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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008541
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20250109BHJP
   C23C 16/509 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H05H1/46 L
C23C16/509
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110787
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中尻 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】長町 学
(72)【発明者】
【氏名】安藤 瞭汰
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 夏生
(72)【発明者】
【氏名】久保田 清
(72)【発明者】
【氏名】茨木 満雄
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB02
2G084BB05
2G084BB14
2G084BB15
2G084BB23
2G084BB27
2G084BB28
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD04
2G084DD12
2G084DD22
2G084DD25
2G084DD32
2G084DD38
2G084DD55
2G084DD65
2G084DD66
2G084FF07
2G084FF08
2G084FF22
2G084FF31
2G084FF36
2G084FF39
2G084FF40
4K030FA04
4K030JA18
4K030KA14
4K030KA30
(57)【要約】
【課題】被処理物を効率良く加熱するとともに、真空容器における加熱部に近い部分及びアンテナの温度上昇を抑制する。
【解決手段】成膜装置(1)は、被処理物(W1)を内部に収容する真空容器(2)と、真空容器(2)の内部にプラズマ(P)を発生させるためのアンテナ(3)と、被処理物(W1)を加熱するヒーター(81)と、ヒーター(81)を内部に収容し、ヒーター(81)から真空容器(2)及びアンテナ(3)への輻射を抑制する輻射抑制部材(5)と、輻射抑制部材(5)の外部に設けられ、被処理物(W1)を保持するホルダー(8)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に対して成膜を行う成膜装置であって、
前記被処理物を内部に収容する真空容器と、
前記真空容器の内部にプラズマを発生させるためのアンテナと、
前記被処理物を加熱する加熱部と、
前記加熱部を内部に収容し、前記加熱部から前記真空容器及び前記アンテナへの輻射を抑制する輻射抑制部材と、
前記輻射抑制部材の外部に設けられ、前記被処理物を保持するホルダーと、を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記輻射抑制部材には、前記輻射抑制部材の内部に前記真空容器の外部からガスを導入するための導入口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記輻射抑制部材には、前記導入口から導入されるガスを、前記輻射抑制部材の外部に噴出するための噴出口が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記加熱部、前記輻射抑制部材及び前記ホルダーの互いの相対位置が維持された状態で、前記アンテナと前記ホルダーとの間の距離を変更するように前記ホルダーを移動させる移動機構をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記真空容器の外壁に設けられるとともに、前記輻射抑制部材と接続されている開閉部であって、前記加熱部、前記輻射抑制部材及び前記ホルダーとの相対位置を維持しながら、前記真空容器の内部を開閉可能な開閉部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記輻射抑制部材として、第1輻射抑制部材及び第2輻射抑制部材を備え、
前記ホルダーは、前記加熱部を内部に収容する前記第1輻射抑制部材の外部に設けられ、
前記第2輻射抑制部材は、前記ホルダー及び前記第1輻射抑制部材を内部に収容し、
前記アンテナは、前記第2輻射抑制部材の外部に配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記アンテナは、少なくとも2つの導体要素と、互いに隣り合う前記導体要素の間を絶縁する絶縁要素と、を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項8】
棒状に形成されている前記被処理物が、前記ホルダーから前記輻射抑制部材に向かう方向へ、前記加熱部よりも突出するように、前記ホルダーが前記被処理物を保持することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記アンテナに流れる高周波電流の周波数は、13.56MHzまたはその倍数であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記被処理物に対して、炭素を成膜することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、真空容器内に配置された直線状のアンテナと、真空容器内に誘導結合型のプラズマを生成するための高周波をアンテナに印加する高周波電源と、を備え、プラズマを用いて真空容器内の基板に処理を施すプラズマ処理装置が開示されている。真空容器内には、基板を保持する基板ホルダーが設けられており、基板ホルダー内には、基板を加熱するヒーターが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6341329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示のプラズマ処理装置では、基板を保持する基板ホルダー内にヒーターが設けられており、ヒーターからの熱が基板ホルダーを介して基板に伝導するため、基板を効率良く加熱する観点で改善の余地がある。
【0005】
また、上記プラズマ処理装置では、ヒーターから真空容器及びアンテナへの輻射により真空容器及びアンテナの温度が上昇するため、真空容器及びアンテナの温度上昇を低減する観点でも改善の余地がある。本発明の一態様は、被処理物を効率良く加熱するとともに、真空容器における加熱部に近い部分及びアンテナの温度上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る成膜装置は、被処理物に対して成膜を行う成膜装置であって、前記被処理物を内部に収容する真空容器と、前記真空容器の内部にプラズマを発生させるためのアンテナと、前記被処理物を加熱する加熱部と、前記加熱部を内部に収容し、前記加熱部から前記真空容器及び前記アンテナへの輻射を抑制する輻射抑制部材と、前記輻射抑制部材の外部に設けられ、前記被処理物を保持するホルダーと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、被処理物を効率良く加熱するとともに、真空容器における加熱部に近い部分及びアンテナの温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る成膜装置の構成を示す断面図である。
図2図1に示す成膜装置におけるアンテナの周囲の構成を示す図である。
図3図1に示す成膜装置が備えるホルダーの構造を説明するための図である。
図4】本発明の変形例1に係る成膜装置の構成を示す断面図である。
図5】本発明の変形例2に係る成膜装置の構成を示す断面図である。
図6】本発明の変形例3に係る成膜装置の構成を示す断面図である。
図7】本発明の変形例4に係る成膜装置の構成を示す図である。
図8】本発明の変形例5に係る成膜装置の構成を示す図である。
図9】本発明の変形例6に係る成膜装置の構成を示す図である。
図10】本発明の変形例7に係る成膜装置の構成を示す図である。
図11】本発明の変形例8に係る成膜装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る成膜装置1の構成を示す断面図である。図1において、アンテナ3の延伸方向をX軸方向、ホルダー8及びアンテナ3が並ぶ方向をZ軸方向、X軸方向及びZ軸方向の両方の方向に直交する方向をY軸方向とする。X軸方向及びZ軸方向は互いに直交する方向である。ここで説明したX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の定義については、他の図においても適用されるものとする。
【0010】
<成膜装置1の構成>
成膜装置1は、誘導結合型のプラズマPを用いたプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、被処理物W1に対して成膜を行うプラズマCVD装置である。被処理物W1は、例えば棒状に形成されているものであってもよく、螺旋形状に形成されるドリルまたはエンドミル等の工具である。また、被処理物W1は、例えば金属製材料を用いて構成されたものである。
【0011】
図1に示すように、成膜装置1は、真空容器2と、アンテナ3と、高周波電源4と、整合器41と、輻射抑制部材5と、ガス供給機構50と、真空排気装置6と、圧力調整器61と、開閉部7と、移動機構71と、を備える。また、成膜装置1は、ホルダー8と、ヒーター81と、ヒーター電源9と、絶縁カバー10と、絶縁部材11と、バイアス電源12と、を備える。
【0012】
輻射抑制部材5、ガス供給機構50、開閉部7、移動機構71、ホルダー8、ヒーター81、ヒーター電源9及びバイアス電源12については、真空容器2においてアンテナ3に対して両側に設けられている。換言すると、これらの構成を1組とすると、アンテナ3が配置される位置を基準として、互いに対向する位置に2組設けられる。
【0013】
これにより、真空容器2の内部においてアンテナ3の両側に被処理物W1を配置することができ、多くの被処理物W1を効率良く成膜できる。また、後述するガスGをアンテナ3に対して両側から噴出することで、ガス流量分布を均一にすることができる。以降、この2組のうち、Z軸正方向側の1組に着目して説明する。
【0014】
<真空容器2及び真空排気装置6の構成>
真空容器2は、例えばSUS(ステンレス)またはアルミニウム等の金属製の容器であり、電気的に接地されている。真空容器2は、被処理物W1を内部に収容している。真空容器2の内部は、真空排気装置6によって真空排気される。真空排気装置6は、真空容器2の内部の圧力を調整するバルブ等の圧力調整器61及び図示しないポンプを有する。真空排気装置6は、圧力調整器61を制御してプラズマ生成時における真空容器2の内部の圧力を調整する。
【0015】
<アンテナ3の構成>
アンテナ3は、真空容器2の内部にプラズマPを発生させるためのものであり、直線状に形成されている。アンテナ3は、真空容器2の内部においてホルダー8に沿うように配置されている。アンテナ3は真空容器2を貫通しており、アンテナ3の給電端部3A及び接地端部3Bは、真空容器2の外部に配置されている。アンテナ3の長さは例えば30cm以上である。
【0016】
アンテナ3は、絶縁部材11を介して真空容器2に設けられている。絶縁部材11は、真空容器2とアンテナ3とを電気的に絶縁するものである。真空容器2と絶縁部材11との間には、真空容器2と絶縁部材11との間を真空シールするパッキン111が設けられている。アンテナ3と絶縁部材11との間にも、アンテナ3と絶縁部材11との間を真空シールするパッキン111が設けられている。
【0017】
アンテナ3は、導体要素31、絶縁要素32及び容量素子33を有するLCアンテナである。導体要素31は、例えば管状に形成された金属パイプであり、1本のアンテナ3に対して少なくとも2つ設けられている。絶縁要素32は、互いに隣り合う導体要素31の間に設けられており、互いに隣り合う導体要素31の間を電気的に絶縁する。絶縁要素32は、例えば管状に形成された絶縁パイプであり、容量素子33を覆っている。容量素子33は、例えばコンデンサであり、絶縁要素32の内部に設けられている。導体要素31及び容量素子33は、絶縁要素32の内部で電気的に互いに直列接続されている。
【0018】
導体要素31の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金またはSUS等である。絶縁要素32の材質は、例えば、アルミナ等のセラミックス、石英、フッ素樹脂、ポリエチレン(PE)またはエンジニアリングプラスチック等である。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。絶縁要素32は単一の材質から構成されているが、これに限定されるものではなく、複数の材質から構成されていてもよい。
【0019】
アンテナ3としてLCアンテナを使用することで、成膜装置1のサイズ及び処理条件に関わらず、被処理物W1に均一に成膜を行うことができ、効率的にダイヤモンドを合成しつつ、被処理物W1に成膜を行うことができる。
【0020】
アンテナ3は、高周波電圧が印加される給電端部3Aと、電気的に接地されている接地端部3Bと、を有する。給電端部3Aには、高周波電源4から整合器41を介して高周波電圧が印加される。整合器41は、高周波電源4からの電力を負荷に応じて整合させる電気回路である。アンテナ3に流れる高周波電流の周波数は、例えば13.56MHzまたはその倍数である。
【0021】
後述する図2の符号201に示すように、アンテナ3は、Y軸方向に並んで複数配置されていてもよい。これにより、より広い範囲でプラズマPを均一に発生させることができ、より多くの被処理物W1に対して処理を行うことができる。なお、アンテナ3の本数は、複数本に限らず1本だけであってもよい。
【0022】
<絶縁カバー10の構成>
アンテナ3における真空容器2の内部に位置する部分は、管状の絶縁カバー10により覆われている。絶縁カバー10の両端部は、絶縁部材11によって支持されている。絶縁カバー10の材質は、例えば、石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコンまたはシリコン等である。
【0023】
絶縁カバー10が設けられることにより、プラズマP中の荷電粒子が導体要素31に入射することを抑制できるため、導体要素31に荷電粒子が入射することによるプラズマ電位の上昇を抑制することができる。また、導体要素31が荷電粒子によってスパッタされてプラズマP及び被処理物W1に対して金属汚染が生じることを防ぐことができる。上記荷電粒子は主にイオンである。
【0024】
<輻射抑制部材5、ホルダー8及びヒーター81の構成>
以降、図2も用いて輻射抑制部材5、ホルダー8及びヒーター81等を説明する。図2は、図1に示す成膜装置1におけるアンテナ3の周囲の構成を示す図である。図2の符号201の図は、図1のA0-A0線矢視断面図である。ただし、説明の便宜上、ガス供給機構50及び導入口52については図2の符号201の図に示している。図2の符号202の図は、図1に示す成膜装置1をZ軸正方向に向かって見た図である。
【0025】
図2の符号201の図では、真空容器2の一部、高周波電源4、整合器41、真空排気装置6、ヒーター電源9、絶縁カバー10及びバイアス電源12が省略されている。図4図5図6図7の符号701の図、図8の符号801の図、図9図10及び図11の符号1101の図についても同様に、これらの構成が省略されている。図2の符号202の図では、図1に示す構成のうち、被処理物W1、アンテナ3及びヒーター81以外の構成が省略されている。また、図2の符号201の図は、省略されている構成を除いた、図2の符号202の図のA1-A1線矢視断面図となっている。
【0026】
図2の符号201に示すように、輻射抑制部材5は、輻射抑制板5A,5B,5Cを有し、輻射抑制板5A~5Cによって箱状に形成されている。また、輻射抑制部材5は、ヒーター81を内部に収容し、ヒーター81から真空容器2及びアンテナ3への輻射を抑制する。さらに、輻射抑制部材5はヒーター81から放射される電磁波を遮蔽する。輻射抑制部材5はヒーター81を覆うように配置されている。開閉部7が閉じている状態で、輻射抑制板5A,5CはXY平面に沿って延伸し、複数の輻射抑制板5BはYZ平面またはXZ平面に沿って延伸する。
【0027】
ホルダー8は、輻射抑制部材5の外部に設けられ、被処理物W1を保持する。具体的には、ホルダー8は、輻射抑制板5Aにおけるアンテナ3側に設けられている。ホルダー8は、アンテナ3と輻射抑制板5Aとの間に配置されている。また、輻射抑制板5Aを貫通する被処理物W1の第1端E1が輻射抑制部材5の外部に配置され、被処理物W1における第1端E1とは反対側の第2端E2が輻射抑制部材5の内部に配置されるように、ホルダー8は被処理物W1を保持する。
【0028】
輻射抑制板5A~5C及びホルダー8の材質は、例えば、アルミニウム合金、SUSまたは高融点の金属等である。当該高融点の金属としては、例えばTa(タンタル)、W(タングステン)またはMo(モリブデン)等が挙げられる。また、ホルダー8は、複数の被処理物W1がX軸方向及びY軸方向に沿って並ぶように、複数の被処理物W1を保持する。
【0029】
ヒーター81は加熱部の一例であり、被処理物W1を加熱する。ヒーター81からの輻射により被処理物W1が加熱される。図2の符号202に示すように、ヒーター81は、複数の被処理物W1を囲むように配置されている。また、ヒーター81は、複数の被処理物W1が並ぶ方向に沿って、形成されて配置されている。ヒーター81は、延伸部分81A~81Gから構成されることにより、1本のヒーターとなっている。
【0030】
延伸部分81A,81C,81E,81Gは、X軸方向に沿って延伸している。複数の被処理物W1は、延伸部分81A,81Cの間に配置され、延伸部分81E,81Gの間にも配置されている。延伸部分81B,81D,81Fは、Y軸方向に延伸している。延伸部分81Bは延伸部分81Aと延伸部分81Cとを接続する部分であり、延伸部分81Dは延伸部分81Cと延伸部分81Eとを接続する部分であり、延伸部分81Fは延伸部分81Eと延伸部分81Gとを接続する部分である。
【0031】
また、棒状に形成されている被処理物W1が、ホルダー8から輻射抑制部材5に向かう方向へ、ヒーター81よりも突出するように、ホルダー8が被処理物W1を保持していてもよい。具体的には、Z軸方向においてヒーター81におけるアンテナ3から最も離れた部分の位置P1よりも、Z軸方向においてアンテナ3から離れた位置に、被処理物W1の第2端E2が配置されるように、ホルダー8は被処理物W1を保持していてもよい。
【0032】
換言すると、ヒーター81が存在する領域のうち、Z軸方向においてアンテナ3から最も離れた点の位置P1よりも、Z軸方向においてアンテナ3から離れた位置に、第2端E2が配置されるように、ホルダー8は被処理物W1を保持していてもよい。これにより、ヒーター81は、被処理物W1における両端の間の部分の近傍に配置されるため、被処理物W1をより効率良く加熱することができる。なお、被処理物W1の長さが所定長さよりも短い場合、被処理物W1がヒーター81よりも突出しないこともある。
【0033】
<ホルダー8の構造>
図3は、図1に示す成膜装置1が備えるホルダー8の構造を説明するための図である。図3の符号301に示すように、ホルダー8は、第1部分8A及び第2部分8Bを有し、第1部分8A及び第2部分8Bで複数の被処理物W1を挟むことにより、複数の被処理物W1を保持する。
【0034】
第1部分8A及び第2部分8Bのそれぞれには、凹部が形成されており、凹部に被処理物W1が嵌合することで、ホルダー8は被処理物W1を強固に保持することができる。ボルトB1は第1部分8A及び第2部分8Bを貫通しており、ボルトB1により第1部分8A及び第2部分8Bが互いに固定される。第1部分8A及び第2部分8Bは、X軸方向に分割されておらず一体となっている。
【0035】
複数の被処理物W1が第1部分8A及び第2部分8Bで挟まれることにより、第1部分8A及び第2部分8Bと接触するため、バイアス電源12が輻射抑制板5Cにバイアス電圧を印加することにより、複数の被処理物W1に電流が流れる。図3の符号302に示すように、第1部分8A及び第2部分8Bを有するホルダー8がY軸方向に並んで配置されることにより、多くの被処理物W1を設置することができる。
【0036】
<ヒーター電源9及びバイアス電源12の構成>
図1に示すように、ヒーター電源9は、ヒーター81と電気的に接続されている。ヒーター電源9は、ヒーター81に電圧を印加することにより、ヒーター81の温度を上昇させることができる。バイアス電源12は、輻射抑制板5Cと電気的に接続されている。バイアス電源12は、輻射抑制板5Cにバイアス電圧を印加することにより、輻射抑制板5A,5B及びホルダー8にもバイアス電圧を印加することができる。
【0037】
バイアス電源12が輻射抑制板5Cに印加するバイアス電圧は、例えば負の直流電圧である。バイアス電源12が輻射抑制板5Cにバイアス電圧を印加することにより、例えば、プラズマP中の正イオンが被処理物W1に入射するときのエネルギーを制御して、被処理物W1の表面に形成される膜の結晶化度の制御等を行うことができる。また、バイアス電源12が輻射抑制板5Cにバイアス電圧を印加することにより、輻射抑制板5A~5C、ホルダー8及び被処理物W1に電流が流れる。輻射抑制板5A~5C、ホルダー8及び被処理物W1の電位は、互いに同電位となる。
【0038】
<開閉部7の構成>
開閉部7は、蝶番73によって真空容器2の外壁21に設けられるとともに、開閉部7を貫通するシャフト72によって輻射抑制板5Cと接続されている。開閉部7は、ヒーター81、輻射抑制部材5及びホルダー8との相対位置を維持しながら、真空容器2の内部を開閉可能なものである。このため、開閉部7を開くことにより、ヒーター81、輻射抑制部材5及びホルダー8を真空容器2の外部に引き出すことができる。よって、ホルダー8に保持された被処理物W1を容易に交換することができる。開閉部7は開閉方向DR1に開閉可能である。別の組の開閉部7については開閉方向DR2に開閉可能である。
【0039】
また、ホルダー8が、アンテナ3の長手方向に並ぶ複数の被処理物W1を保持しているため、開閉部7を開くことで被処理物W1の装着及び脱着を容易に行うことができ、メンテナンス性が向上して作業時間の短縮が可能になる。さらに、ガス供給機構50及び移動機構71は開閉部7に固定されているため、開閉部7は、ガス供給機構50及び移動機構71との相対位置も維持しながら、真空容器2の内部を開閉可能なものである。
【0040】
<ガス供給機構50の構成>
ガス供給機構50は、開閉部7を貫通するとともに輻射抑制板5Cに設けられた配管51を通して原料ガス等のガスGを輻射抑制部材5の内部に供給するものである。ガス供給機構50は、輻射抑制板5Cに形成された導入口52から輻射抑制部材5の内部にZ軸負方向へガスGを供給する。
【0041】
これにより、輻射抑制部材5の内部の空間SP1、つまり、ヒーター81と輻射抑制部材5との間の空間SP1にガスGが充満する。また、輻射抑制部材5の内部の圧力は、ガスGにより上昇する。このとき、輻射抑制部材5の内部の体積を維持するために、輻射抑制部材5の内部の分子運動が活発になることで、輻射抑制部材5の内部の温度が上昇する。
【0042】
ガスGは、例えばC(炭素)、H(水素)及びO(酸素)を含むガスであり、具体的には、Hガス、CHガスまたはCOガスであるが、本発明はそれに限定されるものではない。成膜装置1は、被処理物W1に対して、炭素を成膜するものであってもよい。成膜装置1は、炭素として、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)を成膜するものであってもよい。ガス供給機構50が有する図示しない流量調整器は、真空容器2の内部に供給されるガスGの流量を調整するバルブ等である。
【0043】
上述のように、輻射抑制部材5の輻射抑制板5Cには、輻射抑制部材5の内部に真空容器2の外部からガスGを導入するための導入口52が形成されている。これにより、輻射抑制部材5の内部にガスGを導入することができ、ガスGの熱伝達により被処理物W1をより効率良く加熱することができる。
【0044】
また、輻射抑制部材5の輻射抑制板5Aには、導入口52から導入されるガスGを、輻射抑制部材5の外部に噴出するための複数の噴出口53が形成されている。これにより、ヒーター81と輻射抑制部材5との間の空間SP1の外部にガスGが噴出する。換言すると、アンテナ3に向かってガスGが噴出し、アンテナ3とホルダー8との間の空間にガスGが拡がる。輻射抑制部材5の外部にガスGを噴出することができるため、輻射抑制部材5の内部にガスGを導入しつつ、真空容器2の内部、かつ、輻射抑制部材5の外部にガスGを導入することができる。
【0045】
<移動機構71の構成>
移動機構71は、開閉部7を貫通するシャフト72によって輻射抑制板5Cと接続されている。移動機構71は、ヒーター81、輻射抑制部材5及びホルダー8の互いの相対位置が維持された状態で、アンテナ3とホルダー8との間の距離H1を変更するようにホルダー8を移動させる。距離H1はZ軸方向に沿った距離である。
【0046】
移動機構71は、シャフト72を方向D1に直線運動させることが可能なように、シャフト72と接続されたリニアガイドを備えてもよい。方向D1はZ軸方向と同じ方向である。移動機構71は、シャフト72を方向D1に直線運動させることにより、被処理物W1についても方向D1に移動させることができる。
【0047】
アンテナ3とホルダー8との間の距離H1を変更することができるため、ホルダー8に保持される被処理物W1についてアンテナ3に対する相対位置を変更することができる。よって、様々なサイズの被処理物W1に対して成膜を行うことができる。具体的には、移動機構71によりアンテナ3と被処理物W1の第1端E1との間の距離H2を調整することが可能であるため、異なる長さの被処理物W1についても設置が可能になる。
【0048】
以上により、成膜装置1では、ヒーター81を収容する輻射抑制部材5の外部にホルダー8が設けられる、つまり、ヒーター81がホルダー8の外部に設けられる。このため、ヒーター81から被処理物W1への輻射により被処理物W1を効率良く加熱することができる。また、輻射抑制部材5がヒーター81を内部に収容するため、真空容器2におけるヒーター81に近い部分及びアンテナ3の温度上昇を抑制することができる。
【0049】
また、輻射抑制部材5によってアンテナ3への輻射が抑制されるため、アンテナ3の温度上昇を抑制することができる。このため、アンテナ3に含まれる絶縁要素32の材質の選択の幅を広げることができる。また、被処理物W1に対して成膜を行うときに被処理物W1の温度の範囲を広げることができるため、成膜を行える被処理物W1の種類の幅も広げることができる。したがって、被処理物W1の温度を所望の温度にした状態で被処理物W1に対して成膜を行うことができる。さらに被処理物W1に対して長時間安定した成膜を行うことができる。
【0050】
〔変形例1〕
図4は、本発明の変形例1に係る成膜装置1Aの構成を示す断面図である。図4に示すように、成膜装置1Aは、成膜装置1と比べて、互いに重なる複数の輻射抑制部材501,502,503を備える点が異なる。輻射抑制部材501~503はそれぞれ、輻射抑制部材5と同じ部材である。
【0051】
輻射抑制部材501は、輻射抑制部材5と同様に、輻射抑制板5A1,5B1,5C1を有し、輻射抑制板5A1~5C1によって箱状に形成されている。輻射抑制部材501はヒーター81を内部に収容する。同様に、輻射抑制部材502は、輻射抑制板5A2,5B2,5C2を有し、輻射抑制板5A2~5C2によって箱状に形成されている。輻射抑制部材502は、輻射抑制部材501を内部に収容し、輻射抑制部材501に対して外側から重なるように配置されている。
【0052】
また同様に、輻射抑制部材503は、輻射抑制板5A3,5B3,5C3を有し、輻射抑制板5A3~5C3によって箱状に形成されている。輻射抑制部材503は、輻射抑制部材502を内部に収容し、輻射抑制部材502に対して外側から重なるように配置されている。
【0053】
ガス供給機構50は、開閉部7及び輻射抑制板5C2,5C3を貫通するとともに輻射抑制板5C1に設けられた配管51を通してガスGを輻射抑制部材501の内部に供給する。輻射抑制板5C1には、輻射抑制部材501の内部に真空容器2の外部からガスGを導入するための導入口52が形成されている。
【0054】
また、輻射抑制板5A1には噴出口531が形成され、輻射抑制板5A2には噴出口532が形成され、輻射抑制板5A3には噴出口533が形成されている。導入口52から導入されるガスGは、噴出口531,532,533から輻射抑制部材503の外部に噴出する。
【0055】
以上のように、成膜装置1Aは、互いに重なる複数の輻射抑制部材501~503を備えることにより、真空容器2におけるヒーター81に近い部分及びアンテナ3の温度上昇をさらに抑制することができる。
【0056】
〔変形例2〕
図5は、本発明の変形例2に係る成膜装置1Bの構成を示す断面図である。図5に示すように、成膜装置1Bは、成膜装置1Aと比べて、ホルダー8が輻射抑制部材503の内部に収容されている点が異なる。
【0057】
ホルダー8は、輻射抑制部材501を内部に収容する輻射抑制部材502の外部に設けられている。輻射抑制部材503は、ホルダー8及び輻射抑制部材502を内部に収容する。よって、ホルダー8は、輻射抑制板5A2,5A3の間の空間SP2に配置される。アンテナ3は、輻射抑制部材503の外部に配置されている。輻射抑制部材501,502は第1輻射抑制部材の一例であり、輻射抑制部材503は第2輻射抑制部材の一例である。
【0058】
ホルダー8が輻射抑制部材503の内部に収容され、アンテナ3が輻射抑制部材503の外部に配置されるため、ホルダー8がアンテナ3の周囲に発生するプラズマPに曝されることを防ぐことができる。よって、ホルダー8の劣化を抑制することができる。また、ホルダー8の材質として融点がより低いものを使用することができ、ホルダー8の材質の選択の幅を広げることができる。
【0059】
〔変形例3〕
図6は、本発明の変形例3に係る成膜装置1Cの構成を示す断面図である。図6に示すように、成膜装置1Cは、成膜装置1と比べて、ガス供給機構50及び配管51の配置が異なっている。
【0060】
配管51は、移動機構71を貫通するとともにシャフト72の内部を介して輻射抑制板5Cに設けられてもよい。これにより、成膜装置1と比べて、開閉部7に配管51を貫通させる必要が無いため、開閉部7の加工工数を削減することができる。よって、開閉部7が設けられた真空容器2を容易に製造することができる。
【0061】
〔変形例4〕
図7は、本発明の変形例4に係る成膜装置1Dの構成を示す図である。図7の符号701の図は、成膜装置1Dにおけるアンテナ3の周囲の構成を示す断面図である。図7の符号702の図は、成膜装置1DをZ軸正方向に向かって見た図である。図7の符号702の図では、成膜装置1Dの構成のうち、被処理物W1、アンテナ3及びヒーター811以外の構成が省略されている。また、図7の符号701の図は、省略されている構成を除いた、図7の符号702の図のA2-A2線矢視断面図となっている。
【0062】
図7の符号701,702に示すように、成膜装置1Dは、成膜装置1と比べて、ヒーター81に代えてヒーター811を備える点が異なる。X軸負方向に向かって見た場合、ヒーター811の形状は、輻射抑制部材5の内部において被処理物W1の長手方向に沿った形状となっている。また、X軸負方向に向かって見た場合、ヒーター811は、被処理物W1の第2端E2を囲むように配置されている。
【0063】
具体的には、ヒーター811は、符号8P1に示す部分からZ軸正方向に延伸し、符号8P2に示す部分からY軸負方向に延伸し、符号8P3に示す部分からZ軸負方向に延伸する。これにより、X軸負方向に向かって見た場合、ヒーター811は、被処理物W1の第2端E2を囲むように配置される。
【0064】
また、ヒーター811は、符号8P4に示す部分からY軸負方向に延伸し、符号8P5に示す部分からZ軸正方向に延伸し、符号8P6に示す部分からY軸負方向に延伸し、符号8P7に示す部分からZ軸負方向に延伸する。これにより、X軸負方向に向かって見た場合、ヒーター811は、さらに別の被処理物W1の第2端E2を囲むように配置される。
【0065】
ヒーター811は、符号8P8に示す部分からX軸正方向に延伸する。ヒーター811の形状は、図7の符号702に示すヒーター811の他の部分についても同様に、上述した通りに延伸する形状となっている。以上のように、ヒーター811が被処理物W1の第2端E2を囲むように配置されることにより、被処理物W1を効率良く加熱することができる。
【0066】
〔変形例5〕
図8は、本発明の変形例5に係る成膜装置1Eの構成を示す図である。図8の符号801の図は、成膜装置1Eにおけるアンテナ3の周囲の構成を示す断面図である。図8の符号802の図は、ヒーター812をZ軸正方向に向かって見た図である。図8の符号803の図は、ヒーター813をZ軸正方向に向かって見た図である。
【0067】
図8の符号802の図では、成膜装置1Eの構成のうち、被処理物W1、アンテナ3及びヒーター812以外の構成が省略されている。図8の符号803の図では、成膜装置1Eの構成のうち、被処理物W1、アンテナ3及びヒーター813以外の構成が省略されている。
【0068】
図8の符号801に示すように、成膜装置1Eは、成膜装置1と比べて、輻射抑制部材5の内部に設けられた複数のヒーター812,813を備える点が異なる。ヒーター812,813は互いにZ軸方向に並んで配置されている。ヒーター812,813の形状はそれぞれ、ヒーター81の形状と同じである。
【0069】
ヒーター812,813は互いに直列または並列に接続されている。ヒーター812,813が互いに直列に接続されている場合を考える。この場合、図8の符号803に示すヒーター813の第1端813Aがヒーター電源9と電気的に接続されている。また、ヒーター813における第1端813Aとは反対側の第2端813Bが、図8の符号802に示すヒーター812の第2端812Bと接続されている。また、ヒーター812における第2端812Bとは反対側の第1端812Aが、ヒーター電源9と電気的に接続されている。
【0070】
成膜装置1Eが複数のヒーター812,813を備えることにより、被処理物W1に対して広い範囲で加熱することができるため、被処理物W1の温度をより効率良く上昇させることができる。なお、ヒーター812,813が互いに並列に接続されている場合、ヒーター電源9がヒーター812,813を独立して制御してもよい。これにより、輻射抑制部材5の内部の温度分布及び被処理物W1の温度分布を最適な温度分布にすることができる。
【0071】
〔変形例6〕
図9は、本発明の変形例6に係る成膜装置1Fの構成を示す図である。図9に示すように、成膜装置1Fは、成膜装置1と比べて、Y軸方向に並んだ複数のユニットを備える点が異なる。
【0072】
輻射抑制部材5、ガス供給機構50、配管51、開閉部7、移動機構71、シャフト72、ホルダー8及びヒーター81から構成されるものをユニットとすると、成膜装置1Fは複数のユニットU1~U4を備える。ユニットU1~U4は互いに同じ構成となっている。なお、成膜装置1は2組のユニットU1,U2を備えていることになる。
【0073】
成膜装置1Fは、ユニットU1,U2に加えて、ユニットU1に対してY軸方向に並んだユニットU3と、ユニットU2に対してY軸方向に並んだユニットU4と、をさらに備える。これにより、成膜装置1Fは、より多くの被処理物W1に対して成膜を効率良く行うことができる。また、成膜装置1Fでは、成膜装置1に比べて、一度に成膜を行える被処理物W1の数を2倍にすることができる。
【0074】
〔変形例7〕
図10は、本発明の変形例7に係る成膜装置1Gの構成を示す図である。図10に示すように、成膜装置1Gは、成膜装置1と比べて、輻射抑制部材5の内部において互いにY軸方向に並んだ複数のヒーター81を備える点が異なる。成膜装置1Gでは、互いにY軸方向に並んだ複数のヒーター81に対応して、複数のホルダー8が設けられ、被処理物W1が設置される。よって、成膜装置1Gでは、成膜装置1に比べて、一度に成膜を行える被処理物W1の数を増やすことができる。
【0075】
〔変形例8〕
図11は、本発明の変形例8に係る成膜装置1Hの構成を示す図である。図11の符号1101の図は、成膜装置1Hにおけるアンテナ3の周囲の構成を示す断面図である。図11の符号1102の図は、成膜装置1HをZ軸正方向に向かって見た図である。図11の符号1102の図では、成膜装置1Hの構成のうち、被処理物W1,W2、アンテナ3、輻射抑制板5A、ホルダー8,8C及びボルトB1以外の構成が省略されている。
【0076】
図11の符号1101に示すように、成膜装置1Hは、成膜装置1と比べて、被処理物W1とは径が異なる被処理物W2を保持するホルダー8Cを備える点が異なる。ホルダー8は被処理物W1を保持し、ホルダー8Cは被処理物W2を保持する。図11の符号1102に示すように、ホルダー8Cは、第1部分8D及び第2部分8Eを有し、第1部分8D及び第2部分8Eで複数の被処理物W2を挟むことにより、複数の被処理物W2を保持する。
【0077】
第1部分8D及び第2部分8Eのそれぞれには、凹部が形成されており、当該凹部に被処理物W2が嵌合することで、ホルダー8Cは被処理物W2を強固に保持することができる。第1部分8A及び第2部分8Bに形成される凹部のサイズは、第1部分8D及び第2部分8Eに形成される凹部のサイズとは異なる。これにより、互いに径が異なる被処理物W1,W2を設置することができる。
【0078】
ボルトB1は第1部分8D及び第2部分8Eを貫通しており、ボルトB1により第1部分8D及び第2部分8Eが互いに固定される。第1部分8D及び第2部分8Eは、X軸方向に分割されておらず一体となっている。
【0079】
成膜装置1Hがホルダー8,8Cを備えることにより、1つの成膜装置1Hにより、互いに径が異なる被処理物W1,W2を同時に設置することができ、成膜装置1Hの処理能力を向上することができる。
【0080】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る成膜装置は、被処理物に対して成膜を行う成膜装置であって、前記被処理物を内部に収容する真空容器と、前記真空容器の内部にプラズマを発生させるためのアンテナと、前記被処理物を加熱する加熱部と、前記加熱部を内部に収容し、前記加熱部から前記真空容器及び前記アンテナへの輻射を抑制する輻射抑制部材と、前記輻射抑制部材の外部に設けられ、前記被処理物を保持するホルダーと、を備える構成である。
【0081】
本発明の態様2に係る成膜装置は、上記の態様1において、前記輻射抑制部材には、前記輻射抑制部材の内部に前記真空容器の外部からガスを導入するための導入口が形成されている構成としてもよい。
【0082】
本発明の態様3に係る成膜装置は、上記の態様2において、前記輻射抑制部材には、前記導入口から導入されるガスを、前記輻射抑制部材の外部に噴出するための噴出口が形成されている構成としてもよい。
【0083】
本発明の態様4に係る成膜装置は、上記の態様1から3のいずれかにおいて、前記加熱部、前記輻射抑制部材及び前記ホルダーの互いの相対位置が維持された状態で、前記アンテナと前記ホルダーとの間の距離を変更するように前記ホルダーを移動させる移動機構をさらに備える構成としてもよい。
【0084】
本発明の態様5に係る成膜装置は、上記の態様1から4のいずれかにおいて、前記真空容器の外壁に設けられるとともに、前記輻射抑制部材と接続されている開閉部であって、前記加熱部、前記輻射抑制部材及び前記ホルダーとの相対位置を維持しながら、前記真空容器の内部を開閉可能な開閉部をさらに備える構成としてもよい。
【0085】
本発明の態様6に係る成膜装置は、上記の態様1から5のいずれかにおいて、前記輻射抑制部材として、第1輻射抑制部材及び第2輻射抑制部材を備え、前記ホルダーは、前記加熱部を内部に収容する前記第1輻射抑制部材の外部に設けられ、前記第2輻射抑制部材は、前記ホルダー及び前記第1輻射抑制部材を内部に収容し、前記アンテナは、前記第2輻射抑制部材の外部に配置される構成としてもよい。
【0086】
本発明の態様7に係る成膜装置は、上記の態様1から6のいずれかにおいて、前記アンテナは、少なくとも2つの導体要素と、互いに隣り合う前記導体要素の間を絶縁する絶縁要素と、を有する構成としてもよい。
【0087】
本発明の態様8に係る成膜装置は、上記の態様1から7のいずれかにおいて、棒状に形成されている前記被処理物が、前記ホルダーから前記輻射抑制部材に向かう方向へ、前記加熱部よりも突出するように、前記ホルダーが前記被処理物を保持する構成としてもよい。
【0088】
本発明の態様9に係る成膜装置は、上記の態様1から8のいずれかにおいて、前記アンテナに流れる高周波電流の周波数は、13.56MHzまたはその倍数である構成としてもよい。
【0089】
本発明の態様10に係る成膜装置は、上記の態様1から9のいずれかにおいて、前記被処理物に対して、炭素を成膜する構成としてもよい。
【0090】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された複数の技術的手段を適宜組み合わせて得られる構成についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1、1A~1H 成膜装置
2 真空容器
3 アンテナ
5 輻射抑制部材
501、502 輻射抑制部材(第1輻射抑制部材)
503 輻射抑制部材(第2輻射抑制部材)
7 開閉部
8、8C ホルダー
31 導体要素
32 絶縁要素
52 導入口
53、531、532、533 噴出口
71 移動機構
81、811、812、813 ヒーター(加熱部)
H1 アンテナとホルダーとの間の距離
W1、W2 被処理物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11