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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008519
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】リーダライタ及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G06K7/10 184
G06K7/10 232
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110754
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】本嶋 弘明
(57)【要約】
【課題】他のリーダライタと他のRFIDタグとの交信に影響を及ぼす可能性を低減する。
【解決手段】リーダライタ(1)は、電圧調整部(14)を備え、電圧調整部(14)は、データを正常に読み取ることが可能であったRFIDタグ(2)の読み取り時における受信信号の受信電圧に応じて、RFIDタグ(2)への書き込み時における送信信号の送信電圧を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグの読み取り時に前記RFIDタグから受信した受信信号の受信電圧を測定する電圧測定部と、
前記RFIDタグへの書き込み時に前記RFIDタグへ送信する送信信号の送信電圧を調整する電圧調整部と、を備え、
前記電圧調整部は、データを正常に読み取ることが可能であった前記RFIDタグの読み取り時における前記受信電圧に応じて、前記RFIDタグへの書き込み時における前記送信電圧を調整する、リーダライタ。
【請求項2】
前記電圧調整部は、測定された読み取り時における前記受信電圧が閾値未満であるとき、前記RFIDタグへの書き込み時における前記送信電圧を、前記RFIDタグの読み取り時における前記送信電圧よりも高くする、請求項1に記載のリーダライタ。
【請求項3】
前記電圧調整部は、測定された前記受信電圧が前記閾値よりも低くなるほど、書き込み時における前記送信電圧を高くする、請求項2に記載のリーダライタ。
【請求項4】
LF帯に属する周波数の電磁波又は交流磁界により前記RFIDタグと交信を行う交信部を更に備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のリーダライタ。
【請求項5】
RFIDタグとの間にて交信を行うリーダライタを制御する制御方法であって、
前記RFIDタグの読み取り時に前記RFIDタグから受信した受信信号の受信電圧を測定する電圧測定処理と、
前記RFIDタグへの書き込み時に前記RFIDタグへ送信する送信信号の送信電圧を調整する電圧調整処理と、を含み、
前記電圧調整処理において、前記受信信号のデータを正常に読み取ることが可能であった前記RFIDタグの読み取り時における前記受信電圧に応じて、前記RFIDタグへの書き込み時における前記送信電圧を調整する、リーダライタの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リーダライタ及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁波又は磁界を用いて近距離の無線通信を行うRFID(Radio Frequency Identification)技術が知られている。RFID技術において、リーダライタは、RFIDタグと交信し、RFIDタグのデータの読み取り、及びRFIDタグへのデータの書き込みを行う。
【0003】
RFIDタグへのデータの書き込み時の電力は、RFIDタグのデータの読み取り時の電力よりも大きな電力を消費することが知られている。そのため、データの書き込みが可能となるリーダライタとRFIDタグとの間の交信可能距離は、データの読み取りが可能となるリーダライタとRFIDタグとの間の交信可能距離よりも短くなる。データの読み取り時の送信電力とデータの書き込み時の送信電力とを同一にする場合、リーダライタは、特定の位置に位置するRFIDタグに対して、データの読み取りを行うことはできるが、データの書き込みを行うことができない可能性がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、交信可能な非接触ICカードを検出する問合せ信号と、書き込み時におけるデータ信号とで、送信出力を異ならせる技術が開示されている。特許文献1では、ICカードリーダライタは、問合せ信号の送信出力を低くし、書き込み時におけるデータ信号の送信出力を高くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-220492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のICカードリーダライタは、書き込み時におけるデータ信号の送信出力を、問合せ信号の送信出力よりも常に高くしている。そのため、書き込み時のデータ信号の送信出力を高くすると、ICカードリーダライタによりデータの書き込み可能な交信可能距離が常に広がってしまう。
【0007】
例えば、リーダライタによる交信が可能となる交信可能距離が広がることにより、リーダライタの交信可能な範囲内に他のリーダライタ及び他のRFIDタグが存在する状況が考えられる。このような状況において、RFIDタグとの交信時にリーダライタから送信される電磁波又は磁界が、他のリーダライタが他のRFIDタグとの交信時に送信される電磁波又は磁界と干渉してしまう可能性が有る。その結果、他のリーダライタと他のRFIDタグとの間における交信が失敗する可能性が有る。
【0008】
本開示の一態様は、データの書き込み時において、適切に交信を行うことができるリーダライタを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るリーダライタは、RFIDタグの読み取り時に前記RFIDタグから受信した受信信号の受信電圧を測定する電圧測定部と、前記RFIDタグへの書き込み時に前記RFIDタグへ送信する送信信号の送信電圧を調整する電圧調整部と、を備え、前記電圧調整部は、データを正常に読み取ることが可能であった前記RFIDタグの読み取り時における前記受信電圧に応じて、前記RFIDタグへの書き込み時における前記送信電圧を調整する。
【0010】
上記構成によれば、データの書き込み時における送信電圧を必要な場合に高くすることができる。これにより、データの書き込み時において、他のリーダライタと他のRFIDタグとの交信に影響を及ぼす可能性を低減することができる。そのため、RFIDと適切に交信を行うことができる。
【0011】
前記電圧調整部は、測定された読み取り時における前記受信電圧が閾値未満であるとき、前記RFIDタグへの書き込み時における前記送信電圧を、前記RFIDタグの読み取り時における前記送信電圧よりも高くしてもよい。
【0012】
上記構成によれば、受信電圧が閾値以上である場合、電圧調整部により送信電圧の調整が行われない。これにより、データの書き込み時において、他のリーダライタと他のRFIDタグとの交信に影響を及ぼす可能性を低減することができる。
【0013】
前記電圧調整部は、測定された前記受信電圧が前記閾値よりも低くなるほど、書き込み時における前記送信電圧を高くしてもよい。当該構成によれば、受信電圧の低さに応じて、送信電圧が高くなるように電圧調整部により、送信電圧の調整が行われる。これにより、RFIDタグにデータの書き込みが行われない可能性を低減することができる。
【0014】
LF帯に属する周波数の電磁波又は交流磁界により前記RFIDタグと交信を行う交信部を更に備えてもよい。
【0015】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るリーダライタの制御方法は、RFIDタグとの間にて交信を行うリーダライタを制御する制御方法であって、前記RFIDタグの読み取り時に前記RFIDタグから受信した受信信号の受信電圧を測定する電圧測定処理と、前記RFIDタグへの書き込み時に前記RFIDタグへ送信する送信信号の送信電圧を調整する電圧調整処理と、を含み、前記電圧調整処理において、前記受信信号のデータを正常に読み取ることが可能であった前記RFIDタグの読み取り時における前記受信電圧に応じて、前記RFIDタグへの書き込み時における前記送信電圧を調整する。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一態様によれば、データの書き込み時において、適切に交信を行うことができるリーダライタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の実施形態1に係るリーダライタを備えるRFIDシステムの要部の構成を示すブロック図である。
図2】リーダライタによる制御の一例を示すフローチャートである。
図3】本開示の実施形態1の変形例に係るリーダライタによる制御の一例を示すフローチャートである。
図4】送信電圧テーブルに含まれる受信電圧と送信電圧との関係を示すグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
【0019】
§1 適用例
図1は、リーダライタ1を備えるRFIDシステム100の要部の構成を示すブロック図である。図1に基づいて、本開示が適用される場面の一例について説明する。
【0020】
RFIDシステム100は、リーダライタ1と、RFIDタグ2と、PLC(Programmable Logic Controller)3と、を備えている。リーダライタ1は、上位機器であるPLC3とデータの通信可能であり、PLC3により制御されている。リーダライタ1は、PLC3から送信されたコマンドに基づいて、RFIDタグ2との間において非接触によりデータの送受信(交信)を行う。
【0021】
リーダライタ1は、電磁波又は交流磁界によりRFIDタグ2と交信を行う。リーダライタ1には、RFIDタグ2との間の交信を実現するアンテナ4が接続されている。リーダライタ1は、交信可能な位置に位置するRFIDタグ2との間にて、データの読み取り、及びデータの読み出しの少なくとも何れかを行う。
【0022】
RFIDタグ2は、物品に取り付けられている。RFIDタグ2は、例えば、工場等の生産ラインを通る、物品の一例であるワークに取り付けられていてもよい。RFIDタグ2には、RFIDタグ2が取り付けられた物品に関するデータが記憶される。
【0023】
RFIDタグ2は、交信時において、リーダライタ1に対して移動しなくてもよい。即ち、データの書き込み時におけるリーダライタ1に対するRFIDタグ2の位置は、データの読み取り時におけるリーダライタ1に対するRFIDタグ2の位置と同一の位置であってもよい。この場合、リーダライタ1とRFIDタグ2との間の交信距離に変化は生じない。また、RFIDタグ2は、交信時において、リーダライタ1に対して移動していてもよい。即ち、データの書き込み時におけるリーダライタ1に対するRFIDタグ2の位置は、データの読み取り時におけるリーダライタ1に対するRFIDタグ2の位置と異なる位置であってもよい。この場合、リーダライタ1とRFIDタグ2との間の交信距離に変化が生じる。
【0024】
本開示のリーダライタ1は、RFIDタグ2のデータの読み取り時の送信電力とRFIDタグ2へのデータの書き込み時の送信電力とがもし同一であると、書き込み時の交信可能距離が、読み取り時の交信可能距離よりも短くなる場合に特に有効である。
【0025】
§2 構成例
以下、本実施形態に係るRFIDシステム100の構成について、図1に基づいて詳細に説明する。
【0026】
(リーダライタの構成)
図1に示す例では、リーダライタ1は、通信部11と、交信部12と、電圧測定部13と、電圧調整部14と、を有している。また、リーダライタ1は、記憶部15を更に有していてもよい。
【0027】
通信部11は、リーダライタ1とPLC3との間におけるデータの送受信を行う。また、通信部11は、交信部12との間にてデータの送受信を行う。通信部11は、PLC3から受信したコマンドを交信部12、電圧測定部13、及び電圧調整部14に送信する。また、通信部11は、交信部12から受信したRFIDタグ2との交信に関するデータをPLC3に送信する。
【0028】
交信部12は、通信部11を介してPLC3から受信したコマンドに基づいて、RFIDタグ2のタグ交信部21と交信を行う。交信部12は、PLC3からコマンドを受信すると、タグ交信部21を介して、データの読み取り又はデータの書き込みの少なくとも何れかを行う。また、交信部12は、データの読み取り時において、タグ交信部21から受信した受信信号を復調して、受信信号に含まれるデータを取得してもよい。交信部12は、電圧調整部14により生成された送信電圧の交流電圧を変調し、送信信号としてタグ交信部21に送信する。
【0029】
交信部12は、電磁波又は交流磁界によりタグ交信部21と交信を行う。交信部12は、LF帯(長波帯)に属する周波数の電磁波又は交流磁界を用いてもよい。なお、交信部12が用いる電磁波又は交流磁界の周波数は、LF帯に属する周波数に限られるものではなく、その他の帯域に属する周波数であってもよい。
【0030】
電圧測定部13は、RFIDタグ2から受信した受信信号の受信電圧を測定する。電圧測定部13は、タグ交信部21から受信した受信信号を交信部12から取得する。電圧測定部13は、受信信号の受信電圧を検出する電圧検出回路を含む。電圧測定部13は、電圧検出回路により検出された受信信号の受信電圧をデジタル値に変換して記憶部15に記憶させる。
【0031】
電圧測定部13は、受信電圧として、受信信号の振幅幅、受信信号の最大電圧値、及び受信信号の最大電圧値と最小電圧値との差、のうち何れかを測定する。電圧測定部13により測定される受信信号の電圧は、(i)RFIDタグ2から受信した受信信号の受信開始時の電圧、即ち、受信信号の先頭ビットの電圧、(ii)RFIDタグ2から受信した受信信号の受信終了時の電圧、即ち、受信信号の末尾ビットの電圧、(iii)受信信号全体の電圧の平均値、の何れかである。
【0032】
電圧調整部14は、RFIDタグ2へ送信する送信信号の送信電圧を調整する。電圧調整部14は、RFIDタグ2へ送信する送信信号の送信電圧を高くする電圧調整回路を含む。電圧調整部14は、電圧調整回路により生成された送信電圧の交流電圧を交信部12に出力する。
【0033】
電圧調整部14は、RFIDタグ2の読み取り時及びRFIDタグ2への書き込み時において、予め設定されているデフォルト値となるように送信電圧を設定する。また、電圧調整部14は、RFIDタグ2への書き込み時において、電圧測定部13により測定された受信電圧のデータを記憶部15から読み出す。電圧調整部14は、データを正常に読み取ることが可能であったRFIDタグ2の読み取り時における受信信号の受信電圧を特定し、特定した受信電圧に応じてRFIDタグ2の書き込み時における送信電圧を調整する。即ち、電圧調整部14は、特定した受信電圧に応じて、書き込み時における送信電圧をデフォルト値から、デフォルト値とは異なる電圧値に変更する。電圧調整部14は、記憶部15に記憶されている特定された受信電圧のデジタル値に応じて、電圧調整回路を制御して送信信号の送信電圧を調整する。
【0034】
記憶部15は、コンピュータその他装置、機械等が記録されたプログラム等のデータを読み取り可能なように、当該プログラム等のデータを、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積する媒体である。記憶部15は、RFIDタグ2との交信に関するデータを記憶している。交信に関するデータは、例えば、RFIDタグ2から読み出したデータ、RFIDタグ2に書き込むべきデータ、及び交信時における送信電圧に関するデータである。
【0035】
(RFIDタグの構成)
図1に示す例では、RFIDタグ2は、タグ交信部21を有している。タグ交信部21は、リーダライタ1の交信部12と交信を行う。タグ交信部21は、リーダライタ1との交信が成功すると、交信成功のレスポンスと共に、RFIDタグ2を示す識別子であるタグIDをリーダライタ1の交信部12に送信する。
【0036】
タグ交信部21は、RFIDタグ2のデータを読み取るコマンド、又はRFIDタグ2へのデータ書き込むコマンドをリーダライタ1の交信部12から受信する。タグ交信部21は、交信部12からコマンドを受信した後、データの読み出し処理、及びデータの書き込み処理が完了すると、各処理について処理成功のレスポンスを交信部12に送信する。リーダライタ1により読み出されるデータは、図示しないRFIDタグ2のタグ記憶部に格納されている。また、RFIDタグ2のタグ記憶部には、リーダライタ1から送信されたデータが書き込まれる。
【0037】
§3 動作例
図2は、リーダライタ1による制御の一例を示すフローチャートである。リーダライタ1による処理の一例について、図2を参照して以下説明する。
【0038】
先ず、通信部11が、PLC3から送信されたRFIDタグ2への書き込みコマンドを受信する(S1)。ステップS1において、通信部11は、PLC3から受信した書き込みコマンドを交信部12、電圧測定部13、及び電圧調整部14に送信する。電圧調整部14は、通信部11から書き込みコマンドを受信すると、RFIDタグ2への書き込み時にRFIDタグ2へ送信する送信信号の送信電圧を、RFIDタグ2への読み取り時にRFIDタグ2に送信する送信信号の送信電圧と同じ電圧に設定する(S2)。
【0039】
次に、交信部12は、RFIDタグ2と交信を行い、RFIDタグ2のタグIDを読み取る(S3)。ステップS3において、交信部12は、タグIDを読み取るコマンドをRFIDタグ2に送信する。ステップS3において、コマンドの送信時の送信信号の送信電圧は、電圧調整部14により設定されたデフォルト値である。ステップS3において、交信が成功した場合、交信部12は、レスポンスとしてタグIDを含む受信信号をタグ交信部21から受信する。また、ステップS3において、電圧測定部13は、タグ交信部21から受信した受信信号の受信電圧を測定する。ステップS3において、電圧測定部13は、測定した受信信号の受信電圧をデジタル値として記憶部15に記憶させる。
【0040】
続いて、交信部12は、RFIDタグ2からの返信が有ったか否かを判定する(S4)。ステップS4において、交信部12は、タグ交信部21からのレスポンスの有無を判定する。RFIDタグ2からの返信が無かった場合(S4:NO)、交信部12はRFIDタグ2からの返信が無かった旨を通信部11に送信する。S4において、通信部11は、リーダライタ1と交信可能な範囲にRFIDタグ2が無いとして、RFIDタグ2の不在エラーをPLC3に送信する。その後、リーダライタ1は、図2に示すフローチャートの処理を終了する。
【0041】
RFIDタグ2からの返信が有った場合(S4:YES)、交信部12は、RFIDタグ2のタグ交信部21から受信した受信信号を正常に復調可能であるか否かを判定する(S6)。
【0042】
正常に復調できない場合(S6:NO)、交信部12は、RFIDタグ2との交信ができない旨を通信部11に送信する。ステップS6において、通信部11は、交信部12がRFIDタグ2と交信ができないとして、交信エラーをPLC3に送信する。その後、リーダライタ1は、図2に示すフローチャートの処理を終了する。
【0043】
正常に復調可能である場合(S6:YES)、電圧調整部14は、データを正常に読み取ることが可能であったRFIDタグ2の読み取り時の受信信号の受信電圧を特定する(S8)。ステップS8において、電圧調整部14は、ステップS3において、電圧測定部13により測定されたRFIDタグ2の読み取り時の受信信号の受信電圧を特定する。
【0044】
なお、ステップS8において、電圧調整部14は、通信部11がPLC3から書き込みコマンドを受信する前に電圧測定部13が測定したRFIDタグ2の読み取り時の受信信号の受信電圧を特定してもよい。即ち、ステップS8において、電圧調整部14は、データの書き込みを行うRFIDタグ2と同一のRFIDタグ2のデータの読み取り時に受信した受信信号の受信電圧を特定すればよい。
【0045】
次に、電圧調整部14は、ステップS8にて特定された受信電圧が、閾値以上であるか否かを判定する(S9)。閾値は、リーダライタ1に対してRFIDタグ2が特定の位置に位置する場合であって、書き込み時における送信電圧と読み取り時における送信電圧とを同一とした場合に、RFIDタグ2に書き込みができない可能性が有る受信電圧の値より大きくてよい。閾値は、RFIDタグ2が交信時においてリーダライタ1に対して移動しない場合と、RFIDタグ2が交信時においてリーダライタ1に対して移動する場合とで、異なる値に設定されてもよい。ステップS9において、電圧調整部14は、特定された受信電圧のデジタル値を記憶部15から読み出す。ステップS9において、電圧調整部14は、読み出された受信電圧のデジタル値と、閾値とを比較する。
【0046】
受信電圧が閾値未満である場合(S9:NO)、電圧調整部14は、RFIDタグ2への書き込み時における送信電圧を予め定められた調整値に調整する(S10)。ここで、調整値は、RFIDタグ2の読み取り時における送信電圧よりも高い電圧値である。ステップS10において、電圧調整部14は、送信信号の送信電圧を調整値として電圧調整回路により交流電圧を生成し、生成された調整値の交流電圧を交信部12に出力する。リーダライタ1は、ステップS10の後、ステップS11を実行する。
【0047】
受信電圧が閾値以上である場合(S9:YES)、リーダライタ1は、ステップS11を実行する。即ち、電圧調整部14は、書き込み時における送信電圧をステップS2にて調整した送信電圧として電圧調整回路により交流電圧を出力する。
【0048】
次に、交信部12は、RFIDタグ2へデータの書き込みを行う(S11)。ステップS11において、交信部12は、電圧調整部14の電圧調整回路により出力された送信電圧にて、書き込みコマンドをRFIDタグ2のタグ交信部21に送信する。ステップS11において、交信部12は、ステップS3にて読み取ったタグIDを指定して、RFIDタグ2にデータの書き込みを行う。
【0049】
次に、交信部12は、RFIDタグ2への書き込みが成功したか否かを判定する(S12)。ステップS12において、交信部12は、RFIDタグ2のタグ交信部21から受信する書き込み成功のレスポンスの有無を判定する。書き込みが成功していない場合(S12:NO)、リーダライタ1は、ステップS7を実行する。書き込みが成功した場合(S12:YES)、リーダライタ1は、図2に示すフローチャートの処理を終了する。
【0050】
電圧測定部13により測定された受信電圧に応じて電圧調整部14が送信電圧を調整する構成によれば、データの書き込み時における送信電圧を必要な場合に高くすることができる。また、電圧調整部14は、必要でない場合にはデータの書き込み時における送信電圧をデータの読み取り時における送信電圧よりも高くしなくてよい。電圧調整部14は、必要でない場合では、データの書き込み時における送信電圧をデータの読み取り時における送信電圧としてもよい。これにより、リーダライタ1によるRFIDタグ2へのデータの書き込み時において、適切に交信を行うことができるリーダライタ1を実現することができる。
【0051】
また、受信電圧が閾値未満の場合に電圧調整部14が書き込み時の送信電圧を読み取り時の送信電圧よりも高くする構成によれば、受信電圧が閾値以上である場合、電圧調整部により送信電圧の調整が行われない。これにより、リーダライタ1によるRFIDタグ2へのデータの書き込み時において、他のリーダライタと他のRFIDタグとの交信に影響を及ぼす可能性を低減することができる。
【0052】
§4 変形例
図3は、本開示の実施形態1の変形例に係るリーダライタ1による制御の一例を示すフローチャートである。本実施形態1の変形例(以下、「本変形例」とも表記する)について、図3を用いて説明する。本変形例は、電圧調整部14が、送信電圧テーブルに従ってRFIDタグ2への書き込み時における送信電圧を調整する点で、上述の実施形態と異なる。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0053】
本変形例に係るリーダライタ1による処理ついて、図3を参照して以下説明する。図3に示すステップS21~S28のそれぞれは、図2に示すフローチャートのステップS1~S8のそれぞれと同様の処理であるため、説明を省略する。ステップS28の後、電圧調整部14は、送信電圧テーブルに従って、RFIDタグ2への書き込み時における送信電圧を調整する(S29)。ステップS29において、電圧調整部14は、ステップS29にて確認された受信電圧のデジタル値に基づいて、書き込み時の送信電圧が調整される。
【0054】
図4は、送信電圧テーブルに含まれる受信電圧と送信電圧との関係を示すグラフ40を示す図である。図4を参照して、送信電圧テーブルの一例について説明する。送信電圧テーブルは、リーダライタ1の記憶部15に格納されていてもよい。送信電圧テーブルに係るグラフ40の横軸は、電圧測定部13により測定された受信電圧に対応し、右方向に向かうにつれ受信電圧が高くなっている。グラフ40の縦軸は、交信部12によりRFIDタグ2のタグ交信部21に送信される送信信号の送信電圧に対応し、上方に向かうにつれ送信電圧が高くなっている。
【0055】
グラフ40に示される受信電圧の値Vrは、特定の位置に位置するRFIDタグ2に対して、読み取り時における送信電圧にて書き込みが可能となる受信電圧の限界値である。受信電圧の値Vrは、閾値の一例である。なお、受信電圧の値Vrは、特定の位置に位置するRFIDタグ2に対して、読み取り時における送信電圧にて書き込みが可能となる受信電圧の限界値よりも高ければよい。
【0056】
グラフ40において、受信電圧が値Vr以上のとき、送信電圧は一定の値Vt1に設定されている。電圧調整部14は、電圧測定部13により測定された受信電圧が値Vr以上であった場合、送信電圧テーブルに従って、RFIDタグ2への書き込み時にタグ交信部21に送信される送信信号の送信電圧を値Vt1とする。送信電圧の値Vt1は、RFIDタグ2の読み取り時における送信電圧のデフォルト値と同一である。電圧調整部14は、書き込み時の送信電圧を値Vt1として電圧調整回路により交流電圧を生成し、生成した値Vt1の交流電圧を交信部12に出力する。
【0057】
グラフ40において、受信電圧が値Vr未満の場合、受信電圧が値Vrよりも低くなるほど、送信電圧が値Vt1よりも高くなるように設定されている。即ち、受信電圧が値Vr未満の場合、送信電圧は、RFIDタグ2の読み取り時における送信電圧よりも高い値となっている。電圧調整部14は、受信電圧が値Vr未満の場合、送信電圧テーブルに従って、RFIDタグ2への書き込み時に交信部12からRFIDタグ2のタグ交信部21に送信される送信信号の送信電圧を値Vt1よりも高い値に調整する。電圧調整部14は、送信電圧テーブルに従い、書き込み時の送信電圧を値Vt1よりも高い値にして、電圧調整回路により交流電圧を出力する。
【0058】
なお、グラフ40において、受信電圧が値Vr未満の場合の送信電圧の最大値Vt2は、ユーザにより任意に設定された値、又は無線法により法規された値に設定される。また、送信電圧テーブルにおいて、受信電圧が値Vr未満の場合、受信電圧が値Vrよりも低くなるにつれ、送信電圧が値Vt1よりも多段階に高くなるように設定されていてもよい。
【0059】
図3に示すように、リーダライタ1は、ステップS29の後、ステップS30及びS31を実行する。図3に示すステップS30及びS31のそれぞれは、図2に示すステップS11及びS12のそれぞれと同様の処理であるため、説明を省略する。
【0060】
電圧調整部14が送信データテーブルに従って書き込み時の送信電圧を調整する構成によれば、受信電圧の低さに応じて、送信電圧が高くなるように電圧調整部14により、送信電圧の調整が行われる。これにより、RFIDタグ2にデータの書き込みが行われない可能性を低減することができる。
【0061】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係るリーダライタは、RFIDタグの読み取り時に前記RFIDタグから受信し、データを正常に読み取ることが可能であった受信信号の受信電圧を測定する電圧測定部と、前記RFIDタグへの書き込み時に前記RFIDタグへ送信する送信信号の送信電圧を調整する電圧調整部と、を備え、前記電圧調整部は、測定された前記RFIDタグの読み取り時における前記受信電圧に応じて、前記RFIDタグへの書き込み時における前記送信電圧を調整する。
【0062】
本開示の態様2に係るリーダライタでは、上記態様1において、前記電圧調整部は、測定された読み取り時における前記受信電圧が閾値未満であるとき、前記RFIDタグへの書き込み時における前記送信電圧を、前記RFIDタグの読み取り時における前記送信電圧よりも高くする。
【0063】
本開示の態様3に係るリーダライタでは、上記態様2において、前記電圧調整部は、測定された前記受信電圧が前記閾値よりも低くなるほど、書き込み時における前記送信電圧を高くする。
【0064】
本開示の態様4に係るリーダライタは、上記態様1~3のいずれかにおいて、LF帯に属する周波数の電磁波又は交流磁界により前記RFIDタグと交信を行う交信部を更に備える。
【0065】
本開示の態様5に係るリーダライタの制御方法は、RFIDタグとの間にて交信を行うリーダライタを制御する制御方法であって、前記RFIDタグの読み取り時に前記RFIDタグから受信した受信信号の受信電圧を測定する電圧測定処理と、前記RFIDタグへの書き込み時に前記RFIDタグへ送信する送信信号の送信電圧を調整する電圧調整処理と、を含み、前記電圧調整処理において、前記受信信号のデータを正常に読み取ることが可能であった前記RFIDタグの読み取り時における前記受信電圧に応じて、前記RFIDタグへの書き込み時における前記送信電圧を調整する。
【0066】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1 リーダライタ
2 RFIDタグ
3 PLC
4 アンテナ
11 通信部
12 交信部
13 電圧測定部
14 電圧調整部
15 記憶部
21 タグ交信部
100 RFIDシステム
図1
図2
図3
図4