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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008522
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】液晶光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20250109BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20250109BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/18
G02B5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110760
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 絢香
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】井桁 幸一
(72)【発明者】
【氏名】小橋 淳二
【テーマコード(参考)】
2H149
2H249
【Fターム(参考)】
2H149AB01
2H149BA03
2H149BA22
2H149FA27W
2H149FD46
2H149FD48
2H249AA04
2H249AA18
2H249AA26
2H249AA64
2H249CA05
(57)【要約】
【課題】導光損失を抑制することが可能な液晶光学素子を提供する。
【解決手段】一本実施形態によれば、液晶光学素子は、第1主面を有する透明基板と、前記第1主面に配置され、複数の凸状体を有する配向制御層と、前記配向制御層の上に配置され、コレステリック液晶を有する液晶層と、を備え、前記配向制御層は、前記複数の凸状体が第1周期で並んだ第1配向領域と、前記複数の凸状体が第2周期で並んだ第2配向領域と、を有し、前記第2周期は、第1周期より小さく、前記液晶層は、前記第1配向領域に重なり前記第1主面に対して第1角度で傾斜した第1反射面を有する第1液晶領域と、前記第2配向領域に重なり前記第1主面に対して第2角度で傾斜した第2反射面を有する第2液晶領域と、を有し、前記第2角度は、前記第1角度より大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面を有する透明基板と、
前記第1主面に配置され、複数の凸状体を有する配向制御層と、
前記配向制御層の上に配置され、コレステリック液晶を有する液晶層と、を備え、
前記配向制御層は、前記複数の凸状体が第1周期で並んだ第1配向領域と、前記複数の凸状体が第2周期で並んだ第2配向領域と、を有し、
前記第2周期は、第1周期より小さく、
前記液晶層は、前記第1配向領域に重なり前記第1主面に対して第1角度で傾斜した第1反射面を有する第1液晶領域と、前記第2配向領域に重なり前記第1主面に対して第2角度で傾斜した第2反射面を有する第2液晶領域と、を有し、
前記第2角度は、前記第1角度より大きい、
液晶光学素子。
【請求項2】
平面視において、前記複数の凸状体の各々は、湾曲した形状を有している、
請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
前記凸状体の高さは、前記凸状体の幅より大きい、
請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
前記第1液晶領域に含まれる前記コレステリック液晶の螺旋ピッチは、前記第2液晶領域に含まれる前記コレステリック液晶の螺旋ピッチと同等である、
請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
前記第2配向領域の幅は、前記第1配向領域の幅と同等、または、前記第1配向領域の幅より大きい、
請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
前記第1配向領域の幅は、以下の式で定義される長さL1の2倍以下であり、
L1=2*d/tan(π/2-2*α1)
(但し、前記第1角度をα1とし、前記透明基板の厚さをdとする)
前記第2配向領域の幅は、以下の式で定義される長さL2の2倍以下である、
L2=2*d/tan(π/2-2*α2)
(但し、前記第2角度をα2とする)
請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項7】
第1主面を有する透明基板と、
前記第1主面に配置された配向制御層と、
前記配向制御層の上に配置され、コレステリック液晶を有する液晶層と、を備え、
前記液晶層は、前記第1主面に対して第1角度で傾斜した第1反射面を有する第1液晶領域と、前記第1主面に対して第2角度で傾斜した第2反射面を有する第2液晶領域と、を有し、
前記第1液晶領域に含まれる前記コレステリック液晶の螺旋ピッチは、前記第2液晶領域に含まれる前記コレステリック液晶の螺旋ピッチと同等であり、
前記第2角度は、前記第1角度とは異なる、
液晶光学素子。
【請求項8】
前記配向制御層は、複数の凸状体を有し、
前記透明基板と前記第1液晶領域との間において、前記複数の凸状体は、第1周期で並び、
前記透明基板と前記第2液晶領域との間において、前記複数の凸状体は、第2周期で並び、
前記第2周期は、第1周期とは異なる、
請求項7に記載の液晶光学素子。
【請求項9】
前記第2周期は、第1周期より小さく、
前記第2角度は、前記第1角度より大きい、
請求項8に記載の液晶光学素子。
【請求項10】
前記配向制御層は、光配向膜である、
請求項7に記載の液晶光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液晶光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶材料を用いた液晶偏光格子が提案されている。このような液晶偏光格子では、所望の光学性能を実現する上で、格子周期、液晶層の屈折率異方性(液晶層の異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)、及び、液晶層の厚さといった各種パラメータが調整される。
透明基板の内部で全反射を繰り返しながら導光する液晶光学素子においては、光が外部に漏れ出す導光損失を抑制することが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-522601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、導光損失を抑制することが可能な液晶光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、液晶光学素子は、
第1主面を有する透明基板と、前記第1主面に配置され、複数の凸状体を有する配向制御層と、前記配向制御層の上に配置され、コレステリック液晶を有する液晶層と、を備え、前記配向制御層は、前記複数の凸状体が第1周期で並んだ第1配向領域と、前記複数の凸状体が第2周期で並んだ第2配向領域と、を有し、前記第2周期は、第1周期より小さく、前記液晶層は、前記第1配向領域に重なり前記第1主面に対して第1角度で傾斜した第1反射面を有する第1液晶領域と、前記第2配向領域に重なり前記第1主面に対して第2角度で傾斜した第2反射面を有する第2液晶領域と、を有し、前記第2角度は、前記第1角度より大きい。
【0006】
一実施形態によれば、液晶光学素子は、
第1主面を有する透明基板と、前記第1主面に配置された配向制御層と、前記配向制御層の上に配置され、コレステリック液晶を有する液晶層と、を備え、前記液晶層は、前記第1主面に対して第1角度で傾斜した第1反射面を有する第1液晶領域と、前記第1主面に対して第2角度で傾斜した第2反射面を有する第2液晶領域と、を有し、前記第1液晶領域に含まれる前記コレステリック液晶の螺旋ピッチは、前記第2液晶領域に含まれる前記コレステリック液晶の螺旋ピッチと同等であり、前記第2角度は、前記第1角度とは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、液晶光学素子100の一構成例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示した配向制御層2の一例を示す平面図である。
図3図3は、凸状体20の形状の一例を示す図である。
図4図4は、液晶層3に含まれるコレステリック液晶CLの一例を説明するための図である。
図5図5は、液晶層3における液晶分子の配向パターンを模式的に示す平面図である。
図6図6は、幅L21及び幅L22の最適な範囲を説明するための図である。
図7図7は、比較例を示す図である。
図8図8は、凸状体の変形例1を示す平面図である。
図9図9は、凸状体の変形例2を示す平面図である。
図10図10は、凸状体の変形例3を示す平面図である。
図11図11は、凸状体の変形例4を示す平面図である。
図12図12は、凸状体の変形例5を示す平面図である。
図13図13は、凸状体の変形例6を示す平面図である。
図14図14は、液晶光学素子100の他の構成例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X軸及びZ軸によって規定される面をX-Z平面と称し、Y軸及びZ軸によって規定される面をY-Z平面と称する。
【0010】
図1は、液晶光学素子100の一構成例を模式的に示す断面図である。
【0011】
液晶光学素子100は、透明基板1と、配向制御層2と、液晶層3と、を備えている。
【0012】
透明基板1は、例えば、透明なガラス板または透明な合成樹脂板によって構成されている。透明基板1は、例えば、可撓性を有する透明な合成樹脂板によって構成されていてもよい。透明基板1は、任意の形状を取り得る。例えば、透明基板1は、湾曲していてもよい。
【0013】
本明細書において、『光』は、可視光及び不可視光を含むものである。例えば、可視光域の下限の波長は350nm以上400nm以下であり、可視光域の上限の波長は700nm以上830nm以下である。可視光は、第1波長帯(例えば400nm~500nm)の第1成分(青成分)、第2波長帯(例えば500nm~600nm)の第2成分(緑成分)、及び、第3波長帯(例えば600nm~700nm)の第3成分(赤成分)を含んでいる。不可視光は、第1波長帯より短波長帯の紫外線、及び、第3波長帯より長波長帯の赤外線を含んでいる。
本明細書において、『透明』は、無色透明であることが好ましい。ただし、『透明』は、半透明又は有色透明であってもよい。
【0014】
透明基板1は、X-Y平面に沿った平板状に形成され、第1主面(内面)F1と、第2主面(外面)F2と、を有している。第1主面F1及び第2主面F2は、X-Y平面に略平行な面であり、第3方向Zにおいて、互いに対向している。
【0015】
配向制御層2は、第1主面F1に配置されている。配向制御層2は、複数の微小な凸状体20を有している。凸状体20の各々は、第1主面F1から第3方向Zに沿って延出している。このような複数の凸状体20は、後に詳述するが、液晶層3に含まれる液晶分子の配向方向を規定する機能を有するものである。
【0016】
配向制御層2は、複数の凸状体20が第1周期Λ1で第1方向Xに並んだ第1配向領域21と、複数の凸状体20が第2周期Λ2で第1方向Xに並んだ第2配向領域22と、を有している。第1配向領域21及び第2配向領域22は、第1方向Xに沿って交互に並んでいる。第1周期Λ1及び第2周期Λ2は互いに異なり、図示した例では、第2周期Λ2は第1周期Λ1より小さい。
【0017】
液晶層3は、第3方向Zにおいて、配向制御層2の上に配置され、凸状体20の各々を覆っている。液晶層3は、拡大して模式的に示すように、第1旋回方向に旋回したコレステリック液晶CLを有している。コレステリック液晶CLは、第3方向Zにほぼ平行な螺旋軸AXを有し、また、第3方向Zに沿った螺旋ピッチPを有している。螺旋ピッチPは、螺旋の1周期(液晶分子が360度回転するのに要する螺旋軸AXに沿った層厚)を示す。
【0018】
液晶層3は、第1配向領域21に重なる第1液晶領域31と、第2配向領域22に重なる第2液晶領域32と、を有している。第1液晶領域31及び第2液晶領域32は、第1方向Xに沿って交互に並んでいる。第1液晶領域31は、第1主面F1に対して第1角度α1で傾斜した第1反射面31Rを有している。第2液晶領域32は、第1主面F1に対して第2角度α2で傾斜した第2反射面32Rを有している。第1角度α1及び第2角度α2は互いに異なり、図示した例では、第2角度α2は第1角度α1より大きい。
【0019】
第1反射面31R及び第2反射面32Rでは、液晶層3への入射光のうち、コレステリック液晶CLの螺旋ピッチP及び液晶層3の屈折率異方性Δnに応じて決定される選択反射帯域の円偏光が反射される。選択反射帯域は、可視光の特定の波長であってもよいし、紫外線や赤外線などの不可視光であってもよい。
【0020】
例えば、第1旋回方向が右回りの場合、右回りの円偏光が第1反射面31R及び第2反射面32Rで反射され、第1旋回方向が左回りの場合、左回りの円偏光が第1反射面31R及び第2反射面32Rで反射される。なお、本明細書において、液晶層3における「反射」とは、液晶層3の内部における回折を伴うものである。また、本明細書において、円偏光は、厳密な円偏光であってもよいし、楕円偏光に近似した円偏光であってもよい。
【0021】
このような液晶光学素子100は、例えば透明基板1の側から入射した光の一部を液晶層3の第1反射面31R及び第2反射面32Rで透明基板1に向けて反射するように構成されている。第1反射面31R及び第2反射面32Rで反射された光は、透明基板1と空気層との界面、及び、液晶層3と空気層との界面において、反射を繰り返しながら、第2方向Yに沿って伝搬される。このような液晶光学素子100は、選択反射帯域の光に対する導光素子として機能する。
【0022】
なお、液晶光学素子100において、図1に示した液晶層3に、他のコレステリック液晶を有する液晶層が積層されていてもよい。他のコレステリック液晶とは、例えば、図示した螺旋ピッチPとは異なる螺旋ピッチを有するコレステリック液晶や、第1旋回方向とは逆回りの第2旋回方向に旋回したコレステリック液晶などである。
【0023】
図2は、図1に示した配向制御層2の一例を示す平面図である。
【0024】
第1配向領域21において、凸状体20の各々は、平面視において、同様に湾曲したアーチ状に形成されている。複数の凸状体20は、第1方向X及び第2方向Yにそれぞれ配列されている。第1方向Xに隣接する凸状体20の第1周期Λ1は、第2方向Yに隣接する凸状体20のピッチP20とは異なる。一例では、第1周期Λ1は、ピッチP20より大きい。第1配向領域21の第1方向Xに沿った幅L21は、第1周期Λ1の整数倍である。
【0025】
第2配向領域22において、凸状体20の各々は、平面視において、同様に湾曲したアーチ状に形成されている。但し、第2配向領域22の凸状体20の形状は、第1配向領域21の凸状体20の形状とは異なる。複数の凸状体20は、第1方向X及び第2方向Yにそれぞれ配列されている。第1方向Xに隣接する凸状体20の第2周期Λ2は、第2方向Yに隣接する凸状体20のピッチP20とは異なる。一例では、第2周期Λ2は、ピッチP20より大きい。なお、図示した例では、第1配向領域21のピッチP20及び第2配向領域22のピッチP20は、同等であるが、互いに異なっていてもよい。第2配向領域22の第1方向Xに沿った幅L22は、第2周期Λ2の整数倍である。幅L22は、幅L21と同等、または、幅L21より大きい。
【0026】
図3は、凸状体20の形状の一例を示す図である。
【0027】
凸状体20は、例えば、有機材料によって形成されているが、無機材料によって形成されてもよい。凸状体20の屈折率は、透明基板1の屈折率と同等である。このため、透明基板1と凸状体20との界面に到達した光は、ほとんど屈折されない。
【0028】
凸状体20の各々は、第3方向Zに沿ってほぼ一定の高さH20を有している。高さH20は、凸状体20の幅W20より大きい。液晶分子の配向方向を規定する観点では、高さH20は大きいことが望ましい。高さH20は、例えば、幅W20の4倍以上である。一例では、幅W20は100nmであり、高さH20は400nmである。
【0029】
図4は、液晶層3に含まれるコレステリック液晶CLの一例を説明するための図である。
【0030】
なお、図4では、液晶層3を第3方向Zに拡大して図示している。また、簡略化のため、コレステリック液晶CLを構成する液晶分子LM1として、X-Y平面に平行な同一平面に位置する複数の液晶分子のうちの1つの液晶分子LM1を図示している。図示した液晶分子LM1の配向方向は、同一平面に位置する複数の液晶分子の平均的な配向方向に相当する。
【0031】
第1液晶領域31の第1方向Xに沿った幅L31は、図2に示した第1配向領域21の幅L21と同等である。第2液晶領域32の第1方向Xに沿った幅L32は、図2に示した第2配向領域22の幅L22と同等である。
【0032】
第1液晶領域31に含まれるコレステリック液晶CL、及び、第2液晶領域32に含まれるコレステリック液晶CLは、いずれも同一方向に旋回し、しかも、同等の螺旋ピッチPを有している。
【0033】
点線で囲んだ1つのコレステリック液晶CLに着目すると、コレステリック液晶CLは、旋回しながら第3方向Zに沿って螺旋状に積み重ねられた複数の液晶分子LM1によって構成されている。複数の液晶分子LM1は、コレステリック液晶CLの一端側の液晶分子LM11を有している。
【0034】
液晶層3において、第1方向Xに沿って隣接する複数のコレステリック液晶CLの配向方向は、互いに異なっている。また、第1方向Xに沿って隣接するコレステリック液晶CLの空間位相は、互いに異なっている。
【0035】
第1方向Xに沿って隣接する複数の液晶分子LM11の配向方向は、互いに異なっている。また、複数の液晶分子LM11の配向方向は、第1方向Xに沿って連続的に変化している。液晶分子LM11の配向方向については、後述する。
【0036】
第1反射面31R及び第2反射面32Rは、X-Y平面に対して傾斜している。ここでの第1反射面31R及び第2反射面32Rは、液晶分子LM1の配向方向が揃った面、あるいは、空間位相が揃った面(等位相面)に相当する。
【0037】
このような液晶層3は、液晶分子LM1の配向方向が固定された状態で硬化している。つまり、液晶分子LM1の配向方向は、電界に応じて制御されるものではない。このため、液晶光学素子100は、液晶層3に電界を形成するための電極を備えていない。
【0038】
一般的に、コレステリック液晶CLを有する液晶層3において、垂直入射した光に対する選択反射帯域Δλは、コレステリック液晶CLの螺旋ピッチP、液晶層3の屈折率異方性Δn(異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)に基づいて、次の式(1)で示される。
Δλ=Δn*P…(1)
選択反射帯域Δλの具体的な波長範囲は、(no*P)以上、(ne*P)以下の範囲である。
【0039】
選択反射帯域Δλの中心波長λmは、コレステリック液晶CLの螺旋ピッチP、液晶層3の平均屈折率nav(=(ne+no)/2)に基づいて、次の式(2)で示される。
λm=nav*P…(2)
【0040】
図5は、液晶層3における液晶分子の配向パターンを模式的に示す平面図である。
【0041】
ここでは、コレステリック液晶CLに含まれる液晶分子LM1のうち、その一端側の液晶分子LM11の配向パターンを示している。
【0042】
第1方向Xに沿って並んだ液晶分子LM11の配向方向は、互いに異なる。一方、第2方向Yに沿って並んだ液晶分子LM11の配向方向は、略一致している。
【0043】
ここで、第1方向Xに並んだ液晶分子LM11に着目すると、各液晶分子LM11の配向方向は、一定角度ずつ異なっている。つまり、第1方向Xに沿って並んだ複数の液晶分子LM11の配向方向は、線形に変化している。したがって、第1方向Xに沿って並んだ複数のコレステリック液晶CLの空間位相は、第1方向Xに沿って線形に変化している。その結果、図4に示した液晶層3のように、X-Y平面に対して傾斜する第1反射面31R及び第2反射面32Rが形成される。ここでの「線形に変化」は、例えば、液晶分子LM11の配向方向の変化量が1次関数で表されることを示す。なお、ここでの液晶分子LM11の配向方向とは、X-Y平面における液晶分子LM11の長軸方向に相当する。このような液晶分子LM11の配向方向は、配向制御層2の凸状体20によって制御することができる。
【0044】
一平面内において、第1方向Xに沿って液晶分子LM11の配向方向が180度だけ変化するときの2つの液晶分子LM11の第1方向Xに沿った間隔を周期Λと定義する。例えば、第1液晶領域31においては、図の左側から右側に向かって、液晶分子LM11の配向方向は、反時計回りに一定角度ずつ変化している。第1液晶領域31の周期Λ1は、図2に示した第1配向領域21の第1周期Λ1に一致している。第2液晶領域32の周期Λ2は、図2に示した第2配向領域22の第2周期Λ2に一致している。
【0045】
図1に示した第1液晶領域31の第1反射面31Rの第1角度α1は、第1周期Λ1及び螺旋ピッチPに応じて設定される。同様に、図1に示した第2液晶領域32の第2反射面32Rの第2角度α2は、第2周期Λ2及び螺旋ピッチPに応じて設定される。
【0046】
上記の液晶光学素子100は、例えば、以下のような手法で形成される。
【0047】
まず、透明基板1の上に紫外線硬化型の樹脂材料を塗布する。その後、予め凸状体20の形状に応じた凹部が形成された金型を用意し、金型を樹脂材料に重ね合わせ、加圧しながら紫外線を照射する。これにより、樹脂材料が金型の凹部に応じた形状に硬化し、凸状体20が形成される。
【0048】
続いて、配向制御層2の上に液晶材料(コレステリック液晶CLを形成するためのモノマー材料を含む溶液)を塗布する。その後、チャンバ内を減圧することで溶媒を除去し、塗布した液晶材料を乾燥し、さらに、液晶材料をベークする。これにより、液晶材料に含まれる液晶分子は、凸状体20の形状に応じて所定の方向に配向する。例えば、液晶分子LM1のうち、第1主面F1の近傍の液晶分子LM11は、隣接する凸状体20の間において、X-Y平面に沿うように水平配向するとともに、その長軸が凸状体20の接線に沿うように配向する。液晶分子LM11の直上に位置する他の液晶分子LM1は、液晶分子LM11を起点として旋回しながら第3方向Zに沿って螺旋状に重なる。このように、液晶分子LM11の配向方向に応じて、液晶分子LM1の配向方向が固定される。
【0049】
その後、液晶材料を室温程度まで冷却し、液晶材料に紫外線を照射して液晶材料を硬化する。これにより、コレステリック液晶CLを有する液晶層3が形成される。
【0050】
次に、第1配向領域21の幅L21、及び、第2配向領域22の幅L22の最適な範囲について検討する。
【0051】
図6は、幅L21及び幅L22の最適な範囲を説明するための図である。
【0052】
透明基板1は、第3方向Zに沿った厚さdを有し、屈折率nwを有するものとする。配向制御層2においては、詳述しないが凸状体が周期Λで並んでいるものとする。液晶層3は屈折率nCLCを有し、コレステリック液晶CLは螺旋ピッチPを有し、反射面3Rは角度αで傾斜しているものとする。
【0053】
ここでは、円偏光である光LTiが透明基板1の法線に沿って入射した場合を想定する。光LTiは、透明基板1及び配向制御層2を透過した後に、液晶層3に入射し、反射面3Rで反射・回折される。反射面3Rで反射された光LTrは、再び透明基板1に入射し、透明基板1と空気層との界面に到達する。界面に到達する光LTrの入射角は、臨界角βより大きい。このため、界面において、光LTrは、全反射される。
【0054】
このとき、光LTiと光LTrとのなす角度を、光の回折角θCLCと定義する。回折角θCLCは、角度αの2倍に相当する。
【0055】
角度αは、図中の関係式(11)で示すように、臨界角βの1/2より大きく、限界傾斜角α´より小さい範囲に設定される。
【0056】
限界傾斜角α´は、図中の式(12)で定義する。すなわち、反射面3Rにおいて回折角θCLC(=2*α´)で反射された光LTrが液晶層3から透明基板1に向かって進行する際に、光LTrが液晶層3と透明基板1との界面で全反射される条件に基づき、α´について解くと、式(12)が得られる。なお、ここでは、配向制御層2の存在を無視している。
要するに、反射面3Rで反射された光LTrが液晶層3と透明基板1との界面で全反射されることなく透明基板1に入射するためには、角度αは、限界傾斜角α´より小さい範囲に設定すればよい。
【0057】
周期Λは、図中の式(13)で示される。
【0058】
光LTiの入射位置と、光LTrが透明基板1と空気層との界面で全反射される位置との第1方向Xに沿った距離Lは、図中の式(14)で示される。
【0059】
図中の角度αは、上記の第1角度α1及び第2角度α2に置換することができる。また、周期Λは、上記の第1周期Λ1及び第2周期Λ2に置換することができる。
【0060】
ここで、第1配向領域21及び第1液晶領域31について検討する。
第1反射面31Rの第1角度α1は、関係式(11)に基づき、臨界角βの1/2より大きく、限界傾斜角α´より小さい範囲に設定される。
第1周期Λ1は、式(13)に基づき、P/(2*tanα1)として示される。
第1配向領域21の幅L21及び第1液晶領域31の幅L31は、式(14)に基づき、以下の式で定義される長さL1の2倍以下に設定される。
L1=2*d/tan(π/2-2*α1)
【0061】
次に、第2配向領域22及び第2液晶領域32について検討する。
第2反射面32Rの第2角度α2は、関係式(11)に基づき、臨界角βの1/2より大きく、限界傾斜角α´より小さい範囲に設定される。
第2周期Λ2は、式(13)に基づき、P/(2*tanα2)として示される。
第2配向領域22の幅L22及び第2液晶領域32の幅L32は、式(14)に基づき、以下の式で定義される長さL2の2倍以下に設定される。
L2=2*d/tan(π/2-2*α2)
【0062】
ここで、幅L21及び幅L31を長さL1の2倍以下に設定し、幅L22及び幅L32を長さL2の2倍以下に設定する根拠について図7の比較例を参照しながら説明する。
【0063】
比較例では、液晶層3は、一様に傾斜した反射面3Rを有している。なお、ここでは、配向制御層の図示を省略している。
【0064】
透明基板1に入射する光LTiは、例えば左回りの円偏光である。光LTiは、反射面3Rで反射され、偏光状態を維持し、光LTr1として透明基板1に入射する。光LTr1は、透明基板1と空気層との界面で反射され、右回りの円偏光に変換され、光LTr2として再び液晶層3に入射する。光LTr2は、光LTiとは逆回りの円偏光であるため、液晶層3で反射されることなく、液晶層3と空気層との界面で反射される。界面で反射された光LTr3は、左回りの円偏光である。このため、光LTr3は、反射面3Rで反射される。このとき、反射面3Rで反射された光LTr4が臨界角より小さい入射角で液晶層3と空気層との界面に到達すると、光LTr4は、液晶光学素子100の外部に漏れ出してしまう。このような光漏れは、導光損失の一因となる。
【0065】
光LTiが透明基板1に入射する位置から、透明基板1と空気層との界面で反射された光LTr2が再び液晶層3に入射する位置までの第1方向Xに沿った距離は、2*Lに相当する。
【0066】
上記の実施形態によれば、第1反射面31Rを有する第1液晶領域31の幅L31は長さL1の2倍以下であり、第2反射面32Rを有する第2液晶領域32の幅L32は長さL2の2倍以下である。
【0067】
このため、光LTiが第1液晶領域31の第1反射面31Rで反射された場合、透明基板1と空気層との界面で反射された光LTr2は、第2液晶領域32に入射する。第2液晶領域32では、第2反射面32Rは、第1反射面31Rとは異なる角度で傾斜している。このため、光LTr3が第2反射面32Rで反射された場合に、光LTr4の入射角が全反射条件から外れる確率を低減することができ、光の漏れ出しを抑制することができる。
【0068】
同様に、光LTiが第2液晶領域32の第2反射面32Rで反射された場合、透明基板1と空気層との界面で反射された光LTr2は、第1液晶領域31に入射する。第1液晶領域31では、光LTr3が第1反射面31Rで反射された場合に、光LTr4の入射角が全反射条件から外れる確率を低減することができ、光の漏れ出しを抑制することができる。
【0069】
したがって、導光損失を抑制することができる。
【0070】
《実施例》
透明基板1の屈折率nwが1.5であり、液晶層3の屈折率nCLCが約1.7であり、螺旋ピッチPが約570nmである場合、限界傾斜角α´は約29°である。空気に対する臨界角βは約42°である。このため、第1角度α1及び第2角度α2は、図6に示した関係式(11)及び式(12)に基づき、21°より大きく、29°より小さい範囲に設定される。
【0071】
第1角度α1及び第2角度α2がこのような範囲の場合、図6に示した式(13)に基づき、第1周期Λ1及び第2周期Λ2は、約510nm以上、約750nm以下の範囲に設定される。例えば、第1角度α1を21°に設定するためには、第1周期Λ1は750nmに設定される。また、第2角度α2を29°に設定するためには、第2周期Λ2は510nmに設定される。
【0072】
透明基板1の厚さdが10mmである場合、第1配向領域21の幅L21及び第1液晶領域31の幅L31は36mm以下に設定され、また、第2配向領域22の幅L22及び第2液晶領域32の幅L32は64mm以下に設定される。なお、幅L21及び幅L31は(2*L1)以下であればよく、幅L22及び幅L32は(2*L2)以下であればよい。このため、幅L21、幅L31、幅L22、及び、幅L32がいずれも等しく、例えば、35mmに設定されてもよい。
【0073】
以下に、第1配向領域21及び第2配向領域22における凸状体のレイアウトについて、いくつかの変形例について説明する。
【0074】
図8は、凸状体の変形例1を示す平面図である。
変形例1では、図2に示したアーチ状の凸状体20に加えて、第2方向Yに沿って直線状に延出した凸状体20Lが追加されている。凸状体20Lは、第1方向Xに隣接する凸状体20の間に位置している。
【0075】
図9は、凸状体の変形例2を示す平面図である。
変形例2では、図2に示したアーチ状の凸状体20に加えて、凸状体20よりも全長が短い凸状体20Aが追加されている。凸状体20Aは、アーチ状に形成されている。凸状体20及び凸状体20Aは、第2方向Yに交互に並んでいる。
【0076】
図10は、凸状体の変形例3を示す平面図である。
変形例3では、図9に示した凸状体20及び凸状体20Aに加えて、第2方向Yに沿って直線状に延出した凸状体20Lが追加されている。凸状体20Lは、第1方向Xに隣接する凸状体20の間に位置している。
【0077】
図11は、凸状体の変形例4を示す平面図である。
変形例4では、互いに異なる形状の凸状体201及び凸状体202が第2方向Yに交互に並んでいる。凸状体201及び凸状体202の各々は、アーチ状に形成されているが、図において、左右非対称の形状を有している。但し、凸状体201の形状は、第2方向Yに平行な軸Oに対して、凸状体202の形状と線対称である。
凸状体201においては、軸Oと交差するピーク201Pの位置を中心として、図の右側の長さが図の左側の長さよりも短い。凸状体202においては、軸Oと交差するピーク202Pの位置を中心として、図の右側の長さが図の左側の長さよりも長い。
【0078】
図12は、凸状体の変形例5を示す平面図である。
変形例5では、図11に示した凸状体201及び凸状体202に加えて、第2方向Yに沿って直線状に延出した凸状体20Lが追加されている。凸状体20Lは、第1方向Xに隣接する凸状体201と凸状体202との間に位置している。但し、凸状体20Lは、凸状体201及び凸状体202から離間している。
【0079】
図13は、凸状体の変形例6を示す平面図である。
変形例6では、図12に示した凸状体201、凸状体202、及び、凸状体20Lが一体化されている。
【0080】
図8乃至図13に示した変形例が適用された場合であっても、上記したのと同様の効果が得られる。
【0081】
図14は、液晶光学素子100の他の構成例を模式的に示す断面図である。
図14に示す構成例は、図1に示した構成例と比較して、配向制御層2が光照射によって配向処理される光配向膜である点で相違している。液晶光学素子100は、透明基板1と液晶層3との間に微小な凸状体を備えていない。
【0082】
このような配向制御層2は、例えば、以下の手法で形成することができる。
まず、透明基板1の上に、配向膜用の溶液を塗布し、薄膜を形成する。その後、薄膜に対して配向軸のパターンを形成するための配向処理を行う。配向処理では、互いに逆回りの円偏光で干渉縞を形成し、この干渉縞のパターンを有する干渉光で薄膜の第1領域を露光する。これにより、第1配向領域21が形成される。その後、異なる干渉縞のパターンを有する干渉光で薄膜の第2領域を露光する。これにより、第2配向領域22が形成される。その後、薄膜をベークすることで、配向軸が固定される。このような手法により、所定の配向軸のパターンを有する配向制御層2が形成される。
【0083】
配向制御層2として、光配向膜が適用された場合であっても、上記したのと同様の効果が得られる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態によれば、導光損失を抑制することが可能な液晶光学素子を提供することができる。
【0085】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
100…液晶光学素子
1…透明基板 F1…第1主面 F2…第2主面
2…配向制御層 20…凸状体 21…第1配向領域 22…第2配向領域
3…液晶層 31…第1液晶領域 32…第2液晶領域
CL…コレステリック液晶
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14