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  • 特開-精錬用ランスおよび溶鋼の精錬方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008506
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】精錬用ランスおよび溶鋼の精錬方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/072 20060101AFI20250109BHJP
   C21C 7/10 20060101ALI20250109BHJP
   C21C 7/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C21C7/072 A
C21C7/072 S
C21C7/10 F
C21C7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110733
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】久志本 惇史
(72)【発明者】
【氏名】田村 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】石橋 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】藤田 晃司
【テーマコード(参考)】
4K013
【Fターム(参考)】
4K013BA05
4K013CA02
4K013CA16
4K013CB04
4K013CB09
4K013CE01
4K013CE07
4K013EA03
4K013EA05
(57)【要約】
【課題】単純な構造で粉体に対する摩耗を抑制し、かつ精錬効率の優れた上吹きランス、およびそれを用いた溶鋼の精錬方法を提供する。
【解決手段】精錬用粉体を上吹きするための精錬用ランスであって、円筒形のスロート部と前記スロート部の上部側に位置する円錐形の径縮小部と前記スロート部の下部側に位置する円錐形の径拡大部とを備え、前記スロート部の直径Dt(m)と前記スロート部の長さlt(m)とがlt/Dt≧5.0の関係を満たし、かつ前記スロート部の直径Dt(m)と前記径縮小部の上部の管内径Din(m)と前記径縮小部のテーパー高さH(m)との関係が0.100≧H/(Din/Dt)≧0.040を満たす。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精錬用粉体を上吹きするための精錬用ランスであって、
円筒形のスロート部と前記スロート部の上部側に位置する円錐形の径縮小部と前記スロート部の下部側に位置する円錐形の径拡大部とを備え、
前記スロート部の直径Dt(m)と前記スロート部の長さlt(m)とが(1)式の関係を満たし、かつ前記スロート部の直径Dt(m)と前記径縮小部の上部の管内径Din(m)と前記径縮小部のテーパー高さH(m)との関係が(2)式を満たすことを特徴とする精錬用ランス。
t/Dt≧5.0 ・・・(1)
0.100≧H/(Din/Dt)≧0.040 ・・・(2)
【請求項2】
雰囲気圧力が13.33kPa未満の減圧下にてキャリアガスとともに溶鋼表面に精錬用粉体を吹付ける処理において、前記精錬用粉体を吹付ける上吹きランスの形状として、円筒形のスロート部と前記スロート部の上部側に位置する円錐形の径縮小部と前記スロート部の下部側に位置する円錐形の径拡大部とを備え、前記スロート部の直径Dt(m)と前記スロート部の長さlt(m)とが(1)式の関係を満たし、かつ前記スロート部の直径Dt(m)と前記径縮小部の上部の管内径Din(m)と前記径縮小部のテーパー高さH(m)との関係が(2)式を満たす上吹きランスを用い、かつ前記キャリアガスの供給条件が(3)式~(4)式の条件を満たすことを特徴とする、溶鋼の精錬方法。
t/Dt≧5.0 ・・・(1)
0.100≧H/(Din/Dt)≧0.040 ・・・(2)
ΔP0≧72×(lt/Dt-0.27 ・・・(3)
ΔP0=0.0118・Q/Dt 2 ・・・(4)
ここで、ΔP0:ノズル圧損(kPa)、Q:キャリアガス流量(Nm3/min)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精錬用粉体による摩耗を抑えるために用いて好適な精錬用ランスおよびそれを用いた溶鋼の精錬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄鋼製品に求められる性能レベルがますます高まっており、S,C等の溶鋼中不純物の徹底除去が求められている。例えばSに関して、10ppm以下の極低硫鋼を溶製するために、RH等の環流型真空脱ガス装置にて、溶鋼表面にキャリアガスとともにCaOを含有する脱硫剤粉体を吹き付けて脱硫処理を施す手法がとられる場合がある。また、Cに関して、溶鋼表面にFe23粉体を吹き付け、CによるFe23の還元を生じさせて脱炭反応を促進させる技術が知られている。
【0003】
このような脱硫剤粉体やFe23粉体などの精錬用粉体は、上吹きランスからキャリアガスとともにランス先端部のノズルから溶鋼表面に向けて噴射される。そこで、精錬効率を上げるために、径縮小部(およびスロート部)と径拡大部とを設けるなど、従来、上吹きランスの内部の配管の形状などにおいて様々な工夫がされている。
【0004】
一方で、精錬用粉体を吹付ける場合には、上吹きランスの内部で精錬用粉体と内壁との衝突により配管内部が摩耗し、ノズルの寿命が低下する。そこで、精錬用粉体の吹付けによる摩耗を抑えるために様々な技術が提案されている。特許文献1~4には、それぞれ精錬用粉体による摩耗を抑制するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-171248号公報
【特許文献2】特開2003-213318号公報
【特許文献3】特開平11-335722号公報
【特許文献4】特開2022-13818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、精錬効率や摩耗抑制を目的として上吹きランスの内部形状を複雑化したり材質を変更したりすると、その上吹きランスの加工コストが多くかかってしまう。特許文献1に記載のランスは、ガスと粉体とをそれぞれ別の配管から供給されるものであることから、ガス系統が煩雑化するだけでなくランスの作製および施工が困難である。特許文献2に記載の精錬用ランスは、内径が小さいスロート壁に硬質クロムめっきが施されたものであるが、このような径の小さい内壁に電気めっきを施すのは非常に困難であり、加工コストが大きくなってしまう。特許文献3に記載の精錬用ランスは、高Mn鋼等の耐摩耗部材をスロート部にのみ個別に施工されたものであるため、製造コストが大きくなってしまう。さらに特許文献4に記載の上吹きランスは、複数のノズルを有する形状であることから形状が複雑であり施工が困難であるため、製造コストが大きくなってしまう。
【0007】
本発明は前述の問題点を鑑み、単純な構造で粉体に対する摩耗を抑制し、かつ精錬効率の優れた上吹きランス、およびそれを用いた溶鋼の精錬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
RH等の真空脱ガス装置にて、粉体の精錬反応効率を向上させるためには、上吹きにより粉体を加速させ、溶鋼内部に粉体を侵入させることが有効である。まず、粉体の加速を実現する手法として、図1に示すように、上吹きランスにラバールノズルのスロート部を延長させたロングスロートランスを採用することが有効である。
【0009】
一方、本発明者らは、粉体を上吹きする場合に上吹きランス内部の配管でどのように摩耗するかを検証したところ、図2(a)に示すように、スロート上部の径縮小部のテーパー部で粉体が散乱し、スロート壁への衝突によりノズルの摩耗が進行することが判明した。特に硬質な粉体の吹付けを行う場合には摩耗が著しく進行し、摩耗部がノズル内の冷却水配管まで到達してしまうと水漏れ等のトラブルが発生するため、ノズルの寿命が短くなり、ノズル交換による操業負荷が増大してしまう。そこで、本発明者らは粉体により摩耗しにくい内部構造を検討したところ、径縮小部のテーパー高さHを増加させ、内管の径Din、Dtに応じて適切な範囲に設定することで、ノズル内での粉体軌道が整流化され、スロート壁の摩耗進行を抑制できることを見出した。
【0010】
本発明は以下のとおりである。
[1]
精錬用粉体を上吹きするための精錬用ランスであって、
円筒形のスロート部と前記スロート部の上部側に位置する円錐形の径縮小部と前記スロート部の下部側に位置する円錐形の径拡大部とを備え、
前記スロート部の直径Dt(m)と前記スロート部の長さlt(m)とが(1)式の関係を満たし、かつ前記スロート部の直径Dt(m)と前記径縮小部の上部の管内径Din(m)と前記径縮小部のテーパー高さH(m)との関係が(2)式を満たすことを特徴とする精錬用ランス。
t/Dt≧5.0 ・・・(1)
0.100≧H/(Din/Dt)≧0.040 ・・・(2)
[2]
雰囲気圧力が13.33kPa未満の減圧下にてキャリアガスとともに溶鋼表面に精錬用粉体を吹付ける処理において、前記精錬用粉体を吹付ける上吹きランスの形状として、円筒形のスロート部と前記スロート部の上部側に位置する円錐形の径縮小部と前記スロート部の下部側に位置する円錐形の径拡大部とを備え、前記スロート部の直径Dt(m)と前記スロート部の長さlt(m)とが(1)式の関係を満たし、かつ前記スロート部の直径Dt(m)と前記径縮小部の上部の管内径Din(m)と前記径縮小部のテーパー高さH(m)との関係が(2)式を満たす上吹きランスを用い、かつ前記キャリアガスの供給条件が(3)式~(4)式の条件を満たすことを特徴とする、溶鋼の精錬方法。
t/Dt≧5.0 ・・・(1)
0.100≧H/(Din/Dt)≧0.040 ・・・(2)
ΔP0≧72×(lt/Dt-0.27 ・・・(3)
ΔP0=0.0118・Q/Dt 2 ・・・(4)
ここで、ΔP0:ノズル圧損(kPa)、Q:キャリアガス流量(Nm3/min)である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単純な構造で粉体に対する摩耗を抑制し、かつ精錬効率の優れた精錬を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ラバールノズルのスロート部を延長させたロングスロートランスの内部構造を説明するための図である。
図2】ノズル内での粉体摩耗機構および摩耗抑制の考え方を説明するための図である。
図3】指標H/(Din/Dt)と、スロート部の内壁への粉体の衝突エネルギーおよび粉体速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、ラバールノズルのスロート部を延長させたロングスロートランスの内部構造を説明するための図である。図1に示す構造のロングスロートランスは、キャリアガスとともに粉体を吹付ける上吹きランスとして用いられ、精錬用ランスとして主にRH等の真空脱ガス装置などの精錬容器の内部に設置される。図1に示すように、本実施形態に係る上吹きランスは、上部側に位置する円錐形の径縮小部と、円筒形のスロート部と、前記スロート部の下部側に位置する円錐形の径拡大部とを備えた構造となっている。以下、本実施形態に係る上吹きランスの詳細な形状について説明する。
【0014】
[lt/Dt≧5.0 ・・・(1)]
粉体を加速して精錬効率を上げるために、最も圧力が高くなるスロート部の長さlt(m)を大きくすることで、粉体を大幅に加速させることができる一方で、スロート径Dt(m)が大きすぎると、粉体の加速不良が生じてしまう。このことから、スロート部の長さltとスロート径Dtとの比に適正な範囲が存在する。比lt/Dt<5.0の範囲においては粉体加速効果が不十分であり、粉体噴射速度を十分な精錬効率を確保できる速度とすることができない。したがって、比lt/Dtを5.0以上とする。
【0015】
[0.100≧H/(Din/Dt)≧0.040 ・・・(2)]
次に、優れた摩耗抑制効果を実現するための条件について説明する。図2は、ノズル内での粉体摩耗機構および摩耗抑制の考え方を説明するための図である。図2(a)に示すように、粉体を上吹きする場合、スロート部の上部側に位置する径縮小部が短い場合には、粉体軌道に角度が生じるためテーパー部で粉体が散乱し、スロート壁への衝突によりノズルの摩耗が進行する。この結果、スロート部の内壁において摩耗が進行しやすくなる。そこで、図2(b)に示すように径縮小部のテーパー高さH(m)を大きくすることにより径縮小部の内壁に対する粉体の入射角が小さくなり、粉体の軌道が真下の方向に整流化するため、スロート部の内壁においても摩耗を低減することができる。
【0016】
一方で、図2(c)に示すようにスロート径Dtが小さすぎると、スロート部の内壁での衝突を低減するために、より長いテーパー高さHが必要となる。そこで、精錬効率の高い粉体速度を確保しつつ、スロート部での摩耗を抑制するテーパー高さHの条件について解析を行った。本発明者らがFluent(登録商標)による流体解析を行ったところ、テーパー高さHと、径縮小部の上部の管内径Dinとスロート径Dtとの間の指標H/(Din/Dt)と、スロート部の内壁への粉体の衝突エネルギーとの間に相関があることが分かった。
【0017】
図3は、指標H/(Din/Dt)と、スロート部の内壁への粉体の衝突エネルギー(J/m2)およびノズル出口での粉体速度(m/s)との関係を示す図である。なお、図3に記載の衝突エネルギーは、指標H/(Din/Dt)=0.035での値で規格化している。径縮小部の上部の管内径Dinはテーパーの角度に影響し、管内径Dinが小さいほどテーパー角度が大きくなる。また、スロート径Dtが小さいほど摩耗抑制に必要なテーパー高さHが大きくなる。これらを踏まえ、摩耗抑制という観点で指標H/(Din/Dt)を用いた(2)式の条件を見出した。なお、図3に示す衝突エネルギーは、以下の(5)式により算出した。
【0018】
【数1】
【0019】
(5)式中、mpは粉体質量(kg)を表し、vpはスロート部の内壁での衝突時の粉体速度(m/s)を表す。また、Afaceは衝突面積(m2)を表すが、Afaceはスロート内壁の表面積である。図3に示すように、指標H/(Din/Dt)が小さいほど衝突エネルギーが大きくなる傾向にあり、0.04付近を境目に衝突エネルギーが著しく大きくなることがわかった。したがって、(2)式において指標H/(Din/Dt)の下限値を0.040とする。一方、指標H/(Din/Dt)が大きくなると、ノズルから噴射される粉体速度が低下する傾向にある。これは、粉体が整流化してスロート部の中心に粉体を密集し、スロート部での粉体の加速効率が下がることが要因であると考えられる。高い精錬効率を確保する観点から、(2)式において指標H/(Din/Dt)の上限値を0.100とする。
【0020】
次に、上述した形状の上吹きランスを用いた好適な粉体の吹付け条件について説明する。なお、精錬により処理される元素および粉体の種類については特に限定はなく、以下、脱硫処理を例に説明する。
【0021】
まず、溶鋼が収容された取鍋にRH型真空脱ガス装置の浸漬管が浸漬され、真空槽において減圧下とされる。そして、環流ガスにより浸漬管を介して溶鋼が循環した状態で上吹きランスからキャリアガスとともに精錬用粉体が溶鋼に吹付けられる。このとき、上述した(1)式および(2)式を満たす上吹きランスを用いて、後述する条件に従って溶鋼に対してキャリアガスとともに粉体を吹付けることによって、不純物に対する粉体反応効率の高い精錬を実施することができる。以下、詳細な粉体の吹付け条件について説明する。
【0022】
[雰囲気圧力:13.33kPa未満]
キャリアガスが形成するジェットはノズル前圧とノズル出口圧力との圧力勾配を駆動力とするため、ノズル出口圧力が低いほど超音速ジェットを形成し易い。また、真空槽内の雰囲気圧力が低いほど空気抵抗が小さくなるため、ノズルから噴射された粉体が溶鋼表面に到達するまでの速度の減衰が抑えられ、粉体の溶鋼への侵入効率が安定する。したがって、雰囲気圧力を13.33kPa以上としてしまうと、キャリアガスジェット流速の大幅な低下、空気抵抗の大幅な増加により粉体噴射後の速度の大幅な減衰を招くことから、雰囲気圧力を13.33kPa未満とする。
【0023】
[ΔP0≧72×(lt/Dt-0.27 ・・・(3)]
[ΔP0=0.0118・Q/Dt 2 ・・・(4)]
比lt/Dtによって粉体加速効果は大きく異なってくるため、精錬効率の高い粉体速度を確保するために必要なノズル圧損ΔP0の値は比lt/Dtによって当然異なってくる。そこで、比lt/Dtが5.0以上を満たしている条件にて高い精錬効率を実現するために必要なノズル圧損ΔP0および比lt/Dtの条件を、(3)式および(4)式により定式化する。なお、(4)式中のQはキャリアガスの流量(Nm3/min)を表す。(3)式の条件を満たさない場合は、粉体速度が不足するため、高い精錬効率を実現することができない。
【0024】
以上のように(1)式および(2)式の条件を満たす上吹きランスを用い、雰囲気圧力が13.33kPa未満の減圧下で(3)式および(4)式の条件で精錬用粉体を溶鋼に吹付けることにより、高い精錬効率でかつ上吹きランスの内部の摩耗を抑制して2次精錬を実施することができる。
【実施例0025】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0026】
溶鋼中のS濃度が20~40ppmの溶鋼が収容された取鍋にRH型真空脱ガス処理装置の浸漬管を浸漬させ、減圧下で溶鋼を循環させた状態で上吹きランスからキャリアガスとともに粉体を吹付けて溶鋼の脱硫処理を行った。脱硫処理で用いた上吹きランスは、それぞれ以下の表1に示すテーパー高さH、径縮小部の上部の管内径Din、スロート径Dt、スロート部の長さltのものを用いた。粉体にはCaO-Al23を用い、キャリアガスにはArガスを用いた。また、処理条件として、雰囲気圧力、キャリアガスの流量Q、およびノズル圧損ΔP0を表1に示す条件とした。
【0027】
精錬効率の指標としては、以下の(6)式で表される脱硫k値を用いた。各試験No.の上吹きランスにおいて脱硫k値を数十チャージ分取得してその平均値を算出し、脱硫k値が0.120以上であったものは精錬効率が優れていたと評価した。
脱硫k値=ln([S]PB前/[S]PB後)/脱硫剤原単位(kg/t-steel) ・・・(6)
(6)式中、[S]PB前は脱硫処理前の溶鋼中S濃度(質量%)を表し、[S]PB後は脱硫処理後の溶鋼中S濃度(質量%)を表す。
【0028】
また、摩耗の抑制度合いの指標としては、各試験No.の上吹きランスにおいて粉体の上吹きを100ch分行い、スロート部の最大減肉厚みを測定して摩耗速度を算出した。そして、摩耗速度が0.05mm/ch以下であったものは摩耗を抑制できたと評価した。以下、表1に試験結果を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示すように実施例No.1~No.6では、脱硫k値、摩耗速度共に良好な結果が得られた。
一方、比較例No.7およびNo.8は、上吹きランスが(1)式の条件を満たさなかった例であり、スロート部で粉体が十分に加速されず、ノズルから噴射される粉体速度が不足したため、脱硫k値が低かった。また、比較例No.9およびNo.10は、雰囲気圧力が13.33kPaよりも高かったことから、粉体が溶鋼表面に到達するまでの間に粉体速度が減衰したため、脱硫k値が低かった。
【0031】
比較例No.11~No.13は、上吹きランスの指標H/(Din/Dt)が小さく(2)式の条件を満たさなかった例であり、スロート部において粉体の衝突により摩耗が進行し、摩耗速度が大きかった。比較例No.14およびNo.15は、上吹きランスの指標H/(Din/Dt)が大きく(2)式の条件を満たさなかった例であり、スロート部の中心に粉体が密集したことから粉体速度が不足してしまったため、脱硫k値が低かった。比較例No.16は、ノズル圧損ΔP0が(3)式の条件を満たしていなかったため、粉体の加速が不十分であり、脱硫k値が低位であった。
図1
図2
図3