のプリント配線基板である。回路基板50の実装面には、図示略の配線パターンが設けられる。回路基板50の前方を向く面には、第1光源部30の第1主発光部31および第1副発光部32、並びに第2光源部40の第2主発光部41および第2副発光部42が実装される。また、回路基板50には、第1光源部30および第2光源部40を制御する制御部2が接続される。なお、制御部2は、回路基板50に実装される複数の電子部品によって構成されていてもよい。
【0031】
第1主発光部31および第1副発光部32は、前後方向(X軸方向)において第1入射部12に対向する。第2主発光部41および第2副発光部42は、前後方向(X軸方向)において第1入射部12に対向する。第1主発光部31、第1副発光部32、第2主発光部41、および第2副発光部42は、それぞれ白色光を発するLEDから構成される。また、LEDには、車両照明用の高出力タイプのものが使用されている。なお、各発光部の種類については、特に限定されるものではなく、上述した発光素子以外の光源を用いてもよい。
【0032】
第1主発光部31および第2主発光部41から照射される光は、ハイビームの光として利用される。一方で、第1副発光部32および第2副発光部42は、昼間点灯(DRL)用ビームの光として利用される。第1主発光部31と第2主発光部41とは、互いに同等の光量の光を照射する。また、第1副発光部32と第2副発光部42とは、互いに同等の光量の光を照射する。本実施形態では、第1主発光部31および第2主発光部41が照射する光の光量と、第1副発光部32および第2副発光部42が照射する光の光量とは、互いに等しいが、これらは互いに異なっていてもよい。
【0033】
図5は、本実施形態の第1光源部30を後方から見た正面図である。図5に示すように、第1光源部30の第1主発光部31と第1副発光部32とは、互いにずらされて配置される。第1主発光部31は、第1基準軸AX1上に配置される。第1基準軸AX1は、第1主発光部31の中心に位置し、第1主発光部31の主面に対し直交する。第1主発光部31から出射する最も明るい光線は、第1基準軸AX1を通過して第1入射部12に入射する。一方で、第1副発光部32は、第1基準軸AX1に対して左方(+Y)および上方(+Z)にずれて配置される。本実施形態において、第1副発光部32が第1基準軸AX1に対しずれる方向(左上方向)を第1方向D1とする。第1基準軸AX1と第1副発光部32の中心とは、左右方向(Y軸方向)に第1左右方向距離d1だけ離間し、鉛直方向(Z軸方向)に第1鉛直方向距離h1だけ離間する。
【0034】
図6は、本実施形態の第2光源部40を後方から見た正面図である。図6に示すように、第2光源部40の第2主発光部41と第2副発光部42とは、互いにずらされて配置される。第2主発光部41は、第2基準軸AX2上に配置される。第2基準軸AX2は、第2主発光部41の中心に位置し、第2主発光部41の主面に対し直交する。第2主発光部41から出射する最も明るい光線は、第2基準軸AX2を通過して第2入射部22に入射する。一方で、第2副発光部42は、第2基準軸AX2に対して右方(-Y)および下方(-Z)にずれて配置される。本実施形態において、第2副発光部42が第2基準軸AX2に対しずれる方向(右下方向)を第2方向D2とする。第2基準軸AX2と第2主発光部41の中心とは、左右方向(Y軸方向)に第2左右方向距離d2だけ離間し、鉛直方向(Z軸方向)に第2鉛直方向距離h2だけ離間する。
【0035】
図5および図6に示すように、第1副発光部32は第1基準軸AX1に対して上方および左方にずれており、第2副発光部42は第2基準軸AX2に対して下方および右方にずれている。したがって、第1基準軸AX1に対して第1副発光部32のずれる方向(第1方向D1)と、第2基準軸AX2に対して第2副発光部42のずれる方向(第2方向D2)とは、互いに対称な方向である。
なお、ここで「互いに対称な方向」とは、互いに略平行な方向であって、互いに反対側を向く方向を意味する。また、ここで互いに略平行とは、厳密な意味で平行な場合に限られず、一方に対して他方が±30°の範囲で概ね平行であればよい。
【0036】
本実施形態において、第1左右方向距離d1と第2左右方向距離d2とは、互いに等しい。また、第1鉛直方向距離h1と第2鉛直方向距離h2とは、互いに等しい。すなわち、第1基準軸AX1と第1副発光部32の中心との距離と、第2基準軸AX2と第2副発光部42との中心との距離とは、互いに等しい。
【0037】
(制御部)
図1に示す本実施形態の制御部2は、光源ユニット5の各発光部を制御し、車両用灯具1のモードを、第1モードと第2モードとの間で切り替える。第1モードは、車両用灯具1の前方にハイビームを照射するモードである。一方で、第2モードは、車両用灯具1の前方に昼間点灯用ビームを照射するモードである。第1モードは、主に夜間に選択され、第2モードは、主に昼間に選択される。
【0038】
第1モードの制御部2は、第1主発光部31および第2主発光部41を点灯させ、第1副発光部32および第2副発光部42を消灯させて前方に第1配光パターンP1を形成する。第2モードの制御部2は、第1副発光部32および第2副発光部42を点灯させ、第1主発光部31および第2主発光部41を消灯させて前方に第2配光パターンP2を形成する。
【0039】
(配光パターン)
図3に示すように、第1モードでは、第1主発光部31および第2主発光部41から光が照射される。第1主発光部31から出射された光LA1は、第1後方レンズ部11の内部で第1焦点F1を通過して第1出射部19から略平行な平行光として前方に出射される。同様に、第2主発光部41から出射された光LA2は、第2後方レンズ部21の内部で第2焦点F2を通過して第2出射部29から略平行な平行光として前方に出射される。なお、図2に示すように、第1主発光部31から出射される光LA1は、鉛直方向(Z)においても、第1焦点F1を通過して第1出射部19から略平行な平行光として前方に出射される。また、図示を省略するが、第2主発光部41から出射される光LA2についても、鉛直方向において平行光として前方に出射される。
【0040】
図7は、第1モードにおいて、車両用灯具1が前方の仮想的なスクリーンに投影する第1配光パターンP1を示す図である。第1モードにおいて、第1光学系10から出射される光と第2光学系20から出射される光とは、前方のスクリーン上で互いに重なり合ってハイビーム用の第1配光パターンP1を形成する。第1モードにおいて、第1光学系10、および第2光学系20は、それぞれ前方(+X)に向けて略平行な光を出射する。このため、第1配光パターンP1では、スクリーンの中央近傍に光の照射が集中し、スクリーンの中央近傍でもっとも明るくなる。一方で、第1配光パターンP1では、スクリーンの上下左右に拡散されて照射される光が少なくなる。
【0041】
図4に示すように、第2モードでは、第1副発光部32および第2副発光部42から光が照射される。第1副発光部32から出射する光LB1は、第1出射部19から前方(+X)に対し左方(+Y)に傾いた方向に拡散して出射される。また、図2に示すように、第1副発光部32から出射される光LB1は、第1出射部19から前方(+X)に対し上方(+Z)に傾いた方向に拡散して出射される。第2副発光部42から出射される光LB2は、第2出射部29から前方(+X)に対し右方(-Y)に傾いた方向に拡散して出射される。また、図示を省略するが、第2副発光部42から出射される光LB1は、第2出射部29から前方(+X)に対し下方(-Z)に傾いた方向に拡散して出射される。第1副発光部32および第2副発光部42から出射される光LB1、LB2の少なくとも一部は、車両用灯具1の前方(+X)で左右方向(Y軸方向)および鉛直方向(Z軸方向)おいて互いに交差する。
【0042】
第1副発光部32は、第1基準軸AX1に対し左方および上方に配置されるため、第1副発光部32から出射された光LB1は、車両用灯具1の前方で左方および上方に拡散する。第2副発光部42は、第2基準軸AX2に対し右方および下方に配置されるため、第2副発光部42から出射された光LB2は、車両用灯具1の前方で右方および下方に拡散する。すなわち、本実施形態の第2モードにおいて、第1光学系10と第2光学系20から拡散して出射される光の方向は、各光源部において副発光部が基準軸に対しずれる方向(第1方向D1および第2方向D2)と一致する。
【0043】
図8は、第2モードにおいて、車両用灯具1が前方の仮想的なスクリーンに投影する第2配光パターンP2を示す図である。第2モードにおいて、第1光学系10から出射される光と第2光学系20から出射される光とは、前方のスクリーン上で互いに重なり合って昼間点灯用ビーム用の第2配光パターンP2を形成する。第2モードにおいて、第1光学系10は左方および上方に光を拡散させ、第2光学系20は右方および下方に光を拡散させる。このため、第2モードでは、スクリーンの左上方向、および右下方向に幅広く光が分布した第2配光パターンP2が形成される。一方で、第2配光パターンP2では、スクリーンの中央近傍において光の照射が集中しにくくなり、第1配光パターンP1と比較してスクリーンの中央近傍が暗くなる。
【0044】
(まとめ)
本実施形態の車両用灯具1は、前方に光を照射する。図1に示すように、車両用灯具1は、第1光学系10と、第2光学系20と、第1光源部30と、第2光源部40と、を備える。第1光学系10は、第1入射部12および第1出射部19を有する。第2光学系20は、前後方向(X軸方向)と直交する方向において第1光学系10と並んで配置される。第2光学系20は、第2入射部22および第2出射部29を有する。第1光源部30は、第1入射部12と対向する。第2光源部40は、第2入射部22と対向する。第1光源部30は、第1主発光部31と第1副発光部32とを有する。第2光源部40は、第2主発光部41と第2副発光部42とを有する。図5、および図6に示すように、第1主発光部31は、第1入射部12の光軸(第1基準軸AX1)上に配置される。第2主発光部41は、第2入射部22の光軸(第2基準軸AX2)上に配置される。第1副発光部32は、第1入射部12の光軸(第1基準軸AX1)に対し左方(+Y)にずれて配置される。第2副発光部42は、第2入射部22の光軸(第2基準軸AX2)に対し右方(-Y)にずれて配置される。
【0045】
上述の構成によれば、第1光源部30が、第1入射部12と対向する第1主発光部31および第1副発光部32を有するため、第1主発光部31から出射される光と、第1副発光部32から出射される光とで、異なる配光パターンを形成できる。同様に、第2光源部40が、第2入射部22と対向する第2主発光部41および第2副発光部42を有するため、第2主発光部41から出射される光と、第2副発光部42から出射される光とで、異なる配光パターンを形成できる。すなわち、上述の構成によれば、光学系の数を節約しつつ、複数の配光パターンを形成することが可能となり、車両用灯具1の小型化を図ることができる。
【0046】
また、上述の構成によれば、図3に示すように、第1主発光部31および第2主発光部41は、それぞれ入射部12、22の光軸上に配置される。このため第1主発光部31および第2主発光部41から出射される光は、それぞれの出射部19、29から平行に出射し易い。図7に示すように、車両用灯具1は、第1主発光部31および第2主発光部41を点灯させることで、狭い範囲に光を集中させる配光パターン(第1配光パターンP1)を形成することができる。このような第1配光パターンP1は、ハイビームとして好適に利用できる。
【0047】
一方で、上述の構成によれば、図4に示すように、第1副発光部32および第2副発光部42は、それぞれ入射部12、22の光軸からずらされて配置される。図8に示すように車両用灯具1は、第1副発光部32および第2副発光部42を点灯させることで、幅広く光を拡散させた配光パターン(第2配光パターンP2)を形成することができる。特に、上述の構成によれば、第1副発光部32が光軸(第1基準軸AX1)に対してずれる方向(第1方向D1)と第2副発光部42が光軸(第2基準軸AX2)に対してずれる方向(第2方向D2)とが、左右方向において反対側である。このため、第1副発光部32から出射した光が第1光学系10を通って拡散する方向と、第2副発光部42から出射した光が第2光学系20を通って拡散する方向とを、左右方向の反対方向とすることができる。第1副発光部32と第2副発光部42によって形成されるそれぞれの配光パターンを重ね合わせることで、左右方向に幅広い範囲に光を照射する合成配光パターン(第2配光パターンP2)を形成できる。また、このような第2配光パターンP2は、昼間点灯(DRL)用ビームとして好適に利用できる。
【0048】
なお、本実施形態では、第1副発光部32が光軸に対し左方および上方にずれ、第2副発光部42が光軸に対し右方および下方にずれて配置される場合について説明した。しかしながら、第1副発光部32および第2副発光部42は、それぞれの光軸に対し左右方向の反対側にずれて配置されていれば、光軸に対し上下方向にずれていなくても、又は上下方向の同方向にずれて配置されていてもよい。これらの場合であっても、左右方向に幅広い合成配光パターンを構成するという効果を得ることができる。
【0049】
本実施形態の車両用灯具1において、第1副発光部32は、第1入射部12の光軸(第1基準軸AX1)に対し上方にずれて配置される。第2副発光部42は、第2入射部22の光軸(第2基準軸AX2)に対し下方にずれて配置される。この構成によれば、第1副発光部32および第2副発光部42を点灯させて形成する第2配光パターンP2において、鉛直方向に光を照射させて鉛直方向に幅広く光を照射することができる。
【0050】
本実施形態の車両用灯具1において、第1入射部12の光軸(第1基準軸AX1)と第1副発光部32の中心との距離は、第2入射部22の光軸(第2基準軸AX2)と第2副発光部42の中心との距離と等しい。この構成によれば、第1副発光部32によって形成される配光パターンと第2副発光部42によって形成される配光パターンとを略対称な形状とすることができ、第1副発光部32および第2副発光部42をずらした方向において同程度だけ幅広い合成配光パターン(第2配光パターンP2)を形成することができる。このため、より幅広い範囲に光を照射する第2配光パターンP2を形成することができる。
【0051】
本実施形態の車両用灯具1において、第1主発光部31、第1副発光部32、第2主発光部41、および第2副発光部42は、同一の回路基板50上に実装される。この構成によれば、複数の回路基板に実装する場合と比較して、車両用灯具1の部品点数を削減して車両用灯具1を安価に製造できる。加えて、複数の回路基板を設ける場合と比較して、車両用灯具1の小型化を図ることができる。なお、本実施形態の第1主発光部31および第2主発光部41は、ハイビームの光源として利用されるため夜間に点灯する。一方で、第1副発光部32および第2副発光部42は、昼間点灯用ビームの光源として利用されるため、昼間に点灯する。このため、主発光部31、41と、副発光部32、42とが、同一の回路基板50上で互いに近接して配置していても、互いに熱の影響を及ぼしにくい。このため、同一の回路基板50に実装しても、それぞれの発光部の光量が低下し難い。
【0052】
本実施形態の車両用灯具1において、第1光源部30および第2光源部40を制御する制御部2を有する。制御部2は、第1モードと第2モードとを切り替え可能である。第1モードは、第1主発光部31および第2主発光部41を点灯させ、第1副発光部32および第2副発光部42を消灯させて前方に第1配光パターンP1を形成する。第2モードは、第1副発光部32および第2副発光部42を点灯させ、第1主発光部31および第2主発光部41を消灯させて前方に第2配光パターンP2を形成する。この構成によれば、制御部2は、ハイビーム用として好適な第1配光パターンP1と、昼間点灯用ビームとして好適な第2配光パターンP2とを、容易に切り替えることができる。
【0053】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0054】
例えば、上述の実施形態では、第1配光パターンP1をハイビーム用として利用する場合について説明したが、第1配光パターンP1をロービームなど他の用途で利用してもよい。同様に、上述の実施形態では、第2配光パターンP2を昼間点灯用ビーム用として利用する場合について説明したが、第2配光パターンP2を、例えば、より光度の低い車幅灯(ポジションランプ)や装飾灯(アクセサリランプ)など他の用途で利用してもよい。
【0055】
上述の実施形態では、第1基準軸AX1と第1副発光部32との距離と、第2基準軸AX2と第2副発光部42との距離とが、互いに等しい場合について説明した。しかしながら、第1基準軸AX1に対して第1副発光部32がずれる方向と、第2基準軸AX2に対して第2副発光部42がずれる方向とが、互いに対称であれば、距離が互いに異なっていても、幅広い範囲に光を照射するという上述の効果を一定以上得ることができる。
【0056】
上述の実施形態における第1光学系10と第2光学系20の形状などの構成は、一例であり同様の機能を奏する光学系が構成されていれば上述の実施形態に限定されない。例えば、第1後方レンズ部11と第2後方レンズ部21とは、互いに別体であってもよい。同様に、第1前方レンズ部15と第2前方レンズ部25とは、互いに別体であってもよい。さらに、後方レンズ体3と前方レンズ体4とは、光路を避けた部分で互いに連結された一体形状を有していてもよい。さらに、第1光学系10および第2光学系20には、それぞれカットオフラインを形成する反射面が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…車両用灯具、2…制御部、10…第1光学系、12…第1入射部、19…第1出射部、20…第2光学系、22…第2入射部、29…第2出射部、30…第1光源部、31…第1主発光部、32…第1副発光部、40…第2光源部、41…第2主発光部、42…第2副発光部、50…回路基板、AX1…第1基準軸(光軸)、AX2…第2基準軸(光軸)、D1…第1方向、D2…第2方向、P1…第1配光パターン、P2…第2配光パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8