(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008533
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110774
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】満永 智明
(72)【発明者】
【氏名】西畑 雅由
(57)【要約】
【課題】熱抵抗を低減できる半導体モジュールを提供すること。
【解決手段】半導体モジュールは、冷却器、冷却器上に配置された基板40、および複数の半導体素子を備える。基板40は、絶縁基材41、絶縁基材上に配置され、パターニングされた導体42、導体42とは反対の面上に配置された導体43を有する。冷却器と裏面導体との間には、接合材が介在している。導体42は、X方向に並ぶ複数の半導体素子のドレイン電極が共通接続された基部421a,423aを含む複数の配線パターンを有する。基部421aは、Y方向において基板40の中央領域に配置されている。
【選択図】
図63
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器(23)と、
絶縁基材(41)と、前記絶縁基材上に配置され、パターニングされた表面導体(42)と、前記表面導体とは反対の面上に配置された裏面導体(43)と、を有し、前記冷却器上に配置された基板(40)と、
前記冷却器と前記裏面導体との間に介在する熱伝導部材(24)と、
前記表面導体に接合された第1主電極(31)と、前記第1主電極とは反対の面に設けられた第2主電極(32)と、を有する複数の半導体素子(30)と、
を備え、
前記表面導体は、所定方向に並ぶ複数の前記半導体素子の前記第1主電極が共通接続された素子実装部(421a,423a)を少なくともひとつ含む複数の配線パターンを有し、
前記素子実装部のひとつが、前記所定方向に直交する直交方向において前記基板の中央領域に配置されている、半導体モジュール。
【請求項2】
前記表面導体は、前記直交方向において前記複数の配線パターンに分断されている、請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記基板は、前記表面導体を前記所定方向に横断するように設けられた、前記表面導体が配置されていない非配置領域(411)を有する、請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
複数の前記半導体素子は、上下アーム回路の上アーム(9H)を提供し、前記所定方向に並んで配置された複数の上アーム素子(30H)と、前記上下アーム回路の下アーム(9L)を提供し、前記所定方向に並んで配置された複数の下アーム素子(30L)と、を含み、
前記素子実装部は、複数の前記上アーム素子の前記第1主電極が共通接続された上アーム実装部(421a)と、複数の前記下アーム素子の前記第1主電極が共通接続された下アーム実装部(423a)と、を含み、
前記上アーム実装部および前記下アーム実装部のひとつが、前記直交方向において前記中央領域に配置され、前記上アーム実装部および前記下アーム実装部の他のひとつが前記中央領域の外に配置されている、請求項1~3いずれか1項に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記表面導体は、主配線部として、前記上アーム実装部を介して前記上アーム素子の前記第1主電極に電気的に接続される上アーム配線部(421b)、および、前記下アーム素子の前記第2主電極に電気的に接続される下アーム配線部(422)を有し、
前記直交方向において前記上アーム実装部と前記下アーム実装部との間に、前記中央領域に配置された前記半導体素子とは電気的に分離された前記主配線部が配置されている、請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記基板の板厚方向の平面視における面積は、前記中央領域に配置された前記素子実装部のほうが、前記中央領域の外に配置された前記素子実装部よりも小さい、請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記表面導体は、前記裏面導体よりも厚い、請求項1に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、半導体モジュールを開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、冷却器上に基板が配置されている。基板の導体は、複数の配線パターンを有している。配線パターンは、ひとつのアームを構成する複数の素子が共通接続された素子実装部を含んでいる。このように、複数の素子が並列接続されてひとつのアームを提供する構成では、体格の増大を抑制するために、素子の間隔をできるだけ詰めて配置する。このため、素子同士の熱干渉により熱抵抗が悪化するという問題がある。上記した観点において、または言及されていない他の観点において、半導体モジュールにはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、熱抵抗を低減できる半導体モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のひとつの態様は、半導体モジュールであって、
冷却器(23)と、
絶縁基材(41)と、絶縁基材上に配置され、パターニングされた表面導体(42)と、表面導体とは反対の面上に配置された裏面導体(43)と、を有し、冷却器上に配置された基板(40)と、
冷却器と裏面導体との間に介在する熱伝導部材(24)と、
表面導体に接合された第1主電極(31)と、第1主電極とは反対の面に設けられた第2主電極(32)と、を有する複数の半導体素子(30)と、
を備え、
表面導体は、所定方向に並ぶ複数の半導体素子の第1主電極が共通接続された素子実装部(421a,423a)を少なくともひとつ含む複数の配線パターンを有し、
素子実装部のひとつが、所定方向に直交する直交方向において基板の中央領域に配置されている。
【0007】
開示の半導体モジュールによれば、パターニングされた表面導体により、基板が冷却器側に凸の反りを有する。基板は、直交方向において中央領域を凸の頂点として反っている。よって、熱伝導部材の厚みは、凸の頂点付近、つまり中央領域の直下において薄い。素子実装部を中央領域に配置するため、複数の半導体素子が並列接続される構成において、熱抵抗を低減することができる。
【0008】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置が適用される電力変換装置の回路構成を示す図である。
【
図2】半導体モジュールの一例を示す斜視図である。
【
図7】
図5のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】コンデンサと基板との接続構造の別例を示す断面図である。
【
図9】コンデンサと基板との接続構造の別例を示す断面図である。
【
図10】コンデンサと基板との接続構造の別例を示す断面図である。
【
図14】スナバ回路による通電経路の配置を示す図である。
【
図18】第2実施形態に係る半導体装置において、半導体素子を示す平面図である。
【
図20】半導体装置、および半導体モジュールの部分断面図である。
【
図21】クリップおよび半導体素子との接続構造の一例を示す平面図である。
【
図23】クリップおよび半導体素子との接続構造の別例を示す平面図である。
【
図29】クリップおよび半導体素子との接続構造の別例を示す平面図である。
【
図41】第3実施形態に係る半導体装置の一例を示す平面図である。
【
図43】出力端子と分岐端子の位置関係を示す図である。
【
図44】出力端子と分岐端子の位置関係を示す図である。
【
図45】出力端子と分岐端子の位置関係を示す図である。
【
図46】出力端子と分岐端子の位置関係を示す図である。
【
図49】第4実施形態に係る半導体装置の一例を示す平面図である。
【
図53】第5実施形態に係る半導体モジュールの一例を示す平面図である。
【
図54】半導体モジュールにおいて、ハウジングを除いた状態を示す平面図である。
【
図57】シール材の厚みと熱抵抗との関係を示す図である。
【
図58】半導体モジュールの参考例を示す断面図である。
【
図60】半導体モジュールの別例を示す断面図である。
【
図61】第6実施形態に係る半導体モジュールの一例を示す断面図である。
【
図63】
図62のLXIII-LXIII線に沿う断面図である。
【
図64】半導体モジュールにおける基板の反りを示す断面図である。
【
図65】半導体モジュールの別例を示す平面図である。
【
図66】並列回路における発振を説明するための図である。
【
図67】第7実施形態に係る半導体装置の一例を示す平面図である。
【
図68】半導体装置により提供される上下アーム回路の等価回路図を示す図である。
【
図72】
図71のLXXII-LXXII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。なお、Aおよび/またはBとの記載は、AおよびBの少なくともひとつを意味する。つまり、Aのみ、Bのみ、AとBの両方、を含み得る。
【0011】
本実施形態の半導体装置、半導体装置を備える半導体モジュールは、たとえば、回転電機を駆動源とする移動体の電力変換装置に適用される。移動体は、たとえば、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)などの電動車両、電動垂直離着陸機やドローンなどの飛行体、船舶、建設機械、農業機械などである。以下では、車両に適用される例について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、
図1に基づき、車両の駆動システムの概略構成について説明する。
【0013】
<車両の駆動システム>
図1に示すように、車両の駆動システム1は、直流電源2と、モータジェネレータ3と、電力変換装置4を備えている。
【0014】
直流電源2は、充放電可能な二次電池で構成された直流電圧源である。二次電池は、たとえばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池である。モータジェネレータ3は、三相交流方式の回転電機である。モータジェネレータ3は、車両の走行駆動源、すなわち電動機として機能する。モータジェネレータ3は、回生時に発電機として機能する。電力変換装置4は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で電力変換を行う。
【0015】
<電力変換装置>
次に、
図1に基づき、電力変換装置4の回路構成について説明する。電力変換装置4は、電力変換回路を備えている。本実施形態の電力変換装置4は、平滑コンデンサ5と、電力変換回路であるインバータ6を備えている。
【0016】
平滑コンデンサ5は、主として、直流電源2から供給される直流電圧を平滑化する。平滑コンデンサ5は、高電位側の電源ラインであるPライン7と低電位側の電源ラインであるNライン8とに接続されている。Pライン7は直流電源2の正極に接続され、Nライン8は直流電源2の負極に接続されている。平滑コンデンサ5の正極は、直流電源2とインバータ6との間において、Pライン7に接続されている。平滑コンデンサ5の負極は、直流電源2とインバータ6との間において、Nライン8に接続されている。平滑コンデンサ5は、直流電源2に並列に接続されている。
【0017】
インバータ6は、DC-AC変換回路である。インバータ6は、図示しない制御回路によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を三相交流電圧に変換し、モータジェネレータ3へ出力する。これにより、モータジェネレータ3は、所定のトルクを発生するように駆動する。インバータ6は、車両の回生制動時、車輪からの回転力を受けてモータジェネレータ3が発電した三相交流電圧を、制御回路によるスイッチング制御にしたがって直流電圧に変換し、Pライン7へ出力する。このように、インバータ6は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で双方向の電力変換を行う。
【0018】
インバータ6は、三相分の上下アーム回路9を備えて構成されている。上下アーム回路9は、レグと称されることがある。上下アーム回路9は、上アーム9Hと、下アーム9Lをそれぞれ有している。上アーム9Hおよび下アーム9Lは、上アーム9HをPライン7側として、Pライン7とNライン8との間で直列接続されている。
【0019】
上アーム9Hと下アーム9Lとの接続点は、出力ライン10を介して、モータジェネレータ3における対応する相の巻線3aに接続されている。上下アーム回路9のうち、U相の上下アーム回路9Uは、対応する出力ライン10を介してU相の巻線3aに接続されている。V相の上下アーム回路9Vは、対応する出力ライン10を介してV相の巻線3aに接続されている。W相の上下アーム回路9Wは、対応する出力ライン10を介してW相の巻線3aに接続されている。Pライン7、Nライン8、および出力ライン10それぞれの少なくとも一部は、たとえばバスバーなどの導電部材により構成される。
【0020】
インバータ6は、6つのアームを有している。各アームは、スイッチング素子を備えて構成されている。各アームを構成するスイッチング素子の数は特に限定されない。ひとつでもよいし、複数でもよい。複数の場合、互いに並列接続された複数のスイッチング素子は、共通のゲート駆動信号(駆動電圧)により、互いに同じタイミングでオン駆動、オフ駆動する。
【0021】
本実施形態では、各アームを構成するスイッチング素子として、nチャネル型のMOSFET11を採用している。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称である。上アーム9Hにおいて、MOSFET11のドレインが、Pライン7に接続されている。下アーム9Lにおいて、MOSFET11のソースが、Nライン8に接続されている。上アーム9HにおけるMOSFET11のソースと、下アーム9LにおけるMOSFET11のドレインが、相互に接続されている。
【0022】
MOSFET11のそれぞれには、還流用のダイオード12が逆並列に接続されている。ダイオード12は、MOSFET11の寄生ダイオード(ボディダイオード)でもよいし、寄生ダイオードとは別に設けたものでもよい。ダイオード12のアノードは対応するMOSFET11のソースに接続され、カソードはドレインに接続されている。
【0023】
なお、スイッチング素子は、MOSFET11に限定されない。たとえばIGBTを採用してもよい。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称である。IGBTの場合にも、還流用のダイオードが逆並列に接続される。
【0024】
インバータ6は、上記した上下アーム回路9に加えて、スナバ回路13を備えている。スナバ回路13は、スイッチング時に生じる過渡的な高電圧、いわゆるスイッチングサージを吸収する。これにより、高速スイッチングが可能となる。スナバ回路13は、上下アーム回路9に対して個別に設けられ、対応する上下アーム回路9に対して並列接続されてもよい。スナバ回路13は、各アーム9H,9Lに対して個別に設けられ、対応するアーム9H,9Lに対して並列接続されてもよい。一例として本実施形態のスナバ回路13は、上下アーム回路9に対して並列接続されている。
【0025】
スナバ回路13は、少なくともコンデンサ131を有する。スナバ回路13は、たとえばコンデンサ131を有するCスナバ回路でもよいし、
図1に示すようにコンデンサ131と抵抗132を有するRCスナバ回路でもよい。コンデンサ131、抵抗132、およびダイオードを有するRCDスナバ回路でもよい。
【0026】
電力変換装置4は、電力変換回路として、コンバータをさらに備えてもよい。コンバータは、直流電圧をたとえば異なる値の直流電圧に変換するDC-DC変換回路である。コンバータは、直流電源2と平滑コンデンサ5との間に設けられる。コンバータは、たとえばリアクトルと、上記した上下アーム回路9を備えて構成される。この構成によれば、昇降圧が可能である。電力変換装置4は、直流電源2からの電源ノイズを除去するフィルタコンデンサを備えてもよい。フィルタコンデンサは、直流電源2とコンバータとの間に設けられる。
【0027】
電力変換装置4は、インバータ6などを構成するスイッチング素子の駆動回路を備えてもよい。駆動回路は、制御回路の駆動指令に基づいて、対応するアームのMOSFET11のゲートに駆動電圧を供給する。駆動回路は、駆動電圧の印加により、対応するMOSFET11を駆動、すなわちオン駆動、オフ駆動させる。駆動回路は、ドライバと称されることがある。
【0028】
電力変換装置4は、スイッチング素子の制御回路を備えてもよい。制御回路は、MOSFET11を動作させるための駆動指令を生成し、駆動回路に出力する。制御回路は、たとえば図示しない上位ECUから入力されるトルク要求、各種センサにて検出された信号に基づいて、駆動指令を生成する。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。
【0029】
各種センサとして、たとえば電流センサ、回転角センサ、電圧センサがある。電流センサは、各相の巻線3aに流れる相電流を検出する。回転角センサは、モータジェネレータ3の回転子の回転角を検出する。電圧センサは、平滑コンデンサ5の両端電圧を検出する。制御回路は、駆動指令として、たとえばPWM信号を出力する。制御回路は、たとえばプロセッサおよびメモリを備えて構成されている。PWMは、Pulse Width Modulationの略称である。
【0030】
<半導体モジュール>
図2は、半導体モジュールの一例を示す斜視図である。
図3は、
図2に示す半導体モジュールの上面視平面図である。
図4は、
図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図4では、半導体モジュールの構造を簡素化して示している。
図4では、ハウジングを省略して示している。
【0031】
以下では、基板の板厚方向をZ方向とし、Z方向に直交する一方向をY方向とする。Z方向およびY方向の両方向に直交する方向をX方向とする。特に断わりのない限り、Z方向から平面視した形状、換言すればX方向およびY方向により規定されるXY面に沿う形状を平面形状とする。また、Z方向からの平面視を、単に平面視と示すことがある。
【0032】
図2、
図3、および
図4に示すように、半導体モジュール20は、半導体装置21、ハウジング22、および冷却器23を備えてもよい。半導体モジュール20は、平滑コンデンサ5を提供するコンデンサ装置、入力端子台、出力端子台などとともに、電力変換装置4を構成する。半導体モジュール20は、コンデンサ装置などの他の要素とともに、電力変換装置4のケースに収容されてもよい。
【0033】
半導体装置21は、Z方向において冷却器23の一面上に配置されている。半導体装置21は、電力変換回路であるインバータ6のアームの少なくともひとつを提供する。
図2に例示する半導体装置21のそれぞれは、一相分の上下アーム回路9を提供する。半導体モジュール20は、半導体装置21を3つ備えてインバータ6を提供する。3つの半導体装置21は、冷却器23の同一面上に配置され、X方向に並んでいる。半導体装置21のそれぞれは、冷却器23に固定されている。
【0034】
半導体装置21のひとつである半導体装置21Uは、U相の上下アーム回路9Uを提供する。半導体装置21の他のひとつである半導体装置21Vは、V相の上下アーム回路9Vを提供する。半導体装置21の他のひとつである半導体装置21Wは、W相の上下アーム回路9Wを提供する。つまり半導体モジュール20は、インバータ6を提供する。半導体装置21の詳細については、後述する。
【0035】
ハウジング22は、樹脂などの電気絶縁材料を用いて形成されている。ハウジング22は、たとえば樹脂成形体でもよい。ハウジング22は、半導体装置21の構成要素の一部を保持してもよい。半導体装置21の構成要素の一部は、インサート部品としてハウジング22と一体成形されてもよい。ハウジング22は、冷却器23に固定されてもよい。ハウジング22は、冷却器23とともに電力変換装置4のケースに固定されてもよい。ハウジング22は、冷却器23の一面に配置された状態で、冷却器23とともに半導体装置21の収容空間を提供してもよい。ハウジング22および冷却器23による収容空間に、半導体素子30などを封止する封止体が配置されてもよい。封止体は、たとえばゲルやポッティング樹脂である。
【0036】
図2および
図3に例示するように、ハウジング22は、枠体221と、仕切り壁222を備えてもよい。枠体221は、Z方向に所定の高さを有し、Z方向の平面視において半導体装置21を取り囲むように環状をなしている。枠体221は、環状の壁部と称されることがある。枠体221は、略矩形の環状をなしてもよい。矩形環状の枠体221は、4つの壁部221a,221b,221c,221dを有する。
【0037】
壁部221a,221bは、X方向に延びている。壁部221aと壁部221bとは、Y方向において所定の間隔を有して対向配置されている。壁部221aはY方向において半導体装置21の一端側に配置され、壁部221bは半導体装置21の他端側に配置されている。壁部221a,221bは、領域を規定する壁と、壁からY方向外側に延びる延設部を含む。壁部221c,221dは、Y方向に延びている。壁部221cは、X方向における一端側で壁部221a,221bに連なっている。壁部221dは、X方向における他端側で壁部221a,221bに連なっている。
【0038】
仕切り壁222は、Z方向に所定の高さを有し、枠体221に連なっている。仕切り壁222は、枠体221により規定される領域を、複数の領域に区画する。仕切り壁222は、たとえば半導体装置21の数に応じた領域に区画してもよい。仕切り壁222は、区画壁と称されることがある。仕切り壁222は、所定方向に延び、その両端が枠体221に連なってもよい。
図2および
図3に例示するように、ハウジング22は、仕切り壁222として、2つの仕切り壁222a,222bを有してもよい。仕切り壁222a,222bは、壁部221c,221d同様、Y方向に延びている。仕切り壁222a,222bそれぞれの端部のひとつは壁部221aに連なり、端部の他のひとつは壁部221bに連なっている。仕切り壁222a,222bおよび壁部221c,221dは、所定の間隔を有してX方向に並んでいる。仕切り壁222は、枠体221の対向領域を3つの領域に区画している。区画された3つの領域のそれぞれに、半導体装置21が収容されている。
【0039】
冷却器23は、半導体装置21を冷却する。冷却器23は、アルミニウム、銅などの金属材料を用いて形成されている。
図4に例示するように、内部に流路231を有する冷却器23を採用してもよい。流路231は、半導体装置21を効果的に冷却するように、平面視において半導体装置21の少なくとも一部と重なるように設けられている。流路231は、平面視において半導体装置21それぞれの大部分を内包するように設けられてもよい。
【0040】
流路231には、図示しない導入管を介して冷媒232が供給される。流路231を流れた冷媒232は、図示しない排出管を介して冷却器23の外に排出される。冷媒232としては、水やアンモニアなどの相変化する冷媒や、エチレングリコール系などの相変化しない冷媒を用いることができる。
【0041】
冷却器23は、上記した流路231を有する構成に限定されない。冷却器23として、たとえばヒートシンクなどの放熱部材を用いてもよい。ヒートシンクは、冷却プレートと称されることがある。放熱部材は、放熱フィンを備えてもよい。絶縁が不要な場合、半導体装置21と冷却器23との間に接合材を配置してもよい。
図4に示す例では、半導体装置21と冷却器23との間に接合材24が介在している。接合材24としては、はんだや焼結Agなどを採用することができる。半導体モジュール20は、半導体装置21と冷却器23との間に配置された接合材24を備えている。半導体装置21は、接合によって冷却器23に固定されている。なお、絶縁が必要な場合には、半導体装置21と冷却器23との間に電気絶縁性の部材を配置してもよい。絶縁部材としては、たとえばセラミック板や樹脂シートを採用することができる。熱伝導性を高めるために、シリコーンゲルなどのTIMを採用してもよい。TIMは、Thermal Interface Materialの略称である。
【0042】
半導体モジュール20は、図示しない回路基板を備えてもよい。回路基板には、上記した駆動回路が形成される。回路基板は、Z方向において半導体装置21の上方に配置される。半導体モジュール20は、ハウジング22および冷却器23とともに筐体を提供するカバーを備えてもよい。カバーは、半導体装置21に対して冷却器23とは反対側に配置される。カバーは、3つの半導体装置21を一体的に覆うように配置されてもよい。
【0043】
<半導体装置>
図5は、半導体装置の一例を示す上面視平面図である。
図5は、
図3をひとつの半導体装置について拡大した図である。
図5では、ハウジングの一部についても図示している。
図6は、
図5に示す半導体装置において基板の配線パターンを示す平面図である。
【0044】
上記したように半導体装置21は、一相分の上下アーム回路9を提供してもよい。
図5に例示するように、半導体装置21は、半導体素子30、基板40、クリップ50、外部接続端子60、およびスナバ回路70を備えてもよい。
【0045】
半導体素子30は、シリコン(Si)、シリコンよりもバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体などを材料とする半導体基板に、縦型素子が形成されてなる。ワイドバンドギャップ半導体としては、たとえばシリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンドがある。半導体素子30は、パワー素子、半導体チップなどと称されることがある。
【0046】
縦型素子は、半導体素子30(半導体基板)の板厚方向に主電流を流すように構成されている。半導体素子30は、その板厚方向がZ方向に略平行となるように配置される。半導体素子30は、板厚方向の両面に主電極を有している。本実施形態の半導体素子30は、SiCを材料とする半導体基板に、縦型素子としてnチャネル型のMOSFET11が形成されてなる。
図4および
図5に示すように半導体素子30は、主電極として、基板40と対向する下面にドレイン電極31を有し、下面とは反対の上面にソース電極32を有している。
【0047】
MOSFET11がオンすることで、主電極間、つまりドレイン電極31とソース電極32との間に、電流(主電流)が流れる。ダイオード12が寄生ダイオードの場合、ソース電極32がアノード電極を兼ね、ドレイン電極31がカソード電極を兼ねる。ダイオード12は、MOSFET11とは別チップに構成されてもよい。ドレイン電極31は高電位側の主電極であり、ソース電極32は低電位側の主電極である。ドレイン電極31は、下面のほぼ全域に形成されている。ソース電極32は、上面の一部分に形成されている。
【0048】
半導体素子30は、平面略矩形状をなしている。半導体素子30は、上面に、信号用の電極であるパッド33を有している。パッド33は、上面においてソース電極32とは異なる位置に形成されている。パッド33は、少なくともゲートパッドを含む。
【0049】
複数の半導体素子30は、上アーム9Hを構成する半導体素子30Hと、下アーム9Lを構成する半導体素子30Lを含む。半導体素子30Hは、上アーム素子と称されることがある。半導体素子30Lは、下アーム素子と称されることがある。たとえば半導体素子30H,30Lの構成は、互いに共通でもよい。本実施形態において、半導体素子30Hが第1素子に相当し、半導体素子30Lが第2素子に相当する。
【0050】
半導体素子30H,30Lは、Y方向に並んでいる。半導体素子30Hのパッド33は、Y方向においてP端子611およびN端子612側の端部付近に設けられている。半導体素子30Lのパッド33は、Y方向においてO端子613側の端部付近に設けられている。パッド33は、互いに対向する内側の端部ではなく、外側の端部付近に設けられている。半導体素子30H,30Lは、Z方向において互いにほぼ同じ位置に配置されている。半導体素子30H,30Lは、ドレイン電極31が基板40側となるように、互いに同じ向きに配置されている。
【0051】
半導体素子30H,30Lそれぞれの数は特に限定されない。ひとつずつでもよいし、それぞれ複数でもよい。
図2、
図3、および
図5に示す例では、半導体素子30が、半導体素子30H,30Lをそれぞれ4つ含む。4つの半導体素子30Hが並列接続されて、ひとつの相の上アーム9HのMOSFET11を提供する。4つの半導体素子30Lが並列接続されて、ひとつの相の下アーム9LのMOSFET11を提供する。4つの半導体素子30Hは、X方向に並んでいる。4つの半導体素子30Lは、X方向に並んでいる。
【0052】
基板40は、平面視において複数の半導体素子30(30H,30L)のすべてを内包している。基板40は、半導体素子30に対して、ドレイン電極31側に配置されている。基板40は、後述するようにドレイン電極31に電気的に接続され、配線機能を提供する。基板40は、配線基板、プリント基板などと称されることがある。
【0053】
基板40は、絶縁基材41と、絶縁基材41に配置された導体を有している。絶縁基材41は、セラミックや樹脂などの電気絶縁材料を用いて形成されている。
図4に示すように絶縁基材41は、半導体素子30と対向する側の面である一面41aと、Z方向において一面41aとは反対の面である裏面41bを有している。基板40は、半導体装置21単位で分けてもよいし、半導体モジュール20単位でひとつにまとめてもよい。
【0054】
導体は、CuやAlなどの導電性、熱伝導性が良好な金属を材料として形成されている。導体は、その表面に、Ni系やAuなどのめっき膜を備えてもよい。導体は、絶縁基材41の一面41aのみに配置されてもよいし、一面41aおよび裏面41bの両方に配置されてもよい。導体は、絶縁基材41の内部に配置されてもよい。つまり基板40は、片面基板でもよいし、両面基板でもよいし、3層以上の導体を備えた多層基板でもよい。導体は、ビア導体を含んでもよい。ビア導体は、絶縁基材41を構成する絶縁層に形成された貫通孔(ビア)に、めっきなどの導体が配置されてなる。ビア導体は、異なる層に配置された導体を電気的に接続する。
【0055】
基板40は、一面41aに配置された導体42を有している。導体42は、パターニングされている。パターニングされた導体42は、配線、つまり回路を提供する。導体42は、P配線421、N配線422、O配線423、中継配線424、および信号配線425,426を含む。各配線は、所定の間隔(ギャップ)により、電気的に分離されている。基板40は、裏面41bに配置された導体43を有している。
【0056】
P配線421は、半導体素子30Hのドレイン電極31に接続されている。P配線421は、後述するP端子611に接続されている。P配線421は、半導体素子30Hのドレイン電極31とP端子611とを電気的に接続する。P配線421は、正極配線、高電位電源配線などと称されることがある。本実施形態において、P配線421が、第1配線に相当する。
【0057】
P配線421は、基部421aと、延設部421bを有している。基部421aは、半導体素子30Hの並設方向、つまりX方向に延びている。基部421aには、半導体素子30Hが配置されている。基部421aと半導体素子30Hのドレイン電極31とは、接合材を介して接続されている。
【0058】
延設部421bは、基部421aに連なり、基部421aからY方向に延びている。延設部421bは、基部421aの長手方向の中心付近に連なっている。延設部421bは、半導体素子30Hから離れる方向に延びている。P配線421は、平面略T字状をなしている。P配線421は、
図6に二点鎖線で示す基板40の中心線CLに対して、概ね線対称配置となっている。中心線CLは、X方向において基板40を二等分する仮想的な直線である。基板40の延設部421bは、基部421aとの連結端とは反対の端部に端子接続部421cを有している。端子接続部421cには、P端子611が接続されている。延設部421bにおいて、基部421aとの連結端と端子接続部421cとの間の部分に、スナバ回路70のコンデンサ71が接続されている。
【0059】
N配線422は、N端子612に接続されている。N配線422には、クリップ50Lを介して半導体素子30Lのソース電極32が電気的に接続されている。N配線422は、半導体素子30Lのソース電極32とN端子612とを電気的に接続する。N配線422は、負極配線、低電位電源配線などと称されることがある。N配線422が、第2配線に相当する。
【0060】
N配線422は、基部422aと、延設部422bを有している。基部422aは、X方向に延びている。基部422aは、Y方向においてP配線421の基部421aの隣に配置されている。基部421aは、P配線421の基部421aとO配線423の基部423aとの間に配置されている。基部422aは、X方向において基板40の一端付近から他端付近まで延びている。基部422aには、クリップ50Lが接続されている。
【0061】
延設部422bは、基部422aに連なり、基部422aから概ねY方向に延びている。延設部422bは、半導体素子30Lから離れる方向に延びている。N配線422は、2つの延設部422bを有している。延設部422bはX方向において基部422aの両端に連なっている。延設部422bのそれぞれの先端付近は、P配線421の端子接続部421cに向かって延びている。N配線422は、平面略C字状をなしている。N配線422は、基板40の中心線CLに対して、概ね線対称配置となっている。
【0062】
延設部422bのそれぞれは、基部422aとの連結端とは反対の端部に端子接続部422cを有している。2つの端子接続部422cは、端子接続部421cの隣に配置されている。2つの端子接続部422cとひとつの端子接続部421cとは、X方向に並んでいる。2つの端子接続部422cは、端子接続部421cを挟んでいる。端子接続部422cには、N端子612が接続されている。延設部422bにおいて、基部422aとの連結端と端子接続部422cとの間の部分に、スナバ回路70の抵抗72が接続されている。抵抗72は、延設部422bのうち、Y方向に延びる部分に接続されている。
【0063】
O配線423は、半導体素子30Lのドレイン電極31に接続されている。O配線423は、後述のO端子613に接続されている。O配線423には、クリップ50Hを介して半導体素子30Hのソース電極32が電気的に接続されている。O配線423は、半導体素子30Hのソース電極32、半導体素子30Lのドレイン電極31、およびO端子613を電気的に接続する。O配線423は、出力配線などと称されることがある。
【0064】
O配線423は、基部423aと、延設部423bを有している。基部423aは、X方向に延びている。基部423aは、Y方向においてN配線422の基部422aの隣に配置されている。基部423aは、Y方向において基板40の一端付近から他端付近まで延びている。基部423aには、半導体素子30Lが配置されている。基部423aと半導体素子30Lのドレイン電極31とは、接合材を介して接続されている。基部423aには、クリップ50Hが接続されている。
【0065】
延設部423bは、基部423aに連なり、基部423aからY方向に延びている。延設部423bは、基部423aの長手方向の中心付近に連なっている。延設部423bは、半導体素子30H,30Lから離れる方向に延びている。O配線423は、平面略T字状をなしている。O配線423は、基板40の中心線CLに対して線対称配置となっている。延設部422bは、端子接続部423cを有している。端子接続部423cには、O端子613が接続されている。Y方向において、延設部423bの長さは、延設部421bの長さよりも短い。一例として延設部422bの全域が、端子接続部423cをなしている。
【0066】
中継配線424は、後述の電子部品とともに、スナバ回路70を提供する。中継配線424は、スナバ回路70の電子部品とともに、P配線421とN配線422とを電気的に架橋する。中継配線424は、スナバ回路70のひとつの通電経路においてひとつ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。
図5および
図6に例示する中継配線424は、ひとつの通電経路に、2つの中継配線424a,424bを有している。中継配線424a,424bは、2つの延設部422bのそれぞれと延設部421bとの間に配置されている。基板40は、中継配線424a,424bを2組有している。
【0067】
中継配線424a,424bは、P配線421の延設部421bとN配線422の延設部422bとの間において、X方向に並んでいる。中継配線424a,424bは、ともに平面略矩形状をなしている。中継配線424aは延設部421bの隣に配置され、中継配線424bは延設部422bの隣に配置されている。中継配線424は、基板40の中心線CLに対して線対称配置となっている。Y方向の長さは、中継配線424a,424bにおいて互いに略等しい。X方向の長さは、中継配線424aのほうが中継配線424bよりも長い。中継配線424aには、コンデンサ71および抵抗72が接続されている。中継配線424bには、抵抗72が接続されている。
【0068】
信号配線425は、半導体素子30Hのパッド33と、対応する信号端子62とを電気的に中継する。信号配線425は、ボンディングワイヤ80を介してパッド33に接続されている。信号配線425は、ボンディングワイヤ80を介して信号端子62に接続されている。信号配線425は、X方向に延びている。信号配線425は、Y方向においてP配線421の基部421aと中継配線424との間に配置されている。つまり信号配線425は、半導体素子30Hとスナバ回路70との間に配置されている。信号配線425は、X方向においてP配線421の延設部421bとN配線422の延設部422bとの間に配置されている。
【0069】
信号配線425は、2つの延設部422bのそれぞれと延設部421bとの間に配置されている。信号配線425は、X方向において延設部421bの両サイドに配置されている。延設部421bに対して一方側に配置された信号配線425は、2つの半導体素子30Hのパッド33に接続されている。延設部421bに対して他方側に配置された信号配線425は、残りの2つの半導体素子30Hのパッド33に接続されている。延設部421bによって分けられた信号配線425は、ボンディングワイヤを介して電気的に接続されてもよい。基板40がプリント基板の場合、延設部421bによって分けられた信号配線425は、図示しない基板内部の配線により、対応する配線同士が電気的に接続されてもよい。信号配線425の本数は特に限定されない。基板40は、信号の種類および分割構造に応じた数の信号配線425を有している。信号配線425は、基板40の中心線CLに対して線対称配置となっている。
【0070】
信号配線426は、半導体素子30Lのパッド33と、対応する信号端子62とを電気的に中継する。信号配線426は、ボンディングワイヤ80を介してパッド33に接続されている。信号配線426は、ボンディングワイヤ80を介して信号端子62に接続されている。信号配線426は、X方向に延びている。信号配線426は、Y方向において基板40の端部とO配線423の基部423aとの間に配置されている。信号配線426は、X方向において基板40の端部とO配線423の延設部423bとの間にそれぞれ配置されている。信号配線426は、X方向において延設部423bの両サイドに配置されている。
【0071】
延設部423bに対して一方側に配置された信号配線426は、2つの半導体素子30Lのパッド33に接続されている。延設部423bに対して他方側に配置された信号配線426は、残りの2つの半導体素子30Lのパッド33に接続されている。延設部423bによって分けられた信号配線426は、ボンディングワイヤを介して電気的に接続されてもよい。延設部423bによって分けられた信号配線426は、図示しない基板内部の配線により、対応する配線同士が電気的に接続されてもよい。分けられた信号配線426に対応する信号端子62同士が一体的に連なってもよい。信号配線426の本数は特に限定されない。基板40は、信号の種類および分割構造に応じた数の信号配線426を有している。
【0072】
クリップ50は、架橋部材、中継部材、金属ブリッジなどと称されることがある。クリップ50は、たとえばCu、Cu合金などの導電性が良好な金属を母材とする金属板材である。クリップ50は、所定厚の金属板を打ち抜き、プレス加工することで形成されてもよい。クリップ50は、部分的に厚みの異なる異形材を用いて形成されてもよい。クリップ50は、表面処理によって、母材表面に膜を付与されたものでもよい。クリップ50は、表面に、NiやAuなどのめっき膜を備えてもよい。クリップ50は、母材上に形成されたPを含むNiめっき膜を備えてもよい。NiP膜は、無電解めっき法により形成される。母材としては、Cuに代えて、Ag、Au、Al、Mgなどを用いてもよい。母材上に付加する膜としては、NiやAuに代えて、Sn、Agなどを用いてもよい。
【0073】
クリップ50は、半導体素子30Hに接続されたクリップ50Hと、半導体素子30Lに接続されたクリップ50Lを含む。クリップ50Hは、半導体素子30Hのソース電極32とO配線423の基部423aとを電気的に接続している。クリップ50Hは、Y方向に延びている。クリップ50Hは、半導体素子30Hに対して個別に設けられてもよいし、複数の半導体素子30Hに対してまとめて設けられてもよい。
図5などに示すように、2つの半導体素子30Hに対してひとつのクリップ50Hを設けてもよい。半導体装置21は、2つのクリップ50Hを備えている。クリップ50Hのそれぞれは、平面略Y字状をなしている。
【0074】
クリップ50Lは、半導体素子30Lのソース電極32とN配線422の基部422aとを電気的に接続している。クリップ50Lは、Y方向に延びている。クリップ50Lは、半導体素子30Lに対して個別に設けられてもよいし、複数の半導体素子30Lに対してまとめて設けられてもよい。
図5などに示す例では、クリップ50Lが半導体素子30Lに対して個別に設けられている。半導体装置21は、4つのクリップ50Lを備えている。
【0075】
外部接続端子60は、半導体装置21を外部機器と電気的に接続するための端子である。外部接続端子60は、銅などの導電性が良好な金属材料を用いて形成されている。外部接続端子60は、たとえば板材である。外部接続端子60は、主端子61と、信号端子62を備えている。主端子61は、半導体素子30の主電極に電気的に接続される端子である。信号端子62は、半導体素子30のパッド33に電気的に接続される端子である。主端子61は、電源端子であるP端子611およびN端子612と、O端子613を含んでいる。
【0076】
P端子611は、上記したPライン7に電気的に接続される外部接続端子60である。P端子611は、平滑コンデンサ5の正極端子に電気的に接続される。P端子611は、正極端子、高電位電源端子などと称されることがある。P端子611は、P配線421の端子接続部421cに接続されている。P端子611は、P配線421を介して、上アーム9Hを構成する半導体素子30Hのドレイン電極31に電気的に接続されている。
【0077】
P端子611は、
図2などに示すように、外部機器との接続部611aと、基板40との接続部611bを有している。P端子611は、概してY方向に延びている。P端子611においてY方向の端部のひとつが接続部611aをなし、端部の他のひとつが接続部611bをなしている。
図2などに示す例では、P端子611の一部分がハウジング22の枠体221に保持されている。P端子611の接続部611aは、枠体221の壁部221aから外側に突出し、接続部611bは壁部221aから内側、つまり区画領域側に突出している。P端子611は、接続部611a,611bをひとつずつ有している。接続部611bは、P配線421の端子接続部421cに接続されている。接続部611aには、たとえばバスバーなどを介して、平滑コンデンサ5を提供するコンデンサ装置が接続される。
【0078】
N端子612は、上記したNライン8に電気的に接続される外部接続端子60である。N端子612は、平滑コンデンサ5の負極端子に電気的に接続される。N端子612は、負極端子、低電位電源端子などと称されることがある。N端子612は、N配線422の端子接続部422cに接続されている。N端子612は、N配線422およびクリップ50Lを介して、下アーム9Lを構成する半導体素子30Lのソース電極32に電気的に接続されている。
【0079】
N端子612は、外部機器との接続部612aと、基板40との接続部612bを有している。N端子612は、概してY方向に延びている。N端子612においてY方向の端部のひとつが接続部612aをなし、端部の他のひとつが接続部612bをなしている。一例として本実施形態では、N端子612の一部分がハウジング22の枠体221に保持されている。N端子612の接続部612aは、枠体221の壁部221aから外側に突出し、接続部612bは壁部221aから内側に突出している。N端子612は、ひとつの接続部612aと、2つの接続部612bを有している。接続部612bのひとつはN配線422の端子接続部421cのひとつに接続され、接続部612bの他のひとつは端子接続部421cの他のひとつに接続されている。接続部612aには、たとえばバスバーなどを介して、平滑コンデンサ5が接続される。
【0080】
O端子613は、上記した出力ライン10に電気的に接続される外部接続端子60である。O端子613は、モータジェネレータ3の対向する相の巻線3aに電気的に接続される。O端子613は、出力端子、交流端子などと称されることがある。半導体モジュール20は、O端子613として、U相のO端子613U、V相のO端子613V、およびW相のO端子613Wを備えている。
【0081】
O端子613は、O配線423の端子接続部423cに接続されている。O端子613は、O配線423を介して、下アーム9Lを構成する半導体素子30Lのドレイン電極31に電気的に接続されている。O端子613は、O配線423およびクリップ50Hを介して、上アーム9Hを構成する半導体素子30Hのソース電極32に電気的に接続されている。
【0082】
O端子613は、外部機器との接続部613aと、基板40との接続部613bを有している。O端子613は、概してY方向に延びている。O端子613においてY方向の端部のひとつが接続部613aをなし、端部の他のひとつが接続部613bをなしている。一例として本実施形態では、O端子613の一部分がハウジング22の枠体221に保持されている。O端子613の接続部613aは、枠体221の壁部221bから外側に突出し、接続部613bは壁部221bから内側に突出している。O端子613は、接続部613a,613bをひとつずつ有している。接続部613bは、O配線423の端子接続部423cに接続されている。接続部613aには、たとえばバスバーなどを介して、モータジェネレータ3が接続される。
【0083】
信号端子62は、半導体素子30と、図示しない回路基板とを電気的に接続する。信号端子62は、ボンディングワイヤ80などの接続部材を介して、半導体素子30のパッド33に電気的に接続されている。信号端子62の本数は特に限定されるものではない。信号端子62は、少なくとも半導体素子30のゲート電極に駆動電圧を印加するための端子を含めばよい。信号端子62は、半導体素子30のソース電位を検出するための端子を含んでもよい。信号端子62は、半導体素子30のドレイン電位を検出するための端子を含んでもよい。信号端子62は、半導体素子30の温度を検出するための端子を含んでもよい。
【0084】
信号端子62は、回路基板との接続部621と、信号配線425,426との接続部622を有している。信号端子62において延設方向の端部のひとつが接続部621をなし、端部の他のひとつが接続部622をなしている。
図2などに示す例では、信号端子62の一部分が枠体221の壁部221b,221cと仕切り壁222a,222bに保持されている。上アーム9H側の信号端子62は、枠体221および仕切り壁222に保持されている。たとえばU相の信号端子62は、枠体221の壁部221cに保持されている。V相の信号端子62は仕切り壁222aに保持され、W相の信号端子62は仕切り壁222bに保持されている。下アーム9Lの信号端子62は、枠体221の壁部221bに保持されている。
【0085】
信号端子62の接続部621は、ハウジング22の上端から上方に突出している。接続部622は、ハウジング22から内側に突出している。各信号端子62は、屈曲部を有している。信号端子62は、たとえば略L字状をなしている。上アーム9Hの接続部622は、ボンディングワイヤ80を介して対応する信号配線425に接続されている。下アーム9Lの接続部622は、ボンディングワイヤ80を介して対応する信号配線426に接続されている。信号端子62の接続部621には、上記した回路基板が接続される。
【0086】
スナバ回路70は、電子部品として、少なくともコンデンサ71を備えている。
図5などに例示するスナバ回路70は、RCスナバ回路である。スナバ回路70は、コンデンサ71に加えて、複数の抵抗72を備えている。スナバ回路70は、
図1に示したスナバ回路13を提供する。コンデンサ71はコンデンサ131を提供し、抵抗72は抵抗132を提供する。スナバ回路70は、上記したように上下アーム回路9に対して並列接続されている。スナバ回路70は、P配線421とN配線422とを電気的に架橋している。スナバ回路70は、コンデンサ71および抵抗72に加えて、上記した中継配線424(424a,424b)を備えて構成される。
【0087】
コンデンサ71は、P配線421の延設部421bと中継配線424aとに接続されている。コンデンサ71は、延設部421bと中継配線424aを電気的に架橋している。複数の抵抗72の一部は、中継配線424aと中継配線424bとに接続されている。抵抗72の一部は、中継配線424a,424bを電気的に架橋している。抵抗72の他の一部は、中継配線424bとN配線422の延設部422bとに接続されている。抵抗72の他の一部は、中継配線424bと延設部422bを電気的に架橋している。
【0088】
<コンデンサと基板との接続構造>
図7は、
図5のVII-VII線に沿う断面図である。
図7は、スナバ回路を構成するコンデンサと基板との接続構造の一例を示している。
図8、
図9、および
図10のそれぞれは、コンデンサと基板との接続構造の別例を示している。
【0089】
図7に示すように、コンデンサ71は、はんだ73などの接合材を介して、基板40に実装された構成としてもよい。コンデンサ71の端子は、P配線421および中継配線424に接合されている。
【0090】
図8に示すように、コンデンサ71が、封止体74によって封止された構成としてもよい。封止体74は、基板40に実装された部品のうち、コンデンサ71のみを封止してもよいし、コンデンサ71とともに他の部品を一体的に封止してもよい。封止体74は、たとえば樹脂やゲルなどの電気絶縁材料を用いて形成されている。封止体74は、空気よりも熱伝導率が高い。封止体74は、熱伝導率を高めるためにフィラーが添加されてもよい。封止体74は、コンデンサ71と基板40におけるコンデンサ71との接合部を除く部分とを熱的に接続する熱伝導部材である。
【0091】
図9に示すように、基板40にダミー配線44を設け、コンデンサ71の熱を、ダミー配線44を通じて基板40側に逃がす構成としてもよい。ダミー配線44は、基板40において、P配線421の延設部421bと中継配線424(424a)との間に設けられている。ダミー配線44は、絶縁基材41の一面41aに配置された他の導体42とは電気的に分離されており、配線機能を提供しない。コンデンサ71の本体部の底面が、ダミー配線44に接触している。ダミー配線44は、コンデンサ71と基板40におけるコンデンサ71との接合部を除く部分とを熱的に接続する熱伝導部材である。
【0092】
図10に示すように、コンデンサ71とダミー配線44との間に、接着材75を配置してもよい。接着材75は、熱伝導性に優れるもの、たとえばTIMを用いるとよい。接着材75は、コンデンサ71とダミー配線44との間に介在し、コンデンサ71と基板40におけるコンデンサ71との接合部を除く部分とを熱的に接続する熱伝導部材である。
【0093】
<コンデンサの容量>
スナバ回路を構成するコンデンサの必要容量Cは、コンデンサ外部の主回路の寄生インダクタンスLdcに依存する。そこで、C/Ldcをパラメータとして必要容量Cを規定できないか検討した。
【0094】
図11は、検証モデルを示す回路図である。
図11では、スナバ回路13のコンデンサ131の静電容量をCと示している。また、平滑コンデンサ5と上下アーム回路9(MOSFET11)をつなぐ主回路において、平滑コンデンサ5とスナバ回路13とをつなぐ部分の寄生インダクタンスをLdcと示している。寄生インダクタンスLdcは、主回路においてスナバ回路13の接続点から平滑コンデンサ5までの部分の寄生インダクタンスである。上下アーム回路9の中点には、誘導性負荷16が接続されている。誘導性負荷16は,L負荷と称されることがある。
【0095】
検証において、回路定数は以下のように設定した。主回路において、スナバ回路13の接続点からMOSFET11までの部分の寄生インダクタンスを5nHとした。スナバ回路13の抵抗132の抵抗値を0.1Ωとした。ゲートドライバ(GD)14とMOSFET11のゲートとをつなぐ配線に設けたゲート抵抗15の抵抗値を1Ωとした。そして、Vddを800Vとし、上アーム9HのMOSFET11に流れるドレイン電流Idを400Aとした。
【0096】
図12は、検証結果を示す図である。
図12では、横軸がC/Ldc、縦軸がΔVds比を示している。ΔVds比は、C/Ldcが0(ゼロ)のときの電圧Vdsに対する、C/Ldc各値における電圧Vdsの比である。電圧Vdsは、ドレイン-ソース間電圧である。
図12に示すように、C/Ldcの増加にともなってΔVds比が低下する。
図12に示す仮想的な2つの直線の交点は、変曲点に相当する。交点は、C/Ldc=0.004である。C/Ldcが0.004を超える範囲において、ΔVds比は収束(飽和)している。
【0097】
<第1実施形態のまとめ>
本実施形態の半導体装置21、および半導体モジュール20によれば、基板40の意図的な配線パターニングにより、信号端子62と半導体素子30(30H)とを電気的に中継する信号配線425を設けている。また、信号配線425を、
図5および
図6に例示したように半導体素子30とスナバ回路70との間に配置している。信号配線425の分、スナバ回路70を構成するコンデンサ71が半導体素子30に対して離れる。これにより、スナバ回路70を設けて高速スイッチングを可能としつつ、コンデンサ71に対する半導体素子30の熱の影響を低減することができる。導体42である信号配線425の配置により、コンデンサ71の受熱を抑制することができる。
【0098】
コンデンサ71の受熱を抑制できるため、コンデンサ71の耐熱上の上限温度までの余裕度(マージン)が大きくなる。よって、コンデンサ71の体格を小型化することができる。また、耐熱上、コンデンサ71を複数設けて並列接続する構成において、受熱の抑制によりコンデンサ71の数を少なくすることができる。以上により、半導体装置21の体格を小型化することができる。また、製造コストを低減することができる。
【0099】
図13は、半導体素子30の発熱にともなう温度分布を示すシミュレーション結果である。
図13では、温度分布をドットの粗密で示している。密ほど温度が高く、粗ほど温度が低い。上記したように信号配線425を設けることで、スナバ回路70を構成するコンデンサ71の温度を低減できることが、
図13に示すシミュレーション結果からも明らかである。
【0100】
半導体装置21は、一相分の上下アーム回路9を提供してもよい。この半導体装置21は、第1素子である半導体素子30Hと、第2素子である半導体素子30Lを備えている。第1主端子がP端子611であり、第2主端子がN端子612である。第1配線がP配線421であり、第2配線がN配線422である。半導体素子30Hのドレイン電極31はP配線421に電気的に接続され、半導体素子30Lのソース電極32はN配線422に電気的に接続されている。このような構成において、信号配線425を、半導体素子30Hとスナバ回路70との間に配置してもよい。上下アーム回路9に対してスナバ回路70(13)が並列接続される構成において、コンデンサ71に対する半導体素子30の熱の影響を低減することができる。
【0101】
コンデンサ71の数は、特に限定されない。ひとつでもよいし、複数でもよい。高速スイッチングを実現するには、半導体素子30の近傍に複数のコンデンサ71を配置し、大容量化することが有効である。複数のコンデンサ71による大容量化は、スナバ回路70と平滑コンデンサ5とを接続する配線のインダクタンス(L)とコンデンサ71(C)とのLC共振による電圧増加を抑制する点においても有効である。
【0102】
このように、スナバ回路70が複数のコンデンサ71を備える構成において、コンデンサ71を含む複数の通電経路のインピーダンスが互いに等しくなるように、複数の通電経路を配置するとよい。これにより、複数の通電経路、つまり複数のコンデンサ71における電流アンバランスを抑制することができる。電流が偏って流れ、一部のコンデンサ71の温度が上昇するのを抑制することができる。電流アンバランスの抑制により、コンデンサ71の耐熱上の上限温度までの余裕度が大きくなる。よって、コンデンサ71の体格を小型化することができる。また、並列接続するコンデンサ71の数を少なくすることができる。以上により、半導体装置21の体格を小型化することができる。また、製造コストを低減することができる。
【0103】
複数の通電経路を線対称配置にすることで、互いにインピーダンスが等しい構成としてもよい。なお、線対称配置とは、対称軸(たとえば中心線CL)を挟んだ左右で完全一致の線対称に限定されない。略線対称の関係でもよい。たとえばコンデンサ71の実装位置が左右でわずかにずれていてもよい。配線パターンは完全一致の線対称としつつ、コンデンサ71と抵抗72の並びを左右で同じとしてもよい。たとえば
図5に示した例において、一の通電経路のコンデンサ71の隣に、他の通電経路の抵抗72が位置するように変更してもよい。略線対称の関係により、複数の通電経路のインピーダンスを互いに略等しくし、電力アンバランスを抑制することができる。線対称ではないものの、インピーダンスが等しくなるように複数の通電経路を設けてもよい。
【0104】
半導体装置21が、
図5に例示した構成を有してもよい。
図5に示す半導体装置21は、第1主端子であるP端子611をひとつ、第2主端子であるN端子612を2つ備えている。P端子611およびN端子612はX方向に並んで配置されており、N端子612の間にP端子611が配置されている。また、第1素子である半導体素子30Hと第2素子である半導体素子30Lとが、Y方向に並んで配置されている。そして、第2配線であるN配線422が、X方向において第1配線であるP配線421をX方向において挟むように配置されている。つまり、N配線422の2つの延設部422bの間に、P配線421が配置されている。
【0105】
このような構成の半導体装置21は、
図14に示すように、P端子611(第1主端子)、P配線421(第1配線)、コンデンサ71、N配線422(第2配線)、およびN端子612(第2主端子)を含む通電経路を2つ備えている。そして、2つの通電経路は、基板40の中心線CLに対して線対称配置となっている。よって、上記した効果を奏することができる。
【0106】
スナバ回路13(70)を構成するコンデンサ131(71)の容量をC、スナバ回路13と平滑コンデンサ5とをつなぐ主回路部分の寄生インダクタンスをLdcとすると、C/Ldc>0.004となるように容量Cを設定するとよい。上記関係を満たすC値を設定することで、
図12に示すように、ΔVds比、つまりサージ電圧を効果的に抑制することができる。
【0107】
スナバ回路70を構成するコンデンサ71は、P配線421およびN配線422の少なくとも一方に接合されてもよい。つまり、コンデンサ71が基板40に実装されてもよい。別途スナバ回路用の基板を用いる構成に較べて、コンデンサ71と基板40との間の熱抵抗を低減することができる。これにより、コンデンサ71の熱を、基板40を通じて効果的に放熱することができる。コンデンサ71の熱を、裏面41b側の導体43、さらには冷却器23へ効果的に逃がすことができる。よって、コンデンサ71の体格を小型化することができる。また、並列接続する構成において、コンデンサ71の数を少なくすることができる。
【0108】
半導体装置21は、コンデンサ71と基板40におけるコンデンサ71との接合部を除く部分とを熱的に接続する熱伝導部材を備えてもよい。熱伝導部材として、たとえば封止体74を備えてもよいし、ダミー配線44を備えてもよい。コンデンサ71とダミー配線44との間に介在する接着材75を備えてもよい。熱伝導部材を備えることで、コンデンサ71の熱を、基板40を通じてより効果的に放熱することができる。つまり、コンデンサ71の放熱性を高めることができる。よって、コンデンサ71の体格を小型化することができる。また、並列接続する構成において、コンデンサ71の数を少なくすることができる。コンデンサ71の放熱性向上により、スイッチング速度のさらなる高速化が可能である。なお、封止体74とダミー配線44を組み合わせてもよい。封止体74、ダミー配線44、および接着材75を組み合わせてもよい。
【0109】
<変形例>
P端子611をひとつ、N端子612を2つ備える構成において、スナバ回路70のコンデンサ71を含む通電経路を線対称配置とする例を示したが、これに限定されない。
図15に示すように、P端子611を2つ、N端子612をひとつ備える構成において通電経路を線対称配置としてもよい。
図15では、便宜上、ソース電極32、パッド33、O端子613、信号端子62、およびボンディングワイヤ80を省略している。
【0110】
P端子611およびN端子612はX方向に並んで配置されており、P端子611の間にN端子612が配置されている。また、半導体素子30Hと半導体素子30Lとが、半導体素子30LをP端子611およびN端子612側として、Y方向に並んで配置されている。そして、P配線421が、N配線422をX方向において挟むように配置されている。
【0111】
P配線421は、平面略C字状をなしている。C字の両端にP端子611が接続されている。P配線421の基部には、4つの半導体素子30Hが実装されている。N配線422は、平面略T字状をなしている。N配線422の延設部の先端にN端子612が接続されている。X方向において、N配線422の基部の両端とP配線421の2つの延設部との間には、中継配線424が配置されている。そして、スナバ回路70を構成するコンデンサ71がP配線421と中継配線424とを架橋し、抵抗72が中継配線424とN配線422とを架橋している。O配線423は、2つに分割されている。O配線423のひとつはY方向においてP配線421の基部とN配線422の基部との間に配置されている。このO配線423には、半導体素子30Lが実装されている。O配線423の他のひとつは、基板40においてP端子611およびN端子612とは反対側の端部に設けられている。
【0112】
半導体素子30Hのソース電極32は、クリップ50Hを介してP配線421とN配線422との間のO配線423に接続されている。半導体素子30Lのソース電極32は、クリップ50Lを介してN配線422の基部に接続されている。2つのO配線423は、クリップ50Mを介して相互に接続されている。信号配線425は、P配線421の基部とY方向において基板端部に設けられたO配線423との間に配置されている。信号配線426は、P配線421に取り囲まれるO配線423とN配線422の基部との間に配置されている。信号配線426は、スナバ回路70と対向する位置までX方向に延びている。
【0113】
このように、
図15に示す構成では、信号配線426が、半導体素子30Lとスナバ回路70との間に配置されている。よって、コンデンサ71に対する半導体素子30Lの熱の影響を低減することができる。また、半導体装置21が、N端子612(第1主端子)、N配線422(第1配線)、コンデンサ71、P配線421(第2配線)、およびP端子611(第2主端子)を含む通電経路を2つ備えている。そして、2つの通電経路は、
図15に示すように基板40の中心線CLに対して線対称配置となっている。よって上記したように、複数の通電経路、つまり複数のコンデンサ71における電流アンバランスを抑制することができる。
【0114】
上アーム9H側の半導体素子30Hと下アーム9L側の半導体素子30LとがY方向に並ぶ例を示したが、これに限定されない。
図16に示すように、半導体素子30Hと半導体素子30LとがX方向に並ぶ配置としてもよい。
図16では、便宜上、ソース電極32、パッド33、信号端子62、およびボンディングワイヤ80を省略している。半導体装置21は、P端子611をひとつ、N端子612をひとつ備えている。P端子611およびN端子612は、X方向に並んで配置されている。また、半導体素子30Hと半導体素子30Lが、X方向に並んで配置されている。
【0115】
P配線421は、平面略L字状をなしている。P配線421の基部に半導体素子30Hが実装されている。P配線421の延設部は、基部からY方向に延びている。P配線421の延設部の先端付近に、P端子611が接続されている。O配線423は、平面略L字状をなしている。O配線423の基部に半導体素子30Lが実装されている。O配線423の延設部は、基部からY方向であってP配線421の延設部と同方向に延びている。O配線423の延設部の先端付近に、O端子613が接続されている。N配線422は、Y方向に延びている。N配線422は、Y方向においてO配線423の基部と並んでいる。N配線422は、X方向において、P配線421の延設部とO配線423の延設部との間に配置されている。N配線422の端部付近に、N端子612が接続されている。
【0116】
半導体素子30Hのソース電極32は、クリップ50Hを介してO配線423の基部に接続されている。半導体素子30Lのソース電極32は、クリップ50Lを介してN配線422に接続されている。中継配線424は、X方向においてP配線421の延設部とN配線422との間に配置されている。スナバ回路70を構成するコンデンサ71は、P配線421の延設部と中継配線424とを架橋している。抵抗72は、中継配線424とN配線422とを架橋している。信号配線425は、Y方向においてP配線421の基部とスナバ回路70との間に配置されている。つまり信号配線425が、半導体素子30Hとスナバ回路70との間に配置されている。よって、コンデンサ71に対する半導体素子30Hの熱の影響を低減することができる。
【0117】
上下アーム回路9に対して並列にスナバ回路70(13)を設ける例を示したが、これに限定されない。
図17に示すように、アームに対して並列にスナバ回路70を設けてもよい。
図17では、便宜上、ソース電極32、パッド33、信号端子62、およびボンディングワイヤ80を省略している。
図17に示す半導体装置21は、主端子61として、ドレイン端子614をひとつ、ソース端子615をひとつ備えている。ドレイン端子614とソース端子615とは、X方向に並んで配置されている。
【0118】
基板40は、導体42として、ドレイン配線427、ソース配線428、および信号配線429を備えている。ドレイン配線427は、平面略L字状をなしている。ドレイン配線427の基部に半導体素子30が実装されている。ドレイン配線427の延設部は、基部からY方向に延びている。ドレイン配線427の延設部の先端付近に、ドレイン端子614が接続されている。ソース配線428は、Y方向に延びている。ソース配線428は、Y方向においてドレイン配線427の基部と並んでいる。ソース配線428は、X方向において、ドレイン配線427の延設部と並んでいる。ソース配線428の端部付近に、ソース端子615が接続されている。
【0119】
半導体素子30のソース電極32は、クリップ50を介してソース配線428に接続されている。中継配線424は、X方向においてドレイン配線427の延設部とソース配線428との間に配置されている。スナバ回路70を構成するコンデンサ71は、ドレイン配線427の延設部と中継配線424とを架橋している。抵抗72は、中継配線424とソース配線428とを架橋している。信号配線429は、Y方向においてドレイン配線427の基部とスナバ回路70との間に配置されている。つまり信号配線429が、半導体素子30とスナバ回路70との間に配置されている。よって、コンデンサ71に対する半導体素子30の熱の影響を低減することができる。
【0120】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0121】
<半導体素子>
図18は、本実施形態に係る半導体装置21において、半導体素子30の一例を示す平面図である。
図19は、
図18のXIX-XIX線に沿う断面図である。半導体素子30は、先行実施形態に示した構成同様、ドレイン電極31、ソース電極32、およびパッド33を備えている。
図18に示すようにパッド33は、少なくともゲートパッド33Gを含む。パッド33は、アノードパッド33A、カソードパッド33Cを含んでもよい。アノードパッド33Aおよびカソードパッド33Cは、感温ダイオードに接続された温度検出用のパッドである。パッド33は、ケルビンソースパッド33KSを含んでもよい。ケルビンソースパッド33KSは、ソース電極32の電位を検出するためのパッドである。
図18に例示する半導体素子30は、4つのパッド33を備えている。すべてのパッド33が信号端子62と電気的に接続されてもよいし、ゲートパッド33Gを含む一部のパッド33が信号端子62に電気的に接続されてもよい。
【0122】
半導体素子30は、半導体基板34を備えている。半導体基板34は、たとえば平面略矩形状をなしている。半導体基板34は、素子領域341と、外周領域342を有している。
図18に示す二点鎖線よりも内側が素子領域341であり、外側が外周領域342である。素子領域341は、縦型素子の形成領域である。素子領域341には、MOSFET11が形成されている。素子領域341は、アクティブ領域、メイン領域、セル領域などと称されることがある。外周領域342は、平面視において素子領域341を取り囲んでいる。外周領域342には、ガードリングなどの図示しない耐圧構造部が形成されている。
【0123】
半導体基板34は、一面34aと裏面34bを有している。裏面34bは、半導体基板34(半導体素子30)の板厚方向において一面34aとは反対の面である。半導体素子30は、半導体基板34の一面34a上に配置された絶縁膜35を備えている。絶縁膜35は、外周領域342上に配置されている。絶縁膜35は、素子領域341の一部の上にも配置されている。絶縁膜35は、たとえばポリイミドなどを含んでもよい。絶縁膜35は、保護膜と称されることがある。
【0124】
ドレイン電極31は、裏面34bのほぼ全域に配置されている。ソース電極32は、一面34aにおいて、主として素子領域341上に配置されている。パッド33は、一面34aにおいて外周領域342上に配置されている。ソース電極32は、多層構造をなしている。ソース電極32は、下層321と、上層322を有している。下層321は、たとえばAl(アルミニウム)を主成分とする材料を用いて形成されてもよい。下層321は、AlSi、AlSiCuなどのAl合金を用いて形成されてもよい。下層321は、下地電極、配線電極、下地層などと称されることがある。下層321は、半導体基板34の一面34aに接続されている。下層321は、縦型素子のソースおよびアノードに接続されている。下層321は素子領域341上から外周領域342上まで延びており、下層321の外周縁部は絶縁膜35によって覆われている。
【0125】
上層322は、はんだとの接合強度向上、はんだに対する濡れ性向上などを目的として、下層321上に積層配置されている。上層322は、たとえばNi(ニッケル)を主成分とする材料を用いて形成されてもよい。上層322は、Pを含むNiめっき膜でもよい。NiP膜は、無電解めっき法により形成される。上層322は、上地電極、接続電極、上地層、めっき層などと称されることがある。なお、製造の過程において、上層322上にAu層を設けてもよい。Auは、たとえば、Niの酸化を抑制してはんだとの濡れ性を向上する。Auは、はんだ付け時にはんだ中に拡散するため、接合前の状態で存在し、接合した状態で存在しない。パッド33は、ソース電極32と同様の構成を有している。
【0126】
半導体素子30は、信号配線を備えている。信号配線の少なくとも一部は、一面34aの素子領域341上に配置されている。信号配線は、平面視において、ソース電極32と並んで配置されている。信号配線は、ソース電極32の下層321と同一面上に配置されてもよい。信号配線は、たとえば
図18に破線で示すゲート配線36を含んでもよい。ゲート配線36は、素子領域341に形成されたMOSFET11のゲートとゲートパッド33Gとを電気的に接続する。信号配線は、たとえばアノード配線およびカソード配線を含んでもよい。アノード配線は、感温ダイオードのアノードとアノードパッド33Aとを電気的に接続する。カソード配線は、感温ダイオードのカソードとカソードパッド33Cとを電気的に接続する。信号配線は、ゲート配線36、アノード配線、およびカソード配線を含んでもよい。便宜上、
図18では、ゲート配線36のみを示している。
【0127】
絶縁膜35は、開口部351,352を有している。開口部351は、ソース電極32の接合領域を規定している。上層322は、下層321のうち、開口部351に臨む部分の上に積層されている。上層322は、開口部351内において上層322に積層配置されている。開口部351、つまりソース電極32の接合領域(露出部)の外形輪郭は、板厚方向の平面視において、素子領域341の外形輪郭とほぼ一致している。開口部352は、パッド33の接合領域を規定している。
【0128】
絶縁膜35は、外周領域342上に配置された外周部353と、素子領域341上に配置された素子上部354を有している。素子上部354は、外周部353に連なっている。素子上部354は、一面34aに配置され、素子領域341上に配置された信号配線を覆っている。素子上部354は、信号配線をソース電極32から電気的に分離している。素子上部354は、信号配線に沿って延びている。平面視において、素子上部354は、ソース電極32によって挟まれている。素子上部354および外周部353は、開口部351の壁面を提供する。素子上部354の側面にソース電極32が接触している。素子上部354の上端は、ソース電極32の上面、つまり開口部351からの露出面よりも上方に位置している。
【0129】
図18に示す例において、素子上部354は、ゲート配線36を含む信号配線を覆っている。ゲート配線36は、X方向において素子領域341の略中心に配置され、素子領域341を略二等分するようにY方向に延びている。素子上部354は、ゲート配線36に沿って延び、ソース電極32を略二等分している。ソース電極32は、素子上部354により分割(区画)されている。素子上部354は、Y方向の両端で外周部353に連なっている。
【0130】
ゲート配線36を含む信号配線のパターン、つまり素子上部354のパターンは、
図18に示す例に限定されない。平面視において、たとえば十字状をなしてもよい。素子上部354は、パッド33側のみで外周部353に連なってもよい。
【0131】
<半導体装置および半導体モジュール>
本実施形態の半導体装置21は、
図18および
図19に例示した半導体素子30、金属板材、およびはんだを少なくとも備える。金属板材は、主電極にはんだ接合されている。金属板材は、先行実施形態に記載のクリップ50でもよいし、クリップ50とは別の部材、たとえばリードでもよい。半導体装置21は、配線を有する基板を備えてもよい。基板には、半導体素子30が実装される。金属板材であるクリップ50は、主電極とともに配線にも接合される。半導体装置21は、焼結部材を備えてもよい。半導体素子30は、焼結部材を介して金属部材に接続される。金属部材は、基板の配線でもよいし、ヒートシンクのような金属板でもよい。半導体装置21は、半導体素子30や金属板材を封止する封止体を備えてもよい。封止体として、ゲルを用いてもよい。
【0132】
図20は、半導体装置21、および半導体モジュール20の一例を示している。
図20は、半導体装置21および半導体モジュール20のうち、半導体素子30Lおよびクリップ50Lの周辺を示す部分断面図である。半導体装置21および半導体モジュール20の基本構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。半導体モジュール20は、半導体装置21、ハウジング22、および冷却器23を備えている。半導体装置21は、半導体素子30、基板40、クリップ50、および外部接続端子60を備えている。半導体装置21は、先行実施形態同様、スナバ回路70を備えてもよい。半導体装置21は、接合材として、はんだ81と焼結部材82を備えている。半導体装置21は、封止体90を備えている。
【0133】
クリップ50L(50)は、金属板材に相当する。クリップ50Lは、半導体素子30Lのソース電極32との接合部51と、N配線422との接合部52を有している。本実施形態において、接合部51は第1接合部に相当し、接合部52は第2接合部に相当する。はんだ81は、ソース電極32と接合部51との間に介在している。はんだ81は、ソース電極32とクリップ50Lとを接合している。はんだ81は、N配線422と接合部52との間に介在している。はんだ81は、N配線422とクリップ50Lとを接合している。クリップ50Lは、連結部53を有している。連結部53は、接合部51,52に連なっている。連結部53は、連続する一体物となるように接合部51,52をつないでいる。連結部53は、異なる半導体素子30に接続される接合部51をつないでもよい。
【0134】
連結部53は、傾斜部531,532と、中間部533を有している。傾斜部531は、接合部51から斜め上方に立ち上がっている。傾斜部531は、Y方向において接合部51から離れるほど、Z方向において接合部51(半導体素子30L)から離れる態様の傾斜を有している。傾斜部532は、接合部52から斜め上方に立ち上がっている。傾斜部532は、Y方向において接合部52から離れるほど、Z方向において接合部52(基板40)から離れる態様の傾斜を有している。傾斜部531,532は、接合部51,52の並び方向であるY方向に対して傾斜している。中間部533は、傾斜部531,532をつないでいる。中間部533は、実装状態で接合部51,52と略平行でもよい。
【0135】
図示を省略するが、クリップ50Hは、クリップ50Lと同様の構成を有している。クリップ50Hは、半導体素子30Hのソース電極32との接合部51、O配線423との接合部52、および連結部53を有している。はんだ81は、ソース電極32と接合部51との間に介在している。はんだ81は、ソース電極32とクリップ50Hとを接合している。はんだ81は、O423と接合部52との間に介在している。はんだ81は、O配線423とクリップ50Hとを接合している。
【0136】
焼結部材82は、半導体素子30Lのドレイン電極31とO配線423との間に介在している。焼結部材82は、ドレイン電極31とO配線423とを接合している。図示を省略するが、焼結部材82は、半導体素子30Hのドレイン電極31とP配線421との間に介在している。焼結部材82は、ドレイン電極31とP配線421とを接合している。半導体素子30の下に焼結部材82が配置され、半導体素子30の上にはんだ81が配置されている。
【0137】
焼結部材82は、AgまたはCuを材料とする。焼結部材82は、Ag粒子またはCu粒子による焼結体である。焼結部材82は、はんだに較べて低温での接合が可能である。焼結部材82は、理想的には、平面視においてドレイン電極31の接合面にほぼ一致するように配置されている。焼結部材82は、たとえば焼結シートとして提供される。焼結シートは、焼結フィルムと称されることがある。焼結シートは、加圧前の状態で、平面視においてドレイン電極31よりも小さい。焼結シートをドレイン電極31と対象の配線との間に配置して積層体とし、加熱しつつ、半導体素子30側から積層体を加圧する。これにより、焼結シートはドレイン電極31と配線との対向面間で押し拡げられて厚みが薄くなるとともに、焼結して焼結部材82となる。
【0138】
封止体90は、半導体装置21の要素を封止している。封止体90は、半導体素子30、基板40、クリップ50、および外部接続端子60それぞれの一部を一体的に封止している。封止体90は、半導体素子30のパッド33と信号端子62とを電気的に接続するボンディングワイヤ80も封止している。
図20に示す例では、封止体90としてゲル91を用いている。ゲル91に代えて、ポッティング樹脂を用いてもよい。封止体90は、ハウジング22および冷却器23を含んで構成される空間に充填されている。封止体90は、樹脂成形体でもよい。封止体90は、半導体装置21が備えてもよいし、半導体モジュール20が備えてもよい。
【0139】
【0140】
図21および
図22に示すように、クリップ50Lは、単一の半導体素子30Lに接続される。ソース電極32との接合部51は、素子領域341上に配置されたゲート配線36を含む信号線を避けて配置されている。平面視において、接合部51は、信号線の全長にわたって信号線と重ならないように配置されている。
図21および
図22に例示するように、接合部51は、信号線を覆う素子上部354を避けて配置されるとよい。素子上部354との重なりを避けることで、素子上部354が覆う信号線との重なりも回避される。接合部51は、平面視において素子上部354に重なり、信号線に重ならない配置としてもよい。
【0141】
クリップ50Lは、二分割されたソース電極32に対応して2つの接合部51を有している。接合部51は、ソース電極32と同数に分岐している。隣り合う接合部51の互いに対向する側面の間には、
図22に一点鎖線で示す対向空間54が形成される。対向空間54は、対向領域と称されることがある。平面視において、接合部51のひとつはソース電極32のひとつと重なり、接合部51の他のひとつはソース電極32の他のひとつに重なっている。接合部51のひとつはソース電極32のひとつにはんだ接合され、接合部51の他のひとつはソース電極32の他のひとつにはんだ接合されている。信号線および素子上部354の上方には、対向空間54が位置している。平面視において、接合部51のそれぞれは、信号線および素子上部354と重なっていない。
【0142】
クリップ50Lは、Y方向に延びている。接合部51と接合部52とは、Y方向に並んでいる。2つの接合部51は、X方向に並んでいる。各接合部51は、Y方向を長手方向、X方向を短手方向とする、平面略矩形状をなしている。平面視において、各接合部51の面積は、対応するソース電極32の面積よりも小さい。クリップ50Lは、連結部53を有している。連結部53は、
図20に例示したように、傾斜部531,532と、中間部533を有している。
【0143】
図23に示すように、クリップ50Hは、2つの半導体素子30Hに接続される。ソース電極32との接合部51は、素子領域341上に配置されたゲート配線36を含む信号線を避けて配置されている。平面視において、接合部51は、信号線の全長にわたって信号線と重ならないように配置されている。
図23に例示するように、接合部51は、信号線を覆う素子上部354を避けて配置されるとよい。
【0144】
クリップ50Hは、2つの半導体素子30Hそれぞれの二分割されたソース電極32に対応して、4つの接合部51を有している。接合部51は、2つの接合部51が半導体素子30Hのひとつに接続され、他の2つの接合部51が半導体素子30Hの他のひとつに接続される。共通の半導体素子30に接合される接合部51の側面間には、対向空間54が形成される。異なる半導体素子30Hに接続される接合部51の間、つまりX方向において2本目と3本目の接合部51の間は、X方向において対向空間54よりも長い。平面視において、各接合部51は対応するソース電極32に重なっている。接合部51は、対応するソース電極32にはんだ接合されている。信号線および素子上部354の上方には、対向空間54が位置している。平面視において、接合部51のそれぞれは、信号線および素子上部354と重なっていない。
【0145】
クリップ50Hは、Y方向に延びている。接合部51と接合部52とは、Y方向に並んでいる。4つの接合部51は、X方向に並んでいる。各接合部51は、Y方向を長手方向、X方向を短手方向とする、平面略矩形状をなしている。各接合部51は、平面視において対応するソース電極32の面積よりも小さい。クリップ50Hは、連結部53を有している。連結部53は、接合部51と接合部52を連結している。連結部53は、異なる半導体素子30Hに接続される接合部51を連結している。連結部53は、クリップ50L同様、傾斜部531,532と、中間部533を有している。
【0146】
中間部533は、第1中間部533aと、第2中間部533bを含んでいる。第1中間部533aは、接合部51の並び方向、つまりX方向に延びている。第1中間部533aは、4つの接合部51を、傾斜部531を介して連結している。
図24では、傾斜部531を接合部51ごとに設けているが、複数の接合部51が共通の傾斜部531に連なる構成としてもよい。第2中間部533bは、接合部51,52の並び方向、つまりY方向に延びている。第2中間部533bは、接合部52と第1中間部533aとをつないでいる。クリップ50Hは、第1中間部533aにおける接合部52側の端部に、テーパ部534を有している。テーパ部534は、Y方向において接合部52から離れるほど、X方向において第1中間部533aの長さが長くなる態様の傾斜を有している。テーパ部534は、接合部51,52の並び方向であるY方向に対して傾斜している。
【0147】
クリップ50は、上記した形状に限定されない。種々の形状を採用することができる。たとえば
図25に示すように、
図24に示した構成にテーパ部535を追加してもよい。テーパ部535は、第1中間部533aにおける接合部51側の端部に設けられている。クリップ50Hは、第1中間部533aの接合部51側の端部を、2本目の接合部51と3本目の接合部51の間の位置で切り欠いた形状をなしている。切り欠かれた空間は、平面視において略三角形をなしており、Y方向において接合部52から離れるほどX方向の長さが長い。テーパ部535は、切り欠かれた空間を規定する端面である。テーパ部535は、接合部51,52の並び方向であるY方向に対して傾斜している。
【0148】
図26に示すように、クリップ50Lが、テーパ部536を有してもよい。テーパ部534は、Y方向において接合部52から離れるほど、X方向において連結部53の長さが長くなる態様の傾斜を有している。テーパ部536は、接合部51,52の並び方向であるY方向に対して傾斜している。
【0149】
図27に示すように、クリップ50Lが、傾斜部531,532を有し、中間部533を有さない構成としてもよい。傾斜部531は、中間部533を介さずに傾斜部532に連なっている。中間部533を有さないため、傾斜部531,532の傾斜が緩やかである。クリップ50Hを同様の構造としてもよい。傾斜部531,532は、接合部51,52の並び方向であるY方向に対して傾斜している。
【0150】
図28に示すように、クリップ50Lが、貫通孔55を有してもよい。貫通孔55は、連結部53を板厚方向に貫通している。貫通孔55の平面形状は、特に限定されない。図に示す円形でもよいし、三角形、四角形などの多角形状でもよい。平面十字状や、平面L字状でもよい。一方向に長い長孔でもよい。貫通孔55の個数は、特に限定されない。ひとつでもよいし、複数でもよい。貫通孔55の位置も特に限定されない。クリップ50Hを同様の構造としてもよい。
【0151】
図29および
図30に示すように、クリップ50Lが、架橋部56を有してもよい。
図30は、
図29のXXX-XXX線に沿う断面図である。架橋部56は、共通の半導体素子30Lに接続される複数の接合部51に連なっている。架橋部56は、半導体素子30Lに対して接合部51よりも離れた位置で、隣り合う接合部51を架橋している。対向空間54は、架橋部56の直下に形成される。架橋部56は、平面視において対向空間54と重なるように設けられている。クリップ50Hを同様の構造としてもよい。
【0152】
図31に示すように、クリップ50Hを、平面略L字状としてもよい。クリップ50Hは、連結部57と、延設部58を有している。連結部57は、2つの半導体素子30Hのソース電極32に接続され、ソース電極32同士を電気的に接続している。延設部58は、連結部57に連なり、ソース電極32をO配線423に電気的に接続している。
図31において、連結部57は、平面視においてX方向に延びており、ソース電極32と重なるように配置されている。延設部58は、Y方向に延びている。
【0153】
図31では、便宜上、クリップ50Hを簡素化して示している。
図31では省略しているが、連結部57は接合部51を含んでいる。接合部51は、ソース電極32の分割構造に対応して分岐している。延設部58は、接合部52を含んでいる。連結部57および延設部58のそれぞれは、連結部53を含んでいる。連結部57は、架橋部56を含んでもよい。連結部53に、貫通孔55を有してもよい。以下に示す
図32~
図37においても同様である。
【0154】
図32に示すように、クリップ50Hを、平面略U字状としてもよい。
図31同様、連結部57は、X方向に延び、2つの半導体素子30Hのソース電極32を電気的に接続している。クリップ50Hは、2本の延設部58を有している。2本の延設部58は、O配線423に接続されている。延設部58のひとつは連結部57の端部のひとつに連なり、延設部58の他のひとつは連結部57の端部の他のひとつに連なっている。
【0155】
図33に示すように、クリップ50Hを、平面略Y字状としてもよい。クリップ50Hの連結部57は、平面略U字状をなしている。連結部57の端部のひとつが半導体素子30Hのひとつに接続され、端部の他のひとつが半導体素子30Hの他のひとつに接続されている。延設部58は、X方向において一方の半導体素子30H側に偏った位置で連結部57に連なっている。延設部58は、Y方向に延び、O配線423に接続されている。
【0156】
図34に示すように、クリップ50Hを、平面略H字状としてもよい。
図34同様、連結部57は、平面略U字状をなしている。クリップ50Hは、2本の延設部58を有している。延設部58のひとつは半導体素子30Hの一方側に偏った位置で連結部57に連なっている。延設部58の他のひとつは半導体素子30Hの他方側に偏った位置で連結部57に連なっている。延設部58は、いずれもY方向に延び、O配線423に接続されている。
【0157】
図35に示すように、クリップ50Hを略T字状としてもよい。
図31同様、連結部57は、X方向に延び、2つの半導体素子30Hのソース電極32を電気的に接続している。延設部58は、X方向の中央付近で連結部57に連なっている。延設部58は、Y方向に延び、O配線423に接続されている。
【0158】
図31~
図35では、4つの半導体素子30Hに対して2つのクリップ50Hを用いていた。これに代えて、
図36に示すように、4つの半導体素子30Hに対してひとつのクリップ50Hを用いてもよい。
図31同様、連結部57は、X方向に延び、4つの半導体素子30Hのソース電極32を電気的に接続している。クリップ50Hは、4本の延設部58を有している。延設部58は、半導体素子30Hに対応する間隔を有して、X方向に並設されている。延設部58は、いずれもY方向に延び、O配線423に接続されている。
【0159】
図37に示すクリップ50Hを用いてもよい。連結部57は、平面略U字状を2つ繋げた構造をなしている。連結部57は、4つの半導体素子30Hのソース電極32を電気的に接続している。クリップ50Hは、4本の延設部58を有している。延設部58は、半導体素子30Hに対応する間隔を有して、X方向に並設されている。延設部58は、いずれもY方向に延び、O配線423に接続されている。
【0160】
図38に示すように、半導体素子30ごとにクリップ50を設けてもよい。つまり半導体素子30ひとつにつき、ひとつのクリップ50を用いてもよい。クリップ50H,50Lは、互いに共通の構造を有している。クリップ50は、平面略L字状をなしている。クリップ50は、平面視においてX方向の長さである幅の広い部分である拡幅部59aと、幅の狭い部分である縮幅部59bを有している。拡幅部59aは、接合部51と、連結部53の一部を含んでいる。縮幅部59bは、接合部52と、連結部53の一部を含んでいる。
【0161】
このように、クリップ50H,50Lとして、略L字状の共通構造を採用しており、クリップ50Lをクリップ50Hに対して180度回転した配置としている。このため、半導体素子30H,30Lの数を同数としても、互いに噛み合うようにクリップ50H,50Lを配置することができる。よって、X方向の体格を小型化することができる。なお、互いに噛み合うとは、クリップ50Hの縮幅部59bの少なくとも一部が、クリップ50Lの拡幅部59aとY方向において対向し、クリップ50Lの縮幅部59bの少なくとも一部が、クリップ50Hの拡幅部59aとY方向において対向する位置関係である。
【0162】
図38でも、便宜上、クリップ50を簡素化して示している。図示を省略しているが、接合部51は、ソース電極32の分割構造に対応して分岐している。クリップ50は、架橋部56を有してもよいし、貫通孔55を有してもよい。以下に示す
図39および
図40においても同様である。
【0163】
図39に示すように、縮幅部59bの幅を太くしつつX方向に位置をずらしてもよい。クリップ50は、接合部51を含む拡幅部59aと、接合部52を含む縮幅部59bを有している。縮幅部59bは、拡幅部59aに対してX方向にずれて連なっている。このずれにより、連結部53は段差を有している。縮幅部59bの幅は、
図38に示す例よりも太い。接合部52を、接合部51からまっすぐ引き出すのではなく、X方向にずらして引き出している。クリップ50Lは、クリップ50Hと共通の構造を有しており、クリップ50Hに対して180度回転した配置となっている。このため、縮幅部59bの幅を太くしても、互いに噛み合うようにクリップ50H,50Lを配置することができる。よって、X方向の体格を小型化することができる。
【0164】
図40に示すように、縮幅部59bを斜め方向に延設してもよい。クリップ50は、接合部51を含む拡幅部59aと、接合部52を含む縮幅部59bを有している。縮幅部59bは、拡幅部59aからX方向およびY方向に対して傾斜する方向に延びている。縮幅部59bの幅は、
図38に示す例よりも太い。接合部52を、接合部51からまっすぐ引き出すのではなく、斜め方向に引き出している。クリップ50Lは、クリップ50Hと共通の構造を有しており、クリップ50Hに対して180度回転した配置となっている。このため、縮幅部59bの幅を太くしても、互いに噛み合うようにクリップ50H,50Lを配置することができる。よって、X方向の体格を小型化することができる。
【0165】
<第2実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、半導体装置21が、半導体素子30,金属板材であるクリップ50、および半導体素子30とクリップ50を接合するはんだ81を備えている。半導体素子30は、上記したように、半導体基板34の一面上であって素子領域341上に配置されたソース電極32およびゲート配線36を含む信号線を有している。また、半導体素子30は、信号線を覆う絶縁膜35の素子上部354を有している。そして、
図22などに示すようにクリップ50の接合部51は、信号線を避けて設けられている。これにより、製造工程で生じた素子上部354の傷に、はんだ81が流入するのを抑制することができる。よって、信号線のリーク、たとえばゲートリークを抑制することができる。信号線においてリーク電流(漏れ電流)が生じるのを抑制することができる。
【0166】
クリップ50は、共通の半導体素子30に対する接合部51を複数有するとよい。これにより、接合面積を確保しつつ、信号線のリークを抑制することができる。特に共通の半導体素子30に対する接合部51が、複数に分岐しているとよい。複数の分岐した構造の接合部51を採用すると、信号線を避けつつ、接合面積を確保しやすい。分岐構造により、隣り合う接合部51の間の対向空間54が、封止体90を形成する際の封止材の注入口、エアの抜け口として機能する。よって、封止体90の未充填分や、封止体90内にエアだまりが形成されるのを抑制することができる。
【0167】
クリップ50は、半導体基板34の一面34aに対して接合部51よりも離れた位置で、隣り合う接合部51に連なる架橋部56を有してもよい。架橋部56を有することで、放熱面積や通電面積を拡大することができる。
図30に示すように、架橋部56は接合部51よりも上方に位置するので、はんだ81が架橋部56の表面を濡れ拡がり、素子上部354上に流動するのを抑制することができる。
【0168】
クリップ50は、複数の接合部51と、接合部52を有するとよい。つまり、接合部51,52のトータルで3つ以上有するとよい。クリップ50は3点以上で支持されることとなり、クリップ50の位置が安定する。これにより、クリップ50の傾きを含む位置ずれを抑制することができる。接合部52は、半導体素子30が実装された基板40の配線に接続されるとよい。たとえば、構成を簡素化することができる。基板40に、半導体素子30とクリップ50が接続されるため、半導体素子30,基板40の配線、クリップ50の位置を決めやすい。
【0169】
半導体素子30のドレイン電極31は、焼結部材82を介して接続対象である金属部材に接続されてもよい。つまり、半導体素子30のドレイン電極31の直下に焼結部材82を配置し、半導体素子30のソース電極32の直上にはんだ81を配置してもよい。焼結部材82を用いることで、主として放熱に寄与する経路の熱抵抗を低減することができる。焼結部材82を形成する際の加圧時に、加圧装置によって絶縁膜35の素子上部354に傷が生じる虞がある。しかしながら、傷が生じたとしても、信号線を避けた接合部51の配置により、はんだ81が素子上部354の傷に流入するのを抑制することができる。
【0170】
ゲル91によって、パッド33を有する半導体素子30、クリップ50、信号端子62の一部、およびパッド33と信号端子62とを接続するボンディングワイヤ80を一体的に封止してもよい。このような封止構造において、クリップ50の連結部53に貫通孔55を設けてもよい。クリップ50の上方に位置するゲル91と、クリップ50の下方に位置するゲル91とが、貫通孔55に配置されたゲル91を通じて連続的に連なる。移動体の振動がゲル91に伝達されても、ゲル91の振動が貫通孔55(クリップ50)によって制限される。貫通孔55によって、ゲル91が固定される。よって、ゲル91の振動によりボンディングワイヤ80が断線するのを抑制することができる。
【0171】
ゲル91やポッティング樹脂などの封止体90によって、半導体素子30、およびクリップ50を一体的に封止してもよい。このような封止構造において、クリップ50の連結部53に、接合部51,52の並び方向に対して傾斜する形状を設けてもよい。
図20および
図27に示したように、傾斜部531,532は、接合部51,52の並び方向であるY方向に対して傾斜している。
図23、
図25、および
図26に示したように、テーパ部534,535,536は、いずれも接合部51,52の並び方向であるY方向に対して傾斜している。これにより、封止材を充填して封止体90を形成する際に、クリップ50に沿う封止材の流動を連結部53が妨げにくい。封止材は、傾斜に沿って流動する。よって、封止材の流動性を補助することができる。封止体90の未充填分や、封止体90内にエアだまりが形成されるのを抑制することができる。
【0172】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に記載の構成との組み合わせが可能である。
【0173】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0174】
<半導体装置>
本実施形態の半導体装置21は、樹脂製のハウジング、配線を有する基板、配線に接合され、並列接続された複数の半導体素子、および信号端子を少なくとも備える。信号端子は、分岐端子を含む。分岐端子は、外部機器に接続される単一の第1接続部、半導体素子のパッドに電気的に接続される複数の第2接続部、第1接続部と第2接続部をつなぐ連結部を有する。
【0175】
図41は、本実施形態に係る半導体装置21、および半導体モジュール20の一例を示す図である。
図41は、半導体装置21の一部分を示している。
図42は、
図41に示す半導体装置21のO端子613周辺を拡大した斜視図である。
図41および
図42では、ハウジング22を透過させて示している。
図41および
図42に示す半導体装置21および半導体モジュール20の基本構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。半導体モジュール20は、半導体装置21、ハウジング22、および冷却器23を備えている。半導体装置21は、半導体素子30、基板40、クリップ50、および外部接続端子60を備えている。半導体装置21は、先行実施形態同様、スナバ回路70を備えてもよい。半導体装置21は、封止体90を備えてもよい。
【0176】
本実施形態の半導体装置21は、
図5に示したように、複数の半導体素子30Hと、複数の半導体素子30Lを備えている。半導体素子30の構成は、たとえば
図18および
図19に示した構成と同様である。半導体素子30Hは、X方向に並んでいる。半導体素子30Hのドレイン電極31は、基板40のP配線421に接合されている。半導体素子30Lは、X方向に並んでいる。半導体素子30Lのドレイン電極31は、O配線423に接合されている。半導体素子30Hと半導体素子30Lとは、Y方向に並んでいる。
【0177】
半導体素子30Hのパッド33は、信号配線425を介して対応する信号端子62に電気的に接続されている。半導体素子30Lのパッド33は、信号配線426を介して対応する信号端子62に電気的に接続されている。パッド33は、ボンディングワイヤ80を介して対応する信号端子62に接続されている。
【0178】
主端子61であるP端子611、N端子612、およびO端子613と、信号端子62は、ハウジング22にインサートされている。主端子61および信号端子62は、ハウジング22と一体成形されている。主端子61および信号端子62のそれぞれは、ハウジング22に保持されている。P端子611、N端子612、およびO端子613において外部機器との接続部611a,612a,613aは、ハウジング22から突出している。基板40の配線との接続部611b,612b,613bは、ハウジング22から突出している。信号端子62において、外部機器との接続部621およびパッド33との接続部622は、ハウジング22から突出している。
【0179】
<出力端子の配置>
図41および
図5などに示すように、O端子613は、Y方向において半導体素子30Lと並んでいる。O端子613は、半導体素子30Lの並び方向(X方向)において、O配線423の中央領域に接続されている。O端子613は、O配線423のX方向における中心付近に接続されている。O端子613は、X方向において、O配線423における複数の半導体素子30Lの配置領域の中心付近に接合されている。複数の半導体素子30Lの配置領域は、Z方向の平面視において複数の半導体素子30Lの外形輪郭を結ぶ仮想的な矩形領域である。O端子613は、2つ目の半導体素子30Lと3つの目の半導体素子30Lの間の中心位置と重なるように配置されている。O端子613は、O配線423において、半導体素子30Lが実装された基部423aに連なる延設部423bの端子接続部423cに接合されている。
【0180】
<信号配線>
半導体素子30Lに対応する信号配線426は、Y方向において半導体素子30Lと信号端子62の間に配置されている。信号配線426は、X方向に延びている。信号配線426は、ゲート配線426G、ケルビンソース配線426KS、アノード配線426A、およびカソード配線426Cを含んでいる。
【0181】
信号配線426は、O端子613およびO配線423(延設部423b)によって複数に分割(分断)された配線、つまり分割配線を含んでいる。
図41および
図42に示す例において、ゲート配線426Gおよびケルビンソース配線426KSが分割配線である。ゲート配線426Gおよびケルビンソース配線426KSは、O端子613およびO配線423によって2つに分割されている。2つのゲート配線426Gおよび2つのケルビンソース配線426KSのそれぞれは、X方向においてO端子613およびO配線423を挟むように配置されている。
【0182】
ゲートパッド33Gは、2つのゲート配線426Gのうち、近くに位置するゲート配線426Gに接続されている。2つの半導体素子30Lのゲートパッド33Gはゲート配線426Gのひとつに接続され、他の2つの半導体素子30Lのゲートパッド33Gはゲート配線426Gの他のひとつに接続されている。ケルビンソースパッド33KSは、2つのケルビンソース配線426KSのうち、近くに位置するケルビンソース配線426KSに接続されている。2つの半導体素子30Lのケルビンソースパッド33KSはケルビンソース配線426KSのひとつに接続され、他の2つの半導体素子30Lのケルビンソースパッド33KSはケルビンソース配線426KSの他のひとつに接続されている。
【0183】
図41および
図42に示す例では、4つの半導体素子30Lのうち、X方向における端部のひとつの温度のみが監視される。このため、温度が監視される半導体素子30Lの近傍に、アノード配線426Aおよびカソード配線426Cが配置されている。アノード配線426Aおよびカソード配線426Cは、O端子613に対してX方向における一方の側に配置されている。アノード配線426Aおよびカソード配線426Cは、分割配線と並んで配置されている。
図41に示す例では、アノード配線426Aは、X方向においてケルビンソース配線426KSのひとつと並んでいる。カソード配線426Cは、X方向においてゲート配線426Gのひとつと並んでいる。
【0184】
端部に配置された半導体素子30Lのアノードパッド33Aは、ボンディングワイヤ80を介してアノード配線426Aに接続されている。カソードパッド33Cは、ボンディングワイヤ80を介してカソード配線426Cに接続されている。他の3つの半導体素子30Lのアノードパッド33Aおよびカソードパッド33Cは、アノード配線426Aおよびカソード配線426Cに接続されていない。感温ダイオードをソース電位に接地するために、アノードパッド33Aおよびカソードパッド33Cの少なくともひとつが、近くに位置するケルビンソース配線426KSに接続されている。
図41に示す例では、アノードパッド33Aが、近傍のケルビンソース配線426KSに接続されている。
【0185】
<信号端子>
半導体素子30Lに対応する信号端子62は、ハウジング22の枠体221に保持されている。信号端子62は、
図3に示すように枠体221の壁部221bに保持されている。信号端子62は、ゲート端子62G、ケルビンソース端子62KS、アノード端子62A、およびカソード端子62Cを含んでいる。半導体装置21は、半導体素子30Lに対応する信号端子62として、ゲート端子62G、ケルビンソース端子62KS、アノード端子62A、およびカソード端子62Cを1本ずつ備えている。
【0186】
ゲート端子62Gは、ボンディングワイヤ80を介してゲート配線426Gに接続されている。ケルビンソース端子62KSは、ボンディングワイヤ80を介してケルビンソース配線426KSに接続されている。アノード端子62Aは、ボンディングワイヤ80を介してアノード配線426Aに接続されている。カソード端子62Cは、ボンディングワイヤ80を介してカソード配線426Cに接続されている。
【0187】
4つの信号端子62の接続部621は、O端子613に対してX方向における一方の側にまとめて配置されている。4つの接続部621は、O端子613に対してアノード配線426Aおよびカソード配線426Cが配置された側に、配置されている。信号端子62は、O端子613によって接続部622が複数に分割(分断)された分岐端子を含んでいる。
図41および
図42に示す例において、ゲート端子62Gおよびケルビンソース端子62KSが分岐端子である。
【0188】
ゲート端子62Gは、単一(ひとつ)の接続部621、2つの接続部622、および連結部623を有している。本実施形態において、接続部621が第1接続部、接続部622が第2接続部に相当する。2つの接続部622は、平面視においてO端子613を挟むように配置されている。2つの接続部622は、O端子613のX方向における中心に対して略線対称配置とされている。接続部622のひとつにゲート配線426Gのひとつが接続され、接続部622の他のひとつにゲート配線426Gの他のひとつが接続されている。
【0189】
連結部623は、単一の接続部621と複数の接続部622とを電気的に接続する。連結部623は、ハウジング22の枠体221内に配置されている。
図42に示すように、連結部623が、接続部622のひとつと接続部621とをつなぐ連結部623aと、接続部622の他のひとつと連結部623aとをつなぐ連結部623bを含んでもよい。連結部623aは、Z方向に延びる部分を含んでいる。連結部623bは、X方向に延びる部分を含んでいる。
【0190】
図43および
図44は、O端子613と分岐端子であるゲート端子62Gとの配置の一例を示している。
図43は、X方向から見た平面図である。
図44は、Y方向から見た平面図である。
図44では、便宜上、O配線423およびハウジング22を省略している。
図43および
図44に示すように、2つの接続部622を電気的に接続する連結部623(連結部623b)は、O端子613の下方に配置され、O端子613を跨いでもよい。
【0191】
図45および
図46は、O端子613と分岐端子であるゲート端子62Gとの配置の別例を示している。
図45は、
図43に対応している。
図46は、
図44に対応している。
図45および
図46に示すように、2つの接続部622を電気的に接続する連結部623(連結部623b)は、O端子613の上方に配置され、O端子613を跨いでもよい。
【0192】
ケルビンソース端子62KSは、
図42に示すようにゲート端子62Gと同様の構成を有している。ケルビンソース端子62KSは、単一の接続部621、2つの接続部622、および連結部623を有している。連結部623が、連結部623aと、連結部623bを含んでもよい。
【0193】
<電流センス一体構造>
図47に示すように、O端子613の一部に、電流を検出するためのシャント抵抗部613dを設けてもよい。シャント抵抗部613dは、所定の抵抗値となるように、たとえば延設方向の長さ、幅、および厚みが管理されている。信号配線426は、2つのセンス配線426Sを含んでいる。信号端子62は、2つのセンス端子62Sを含んでいる。シャント抵抗部613dの一端は、ボンディングワイヤ80、およびセンス配線426Sのひとつを介してセンス端子62Sのひとつに接続されている。シャント抵抗部613dの他端は、ボンディングワイヤ80、およびセンス配線426Sの他のひとつを介してセンス端子62Sの他のひとつに接続されている。上記構成により、シャント抵抗部613dの両端の電位差、つまりシャント抵抗部613dに流れる電流を検出することができる。
【0194】
図48に示すように、半導体装置21は、電流センサを構成するコア63を備えてもよい。コア63は、ハウジング22に保持されている。コア63は、ハウジング22にインサートされている。コア63は、O端子613の連結部613cの周りに配置されている。O端子613に流れる電流によりコア63に発生する磁場の大きさを測定することで、電流を検出することができる。
【0195】
<第3実施形態のまとめ>
本実施形態の半導体装置21は、樹脂製のハウジング22、基板40、基板40の配線に接合され、並列接続された複数の半導体素子30(30L)、および信号端子62を備えている。信号端子62は、ハウジング22にインサートされている。信号端子62は、分岐端子を含んでいる。分岐端子は、たとえばゲート端子62Gやケルビンソース端子62KSである。分岐端子は、外部機器に接続される単一の接続部621、異なる半導体素子30Lの機能を同一とするパッド33に個別に接続される複数の接続部622、および連結部623を有している。
【0196】
このように、複数の接続部622(第2接続部)と単一の接続部621(第1接続部)とを、ハウジング22の内部で電気的に接続している。よって、複数の半導体素子30Lが並列接続された構成において、ボンディングワイヤ80同士の接触や断線を抑制しつつ、体格の増大を抑制することができる。
【0197】
半導体装置21は、半導体素子30(30L)が実装された配線に接続される主端子61(613)を備えてもよい。主端子61は、半導体素子30(30L)の並ぶX方向(第1方向)に直交するY方向(第2方向)において半導体素子30と並び、配線におけるX方向の中央領域に接続される。このような構成において、主端子61をX方向で挟むように複数の接続部622を配置してもよい。主端子61を配線の中央領域に接続するため、一部の半導体素子30に電流が偏って流れるのを抑制することができる。つまり、電流アンバランスを抑制することができる。
【0198】
主端子61を配線の中央領域に接続すると、機能を同一とする接続部622を主端子61によって分断せざるを得ない。分断された複数の接続部622は、上記したようにハウジング22内において単一の接続部621に連結される。よって、電流アンバランスを抑制しつつ、体格の増大を抑制することができる。
【0199】
基板40は、パッド33と信号端子62とを中継する信号配線426を有してもよい。信号配線426を有する構成において、信号配線426が、接続部622に応じて設けられ、異なる半導体素子30(30L)の機能を同一とするパッド33に個別に接続された複数の分割配線を含んでもよい。分岐端子は、たとえばゲート配線426Gやケルビンソース配線426KSである。複数の分割配線を、Y方向において半導体素子30と接続部622との間に位置し、X方向において主端子61(613)を挟むように配置してもよい。
【0200】
これによれば、半導体装置21、ひいては半導体モジュール20の出力を増大させるために、より多くの半導体素子30を並列接続する構成において、ボンディングワイヤ80同士の接触や断線を抑制することができる。また、機能を同一とする信号配線を分割しても、接続部622を介してハウジング22内で電気的に接続される。よって、体格の増大を抑制することができる。
【0201】
半導体装置21が上下アーム回路9を提供し、複数の半導体素子30Hと複数の半導体素子30LとがY方向に並んで配置された構成において、O端子613を接続部622や信号配線426を分断する主端子61としてもよい。Y方向の一端側からP端子611,N端子612を引き出し、他端側からO端子613を引き出すことができる。そして、O端子613をO配線423の中央領域に接続するため、電流アンバランスを抑制しつつ、体格の増大を抑制することができる。
【0202】
O端子613は、ハウジング22にインサートされてもよい。O端子613は、信号端子62とともにハウジング22に保持される。よって、構成を簡素化することができる。また、O端子613と信号端子62の相対的な位置の精度を向上することができる。
【0203】
O端子613は、電流検出用のシャント抵抗部613dを有してもよい。O端子613にシャント抵抗機能を設けることで、電流センサを別に設ける構成に較べて体格を小型化することができる。
【0204】
半導体装置21は、ハウジング22にインサートされ、O端子613の周りに配置されたコア63を備えてもよい。電流センサのコア63をハウジング22に設けることで、電流センサを別に設ける構成に較べて体格を小型化することができる。また、O端子613とコア63の相対的な位置の精度を向上することができる。
【0205】
なお、半導体素子30Lに対応する信号端子62に分岐端子を適用し、信号配線426に分割配線を適用する例を示した。しかしながら、半導体素子30Hに対応する信号端子62に分岐端子を適用してもよいし、信号配線425に分割配線を適用してもよい。たとえば、スナバ回路70を備えない構成において、半導体素子30Hに対応する信号端子62を枠体221の壁部221aに設け、半導体素子30Hに対応する信号端子62が分岐端子を含む構成としてもよい。
【0206】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に記載の構成との組み合わせが可能である。
【0207】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0208】
<半導体装置>
図49は、本実施形態に係る半導体装置21の一例を示す平面図である。
図49では、半導体装置21を簡素化して図示している。
図49では、便宜上、信号端子62を省略している。半導体装置21および半導体モジュール20の構成は、先行実施形態(たとえば
図2~
図6参照)と同様である。半導体装置21は、複数の半導体素子30、基板40、クリップ50、外部接続端子60、およびスナバ回路70を備えている。半導体装置21は、先行実施形態に示した封止体90を備えてもよい。
【0209】
半導体装置21は、一相分の上下アーム回路9を提供する。複数の半導体素子30は、上アーム9Hを提供する複数の半導体素子30Hと、下アーム9Lを提供する複数の半導体素子30Lを備えている。複数の半導体素子30Hは、共通の配線に配置されて並列接続されている。複数の半導体素子30Lは、共通の配線に配置されて並列接続されている。半導体素子30H,30Lは、同数でもよいし、異なる数でもよい。
図49に示す例では、半導体装置21が、半導体素子30H,30Lをそれぞれ4つ備えている。半導体素子30Hは、X方向に並んで配置されている。半導体素子30Lも、X方向に並んで配置されている。半導体素子30Hと半導体素子30Lは、Y方向に並んでいる。半導体素子30H,30Lは、共通の間隔(ピッチ)で配置されている。
【0210】
外部接続端子60は、先行実施形態(
図3,
図5参照)と同様に、主端子61と、図示しない信号端子62を有している。主端子61は、P端子611,N端子612、およびO端子613を含んでいる。P端子611およびN端子612は、基板40のY方向における端部のひとつにおいて対応する導体42に接続され、O端子613はY方向における端部の他のひとつにおいて対応する導体42に接続されている。半導体装置21は、P端子611およびO端子613をそれぞれひとつ、N端子612を2つ有している。P端子611およびO端子613のそれぞれは、X方向において基板40の略中心を含む位置で接続されている。N端子612は、P端子611を挟むように配置されている。
【0211】
基板40は、一面に導体42を有している。導体42は、パターニングされて複数の配線を有している。導体42は、先行実施形態(
図6参照)と同様にパターニングされている。導体42は、P配線421,N配線422、O配線423、中継配線424、および信号配線425,426を有している。P配線421は、平面略T字状をなしている。P配線421は、X方向に延び、複数の半導体素子30Hが実装された基部421aと、基部421aの中央付近からY方向に延びる延設部421bを有している。延設部421bの端部に、端子接続部421cが設けられている。
【0212】
N配線422は、平面略C字状(またはU字状)をなしている。N配線422は、X方向に延びる基部422aと、基部422aの両端から概ねY方向に延びる2本の延設部422bを有している。延設部422bは、複数の半導体素子30Hを迂回するように配策されている。延設部422bは、基板40のX方向の端部付近に配置されている。2本の延設部422bの間に、P配線421、中継配線424、および信号配線425が配置されている。延設部422bの端部に、端子接続部422cがそれぞれ設けられている。O配線423は、平面略T字状をなしている。O配線423は、X方向に延び、複数の半導体素子30Lが実装された基部423aと、基部423aの中央付近からY方向に延びる延設部423bを有している。延設部423bの端部に、端子接続部423cが設けられている。
【0213】
中継配線424は、コンデンサ71などの電子部品とともに、スナバ回路70を提供する。中継配線424は、スナバ回路70の電子部品とともに、P配線421とN配線422とを電気的に架橋する。中継配線424は、X方向においてP配線421の延設部421bを挟むように配置されている。中継配線424は、中継配線424a,424bを含んでいる。中継配線424a,424bは、P配線421の延設部421bとN配線422の延設部422bとの間において、X方向に並んでいる。
【0214】
信号配線425は、半導体素子30Hのパッド33と信号端子62とを電気的に中継する。信号配線425は、X方向に延びている。信号配線425は、X方向においてP配線421の延設部421bとN配線422の延設部422bとの間に配置されている。信号配線425は、Y方向において、P配線421の基部421aと中継配線424との間に配置されている。信号配線426は、半導体素子30Lのパッド33と信号端子62とを電気的に中継する。信号配線426は、X方向に延びている。信号配線426は、X方向においてO配線の延設部422bを挟むように配置されている。信号配線426は、Y方向において、基板40の端部のひとつに配置されている。
【0215】
クリップ50は、半導体素子30のソース電極32と基板40の配線とを電気的に接続している。クリップ50は、半導体素子30Hのソース電極32に接続されたクリップ50Hと、半導体素子30Lのソース電極32に接続されたクリップ50Lを含んでいる。半導体装置21は、2つのクリップ50Hと、4つのクリップ50Lを備えている。クリップ50Hは、隣り合う2つの半導体素子30Hに対してひとつ設けられている。クリップ50Hは、先行実施形態(
図23、
図24参照)と同様の構成を有している。クリップ50Hは、平面略Y字状をなし、両端が二股に分岐している。クリップ50Lは、半導体素子30Lに対して個別に設けられている。クリップ50Lは、先行実施形態(
図21~
図23参照)と同様の構成を有している。クリップ50Lは、平面略I字状をなし、端部のひとつが二股に分岐している。
【0216】
スナバ回路70は、コンデンサ71と、抵抗72を含んでいる。コンデンサ71は、P配線421の延設部421bと中継配線424aとを架橋している。抵抗72の一部は、中継配線424aと中継配線424bとを架橋している。抵抗72の他の一部は、中継配線424bとN配線422の延設部422bとを架橋している。
【0217】
<受熱と発熱>
図49では、4つの半導体素子30Lを、X方向の一端側から半導体素子30L1、半導体素子30L2、半導体素子30L3、半導体素子30L4と示している。半導体素子30L1は端部に位置しており、隣接する半導体素子30Lはひとつである。半導体素子30L2は中央領域に位置しており、隣接する半導体素子30Lは2つである。半導体素子30L3は、半導体素子30L2同様、隣接する半導体素子30Lは2つである。半導体素子30L4は、半導体素子30L1同様、隣接する半導体素子30Lはひとつである。
【0218】
半導体素子30Lは、隣接する半導体素子30Lの生じた熱の影響を受ける。このため、隣接する半導体素子30Lの数が多いほど、受熱量が大きい。半導体素子30L1,30L4の受熱量は、半導体素子30L2,30L3よりも小さい。半導体素子30L2,30L3の受熱量は、半導体素子30L1,30L4よりも大きい。
【0219】
上記した半導体装置21において、並列接続された複数の半導体素子30Lは、互いに同じタイミングでオンオフする。半導体素子30Lがオンすると、O端子613→O配線423の端子接続部423c→延設部423b→基部423a→半導体素子30L→クリップ50L→N配線422の基部422a→延設部422b→端子接続部422c→N端子612の経路で電流が流れる。
【0220】
半導体素子30L1がオンすると、図中に示す破線の経路で電流が流れる。半導体素子30L2がオンすると、図中に示す二点鎖線の経路で電流が流れる。半導体素子30Lのソース電極32は、クリップ50Lを介してN配線422の基部422aに接続されている。半導体素子30L1のソース電極32は、X方向において延設部422bに近い位置で、基部422aに接続されている。半導体素子30L2のソース電極32は、半導体素子30L1よりも延設部422bに対して遠い位置で、基部422aに接続されている。このため、半導体素子30L1の電流経路(破線)は、半導体素子30L2の電流経路(二点鎖線)よりも短い。半導体素子30L2の電流経路は、半導体素子30L1の電流経路よりも長い。
【0221】
2つの電流経路において、線幅が狭い基部422aにおける長さが異なっている。半導体素子30L2のほうが、半導体素子30L1よりも基部422aにおける経路の長さが長い。これにより、主端子612,613間の配線抵抗は、半導体素子30L2のほうが半導体素子L1よりも大きい。電流経路長は、半導体素子30L2のほうが半導体素子L1よりも長い。半導体素子30L1は、半導体素子L2に較べて電流が流れやすい。半導体素子30L2は、半導体素子30L1に較べて電流が流れにくい。つまり、通電による発熱量は、半導体素子30L1のほうが半導体素子30L2よりも大きい。
【0222】
なお、半導体素子30L4は、半導体素子30L1と同様である。半導体素子30L3は、半導体素子30L2と同様である。
【0223】
図50は、半導体素子30H側の電流経路を示している。
図50では、4つの半導体素子30Hを、X方向の一端側から半導体素子30H1、半導体素子30H2、半導体素子30H3、半導体素子30H4と示している。半導体素子30H1,30H4は端部に位置しており、隣接する半導体素子30Hはひとつである。半導体素子30H2,30H3は中央領域に位置しており、隣接する半導体素子30Lは2つである。半導体素子30も、隣接する半導体素子30Hの生じた熱の影響を受ける。このため、隣接する半導体素子30Hの数が多いほど、受熱量が大きい。半導体素子30H1,30H4の受熱量は、半導体素子30H2,30H3よりも小さい。半導体素子30H2,30H3の受熱量は、半導体素子30H1,30H4よりも大きい。
【0224】
上記した半導体装置21において、並列接続された複数の半導体素子30Hは、互いに同じタイミングでオンオフする。半導体素子30Hがオンすると、P端子611→P配線421の端子接続部421c→延設部421b→基部421a→半導体素子30H→クリップ50H→O配線423の基部423a→延設部423b→端子接続部423c→O端子613の経路で電流が流れる。
【0225】
半導体素子30H2がオンすると、図中に示す破線の経路で電流が流れる。半導体素子30H1がオンすると、図中に示す二点鎖線の経路で電流が流れる。半導体素子30Hのソース電極32は、クリップ50Hを介してO配線423の基部423aに接続されている。半導体素子30H2のドレイン電極31は延設部421bと基部421aとの連結部に近い位置で、基部421aに接続されている。半導体素子30H1のドレイン電極31は、半導体素子30H2よりも連結部に対して遠い位置で、基部421aに接続されている。半導体素子30H2の電流経路(破線)は、半導体素子30H1の電流経路(二点鎖線)よりも短い。半導体素子30H1の電流経路は、半導体素子30H2の電流経路よりも長い。
【0226】
基部421aにおいて、半導体素子30Hの実装位置とP端子611側の端部との間の領域を電流が流れる。この領域は狭い。2つの電流経路において、基部421aにおける経路の長さが異なっている。半導体素子30H1のほうが、半導体素子30H2よりも基部421aにおける経路の長さが長い。これにより、主端子611,613間の配線抵抗は、半導体素子30H1のほうが半導体素子H2よりも大きい。電流経路長は、半導体素子30H1のほうが半導体素子H2よりも長い。半導体素子30H2は、半導体素子H1に較べて電流が流れやすい。半導体素子30H1は、半導体素子30H2に較べて電流が流れにくい。つまり、通電による発熱量は、半導体素子30H2のほうが半導体素子30H1よりも大きい。
【0227】
なお、半導体素子30H4は、半導体素子30H1と同様である。半導体素子30H3は、半導体素子30H2と同様である。
【0228】
上記したように、半導体素子30Lにおいて両端に位置する半導体素子30L1,30L4に電流が流れやすく、半導体素子30Hにおいて中央領域に位置する半導体素子30H2,30H3に電流が流れやすい。
【0229】
<クリップ>
隣り合う半導体素子の数が異なる半導体素子同士、および/または、主電極と主端子との電流経路長が異なる半導体素子同士を、金属板材によって電気的に接続してもよい。
【0230】
図50に示す例では、半導体素子30H1と半導体素子30H2とが、共通のクリップ50Hによって電気的に接続されている。半導体素子30H3と半導体素子30H4とが、共通のクリップ50Hによって電気的に接続されている。
【0231】
上記したように、半導体素子30H1,30H4は、隣接する半導体素子30Hがひとつである。半導体素子30H2,30H3は、隣接する半導体素子30Hが2つである。これにより、半導体素子30H1,30H4と半導体素子30H2,30H3とは、受熱量が異なる。
【0232】
図50では、隣接する半導体素子30Hがひとつの半導体素子30H1のソース電極32と、隣接する半導体素子30が2つの半導体素子30H2のソース電極32とを、共通のクリップ50Hで接続している。隣接する半導体素子30Hが2つの半導体素子30H3のソース電極32と、隣接する半導体素子30がひとつの半導体素子30H1のソース電極32とを、共通のクリップ50Hで接続している。
【0233】
半導体素子30H1,30H4は、P端子611からドレイン電極31までの電流経路長が長い。半導体素子30H2,30H3は、P端子611からドレイン電極31までの電流経路長が短い。半導体素子30H1,30H4と半導体素子30H2,30H3とは、電流経路長が異なる。半導体素子30H1,30H4と半導体素子30H2,30H3とは、電流の流れやすさが異なり、ひいては発熱量が異なる。
【0234】
図50では、電流経路長が長い半導体素子30H1のソース電極32と、電流経路長が短い半導体素子30H2のソース電極32とを、共通のクリップ50Hで接続している。電流経路長が短い半導体素子30H3のソース電極32と、電流経路長が長い半導体素子30H1のソース電極32とを、共通のクリップ50Hで接続している。
【0235】
<基板>
基板40において、導体42は種々のパターンが可能である。半導体素子が実装された実装部である第1導体の面積が、上アーム素子である半導体素子30Hと下アーム素子である半導体素子30Lとで異なっていてもよい。このように第1導体の面積が異なる構成において、半導体素子30が実装されない第2導体を、面積の小さい第1導体の近くに配置してもよい。
【0236】
図51は、半導体装置21において、基板40の一例を示している。
図51では、導体パターンを簡素化して示している。
図51に示す導体42は、先行実施形態(
図6参照)に示した構成や
図49に示した構成と同様の構成を有している。P配線421は、複数の半導体素子30Hが配置される基部421aを有している。O配線423は、複数の半導体素子30Lが配置される基部423aを有している。基部421a,423aが、第1導体に相当する。中継配線424は、発熱体である半導体素子30が実装されない導体である。中継配線424が、第2導体に相当する。中継配線424には、スナバ回路70を構成する電子部品、コンデンサ71や抵抗72が配置されている。
【0237】
基部421aは、基部423aよりも面積が小さい。基部421aのX方向の長さLX1は、基部423aのX方向の長さLX2よりも短い。基部421aのY方向の長さLY1は、基部423aのY方向の長さLY2よりも短い。中継配線424は、基部421a,423aのうち、面積の小さい基部421aの近くに配置されている。基部421aは、Y方向において中継配線424と基部423aの間に配置されている。
【0238】
第1導体には、上記したように発熱体である半導体素子30が実装される。このため、第1導体を、第2導体を含む他の導体42の部分よりも熱伝導性に優れる高熱伝導材を用いて形成してもよい。
【0239】
図52は、基板40の別例を示している。導体42のパターンは、
図51に示すパターンと同様である。P配線421の基部421aは、高熱伝導材を用いて形成されている。O配線423の基部423aも、高熱伝導材を用いて形成されている。高熱伝導材は、たとえば銅グラファイト(CuGr)材である。中継配線424を含む他の配線は、高熱伝導材よりも熱伝導性が低い材料、たとえばCuを用いて形成されている。
図52では、区別のために、基部421a,423aにハッチングを施している。Cu材とCuGr材は、共通の絶縁基材41に配置される。
【0240】
高熱伝導材として、異方性を有する高熱伝導材を用いてもよい。高熱伝導方向が複数の半導体素子30並び方向と略一致するように、高熱伝導材を配置してもよい。
図52には、高熱伝導材の高熱伝導(HD)方向と低熱伝導(LD)方向を示している。HD方向がX方向と略平行、LD方向がY方向と略平行となるように、高熱伝導材が配置されている。
【0241】
<温度モニタ>
上記したように、半導体装置21が複数の半導体素子30を備える構成において、ひとつの半導体素子30の温度のみを出力する構成としてもよい。たとえば
図49に示すように、半導体素子30L1の温度のみを出力する構成としてもよい。先行実施形態(
図18参照)に示したように、半導体素子30は、ゲートパッド33G、ケルビンソースパッド33KS、アノードパッド33A、およびカソードパッド33Cを含んでいる。アノードパッド33Aおよびカソードパッド33Cは、半導体素子30が備える感温ダイオードに接続されている。
【0242】
半導体素子30L1のアノードパッド33Aは、アノード用の信号配線426に接続されている。半導体素子30L1のカソードパッド33Cは、カソード用の信号配線426に接続されている。半導体素子30L1のアノードパッド33Aおよびカソードパッド33Cは、先行実施形態(
図41、
図42参照)と同様に、信号配線426を介して対応する信号端子62に接続されている。他の半導体素子30のアノードパッド33Aおよびカソードパッド33Cは、信号端子62に接続されていない。たとえばアノードパッド33Aが、ケルビンソース用の信号配線425,426に接続されている。
【0243】
図49では、X方向の端部であってY方向の端部に位置する半導体素子30L1の温度を出力する構成となっている。これに代えて、半導体素子30L4の温度を出力する構成としてもよい。半導体素子30L2,30L3のいずれかの温度を出力する構成としてもよい。複数の半導体素子30Hにおいて、中央領域に配置された半導体素子30H2,30H3の受熱量が大きく、且つ、電流が流れやすい。よって、半導体素子30H2,30H3のいずれかの温度を出力する構成としてもよい。X方向の端部に位置する半導体素子30H1,30H4のいずれかの温度を出力する構成としてもよい。
【0244】
<第4実施形態のまとめ>
半導体装置21は、基板40、基板40の一面上に配置され、互いに並列接続された複数の半導体素子30、および複数の半導体素子30の主電極に共通する主端子61を備えてもよい。そして、隣り合う半導体素子30の数に応じて主端子61と主電極との間の配線抵抗が異なり、隣り合う半導体素子30の数が多いほど配線抵抗が大きい構成としてもよい。
【0245】
上記したように、並列接続された複数の半導体素子30のうち、隣り合う半導体素子30の数が多い半導体素子30は、受熱量が大きい。主端子61と主電極との間の配線抵抗が大きい半導体素子30は、電流が流れにくいため、通電による発熱量は小さい。隣り合う半導体素子30の数が多いほど配線抵抗が大きい構成とすると、隣り合う半導体素子30の数が多い半導体素子30の発熱を抑制できる。これにより、複数の半導体素子30において、受熱と発熱との総量を互いに近づけることができる。よって、複数の半導体素子30における熱ばらつきを抑制することができる。つまり温度の偏りを抑制することができる。
【0246】
局所的な温度上昇を抑制することができるため、一部の半導体素子30の温度が許容上限温度を超え、半導体装置21の出力が低下するのを抑制することができる。また、並列接続される複数の半導体素子30の配置が千鳥状に制限されないため、配置自由度を向上することができる。千鳥状に配置しなくてもよいため、体格の増大を抑制することができる。
【0247】
基板40は、主端子61が接合され、複数の半導体素子30の主電極が接続された共通の配線を有してもよい。この配線は、主端子61の接合部から主電極の電気的な接続部までの長さが隣り合う半導体素子30の数が多いほど長くなるように、配策されてもよい。このように共通の配線を用いつつ、配線における主電極の接続部の位置を異ならせることで、電流経路長を異ならせる、つまり配線抵抗を異ならせることができる。簡素な構成で、熱ばらつきを抑制することができる。
【0248】
半導体装置21は、上下アーム回路9を提供してもよい。半導体装置21は、X方向(第1方向)に並んで配置され、互いに並列接続された複数の半導体素子30H(第2半導体素子)と、X方向に並んで配置され、互いに並列接続された複数の半導体素子30L(第1半導体素子)を備えてもよい。半導体素子30HがY方向(第2方向)においてN端子612(主端子61)と半導体素子30Lとの間に配置され、N配線422が複数の半導体素子30Hを迂回するように配策されてもよい。これによれば、X方向に並んで配置される複数の半導体素子30Lのうち、隣接する半導体素子30Lの数が多い半導体素子30L2,30L3の配線抵抗を大きくすることができる。隣接する半導体素子30Lの数が少ない半導体素子30L1,30L4の配線抵抗を小さくすることができる。よって簡素な構成で、熱ばらつきを抑制することができる。
【0249】
半導体素子30H,30Lは、同数設けられてもよい。複数の半導体素子30L(第1半導体素子)において電流が流れやすい半導体素子30L1,30L4の位置と、複数の半導体素子30H(第2半導体素子)において電流が流れやすい半導体素子30H2,30H3の位置とが、X方向(第1方向)において互いにずれた構成としてもよい。上下アーム回路9を構成する複数の半導体素子30において、通電による発熱量が大きい半導体素子30が分散配置される。よって、上下アーム回路9を構成する複数の半導体素子30において、熱ばらつきを抑制することができる。
【0250】
図49に例示したように、下アーム9Lを提供する半導体素子30Lにおいて、隣り合う半導体素子30Lの数が多いほど配線抵抗が大きい構成としてもよい。図示を省略するが、上アーム9Hを提供する半導体素子30Hにおいて、隣り合う半導体素子30Hの数が多いほど配線抵抗が大きい構成としてもよい。半導体装置21は、上下アーム回路9を提供する構成に限定されない。アームのひとつを提供する半導体装置21にも適用できる。並列接続され、アームのひとつを提供する複数の半導体素子30において、隣り合う半導体素子30の数が多いほど配線抵抗が大きい構成としてもよい。
【0251】
半導体装置21は、基板40、基板40の一面上に配置され、並列接続された複数の半導体素子30、複数の半導体素子30の主電極に共通する接続対象である主端子61、および金属板材であるクリップ50を備えてもよい。クリップ50は、隣り合う半導体素子30の数が異なる半導体素子30同士、および/または、主電極と主端子61との電流経路長が異なる半導体素子30同士を電気的に接続してもよい。
【0252】
たとえば
図50に例示したように、並列接続された複数の半導体素子30Hのうち、隣り合う半導体素子30Hの数が異なる半導体素子30H1,30H2のソース電極32を、クリップ50Hで接続してもよい。隣り合う半導体素子30Hの数が異なる半導体素子30H3,30H4のソース電極32を、クリップ50Hで接続してもよい。並列接続された複数の半導体素子30Hのうち、電流経路長が異なる半導体素子30H1,30H2のソース電極32を、クリップ50Hで接続してもよい。電流経路長が異なる半導体素子30H3,30H4のソース電極32を、クリップ50Hで接続してもよい。
【0253】
上記したように、隣り合う半導体素子30の数が多い半導体素子30は受熱量が大きく、隣り合う半導体素子30の数が少ない半導体素子30は受熱量が小さい。主電極と主端子61との電流経路長が長い半導体素子30には電流が流れにくく、電流経路長が短い半導体素子30には電流が流れやすい。このため、隣り合う半導体素子30の数が異なることで受熱量に差がある半導体素子30同士をクリップ50によって接続することで、クリップ50を介した熱の移動により、熱ばらつきを抑制することができる。また、電流経路長が異なることで発熱量に差がある半導体素子30同士を金属板材によって接続することで、熱ばらつきを抑制することができる。よって、複数の半導体素子30における熱ばらつきを抑制することができる。たとえば、出力の低下を抑制することができる。
【0254】
ソース電極同士を接続する金属板材は、クリップ50に限定されない。リードでもよい。半導体素子30は、半導体素子30Hに限定されない。図示を省略するが、並列接続される複数の半導体素子30Lにも適用できる。半導体装置21は、上下アーム回路9を提供する構成に限定されない。アームのひとつを提供する半導体装置21にも適用できる。並列接続され、アームのひとつを提供する複数の半導体素子30において、ソース電極32をクリップ50で電気的に接続してもよい。
【0255】
半導体装置21が、基板40、および基板40の一面上に配置された複数の半導体素子30を備え、半導体素子30が、上アーム素子である半導体素子30Hと、下アーム素子である半導体素子30Lを含んでもよい。基板40の導体42は、半導体素子30が実装された基部421a,423a(第1導体)と、半導体素子30が実装されていない中継配線424(第2導体)を含んでもよい。基部423aよりも面積の小さい基部421aの近くに、中継配線424が配置された構成としてもよい。
【0256】
中継配線424の近くに面積の小さい基部421aを配置しているため、面積の小さい基部421aに実装された半導体素子30Hの熱を中継配線424側に逃がすことができる。基部421aの面積が小さくても、中継配線424を利用することで半導体素子30Hの熱を逃がすことができる。中継配線424から離れた位置にある基部423aは面積が大きいため、基部421aよりも熱マスとしての機能が高く、放熱面積が大きい。基部423aを介して半導体素子30Lの熱を逃がすことができる。よって、上下アーム回路9を構成する複数の半導体素子30において熱ばらつきを抑制することができる。たとえば、出力の低下を抑制することができる。
【0257】
発熱体である半導体素子30は実装されないものの、配線機能を提供する中継配線424を利用し、その分、基部421aを小さくする。これにより、基板40、ひいては半導体装置21の体格を小型化することができる。
【0258】
コンデンサ71を含むスナバ回路70を備え、中継配線424にコンデンサ71が配置された構成としてもよい。スナバ回路70を構成する配線、特にコンデンサ71が配置される配線は、比較的大きな面積を要する。第2導体(中継配線424)をコンデンサ71の実装導体として活用しつつ、面積が小さい基部421aに実装された半導体素子30の熱を逃がすことができる。
【0259】
第1導体である基部421a,423aは、第2導体を含む他の導体42の形成材料よりも熱伝導性に優れる高熱伝導材を用いて形成されてもよい。発熱体である半導体素子30が実装される基部421a,423aのみ、高熱伝導材を用いることで、コストの増加を抑制しつつ、放熱性を高めることができる。
【0260】
半導体装置21は、X方向に並んで配置された複数の半導体素子30Hと、同じくX方向に並んで配置された複数の半導体素子30Lを備えてもよい。高熱伝導材として、熱伝導の異方性を有する高熱伝導材を用いてもよい。高熱伝導材の高熱伝導方向が半導体素子30H,30Lの並び方向であるX方向と一致するように、高熱伝導材を設けてもよい。半導体素子30H,30Lの熱は、基部421a,423aにおいて主としてX方向に伝わり、Y方向に伝導し難い。基部421a,423aのY方向の長さを短くしても放熱性を確保することができる。よって、基板40、ひいては半導体装置21の体格を小型化することができる。
【0261】
半導体装置21が複数の半導体素子30を備える構成において、複数の半導体素子30のうちのひとつの温度のみを出力する構成としてもよい。最小限の温度モニタで半導体装置21の劣化を検出することができる。コストを低減しつつ、劣化を検出することができる。たとえば
図49に示したように、半導体素子30L1の温度のみを出力する構成としてもよい。半導体素子30L1は、X方向およびY方向において基板40の端部付近に位置する。基板40を冷却器23に接合する接合材24(はんだ)は、基板40の外周部からクラックが入って劣化していく。上記したように、半導体素子30L1には電流が流れやすい。半導体素子30L1は発熱し易い。半導体素子30L1の温度を検出することで、最小限の温度モニタで半導体装置21の劣化をより効果的に検出することができる。
【0262】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に記載の構成との組み合わせが可能である。
【0263】
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0264】
<半導体モジュール>
図53は、本実施形態に係る半導体モジュール20の一例を示す平面図である。
図54は、半導体モジュール20のうち、ハウジング22を除いた構成、つまり冷却器23上に半導体装置21が配置された状態を示す平面図である。
図53および
図54では、便宜上、封止体を除外して示している。
図55は、
図53に示すLV-LV線に沿う断面図である。
図55では、半導体モジュール20を簡素化して示している。
【0265】
図53~
図55に示すように、半導体モジュール20および半導体装置21の基本構成は、先行実施形態(
図2~
図6参照)に示した構成と同様である。半導体モジュール20は、半導体装置21、ハウジング22、および冷却器23を備えている。冷却器23の一面23a上に、半導体装置21およびハウジング22が配置されている。
【0266】
半導体装置21は、先行実施形態に示した構成と同様に、半導体素子30、基板40、および外部接続端子60を備えている。外部接続端子60は、主端子61と、信号端子62を含んでいる。外部接続端子60は、ハウジング22にインサートされている。主端子61であるP端子611、N端子612、O端子613は、先行実施形態同様、導体42の対応する配線に接合されている。
【0267】
半導体装置21は、先行実施形態(
図20参照)に示した構成と同様に、封止体90を備えている。封止体90は、半導体装置21の他の要素を封止している。封止体90は、半導体装置21の収容空間に露出する部分を封止している。封止体90は、ハウジング22の上端よりも低い所定位置まで充填されている。封止体90は、半導体装置21が備えてもよいし、半導体モジュール20が備えてもよい。
図55に示すように、封止体90としてゲル91を備えてもよいし、樹脂を材料とする封止体を備えてもよい。
【0268】
半導体装置21は、さらにクリップ50を備えてもよい。半導体装置21は、さらにスナバ回路70を備えてもよい。
図53~
図55に示すように、半導体装置21が、クリップ50、およびスナバ回路70を備えてもよい。
【0269】
半導体装置21は、電力変換器を構成する。半導体装置21は、ひとつのアームを提供してもよい。
図53~
図55に示すように、半導体装置21が、一相分の上下アーム回路9を提供してもよい。半導体モジュール20は、一相分の上下アーム回路9を提供する半導体装置21を3つ備えてもよい。3つの半導体装置21、つまり3つの基板40は、X方向に並んで配置されてもよい。基板40は、はんだなどの接合材24を介して冷却器23に固定されてもよい。
【0270】
冷却器23は、先行実施形態(
図4参照)に示したように、流路231を有する構成でもよい。冷却器23は、ヒートシンクなどの放熱部材でもよい。放熱部材は、放熱フィンを備えてもよい。半導体モジュール20は、
図54に例示するように冷却器23を貫通する締結孔233を備えてもよい。半導体モジュール20は、締結孔233を提供するカラー234を、冷却器23と一体的に備えてもよい。カラー234は、高剛性の材料を用いて形成された円筒形状の面圧緩衝部材である。カラー234は、金属部材である。冷却器23に、複数の締結孔233を設けてもよい。
図54に示すように、カラー234を、平面略矩形状をなす一面23aの外周縁部に設けてもよい。カラー234の一部を四隅に設け、カラー234の他の一部を基板40の並び方向(X方向)において、基板40の間の位置に設けてもよい。
【0271】
<ハウジング>
ハウジング22は、枠体221を備えている。枠体221は、冷却器23に固定されている。枠体221は、冷却器23とともに、収容空間を提供する。枠体221は、壁部221a,221b,221c,221dを有している。壁部221aには、P端子611およびN端子612が保持されている。壁部221bには、O端子613(613U,613V、613W)が保持されている。半導体装置21は、収容空間に配置されている。収容空間には、封止体90が充填されている。
【0272】
枠体221は、冷却器23に固定されている。枠体221は、冷却器23とともに、収容空間を提供する。枠体221は、壁部221a,221b,221c,221dを有している。壁部221aには、P端子611およびN端子612が保持されている。壁部221bには、O端子613(613U,613V、613W)が保持されている。半導体装置21は、収容空間に配置されている。収容空間には、封止体90が充填されている。
【0273】
半導体モジュール20は、
図53に例示するように、ハウジング22を貫通する締結孔223を備えてもよい。締結孔223は、締結孔233に対応して設けられる。たとえば締結孔223,233を挿通するボルトにより、ハウジング22および冷却器23、ひいては半導体装置21を、図示しない電力変換器のケースに締結固定する。
【0274】
半導体モジュール20は、締結孔223を提供するカラー224を、ハウジング22と一体的に備えてもよい。カラー224は、金属部材である。カラー224は、高剛性の材料を用いて形成された円筒形状の面圧緩衝部材である。カラー224は、ハウジング22にインサートされている。半導体モジュール20は、複数の締結孔223を備えてもよい。
図53に示すように、カラー224を、平面略矩形環状をなす枠体221に設けてもよい。カラー224の一部を枠体221の四隅に設け、カラー224の他の一部を基板40の並び方向(X方向)において、基板40の間の位置に設けてもよい。
【0275】
図56は、カラー224の周辺を示す断面図である。
図56は、ハウジング22と冷却器23との接続構造を示している。
図56では、便宜上、冷却器23側のカラー234を省略して示している。
図56に示すように、カラー224は、ハウジング22の下面22aから冷却器23側に所定量突出し、一面23aに接触してもよい。つまり、カラー224が冷却器23の一面23aに接触し、ハウジング22(たとえば枠体221)が一面23aに接触しない構成としてもよい。下面22aは、冷却器23の一面23aとの対向面である。
【0276】
カラー224により、ハウジング22の下面22aと冷却器23の一面23aとの間には、所定の高さH10の隙間(スペース)が確保される。この隙間には、シール材25が配置される。シール材25は、ハウジング22の下面22aと冷却器23の一面23aとの間に介在する。シール材25は、接着機能を有する。シール材25は、ハウジング22を冷却器23に固定する。シール材25は、シール機能を有する。シール材25は、下面22aと一面23aとの間を液密に封止する。シール材25は、収容空間から封止体90が漏れるのを抑制する。シール材25の厚みは、カラー224の突出量によって制御される。シール材25の厚みは、高さH10に略等しい。
【0277】
図57は、シール材25と熱抵抗との関係を示す図である。
図57に示すように、シール材25の厚みが厚いほど、熱抵抗が大きくなる。シール材25の膜厚が0.1mmを下回ると、カラー224の突出量が小さいため、座面に封止体90が載る虞がある。また、製造公差は±0.1mmである。以上より、シール材25の厚み、つまりカラー224の下面22aからの突出量を、0.1mm以上、0.3mm以下の範囲内で設定するとよい。
【0278】
ハウジング22は、
図53に例示するように、枠体221に加えて仕切り壁222を備えてもよい。仕切り壁222は、基板40に応じて収容空間を区画する。
図53に示す例では、ハウジング22が、収容空間を3つに分割するように2つの仕切り壁222を備えている。仕切り壁222は、基板40の並び方向であるX方向において、収容空間を基板40と同数に分割している。仕切り壁222は、基板40の並び方向に直交するY方向に延び、その両端が枠体221の壁部221a,221bに連なっている。
【0279】
仕切り壁222は、基板40の並び方向において、隣り合う基板40の間の位置に設けられている。仕切り壁222aは、U相の半導体装置21を構成する基板40と、V相の半導体装置21を構成する基板40の間に設けられている。仕切り壁222bは、V相の半導体装置21を構成する基板40と、W相の半導体装置21を構成する基板40との間に設けられている。3つに分割された収容空間に対して個別に基板40、つまり各相の半導体装置21が配置されている。
【0280】
仕切り壁222a,222bは、複数の信号端子62の少なくとも一部を保持してもよい。
図53に示すように、仕切り壁222a,222bに信号端子62の一部が保持されて、壁部221b,221cに信号端子の他の一部が保持されてもよい。
図58は、参考例の断面図を示している。
図58は、
図59に対応している。参考例では、本実施形態の構成と関連する要素の符号に対して末尾にrを付加している。
【0281】
図58に示す参考例では、ハウジング22rの仕切り壁222rが凸部225rを有している。凸部225rは、仕切り壁222rにおいて、信号端子62rの接続部622rよりも下方に位置している。凸部225rは、接続部622rを支持している。凸部225rの上面225arに、接続部622rが配置されている。凸部225rは、接続部622rから冷却器23rの一面23arの間に設けられている。仕切り壁222rにおいて、凸部225rはX方向の長さ(幅)の広い拡幅部であり、凸部225rよりも上方の部分は、凸部225rよりも幅の狭い縮幅部である。縮幅部の上面から、信号端子62rの接続部621rが突出している。
【0282】
仕切り壁222rと基板40rとの間において、一面23arから封止体90rの上面までの間に、封止体90rを遮るものが存在しない。このため、たとえば封止体90rがゲル91rの場合、移動体の振動がゲル91rに伝わると、ゲル91rが一面23arから封止体90rの上面までの広い範囲で振動可能である。つまり、ゲル91rの変形量が大きい。このため、ボンディングワイヤ80rが断線する虞がある。封止体90rが樹脂の場合、温度変化にともなう樹脂の膨張収縮が大きいため、封止体90rが剥離する虞がある。
【0283】
図59は、
図53のLIX-LIX線に沿う断面図である。
図59は、半導体モジュール20のうち、仕切り壁222周辺の構造の一例を示している。
図59に示すように、仕切り壁222に凹部226を設けてもよい。仕切り壁222は、封止体90に接触する内面であって、封止体90に接触する部分に凹凸形状を有している。仕切り壁222の上面225aには、信号端子62の接続部622が配置されている。凸部225は、接続部622を支持する支持部と称されることがある。ボンディングワイヤ80は、接続部622と信号配線425とを電気的に接続している。
【0284】
凹部226は、凸部225の直下に設けられている。凹部226はえぐれ部と称されることがある。凹部226は、凸部225から冷却器23の一面23aまでの間に設けられている。仕切り壁222は、下面22aから凸部225までにおいて凹んでいる。凸部225の上方も、凸部225に対して凹んでいる。凸部225は、基板40側にせり出している。
図59に示す例では、基板40の一部が、凸部225の直下に入り込んでいる。基板40は、凹部226によって凹んだ領域に入り込んでいる。Z方向の平面視において、基板40の一部は凸部225と重なっている。
【0285】
図60は、仕切り壁222周辺の構造の別例を示す断面図である。
図60は、
図59に対応している。
図60に示す例では、基板40が、平面視において凸部225とは重なっていない。この点を除けば
図59に例示した構成と同様である。仕切り壁222は、凸部225および凹部226を有している。
【0286】
上記した凹凸構造を、仕切り壁222a,222bの少なくとも一方に設けてもよい。凹凸構造を、枠体221の壁部221a,221b,221c,221dの少なくともひとつに設けてもよい。特に信号端子62を保持する壁部221b,221c、および仕切り壁222a,222bに設けると効果的である。
図53に示す例では、仕切り壁222a,222b、および壁部221b,221c,221dに凹凸構造を設けている。いずれにおいても、基板40が凸部225と重なっている。
【0287】
<第5実施形態のまとめ>
半導体モジュール20は、冷却器23、ハウジング22、基板40、半導体素子30、主端子61、封止体90、シール材25、および締結孔223を有する金属部材を備えてもよい。冷却器23の一面23aに配置されたハウジング22と冷却器23がなす収容空間に、基板40が配置され、基板40の導体42に半導体素子30が接合されている。ハウジング22にインサートされた主端子61は、導体42に接合されている。封止体90は、収容空間に充填されている。シール材25は、冷却器23の一面23aとハウジング22の下面22aとの間に介在する。金属部材は、ハウジング22に一体化されている。上記構成において、金属部材は、冷却器23の一面23aとハウジング22の下面22aとの間に所定高さH10の隙間を確保するように、ハウジング22から一面23a側に突出して一面23aに接触していてもよい。
【0288】
金属部材によって確保される所定高さH10の隙間に、シール材25が配置される。これにより、シール性を確保し、封止体90の漏れを抑制することができる。また、金属部材が冷却器23に接触しており、樹脂製のハウジング22は冷却器23に接触していない。このため、ハウジング22の締結時などにおいて、ハウジング22が冷却器23に強く押し当たるのを抑制することができる。つまり、押し当たることでハウジング22に生じた応力がハウジング22にインサートされた主端子61と導体42との接合部、ひいては基板40に作用するのを抑制することができる。よって、接合部や基板40にひずみが生じるのを抑制することができる。
【0289】
締結孔223を提供する金属部材として、
図53および
図56に例示したカラー224を用いてもよい。カラー224は、ハウジング22にインサートされる。簡素な構成で、接合部や基板40にひずみが生じるのを抑制することができる。
【0290】
金属部材のハウジング22からの突出量を0.1mm以上、0.3mm以下の範囲内で設定するとよい。つまり、シール材25の厚みを、0.1mm以上、0.3mm以下の範囲内で設定するとよい。これによれば、座面に封止体90が載るのを抑制する、つまり樹脂クリープによる締結固定の劣化を抑制することができる。また、熱抵抗を抑制することができる。
【0291】
半導体モジュール20は、基板40をひとつのみ備えてもよいし、複数備えてもよい。複数の基板40が所定方向(X方向)に並んで配置され、締結孔223が、並び方向において隣り合う基板40の間の位置に設けられてもよい。冷却器23と基板40との線膨張係数差によって冷却器23(たとえば冷却プレート)に反りが生じても、並び方向において基板40の間に固定点を設けることで、締結にともない基板40や接合材24に作用する応力を低減することができる。
【0292】
半導体素子30と信号端子62とがボンディングワイヤ80を介して電気的に接続され、収容空間に充填された封止体90としてのゲル91によりボンディングワイヤ80が封止される構成としてもよい。この構成において、ハウジング22に、複数の基板40の配置に応じて収容空間を区画する仕切り壁222を設けてもよい。移動体の振動がゲル91に伝達されても、仕切り壁222によってゲル91の変形可能な範囲を狭めているため、ゲル91の変形量を小さくすることができる。よって、ボンディングワイヤ80の断線を抑制することができる。
【0293】
半導体モジュール20は、半導体素子30とともに一相分の上下アーム回路9を提供する基板40を3つ備えてもよい。この構成において、仕切り壁222(222a,222b)を隣り合う基板40の間に設けて収容空間を3つの空間に分割し、分割された空間に基板40を個別に配置してもよい。これによれば、インバータ6を提供する半導体モジュール20において、すべての半導体装置21におけるボンディングワイヤ80の断線を抑制することができる。
【0294】
仕切り壁222は、上記した金属部材により所定高さH10の隙間を確保する構成と組み合わせてもよいし、組み合わせずに単独で用いてもよい。たとえばカラー224を用いない構成において、仕切り壁222を設けてもよい。
【0295】
ハウジング22は、封止体90が接触する部分として、凸部225と、凸部225と冷却器23の一面23aとの間に設けられた凹部226を有してもよい。封止体90が樹脂の場合、アンカー効果により、樹脂の界面剥離を抑制することができる。また、せり出した凸部225によって樹脂の膨張収縮する領域が制限されるため、樹脂剥離を抑制することができる。封止体90がゲル91の場合、振動伝達によるゲル91の変形がせり出した凸部225によって制限されるため、変形量を低減し、ひいてはボンディングワイヤ80の断線を抑制することができる。
【0296】
ハウジング22が凸部225および凹部226を有する構成において、基板40の一部が、平面視において凸部225と重なる配置としてもよい。つまり凸部225の直下に基板40が入り込んだ構成としてもよい。封止体90が樹脂の場合、アンカー効果を高めることができる。また、凸部225の直下に基板40が位置するため、樹脂の膨張収縮する領域をさらに制限することができる。よって、樹脂剥離を効果的に抑制することができる。たとえば基板40から封止体90が剥離するのを抑制することができる。封止体90がゲル91の場合、凸部225の直下に基板40が位置することで、ゲル91の変形をさらに抑制することができる。よって、ボンディングワイヤ80の断線を効果的に抑制することができる。また、基板40が凸部225の直下に入り込むため、Z方向に直交する方向の体格を小型化することができる。
【0297】
ハウジング22が凸部225および凹部226を有する構成において、信号端子62がハウジング22に保持され、接続部622が凸部225の上面225aに配置されてもよい。接続部622に接続されたボンディングワイヤ80の断線を抑制することができる。凸部225の上面225aをボンディングワイヤ80の接続に利用するため、アンカー効果によって樹脂剥離を抑制しつつ、体格を小型化することができる。また、接続部622に接続されたボンディングワイヤ80の断線を抑制することができる。
【0298】
凸部225および凹部226を有する構成は、上記した金属部材により所定高さH10の隙間を確保する構成と組み合わせてもよいし、組み合わせずに単独で用いてもよい。凸部225および凹部226を有する構成は、仕切り壁222を有すると組み合わせてもよいし、組み合わせずに単独で用いてもよい。たとえば、ハウジング22が仕切り壁222を有さない構成において、枠体221に凸部225および凹部226を設けてもよい。
【0299】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に記載の構成との組み合わせが可能である。
【0300】
(第6実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0301】
<半導体モジュール>
図61は、本実施形態に係る半導体モジュール20の一例を示す断面図である。半導体モジュール20は、先行実施形態(
図2~
図4参照)に示した構成と同様に、半導体装置21、冷却器23、および接合材24を備えている。半導体装置21は、冷却器23の一面23a上に配置されている。冷却器23は、先行実施形態(
図4参照)に示したように流路231を有する構成でもよいし、ヒートシンクなどの放熱部材でもよい。接合材24は、半導体装置21と冷却器23との間に介在している。半導体装置21と冷却器23との間に介在する熱伝導部材は、接合材24に限定されない。TIMなどを用いてもよい。図示を省略するが、半導体モジュール20は、ハウジング22を備えてもよい。
【0302】
図62は、半導体装置21の一例を示す平面図である。
図62は、基板40と、基板40に実装された電子部品を示している。半導体装置21は、先行実施形態(
図5および
図6参照)に示した構成と同様に、半導体素子30、および基板40を備えている。
図62では、半導体素子30を簡素化して示している。
【0303】
図62に示すように、半導体装置21は、スナバ回路70を備えてもよい。図示を省略するが、半導体装置21は、クリップ50を備えてもよい。半導体装置21は、外部接続端子60を備えてもよい。半導体装置21は、先行実施形態(
図20参照)に示した構成と同様に、封止体90を備えてもよい。封止体90は、半導体装置21が備えてもよいし、半導体モジュール20が備えてもよい。封止体90としてゲル91を備えてもよいし、樹脂を材料とする封止体を備えてもよい。
【0304】
半導体装置21は、電力変換器を構成する。半導体装置21は、複数の半導体素子30を備えている。半導体素子30の構成は、先行実施形態(
図5、
図18参照)に示した構成と同様である。半導体装置21は、互いに並列接続される複数の半導体素子30を備えている。並列接続された複数の半導体素子30は、ひとつのアームを提供する。半導体装置21は、ひとつのアームのみを提供してもよい。
図61および
図62に示すように、半導体装置21が、一相分の上下アーム回路9を提供する。上下アーム回路9を提供する半導体装置21は、上アーム9Hを提供する複数の半導体素子30Hと、下アーム9Lを提供する複数の半導体素子30Lを備えている。半導体素子30Hは上アーム素子に相当し、半導体素子30Lは下アーム素子に相当する。
【0305】
複数の半導体素子30Hは、X方向に並んでいる。複数の半導体素子30Lは、X方向に並んでいる。半導体素子30Hと半導体素子30Lとは、Y方向に並んでいる。半導体素子30H,30Lの数は、同数でもよいし、異なってもよい。
図62に示す例では、半導体素子30H,30Lの構成が互いに共通であり、半導体素子30H,30Lの数は同数である。
【0306】
半導体モジュール20は、先行実施形態に示した構成と同様に、一相分の上下アーム回路9を提供する半導体装置21を3つ備えてもよい。3つの半導体装置21、つまり3つの基板40は、X方向に並んで配置されてもよい。
【0307】
<半導体素子および基板>
図63は、
図62のLXIII-LXIII線に沿う断面図である。基板40は、先行実施形態(
図4参照)に示した構成と同様に、絶縁基材41、および導体42,43を備えている。導体42が表面導体に相当し、導体43が裏面導体に相当する。導体42は、パターニングされており、複数の配線パターンを有している。導体43は、たとえば
図63に示すようにパターニングされていない、いわゆるベタ状の導体でもよい。導体43は、パターニングされてもよい。
【0308】
導体42は、配線パターンとして、素子実装部を含んでいる。導体42は、素子実装部を少なくともひとつ含んでいる。素子実装部には、X方向に並ぶ複数の半導体素子30のドレイン電極31が接続されている。導体42は、
図62および
図63に示すように、素子実装部として、複数の半導体素子30Hが実装された基部421aと、複数の半導体素子30Lが実装された基部423aを有してもよい。基部421aが上アーム実装部に相当し、基部423aが下アーム実装部に相当する。
【0309】
基部421aは、X方向に延びている。複数の半導体素子30Hは、基部421a上に配置されてX方向に並んでいる。複数の半導体素子30Hのソース電極32は、共通の基部421aに接合されている。これにより、複数の半導体素子30Hは互いに並列接続されている。基部423aは、X方向に延びている。複数の半導体素子30Lは、基部423a上に配置されてX方向に並んでいる。複数の半導体素子30Lのソース電極32は、共通の基部423aに接合されている。これにより、複数の半導体素子30Lは互いに並列接続されている。
【0310】
素子実装部のひとつは、Y方向において基板40の中央領域に配置されている。中央領域は、Y方向において基板40の中央位置を中心とする所定範囲の領域である。
図62および
図63に示すように、2つの基部421a,423aを備える構成において、基部421aが基板40の中央領域に配置されてもよい。つまり複数の半導体素子30Hが、Y方向において基板40の中央領域に実装されてもよい。この構成において、基部423aは、Y方向において中央領域の外に配置される。複数の半導体素子30Lは、Y方向において中央領域の外で基板40に実装される。
【0311】
導体42は、Y方向において複数の配線パターンに分断されてもよい。たとえば
図62に一点鎖線で示す部分において、導体42は、N配線422、中継配線424、信号配線425、基部421a、N配線422、基部423a、信号配線426に分かれている。導体42は、半導体素子30の実装部である基部421a,423a、受動部品であるコンデンサ71や抵抗72の実装部である中継配線424、信号配線425,426ごとに分けてレイアウトされている。
【0312】
図62に示すように、基板40は、導体42をX方向に横断するように設けられた、導体42が配置されていない非配置領域411を有してもよい。非配置領域411は、絶縁基材41上に導体42が配置されていない領域であって、X方向において基板40の一端から他端まで延びている。非配置領域411は、導体42を、Y方向において切り離している。非配置領域411の数は特に限定されない。基板40は、
図62に示すように非配置領域411をひとつのみ有してもよいし、複数有してもよい。
【0313】
導体42は、主配線部として、延設部421bと、N配線422を有してもよい。延設部421bは、基部421aを介して半導体素子30Hのドレイン電極31とP端子611とを電気的に接続する。N配線422は、半導体素子30Lのソース電極32とN端子612とを電気的に接続する。
図62および
図63に示すように、中央領域に配置される半導体素子30Hとは電気的に分離された主配線であるN配線422を、基部421aと基部423aとの間に配置してもよい。つまり主配線を、Y方向において基部421a,423aの間に配置してもよい。
【0314】
図62に示す導体42の配線パターンは、先行実施形態(
図5および
図6参照)と同様である。N配線422は、基部421a,423aの間に位置する基部422aと、主端子612と基部422aとをつなぐ延設部422bを有している。延設部422bの端部に設けられた端子接続部422cは、P配線421の端子接続部421cと、X方向において並んでいる。N配線422は、基部422aの両端からそれぞれ延びる2本の延設部422bを有している。N配線422は、平面略C字状をなしており、2本の延設部422bは、P配線421、中継配線424、および信号配線425をX方向において挟んでいる。
【0315】
基部421a,423aのZ方向から平面視した面積の関係は、特に限定されない。たとえば、互いに等しい面積でもよい。中央領域に配置された素子実装部の面積が、中央領域の外に配置された素子実装部の面積より小さい構成としてもよい。
図62に示す例では、中央領域に配置された基部421aの面積が、中央領域の外に配置された基部423aの面積よりも小さい。
【0316】
なお、基部421a,423aに実装される半導体素子30の間隔は、特に限定されない。たとえば
図62に示すように、半導体素子30Hの間隔と半導体素子30Lの間隔とが略等しい構成としてもよい。半導体素子30Hの間隔を、半導体素子30Lの間隔よりも狭くしてもよい。たとえば、中央領域に配置された面積の小さい基部421a上の半導体素子30Hの間隔を、中央領域外に配置された面積の大きい基部423a上の半導体素子30Lの間隔より狭くしてもよい。
【0317】
導体42の厚みを、導体43の厚みと略等しい構成としてもよい。
図63に示すように、導体42の厚みを、導体43の厚みよりも厚くしてもよい。
【0318】
<第6実施形態のまとめ>
半導体モジュール20が、冷却器23、基板40、接合材24、および複数の半導体素子30を備えてもよい。基板40は冷却器23の一面23aに配置され、基板の導体43(裏面導体)と冷却器23との間には接合材24(熱伝導部材)が介在する。複数の半導体素子30のドレイン電極31(第1主電極)は、基板40の導体42(表面導体)に接合されている。上記構成において、X方向に並ぶ複数の半導体素子30のドレイン電極31が共通接続された素子実装部のひとつを、Y方向(直交方向)において基板40の中央領域に配置するとよい。
【0319】
上記構成によれば、パターニングされた導体42と導体43との膨張収縮差により、基板40は冷却器23側に凸の反りを有している。基板40は、製造過程での熱により、反りを生じる。基板40は、Y方向において中央領域を凸の頂点として反る。基板40の反りは、複数の半導体素子30が並ぶX方向よりも、Y方向のほうが大きい。
図64に例示するように、基板40は、反った状態で熱伝導部材を介して冷却器23に固定されている。たとえば、はんだ接合時(リフロー時)の熱によって基板40には冷却器23側に凸の反りが生じ、基板40は反った状態で冷却器23に固定(はんだ接合)されている。接合材24の厚みは、凸の頂点付近、つまり中央領域の直下において薄い。素子実装部を中央領域に配置するため、複数の半導体素子30が並列接続される構成において、熱抵抗を低減することができる。発熱体である半導体素子30の熱を、冷却器23側へ効果的に放熱することができる。
【0320】
図63に例示したように、導体42を、Y方向において複数の配線パターンに分断するとよい。複数の配線パターンに分けて膨張収縮する部分を狭くすることで、基板40はY方向において反りやすくなる。よって、中央領域に位置する複数の半導体素子30の直下において、基板40と冷却器23との間の熱抵抗を効果的に低減することができる。
【0321】
図62に例示したように、基板40に、導体42をX方向に横断する非配置領域411を設けてもよい。非配置領域411を設けることで、基板40はY方向において反りやすくなる。よって、中央領域に位置する複数の半導体素子30の直下において、基板40と冷却器23との間の熱抵抗を効果的に低減することができる。
【0322】
複数の半導体素子30が、X方向に並ぶ複数の半導体素子30H(上アーム素子)と、X方向に並ぶ複数の半導体素子30L(下アーム素子)を含んでもよい。素子実装部が、半導体素子30Hのドレイン電極31が共通接続された基部421a(上アーム素子部)と、半導体素子30Lのドレイン電極31が共通接続された基部423a(下アーム素子部)を含んでもよい。上記構成において、基部421a,423aのひとつをY方向において基板40の中央領域に配置し、基部421a,423aの他のひとつを中央領域の外に配置してもよい。つまり、上下アーム回路9を提供する構成に適用してもよい。
【0323】
たとえば
図62に例示したように基部421aを中央領域に配置すると、複数の半導体素子30Hの直下において、基板40と冷却器23との間の熱抵抗を効果的に低減することができる。図示を省略するが、基部423aを中央領域に配置すると、複数の半導体素子30Lの直下において、基板40と冷却器23との間の熱抵抗を効果的に低減することができる。
【0324】
上下アーム回路9を提供する構成において、基部421a,423aの間に、中央領域に配置された半導体素子30とは電気的に分離された主配線部を配置してもよい。主配線部の配置により、導体42はY方向においてより多くの配線パターンに分断される。よって、基板40はY方向において反りやすくなる。中央領域に位置する複数の半導体素子30の直下において、基板40と冷却器23との間の熱抵抗を効果的に低減することができる。
【0325】
Z方向の平面視における基部421a,423aの面積を、中央領域に配置された基部のほうが、中央領域の外に配置された基部よりも小さい構成としてもよい。中央領域の半導体素子30は、上記したように直下の熱抵抗を低減できるため、基部を小さくしても効果的に放熱することができる。中央領域の外の半導体素子30は、基部の面積が大きいため、中央領域に較べて直下の熱抵抗が大きくても効果的に放熱することができる。つまり、上下アーム回路9を構成する半導体素子30H,30Lいずれの熱も効果的に放熱することができる。
【0326】
素子実装部のひとつをY方向において基板40の中央領域に配置する構成において、導体42を、導体43より厚くしてもよい。導体42を厚くすると、基板40の反り量を低減することができる。つまり、中央領域よりも外において、反りにともなう熱抵抗の増大を抑制することができる。なお、基板40は、導体43の体積≧導体42の体積の関係において冷却器23側に凸の反りを生じる。導体42は、導体43の体積≧導体42の体積の関係において冷却器23側に凸の反りを生じるようにパターニングされている。導体42を厚くしても、導体43の体積≧導体42の関係を満たす範囲であれば、基板40は冷却器23側に凸の反りを生じる。
【0327】
<変形例>
図65に示すように、ひとつのアームを提供する半導体装置21において、素子実装部のひとつをY方向において基板40の中央領域に配置してもよい。複数の半導体素子30は、ドレイン配線427の基部427a(素子実装部)に実装されている。基部427aは、複数の半導体素子30の並び方向(X方向)に直交するY方向において、基板40の中央領域に配置されている。基部427aとソース配線428とは、Y方向に並んでいる。半導体素子30のソース電極32は、クリップ50を介してソース配線428に電気的に接続されている。
【0328】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に記載の構成との組み合わせが可能である。
【0329】
(第7実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0330】
<並列接続における発振>
図66は、上アーム9Hの一例を示す等価回路図である。
図66では、2つのMOSFET11が並列接続されて上アーム9Hが構成されている。MOSFET11は、ゲート-ソース間、ゲート-ドレイン間、ドレイン-ソース間に寄生容量を有している。2つのMOSFET11のゲート電極は、相互に接続されている。各ゲート電極には、共通のゲートドライバ(GD)14からゲート駆動信号が入力される。ゲートドライバ14と各ゲート電極とをつなぐゲート配線は、抵抗Rgおよび寄生インダクタンスLgを有している。2つのMOSFET11のソース電極は、相互に接続されている。ソース電極をつなぐ配線は、寄生インダクタンスLsを有している。
【0331】
複数のMOSFET11による並列回路においては、MOSFET11の寄生容量、配線の寄生インダクタンスなどにより、発振回路が形成される。ゲートドライバ14からゲート電極へ入力される入力信号と、寄生容量、寄生インダクタンスなどを介した経路の帰還信号とが、同相であり、且つゲインが0dB以上、つまり帰還信号が増幅の場合に、発振が生じる。共振条件が成立すると、発振が生じる。
【0332】
ソース電極間の寄生インダクタンスLsは大きく、ゲート配線の寄生インダクタンスLgは小さい。発振を抑制するには、ソース電極間の寄生インダクタンスLsを低減する、および/または、ゲートインピーダンスを大きくすることが有効である。
【0333】
<ソース電極間の寄生インダクタンス低減>
図67は、本実施形態に係る半導体装置21の一例を示している。半導体装置21の基本構成は、先行実施形態(
図2~
図6、
図18参照)に記載の構成と同様である。半導体装置21は、複数の半導体素子30と、基板40を備えている。
図67に示すように、半導体装置21は、クリップ50を備えてもよい。半導体装置21は、外部接続端子60を備えてもよい。半導体装置21は、スナバ回路70を備えてもよい。
【0334】
半導体素子30は、上記したように半導体基板34の一面34aに配置されたソース電極32およびパッド33と、裏面34bに配置されたドレイン電極31を有している。複数の半導体素子30は、ひとつのアームのみを提供してもよい。
図67に示すように、半導体装置21は、一相分の上下アーム回路9を提供してもよい。上下アーム回路9を提供する半導体装置21は、上アーム9Hを提供する複数の半導体素子30Hと、下アーム9Lを提供する複数の半導体素子30Lを備えている。複数の半導体素子30Hは、X方向に並んでいる。複数の半導体素子30Lは、X方向に並んでいる。半導体素子30Hと半導体素子30Lとは、Y方向に並んでいる。
【0335】
半導体モジュール20は、先行実施形態に示した構成と同様に、一相分の上下アーム回路9を提供する半導体装置21を3つ備えてもよい。3つの半導体装置21、つまり3つの基板40は、X方向に並んで配置されてもよい。
【0336】
基板40は、先行実施形態に記載の構成と同様に、絶縁基材41、絶縁基材41に配置された導体42を有している。導体42は、配線に相当する。基板40は、導体42とは反対の面に、導体43を備えてもよい。導体42は、パターニングされている。導体42は、上下アーム回路9を提供すべく、P配線421、N配線422、およびO配線423を有している。
図67に示すように、導体42は、中継配線424を有してもよい。導体42は、信号配線425,426を有してもよい。
【0337】
P配線421の基部421aには、複数の半導体素子30Hが実装されている。複数の半導体素子30Hのドレイン電極31は、基部421aに接合されている。複数の半導体素子30Hは、互いに並列接続されている。O配線423の基部423aには、複数の半導体素子30Lが実装されている。複数の半導体素子30Lのドレイン電極31は、基部423aに接合されている。複数の半導体素子30Lは、互いに並列接続されている。複数の半導体素子30Hのソース電極32は、クリップ50Hを介してO配線423の基部423aに電気的に接続されている。複数の半導体素子30Lのソース電極32は、クリップ50Lを介してN配線422の基部422aに電気的に接続されている。
【0338】
図67に示すように、半導体装置21は、金属板材100を備えてもよい。金属板材100は、銅などの導電性が良好な金属材料を用いて形成された板材である。金属板材100は、たとえば平板状でもよい。金属板材100は、並列接続された複数の半導体素子30のソース電極32を短絡(ショート)する。金属板材100は、複数のソース電極32同士を低インピーダンスで電気的に接続する。金属板材100は、ソース電極32に接合されてもよいし、他の金属部材を介してソース電極32に接続されてもよい。金属板材100は、複数のソース電極32を架橋する。金属板材100は、接続対象である複数の半導体素子30が実装された配線に対して平面視において内包されるように配置されてもよい。
【0339】
図67に示すように、金属板材100は、金属板材100Hと、金属板材100Lを含んでもよい。金属板材100Hは、複数の半導体素子30Hのソース電極32を短絡する。金属板材100Lは、複数の半導体素子30Lのソース電極32を短絡する。金属板材100Hは、クリップ50Hに接合されている。金属板材100Lは、クリップ50Lに接合されている。図示を省略するが、クリップ50が、金属板材100の機能を兼ねてもよい。
【0340】
図68は、
図67に例示した半導体装置21により提供される上下アーム回路9の等価回路を示している。金属板材100Hによる短絡部は、上アーム9Hを構成する複数のMOSFET11のソース電極32を短絡している。金属板材100Lによる短絡部は、下アーム9Lを構成する複数のMOSFET11のソース電極32を短絡している。
【0341】
ソース電極32を短絡する構成は、上記した例に限定されない。たとえば
図69に示すように、金属板材100に代えて、ボンディングワイヤ80を用いてもよい。ボンディングワイヤ80は、X方向において隣り合う接合部51を電気的に接続している。
図69に示すように、ボンディングワイヤ80は、異なる半導体素子30Hのソース電極32に接合された隣り合う接合部51を電気的に接続してもよい。ボンディングワイヤ80は、異なる半導体素子30Lのソース電極32に接合された隣り合う接合部51を電気的に接続してもよい。隣り合う接合部51を接続するボンディングワイヤ80の数は、特に限定されない。
図69に示すように、複数本のボンディングワイヤ80が接続されてもよい。
【0342】
図70に示すように、クリップ50を用いない構成としてもよい。金属板材100Hは、半導体素子30Hのソース電極32に接合されている。金属板材100Hは、4つの半導体素子30Hを架橋している。金属板材100Hには、複数本のボンディングワイヤ80が接続されている。ボンディングワイヤ80は、平面視においてY方向に延びている。ボンディングワイヤ80の端部のひとつは金属板材100Hに接続され、端部の他のひとつはO配線423の基部423aに接続されている。複数本のボンディングワイヤ80は、平面視においてX方向に並んでいる。
【0343】
同様に、金属板材100Lは、半導体素子30Lのソース電極32に接合されている。金属板材100Lは、4つの半導体素子30Lを架橋している。金属板材100Lには、複数本のボンディングワイヤ80が接続されている。ボンディングワイヤ80は、平面視においてY方向に延びている。ボンディングワイヤ80の端部のひとつは金属板材100Lに接続され、端部の他のひとつはN配線422の基部422aに接続されている。複数本のボンディングワイヤ80は、平面視においてX方向に並んでいる。金属板材100Hに接続されたボンディングワイヤ80と、金属板材100Lに接続されたボンディングワイヤ80とは、X方向において交互に配置されている。
【0344】
図71、
図72、および
図73に示すように、半導体素子30のソース電極32と金属板材100との間に、所定高さの金属ブロック101が介在してもよい。
図71は、半導体装置21のうち、半導体素子30H,30Lの周辺を示している。
図72は、
図71のLXXII-LXXII線に沿う断面図である。
図73は、
図72に一点鎖線で示す領域LXXIIIを拡大した図である。金属ブロック101は、ターミナル、導電スペーサなどと称されることがある。金属ブロック101は、半導体素子30に対して個別に設けられている。金属ブロック101は、はんだ81などの接合材を介してソース電極32に接続されている。金属ブロック101は、はんだなどの接合材83を介して金属板材100に接続されている。
【0345】
図73に示すように、金属ブロック101は、酸化膜102を有してもよい。酸化膜102は、半導体素子30との対向面であって、絶縁膜35の素子上部354(
図18、
図19参照)との対向部分に設けられている。金属ブロック101は、たとえば銅などの導電性良好な金属を材料とする母材と、母材上に成膜されためっき膜を有してもよい。めっき膜は、たとえばNiを主成分として含む。酸化膜102は、たとえばレーザ光をめっき膜に照射することにより形成される。酸化膜102は、はんだに対する濡れ性が低い。酸化膜102により、はんだ81が素子上部354の上方に位置するのを抑制することができる。
【0346】
<ゲートインピーダンスの増加>
図74は、半導体装置21の別例を示している。半導体装置21は、
図67に示した構成同様、複数の半導体素子30と、基板40を備えている。
図74に示すように、半導体装置21は、クリップ50を備えてもよい。半導体装置21は、外部接続端子60を備えてもよい。半導体装置21は、スナバ回路70を備えてもよい。
【0347】
半導体装置21は、受動部品103を備えてもよい。受動部品103は、フェライトビーズまたはバランス抵抗を含む。受動部品103は、MOSFET11のゲート電極、つまり半導体素子30のゲートパッド33Gとゲートドライバ14とをつなぐゲート配線(信号経路)に配置され、ゲート配線のインピーダンスを増加させる。
図74に示すように、基板40が信号配線425,426を備える構成において、受動部品103は、ゲート配線425G,426Gに実装されてもよい。
【0348】
図74に示す例では、半導体装置21が、信号端子62を備えている。
図74では、便宜上、信号端子62として、ゲート端子62Gのみを示している。ゲート配線425G,426Gを含む信号配線425,426、およびゲート端子62Gを含む信号端子62の配置、接続構造については、先行実施形態(
図5、
図42参照)に記載の構成と同様である。P配線421によって分割された、機能を同一とする信号配線425は、ボンディングワイヤ80によって電気的に接続されている。
【0349】
受動部品103は、ゲート配線425Gにおいて、ゲート端子62Gが電気的に接続された部分とゲートパッド33Gが電気的に接続された部分とを電気的に中継するように実装されている。受動部品103は、ゲート配線426Gにおいて、ゲート端子62Gが電気的に接続された部分とゲートパッド33Gが電気的に接続された部分とを電気的に中継するように実装されている。
【0350】
並列接続された複数の半導体素子30は、素子数よりも少ないグループに分けられている。並列接続された複数の半導体素子30は、配置の近いもの同士でひとつのグループに集約されている。
図74に示す例において、半導体素子30Hは、2つのグループ301H,302Hに分けられている。X方向に並ぶ4つの半導体素子30Hのうち、一端側の2つの半導体素子30Hがグループ301Hに属し、他端側の2つの半導体素子30Hがグループ302Hに属している。同様に、半導体素子30Lは、2つのグループ301L,302Lに分けられている。X方向に並ぶ4つの半導体素子30Lのうち、一端側の2つの半導体素子30Lがグループ301Lに属し、他端側の2つの半導体素子30Lがグループ302Lに属している。
【0351】
上記した受動部品103は、半導体素子30ごとではなく、グループごとに設けられている。
図74に示すように、グループ301Hに属する半導体素子30Hのゲートパッド33Gは、X方向においてグループ301H側に位置するゲート配線425Gに、ボンディングワイヤ80を介して電気的に接続されている。グループ301Hに対応するゲート配線425Gには、受動部品103が実装されている。グループ302Hに属する半導体素子30Hのゲートパッド33Gは、X方向においてグループ302H側に位置するゲート配線425Gに、ボンディングワイヤ80を介して電気的に接続されている。グループ302Hに対応するゲート配線425Gには、受動部品103が実装されている。
【0352】
同様に、グループ301Lに属する半導体素子30Lのゲートパッド33Gは、X方向においてグループ301L側に位置するゲート配線426Gに、ボンディングワイヤ80を介して電気的に接続されている。グループ301Lに対応するゲート配線426Gには、受動部品103が実装されている。グループ302Lに属する半導体素子30Lのゲートパッド33Gは、X方向においてグループ302L側に位置するゲート配線426Gに、ボンディングワイヤ80を介して電気的に接続されている。グループ302Lに対応するゲート配線426Gには、受動部品103が実装されている。
【0353】
図75に示す例では、受動部品103が、半導体装置21の外に配置されている。上記したように、受動部品103は、ゲートドライバ14とゲートパッド33Gとの間の信号経路に設けられる。受動部品103は、たとえば、ゲートドライバ14が形成された図示しない回路基板に実装されてもよい。ゲート端子62Gは、グループごとに設けられている。半導体装置21は、グループ301Hに対応するゲート端子62G、グループ302Hに対応するゲート端子62G、グループ301Lに対応するゲート端子62G、およびグループ302Lに対応するゲート端子62Gを備えている。
【0354】
ソース電極32間のインダクタンスを低減する構成と、ゲート配線のインピーダンスを増大させる構成とを組み合わせてもよい。たとえば
図76に示すように、金属板材100でソース電極32を短絡する構成と、グループごとに受動部品103を設ける構成とを組み合わせてもよい。
図76では、グループごとに金属板材100を設けている。金属板材100は、共通のグループに属する2つの半導体素子30のソース電極32を短絡している。
【0355】
受動部品103を基板40に実装する例を示したが、これに限定されない。基板40としての絶縁基板とは別にプリント基板を準備し、プリント基板に受動部品103が実装された構成としてもよい。プリント基板の絶縁基材は、樹脂を含む。絶縁基板の絶縁基材は樹脂を含まず、たとえばセラミックを材料とする。プリント基板は、絶縁基板に較べて配線パターンの微細化が可能である。
【0356】
図77に示す半導体装置21は、中継基板104を備えている。中継基板104は、プリント基板である。中継基板104には、受動部品103が実装されている。
図77に例示する基板40は、絶縁基板である。
図77に示すように、中継基板104を基板40に実装してもよい。中継基板104は、セラミックを材料とする絶縁基材41上に配置されている。中継基板104は、基板40に対して、たとえば接着固定されている。
図77に示す例では、半導体装置21が、3つの半導体素子30Hを備えている。中継基板104は、半導体素子30Hごとに設けられている。中継基板104のそれぞれには、受動部品103が実装されている。半導体素子30HはX方向に並んでおり、中継基板104もX方向に並んでいる。中継基板104は、P配線421、およびN配線422を避けて配置されている。
【0357】
パッド33は、ボンディングワイヤ80を介して中継基板104の対応する配線に接続されている。受動部品103は、実装された中継基板104に対応する半導体素子30Hのゲートパッド33Gと、ゲート端子62Gとをつなぐ信号経路に設けられている。隣り合う中継基板104の機能を同一とする配線は、ボンディングワイヤ80を介して電気的に接続されている。X方向において端部のひとつの中継基板104は、ボンディングワイヤ80を介してゲート端子62Gに電気的に接続されている。
【0358】
中継基板104は、半導体素子30のソース電極32に接合された金属部材上に配置されてもよい。たとえば
図78に示すように、中継基板104が金属板材100上に配置されてもよい。金属板材100は、
図67に示した構成同様、クリップ50Hに接合されている。金属板材100は、平面視において3つの半導体素子30Hと重なるようにX方向に延びている。金属板材100は、クリップ50Hを介して3つの半導体素子30Hのソース電極32を短絡している。中継基板104は、金属板材100に接着固定されている。
【0359】
中継基板104は、平面視において対応する半導体素子30Hと重なるように配置されている。パッド33は、ボンディングワイヤ80を介して中継基板104の対応する配線に接続されている。隣り合う中継基板104の機能を同一とする配線は、ボンディングワイヤ80を介して電気的に接続されている。X方向において端部のひとつの中継基板104は、ボンディングワイヤ80を介してゲート端子62Gに電気的に接続されている。
【0360】
図77および
図78では、半導体素子30Hの例を示したが、半導体素子30Lにも同様の構造を採用することができる。
図77および
図78では、中継基板104を半導体素子30に対して個別に設ける例を示したが、これに限定されない。中継基板104を基板40に実装する構成において、複数の半導体素子30ごとに中継基板104を設けてもよい。たとえば2つの半導体素子30に対して共通の中継基板104を設け、半導体素子30ごとに設けた受動部品103を共通の中継基板104に実装してもよい。中継基板104を上記したグループごとに設けてもよい。中継基板104には、グループ内において共通の受動部品103が実装される。
【0361】
中継基板104を金属板材100上に配置する構成において、複数の半導体素子30ごとに中継基板104を設けてもよい。たとえば2つの半導体素子30に対して共通の中継基板104を設け、半導体素子30ごとに設けた受動部品103を共通の中継基板104に実装してもよい。中継基板104を上記したグループごとに設けてもよい。中継基板104には、グループ内において共通の受動部品103が実装される。並列接続されるすべての半導体素子30に対して共通の中継基板104を設けてもよい。この場合、半導体素子30ごとに設けた受動部品103を共通の中継基板104に実装してもよい。グループごとに設けた受動部品103を共通の中継基板104に実装してもよい。
【0362】
図78では、中継基板104を金属板材100上に配置する例を示したが、これに限定されない。中継基板104をクリップ50上に配置してもよい。クリップ50を備えない構成において、中継基板104を、金属板材100上に配置してもよい。
【0363】
<第7実施形態のまとめ>
半導体装置21は、導体42(配線)を有する基板40と、ドレイン電極31(第1主電極)が共通の配線に接合されて互いに並列接続された複数の半導体素子30を備えてもよい。そして、並列接続された複数の半導体素子30のソース電極32(第2主電極)が、金属部材によって短絡していてもよい。
【0364】
金属部材により短絡しているため、ソース電極32間の寄生インダクタンスLsが小さい。よって、半導体素子30間、つまり並列回路において発振が生じるのを抑制することができる。
【0365】
金属部材は、金属板材100でもよいし、ボンディングワイヤ80でもよい。金属板材100を用いると、ソース電極32間の寄生インダクタンスLsをより小さくすることができる。ボンディングワイヤ80を用いると、パッド33と信号端子62とを電気的に接続するワイヤ接続工程において、ソース電極32同士を短絡させることができる。よって、工程を簡素化しつつ、ソース電極32間の寄生インダクタンスLsを小さくすることができる。
【0366】
半導体装置21は、導体42(配線)を有する基板40と、ドレイン電極31(第1主電極)が共通の配線に接合されて互いに並列接続された複数の半導体素子30を備えてもよい。基板40、および半導体素子30に加えて、ゲートパッド33Gに電気的に接続されるゲート配線に設けられ、フェライトビーズまたはバランス抵抗を含む受動部品103を備えてもよい。そして、複数の半導体素子30が配置の近いもの同士で集約されて並列接続された半導体素子30の数よりも少ないグループに分けられ、グループごとに受動部品103が設けられてもよい。
【0367】
ゲート配線に受動部品103であるフェライトビーズまたはバランス抵抗を設けるため、ゲート配線のインピーダンスを増大させることができる。よって、半導体素子30間、つまり並列回路において発振が生じるのを抑制することができる。並列接続された複数の半導体素子30において、半導体素子30の位置が離れているほどソース電極32間の寄生インダクタンスが大きいため、発振が生じやすい。つまり、配置の近い半導体素子30間においては、発振が生じ難い。発振が生じ難い配置の近いもの同士でグループ化し、グループごとに受動部品103を設けることで、グループ間において発振が生じるのを抑制することができる。グループごとに受動部品103を設けるため、受動部品103の数を低減しつつ、並列回路において発振が生じるのを抑制することができる。
【0368】
半導体装置21は、信号端子62としてゲート端子62Gを備えてもよい。受動部品103は、基板40において、ゲートパッド33Gとゲート端子62Gとを電気的に接続するゲート配線425G,426Gに実装されてもよい。これによれば、半導体装置21内において、ゲート配線のインピーダンスを調整することができる。半導体装置21の製造プロセスを利用して受動部品103を実装できるため、製造工程を簡素化することができる。
【0369】
基板40として、絶縁基板を採用してもよい。半導体装置21は、導体42(配線)を有する基板40(絶縁基板)と、ドレイン電極31(第1主電極)が共通の配線に接合されて互いに並列接続された複数の半導体素子30を備えてもよい。基板40、および半導体素子30に加えて、ゲート端子62Gと、受動部品103が実装された中継基板104(プリント基板)を備えてもよい。受動部品103は、フェライトビーズまたはバランス抵抗を含み、中継基板104に設けられたゲート配線のインピーダンスを調整する。
【0370】
中継基板104が備えるゲート配線に受動部品103であるフェライトビーズまたはバランス抵抗を設けるため、ゲート配線のインピーダンスを増大させることができる。よって、半導体素子30間、つまり並列回路において発振が生じるのを抑制することができる。プリント基板は、AMB基板などの絶縁基板に較べて配線の微細化が可能である。AMBは、Active Metal Brazingの略称である。基板40にゲート配線を設けるのではなく、微細加工が可能な中継基板104にゲート配線を設けるため、受動部品103を備える構成において半導体装置21の体格を小型化することができる。
【0371】
中継基板104は、基板40に実装されてもよいし、ソース電極32(第2主電極)に接合された金属部材上に配置されてもよい。基板40上に配置した場合、上記したように配線の微細化が可能であるため、半導体装置21の体格を小型化することができる。金属部材上に配置した場合、基板40に中継基板104用のスペースを設けなくてもよいため、半導体装置21の体格をさらに小型化することができる。金属部材は、
図78に例示したように、ソース電極32を短絡する金属板材100でもよい。
【0372】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に記載の構成との組み合わせが可能である。
【0373】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0374】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0375】
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0376】
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0377】
車両の駆動システム1は、上記した構成に限定されない。たとえば、モータジェネレータ3をひとつ備える例を示したが、これに限定されない。複数のモータジェネレータを備えてもよい。電力変換装置4が、電力変換部としてインバータ6を備える例を示したが、これに限定されない。たとえば、複数のインバータを備える構成としてもよい。少なくともひとつのインバータと、コンバータを備える構成としてもよい。コンバータのみを備えてもよい。
【0378】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0379】
<技術的思想1>
冷却器(23)と、
絶縁基材(41)と、前記絶縁基材上に配置され、パターニングされた表面導体(42)と、前記表面導体とは反対の面上に配置された裏面導体(43)と、を有し、前記冷却器上に配置された基板(40)と、
前記冷却器と前記裏面導体との間に介在する熱伝導部材(24)と、
前記表面導体に接合された第1主電極(31)と、前記第1主電極とは反対の面に設けられた第2主電極(32)と、を有する複数の半導体素子(30)と、
を備え、
前記表面導体は、所定方向に並ぶ複数の前記半導体素子の前記第1主電極が共通接続された素子実装部(421a,423a)を少なくともひとつ含む複数の配線パターンを有し、
前記素子実装部のひとつが、前記所定方向に直交する直交方向において前記基板の中央領域に配置されている、半導体モジュール。
【0380】
<技術的思想2>
前記表面導体は、前記直交方向において前記複数の配線パターンに分断されている、技術的思想1に記載の半導体モジュール。
【0381】
<技術的思想3>
前記基板は、前記表面導体を前記所定方向に横断するように設けられた、前記表面導体が配置されていない非配置領域(411)を有する、技術的思想2に記載の半導体モジュール。
【0382】
<技術的思想4>
複数の前記半導体素子は、上下アーム回路の上アーム(9H)を提供し、前記所定方向に並んで配置された複数の上アーム素子(30H)と、前記上下アーム回路の下アーム(9L)を提供し、前記所定方向に並んで配置された複数の下アーム素子(30L)と、を含み、
前記素子実装部は、複数の前記上アーム素子の前記第1主電極が共通接続された上アーム実装部(421a)と、複数の前記下アーム素子の前記第1主電極が共通接続された下アーム実装部(423a)と、を含み、
前記上アーム実装部および前記下アーム実装部のひとつが、前記直交方向において前記中央領域に配置され、前記上アーム実装部および前記下アーム実装部の他のひとつが前記中央領域の外に配置されている、技術的思想1~3いずれかひとつに記載の半導体モジュール。
【0383】
<技術的思想5>
前記表面導体は、主配線部として、前記上アーム実装部を介して前記上アーム素子の前記第1主電極に電気的に接続される上アーム配線部(421b)、および、前記下アーム素子の前記第2主電極に電気的に接続される下アーム配線部(422)を有し、
前記直交方向において前記上アーム実装部と前記下アーム実装部との間に、前記中央領域に配置された前記半導体素子とは電気的分離された前記主配線部が配置されている、技術的思想4に記載の半導体モジュール。
【0384】
<技術的思想6>
前記基板の板厚方向の平面視における面積は、前記中央領域に配置された前記素子実装部のほうが、前記中央領域の外に配置された前記素子実装部よりも小さい、技術的思想44または技術的思想5に記載の半導体モジュール。
【0385】
<技術的思想7>
前記表面導体は、前記裏面導体よりも厚い、技術的思想1~6いずれかひとつに記載の半導体モジュール。
【符号の説明】
【0386】
1…駆動システム、2…直流電源、3…モータジェネレータ、3a…巻線、4…電力変換装置、5…平滑コンデンサ、6…インバータ、7…Pライン、8…Nライン、9,9U,9V,9W…上下アーム回路、9H…上アーム、9L…下アーム、10…出力ライン、11…MOSFET、12…ダイオード、13…スナバ回路、131…コンデンサ、132…抵抗、14…ゲートドライバ、15…ゲート抵抗、16…誘導性負荷、20…半導体モジュール、21,21U,21V,21W…半導体装置、22…ハウジング、22a…下面、221…枠体、221a,221b,221c,221d…壁部、222,222a,222b…仕切り壁、223…締結孔、224…カラー、225…凸部、225a…支持面、226…凹部、23…冷却器、23a…一面、231…流路、232…冷媒、233…締結孔、234…カラー、24…接合材、25…シール材、30,30H,30L,30L1,30L2,30L3,30L4…半導体素子、301H,302H,301L,302L…グループ、31…ドレイン電極、32…ソース電極、321…下層、322…上層、33…パッド、33A…アノードパッド、33C…カソードパッド、33G…ゲートパッド、33KS…ケルビンソースパッド、34…半導体基板、34a…一面、34b…裏面、341…素子領域、342…外周領域、35…絶縁膜、351,352…開口部、353…外周部、354…素子上部、36…ゲート配線、40…基板、41…絶縁基材、41a…一面、41b…裏面、411…非配置領域、42…導体、421…P配線、421a…基部、421b…延設部、421c…端子接続部、422…N配線、422a…基部、422b…延設部、422c…端子接続部、423…O配線、423a…基部、423b…延設部、423c…端子接続部、424,424a,424b…中継配線、425,426…信号配線、426A…アノード配線、426C…カソード配線、425G,426G…ゲート配線、426KS…ケルビンソース配線、426S…センス配線、427…ドレイン配線、427a…素子実装部、428…ソース配線、429…信号配線、43…導体、44…ダミー配線、50,50H,50L,50M…クリップ、51,52…接合部、53…連結部、531,532…傾斜部、533…中間部、533a…第1中間部、533b…第2中間部、534,535,536…テーパ部、54…対向空間、55…貫通孔、56…架橋部、57…連結部、58…延設部、59a…拡幅部、59b…縮幅部、60…外部接続端子、61…主端子、611…P端子、611a,611b…接続部、612…N端子、612a,612b…接続部、613,613U,613V,613W…O端子、613a,613b…接続部、613c…連結部、613d…シャント抵抗部、614…ドレイン端子、615…ソース端子、62…信号端子、62A…アノード端子、62C…カソード端子、62G…ゲート端子、62KS…ケルビンソース端子、62S…センス端子、621,622…接続部、623,623a,623b…連結部、3…コア、70…スナバ回路、71…コンデンサ、72…抵抗、73…はんだ、74…封止体、75…接着材、80…ボンディングワイヤ、81…はんだ、82…焼結部材、83…接合材、90…封止体、91…ゲル、100,100H,100L…金属板材、101…金属ブロック、102…酸化膜、103…受動部品、104…中継基板