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特開2025-8516電子部品の製造装置および電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008516
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】電子部品の製造装置および電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20250109BHJP
   H01C 17/00 20060101ALI20250109BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01G4/30 311A
H01C17/00 100
H01G4/30 311Z
H01G4/30 517
H01F41/04 B
H01F41/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110751
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬政 康平
【テーマコード(参考)】
5E001
5E032
5E062
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AH06
5E001AJ01
5E001AJ02
5E032CA01
5E032CC01
5E032CC03
5E032CC05
5E032CC06
5E062FF03
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC36
5E082BC38
5E082EE23
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG11
5E082HH43
(57)【要約】
【課題】粘着シートの粘着保持力を喪失させる加熱によってチップ同士がくっついてしまうことを抑制する。
【解決手段】加熱機構3は、複数の電子部品の材料である複数のチップ10が各々に接して配置された状態で表面に粘着保持される粘着シート20の裏面側に配置されている。冷却機構4は、粘着シート20の表面側に配置されている。加熱機構3は、粘着シート20が粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に粘着シート20を加熱可能である。冷却機構4は、粘着シート20に粘着保持されている複数のチップ10の各々の平均温度を複数のチップ10の含有材料のガラス転移温度であるTg未満に冷却可能である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子部品の材料である複数のチップが各々に接して配置された状態で表面に粘着保持される粘着シートの裏面側に配置された加熱機構と、
前記粘着シートの表面側に配置された冷却機構とを備え、
前記加熱機構は、前記粘着シートが粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に前記粘着シートを加熱可能であり、
前記冷却機構は、前記粘着シートに粘着保持されている前記複数のチップの各々の平均温度を前記複数のチップの含有材料のガラス転移温度であるTg未満に冷却可能である、電子部品の製造装置。
【請求項2】
前記冷却機構は、前記粘着シートに粘着保持されている前記複数のチップの各々に接した状態で前記複数のチップを冷却する、請求項1に記載の電子部品の製造装置。
【請求項3】
前記冷却機構は、前記複数のチップにエアを吹き付けて前記複数のチップを冷却する、請求項1に記載の電子部品の製造装置。
【請求項4】
前記粘着シートを支持する支持機構をさらに備え、
前記加熱機構は、前記粘着シートが粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に、前記支持機構に支持されている前記粘着シートを加熱可能である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子部品の製造装置。
【請求項5】
前記粘着シートに接した状態の前記加熱機構を振動させることにより、粘着保持力を喪失した前記粘着シートから前記複数のチップを脱離させる加振機構をさらに備える、請求項1に記載の電子部品の製造装置。
【請求項6】
前記加熱機構と前記冷却機構との間の領域に側方からエアを吹き付けるエアブロワをさらに備える、請求項1に記載の電子部品の製造装置。
【請求項7】
前記加熱機構および前記冷却機構のうちの少なくとも下方に位置する方を傾斜させることにより、粘着保持力を喪失した前記粘着シートから脱離した前記複数のチップを滑落させる揺動機構をさらに備える、請求項1に記載の電子部品の製造装置。
【請求項8】
前記加熱機構と前記冷却機構とが交互に複数配置されている、請求項1に記載の電子部品の製造装置。
【請求項9】
前記加熱機構は、ペルチェ素子の加熱面であり、
前記冷却機構は、前記ペルチェ素子の冷却面である、請求項1に記載の電子部品の製造装置。
【請求項10】
前記加熱機構の前記粘着シートと面する面が曲面である、請求項1に記載の電子部品の製造装置。
【請求項11】
複数の電子部品の材料である複数のチップが各々に接して配置された状態で表面に粘着保持された粘着シートを準備する工程と、
前記粘着シートが粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に前記粘着シートを加熱しつつ、前記粘着シートに粘着保持されている前記複数のチップの各々の平均温度を前記複数のチップの含有材料のガラス転移温度であるTg未満に冷却する工程とを備える、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造装置および電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末成形板の切断片の製造方法を開示した先行技術文献として、特公平6-79812号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された粉末成形板の切断片の製造方法においては、粘着シートに貼着固定された粉末成形板を切断した後、粘着シートを加熱して発泡させることにより粘着保持力を消失させて切断片を粘着シートから離れやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6-79812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セラミックの粉末とバインダと溶剤との混合物を成形して得られる粉末成形板は、含有材料のガラス転移温度以上に加熱されると粘着性が発現し、切断片であるチップ同士がくっついてしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、粘着シートの粘着保持力を喪失させる加熱によってチップ同士がくっついてしまうことを抑制可能な、電子部品の製造装置および電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく電子部品の製造装置は、加熱機構と、冷却機構とを備える。加熱機構は、複数の電子部品の材料である複数のチップが各々に接して配置された状態で表面に粘着保持される粘着シートの裏面側に配置されている。冷却機構は、粘着シートの表面側に配置されている。加熱機構は、粘着シートが粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に粘着シートを加熱可能である。冷却機構は、粘着シートに粘着保持されている複数のチップの各々の平均温度を複数のチップの含有材料のガラス転移温度であるTg未満に冷却可能である。
【0007】
本発明に基づく電子部品の製造方法は、複数の電子部品の材料である複数のチップが各々に接して配置された状態で表面に粘着保持された粘着シートを準備する工程と、粘着シートが粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に粘着シートを加熱しつつ、粘着シートに粘着保持されている複数のチップの各々の平均温度を複数のチップの含有材料のガラス転移温度であるTg未満に冷却する工程とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粘着シートの粘着保持力を喪失させる加熱によってチップ同士がくっついてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造方法を示すフロー図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の構成を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の支持機構を、複数のチップを粘着保持した粘着シートに接近させている状態を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の支持機構が粘着シートの裏面に接した状態を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置において、粘着シートに粘着保持されているチップが冷却機構に接するように粘着シートが移動させられた状態を示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置において、加熱機構が粘着シートの裏面に接した状態を示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置において、粘着シートから複数のチップを脱離させて回収している状態を示す断面図である。
図8】本発明の一実施形態の第1変形例に係る電子部品の製造装置の構成を示す断面図である。
図9】本発明の一実施形態の第2変形例に係る電子部品の製造装置の構成を示す断面図である。
図10】本発明の一実施形態の第3変形例に係る電子部品の製造装置の構成を示す断面図である。
図11】本発明の一実施形態の第4変形例に係る電子部品の製造装置の構成を示す断面図である。
図12】本発明の一実施形態の第5変形例に係る電子部品の製造装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置および電子部品の製造方法について図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置および電子部品の製造方法について図を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造方法を示すフロー図である。以下の電子部品の製造方法の説明においては、積層セラミックコンデンサの製造方法について説明するが、電子部品は、積層セラミックコンデンサに限られず、積層セラミックコイルなどでもよく、ガラス転移温度を有する樹脂またはバインダを含有する材料を含むチップから作製される電子部品であればよい。ここで、ガラス転移温度とは、粘着性が変化する温度の意味で使用しており、急激な変化点のみに限定されず、徐々に粘着性が変化する温度範囲も含んでおり、チップ同士がくっつき、チップをハンドリングしても離れないようになる物性の変化を起こす温度範囲も含むものとする。
【0012】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造方法により積層セラミックコンデンサを製造するに際して、まず、セラミック誘電体スラリーが調製される(工程S1)。具体的には、セラミック誘電体粉末、添加粉末、バインダ樹脂および溶解液などが分散混合され、これによりセラミック誘電体スラリーが調製される。セラミック誘電体粉末は、たとえば、BaTiO、CaTiO、SrTiO、CaZrOまたはCaHfOなどのペロブスカイト構造の誘電体粒子である。添加粉末は、たとえば、Si化合物、Mg化合物、Mn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Ni化合物およびCo化合物の少なくともいずれかからなる。バインダ樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂系、または、ポリビニルアルコール(PVA)若しくはポリビニルブチラール(PVB)などの水性高分子などを用いることができる。これらは単体で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。セラミック誘電体スラリーは、溶剤系または水系のいずれでもよい。セラミック誘電体スラリーを水系塗料とする場合、水溶性のバインダおよび分散剤などと、水に溶解させた誘電体原料とを、混合することによりセラミック誘電体スラリーを調製する。
【0013】
次に、セラミック誘電体シートが形成される(工程S2)。具体的には、セラミック誘電体スラリーがキャリアフィルム上においてダイコータ、グラビアコータまたはマイクログラビアコータなどを用いてシート状に成形されて乾燥されることにより、セラミック誘電体シートが形成される。セラミック誘電体シートの厚さは、積層セラミックコンデンサの小型化および高容量化の観点から、0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0014】
次に、マザーシートが形成される(工程S3)。具体的には、セラミック誘電体シートに導電性ペーストが所定のパターンを有するように塗布されることにより、セラミック誘電体シート上に所定の内部電極パターンが設けられたマザーシートが形成される。導電性ペーストは、Ni粉、溶剤、分散剤およびバインダなどを含み、粘度が一定になるように調製されている。バインダとしては、ポリビニルブチラール(PVB)またはポリビニルアルコール(PVA)などが用いられる。導電性ペーストの塗布方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法またはグラビア印刷法などを用いることができる。内部電極パターンの厚さは、積層セラミックコンデンサの小型化および高容量化の観点から、0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。なお、マザーシートとしては、内部電極パターンを有するマザーシートの他に、上記工程S3を経ていないセラミック誘電体シートも準備される。
【0015】
次に、複数のマザーシートが積層される(工程S4)。具体的には、内部電極パターンが形成されておらず、セラミック誘電体シートのみからなるマザーシートが、たとえば厚みが0.5μm以上5μm以下となるように所定枚数積層される。その上に、内部電極パターンが設けられたマザーシートが所定枚数積層される。内部電極パターンが設けられたマザーシートの積層枚数は、たとえば、5枚以上1500枚以下である。さらにその上に、内部電極パターンが形成されておらず、セラミック誘電体シートのみからなるマザーシートが、たとえば厚みが0.5μm以上10μm以下となるように所定枚数積層される。これにより、マザーシート群が構成される。
【0016】
次に、マザーシート群が圧着されることで誘電体ブロックが形成される(工程S5)。具体的には、静水圧プレスまたは剛体プレスによってマザーシート群が積層方向に加圧されて圧着されることにより、誘電体ブロックが形成される。このとき、所定の温度でセラミック誘電体シートがプレスされることにより、セラミック誘電体シート同士が密着する。また、積層方向の最外層に、一定の厚み分のセラミック誘電体シートを配置してプレスすることにより、内部電極パターンが形成されている誘電体シートを保護することができる。
【0017】
次に、粘着シートに誘電体ブロックを貼り付ける(工程S6)。粘着シートは、表面に粘着層を有し、裏面に基材層を有している。粘着シートは、温度Ts以上に加熱されると、粘着保持力を喪失する。粘着シートは、たとえば、粘着層がアクリル酸エステルを含み、粘着シートがアクリル酸エステルのガラス転移温度(Ts)以上に加熱されると、粘着層が粘着保持力を喪失するものであってもよい。または、粘着シートは、たとえば、加熱されると発泡する材料を粘着層が含み、当該材料の発泡温度(Ts)以上に粘着シートが加熱されると、粘着層の表面積が増大して粘着層が粘着保持力を喪失するものであってもよい。たとえば、粘着層の厚みは、1μm以上100μm以下であり、基材層の厚みは、30μm以上300μm以下である。
【0018】
次に、粘着シートに粘着保持された誘電体ブロックが分断されてチップが形成される(工程S7)。具体的には、押し切り、ダイシングまたはレーザカットによって誘電体ブロックがマトリックス状に分断され、複数のチップに個片化される。誘電体ブロックを分断する際、誘電体ブロックを加熱して軟化させた状態で分断してもよい。たとえば、誘電体ブロックに含まれているバインダのガラス転移温度Tgよりも高く、かつ、粘着シートが粘着保持力を喪失する温度Tsより低い、一定の温度まで誘電体ブロックを加熱しつつ押し切り刃で誘電体ブロックを切断してもよい。これにより、押し切り刃へのダメージを低減することができる。工程S7により、複数のチップが各々に接して配置された状態で表面に粘着保持された粘着シートが、準備される。なお、誘電体ブロックは、押し切り刃で切断された後、誘電体ブロックに含まれているバインダのガラス転移温度Tg以下の温度まで冷却されるため、分断されて近接しているチップ同士は、くっついておらず互いに分離した状態で粘着シートに保持されている。なお、チップ同士がくっついている場合は、ローラまたはブレードを用いてチップブレイクを行なうことにより、チップ同士を分離させてもよい。
【0019】
次に、粘着シートからチップを脱離させる(工程S8)。ここで、粘着シートからチップを脱離させる際に用いられる、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の構成を示す断面図である。
【0020】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置1は、加熱機構3と、冷却機構4とを備える。電子部品の製造装置1は、支持機構2と、加振機構5と、エアブロワ6と、揺動機構7とをさらに備える。ただし、電子部品の製造装置1は、必ずしも、支持機構2と、加振機構5と、エアブロワ6と、揺動機構7とを備えていなくてもよい。
【0021】
加熱機構3は、粘着シートの裏面側に配置される。加熱機構3は、粘着シートが粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に粘着シートを加熱可能である。加熱機構3は、たとえば、加熱面が100℃以上140℃以下の範囲内となるように加熱可能である。
【0022】
加熱機構3は、たとえば、電熱線が埋め込まれた加熱板、または、複数設けられた穴の内部にカートリッジヒータが挿入された加熱板である。あるいは、加熱機構3は、ペルチェ素子の加熱面であってもよい。
【0023】
本実施形態においては、加熱板の表面は、平面である。加熱板の材質は、特に限定されず、セラミックスでも金属でもよい。加熱板の表面の面積は、粘着シートと接する側の誘電体ブロックの面積より大きいことが好ましい。加熱板の表面には、粘着シートとの接触面積の増大および粘着シートとの接触性を向上するために、エンボス加工、スリット加工、または、テフロン(登録商標)加工などの表面処理が施されていてもよい。
【0024】
加熱機構3には、温度制御部が設けられている。温度制御部は、加熱機構3に内蔵されている温度センサ、加熱面の表面温度を直接測定する接触式の温度センサ、または、赤外線サーモグラフィなどの非接触式温度センサと電気的に接続されて、温度センサの測定温度が設定温度に近づくように加熱機構3をフィードバック制御する。
【0025】
冷却機構4は、粘着シートの表面側に配置される。冷却機構4は、粘着シートに粘着保持されている複数のチップの各々の平均温度を複数のチップの含有材料のガラス転移温度であるTg未満に冷却可能である。冷却機構4は、たとえば、冷却面または冷気が5℃以上60℃以下の範囲内となるように冷却可能である。
【0026】
冷却機構4は、たとえば、水冷式、空冷式、油冷式若しくは冷凍式の冷却板、または、エアを吹き付けて冷却する送風機である。あるいは、冷却機構4は、ペルチェ素子の冷却面であってもよい。
【0027】
本実施形態においては、冷却板の表面は、平面である。冷却板の材質は、特に限定されず、セラミックスでも金属でもよい。冷却板の表面の面積は、冷却板と対向する誘電体ブロックの面積より大きいことが好ましい。冷却板の表面には、誘電体ブロックとの接触面積の増大および誘電体ブロックとの接触性を向上するために、エンボス加工、スリット加工、または、テフロン加工などの表面処理が施されていてもよい。
【0028】
冷却機構4には、温度制御部が設けられている。温度制御部は、冷却機構4に内蔵されている温度センサ、冷却面の表面温度または冷気の温度を直接測定する接触式の温度センサ、または、赤外線サーモグラフィなどの非接触式温度センサと電気的に接続されて、温度センサの測定温度が設定温度に近づくように冷却機構4をフィードバック制御する。
【0029】
チップを効率よく冷却するために、冷却機構4は、加熱機構3より下方に配置されていることが好ましい。この配置の場合、加熱機構3からの熱が、冷却機構4に伝わり難くすることができる。
【0030】
支持機構2は、粘着シートを支持する。支持機構2は、真空吸引方式、静電吸着方式、粘着方式、または、機械方式のいずれかの方式で、粘着シートの裏面側を支持する。本実施形態においては、支持機構2は、加熱機構3の周囲に配置され、上下方向に移動可能に設けられている。なお、支持機構2が設けられていない場合は、複数のチップを粘着保持した粘着シートは、加熱機構3と冷却機構4とに挟持されて支持される。
【0031】
加振機構5は、加熱機構3と接しており、加熱機構3を振動させる。加振機構5は、発振可能な圧電素子を有している。本実施形態においては、加振機構5は、加熱機構3上に配置されている。
【0032】
エアブロワ6は、加熱機構3と冷却機構4との間の領域に側方からエアを吹き付けることができる。エアブロワ6は、後述するように複数のチップを回収するために滑落させる際の滑落方向の上流側に配置される。
【0033】
揺動機構7は、加熱機構3および冷却機構4のうちの少なくとも下方に位置する方を傾斜可能に構成されている。本実施形態においては、冷却機構4に揺動機構7が設けられている。揺動機構7は、回動軸を中心にして、冷却機構4を水平位置と傾斜位置との間で揺動可能に構成されている。揺動機構7が、加熱機構3および冷却機構4の各々に設けられていてもよいし、加熱機構3が冷却機構4より下方に配置されている場合は、揺動機構7が加熱機構3に設けられていてもよい。
【0034】
ここで、電子部品の製造装置1の動作について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の支持機構を、複数のチップを粘着保持した粘着シートに接近させている状態を示す断面図である。図3に示すように、粘着シート20の表面に粘着保持された複数のチップ10がテーブル9上に載置された状態で、粘着シート20の裏面に対して支持機構2が接近するように、加熱機構3、支持機構2および加振機構5と、テーブル9とが相対的に移動する。すなわち、加熱機構3、支持機構2および加振機構5が下降してもよいし、テーブル9が上昇してもよい。このとき、支持機構2の下端は、加熱機構3の加熱面より下方に位置している。支持機構2は、粘着シート20において、複数のチップ10を粘着保持している領域の外側の領域を支持することが好ましい。
【0035】
図4は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の支持機構が粘着シートの裏面に接した状態を示す断面図である。図4に示すように、支持機構2の下端が粘着シート20の裏面に接して粘着シート20を支持する。支持機構2が粘着シート20を支持した状態で、加熱機構3、支持機構2および加振機構5と、テーブル9とが相対的に離れることにより、粘着シート20がテーブル9から持ち上げられて移動させられる。すなわち、加熱機構3、支持機構2および加振機構5が上昇してもよいし、テーブル9が下降してもよい。このとき、加熱機構3は、粘着シート20と接していないため、加熱機構3による加熱が開始されていても開始されていなくてもよい。なお、支持機構2の下端が加熱機構3の加熱面と面一で位置した状態で支持機構2が粘着シート20を支持する場合は、この支持するタイミングでは、加熱機構3による加熱は開始されていない。
【0036】
図5は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置において、粘着シートに粘着保持されているチップが冷却機構に接するように粘着シートが移動させられた状態を示す断面図である。図5に示すように、粘着シート20に粘着保持されているチップ10が冷却機構4の冷却面に接するように、加熱機構3、支持機構2および加振機構5と、冷却機構4とが相対的に移動する。すなわち、加熱機構3、支持機構2および加振機構5が下降してもよいし、冷却機構4が上昇してもよい。
【0037】
図6は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置において、加熱機構が粘着シートの裏面に接した状態を示す断面図である。図6に示すように、粘着シート20の裏面が加熱機構3の加熱面に接するように、加熱機構3および加振機構5と、冷却機構4とが相対的に移動する。すなわち、加熱機構3および加振機構5が下降してもよいし、冷却機構4および支持機構2が上昇してもよい。
【0038】
その結果、加熱機構3は、複数の電子部品の材料である複数のチップ10が各々に接して配置された状態で表面に粘着保持される粘着シート20の裏面側に配置された状態になる。複数のチップ10は、誘電体ブロックが切断されて露出した切断面同士が互いに対向しつつ接した状態で、粘着シート20に保持されている。加熱機構3は、粘着シート20が粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に、支持機構2に支持されている粘着シート20を加熱可能である。
【0039】
冷却機構4は、粘着シート20に粘着保持されている複数のチップ10の各々に接した状態で複数のチップ10を冷却する。冷却機構4は、粘着シート20に粘着保持されている複数のチップ10の各々の平均温度を複数のチップ10の含有材料のガラス転移温度であるTg未満に冷却可能である。ここで、複数のチップ10の各々の平均温度とは、各チップ10の積層方向の両側の温度の平均値である。チップ10の含有材料のガラス転移温度Tgは、チップ10が複数種類のバインダなどを含む場合は、全バインダにおける各バインダの重量割合とガラス転移温度Tgとを積算して算出される加重平均値とする。
【0040】
図1に示す工程S8では、加熱機構3によって粘着シート20が粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に粘着シート20を加熱しつつ、冷却機構4によって粘着シート20に粘着保持されている複数のチップ10の各々の平均温度を複数のチップ10の含有材料のガラス転移温度であるTg未満に冷却する。
【0041】
加熱機構3の加熱面における温度をThとし、冷却機構4における冷却面における温度をTcとし、粘着シート20が粘着保持力を喪失する温度をTsとし、複数のチップの含有材料のガラス転移温度をTgとすると、Tc<Tg<Ts<Thの関係を満たす。これにより、粘着シート20を加熱して粘着保持力を喪失させつつ、加熱された複数のチップ10の切断面からバインダが溶け出すことを抑制することができるため、近接しているチップ10同士がくっついてしまうことを抑制しつつ、粘着シート20から複数のチップ10を脱離させる(図1に示す工程S8)ことができる。
【0042】
後述する実験例に記載のとおり、(Th+Tc)/2の値と温度Tgとの差が大きいほど、近接しているチップ10同士がくっつくことを抑制することができる。
【0043】
図7は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置において、粘着シートから複数のチップを脱離させて回収している状態を示す断面図である。図7に示すように、加熱機構3と冷却機構4とが離間するように、加熱機構3、支持機構2および加振機構5と、冷却機構4とが相対的に移動する。すなわち、加熱機構3、支持機構2および加振機構5が上昇してもよいし、冷却機構4が加熱してもよい。粘着シート20から脱離しているチップ10は、冷却機構4に支持される。
【0044】
このとき、加振機構5を作動させて、粘着シート20に接した状態の加熱機構3を振動させることにより、粘着保持力を喪失した粘着シート20から複数のチップ10を脱離させてもよい。これにより、粘着シート20から複数のチップ10を脱離させやすくすることができる。
【0045】
また、揺動機構7を作動させて、図7に示すように冷却機構4を傾斜させることにより、粘着シート20から脱離した複数のチップ10を滑落させて箱10内に投入して回収してもよい。このとき、図7の矢印Aに示すように揺動機構7を繰り返し作動させて、冷却機構4を振動させることにより、複数のチップ10の滑落を促進してもよい。なお、図7においては、冷却機構4と同様に、加熱機構3も傾斜させた状態を示しているが、冷却機構4と加熱機構3との離間距離が大きい場合は、冷却機構4のみ傾斜させてもよい。
【0046】
さらに、エアブロワ6を作動させて、加熱機構3と冷却機構4との間の領域に側方からエアを吹き付けることにより、複数のチップ10を吹き飛ばして箱10内に回収してもよい。
【0047】
図1に示すように、次に、チップの焼成が行なわれる(工程S11)。具体的には、チップが加熱され、これによりチップに含まれる誘電体材料および導電性材料が焼成され、積層体が形成される。焼成温度は、誘電体材料および導電性材料に対応して適宜設定される。
【0048】
次に、外部電極が形成される(工程S12)。たとえば、積層体における両端面に塗布された導電ペーストが焼成されることで下地電極層が形成され、下地電極層にNiめっきおよびSnめっきがこの順に施されてめっき層が形成されることにより、積層体の外表面上に、外部電極が形成される。
【0049】
上述した一連の工程を経ることにより、積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【0050】
(実験例)
以下、冷却機構の冷却によるチップ同士のくっつき抑制効果を検証した実験例1について説明する。
【0051】
まず、バインダとしてポリビニルブチラール(PVB)を含有するセラミック誘電体シートを準備し、当該セラミック誘電体シート上に所定の内部電極パターンが設けられたマザーシートを形成した。内部電極パターンを有するマザーシートを100枚~600枚の範囲内で積層して、積層方向の厚み寸法(T寸法)が、0.11mm、0.25mm、0.33mm、0.42mm、0.74mm、1.25mm、2.00mm、2.76mmである、8種類の誘電体ブロックを形成した。8種類の誘電体ブロックの、長さ方向の寸法(L寸法)および幅方向の寸法(W寸法)の各々は、200mmとした。
【0052】
次に、発泡温度が110℃である粘着シートに、誘電体ブロックを貼り付けた。粘着シートに貼り付けた誘電体ブロックを90℃に加熱しつつ誘電体ブロックを分断した。8種類の誘電体ブロックが分断されて形成されたチップのL寸法は、T寸法について記載した上記の順に、0.25mm、0.4mm、0.6mm、1.0mm、1.6mm、2.0mm、3.2mm、3.2mmとした。すなわち、称呼サイズとして、0201サイズ、0402サイズ、0603サイズ、1005サイズ、1608サイズ、2012サイズ、3216サイズ、および、3225サイズの、8種類のチップを形成した。
【0053】
次に、チップを粘着シートから脱離させた。具体的には、加熱機構3として、定格容量が50Wのカートリッジヒータおよび温度センサを内蔵した加熱板を用いた。加熱面の温度が120℃となるように、加熱機構3を設定した。
【0054】
比較例として、冷却機構4を用いないでチップを粘着シートから脱離させる際は、複数のチップを粘着保持した粘着シートの裏面に加熱面を接触させて、粘着シートを120℃まで加熱した。加熱されて粘着保持力を喪失した粘着シートから脱離したチップを回収した。
【0055】
実施例として、冷却機構4を用いてチップを粘着シートから脱離させる際は、複数のチップを粘着保持した粘着シートの裏面に加熱面を接触させて、粘着シートを120℃まで加熱しつつ、温度が10℃になっている冷却機構4の冷却面を複数のチップの各々に接触させた状態で、30秒間保持した。その後、冷却機構4を傾斜させて、加熱されて粘着保持力を喪失した粘着シートから脱離したチップを回収した。冷却機構4としては、最大吸熱量が140W、最大電流値が7.5Aのペルチェ素子の冷却面を用いた。
【0056】
比較例および実施例の各々において、回収したチップの総重量を測定した。その後、回収したチップを、チップの各サイズのT寸法およびW寸法より少し大きい開口面積を有するふるいにかけて、くっついているチップを選り分けて、ふるいを通過したくっついていないチップの総重量を測定した。
【0057】
ここで、くっついているチップの総重量/回収したチップの総重量×100=くっつき率(%)と定義し、比較例および実施例についてチップのサイズ毎にくっつき率を算出した。また、実施例におけるくっつき抑制効果を示す指標として、(実施例におけるくっつき率-比較例におけるくっつき率)/比較例におけるくっつき率×100=くっつき抑制率(%)と定義した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1は、比較例および実施例についてチップのサイズ毎に算出したくっつき率およびくっつき抑制率をまとめたものである。表1に示すように、0402サイズ~3216サイズでは、-7%以上のくっつき抑制率が認められた。0201サイズは、チップのT寸法が小さいため、加熱面の温度と冷却面の温度との平均値がチップの平均温度となる、チップ内の積層方向における温度勾配が形成されず、チップの平均温度が加熱面の温度と同等になったため、くっつき抑制率が低くなった。一方、3225サイズは、チップのT寸法が大きいため、冷却面からの冷却効果がチップの積層方向における中央部まで及ばなかったため、くっつき抑制率が低くなった。すなわち、冷却面からの冷却によって、チップ内の積層方向における中央部の温度であるチップの平均温度を低下させることができた0402サイズ~3216サイズでは、くっつき抑制率を-7%以上確保できることが確認できた。
【0060】
次に、チップの平均温度およびバインダのガラス転移温度Tgと、くっつく抑制率との関係を検証した実験例2について説明する。下記の表2に示すガラス転移温度Tgを有するバインダを含有する1608サイズのチップを準備し、実験例1の実施例と同様に、冷却機構4を用いてチップを粘着シートから脱離させて、くっつき抑制率を算出した。加熱面および冷却面の各々の温度は、表2に示す温度にそれぞれ設定した。加熱面の温度は、粘着シートが粘着保持力を喪失する温度に設定した。
【0061】
【表2】
【0062】
表2に示すように、チップ内の積層方向における中央部の温度であるチップの平均温度をバインダのガラス転移温度Tgより低くすることにより、くっつき抑制率を-7%以上確保できることが確認できた。バインダのガラス転移温度Tgに対してチップの平均温度が低くなるほど、くっつき抑制率を向上できる傾向が認められた。
【0063】
上記の実験例から、粘着シート20が粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に粘着シート20を加熱しつつ、粘着シート20に粘着保持されている複数のチップ10の各々の平均温度を複数のチップ10の含有材料のガラス転移温度であるTg未満に冷却することにより、粘着シート20の粘着保持力を喪失させる加熱によってチップ10同士がくっついてしまうことを抑制できることが確認できた。
【0064】
すなわち、加熱機構3が、粘着シート20が粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に粘着シート20を加熱可能であり、冷却機構4が、粘着シート20に粘着保持されている複数のチップ10の各々の平均温度を複数のチップ10の含有材料のガラス転移温度であるTg未満に冷却可能であることにより、粘着シート20の粘着保持力を喪失させる加熱によってチップ10同士がくっついてしまうことを抑制することができる。
【0065】
本実施形態に係る電子部品の製造装置においては、冷却機構4は、粘着シート20に粘着保持されている複数のチップ10の各々に接した状態で複数のチップ10を冷却する。これにより、複数のチップを均等に冷却することができる。
【0066】
本実施形態に係る電子部品の製造装置は、粘着シート20を支持する支持機構2をさらに備える。加熱機構3は、粘着シート20が粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に、支持機構2に支持されている粘着シート20を加熱可能である。これにより、複数のチップ10が粘着保持された粘着シート20を、加熱機構3と冷却機構4との間で位置精度よく挟持することができる。その結果、くっつき抑制率のばらつきを低減して、安定してチップ10同士のくっつきを抑制することができる。
【0067】
本実施形態に係る電子部品の製造装置は、粘着シート20に接した状態の加熱機構3を振動させることにより、粘着保持力を喪失した粘着シート20から複数のチップ10を脱離させる加振機構5をさらに備える。これにより、粘着保持力を喪失した粘着シート20から複数のチップ10を確実に脱離させることができる。
【0068】
本実施形態に係る電子部品の製造装置は、加熱機構3と冷却機構4との間の領域に側方からエアを吹き付けるエアブロワ6をさらに備える。これにより、粘着保持力を喪失した粘着シート20から脱離した複数のチップ10を容易に回収することができる。
【0069】
本実施形態に係る電子部品の製造装置は、加熱機構3および冷却機構4のうちの少なくとも下方に位置する方を傾斜させることにより、粘着保持力を喪失した粘着シート20から脱離した複数のチップ10を滑落させる揺動機構をさらに備える。これにより、粘着保持力を喪失した粘着シート20から脱離した複数のチップ10を容易に回収することができるとともに、粘着シート20から脱離した後にチップ10同士がくっつくことを抑制することができる。
【0070】
本実施形態に係る電子部品の製造装置においては、加熱機構3は、ペルチェ素子の加熱面であり、冷却機構4は、ペルチェ素子の冷却面であってもよい。この場合、加熱機構3と冷却機構4とを簡易に構成することができる。
【0071】
以下、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の変形例について説明する。以下の変形例に係る電子部品の製造装置の説明においては、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置1と異なる点について説明し、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置1と同様の構成については同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0072】
図8は、本発明の一実施形態の第1変形例に係る電子部品の製造装置の構成を示す断面図である。図8に示すように、第1変形例に係る電子部品の製造装置1aにおいては、冷却機構4aを備えている。冷却機構4aは、複数のチップ10にエアを吹き付けて複数のチップ10を冷却する。これにより、粘着保持力を喪失した粘着シート20から互いにくっつくことを抑制しつつ複数のチップ10を脱離させることができるとともに、粘着シート20から脱離した後にチップ10同士がくっつくことを抑制することができる。
【0073】
図9は、本発明の一実施形態の第2変形例に係る電子部品の製造装置の構成を示す断面図である。図9に示すように、第2変形例に係る電子部品の製造装置1bにおいては、冷却機構4が加熱機構3の上方に位置している。第2変形例においては、粘着保持力を喪失した粘着シート20から脱離した複数のチップ10が加熱機構3上に位置するため、加熱機構3を傾斜させた状態で加振機構5を作動ることにより、粘着保持力を喪失した粘着シート20から脱離した複数のチップ10を容易に回収することができるとともに、粘着シート20から脱離した後にチップ10同士がくっつくことを抑制することができる。
【0074】
図10は、本発明の一実施形態の第3変形例に係る電子部品の製造装置の構成を示す断面図である。図10に示すように、第3変形例に係る電子部品の製造装置1cにおいては、円筒形の加熱面を有する加熱機構3cと、この加熱面と対向する円筒形の冷却面を有する冷却機構4cと、加熱機構3cの加熱面上に位置する支持機構2cとを備えている。すなわち、第3変形例においては、加熱機構3cの粘着シート20と面する面が曲面である。これにより、粘着シート20に粘着保持されているチップ10同士の近接距離を広くすることができるため、粘着保持力を喪失した粘着シート20から互いにくっつくことを抑制しつつ複数のチップ10を脱離させることができる。
【0075】
図11は、本発明の一実施形態の第4変形例に係る電子部品の製造装置の構成を示す断面図である。図11に示すように、第4変形例に係る電子部品の製造装置1dにおいては、冷却機構は、ペルチェ素子40の冷却面44である。ペルチェ素子40の加熱面43側にはファン50が設けられている。これにより、加熱面43の熱を効率よく排出することができ、冷却面44によって複数のチップ10を効果的に冷却することができる。ファン50と面している加熱面43に凹凸が形成されていることによっても、加熱面43の熱を外気に効率よく排出することができる。
【0076】
図12は、本発明の一実施形態の第5変形例に係る電子部品の製造装置の構成を示す断面図である。図12に示すように、第5変形例に係る電子部品の製造装置1eにおいては、加熱機構と冷却機構とが交互に複数配置されている。具体的には、複数のペルチェ素子40が積み重ねられており、下方に位置するペルチェ素子40の冷却面44と上方に位置するペルチェ素子40の加熱面43とが対向するように、冷却面44と加熱面43とが交互に配置されている。これにより、電子部品の製造装置1eの占有面積当たりの電子部品の生産性を向上することができる。
【0077】
(付記)
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解され、支持機構2と、加振機構5と、エアブロワ6と、揺動機構7を種々の変形例に組み合わせてもよい。
【0078】
<1>
複数の電子部品の材料である複数のチップが各々に接して配置された状態で表面に粘着保持される粘着シートの裏面側に配置された加熱機構と、
前記粘着シートの表面側に配置された冷却機構とを備え、
前記加熱機構は、前記粘着シートが粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に前記粘着シートを加熱可能であり、
前記冷却機構は、前記粘着シートに粘着保持されている前記複数のチップの各々の平均温度を前記複数のチップの含有材料のガラス転移温度であるTg未満に冷却可能である、電子部品の製造装置。
【0079】
<2>
前記冷却機構は、前記粘着シートに粘着保持されている前記複数のチップの各々に接した状態で前記複数のチップを冷却する、<1>に記載の電子部品の製造装置。
【0080】
<3>
前記冷却機構は、前記複数のチップにエアを吹き付けて前記複数のチップを冷却する、<1>に記載の電子部品の製造装置。
【0081】
<4>
前記粘着シートを支持する支持機構をさらに備え、
前記加熱機構は、前記粘着シートが粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に、前記支持機構に支持されている前記粘着シートを加熱可能である、<1>から<3>のいずれか1つに記載の電子部品の製造装置。
【0082】
<5>
前記粘着シートに接した状態の前記加熱機構を振動させることにより、粘着保持力を喪失した前記粘着シートから前記複数のチップを脱離させる加振機構をさらに備える、<1>から<4>のいずれか1つに記載の電子部品の製造装置。
【0083】
<6>
前記加熱機構と前記冷却機構との間の領域に側方からエアを吹き付けるエアブロワをさらに備える、<1>から<5>のいずれか1つに記載の電子部品の製造装置。
【0084】
<7>
前記加熱機構および前記冷却機構のうちの少なくとも下方に位置する方を傾斜させることにより、粘着保持力を喪失した前記粘着シートから脱離した前記複数のチップを滑落させる揺動機構をさらに備える、<1>から<6>のいずれか1つに記載の電子部品の製造装置。
【0085】
<8>
前記加熱機構と前記冷却機構とが交互に複数配置されている、<1>から<7>のいずれか1つに記載の電子部品の製造装置。
【0086】
<9>
前記加熱機構は、ペルチェ素子の加熱面であり、
前記冷却機構は、前記ペルチェ素子の冷却面である、<1>から<8>のいずれか1つに記載の電子部品の製造装置。
【0087】
<10>
前記加熱機構の前記粘着シートと面する面が曲面である、<1>から<9>のいずれか1つに記載の電子部品の製造装置。
【0088】
<11>
複数の電子部品の材料である複数のチップが各々に接して配置された状態で表面に粘着保持された粘着シートを準備する工程と、
前記粘着シートが粘着保持力を喪失する温度であるTs以上に前記粘着シートを加熱しつつ、前記粘着シートに粘着保持されている前記複数のチップの各々の平均温度を前記複数のチップの含有材料のガラス転移温度であるTg未満に冷却する工程とを備える、電子部品の製造方法。
【0089】
上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【0090】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1,1a,1b,1c,1d,1e 製造装置、2,2c 支持機構、3,3c 加熱機構、4,4a,4c 冷却機構、5 加振機構、6 エアブロワ、7 揺動機構、9 テーブル、10 チップ、20 粘着シート、40 ペルチェ素子、43 加熱面、44 冷却面、50 ファン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12