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特開2025-8510測距装置および運転支援システム、測距方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008510
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】測距装置および運転支援システム、測距方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/42 20060101AFI20250109BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20250109BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G01S17/42
G01S17/931
G01C3/06 120Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110743
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康弘
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA05
2F112DA02
2F112DA15
2F112DA28
2F112GA01
5J084AA05
5J084AA10
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA06
5J084BA39
5J084BA49
5J084EA22
(57)【要約】
【課題】測距が行える受信パターンを判別できる技術を提供する。
【解決手段】測距装置110は、水平方向と垂直方向との少なくとも一方における、射出波の射出特性と射出波が物標に反射した反射波を含む入射波の受信特性との少なくとも一方の特性が均一でない、センサ部10と、測距装置が搭載される移動体300の移動状態に応じた複数の入射波の受信パターンを記憶する記憶部20と、測距装置の軸ズレ情報を用いて、複数の受信パターンのそれぞれについて測距に有効か否かを判定し、取得した移動状態を用いて、有効であると判定され受信パターンのうちから選択した受信パターンを用いて、予め定められた検知範囲に存在する物標までの距離を測定する制御部30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距装置(110)であって、
水平方向と垂直方向との少なくとも一方における、射出波の射出特性と前記射出波が物標に反射した反射波を含む入射波の受信特性との少なくとも一方の特性が均一でない、センサ部(10)と、
前記測距装置が搭載される移動体(300)の移動状態に応じた複数の前記入射波の受信パターンを記憶する記憶部(20)と、
前記測距装置の軸ズレ情報を用いて、前記複数の受信パターンのそれぞれについて測距に有効か否かを判定し、取得した前記移動状態を用いて、有効であると判定された前記受信パターンのうちから選択した受信パターンを用いて、予め定められた検知範囲に存在する前記物標までの距離を測定する制御部(30)と、を備える、測距装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測距装置であって、
前記複数の受信パターンは、前記検知範囲における第1領域の測距性能が、前記第1領域の少なくとも一部を囲む領域である第2領域の測距性能よりも高い、測距装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測距装置であって、
前記移動状態は、前記移動体の移動速度を含み、
前記移動速度が速い場合に対応する前記受信パターンは、前記移動速度が遅い場合に対応する前記受信パターンよりも前記測距性能が高い、測距装置。
【請求項4】
運転支援システム(100)であって、
請求項3に記載の測距装置と、
前記測距装置を搭載する前記移動体と、
前記制御部が前記受信パターンが有効であるか否かを判定した結果を用いて、前記移動体の前記移動速度を制御する運転制御部(210)と、を備える、運転支援システム。
【請求項5】
測距装置が実行する測距方法であって、
水平方向と垂直方向との少なくとも一方における、射出波の射出特性と前記射出波が物標に反射した反射波を含む入射波の受信特性との少なくとも一方の特性が均一でないセンサ部を用いて、前記入射波を受信する工程と、
前記測距装置が搭載される移動体の移動状態に応じた複数の前記入射波の受信パターンを記憶する工程と、
前記測距装置の軸ズレ情報を用いて、前記複数の受信パターンのそれぞれについて測距に有効か否かを判定する工程と、
取得した前記移動状態を用いて、有効であると判定され前記受信パターンのうちから選択した受信パターンを用いて、予め定められた検知範囲に存在する前記物標までの距離を測定する工程と、を含む、測距方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距装置および運転支援システム、測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車に搭載される測距装置において、センサの射出波が物標に反射して生じる反射波を用いて、測距する技術が知られている。特許文献1には、車の移動状態に基づいて、測距装置の走査パターンを設定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6843144号
【特許文献2】特許第5817270号
【特許文献3】特開2006-329971号公報
【特許文献4】特表2019-535014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所望の走査パターンで測距できない場合は、センサが要求される性能を満たすことができないため、センサは故障していると判定され、センサの故障をセンサの後段へ通知し、測距を停止する。測距装置の軸に経年劣化や衝突等の外的要因によってズレが生じる場合、所望の走査パターンで測距ができず、故障していると判定され、測距が停止するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、測距装置(110)が提供される。測距装置は、水平方向と垂直方向との少なくとも一方における、射出波の射出特性と前記射出波が物標に反射した反射波を含む入射波の受信特性との少なくとも一方の特性が均一でない、センサ部(10)と、前記測距装置が搭載される移動体(300)の移動状態に応じた複数の前記入射波の受信パターンを記憶する記憶部(20)と、前記測距装置の軸ズレ情報を用いて、前記複数の受信パターンのそれぞれについて測距に有効か否かを判定し、取得した前記移動状態を用いて、有効であると判定され前記受信パターンのうちから選択した受信パターンを用いて、予め定められた検知範囲に存在する前記物標までの距離を測定する制御部(31)と、を備える。
【0006】
この形態の測距装置によれば、軸ズレ情報を用いて複数の受信パターンのそれぞれが有効か否かを判定できる。また、測距装置は、有効であると判定した受信パターンを用いて測定を行う。そのため、軸ズレが生じている場合でも、測距を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】運転支援システムの構成の概要を示す説明図である。
図2】入射波の受信特性ついての説明図である。
図3】受信パターン判定処理の一例を示したフローチャートである。
図4】第1受信パターンについての説明図である。
図5】第2受信パターンについての説明図である。
図6】第3受信パターンについての説明図である。
図7】各受信パターンが有効か無効を示す説明図である。
図8】測距処理の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1に示すように、運転支援システム100は、移動体300と、測距装置110と、自動運転制御部210と、駆動力制御ECU(Electronic Control Unit)220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240と、を備える。測距装置110と、駆動力制御ECU220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240とは、車載ネットワーク250を介して接続される。運転支援システム100は、移動体300の自動運転を実行する。なお、移動体300は、自動運転に限らず、運転手によって手動で行われる手動運転によって運転されてもよい。本実施形態において、移動体300は、車両である。
【0009】
測距装置110は、予め定められた検知範囲に存在する物標までの距離を測定する装置である。測距装置110は、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)である。測距装置110として、ミリ波レーダや、光の飛行時間を利用して三次元位置を測定可能なTOFカメラ(TOF:Time Of Flight)を採用できる。測距装置110は、移動体300に搭載される。本実施形態において、測距装置110は、移動体300の進行方向における前方に存在する物標までの距離を測定する。
【0010】
測距装置110は、センサ部10と記憶部20とCPU30とを備える。CPU30は、記憶部20にインストールされたプログラムを実行することによって、制御部31の機能を実現する。ただし、これらの各部の機能の一部又は全部をハードウエア回路で実現してもよい。
【0011】
センサ部10は、射出波の射出と、射出波が物標に反射した反射波を含む入射波の受信とを行う。より具体的には、センサ部10は、図示しない垂直方向に1次元配列された発光素子と発光素子駆動装置とを用いて、光を射出する。また、センサ部10は、図示しない1次元配列された複数の受光素子と受光素子駆動装置とを用いて、入射波を受信する。測距装置110は、発光素子および受光素子を水平方向に走査して、2次元の領域について測距を行う。
【0012】
図2に示すように、本実施形態において、センサ部10は、入射波を受信する受信範囲TAにおける水平方向と垂直方向において、入射波の受信特性が均一でない。より具体的には、センサ部10は、受光素子の配列や走査の粗密によって、受信範囲TAにおける水平方向および垂直方向において、複数の受信特性を有する。受信範囲TAにおけるセンサ部10の水平方向の中心軸は軸CHであり、受信範囲TAにおけるセンサ部10の垂直方向の中心軸は軸CVである。センサ部10は、垂直方向において、3段階の測距特性Aを有する。測距特性は、受信特性と射出波の射出特性によって定められる特性であり、距離精度や分解能を含む特性である。
【0013】
測距特性A、測距特性B、測距特性Cの順で測距性能が高い。また、センサ部10は、水平方向において、2段階の測距特性を有する。測距特性O、測距特性Pの順で測距性能が高い。すなわち、受信範囲TAにおいて、中央の領域が最も測距性能が高く、上端の領域と下端の領域が最も測距性能が低い。
【0014】
記憶部20は、移動体300の移動状態に応じた複数の入射波の受信パターンを記憶する。移動状態として、例えば、移動体300の移動速度や、走行予定の垂直方向における勾配、水平方向におけるカーブ等を採用できる。本実施形態において、移動状態は、移動体300の移動速度である。受信パターンは、受信範囲TAにおけるどの領域をどの程度の測距性能で受信したいかを示すパターンである。本実施形態において、受信パターンは、受信範囲TAにおけるどの領域をどの程度の測距特性で受信したいかを示すパターンである。
【0015】
本実施形態において、記憶部20は、受信パターンの組み合わせを、機能毎に記憶する。機能は、測距装置110が測距した情報を用いて、運転支援システム100によって実行される移動体300の運転支援に関する機能である。機能として、例えば、移動体300の自動追従走行が挙げられる。
【0016】
制御部31は、測距装置110の軸ズレ情報と移動体300の移動状態とを用いて選択した受信パターンを用いて、測定を行う。まず、制御部31は、測距装置110の軸ズレ情報を用いて、複数の受信パターンのそれぞれが有効か否かを判定する。軸ズレ情報とは、移動体300に対する運転支援システム100の水平方向および垂直方向におけるズレ量を含む情報である。軸ズレ情報は、制御部31が周知の技術を用いて求めてもよく、他の装置が求めた軸ズレ情報を取得してもよい。続いて、制御部31は、取得した現在の移動状態を用いて、有効であると判定された受信パターンのうちから、測定に用いる受信パターンを決定する。制御部31は、選択した受信パターンを用いて、測定を行う。
【0017】
自動運転制御部210は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、自動運転機能を実現する。自動運転制御部210は、駆動力制御ECU220および制動力制御ECU230、操舵制御ECU240を制御することで、自動運転機能を実現する。自動運転制御部210は、例えば、駆動力制御ECU220および制動力制御ECU230を制御し、操舵制御ECU240を用いて自動的に車線変更を行う。
【0018】
駆動力制御ECU220は、エンジンなど移動体300の駆動力を発生するアクチュエータを制御する電子制御装置である。運転手が手動で運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、アクセルペダルの操作量に応じてエンジンや電気モータである動力源を制御する。一方、自動運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、自動運転制御部210で演算された要求駆動力に応じて動力源を制御する。
【0019】
制動力制御ECU230は、移動体300の制動力を発生するブレーキアクチュエータを制御する電子制御装置である。運転手が手動で運転を行う場合、制動力制御ECU230は、ブレーキペダルの操作量に応じてブレーキアクチュエータを制御する。一方、自動運転を行う場合、制動力制御ECU230は、自動運転制御部210で演算された要求制動力に応じてブレーキアクチュエータを制御する。
【0020】
操舵制御ECU240は、移動体300の操舵トルクを発生するモータを制御する電子制御装置である。運転手が手動で運転を行う場合、操舵制御ECU240は、ステアリングハンドルの操作に応じてモータを制御して、ステアリング操作に対するアシストトルクを発生させる。これにより、運転手が少量の力でステアリングを操作でき、移動体300の操舵を実現する。一方、自動運転を行う場合、操舵制御ECU240は、自動運転制御部210で演算された要求操舵角に応じてモータを制御することで操舵を行う。
【0021】
図3に示す受信パターン判定処理は、測距装置110が、受信パターンが有効か否かを判定する処理である。この処理は、運転支援システム100の動作中繰り返し行われることが好ましい。この処理は、運転支援システム100の起動時にのみ行われてもよく、軸ズレ情報が更新される度に行われてもよい。
【0022】
ステップS100において、測距装置110は、軸ズレ情報を取得する。
【0023】
ステップS110において、測距装置110は、ステップS100で取得した軸ズレ情報を用いて、受信パターンが有効か否かを判定する。より具体的には、測距装置110は、軸ズレの量に応じて、受信パターンにおける検知範囲の中心軸の位置を動かした場合に、要求される測距特性を満たすか否かを判定する。
【0024】
図4に示す第1受信パターンは、第1機能において、移動体300の移動速度が予め定められた第1閾値速度を超える場合に用いられる受信パターンである。第1閾値速度は、例えば、80km/hである。図4において、垂直方向において要求される測距特性を示している。移動体300の中心軸CL1に対応づけられた第1受信パターンの検知範囲において、第1領域A11は、測距特性Cであり、第2領域A12は、測距特性Bである。すなわち、第1受信パターンは、検知範囲における第1領域A11の測距性能が、第1領域A11を囲む領域である第2領域A12の測距性能よりも高い。図4の(b)に示すように、軸ズレが生じていない場合の初期状態では、センサ部10の水平方向における中心軸である軸CVと、移動体300の中心軸CL1は一致している。
【0025】
図4の(a)は、第1受信パターンにおいて要求される測距特性を満たす事ができる、垂直方向における上側への軸ズレの限界を示す。センサ部10の軸CVの軸ズレに合せて、検知範囲を図4の(a)で示す位置よりも下側へ動かすと、測距特性Cが要求される第1領域A11において、測距特性Bでしか受信できない。すなわち、検知範囲は、図4の(a)で示す位置までであれば、軸CVから下側へと動かしても、要求される測距特性を満たすことができる。
【0026】
図4の(c)は、第1受信パターンにおいて要求される測距特性を満たす事ができる、垂直方向における下側への軸ズレの限界を示すセンサ部10の軸CVの軸ズレに合せて、検知範囲を図4の(c)で示す位置よりも上側へ動かすと、測距特性Cが要求される第1領域A11において、測距特性Bでしか受信できない。すなわち、検知範囲は、図4の(c)で示す位置までであれば、軸CVから上側へと動かしても、要求される測距特性を満たすことができる。
【0027】
図5に示す第2受信パターンは、第1機能において、移動体300の移動速度が予め定められた第2閾値速度を超える場合に用いられる受信パターンである。第2閾値速度は、第1閾値速度よりも遅く、例えば、50km/hである。第2受信パターンの視野角は、第1受信パターンの視野角よりも広い。また、第2受信パターンの測距特性は、第1受信パターンの測距特性よりも低い。移動体300の中心軸CL2に対応づけられた第2受信パターンの検知範囲において、第1領域A21は、測距特性Bであり、第2領域A22は、測距特性Aである。すなわち、第2受信パターンは、検知範囲における第1領域A21の測距性能が、第1領域A21を囲む領域である第2領域A22の測距性能よりも高い。図5において、垂直方向において要求する測距特性を示している。図5の(b)に示すように、軸ズレが生じていない場合の初期状態では、センサ部10の水平方向における中心軸である軸CVと、移動体300の中心軸CL2は一致している。
【0028】
図5の(a)は、第2受信パターンにおいて要求される測距特性を満たす事ができる、垂直方向における上側への軸ズレの限界を示す。センサ部10の軸CVの軸ズレに合せて、検知範囲を図5の(a)で示す位置よりも下側へ動かすと、測距特性Bが要求される第1領域A21において、測距特性Aでしか受信できない。すなわち、検知範囲は、図5の(a)で示す位置までであれば、軸CVから下側へと動かしても、要求される測距特性を満たすことができる。
【0029】
図5の(c)は、第2受信パターンにおいて要求される測距特性を満たす事ができる、垂直方向における下側への軸ズレの限界を示す。センサ部10の軸CVの軸ズレに合せて、検知範囲を図5の(c)で示す位置よりも上側へ動かすと、測距特性Bが要求される第1領域A21において、測距特性Aでしか受信できない。すなわち、検知範囲は、図5の(c)で示す位置までであれば、軸CVから上側へと動かしても、要求される測距特性を満たすことができる。
【0030】
図6に示す第3受信パターンは、第1機能において、移動体300の移動速度が第2閾値速度以下の場合に用いられる受信パターンである。第2受信パターンの視野角と第3受信パターンの視野角は同じである。また、第3受信パターンの測距性能は、第2受信パターンの測距性能よりも低い。移動体300の中心軸CL3に対応づけられた第3受信パターンの検知範囲における測距特性はいずれも同じである。図6において、垂直方向において要求する測距特性を示している。図6の(b)に示すように、軸ズレが生じていない場合の初期状態では、センサ部10の水平方向における中心軸である軸CVと、移動体300の中心軸CL3は一致している。
【0031】
図6の(a)は、第3受信パターンにおいて要求される測距特性を満たす事ができる、垂直方向における上側への軸ズレの限界を示す。センサ部10の軸CVの軸ズレに合せて、検知範囲を図6の(a)で示す位置よりも下側へ動かすと、入射波を受信できない領域が生じる。すなわち、検知範囲は、図6の(a)で示す位置までであれば、軸CVから下側へと動かしても、要求される測距特性を満たすことができる。
【0032】
図6の(c)は、第3受信パターンにおいて要求される測距特性を満たす事ができる、垂直方向における下側への軸ズレの限界を示す。センサ部10の軸CVの軸ズレに合せて、検知範囲を図6の(c)で示す位置よりも上側へ動かすと、入射波を受信できない領域が生じる。すなわち、検知範囲は、図6の(c)で示す位置までであれば、軸CVから上側へと動かしても、要求される測距特性を満たすことができる。
【0033】
以下では、発生した軸ズレの軸ズレ量が、受信パターン判定処理によって、第1受信パターンおよび第2受信パターンが無効と判定される量である場合を例として説明する。すなわち、制御部31によって、第1受信パターンおよび第2受信パターンは無効であり、第3受信パターンは有効であると判定される場合を例として説明する。
【0034】
図7に示す表は、機能毎の受信パターンの組み合わせと、各受信パターンが有効か無効かを示す。なお、第1受信パターン~第7受信パターンは、いずれも互いに異なる受信パターンである。第1機能は、移動体300の移動速度が50km/h以下の場合は、第3受信パターンが用いられ、移動体300の移動速度が50km/hを超え、かつ、80km/h以下の場合は、第2受信パターンが用いられ、移動体300の移動速度が80km/hを超える場合は、第1受信パターンが用いられる。すなわち、第1機能において、移動体300の移動速度が50km/h以下の場合は、移動状態に対応する予め定められた受信パターンが有効である。
【0035】
第2機能は、移動体300の移動速度が80km/h以下の場合は、第5受信パターンが用いられ、移動体300の移動速度が80km/hを超える場合は、第4受信パターンが用いられる。第4受信パターンは無効であり、第5受信パターンは有効である。すなわち、第2機能において、移動体300の移動速度が80km/h以下の場合は、移動状態に対応する予め定められた受信パターンが有効である。
【0036】
第3機能は、移動体300の移動速度が50km/h以下の場合は、第7受信パターンが用いられ、移動体300の移動速度が50km/hを超える場合は、第6受信パターンが用いられる。すなわち、第3機能において、移動体300の移動速度が120km/h以下の場合は、移動状態に対応する予め定められた受信パターンが有効である。
【0037】
図8に示す測距処理は、測距装置110が、測距を行う処理である。この処理は、運転支援システム100の動作中繰り返し行われる。
【0038】
ステップS200において、測距装置110は、受信パターン判定処理の判定結果と、移動体300の移動状態とを用いて、測距に用いる受信パターンを選択する。より具体的には、測距装置110は、取得した移動状態を用いて、有効であると判定された受信パターンのうちから、測定に用いる受信パターンを選択する。本実施形態において、測距装置110は、移動体300の移動速度を取得し、取得した移動速度以下に対応する受信パターンのうち、有効であると判定された受信パターンを測距に用いることを決定する。以下では、移動体300の移動速度が75km/hである場合を例として説明する。第1機能において、対応づけられた第1受信パターンは無効であるため、測距装置110は、有効であると判定された受信パターンである第3受信パターンを測距に用いることを決定する。第2機能において、対応づけられた第5受信パターンは有効であるため、測距装置110は、第2機能における測距に第5受信パターンを用いることを決定する。また、第3機能において、対応づけられた第6受信パターンは有効であるため、測距装置110は、第3機能における測距に第6受信パターンを用いることを決定する。
【0039】
ステップS210において、測距装置110は、ステップS200で選択した受信パターンを用いて、測距を行う。本実施形態において、測距装置110は、第1機能および第2機能、第3機能のいずれにおいても第3受信パターンを用いて測距を行う。
【0040】
以上で説明した本実施形態の測距装置110によれば、軸ズレ情報を用いて複数の受信パターンのそれぞれが有効か否かを判定できる。また、測距装置110は、取得した移動状態を用いて、有効であると判定された受信パターンのうちから測距に用いる受信パターンを選択する。そのため、受信パターンを移動体300の移動状態に対応づけられた受信パターンが無効であると判定された場合に、有効であると判定した受信パターンを用いて測定を行う。従って、移動体300の移動状態に対応づけられた受信パターンが無効である場合に、即座にセンサ部10が故障していると判定されて測距が停止することを抑制できる。また、機能毎に要求される測距性能を満たすことが出来る範囲で測距を継続できる。
【0041】
また、第1受信パターンおよび第2受信パターンは、検知範囲における第1領域A11、A21の測距性能が、第1領域A11を囲む領域である第2領域A12、A22の測距性能よりも高い。そのため、移動体300が高い速度で走行している場合であっても、道路の前方の遠方にある物標までの距離を測距できる蓋然性が高い。
【0042】
また、第1機能において、移動速度が速い場合に対応する第1受信パターンは、移動速度が遅い場合に対応する第2受信パターンよりも測距性能が高い。すなわち、制御部31は、移動体300の移動速度が速い場合に、移動速度が遅い場合よりも測距性能が高い受信パターンを用いて測距を行う。そのため、物標に接近する時間が短い場合に、その物標までの距離を精度高く測距できる。
【0043】
B.第2実施形態:
第2実施形態は、制御部31が、受信パターン判定処理の判定結果を用いて、移動体300の移動速度を制御する点が、第1実施形態と異なる。第2実施形態における運転支援システム100は、第1実施形態の運転支援システム100の構成と同一であるため、運転支援システム100の構成の説明は省略する。
【0044】
以下では、第1機能が実行される場合について説明する。図7に示すように、第1機能において、移動状態に対応づけられた受信パターンの組み合わせは、移動速度が速い場合に対応する受信パターンが、移動速度が遅い場合に対応する受信パターンよりも測距性能が高い。本実施形態において、制御部31は、測距処理におけるステップS200(図8参照)の処理において、有効と判定された受信パターンが対応づけられた移動速度のうち最も速い速度を、上限速度に決定する。制御部31は、移動体300の移動速度が上限速度を超えないように走行を制御するよう自動運転制御部210に指示する。また、制御部31は、上限速度に対応づけられた受信パターンを用いて測距を行う事を決定する。
【0045】
図7に示すように、移動体300の移動速度が50km/h以下の場合に、第1機能と第2機能と第3機能とのいずれの機能においても、移動状態に対応する予め定められた受信パターンが有効である。そのため、制御部31は、全ての機能に対応づけられたパターンが有効と判定された移動速度のうち最も早い速度である50km/hを上限速度に決定し、移動体300が50km/h以下で走行するように自動運転制御部210に指示する。また、制御部31は、第3受信パターンを用いて測距を行う。
【0046】
以上で説明した第2実施形態の制御部31によれば、受信パターンの有効/無効に応じて、移動体300の移動速度を制御する。そのため、予め定められていた、移動状態に応じた受信パターンを用いて測距をすることができる。
【0047】
C.その他の実施形態:
(C1)上述した実施形態において、センサ部10は、水平方向と垂直方向において、入射波の受信特性とが均一でない。これに限らず、センサ部10は、水平方向と垂直方向との少なくとも一方における、射出波の射出特性と入射波の受信特性との少なくとも一方の特性が均一でなければよい。
【0048】
(C2)上述した実施形態において、制御部31は、軸ズレ情報に加えて、センサ部10の射出波を射出する機構や、入射波を受信する機構の不具合を示す情報を用いて、各受信パターンが有効か無効かを判定してもよい。制御部31は、例えば、入射波を受信する受光素子の前面にある光学窓に汚れが有る場合、入射波の受信範囲TAにおいてその汚れが影響する領域を特定し、特定した領域を用いない受信パターンを有効と判定する。
【0049】
(C3)上述した実施形態において、測距装置110は、センサ部10と制御部31とを有している。これに限らず、測距装置110は、センサ部10を有さなくてもよい。制御部31は、外部機器が有するセンサ部10の軸ズレ情報を用いて、受信パターンが有効無効かを判定し、測距を行ってもよい。
【0050】
(C4)上述した実施形態において、制御部31は、軸ズレの量が予め定められた閾値ズレ量以上である場合に、測距ができないというダイアグ判定を行ってもよい。閾値ズレ量は、例えば、いずれの受信パターンも無効であると判定される軸ズレの量である。
【0051】
(C5)上述した実施形態において、第1受信パターンおよび第2受信パターンは、検知範囲における第1領域A11、A21の測距性能が、第1領域A11を囲む領域である第2領域A12、A22の測距性能よりも高い。これに限らず、受信パターンは、検知範囲における、ある領域の測距性能が、ある領域の一部を囲む領域である他の領域の測距性能よりも高くてもよい。また、受信パターンは、2分割された一方の領域の測距性能が他の領域の測距性能よりも高くてもよい。
【0052】
(C6)上述した第2実施形態において、制御部31は、移動体300の移動速度を制御している。これに限らず、制御部31は、移動体300が走行する道路を選択し、その道路を走行する場合に、道路の選択を制御してもよい。すなわち、制御部31は、移動体300が走行する道路を制限してもよい。より具体的には、制御部31は、移動体300が走行可能である垂直方向における勾配量や、水平方向におけるカーブ量を決定して、移動体300の走行を制限するよう制御してもよい。制御部31は、軸ズレ情報を用いて、垂直方向における受信パターンの検知範囲を動かせる量に応じて、垂直方向における勾配量を決定する。また、制御部31は、水平方向における受信パターンの検知範囲を動かせる量に応じて、水平方向におけるカーブ量を決定する。
【0053】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述した課題を解決するために、あるいは上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することが可能である。
【0054】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制限部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…センサ部、20…記憶部、30…CPU、31…制御部、100…運転支援システム、110…測距装置、210…自動運転制御部、220…駆動力制御ECU、230…制動力制御ECU、240…操舵制御ECU、250…車載ネットワーク、300…移動体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8