(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008543
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】水産生物及び植物の育成システム
(51)【国際特許分類】
A01K 63/00 20170101AFI20250109BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20250109BHJP
【FI】
A01K63/00 C
A01G31/00 601Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110789
(22)【出願日】2023-07-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公開日 2023年1月17日 公開した場所 日本経済新聞の令和5年1月17日付朝刊
(71)【出願人】
【識別番号】523255158
【氏名又は名称】石崎 徹
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石崎 徹
【テーマコード(参考)】
2B104
2B314
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104AA27
2B104CA01
2B104CA07
2B104EB01
2B104EC01
2B104EC20
2B104ED01
2B314MA11
2B314MA12
2B314MA15
2B314MA21
2B314NA01
2B314NA09
2B314PA01
2B314PA06
2B314PA16
(57)【要約】
【課題】維持・管理業務において作業者の負担を大幅に軽減した水産生物及び植物の育成システムを提供する。
【解決手段】本発明の本実施形態の育成システム1は、海洋生物2を海水Wと共に収容して育成する飼育水槽4と、海洋植物3を海水Wと共に収容して育成する栽培水槽5と、飼育水槽4と栽培水槽5との間で海水Wを循環させる循環路6A、6Bと、海洋生物2、海洋植物3及び海水Wを管理する管理手段と、前記管理手段を自動制御するサーバ21と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水産生物を水と共に収容して育成する水産養殖部と、
植物を前記水と共に収容して育成する水耕栽培部と、
前記水産養殖部と前記水耕栽培部との間で前記水を循環させる循環路と、
前記水産生物、前記植物及び前記水を管理する管理手段と、
前記管理手段を自動制御する管理制御部と、を備えることを特徴とする水産生物及び植物の育成システム。
【請求項2】
前記水が海水であることを特徴とする請求項1に記載の水産生物及び植物の育成システム。
【請求項3】
前記水産生物と前記植物が食用であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水産生物及び植物の育成システム。
【請求項4】
前記管理制御部が他の外部端末と双方向の無線通信が可能であり、
異常発生時に前記外部端末に対して、異常発生情報を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の水産生物及び植物の育成システム。
【請求項5】
前記管理手段を駆動するための電気が、再生可能エネルギーを利用して発電されることを特徴とする請求項1又は2に記載の水産生物及び植物の育成システム。
【請求項6】
前記電気を蓄える蓄電池を備えることを特徴とする請求項5に記載の水産生物及び植物の育成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクアカルチャー(水産養殖)とハイドロポニクス(水耕栽培)とを組み合わせた水産生物及び植物の育成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクアカルチャ(水産養殖)とハイドロポニックス(水耕栽培)とを組み合わせたアクアポニックスシステムが知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の積層型アクアポニックスシステム(10a)は、魚(22)と植物(34)とを同時に育成する水流循環システムであり、飼育水槽(20)と、飼育水槽(20)の上側に複数段に配置される植物用容器(30)と、飼育水槽(20)と植物用容器(30)との間で水循環を行うサイフォン管機構(40)及び給水管(48)と、を備えている。
【0003】
この積層型アクアポニックスシステム(10a)は、飼育水槽(20)の内部に存在する魚(22)の排泄物と食べ残した餌を水の循環によって植物用容器(30)へと移動させ、上記排泄物や餌を微生物の分解作用によって植物(34)の栄養源として変換させると同時に水を浄化させる構造となっている。
【0004】
飼育水槽(20)と植物用容器(30)は、魚(22)と植物(34)を育成可能な環境を維持する必要がある。例えば、飼育水槽(20)と植物用容器(30)を循環する水の温度、水質、水素イオン指数(pH)、酸素濃度などである。特許文献1には記載されていないが、実際にアクアポニックスシステムを維持・管理するためには、作業者による管理業務や管理装置が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、管理業務は多岐にわたり作業者にとって非常に煩雑であった。また、複数の管理装置を使用した場合であっても、作業者が各装置の操作を行う場合には、作業者の負担が大きかった。
【0007】
そこで本発明は、維持・管理業務において作業者の負担を大幅に軽減した水産生物及び植物の育成システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水産生物及び植物の育成システムは、水産生物を水と共に収容して育成する水産養殖部と、植物を前記水と共に収容して育成する水耕栽培部と、前記水産養殖部と前記水耕栽培部との間で前記水を循環させる循環路と、前記水産生物、前記植物及び前記水を管理する管理手段と、前記管理手段を自動制御する管理制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水産生物及び植物の育成システムによれば、維持・管理業務において作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態における水産生物及び植物の育成システムの全体構造を示す図である。
【
図2】同、制御部と各種装置などとの接続関係を示すブロック図である。
【
図3】他の実施形態における飼育水槽と栽培水槽と循環路の配置を示す図である。
【
図4】さらに他の実施形態における飼育水槽と栽培水槽と循環路の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明における好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る水産生物及び植物の育成システム1(以下、単に「育成システム1」という。)の全体構成を示している。本実施形態の育成システム1では、海水W(人工海水を含む。)を循環させて水産生物である海洋生物2と植物である海洋植物3の育成について説明する。
【0013】
育成システム1は、海洋生物2を収容して飼育する水産養殖部である飼育水槽4と、海洋植物3を収容して栽培する水耕栽培部である栽培水槽5と、を有している。飼育水槽4と栽培水槽5は、循環路6Aと循環路6Bにより連通されている。飼育水槽4、栽培水槽5、循環路6A、6Bには海水Wが収容されており、送水装置である循環ポンプ7により、飼育水槽4→循環路6A→栽培水槽5→循環路6B→飼育水槽4→循環路6A→栽培水槽5→・・・のように海水Wを循環させる構成となっている。なお、海水Wの循環は、飼育水槽4→循環路6B→栽培水槽5→循環路6A→飼育水槽4→循環路6B→栽培水槽5→・・・のように、逆回りでもよく、循環する方向を適宜変更できるようにしてもよい。飼育水槽4と循環路6A、6Bの連結部分には、網部材8が設けられており、海洋生物2が循環路6A、6Bに侵入できないような構造となっている。網部材8は、海洋生物2の大きさより網目が小さく形成されており、網目を海水Wや後述する排泄物などは通過できるが海洋生物2が通過できないようになっている。
【0014】
本実施形態における海洋生物2は、例えば、アワビのような貝類や海水魚などの海水W中で生存でき、かつ、食用の水産生物である。一方、海洋植物3は、アッケシソウのような塩性植物、海藻、海草などである。当然、海洋植物3も食用であることが好ましい。飼育水槽4に収容する海洋生物2と栽培水槽5に収容する海洋植物3は、それぞれ一種類でもよいし、共存できる場合には多種類であってもよい。本実施形態では、光合成を行うことができるように海洋植物3に太陽光Lが照射するようになっているが、LEDなどの人工光源(図示せず)を使用してもよい。
【0015】
育成システム1は、循環する海水Wの水素イオン指数(pH)を計測するpH測定器9と、塩分濃度を計測する塩分濃度測定器10を備えている。また、育成システム1は、飼育水槽4や栽培水槽5を撮影するカメラ装置11を備えており、海水Wの色や海水W中の異物の有無を検知可能となっている。カメラ装置11は、少なくとも飼育水槽4と栽培水槽5を撮影できるものであり、複数台備えていてもよい。さらに、育成システム1は、循環する海水Wの温度を計測する温度センサ12を備えている。
【0016】
育成システム1は、真水Fを貯留する貯留槽13と、塩化ナトリウムやミネラル類などの人工海水用の組成物Mを収容する収容容器14を備えている。また、収容容器14には、水素イオン濃度調整剤Pも収容されている。
【0017】
海洋生物2の排泄物、死骸、餌などは、海水W中の微生物により分解され海洋植物3に栄養源として吸収されるが、微生物の分解能力を超える場合や、海洋植物3の吸収能力を超える場合には、分解・吸収されずに海水Wと共に流動する。また、微生物による分解時に発生する物質なども海水Wの汚れの原因となる場合がある。これらの、汚れの原因物質は、海洋生物2にとって好ましくないものであるため、飼育水槽4の上流側であって栽培水槽5の下流側である循環路6Bを流動する海水Wを濾過装置15により濾過し、飼育水槽4にきれいな海水Wを流入させるようにしている。
【0018】
育成システム1は、海水Wの温度を調節する温度調節装置16を備えている。温度センサ12により海水Wの温度を検知し、海水Wの温度が海洋生物2と海洋植物3に適した温度となるように温度調節装置16により調節する。本実施形態の温度調節装置16は、海水Wを加熱するヒータであるが、海水Wを冷却する冷却装置を備えていてもよい。
【0019】
育成システム1は、海水W中の溶存酸素濃度を計測する酸素濃度計17と、循環する海水W中に酸素を供給する酸素ポンプ18を備えている。海洋植物3の茎などから酸素が海水W中に供給される場合があるが、これらは微量であり、海洋生物2を飼育するためには海水W中に酸素を供給する必要がある。そのため、酸素濃度計17の計側した海水Wの酸素濃度に基づいて酸素ポンプ18により酸素を供給し、海洋生物2に必要な酸素濃度を維持している。
【0020】
育成システム1は、飼育水槽4の海水Wの水位を計測する水位計測器19Aと、栽培水槽5の海水Wの水位を計測する水位計測器19Bを備えており、水位計測器19A、19Bにより計測した水位に基づいて、飼育水槽4と栽培水槽5の海水Wの水位を適正な範囲に自動調節する。
【0021】
本実施形態では、循環ポンプ7、前記人工光源、pH測定器9、塩分濃度測定器10、カメラ装置11、温度センサ12、貯留槽13、収容容器14、濾過装置15、温度調節装置16、酸素濃度計17、酸素ポンプ18、水位計測器19A、19Bが管理手段を構成する。
【0022】
育成システム1は、その他に、各種情報を一元管理すると共に、循環ポンプ7、pH測定器9、塩分濃度測定器10、カメラ装置11、温度センサ12、貯留槽13、収容容器14、濾過装置15、温度調節装置16、酸素濃度計17、酸素ポンプ18、水位計測器19A、19Bなどの各種装置とインターネットを介して双方向の無線通信可能なサーバ21を備えている。
【0023】
サーバ21は、作業者を所持する携帯端末27や管理者が所持する通信端末28とインターネットを介して双方向の無線通信可能となっている。サーバ21は、複数の携帯端末27や通信端末28と通信可能である。携帯端末27は、作業者が飼育水槽4や栽培水槽5での作業時に携帯できるものが好ましく、例えば、携帯電話やスマートフォン、タブレット端末などである。一方、通信端末28は、主に作業者や管理者が育成システム1の各種情報の集計や閲覧をするために使用するものであり、例えば、パーソナルコンピューター(PC)などである。なお、携帯端末27としてノート型PCを使用してもよく、通信端末28として携帯電話、スマートフォン、タブレット端末を使用してもよい。
【0024】
図2に示すように、サーバ21は、管理制御部である制御部22を備えており、制御部22には、各種情報を記憶保存する記憶部23と、各種装置から受信したデータなどに基づいて、各種装置を制御するための判定を行う判定部24と、各種装置の駆動を制御する駆動制御部25と、育成システム1の運用において異常が発生した場合に、携帯端末27や通信端末28に送信する異常発生情報を生成する報知情報生成部26と、を有する。
【0025】
記憶部23には、pH測定器9から受信した海水Wの水素イオン指数、塩分濃度測定器10から受信した海水Wの塩分濃度、カメラ装置11から受信した飼育水槽4や栽培水槽5などの映像、温度センサ12から受信した海水Wの温度、酸素濃度計17から受信した海水Wの酸素濃度、水位計測器19A、19Bから受信した海水Wの水位が、測定時刻と共に自動的に記憶保存される。
【0026】
また、記憶部23には、海洋生物2に与えた餌の量や時間などに関する給餌情報を逐次記憶保存する。さらに、収穫した海洋生物2や海洋植物3の数や重量や、飼育水槽4に追加収容した海洋生物2や栽培水槽5に追加収容した海洋植物3の数や重量を記憶保存してもよい。本実施形態では、給餌、海洋生物2や海洋植物3の収穫及び追加は、作業者が行っているため、これらの作業が終了後に、作業者が携帯端末27や通信端末28により、給餌情報、収穫情報、追加情報をサーバ21に送信し、記憶部23に記憶保存する。なお、給餌装置、収穫装置、追加装置を備え、これらの装置を制御部22により制御することで、給餌作業、収穫作業、追加作業を自動化すると共に、給餌情報、収穫情報、追加情報を自動で記憶部23に記憶保存する構成としてもよい。
【0027】
判定部24は、pH測定器9から受信した海水Wの水素イオン指数(pH)の値が、予め設定された規定値の範囲内であるか否かを判定する。判定部24が規定値の範囲外であると判定すると、駆動制御部25から収容容器14に対して駆動信号が送られ、収容容器14から海水Wに水素イオン濃度調整剤Pが投入され、海水Wの水素イオン指数(pH)が調節される。
【0028】
また、判定部24は、塩分濃度測定器10から受信した海水Wの塩分濃度の値が、予め設定された規定値の範囲内であるか否かを判定する。判定部24が規定値の範囲外であると判定すると、駆動制御部25から貯留槽13と収容容器14に対して駆動信号が送られ、貯留槽13から真水Fが、収容容器14から人工海水用の組成物Mが海水Wに投入され、海水Wの塩分濃度が調節される。このとき、海水Wの塩分濃度に応じて真水Fと人工海水用の組成物Mは、何れか一方又は両方が投入される。
【0029】
また、判定部24は、カメラ装置11から受信した飼育水槽4や栽培水槽5の映像に基づいて、海水Wの汚れや異物混入の有無を判定する。判定部24が海水Wの汚れや異物の混入を判定すると、報知情報生成部26により海水Wの汚れや異物の混入を知らせる報知情報が生成され、携帯端末27や通信端末28に報知情報が送信される。携帯端末27や通信端末28により報知情報が受信されると、携帯端末27や通信端末28は、画像や音声により報知情報を報知する。報知情報を確認した作業者は、海水Wの汚れの原因究明や、異物の除去作業を行う。
【0030】
また、判定部24は、温度センサ12から受信した海水Wの温度の値が、予め設定された規定値の範囲内であるか否かを判定する。判定部24が規定値の範囲外であると判定すると、駆動制御部25から温度調節装置16に対して駆動信号が送られ、海水Wの温度が規定値の範囲内となるように調節される。
【0031】
また、判定部24は、酸素濃度計17から受信した海水Wの酸素濃度の値が、予め設定された規定値の範囲内であるか否かを判定する。判定部24が規定値の範囲外であると判定すると、駆動制御部25から酸素ポンプ18に対して駆動信号が送られ、海水Wの酸素濃度が規定値の範囲内となるように調節される。海水W中の酸素を消費するのは、主に海洋生物2であるため、酸素ポンプ18による酸素の注入は飼育水槽4に行うのが好ましい。なお、本実施形態では、酸素濃度計17から受信した海水Wの酸素濃度の値に基づいて酸素ポンプ18を駆動しているが、常に酸素ポンプ18を駆動し、所定量の酸素を海水Wに注入し続けてもよい。
【0032】
また、判定部24は、水位計測器19A、19Bから受信した海水Wの水位の値が、予め設定された規定値の範囲内であるか否かを判定する。判定部24が規定値よりも低いと判定すると、駆動制御部25から貯留槽13と収容容器14に対して駆動信号が送られ、貯留槽13から真水Fが、収容容器14から人工海水用の組成物Mが海水Wに投入され、海水Wの水位を上昇させる。一方、判定部24が規定値よりも高いと判定すると、飼育水槽4や栽培水槽5に設けた排水口(図示せず)から海水Wを排出し、海水Wの水位を下降させる。なお、水位を識別可能であれば、カメラ装置11の映像により水位を検知し、判定部24が当該水位に基づいて規定値の範囲内であるか否かを判定してもよい。
【0033】
海水Wは常に循環させる必要があるため、循環ポンプ18は常に駆動しているが、駆動制御部25からの駆動信号を受信することで駆動を開始し、停止信号を受信することで駆動を停止する。また、駆動制御部25からの制御信号を受信することで、駆動出力を変更し、循環させる海水Wの量や流速を変更することができる。
【0034】
濾過装置15は常に駆動しているが、駆動制御部25からの駆動信号を受信することで駆動を開始し、停止信号を受信することで駆動を停止する。
【0035】
報知情報生成部26は、pH測定器9、塩分濃度測定器10、温度センサ12、酸素濃度計17、水位計測器19A、19Bから異常値を受信した場合や、カメラ装置11から受信した映像から海水Wの異常な色や、海水W中への異物の混入を判定した場合には、異常を通知する報知情報を生成する。また、報知情報生成部26は、循環ポンプ7、pH測定器9、塩分濃度測定器10、カメラ装置11、温度センサ12、貯留槽13、収容容器14、濾過装置15、温度調節装置16、酸素濃度計17、酸素ポンプ18、水位計測器19A、19Bが正常に駆動していない場合に異常発生情報を生成する。生成された異常発生情報は、事前に設定した携帯端末27や通信端末28に送信される。異常発生情報を受信した携帯端末27や通信端末28は、その表示部(図示せず)やスピーカー(図示せず)から、画像や音声により異常発生情報を報知する。
【0036】
海洋生物2には、定期的に餌を与えるが、給餌の時間、餌の種類・量などの給餌情報は、携帯端末27によりサーバ21に送信することで、給餌情報が記憶部23に記憶保存される。サーバ21が一定時間以上給餌情報を受信しない場合には、報知情報生成部26により報知情報が生成され、携帯端末27に送信される。
【0037】
育成システム1で使用される電力は、いわゆる再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱その他の自然界に存する熱、バイオマス)を利用した発電方法(太陽光発電、風力発電、水力発電、波力発電、地熱発電、太陽熱発電、バイオマス発電など)により発電された電気を蓄電池29に蓄電したものを使用する。
図1では、省力風力発電機を使用している。発電方法は、育成システム1を設置する地域や場所に適したものを選択すればよく、複数の発電方法を組み合わせて使用してもよい。なお、上記発電方法で発電した電力のみで使用電力を賄うことが好ましいが、化石燃料を使用した発電方法により発電した電力により補完してもよい。
【0038】
ここで、育成システム1の運用方法について説明する。まず、飼育水槽4、栽培水槽5、循環路6A、6Bに海水Wを所定量給水する。次に、飼育水槽4に海洋生物2を収容し、栽培水槽5に海洋植物3を収容する。この状態で循環ポンプ7を駆動させ、海水Wを循環させる。海洋生物2の排泄物や死骸、食べ残された餌、海洋生物2が排出した二酸化炭素などは、網部材8の網目を通って海水Wと共に飼育水槽4から循環路6Aを流動し栽培水槽5に流入する。排泄物や死骸、食べ残された餌は海水W中の微生物により一部が分解され海洋植物3により吸収される。そのため、微生物や海洋植物3により飼育水槽4中の海水Wは一定程度浄化される。また、二酸化炭素は海洋植物3によって吸収され、海洋植物3の光合成により酸素が生成され、一部は海洋植物3から栽培水槽5の海水W中に溶け込む。残存した排泄物、死骸、餌は、海水Wと共に循環路6Bに流入する。循環路6Bを流動する海水Wは、濾過装置15により濾過され、浄化された海水Wが飼育水槽4に流入する。
【0039】
食用の海洋生物2と海洋植物3は、飼育水槽4と栽培水槽5で所定基準以上に育成されると収穫される。また、海洋生物2と海洋植物3は、自然繁殖により個体数が一定数以上を維持できる場合には、収穫により個体数を調節する。自然繁殖により一定以上の個体数を維持できない場合には、海洋生物2や海洋植物3を追加収容して継続的な育成を行う。
【0040】
図3及び
図4は、2つの飼育水槽4A、4Bと、2つの栽培水槽5A、5Bを設け、循環路6A、6B、6C、6Dにより連通したものである。なお、
図3及び
図4では、各装置などの記載は省略している。
【0041】
図3に示す実施形態では、飼育水槽4Aと栽培水槽5Aが循環路6Aにより連通され、栽培水槽5Aと栽培水槽5Bが循環路6Dにより連通され、栽培水槽5Bと飼育水槽4Bが循環路6Bにより連通され、飼育水槽4Bと飼育水槽4Aが循環路6Cにより連通されている。そして、海水Wは、飼育水槽4A→循環路6A→栽培水槽5A→循環路6D→栽培水槽5B→循環路6B→飼育水槽4B→循環路6C→飼育水槽4A→循環路6A→栽培水槽5A→・・・のように循環する。
【0042】
図4に示す実施形態では、飼育水槽4Aと栽培水槽5Aが循環路6Aにより連通され、栽培水槽5Aと飼育水槽4Bが循環路6Dにより連通され、飼育水槽4Bと栽培水槽5Bが循環路6Bにより連通され、栽培水槽5Bと飼育水槽4Aが循環路6Cにより連通されている。そして、海水Wは、飼育水槽4A→循環路6A→栽培水槽5A→循環路6D→飼育水槽4B→循環路6B→栽培水槽5B→循環路6C→飼育水槽4A→循環路6A→栽培水槽5A→・・・のように循環する。
【0043】
以上のように、本実施形態の育成システム1は、海洋生物2を海水Wと共に収容して育成する飼育水槽4、4A、4Bと、海洋植物3を海水Wと共に収容して育成する栽培水槽5、5A、5Bと、飼育水槽4、4A、4Bと栽培水槽5、5A、5Bとの間で海水Wを循環させる循環路6A、6B、6C、6Dと、海洋生物2、海洋植物3及び海水Wを管理する管理手段と、前記管理手段を自動制御するサーバ21と、を備えることにより、海洋生物2と海洋植物3の育成の大部分の作業を自動化することができ、作業者の負担を軽減することができる。また、運用に必要な人員が少なくて済むため、人件費を削減することができる。また、海水Wを循環させるため、掛け流し型の養殖や、露地・水耕栽培の農業と比較して節水効果が高く、排水による汚染を極めて少なくすることができる。さらに、海洋生物2の糞などを海洋植物3の栄養分とするため、海洋植物3の肥料が極めて少なくて済む。
【0044】
また、本実施形態の育成システム1は、循環する水が海水Wであることにより、海から離れた陸地においても、海洋生物2と海洋植物3を食料(海産物)として育成し収穫することができる。
【0045】
また、本実施形態の育成システム1は、海洋生物2と海洋植物3が食用であることにより、自然界と比較して安定的な食糧を収穫することができる。そのため、自然界の海洋生物2や海洋植物3の個体数の減少を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態の育成システム1は、制御部22が他の携帯端末27及び通信端末28と双方向の無線通信が可能であり、異常発生時に携帯端末27及び通信端末28に対して、異常発生情報を送信することにより、作業者や管理者は、飼育水槽4、4A、4Bや栽培水槽5、5A、5Bに異常が発生したことを早期に知ることができる。そのため、異常事態に対して早急な対応が可能となり、海洋生物2と海洋植物3の死滅などの事態を回避し易くなる。
【0047】
また、本実施形態の育成システム1は、管理手段を駆動するための電気が、再生可能エネルギーを利用して発電されることにより、温室効果ガスを排出せずに運用が可能となる。
【0048】
また、本実施形態の育成システム1は、電気を蓄える蓄電池を備えることにより、時間帯や自然環境の状態により発電量が変化する再生可能エネルギーを利用した発電であっても、発電量が多いときに発電した電気を蓄電池に蓄えておけるため、発電量が少ない時間帯であっても育成システム1を安定して運用することができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。上記実施形態では、海水Wを使用したが淡水を使用し、淡水中で生存する生物や植物を飼育してもよい。この場合、塩分濃度測定器10や人工海水用の組成物Mを収容する収容容器14は不要である。また、各種装置は、当該装置がその機能を発揮できれば、
図1に示す位置に限らず、他の位置に設けてもよい。また、育成システム1の規模や設置場所などを考慮し、飼育水槽、栽培水槽、循環路を設ける数や配置は、任意に決定することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 水産生物及び植物の育成システム
2 海洋生物
3 海洋植物
4 飼育水槽(水産養殖部)
4A 飼育水槽(水産養殖部)
4B 飼育水槽(水産養殖部)
5 栽培水槽(水耕栽培部)
5A 栽培水槽(水耕栽培部)
5B 栽培水槽(水耕栽培部)
6A 循環路
6B 循環路
6C 循環路
6D 循環路
7 循環ポンプ(管理手段)
9 pH測定器(管理手段)
10 塩分濃度測定器(管理手段)
11 カメラ装置(管理手段)
12 温度センサ(管理手段)
13 貯留槽(管理手段)
14 収容容器(管理手段)
15 濾過装置(管理手段)
16 温度調節装置(管理手段)
17 酸素濃度計(管理手段)
18 酸素ポンプ(管理手段)
19A 水位計測器(管理手段)
19B 水位計測器(管理手段)
22 制御部(管理制御部)
29 蓄電池
W 海水(水)