(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025085187
(43)【公開日】2025-06-05
(54)【発明の名称】格納容器ベント方法
(51)【国際特許分類】
G21C 9/004 20060101AFI20250529BHJP
G21C 13/00 20060101ALI20250529BHJP
【FI】
G21C9/004
G21C13/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023198894
(22)【出願日】2023-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 隆久
(72)【発明者】
【氏名】池側 智彦
(72)【発明者】
【氏名】木藤 和明
(72)【発明者】
【氏名】廣川 直機
(72)【発明者】
【氏名】染谷 崇之
【テーマコード(参考)】
2G002
【Fターム(参考)】
2G002CA01
2G002DA01
2G002EA01
(57)【要約】
【課題】膜フィルタの耐久性の向上を図りながら、外部へ漏洩する希ガスの漏洩量を低減できる、希ガスを透過しないフィルタを用いた格納容器ベント方法を提供する。
【解決手段】原子炉格納容器の内部の気体を外部に排出し、原子炉格納容器を減圧するための原子炉格納容器ベントシステムにおいてベントを行う方法を、原子炉格納容器のベントラインに、放射性希ガスの透過係数よりも水蒸気の透過係数が大きい膜を有し、ベントラインを通るガスが膜により水蒸気と放射性希ガスが分離される構造を設け、この構造を、原子炉格納容器の圧力に応じて、一定以上の圧力で動作し、一定以下の圧力で停止するように構成して、格納容器ベントを間欠的に行う構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器の内部の気体を外部に排出し、前記原子炉格納容器を減圧するための原子炉格納容器ベントシステムにおいてベントを行う、格納容器ベント方法であって、
前記原子炉格納容器のベントラインに、放射性希ガスの透過係数よりも水蒸気の透過係数が大きい膜を有し、前記ベントラインを通るガスが前記膜により水蒸気と放射性希ガスが分離される構造を設け、
前記構造を、前記原子炉格納容器の圧力に応じて、一定以上の圧力で動作し、一定以下の圧力で停止するように構成して、格納容器ベントを間欠的に行う
ことを特徴とする格納容器ベント方法。
【請求項2】
請求項1に記載の格納容器ベント方法において、前記原子炉格納容器からの出口部にある弁を、前記原子炉格納容器の圧力が一定以上になった場合に開き、前記原子炉格納容器の圧力が一定以下になった場合に閉じることにより、前記格納容器ベントを間欠的に行うことを特徴とする格納容器ベント方法。
【請求項3】
請求項1に記載の格納容器ベント方法において、前記原子炉格納容器からの出口部にある弁以降、かつ前記の膜よりも上流部に、開閉可能な弁を備え、前記開閉可能な弁を前記原子炉格納容器の圧力が一定以上になった場合に開き、前記原子炉格納容器の圧力が一定以下になった場合に閉じることにより、前記格納容器ベントを間欠的に行うことを特徴とする格納容器ベント方法。
【請求項4】
請求項1に記載の格納容器ベント方法において、前記原子炉格納容器の圧力が一定以上になった場合に受動的に弁が開き、前記原子炉格納容器の圧力が一定以下になった場合に受動的に弁が閉じる構成の弁を備えることによって、前記格納容器ベントを間欠的に行うことを特徴とする格納容器ベント方法。
【請求項5】
請求項1に記載の格納容器ベント方法において、前記膜を透過しない非透過ガスを掃気する掃気機構を設け、前記掃気機構を、前記原子炉格納容器の圧力が一定以上になった場合に動作させ、前記原子炉格納容器の圧力が一定以下になった場合に停止させることによって、前記格納容器ベントを間欠的に行うことを特徴とする格納容器ベント方法。
【請求項6】
請求項1に記載の格納容器ベント方法において、前記原子炉格納容器の圧力によって開閉する弁、もしくは、前記原子炉格納容器の圧力によって動作の開始と停止を行う掃気機構のうちいずれか一つ、もしくは、それらの組み合わせの機構を設けることによって、前記格納容器ベントを間欠的に行うことを特徴とする格納容器ベント方法。
【請求項7】
請求項1に記載の格納容器ベント方法において、前記膜が、放射性希ガスと窒素を透過せず、水素と水蒸気を透過する構成であることを特徴とする格納容器ベント方法。
【請求項8】
請求項1に記載の格納容器ベント方法において、前記膜のフィルタ材が、高分子膜、もしくはセラミック膜、もしくは酸化グラフェン膜であることを特徴とする格納容器ベント方法。
【請求項9】
請求項1に記載の格納容器ベント方法において、沸騰水型原子炉に前記原子炉格納容器ベントシステムを備え、前記原子炉格納容器ベントシステムを、前記原子炉格納容器の圧力に応じて、一定圧力で動作させ、一定以上で停止させることにより、前記格納容器ベントを間欠的に行うことを特徴とする格納容器ベント方法。
【請求項10】
請求項1に記載の格納容器ベント方法において、加圧水型原子炉に前記原子炉格納容器ベントシステムを備え、前記原子炉格納容器ベントシステムを、前記原子炉格納容器の圧力に応じて、一定圧力で動作させ、一定以上で停止させることにより、前記格納容器ベントを間欠的に行うことを特徴とする格納容器ベント方法。
【請求項11】
請求項1に記載の格納容器ベント方法において、重水炉、黒鉛炉、ガス炉、高温ガス炉、超臨界圧軽水冷却炉、溶融塩炉、ガス冷却高速炉、ナトリウム冷却高速炉、鉛冷却高速炉、のいずれかに前記原子炉格納容器ベントシステムを備え、前記原子炉格納容器ベントシステムを、前記原子炉格納容器の圧力に応じて、一定圧力で動作させ、一定以上で停止させることにより、前記格納容器ベントを間欠的に行うことを特徴とする格納容器ベント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラントに用いられる原子炉格納容器ベントシステムを用いた格納容器ベント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントに備えられた原子炉格納容器の機能の一つに、原子炉圧力容器内に配置された炉心が万が一溶融するような事態(以下、「過酷事故」と呼ぶ)が発生し、放射性物質が原子炉圧力容器外に放出されても、放射性物質を原子炉格納容器内に閉じ込めて外部への漏出を防ぐことがある。
【0003】
過酷事故が発生した場合においても、その後に十分な注水が行われ、かつ原子炉格納容器が冷却されれば、事故は収束する。
しかし、万が一蒸気の生成が継続し、原子炉格納容器の冷却が不十分な場合、原子炉格納容器が加圧される。
原子炉格納容器が加圧された場合は、原子炉格納容器内の気体を大気中に放出し、原子炉格納容器を減圧する場合がある。この操作を、格納容器ベントと呼ぶ。
【0004】
沸騰水型原子炉では、ベント操作を行った場合でも公衆の被ばくが最小限となるように、原子炉格納容器ベントシステムを備える。
【0005】
沸騰水型原子炉では、まず、原子炉格納容器内のサプレッションプールのプール水によるスクラビングで、大部分の放射性物質を除去する。そして、原子炉格納容器内の気体(以下、「ベントガス」と呼ぶ)を原子炉格納容器外に設けたタンク内の薬液中に放出しスクラビングすることで、粒子状放射性物質や無機ヨウ素、セシウムを除去する。
次に、金属フィルタで、スクラビングで除去しきれなかった粒子状放射性物質を除去する。
最後に、ヨウ素フィルタで化学反応および吸着によって、有機ヨウ素などのガス状放射性物質が除去し、ベントガスを大気中に放出する。
【0006】
しかし、化学反応性の無い放射性希ガスは、上述した手法では取り除くことが困難である。
そこで、特許文献1に記載の原子炉格納容器ベントシステムでは、水蒸気を透過して、希ガスを透過しない膜フィルタを用いることで、上記の原子炉格納容器ベントシステムでは除去しきれない放射性希ガスを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
膜フィルタによる放射性希ガスの除去までを目的とした原子炉格納容器ベントシステムは、特許文献1のようにベントガスが通過する流路上に、水蒸気および水素を透過し希ガスを透過しない膜フィルタを設置することで、放射性希ガスを除去する。
【0009】
事故時に格納容器内の雰囲気に含まれるエアロゾルやヨウ素は、膜フィルタに付着した場合に膜フィルタ性能が低下する可能性があるため、これらはできる限り取り除く必要がある。また、膜フィルタへ流入するガスの温度、圧力が高い方が膜フィルタへの負荷は高くなるため、これら温度、圧力をできる限り低減することで、膜フィルタの寿命をより長くすることができる。
【0010】
現行の沸騰水型原子力発電プラントには、フィルタベント装置が既に備わっており、フィルタベント装置を通った後のベントガスは、放射性希ガスが含まれるものの、圧力も温度も低下している。このため、膜フィルタが、このフィルタベント装置の後流部に配置されることで、膜フィルタへ掛かる負荷を低減できる。
【0011】
膜フィルタに対する希ガスの透過率は非常に低いため、希ガスは外部へはほとんど流出しない。しかし、希ガスは、膜フィルタに対する透過率、膜面積、格納容器内の希ガスの分圧に比例して一定量透過するため、できる限り希ガスの被ばくを防止するためには、より希ガスの外部への漏出量を低減できるベント方法で、格納容器ベントを実施する必要がある。
【0012】
しかし、一般的なベントでは、ある一定以上に格納容器内の圧力が上昇した場合にベント装置を起動し、その後は事故が収束するまでガスを排出するラインは開放した状態を維持する運用となっており、希ガスの放出量の低減を目的としたベント方法ではない。
【0013】
膜フィルタは、ほぼ希ガスを透過しないため、希ガスと水蒸気の混合ガスが膜フィルタ部に流入した場合は、ほぼ透過しない希ガスが滞留し、外部への水蒸気の放出を阻害する。
特許文献1では、水蒸気の放出が阻害されて格納容器の圧力が上がると、逃し弁が開くことで滞留した希ガスを逃がし、再度水蒸気が膜フィルタを透過するようにしている。
しかし、特許文献1の構造では、膜フィルタ自体は格納容器内に設置する必要があり、フィルタベント装置の後流部において膜フィルタへの負荷を低減することは難しいため、耐久性の高い膜の採用などが必要となる。
【0014】
膜フィルタには、水蒸気を主成分とするベントガスが流入し、その膜特性を利用して水蒸気と水素を優先的に透過させて外部へ放出する。格納容器を減圧するには、大量の水蒸気を放出する必要があり、その水蒸気放出量に見合った膜フィルタ物量(膜面積)が必要となる。
一方で。外部へ漏洩する放射性希ガスの量も膜面積に比例するため、膜面積を増やすと外部への放射性希ガスの漏洩量も増加する。
また、高温の水蒸気を通気することになるため、通気時間に応じて膜フィルタが劣化することから、膜の耐性によっては、膜フィルタの劣化に備えた機構(例えば一定時間の通気ごとに膜フィルタを切り替える)が必要となる可能性もある。
【0015】
そこで本発明は、上記の課題を考慮し、膜フィルタの耐久性の向上を図りながら、外部へ漏洩する希ガスの漏洩量を低減できる、希ガスを透過しないフィルタを用いた格納容器ベント方法を提供する。
【0016】
また、本発明の上記の目的およびその他の目的と本発明の新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の格納容器ベント方法は、原子炉格納容器の内部の気体を外部に排出し、原子炉格納容器を減圧するための原子炉格納容器ベントシステムにおいてベントを行う方法であって、原子炉格納容器のベントラインに、放射性希ガスの透過係数よりも水蒸気の透過係数が大きい膜を有し、ベントラインを通るガスが膜により水蒸気と放射性希ガスが分離される構造を設ける。
そして、本発明の格納容器ベント方法は、この構造を、原子炉格納容器の圧力に応じて、一定以上の圧力で動作し、一定以下の圧力で停止するように構成して、格納容器ベントを間欠的に行う。
【発明の効果】
【0018】
本発明の格納容器ベント方法によれば、放射性希ガスの透過係数よりも水蒸気の透過係数が大きい膜を有し、ベントラインを通るガスが膜により水蒸気と放射性希ガスが分離される構造を設けたので、膜によって、放射性希ガスの外部への漏洩量を低減することができる。
また、本発明によれば、上記の構造を、原子炉格納容器の圧力に応じて、一定以上の圧力で動作し、一定以下の圧力で停止するように構成して、格納容器ベントを間欠的に行うので、従来の格納容器ベントを連続して行っていた場合と比較して、膜の耐久性を向上することができる。
従って、原子炉圧力容器から原子炉格納容器内に放射性物質を含む気体が流出し、原子炉格納容器が加圧される事態が万一発生した場合においても、原子炉格納容器の加圧を防止すると共に、外部に放射性物質が漏洩することを防止することができる。
【0019】
なお、上述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1の格納容器ベント方法を実施するための原子炉格納容器および原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。
【
図2】希ガスフィルタを備えた場合と備えなかった場合の、本発明のベント方法を行ったときにおける、プラントの圧力の挙動の評価例を示す図である。
【
図3】希ガスフィルタを備えた場合と備えなかった場合の、一般的なベント方法と本発明のベント方法によって、外部へ漏洩する放射性希ガスの放出割合を比較した図である。
【
図4】実施例2の格納容器ベント方法を実施するための原子炉格納容器および原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。
【
図5】実施例3の格納容器ベント方法を実施するための原子炉格納容器および原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。
【
図6】実施例4の格納容器ベント方法を実施するための原子炉格納容器および原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。
【
図7】実施例5の格納容器ベント方法を実施するための原子炉格納容器および原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。
【
図8】実施例6の格納容器ベント方法を実施するための原子炉格納容器および原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。
【
図9】実施例7の格納容器ベント方法を実施するための原子炉格納容器および原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態および実施例について、文章もしくは図面を用いて説明する。ただし、本発明に示す構造、材料、その他具体的な各種の構成等は、ここで取り上げた実施の形態や実施例に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
本発明の格納容器ベント方法は、原子炉格納容器の内部の気体を外部に排出し、原子炉格納容器を減圧するための原子炉格納容器ベントシステムにおいてベントを行う方法である。
本発明の格納容器ベント方法は、原子炉格納容器のベントラインに、放射性希ガスの透過係数よりも水蒸気の透過係数が大きい膜を有し、ベントラインを通るガスが膜により水蒸気と放射性希ガスが分離される構造を設ける。
そして、本発明の格納容器ベント方法は、この構造を、原子炉格納容器の圧力に応じて、一定以上の圧力で動作し、一定以下の圧力で停止するように構成して、格納容器ベントを間欠的に行う。
【0023】
本発明の格納容器ベント方法によれば、放射性希ガスの透過係数よりも水蒸気の透過係数が大きい膜を有し、ベントラインを通るガスが膜により水蒸気と放射性希ガスが分離される構造を設けたので、膜によって、放射性希ガスの外部への漏洩量を低減することができる。
また、上記の構造を、原子炉格納容器の圧力に応じて、一定以上の圧力で動作し、一定以下の圧力で停止するように構成して、格納容器ベントを間欠的に行うので、従来の格納容器ベントを連続して行っていた場合と比較して、膜の耐久性を向上することができる。
従って、原子炉圧力容器から原子炉格納容器内に放射性物質を含む気体が流出し、原子炉格納容器が加圧される事態が万一発生した場合においても、原子炉格納容器の加圧を防止すると共に、外部に放射性物質が漏洩することを防止することができる。
【0024】
上記の格納容器ベント方法において、原子炉格納容器からの出口部にある弁を、原子炉格納容器の圧力が一定以上になった場合に開き、原子炉格納容器の圧力が一定以下になった場合に閉じることにより、格納容器ベントを間欠的に行う構成とすることができる。
この構成では、従来から原子炉プラントに設置されている、原子炉格納容器からの出口部にある弁を利用して、格納容器ベントを間欠的に行うことができる。これにより、格納容器ベントを間欠的に行うための弁などを追加する必要がない。
【0025】
上記の格納容器ベント方法において、原子炉格納容器からの出口部にある弁以降、かつ膜よりも上流部に、開閉可能な弁を備え、開閉可能な弁を原子炉格納容器の圧力が一定以上になった場合に開き、原子炉格納容器の圧力が一定以下になった場合に閉じることにより、格納容器ベントを間欠的に行う構成とすることができる。
この構成では、格納容器ベントを間欠的に行うための弁を追加するが、原子炉格納容器からの出口部にある弁(隔離弁)の機能は維持することができ、既存の隔離弁への改造を行う必要がない。
【0026】
上記の格納容器ベント方法において、原子炉格納容器の圧力が一定以上になった場合に受動的に弁が開き、原子炉格納容器の圧力が一定以下になった場合に受動的に弁が閉じる構成の弁を備えることによって、格納容器ベントを間欠的に行う構成とすることができる。
この構成としたときには、原子炉格納容器の圧力に対応して受動的に開閉する弁を使用して格納容器ベントを間欠的に行うので、原子炉格納容器の圧力を検知する機構や弁を開閉する機構を省略することができる。
【0027】
上記の格納容器ベント方法において、膜を透過しない非透過ガスを掃気する掃気機構を設け、掃気機構を、原子炉格納容器の圧力が一定以上になった場合に動作させ、原子炉格納容器の圧力が一定以下になった場合に停止させることによって、格納容器ベントを間欠的に行う構成とすることができる。
この構成としたときには、格納容器ベントを間欠的に行うための掃気機構を追加するが、原子炉格納容器からの出口部にある弁(隔離弁)の機能は維持することができ、既存の隔離弁への改造を行う必要がない。
【0028】
上記の格納容器ベント方法において、原子炉格納容器の圧力によって開閉する弁、もしくは、原子炉格納容器の圧力によって動作の開始と停止を行う掃気機構のうちいずれか一つ、もしくは、それらの組み合わせの機構を設けることによって、格納容器ベントを間欠的に行う構成とすることができる。
【0029】
上記の格納容器ベント方法において、膜が、放射性希ガスと窒素を透過せず、水素と水蒸気を透過する構成とすることができる。
この構成としたときには、水素と水蒸気は膜を透過するので、膜を透過した水素と水蒸気を外部に排出して、原子炉格納容器の圧力を下げることができる。一方、放射性希ガスは膜を透過しないので、放射性希ガスの漏洩を抑制することができる。
【0030】
上記の格納容器ベント方法において、膜のフィルタ材が、高分子膜、もしくはセラミック膜、もしくは酸化グラフェン膜である構成とすることができる。
この構成としたときには、膜のフィルタ剤が、放射性希ガスと窒素を透過せず、水素と水蒸気を透過させることができる。
【0031】
上記の格納容器ベント方法において、沸騰水型原子炉に原子炉格納容器ベントシステムを備え、原子炉格納容器ベントシステムを、原子炉格納容器の圧力に応じて、一定圧力で動作させ、一定以上で停止させることにより、記格納容器ベントを間欠的に行う構成とすることができる。
この構成としたときには、沸騰水型原子炉において、格納容器ベントを間欠的に行うことができ、原子炉格納容器の加圧を防止すると共に、外部に放射性物質が漏洩することを防止することができる。
【0032】
上記の格納容器ベント方法において、加圧水型原子炉に原子炉格納容器ベントシステムを備え、原子炉格納容器ベントシステムを、原子炉格納容器の圧力に応じて、一定圧力で動作させ、一定以上で停止させることにより、格納容器ベントを間欠的に行う構成とすることができる。
この構成としたときには、加圧水型原子炉において、格納容器ベントを間欠的に行うことができ、原子炉格納容器の加圧を防止すると共に、外部に放射性物質が漏洩することを防止することができる。
【0033】
上記の格納容器ベント方法において、重水炉、黒鉛炉、ガス炉、高温ガス炉、超臨界圧軽水冷却炉、溶融塩炉、ガス冷却高速炉、ナトリウム冷却高速炉、鉛冷却高速炉、のいずれかに原子炉格納容器ベントシステムを備え、原子炉格納容器ベントシステムを、原子炉格納容器の圧力に応じて、一定圧力で動作させ、一定以上で停止させることにより、格納容器ベントを間欠的に行う構成とすることができる。
この構成としたときには、重水炉、黒鉛炉、ガス炉、高温ガス炉、超臨界圧軽水冷却炉、溶融塩炉、ガス冷却高速炉、ナトリウム冷却高速炉、鉛冷却高速炉、のいずれかにおいて、格納容器ベントを間欠的に行うことができ、原子炉格納容器の加圧を防止すると共に、外部に放射性物質が漏洩することを防止することができる。
【実施例0034】
以下、格納容器ベント方法の具体的な実施例を説明する。
【0035】
(実施例1)
前述した目的を達成するために好適な実施例の一つである実施例1の格納容器ベント方法について、
図1を参照して説明する。
図1は、実施例1の格納容器ベント方法を実施するための原子炉格納容器および原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。図中一点鎖線の囲み内が、本発明に関わる原子炉格納容器ベントシステムである。
【0036】
本実施例の格納容器ベント方法は、原子炉圧力容器が破損するなどの過酷事故時において、原子炉格納容器内の圧力を減圧し、またその減圧時に放射性物質を極力除去するものである。
【0037】
図1に示す原子炉格納容器ベントシステムは、改良型沸騰水型原子炉(ABWR)に適用した例であり、以下に説明するシステム構成を持っている。
原子炉格納容器1内に、炉心2を内包する原子炉圧力容器3が設置されている。原子炉圧力容器3には、原子炉圧力容器3内で発生した蒸気をタービン(図示せず)に送る主蒸気管4が接続されている。
【0038】
原子炉格納容器1の内部は、鉄筋コンクリート製のダイヤフラムフロア12によってドライウェル5とウェットウェル7に区画されている。ウェットウェル7は、内部にプール水を貯めている領域のことを言う。このウェットウェル7内のプールのことを、サプレッションプール8と呼ぶ。ドライウェル5とウェットウェル7は、ベント管11によって相互に連通されており、ベント管排気部11aは、ウェットウェル7内のサプレッションプール8の水面下に開口している。
【0039】
万が一、配管類の一部が損傷し、原子炉格納容器1内に蒸気が放出される配管破断事故(一般的にLOCAの名称で知られ、配管が通るドライウェル5で発生する)が発生した場合、ドライウェル5の圧力が破断口から流出する蒸気により上昇する。その際、ドライウェル5内に放出された蒸気は、ドライウェル5とウェットウェル7の圧力差により、ベント管11を通ってウェットウェル7内のサプレッションプール8の水中に導かれる。サプレッションプール8の水で蒸気を凝縮することで、原子炉格納容器1内の圧力上昇を抑制する。この際に、蒸気内に放射性物質が含まれていた場合、サプレッションプール8の水のスクラビング効果により、大半の放射性物質が除去される。
【0040】
前述した通り、ドライウェル5で配管破断事故が発生した場合、破断口から流出する蒸気は、ベント管11を通ってサプレッションプール8で凝縮される。同様に、原子炉圧力容器3や主蒸気管4の圧力が高くなった場合も、蒸気をサプレッションプール8に放出し、原子炉圧力容器3や主蒸気管4の圧力を下げる。また、それと共に、放出した蒸気をサプレッションプール8で凝縮することで、原子炉格納容器1の圧力上昇を緩和する。
そのための装置として、ABWRでは、原子炉格納容器1内のドライウェル5の領域に、蒸気逃し安全弁6が設置されている。蒸気逃し安全弁6を通して放出された蒸気は、蒸気逃し安全弁排気管9を通って、最終的にクエンチャ10からサプレッションプール8内に放出され、サプレッションプール8のプール水により凝縮される。
【0041】
蒸気をサプレッションプール8で凝縮して液体の水にすることで、蒸気の体積が大幅に減少し、原子炉格納容器1の圧力上昇を抑制することができる。また、その際に蒸気に放射性物質が含まれている場合、サプレッションプール8の水のスクラビング効果により、大半の放射性物質が除去される。
【0042】
サプレッションプール8で蒸気を凝縮し、サプレッションプール8内のプール水を残留熱除去系(図示せず)で冷却することで、原子炉格納容器1の温度上昇と圧力上昇を防止し、事故を収束させることができる。
しかし、非常に低い可能性ではあるが、残留熱除去系が機能を喪失した場合、サプレッションプール8のプール水の温度が上昇する。プール水の温度が上昇するに伴い、原子炉格納容器1内の蒸気の分圧はプール水の温度の飽和蒸気圧まで上昇するため、原子炉格納容器1の圧力が上昇する。
【0043】
このような圧力上昇が起きた場合、原子炉格納容器1内に冷却水をスプレイすることで圧力上昇を抑えることができる。また、このスプレイは外部から消防ポンプなどを接続して作動させることも可能である。
しかし、さらに非常に低い可能性ではあるが、このスプレイも作動しない場合、原子炉格納容器1の圧力は上昇する。このような原子炉格納容器1の圧力上昇が起きた場合、原子炉格納容器1内の気体を外部に放出することで、原子炉格納容器1の圧力上昇を抑えることができる。この操作のことをベント操作と呼ぶ。沸騰水型原子炉では、このベント操作を、ウェットウェル7内の気体を放出することにより行うことで、サプレッションプール8の水で最大限放射性物質を除去した上で、外部へ気体を放出することができる。
【0044】
このベント操作をする上で、外部放出する気体からさらに放射性物質を取り除く装置として、原子炉格納容器ベントシステムがある。
次に、従来の一般的なベントシステムについて、
図1を参照して説明する。
【0045】
ベント配管13は、原子炉格納容器1のドライウェル5とウェットウェル7に接続されており、このベント配管13には、ベント動作弁14a,14bが配設されている。即ち、ウェットウェル7に対して、ウェットウェル7側のベント動作弁14aが設けられ、ドライウェル5に対して、ドライウェル5側のベント動作弁14bが設けられている。
【0046】
ベント操作は、通常はウェットウェル7側のベント動作弁14aを開くことで行う。ベント配管13は、フィルタベント装置15におけるフィルタベント容器16の入口配管17に接続されている。この入口配管17の先端側は、フィルタベント容器16内に開口する。
【0047】
フィルタベント容器16内の下部側には、スクラビング用のプール水18が貯留されている。
フィルタベント容器16の上部側には、金網状の金属フィルタ19が設置されている。この金属フィルタ19には、フィルタベント容器16の出口配管20の一端が接続されている。
出口配管20の他端は、フィルタベント容器16を囲っている遮蔽壁21を貫通して、遮蔽壁21の外に導出されている。そして最終的に、排気塔22から外部に気体を排出する。
また、出口配管20の途中の、フィルタベント容器16と遮蔽壁21との間に、よう素フィルタ38が設置されている。
【0048】
原子炉格納容器1の圧力が上昇し、その一定の圧力設定値よりも圧力が上昇したことを圧力検知機構40(一般的な圧力計のようなもので良い)で検知した場合、通常はウェットウェル7側のベント動作弁14aを開く。この際に、サプレッションプール8の水で放出ガスをスクラビングすることで、大半の放射性物質を除去することができる。これは、沸騰水型原子炉の安全上の特徴である。
【0049】
フィルタベント装置15に入った放出ガスは、フィルタベント容器16内のスクラビング用プール水18でさらにスクラビングされることで、主にエアロゾル状の放射性物質のほとんどが除去される。さらに、金属フィルタ19とよう素フィルタ38により、よう素などの気体状の放射性物質を除去する。
そして、圧力検知機構40によって検知される圧力が一定以下となったときに、ウェットウェル7側のベント動作弁14aが閉じられることで、ベント操作が停止され、下記の希ガスフィルタ23への通気も停止する。
【0050】
上記の操作によって、ほとんどの放射性物質は除去され、放射性物質が除去された放出ガスは、排気塔22から放出される。
しかし、このシステムによりほとんどの放射性物質は除去されているが、放射性希ガスは、反応性が乏しいため、一般的なフィルタベントシステムでは除去できない。そのため、現行のベント操作は、この放射性希ガスが減衰するまで待ってから行う必要があるため、原子炉スクラム後から比較的短い時間の間は行うことができない。
【0051】
そこで、本実施例に関わる原子炉格納容器ベントシステムは、出口配管20の、フィルタベント装置15のフィルタベント容器16より下流の位置に、希ガスフィルタ23を設置している。
そして、この希ガスフィルタ23で放射性希ガスを閉じ込めると共に、この希ガスフィルタ23に蒸気を透過することができるフィルタ材を用いる。これにより、蒸気を外部に放出して、原子炉格納容器1の圧力を下げることができる。
【0052】
一般的なベント方法では、圧力が一定値を超えた場合は、ウェットウェル7側のベント動作弁14aを開いたままの動作となる。
これに対して、本発明のベント方法では、圧力が一定値を超えた場合に、ウェットウェル7側のベント動作弁14aを開き、圧力が一定値を下回った場合は、ウェットウェル7側のベント動作弁14aを閉止する。
本発明のベント方法では、このような開閉のベント操作によって、一般的なベント方法と同様に十分に外部に水蒸気を放出することで、原子炉格納容器1の圧力を低下させて原子炉格納容器1を保護する。そのために、本発明のベント方法では、一般的なベント方法の時と比較して、希ガスフィルタ23の膜面積(物量)は大きなものとなる。
【0053】
この希ガスフィルタ23は、原子炉格納容器1内やベント配管13上のどの位置に設置しても、放射性希ガスを除去できる。
しかし、
図1に示すように、希ガスフィルタ23を、フィルタベント装置15内の下流側の位置に設置することが好ましい。これにより、希ガスフィルタ23にエアロゾル状の放射性物質が付着することによるフィルタ性能の劣化の防止や、事故時に発生する可能性のある溶融燃料からの影響に曝されることを防止することができ、原子炉格納容器ベントシステムの信頼性を向上させることができる。
【0054】
希ガスフィルタ23は、蒸気を透過する必要がある。
また、原子炉格納容器1の加圧防止のためには、炉心2が溶融した際に発生する可能性のある水素も、透過できることが望ましい。透過するべき水蒸気や水素は、分子径が0.3nm以下と小さく、透過させない放射性希ガス(主にクリプトンやキセノン)は、それよりも分子径がかなり大きい。
そこで、分子径が小さい蒸気や水素を選択的に透過するには、分子ふるいで分離できる膜を利用することが考えられる。
【0055】
沸騰水型原子炉の場合、原子炉格納容器1内の気体は窒素置換されているが、分子サイズを利用して分子ふるいでガスを選択する場合、クリプトンやキセノンと分子サイズの近い窒素は透過しない可能性があるが、原子炉格納容器1を減圧する観点では問題無い。
このような用途に最適なフィルタ材として、ポリイミドを主成分とした高分子膜、窒化ケイ素を主成分としたセラミック膜、炭素を主成分とした酸化グラフェン膜等の分子ふるいにより分離が可能な膜の使用が望ましい。これらフィルタ材は、一般的には、水素の精製に用いるフィルタに用いられている。また、その他、クリプトンやキセノンを透過せず、水素と水蒸気を透過する膜であるならば、それらの使用でも構わない。
【0056】
前述したフィルタ材を利用した希ガスフィルタ23は、蒸気と水素を透過し、窒素と放射性物質を透過しないことで、放射性希ガスを除去しながら、原子炉格納容器1の加圧の原因となる蒸気と水素を放出することができる。
しかし、時間の経過と共に、希ガスフィルタ23の直上流部に透過しない窒素および放射性希ガスが溜まり、これら気体の分圧が高まることで、蒸気と水素の透過量が低下し、原子炉格納容器1の圧力を下げる機能が低下する。
【0057】
そこで、
図1に示すように、希ガスフィルタ23の直上流部と原子炉格納容器1を戻り配管24で接続し、戻り配管24のライン上に設置したブロア25によって、希ガスフィルタ23を透過しない気体を原子炉格納容器1に戻すように構成する。これにより、希ガスフィルタ23の蒸気透過性能を維持することができる。
【0058】
また、
図1に示すように、戻り配管24のライン上に逆止弁26を設置する。これにより、原子炉格納容器1からフィルタベント装置15を通らずに希ガスフィルタ23に放射性物質を含む気体が到達するのを防止することができる。
【0059】
また、万が一ブロア25が作動しない場合、希ガスフィルタ23の透過流量が低下し、原子炉格納容器1の減圧が不十分になる可能性がある。そのため、
図1に示すように、希ガスフィルタ23の直上流部から希ガスフィルタ23をバイパスし、希ガスフィルタ下流部に接続する、バイパス管27を設置する。さらに、そのバイパス管27のライン上に、ある一定以上の圧力を超えると仕切り板が破れることで弁が開く、ラプチャディスク28を設置する。これにより、万が一ブロア25が作動せず、原子炉格納容器1の圧力が上昇した場合、このラプチャディスク28が開くことで、原子炉格納容器1を減圧できる。
【0060】
ラプチャディスク28は、爆破弁やその他のバルブでも構わない。
また、希ガスフィルタ23自体がある一定圧力以上で破れる構造とすることで、このラプチャディスク28の機能を代替しても構わない。
【0061】
ここで、
図1のフィルタベント装置15において、各配管(ベント配管13、出口配管20、戻り配管24)を通る物質を、(1)~(5)の各符号で示す。(1)はエアロゾル状放射性物質、(2)は放射性希ガス、(3)は水蒸気、(4)は水素、(5)は窒素やその他の気体、をそれぞれ示している。
ベント配管13は、(1)~(5)が全て通過するが、スクラビング用プール水18により(1)エアロゾル状放射性物質が除去され、(2)~(5)が出口配管20を通過する。そして、希ガスフィルタ23により分離されることにより、希ガスフィルタ23を通過する(3)水蒸気および(4)水素は、排気塔22に向かい、希ガスフィルタ23を通過しない(2)放射性希ガスおよび(5)窒素やその他の気体は、戻り配管24を通り原子炉格納容器1に戻る。
【0062】
次に、本発明の格納容器ベント方法の圧力に応じて開閉することによって得られる効果について、
図2および
図3を参照して説明する。
【0063】
図2は、希ガスフィルタ23を備えた場合と備えなかった場合の、本発明のベント方法(一定圧力で開閉する間欠ベント)を行ったときにおける、プラントの圧力の挙動の評価例を示す図である。
図2では、圧力の挙動を保守的に評価するために、前述したウェットウェル7の圧力抑制機能が喪失した場合を仮定して、評価している。また、
図2中に、原子炉格納容器1を保護するための圧力上限を破線で示している。
なお、
図2に示す評価では、従来の一般的なベント方法(一旦開動作するとそのまま開を維持する)の際に必要な膜面積の5倍の膜面積を持つ(単位時間当たりの希ガスの漏洩量は5倍となる)、と仮定して評価している。
【0064】
図2から分かる通り、適切に希ガスフィルタ23の膜面積を設計することにより、希ガスフィルタ23を備えた場合でも、適切にプラントを一定以下の圧力にコントロールして、格納容器が過圧されることを防止することができる。
なお、
図2に示す圧力の変化において、圧力が減少するタイミングでのみ希ガスが漏洩する。
【0065】
図3は、希ガスフィルタ23を備えた場合と備えなかった場合のそれぞれの場合において、一般的なベント方法と本発明のベント方法によって外部へ漏洩する放射性希ガスの放出割合を比較した図である。
【0066】
図3に示すように、希ガスフィルタ23を備えずに一般的なベント方法を取った場合、炉内に保持されていた希ガスは、ほぼ全量外部へ流出することとなる。
また、希ガスフィルタ23を備えずに本発明のベント方法を取った場合、開閉することによって外部への希ガス漏洩が大幅に低減されると考えられるかもしれないが、希ガスは外部に放出するガスにおおよそ均一に分布しているため、プラントを減圧するために大量に水蒸気を含むガスを放出した場合、大半の希ガスもまた外部に放出されることとなる。そして、
図3に示すように、特に一回目の開の間に半分以上放出されている。
次に、希ガスフィルタ23を備えた場合で一般的なベント方法を取った場合、希ガスフィルタ23によって希ガスの外部への流出が低減されていることが分かる。しかし、希ガスフィルタ23によって流出を阻止した希ガスは、格納容器内に戻されるが、また再度ベントガスに混入されベント操作に伴い外部へ流出しようとする。そして、希ガスフィルタ23も少ないとは言え、希ガスの透過量は0ではないため、希ガスが循環して希ガスフィルタ23に何度も供給されることにより、
図3に示すように、希ガスア徐々に漏洩する。
次に、希ガスフィルタ23を備えた場合であり、かつ本発明のベント方法を取った場合、希ガスフィルタ23に希ガスが流入するのは、ウェットウェル7側のベント動作弁14aが開いている時間のみに限定される。本発明のベント方法を取るために、膜面積は通常の5倍とすることを想定しているため、単位時間当たりの漏洩量は5倍になるが、希ガスフィルタ23の通気時間が本発明のベント方法では少ないために、外部への希ガスの流出量は大きく低減されることとなる。また、希ガスフィルタ23の通気時間が減少するため、高温の水蒸気が通気することによる希ガスフィルタ23の劣化も低減することができる。
【0067】
本実施例では膜面積を通常の5倍とすることで評価したが、プラントや想定する事故シナリオによって、最適な膜面積は異なる。プラント設計段階において、膜面積は、被ばく量や通気時間の低減効果、また設置するための膜物量などを考慮して、最適な値に設定する。
【0068】
本実施例によれば、出口配管20に希ガスフィルタ23を設け、この希ガスフィルタ23のフィルタ材である膜により、水蒸気および水素と、放射性希ガスおよび窒素とを分離するので、放射性希ガスの外部への漏洩量を低減することができる。
また、ウェットウェル7側のベント動作弁14aが、原子炉格納容器1の圧力に応じて、一定以上の圧力で開き、一定以下の圧力で閉じるようにして、格納容器ベントを間欠的に行う。これにより、従来の格納容器ベントを連続して行っていた場合と比較して、希ガスフィルタ23のフィルタ膜の耐久性を向上することができる。
従って、原子炉圧力容器3から原子炉格納容器1内に放射性物質を含む気体が流出し、原子炉格納容器1が加圧される事態が万一発生した場合においても、原子炉格納容器1の加圧を防止すると共に、外部に放射性物質が漏洩することを防止することができる。
【0069】
また、本実施例によれば、従来から原子炉プラントに設置されている、原子炉格納容器1からの出口部にある、ウェットウェル7側のベント動作弁14aを利用して、格納容器ベントを間欠的に行うことができる。これにより、格納容器ベントを間欠的に行うための弁などを追加する必要がない。
【0070】
なお、実施例1では、ウェットウェル7側のベント動作弁14aにおいて格納容器ベントを間欠的に行っていたが、格納容器ベントを間欠的に行う弁を、ドライウェル5側のベント動作弁14bや両方のベント動作弁14a,14bとしてもよい。
【0071】
(実施例2)
前述した目的を達成するために好適な実施例の一つである実施例2の格納容器ベント方法について、
図4を参照して説明する。
図4は、実施例2の格納容器ベント方法を実施するための原子炉格納容器および原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。図中一点鎖線の囲み内が、本発明に関わる原子炉格納容器ベントシステムである。実施例2においても、フィルタベント装置15や希ガスフィルタ23の配置構成は実施例1と同様であり、ここでは実施例1との違いのみを説明する。
【0072】
本実施例では、一定以上の圧力となった場合はベント動作弁14を開き、そのまま開いたままとする。
一般的なベント方法をする既存のベントシステムの場合は、このベント動作弁14の機能は格納容器の隔離弁が担っており、隔離弁としての既存の機能はそのまま維持することで、既存の隔離弁への改造行為を行わず、既存のベントシステムへの改造を最小限にする。
【0073】
本実施例では、実施例1で備えていた開閉機能は、希ガスフィルタ23の前段に設けたベントガス開閉弁41を備えて、このベントガス開閉弁41を開閉することで、実施例1と同様の機能、効果を達成する。
即ち、本実施例では、圧力検知機構40で検出した原子炉格納容器1の圧力が一定以上になるとベントガス開閉弁41を開き、その後、原子炉格納容器1の圧力が一定以上になるとベントガス開閉弁41を閉じる。以降は、原子炉格納容器1の圧力の増減に伴い、ベントガス開閉弁41の開閉を繰り返す。
【0074】
(実施例3)
前述した目的を達成するために好適な実施例の一つである実施例3の格納容器ベント方法について、
図5を参照して説明する。
図5は、実施例3の格納容器ベント方法を実施するための原子炉格納容器および原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。図中一点鎖線の囲み内が、本発明に関わる原子炉格納容器ベントシステムである。実施例3においても、フィルタベント装置15や希ガスフィルタ23の配置構成は実施例2と同様であり、ここでは実施例2との違いのみを説明する。
【0075】
本実施例では、一定以上の圧力となった場合はベント動作弁14を開き、そのまま開いたままとする。
一般的なベント方法をする既存のベントシステムの場合は、このベント動作弁14の機能は格納容器の隔離弁が担っており、隔離弁としての既存の機能はそのまま維持することで、既存の隔離弁への改造行為を行わず、既存のベントシステムへの改造を最小限にする。
【0076】
本実施例では、実施例2で備えていた開閉機能は、希ガスフィルタ23の前段に設けたベントガス開閉弁によって動作させるが、この動作を、ばね圧によって受動的に開閉する受動的ベントガス開閉弁42を備えることによって、実現する。
受動的ベントガス開閉弁42では、一定以上の圧力が掛かることによって開閉弁が開き、一定以下の圧力となるとばね圧によって弁が閉まる。このことにより、本実施例では、圧力検知機構40や弁を開閉する機構が不要となる。
【0077】
(実施例4)
前述した目的を達成するために好適な実施例の一つである実施例4の格納容器ベント方法について、
図6を参照して説明する。
図6は、実施例4の格納容器ベント方法を実施するための原子炉格納容器および原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。図中一点鎖線の囲み内が、本発明に関わる原子炉格納容器ベントシステムである。実施例4においても、フィルタベント装置15や希ガスフィルタ23の配置構成は実施例2と同様であり、ここでは実施例2との違いのみを説明する。
【0078】
本実施例では、一定以上の圧力となった場合は、ベント動作弁14を開き、そのまま開いたままとする。
一般的なベント方法をする既存のベントシステムの場合、このベント動作弁14の機能は格納容器の隔離弁が担っている。本実施例では、隔離弁としての既存の機能はそのまま維持することで、既存の隔離弁への改造行為を行わず、既存のベントシステムへの改造を最小限にする。
【0079】
本実施例は、実施例2で備えていた開閉機能を、ブロア25の動作で仮想的に模擬する。
圧力検知機構40で一定以上の圧力を検知した場合、ブロア25を動作させることで、希ガスフィルタ23への通気を継続させ、外部への水蒸気の放出を促進し、原子炉格納容器1の圧力を低下させる。
一方で、圧力が一定以下となった場合は、ブロア25を停止させる。ブロア25を停止させた場合、希ガスフィルタ23を透過しない希ガスおよび窒素は、希ガスフィルタ23部に滞留することになる。これにより、新たなベントガスが供給されなくなるため、外部へのベントが行われなくなる。
【0080】
上述したように、ブロア25の動作によって、仮想的に弁の開閉を模擬することも可能である。
しかし、弁の動作と比較して、ブロア25の動作によるベント動作の作動と停止は緩慢な動作となるため、時間余裕を持たせた動作が必要になり、外部への希ガスの漏洩量は多少増加する可能性がある。
【0081】
(実施例5)
前述した目的を達成するために好適な実施例の一つである実施例5の格納容器ベント方法について、
図7を参照して説明する。
図7は、実施例5の格納容器ベント方法を実施するための原子炉格納容器および原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。図中一点鎖線の囲み内が、本発明に関わる原子炉格納容器ベントシステムである。実施例5においても、フィルタベント装置15の構成のみを実施例1から変更しており、その違いのみを説明する。
【0082】
フィルタベント装置は、一般に湿式と乾式のフィルタベント装置があり、実施例1のように容器内のスクラビング用プール水18でエアロゾルを除去するものが、湿式のフィルタベント装置である。
【0083】
一方で、実施例5のフィルタベント装置15は、
図7に示すように、フィルタベント容器16の中に放射性物質除去用の砂フィルタ32を敷き詰め、その砂フィルタ32により放射性物質を除去するフィルタベント装置15である。これは、乾式のフィルタベント装置であり、湿式のフィルタベント装置と比較して、スクラビング用プール水18の水質の管理などは必要ないが、事故時にこの装置を加熱する必要がある。
【0084】
この乾式のフィルタベント装置15でも、放射性希ガスは除去できないため、本発明の希ガスフィルタ23が必要であり、それらの構成は実施例1と同様である。
また、本発明の開閉ベント方法を実施するための構成を、実施例2~実施例4のような構成としても良い。
【0085】
(実施例6)
前述した目的を達成するために好適な実施例の一つである実施例6の格納容器ベント方法について、
図8を参照して説明する。
図8は、実施例6の格納容器ベント方法を実施するための原子炉格納容器および原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。図中一点鎖線の囲み内が、本発明に関わる原子炉格納容器ベントシステムである。実施例6においても、フィルタベント装置15の構成のみを実施例5から変更しており、その違いのみを説明する。
【0086】
乾式のフィルタベント装置には、実施例5の放射性物質除去用の砂フィルタ32の代わりに、金属フィルタ19と、よう素除去用のゼオライト34を設置するタイプのものもある。
そこで、本実施の形態では、
図8に示すように、フィルタベント装置15内のベント配管13と出口配管20との間に、金属フィルタ19およびゼオライト34を設置している。ゼオライト34は、金属フィルタ19の下流側に設置している。また、金属フィルタ19およびゼオライト34の間に、オリフィス43を設置している。
【0087】
ゼオライト34では、特に、ゼオライト34の構造内に配置されている銀イオンにより、有機ヨウ素を吸着する。ゼオライト34は、湿分により能力が低下する可能性があるため、直前に配置したオリフィス43により減圧することで、ベントガスを減圧し過熱蒸気として、ゼオライト34が湿分により能力が低下することを防止する。
【0088】
このフィルタベント装置15でも、放射性希ガスを除去するためには、本発明の希ガスフィルタ23が必要であり、それらの構成は実施例1等と同様である。
【0089】
(実施例7)
前述した目的を達成するために好適な実施例の一つである実施例7の格納容器ベント方法について、
図9を参照して説明する。
図9は、実施例7の格納容器ベント方法を実施するための原子炉格納容器および原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。図中一点鎖線の囲み内が、本発明に関わる原子炉格納容器ベントシステムである。
【0090】
実施例7は、本発明に係る原子炉格納容器フィルタベントシステムを、加圧水型原子炉に適用した例である。
【0091】
本実施例では、
図9に示すように、原子炉格納容器1内に、加圧器35、蒸気発生器36、再循環ポンプ37が配置され、加圧水型原子炉が構成されている。これら加圧器35、蒸気発生器36、再循環ポンプ37は、原子炉圧力容器3と接続された配管に接続されている。
そして、原子炉圧力容器3からの水(一次系の水)を、加圧器35で高圧に加圧して高温高圧の水として、蒸気発生器36において、この高温高圧の水によって二次冷却水を加熱して、蒸気を発生させる。
蒸気発生器36で発生した蒸気は、主蒸気管4を通って、原子炉格納容器1の外に送られる。
また、蒸気発生器36で使用した高温高圧の水は、再循環ポンプ37により原子炉圧力容器3に戻される。
なお、
図9において、主蒸気管4から先の蒸気が通過する配管や、原子炉格納容器1の外から蒸気発生器36に二次冷却水を供給する配管は、図示を省略している。
その他の構成に関しては、実施例1と同様である。
【0092】
本実施例の加圧水型原子炉は、
図1等に示したドライウェル5とウェットウェル7を備えていないので、ベント動作弁14は、原子炉格納容器1に対して1箇所のみに設けられている。
従って、本実施例では、この1箇所のベント動作弁14を原子炉格納容器1の圧力の増減に対応して開閉することにより、本発明の格納容器ベント方法を実施する。
【0093】
なお、本発明の格納容器ベント方法を実施するための構成を、
図9に示すベント動作弁14から、実施例2~実施例4と同様の構成(ベントガス開閉弁、受動的ベントガス開閉弁、ブロア)に代えても構わない。
【0094】
加圧水型原子炉は、原子炉格納容器1の圧力上昇を抑えるためのウェットウェル7とサプレッションプール8を持たないため、サプレッションプール8によるスクラビングを用いた放射性物質の除去は期待できない。
従って、本実施例において、放射性物質の除去は、主としてフィルタベント容器16内のスクラビング用プール水18で行われることになる。
【0095】
また、ウェットウェルを備えない沸騰水型原子炉に、本発明に係る原子炉格納容器フィルタベントシステムを備えても良い。
【0096】
(変形例)
実施例1~実施例7は、本発明の原子炉格納容器ベント方法を、軽水炉(沸騰水型原子炉、加圧水型原子炉)に適用した例であったが、本発明の原子炉格納容器ベント方法を、重水炉や黒鉛炉、ガス炉に適用してもよい。
また、本発明の原子炉格納容器ベント方法を、いわゆる第4世代原子炉と呼ばれる、高温ガス炉、超臨界圧軽水冷却炉、溶融塩炉、ガス冷却高速炉、ナトリウム冷却高速炉、鉛冷却高速炉など、他炉型に適用してもよい。
【0097】
なお、本発明は、上述した実施の形態および実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した各実施の形態および実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
1…原子炉格納容器、2…炉心、3…原子炉圧力容器、4…主蒸気管、5…ドライウェル、6…蒸気逃し安全弁、7…ウェットウェル、7a…ウェットウェル気相部、8…サプレッションプール、9…蒸気逃し安全弁排気管、10…クエンチャ、11…ベント管、11a…ベント管排気部、12…ダイヤフラムフロア、13…ベント配管、14…ベント動作弁、14a…ウェットウェル側のベント動作弁、14b…ドライウェル側のベント動作弁、15…フィルタベント装置、16…フィルタベント容器、17…フィルタベント入口配管、18…スクラビング用プール水、19…金属フィルタ、20…出口配管、21…遮蔽壁、22…排気塔、23…希ガスフィルタ、24…戻り配管、25…ブロア、26…逆止弁、27…バイパス管、28…ラプチャディスク、29…水素再結合器、30…タービン、31…動力伝達機構、32…放射性物質除去用の砂フィルタ、33…邪魔板、34…ゼオライト、35…加圧器、36…蒸気発生器、37…再循環ポンプ、38…よう素フィルタ、40…圧力検知機構、41…ベントガス開閉弁、42…受動的ベントガス開閉弁、43…オリフィス