(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025085210
(43)【公開日】2025-06-05
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
F01N 3/025 20060101AFI20250529BHJP
F01N 3/033 20060101ALI20250529BHJP
F01N 13/10 20100101ALI20250529BHJP
F02D 41/08 20060101ALI20250529BHJP
F02D 41/40 20060101ALI20250529BHJP
【FI】
F01N3/025 101
F01N3/033 J
F01N13/10
F02D41/08
F02D41/40
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023198922
(22)【出願日】2023-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅見 徹也
(72)【発明者】
【氏名】長谷山 尊史
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 祟
【テーマコード(参考)】
3G004
3G190
3G301
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004AA09
3G004BA06
3G004DA01
3G004DA24
3G190AA02
3G190AA12
3G190AA16
3G190AA17
3G190BA48
3G190CA01
3G190CB18
3G190CB19
3G190CB23
3G190CB26
3G190CB34
3G190CB37
3G190DA04
3G190DA23
3G190DB02
3G190DB12
3G190DB20
3G190EA14
3G190EA23
3G301HA02
3G301HA11
3G301JA24
3G301KA07
3G301LB11
3G301MA27
(57)【要約】
【課題】EGR経路への異物の侵入を防止すること。
【解決手段】エンジンと、前記エンジンのシリンダから排出される排気ガスを排気経路とEGR経路に分岐して排出する排気マニホルドと、前記排気経路に設けられ、前記排気ガス中の微粒子を捕集するフィルタを有する排気ガス処理装置と、ポスト噴射を行って前記フィルタの再生処理を実行する再生処理制御装置と、を備え、前記再生処理制御装置は、前記ポスト噴射をする際に、排気口から前記排気経路へ向かう途中に前記EGR経路への分岐部が存在する前記シリンダのインジェクタのポスト噴射を停止する、車両。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンのシリンダから排出される排気ガスを排気経路とEGR経路に分岐して排出する排気マニホルドと、
前記排気経路に設けられ、前記排気ガス中の微粒子を捕集するフィルタを有する排気ガス処理装置と、
ポスト噴射を行って前記フィルタの再生処理を実行する再生処理制御装置と、
を備え、
前記再生処理制御装置は、
前記ポスト噴射をする際に、排気口から前記排気経路へ向かう途中に前記EGR経路への分岐部が存在する前記シリンダのインジェクタのポスト噴射を停止する、
車両。
【請求項2】
前記再生処理は、停車中にエンジンをアイドリング状態にして行われる手動再生処理である、
請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、煤や炭化水素から成る粒子等の異物がEGR経路へ侵入することを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの各シリンダで燃料が燃焼した後の排気ガスは、排気マニホルドで集められて排気管を経由して車外へ排出される。排気管の途中には、排気ガス中の微粒子(PM)や窒素酸化物(NOx)を分解、除去するために排気ガス処理装置が設けられている。
【0003】
排気ガス処理装置は、ディーゼル酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)と煤捕集フィルタ(CSF:Catalyzed Soot Filter)を有するDPD(Diesel Particulate Defuser)と、窒素酸化物還元触媒とアンモニア酸化触媒を有するSCR(Selective Catalytic Reduction)とを備えるものが知られている。排気ガス中の微粒子は煤捕集フィルタで捕集され、窒素酸化物はSCRで還元されて分解される。
【0004】
また、排気マニホルドには、排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)装置が接続され、排気ガスの一部はEGR装置を経由して吸気マニホルドへ送られて車外からの吸気と混合される。これにより、吸気中の酸素濃度が低くなり、シリンダ内での燃焼温度が下がり、排気ガス中の窒素酸化物の量が低減される。
【0005】
煤捕集フィルタに捕集された煤が増えてくると目詰まりを起こすので、その前に煤捕集フィルタの再生処理が行われる。再生処理では、排気ガス中にポスト噴射により未燃焼燃料を混合してDPDへ送り、ディーゼル酸化触媒で未燃焼燃料が燃焼することによって排気ガス温度が上昇し、高温の排気ガスによって煤捕集フィルタの煤が燃焼されることにより、煤捕集フィルタが再生する(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-282479号公報
【特許文献2】特開2011-247143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願の発明者らは、煤捕集フィルタの再生処理を繰り返し行うと、EGR経路に煤を含む粒子が堆積する場合があることを見出した。この堆積物は、排気ガス中の煤と未燃焼燃料由来の炭化水素の混合粒子からなる。EGR経路内へ侵入した粒子は冷却され、炭化水素が樹脂化してEGR経路内に堆積する。この粒子の堆積が進行すると、EGR経路の流れが妨げられる可能性がある。
【0008】
本開示は、EGR経路への異物の侵入を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る車両は、エンジンと、前記エンジンのシリンダから排出される排気ガスを排気経路とEGR経路に分岐して排出する排気マニホルドと、前記排気経路に設けられ、前記排気ガス中の微粒子を捕集するフィルタを有する排気ガス処理装置と、ポスト噴射を行って前記フィルタの再生処理を実行する再生処理制御装置と、を備え、前記再生処理制御装置は、前記ポスト噴射をする際に、排気口から前記排気経路へ向かう途中に前記EGR経路への分岐部が存在する前記シリンダのインジェクタのポスト噴射を停止する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、シリンダの排気口からEGR経路へ向かう流れの中に未燃焼燃料が含まれないので、煤と炭化水素を含む粒子(異物)がEGR装置へ侵入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される各構成要素、各構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する場合がある。
【0013】
図1は、吸気系及び排気系を含むエンジン周辺の構造を示す。エンジン本体100には複数のシリンダ1(図示の例では4つ)(個別のシリンダを示す場合にはシリンダ1-1~1-4と表す場合がある)が形成されている。各シリンダ1にはそれぞれ燃料を噴射するインジェクタ2(個別のインジェクタを示す場合にはインジェクタ2-1~2-4と表す場合がある)が設けられ、シリンダ1の内部に燃料を噴射可能に構成されている。
【0014】
車外から取り込まれた空気はエアクリーナ21で異物を取り除かれ、ターボチャージャ40のコンプレッサ42で加圧されて吸気管22を通り、インタークーラ23で冷却されて吸気管24を経由して吸気マニホルド20へ送られる。吸気管24には、吸気マニホルド20に供給する空気の流量を調整するインテークスロットル25が設けられている。吸気マニホルド20へ送られた空気は各シリンダ1へ分配される。
【0015】
一方、シリンダ1内で燃料を燃焼させることにより発生した排気ガスは、排気マニホルド10で集められて排気管分岐部15から排気管45通して車外へ排出される。排気管45にはターボチャージャ40のタービン41が設けられて排気ガスの圧力により回転され、この回転力が前記コンプレッサ42を回転させる。また、排気管45には排気ガスの流量を調整する排気バルブ43が設けられている。さらに、排気管45には排気ガス中の煤(微粒子、PM)や窒素酸化物(NOx)を除去するための排気ガス処理装置50が設けられている。
【0016】
排気バルブ43は、これを絞ることにより排気内圧が上がり、シリンダ1からの排気抵抗が増えるように構成されている。これによりエンジンの回転抵抗を増やし、エンジンブレーキの作用を強化することが可能である。
【0017】
排気ガス処理装置50は、排気ガス中の煤を捕集、燃焼除去するDPD51と、排気ガス中の窒素酸化物を分解するSCR60を有する。DPD51はディーゼル酸化触媒52、煤捕集フィルタ53、温度センサ54、捕集フィルタ差圧センサ55を有し、排気ガス中の煤は煤捕集フィルタ53で捕集される。DPD51は架装性の向上等を図るためにエンジンルーム内に設けられることもある。
【0018】
車両の走行を重ねるうちに煤捕集フィルタ53は捕集した煤により目詰まりする。この目詰まりは差圧センサ55で煤捕集フィルタ53の上流側と下流側の圧力差を測ることにより検出される。
【0019】
SCR60は窒素酸化物還元触媒61、アンモニア酸化触媒62、尿素インジェクタ63を有する。排気ガス中に尿素インジェクタ63から尿素水を供給すると、尿素水は加水分解されてアンモニアが生成される。このアンモニアと排気ガス中の窒素酸化物が窒素酸化物還元触媒61へ送られると、窒素酸化物は還元されて窒素と水が生成される。残ったアンモニアは後段に設けられているアンモニア酸化触媒62で酸化されて窒素と水が生成される。
【0020】
また、エンジンの燃費向上や排気ガス中の窒素酸化物の低減を目的としたEGR装置30、70が設けられている。窒素酸化物は、空気中の窒素と酸素が高温で反応することにより生成されることが知られている。EGR装置30、70は、排気ガスとエンジン吸気を混合してシリンダ1内の酸素濃度を下げることにより燃焼温度を下げ、窒素酸化物の生成量を低減するものである。
【0021】
EGR装置30、70は、高圧EGR装置30と低圧EGR装置70を有する。高圧EGR装置30は、排気マニホルド10から高圧EGR配管31(上流側配管)が分岐して、高圧EGRクーラ33、高圧EGR配管35(下流側配管)及び高圧EGRバルブ37を経由して吸気マニホルド20へ排気ガスを送る。一方、低圧EGR装置70は、排気ガス処理装置50から低圧EGR配管71が分岐して、低圧EGRクーラ73、低圧EGR配管75及び低圧EGRバルブ77を経由して吸気管22へ排気ガスを送る。
【0022】
煤捕集フィルタ53の目詰まりが進み、差圧センサ55が検出する圧力差が所定値以上となると、煤捕集フィルタ53の再生処理を行う。再生処理は走行中に行う自動再生と、停車中に運転者の操作により行われる手動再生がある。再生処理ではポスト噴射による未燃焼燃料を排気ガスとともにDPD51へ送るとディーゼル酸化触媒52により未燃焼燃料が燃焼して排気ガスが加熱され、この加熱された排気ガスにより煤捕集フィルタ53に捕集された煤が燃焼される。
【0023】
図2は、シリンダ1の給排気系統の概略を示す。シリンダ1には吸気マニホルド20及び排気マニホルド10が接続され、燃焼用の空気を吸気マニホルド20から導入し、燃焼後の排気ガスは排気口3(個別の排気口を示す場合には排気口3-1~3-4と表す場合がある)を通って排気マニホルド10へ排出される。排気マニホルド10には排気管分岐部15が形成され、排気管分岐部15に排気管45が接続されている。排気管45にはターボチャージャ40のタービン41及び排気バルブ43が設けられ、排気管45の下流側は排気ガス処理装置50に接続される。
【0024】
排気マニホルド10にはEGR分岐部17が形成され、EGR分岐部17に上流側の高圧EGR配管31が接続される。高圧EGR配管31には流通する排気ガスを冷却する高圧EGRクーラ33が設けられ、その下流側には下流側の高圧EGR配管35が接続される。下流側の高圧EGR配管35には高圧EGRバルブ37が設けられ、高圧EGR装置30を通る排気ガスの流量を制御可能になっている。高圧EGR配管35は吸気マニホルド20に接続される。
【0025】
図3は、シリンダ1から排出された排気ガスの流れを示す。各シリンダ1-1~1-4の排気口3-1~3-4から排出された排気ガスは、排気マニホルド10で集められ、排気管分岐部15から排気管45へ排出される流れと、EGR分岐部17から高圧EGR装置30へ送られる流れに分けられる(図中の矢印参照)。
【0026】
高圧EGR装置30へは、高圧EGRバルブ37の開度にもよるが、主に
図3で一番右のシリンダ1-4の排気口3-4から排出された排気ガスが流れ込むことになる。一方で、
図3で左側3つのシリンダ1-1~1-3の各排気口3-1~3-3から排出された排気ガスは排気管分岐部15から排気管45へ排出される。
【0027】
次に、煤捕集フィルタ53の再生処理を行う際の動作を説明する。煤捕集フィルタ53の目詰まりが進行すると、低速低負荷時の走行再生処理か、停車時の手動再生処理が行われる。再生処理時には、高圧EGRバルブ37は閉じられ、排気バルブ43は絞られる。この状態でエンジンは低速又はアイドリングで運転される。そして、シリンダ1-1~1-3のインジェクタ2-1~2-3からは燃焼後のポスト噴射が行われ、噴射された燃料は未燃焼の状態でDPD51へ送られる。このとき、排気口3-4と排気管分岐部15の間にEGR分岐部17が存在するシリンダ1-4のインジェクタ2-4はポスト噴射を停止している。
【0028】
このように、再生処理時に排気口3-4と排気管分岐部15の間にEGR分岐部17が存在するシリンダ1-4のインジェクタ2-4のポスト噴射を停止することにより、未燃焼燃料が高圧EGR配管31へ流入することがなくなり、高圧EGR装置30への煤と炭化水素粒子の堆積を防止できる。
【0029】
上記の実施の形態のエンジンは4気筒として説明したが、気筒の数はいくつでも構わない。また、ポスト噴射時にインジェクタを停止する気筒の数は、各シリンダの排気口、排気管分岐部及びEGR分岐部の配置によって定められる。要は、シリンダの排気口と排気管分岐部の間にEGR分岐部がある場合には、当該シリンダのインジェクタのポスト噴射を停止することによって、EGR経路への異物の侵入を防止するという所期の作用効果が得られる。
【0030】
EGR経路への異物の侵入は自動再生処理よりも手動再生処理の場合に多くなる傾向があり、本開示による再生処理は、手動再生処理の場合により効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
EGRへ異物が侵入することを好適に防止できる。
【符号の説明】
【0032】
1 シリンダ
2 インジェクタ
3 排気口
10 排気マニホルド
15 排気管分岐部
17 EGR分岐部
20 吸気マニホルド
30 高圧EGR装置
31 高圧EGR配管(上流側)
33 高圧EGRクーラ
35 高圧EGR配管(下流側)
37 高圧EGRバルブ
40 ターボチャージャ
41 タービン
42 コンプレッサ
43 排気バルブ
45 排気管
50 排気ガス処理装置
51 DPD
52 ディーゼル酸化触媒
53 煤捕集フィルタ
60 SCR
61 窒素酸化物還元触媒
62 アンモニア酸化触媒
63 尿素インジェクタ
【手続補正書】
【提出日】2024-09-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンのシリンダから排出される排気ガスを排出する排気マニホルドと、
前記排気マニホルドに接続された排気経路と、
前記排気経路に設けられ、前記排気ガス中の微粒子を捕集するフィルタを有する排気ガス処理装置と、
前記排気マニホルドに接続されたEGR経路と、
前記EGR経路に設けられたEGRバルブと、
前記EGRバルブが閉じられた状態でポスト噴射を行って前記フィルタの再生処理を実行する再生処理制御装置と、
を備え、
前記再生処理制御装置は、
前記ポスト噴射をする際に、排気口から前記排気経路へ向かう途中に前記EGR経路への分岐部が存在する前記シリンダのインジェクタのポスト噴射を停止する、
車両。
【請求項2】
前記再生処理は、停車中にエンジンをアイドリング状態にして行われる手動再生処理である、
請求項1に記載の車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本開示に係る車両は、エンジンと、前記エンジンのシリンダから排出される排気ガスを排出する排気マニホルドと、前記排気マニホルドに接続された排気経路と、前記排気経路に設けられ、前記排気ガス中の微粒子を捕集するフィルタを有する排気ガス処理装置と、前記排気マニホルドに接続されたEGR経路と、前記EGR経路に設けられたEGRバルブと、前記EGRバルブが閉じられた状態でポスト噴射を行って前記フィルタの再生処理を実行する再生処理制御装置と、を備え、前記再生処理制御装置は、前記ポスト噴射をする際に、排気口から前記排気経路へ向かう途中に前記EGR経路への分岐部が存在する前記シリンダのインジェクタのポスト噴射を停止する。