(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008496
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20250109BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G06Q50/10
G01M17/007 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110718
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】市村 和之
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】部品交換以外の方法によっても車両の故障を回避可能にする情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置200には、発生が予測される故障の種類を出力する故障予測モデル140と、運転操作の時系列データを入力すると車両各部の挙動の時系列データを出力するシミュレーションモデル240が記憶されている。情報処理装置200は、故障予測装置100から予測される故障の種類を出力したときの入力変数のデータを取得すると、そのうちの運転操作の時系列データをシミュレーションモデル240に入力して車両400の制御パラメータの値を変更した場合の車両各部の挙動の時系列データの模擬データを算出する。情報処理装置200は、運転操作の時系列データと模擬データとからなる試行用入力変数を故障予測モデル140に入力して故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値を探索し、得られた値への変更を車両400のユーザーに提示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理装置と、記憶装置と、を備え、
運転操作及び車両各部の挙動の時系列データからなる入力変数を入力すると発生が予測される故障の種類を出力するように教師有り学習によって学習した故障予測モデルと、
運転操作の時系列データを入力すると車両各部の挙動の時系列データを出力するシミュレーションモデルと、が前記記憶装置に記憶されており、
前記処理装置が、
前記故障予測モデルと同一の故障予測モデルを用いて車両の故障を予測する故障予測装置から、前記故障予測装置が予測される故障の種類を出力したときの前記入力変数のデータを取得することと、
取得した前記入力変数のデータにおける前記運転操作の時系列データを前記シミュレーションモデルに入力して、前記車両の制御パラメータの値を変更した場合の車両各部の挙動の時系列データを模擬した模擬データを算出することによって、取得した前記入力変数のデータにおける前記運転操作の時系列データと前記模擬データとからなる試行用入力変数を生成し、生成した前記試行用入力変数を前記故障予測モデルに入力して故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値を探索することと、
探索によって得られた故障の発生が予測されなくなる値への制御パラメータの変更を前記車両のユーザーに提示することと、を実行する
情報処理装置。
【請求項2】
探索により、故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値が複数得られた場合、前記処理装置が、得られた複数の値のうち、前記車両の運動性能への悪影響がもっとも少ない値を選択して、選択した値への制御パラメータの変更をユーザーに提示する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記処理装置が、
提示した値への制御パラメータの変更を前記車両に実行させる
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記故障予測装置により予測される故障の種類に対応させて探索時に変更する制御パラメータの種類をまとめたデータベースが前記記憶装置に記憶されており、
前記処理装置が、
前記故障予測装置が予測した故障の種類の情報を取得することと、
探索時に変更する制御パラメータの種類を、予測された故障の種類の情報に基づいて前記データベースから抽出することで、探索時に変更する前記制御パラメータの種類を絞り込むことと、を実行する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
車両と通信ネットワークを通じて接続されている情報処理装置であり、
処理装置と、記憶装置と、を備え、
運転操作及び車両各部の挙動の時系列データからなる入力変数を入力すると発生が予測される故障の種類を出力するように教師有り学習によって学習した故障予測モデルと、
運転操作の時系列データを入力すると車両各部の挙動の時系列データを出力するシミュレーションモデルと、が前記記憶装置に記憶されており、
前記処理装置が、
前記車両から前記入力変数のデータを受信し、前記故障予測モデルに入力することで発生が予測される故障の種類を出力することと、
発生が予測される故障の種類を出力したときの前記入力変数のデータにおける前記運転操作の時系列データを前記シミュレーションモデルに入力して、前記車両の制御パラメータの値を変更した場合の車両各部の挙動の時系列データを模擬した模擬データを算出することによって、取得した前記入力変数のデータにおける前記運転操作の時系列データと前記模擬データとからなる試行用入力変数を生成し、生成した前記試行用入力変数を前記故障予測モデルに入力して故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値を探索することと、
探索によって得られた故障の発生が予測されなくなる値への制御パラメータの変更を前記車両のユーザーに提示することと、を実行する
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は情報処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、故障予測装置が開示されている。この故障予測装置は、監視対象の機器が故障するまでの時系列のセンサデータを教師データとして故障予測のための学習モデルを生成する。故障予測装置は、生成した学習モデルを用い、監視対象機器から受信した時系列のセンサデータを入力として監視対象機器が故障する確率を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした教師有り学習によって学習した故障予測モデルを搭載した故障予測装置を車両に適用して、車両の部品の故障が予測された場合、車両のユーザーは故障の発生を回避するために当該部品を交換せざるを得ない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するための情報処理装置は、処理装置と記憶装置とを備える。情報処理装置において、運転操作及び車両各部の挙動の時系列データからなる入力変数を入力すると発生が予測される故障の種類を出力するように教師有り学習によって学習した故障予測モデルが前記記憶装置に記憶されている。また、情報処理装置において、運転操作の時系列データを入力すると車両各部の挙動の時系列データを出力するシミュレーションモデルが前記記憶装置に記憶されている。この情報処理装置では、前記処理装置が、前記故障予測モデルと同一の故障予測モデルを用いて車両の故障を予測する故障予測装置から、前記故障予測装置が予測される故障の種類を出力したときの前記入力変数のデータを取得する。この情報処理装置では、前記処理装置が、取得した前記入力変数のデータにおける前記運転操作の時系列データを前記シミュレーションモデルに入力して、前記車両の制御パラメータの値を変更した場合の車両各部の挙動の時系列データを模擬した模擬データを算出することによって、取得した前記入力変数のデータにおける前記運転操作の時系列データと前記模擬データとからなる試行用入力変数を生成し、生成した前記試行用入力変数を前記故障予測モデルに入力して故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値を探索する。この情報処理装置では、前記処理装置が、探索によって得られた故障の発生が予測されなくなる値への制御パラメータの変更を前記車両のユーザーに提示する。
【0006】
上記課題を解決するための第2の情報処理装置は、車両と通信ネットワークを通じて接続されている。この情報処理装置は処理装置と記憶装置とを備える。この情報処理装置において、運転操作及び車両各部の挙動の時系列データからなる入力変数を入力すると発生が予測される故障の種類を出力するように教師有り学習によって学習した故障予測モデルが前記記憶装置に記憶されている。また、この情報処理装置において、運転操作の時系列データを入力すると車両各部の挙動の時系列データを出力するシミュレーションモデルが前記記憶装置に記憶されている。この情報処理装置では、前記処理装置が、前記車両から前記入力変数のデータを受信し、前記故障予測モデルに入力することで発生が予測される故障の種類を出力する。この情報処理装置では、前記処理装置が、発生が予測される故障の種類を出力したときの前記入力変数のデータにおける前記運転操作の時系列データを前記シミュレーションモデルに入力して、前記車両の制御パラメータの値を変更した場合の車両各部の挙動の時系列データを模擬した模擬データを算出することによって、取得した前記入力変数のデータにおける前記運転操作の時系列データと前記模擬データとからなる試行用入力変数を生成し、生成した前記試行用入力変数を前記故障予測モデルに入力して故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値を探索する。この情報処理装置では、前記処理装置が、探索によって得られた故障の発生が予測されなくなる値への制御パラメータの変更を前記車両のユーザーに提示する。
【発明の効果】
【0007】
これらの情報処理装置により、ユーザーは、部品交換以外の方法によっても車両の故障を回避できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の情報処理装置を含む、故障回避システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態の故障回避システムにおける車両制御装置と、故障予測装置と、情報処理装置とによる処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図3】
図3は、実施形態の故障回避システムにおける情報処理装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態の故障回避システムにおける故障予測装置が実行する車両の故障の予測に関する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態の故障回避システムにおける故障予測装置が実行する制御パラメータの提示に関する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、変更例の情報処理装置を含む、故障回避システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、情報処理装置の一実施形態について、
図1~
図5を参照して説明する。
<故障回避システム10の構成>
図1に示すように、故障回避システム10は、情報処理装置200と、車両400とによって構成されている。情報処理装置200は、通信ネットワーク300を介して、車両400と通信可能に接続されている。
【0010】
車両400は、故障予測装置100と、車両制御装置410と、表示装置420と、を備えている。
故障予測装置100は、プログラムと故障予測モデル140が記憶されている記憶装置120と、記憶装置120に記憶されているプログラムを実行して各種の処理を実行する処理装置110とを備えている。なお、処理装置110は、プロセッサを含んでいる。
【0011】
故障予測モデル140は、運転操作及び車両各部の挙動の時系列データからなる入力変数を入力すると発生が予測される故障の種類を出力するように教師有り学習によって学習したモデルである。運動操作の時系列データとは、例えば、アクセル開度、ブレーキ操作量、ステアリング操作量などといった、車両400に対してユーザーが加えた操作量を示すデータである。車両各部の挙動の時系列データとは、例えば、エンジンの回転数、車速、エンジン冷却水温、過給圧、吸入空気量などといった、車両400の各部の状態を示すデータである。
【0012】
故障予測装置100は、通信装置130を備えている。通信装置130は、ネットワークアダプタなどのハードウェア、各種の通信用ソフトウェア、又はこれらの組合せとして実装されている。そして、通信装置130は、通信ネットワーク300を介した情報処理装置200との無線の通信を実現できるように構成されている。また、故障予測装置100は、車両制御装置410及び表示装置420と情報をやり取りできるように接続されている。
【0013】
車両制御装置410は、車両400の各部を制御する。車両制御装置410には、車両400の状態を検出する各種のセンサが接続されている。車両制御装置410は、車両400における前述した入力変数のデータを各種のセンサから取得することができる。
【0014】
表示装置420は、ユーザーが情報を打ち込むインプット装置と、ユーザーに対して情報を表示する表示装置と、を備えて構成されている。表示装置420は、故障予測装置100から受信した情報を車両400のユーザーに表示する。表示装置420は、例えば、車両400に搭載されているカーナビゲーション装置である。表示装置420は、例えば、表示部として故障予測装置100の一部を構成するものであってもよい。
【0015】
情報処理装置200は、処理装置210と、記憶装置220と、通信装置230と、を備えている。情報処理装置200は、複数のコンピュータを用いて構成され得る。例えば、情報処理装置200は、複数のサーバ装置によって構成され得る。
【0016】
記憶装置220は、プログラムと、故障予測モデル140と、シミュレーションモデル240と、を記憶している。記憶装置220に記憶されている故障予測モデル140は、故障予測装置100と同一のモデルである。シミュレーションモデル240は、運転操作の時系列データを入力すると車両各部の挙動の時系列データを出力する。
【0017】
処理装置210は、記憶装置220に記憶されているプログラムを実行して各種の処理を実行する。なお、処理装置110は、プロセッサを含んでいる。通信装置230は、ネットワークアダプタなどのハードウェア、各種の通信用ソフトウェア、又はこれらの組合せとして実装されている。そして、通信装置230は、通信ネットワーク300を介した故障予測装置100との無線の通信を実現できるように構成されている。
【0018】
<故障回避システム10におけるデータの送受信>
次に、故障予測装置100と、情報処理装置200と、車両制御装置410と、のデータの送受信について
図2を参照して説明する。
【0019】
図2の上部に示すように、車両制御装置410は、故障予測装置100に対して車両400の各種センサから取得した入力変数のデータを故障予測装置100に送信する。このようなデータの受け渡しは、故障予測装置100が車両400について定期的に故障予測を行うために設定された一定期間ごとのタイミングで行われる。
【0020】
入力変数のデータを受信した故障予測装置100は、受信した入力変数を故障予測モデル140に入力し、車両400について発生が予測される故障の種類を出力する。故障予測装置100は、いずれの種類の故障の発生確率も低い場合には、故障の種類を出力しない。すなわち、この場合には、故障予測装置100によって故障の発生が予測されない。
【0021】
図2の上部に示すように、故障予測装置100は、いずれかの故障の発生を予測した場合に、発生が予測された故障の種類の情報と故障の種類を出力したときの入力変数のデータを情報処理装置200に送信する。
【0022】
そして、情報処理装置200は、故障予測モデル140を用いて車両400における故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値を探索する。
図2の下部に示すように、情報処理装置200は、故障を回避できる制御パラメータの値を探索によって獲得できた場合、当該制御パラメータの値を故障予測装置100に送信する。
【0023】
その後、故障予測装置100は、車両400の制御パラメータについて情報処理装置200から受信した値への変更を車両400のユーザーに提示する。
図2の下部に示すように、ユーザーが提示された値への変更を許諾した場合、故障予測装置100は、当該制御パラメータの値を車両制御装置410に送信する。車両制御装置410は受信した値に基づいて、車両400の制御パラメータを変更する。このようにして、故障回避システム10は、故障の発生が予測されなくなるように車両400の制御パラメータの変更を提案する。
【0024】
以下、
図3~
図5を参照して、上記のような制御パラメータの変更の提案を実現するために、情報処理装置200において実行される処理の流れと、故障予測装置100において実行される処理の流れと、をより具体的に説明する。
【0025】
<情報処理装置200が実行する処理>
図3は、情報処理装置200において実行する一連の処理の流れを示している。この一連の処理は、情報処理装置200の処理装置210によって実行される。この一連の処理は、
図2の上部に示したよう故障予測装置100から故障の種類の情報及び入力変数のデータを受信したときに、情報処理装置200が実行する処理に相当する。
【0026】
図3に示すように、この一連の処理を開始すると、処理装置210は、まずステップS100の処理において抽出処理を行う。抽出処理は、故障予測装置100から受信した故障の種類の情報に基づいて、後述する探索処理の際に変更する車両400における制御パラメータの種類を絞り込む処理である。
【0027】
記憶装置220には、故障予測装置100により予測される故障の種類に対応させて探索処理の際に変更する制御パラメータの種類をまとめたデータベースが記憶されている。抽出処理において、処理装置210は、故障の種類の情報に基づいて探索処理の際に変更する制御パラメータの種類をデータベースから抽出する。これにより、処理装置210は、探索処理の際に変更する制御パラメータの種類を絞り込む。変更する制御パラメータの種類に応じて探索処理の際に探索する範囲は予め決められている。抽出処理を終えると、処理は次のステップS110へと進む。
【0028】
ステップS110の処理において、処理装置210は、探索処理を開始する。探索処理は、故障予測モデル140において車両400における発生が予測される故障の種類が出力されなくなる制御パラメータの値を探索する処理である。以降、ステップS120~ステップS160までの一連の処理はすべて探索処理の過程として行われるものである。探索処理において、処理装置210は、ステップS120~ステップS160の処理を繰り返し、ステップS170の条件を達成した場合に探索処理を終了させる。
【0029】
ステップS120の処理において、処理装置210は、次のステップS130のシミュレーション処理で変更する制御パラメータの種類及び変更後の値を1つ決定する。変更する制御パラメータの種類は、抽出処理で絞り込んだ種類の中から決定される。決定した制御パラメータの変更後の値は、予め決められた範囲の中から決定される。
【0030】
ステップS130において、処理装置210は、シミュレーション処理を行う。シミュレーション処理とは、試行用入力変数を生成する処理である。試行用入力変数とは、ステップS140の故障予測処理で故障予測モデル140に入力するための入力変数である。
【0031】
シミュレーション処理において、処理装置210は、故障予測装置100から受信した入力変数のうちの運転操作の時系列データをシミュレーションモデル240に入力する。そして、処理装置210は、ステップS120で決定した制御パラメータの変更を実行した場合の車両400における各部の挙動の時系列データである模擬データを、シミュレーションモデル240を用いて算出する。その後、処理装置210は、シミュレーションモデル240に入力した運転操作の時系列データと、シミュレーションモデル240が算出した模擬データと、を組み合わせて試行用入力変数を生成する。
【0032】
ステップS140の処理において、処理装置210は、故障予測処理を行う。故障予測処理において、処理装置210は、試行用入力変数を故障予測モデル140に入力する。
ステップS150の処理において、処理装置210は、ステップS140の故障予測処理の結果、車両400における故障の発生が予測されたかどうかを判定する。具体的には、処理装置210は、ステップS140の処理において試行用入力変数を故障予測モデル140に入力した結果、車両400について発生が予測される故障の種類が出力されるかどうかを判定する。処理装置210は、故障予測モデル140が、発生が予測される故障の種類を出力した場合、故障が予測されたと判定する。一方、処理装置210は、故障予測モデル140が、発生が予測される故障の種類を出力しなかった場合、故障が予測されなかったと判定する。
【0033】
ステップS150の処理において、故障が予測されなかったと処理装置210が判定した場合(ステップS150:NO)、処理はステップS160に進む。
次のステップS160の処理において、処理装置210は、ステップS120で決定した制御パラメータの値及びステップS130のシミュレーション処理で出力した試行用入力変数のデータを記憶装置220に記憶する。ステップS160の処理を行うことによって、情報処理装置200は、車両400について故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値を把握することができる。ステップS160の処理が終了すると、処理装置210は、処理をステップS170に移さずにステップS120に戻す。
【0034】
ステップS150の処理において、故障が予測されたと処理装置210が判定した場合(ステップS150:YES)、処理装置210は、ステップS160の処理を行わない。このとき、処理装置210は、処理をステップS120に戻す。このように、ステップS120~ステップS160の一連の処理は、ステップS150において故障が予測されたかどうかにかかわらず繰り返される。
【0035】
ステップS100で絞り込んだ制御パラメータのすべてについて、探索する範囲全体に対してステップS120~ステップS160の処理を行った場合、処理は次のステップS170に移行する。つまり、ステップS120~ステップS160の処理は、抽出処理で絞り込んだ制御パラメータのすべてについて、探索する範囲全体の探索が完了するまで繰り返される。ステップS170に移行すると、探索処理が終了する。
【0036】
次のステップS180の処理において、処理装置210は、制御パラメータ選択処理を行う。制御パラメータ選択処理とは、記憶装置220がステップS160で記憶した車両400について故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値が複数あった場合に、その中からユーザーに提示する値を選択する処理である。
【0037】
処理装置210は、ステップS160の処理で記憶装置220が制御パラメータの値と一緒に記憶した試行用入力変数に基づいて記憶した複数の制御パラメータの値の中から1つの値を選択する。処理装置210は、試行用入力変数のうちステップS130のシミュレーション処理で算出した模擬データをもとに、車両400において制御パラメータの値を変更した場合の運動性能への影響を評価する。車両400における運動性能とは、例えば、車両400における加速、制動、旋回など、車両400の走行に関わる性能のことである。処理装置210は、複数の制御パラメータの値の中から車両400の走行性能への悪影響がもっとも少ないと評価された制御パラメータの値をユーザーに提示する値として選択する。探索処理においてステップS160で記憶した故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値が1つしかない場合はその値をユーザーに提示する値として選択する。
【0038】
ステップS190の処理において、処理装置210は、ユーザーに提示するのに適切な制御パラメータの値の有無を判定する。ステップS190の処理において、処理装置210は、ステップS180を通じてユーザーに提示する制御パラメータの値が選択されていた場合には適切な制御パラメータの値があると判定する。一方、ステップS110~ステップS170までの探索処理を通じて車両400について故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値を得ることができないこともある。この場合、ステップS190の処理において、処理装置210は、適切な制御パラメータの値がないと判定する。
【0039】
ステップS190の処理において、処理装置210が適切な制御パラメータの値があると判定した場合(ステップS190:YES)には、処理はステップS200に進む。ステップS200の処理において、処理装置210は、ステップS180で選択した制御パラメータの値を示すデータを故障予測装置100に送信する。制御パラメータの値を示すデータを送信した場合、処理装置210はこの一連の処理を終了させる。
【0040】
ステップS190の処理において、処理装置210が適切な制御パラメータの値が無いと判定した場合(ステップS190:NO)には、処理はステップS210に進む。ステップS210の処理において、処理装置210は、適切な制御パラメータの値がないことを示す信号を故障予測装置100に送信する。信号を送信した場合、処理装置210はこの一連の処理を終了させる。
【0041】
<情報処理装置200が実行する処理の一例>
以下では、
図3で説明した情報処理装置200が実行する処理について、具体的な例を提示する。今回提示する例では、ユーザーがサーキット走行を楽しむために、車両制御装置410に設定された過給圧の制御パラメータを書き換えて過給圧を高めている。ここでは、そのような状況下で、故障予測装置100が、ターボチャージャのタービン翼の破損を出力した場合を想定した事例を示す。このとき、
図2の上部に示す通り、情報処理装置200の処理装置210は、故障予測装置100からターボチャージャのタービン翼の破損を示す情報と当該破損を出力した際に故障予測モデル140に入力した入力変数のデータを受信する。
【0042】
データを受信した処理装置210は、ステップS100の抽出処理を行う。処理装置210は、記憶装置220に記憶されたデータベースから、ターボチャージャのタービン翼の破損に対応して探索処理の際に変更する制御パラメータの種類を抽出する。このような制御パラメータの種類として、例えば、過給圧を下げることによりターボチャージャのタービン翼に係る負担が減ることから、過給圧についての制御パラメータが挙げられる。また、このような制御パラメータの種類として、例えば、スロットル開度を小さくすることにより、ターボチャージャのタービン翼に係る負担が減ることから、スロットル開度についての制御パラメータが挙げられる。また、このような制御パラメータの種類として、例えば、燃料噴射量を増やすことで、燃焼室内の温度が下がり、ターボチャージャのタービン翼への負担を減らせることから、燃料噴射量についての制御パラメータが挙げられる。
【0043】
処理装置210は、ステップS100の抽出処理が終了した後、過給圧、燃料噴射量、スロットル開度に関する制御パラメータについてそれぞれ予め決められた範囲内でステップS110~ステップS170の探索処理を行う。
【0044】
探索処理において、過給圧、燃料噴射量、スロットル開度についての制御パラメータにおいて、故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値がそれぞれ得られた場合、処理装置210は、ステップS180の制御パラメータ選択処理を行う。処理装置210は、得られたそれぞれの制御パラメータにおける車両400への運動性能への影響を評価する。そして、例えば、燃料噴射量を増やす制御パラメータの変更が運動性能への悪影響が最も少ない場合には、ユーザーに提示する制御パラメータの値としては燃料噴射量を減ら値が選択される。選択処理を実行した処理装置210は、ステップS200において選択した制御パラメータの値を示すデータを故障予測装置100に送信する。
【0045】
このようにして、情報処理装置200は、タービン翼の破損を回避できるような制御パラメータの値を探索し、ユーザーに提示する。
<故障予測装置100が車両400の故障を予測するときの処理>
図4は、故障予測装置100が車両400の故障を予測するときに実行される一連の処理の流れを示している。この一連の処理は、故障予測装置100の処理装置110によって実行される。この一連の処理は、
図2の上部に示したように、故障予測装置100が車両制御装置410から入力変数のデータを受信したときに、故障予測装置100の処理装置110が実行する処理に相当する。
【0046】
図4に示すように、この一連の処理を開始すると、処理装置110は、まずステップS300の処理において、故障予測処理を行う。故障予測処理において、処理装置110は、車両制御装置410から受信した入力変数のデータを入力として、記憶装置120に記憶されている故障予測モデル140を用いて発生が予測される故障の種類を出力する。
【0047】
ステップS310の処理において、処理装置110は、ステップS300の処理の結果、車両400における故障の発生が予測されたかどうかを判定する。具体的には、処理装置110は、ステップS300の処理において車両制御装置410から受信した入力変数を故障予測モデル140に入力する。処理装置110は、その結果、車両400について発生が予測される故障の種類が出力されたかどうかを判定する。処理装置110は、故障予測モデル140が、発生が予測される故障の種類を出力した場合、車両400における故障の発生が予測されたと判定する。一方、処理装置110は、故障予測モデル140が、発生が予測される故障の種類を出力しなかった場合、車両400における故障の発生が予測されなかったと判定する。
【0048】
ステップS310の処理において、車両400における故障の発生が予測されたと処理装置110が判定した場合(ステップS310:YES)、処理はステップS320に進む。ステップS320において、処理装置110は、ステップS300で出力された予測される故障の種類の情報と当該故障の種類を出力したときの入力変数のデータを情報処理装置200に送信する。ステップS320の処理を終えた処理装置110は、この一連の処理を終了させる。
【0049】
ステップS310の処理において、車両400における故障の発生が予測されなかったと処理装置110が判定した場合(ステップS310:NO)、処理装置110は、この一連の処理を終了させる。つまり、処理装置110は、ステップS320の処理を行うことなくこの一連の処理を終了させる。
【0050】
<情報処理装置200から情報を受信した故障予測装置100が実行する処理>
図5は、故障予測装置100が情報処理装置200から情報を受信したときに実行される一連の処理の流れを示している。この一連の処理は、故障予測装置100の処理装置110によって実行される。この一連の処理は、
図2の下部に示したように、故障予測装置100が情報処理装置200から情報を受信したときに実行される処理に相当する。
【0051】
図5に示すように、この一連の処理を開始すると、処理装置110は、まずステップS400において、情報処理装置200から適切な制御パラメータの値が無いことを示す情報を受信したかどうかを判定する。ステップS400の処理において、処理装置110が、信号を受信していないと判定した場合(ステップS400:NO)には、処理はステップS410へと進む。
【0052】
ステップS410の処理において、処理装置110は、情報処理装置200から制御パラメータの値を示すデータを受信したかどうかを判定する。ステップS410の処理において、処理装置110は、制御パラメータの値を示すデータを受信していないと判定した場合(ステップS410:NO)には、ステップS410の処理が繰り返される。
【0053】
ステップS410の処理において、処理装置110が、制御パラメータの値を示すデータを受信したと判定した場合(ステップS410:YES)には、処理はステップS420へと進む。ステップS420の処理において、処理装置110は、ユーザーに対して、情報処理装置200から受信した制御パラメータへの変更を提示する。例えば、処理装置110は、変更すべき制御パラメータの種類と、変更後の値、値の変更に伴う車両400への影響を示す文字情報を表示装置420に表示する。
【0054】
次のステップS430の処理において、処理装置110は、ステップS420で提示した制御パラメータについてユーザーが変更を許諾したかどうかを判定する。つまり、処理装置110は、情報処理装置200から受信した制御パラメータの値への変更を提示した後、提示した制御パラメータへの変更を希望するか否かを問い合わせる。
【0055】
例えば、処理装置110は、表示装置420上にメッセージを表示して制御パラメータの値の変更を許諾するか否かの回答を求める。この問合せに対して、ユーザーが変更を許諾する意志を示す操作を行った場合には、処理装置110は、ユーザーが値の変更を許諾したと判定する。一方で、ユーザーが変更を許諾しない意志を示す操作を行った場合には、処理装置110は、ユーザーが値の変更を許諾しなかったと判定する。
【0056】
ステップS430の処理において、ユーザーが提示された制御パラメータの値への変更を許諾したと処理装置110が判定した場合(ステップS430:YES)には、処理はステップS440へと進む。ステップS440の処理において、処理装置110は、提示した制御パラメータの値のデータを車両制御装置410に送信する。データを送信した処理装置110は、この一連の処理を終了させる。また、ステップS440の処理により送信されたデータを受信した車両制御装置410は、制御パラメータの値を受信した値に変更する。
【0057】
一方、ステップS400の処理において、処理装置110が情報処理装置200から適切な制御パラメータの値が無いことを示す信号を受信したと判定した場合(ステップS400:YES)には、処理はステップS450に進む。また、ステップS430において、処理装置110が、ユーザーが制御パラメータの値の変更を許諾しなかったと判定した場合(ステップS430:NO)についても、処理はステップS450に進む。ステップS450の処理において、処理装置110は、予測される故障の種類に従い、ユーザーに対して故障が予測される部品の交換を提案する。処理装置110は、例えば、表示装置420上に文字情報を表示することで、故障が予測される部品の交換を提案する。
【0058】
<本実施形態の作用>
故障回避システム10における情報処理装置200は、故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値を探索し、発見した値への制御パラメータの変更をユーザーに提示する。すなわち、情報処理装置200は、故障の発生を回避する対応策として制御パラメータの値の変更を提示する。
【0059】
<本実施形態の効果>
(1)故障回避システム10により、ユーザーは、部品交換以外の方法によっても車両400の故障を回避できるようになる。
【0060】
(2)探索により、故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値が複数得られた場合、情報処理装置200の処理装置210は、得られた複数の値のうち、車両400の運動性能への悪影響がもっとも少ない値を選択する。その後、処理装置210は、選択した値への制御パラメータの変更をユーザーに提示する。そのため、情報処理装置200は、発見した複数の値のうち、車両400の運動性能への悪影響がもっとも少ないものをユーザーに提示する。これにより、情報処理装置200は、制御パラメータの値の変更による運動性能の低下を抑えることができる。
【0061】
(3)情報処理装置200の記憶装置220には、故障予測装置100により予測される故障の種類に対応させて探索時に変更する制御パラメータの種類をまとめたデータベースが記憶されている。処理装置210は、故障予測装置100が予測した故障の種類の情報を取得する。そして、探索時に変更する制御パラメータの種類を、予測された故障の種類の情報に基づいてデータベースから抽出することで、探索時に変更する制御パラメータの種類を絞り込む。そのため、情報処理装置200は、故障予測装置100により予測される故障の種類の情報に基づいて、探索時に変更する制御パラメータの種類を絞り込む。これにより、情報処理装置200は、故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値を素早く発見することができる。
【0062】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0063】
・変更例の情報処理装置を含む故障回避システム10の構成について、
図6を参照して説明する。
<変更例の情報処理装置を含む故障回避システム10の構成>
図6は、情報処理装置200について、
図1~
図5を参照して説明した形態とは異なる形態を採用した場合の故障回避システム10全体の構成を示している。
【0064】
図6に示す情報処理装置200を採用した故障回避システム10は、
図1を参照して説明した故障回避システム10と異なり、車両400が故障予測装置100を搭載していない。その代わりに、情報処理装置200は、故障予測部500を備えている。故障予測部500は、プログラムと故障予測モデル140が記憶されている記憶装置520と、記憶装置520に記憶されているプログラムを実行して各種の処理を実行する処理装置510とを備えている。なお、処理装置510は、プロセッサを含んでいる。
【0065】
図6に示す情報処理装置200を採用した故障回避システム10では、情報処理装置200の故障予測部500が車両400から入力変数のデータを取得し、車両400において発生が予測される故障の種類を出力する。このように、
図6に示す情報処理装置200を採用した故障回避システム10では、
図1を参照して説明した故障回避システム10において故障予測装置100が担っていた役割を情報処理装置200の故障予測部500が担っている。
【0066】
こうした情報処理装置200によっても
図1を参照して説明した構成の情報処理装置200と同様の効果を得ることができる。
・上記の実施形態では、処理装置110が車両400に設けられている表示装置420に、変更すべき制御パラメータの種類と、変更後の値、値の変更に伴う車両400への影響を示す文字情報を表示する例を示した。処理装置110が、表示装置420上にメッセージを表示して制御パラメータの値の変更を許諾するか否かの回答を求める例を示した。こうした表示を行う表示装置は、車両400に設けられている表示装置420でなくてもよい。例えば、ユーザーが所有しているスマートフォンなどのデバイスを表示装置として利用することもできる。
【0067】
・情報処理装置200が、抽出処理を実行して探索時に変更する制御パラメータの種類を絞り込む例を示した。情報処理装置200は、必ずしも抽出処理を実行しなくてもよい。例えば、変更できる制御パラメータの種類がもともと限られている場合もある。そのような場合、抽出処理を実行して探索時に変更する制御パラメータの種類を絞り込む必要がない。
【0068】
・上記の故障回避システム10において、故障予測装置100は車両制御装置410から入力変数のデータを取得している。これに対し、故障予測装置100は、車両400における各部のセンサから直接入力変数のデータを取得してもよい。
【0069】
・
図1及び
図6の構成を採用した故障回避システム10における情報処理装置200は、複数のサーバ装置として車両400の外に設置されている。これに対し、情報処理装置200は、車両400に搭載されて車両400の一部を構成するという形態を採用してもよい。
【0070】
・上記の故障回避システム10において、故障予測装置100は、情報処理装置200が
図3のステップS180の制御パラメータ選択処理において選択した1つの制御パラメータの値のみを
図5のステップS420において提示した。これに対し、故障予測装置100は、提示する制御パラメータの値として複数の値を提示し、変更を適用する制御パラメータの値をユーザーに選択させてもよい。
【0071】
・上記の故障回避システム10では、故障予測装置100が、ユーザーに対して制御パラメータの値の変更を許諾するかを問い合わせ、ユーザーが許諾した場合に車両400における制御パラメータの値を変更した。これに対し、故障予測装置100は、ユーザーの許諾を必要とせずに制御パラメータの値を変更してもよい。すなわち、この場合には、処理装置210は、故障の発生が予測されなくなる制御パラメータの値を送信して提示し、提示した値への制御パラメータの変更を車両400に実行させる。これにより、情報処理装置200は、車両400の故障を防止することができる。
【符号の説明】
【0072】
10…故障回避システム、100…故障予測装置、110…処理装置、120…記憶装置、130…通信装置、140…故障予測モデル、200…情報処理装置、210…処理装置、220…記憶装置、230…通信装置、240…シミュレーションモデル、300…通信ネットワーク、400…車両、410…車両制御装置、420…表示装置、500…故障予測部、510…処理装置、520…記憶装置