(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008548
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ガス処理装置及びガス処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20250109BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20250109BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110796
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】前田 基秀
(72)【発明者】
【氏名】岸本 啓
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋
(72)【発明者】
【氏名】則永 行庸
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA04
4D002AA09
4D002AA19
4D002BA02
4D002BA16
4D002CA13
4D002DA31
4D002DA32
4D002DA33
4D002DA70
4D002EA05
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB20
4D002HA08
4D020AA03
4D020AA06
4D020AA10
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020CC09
4D020CC12
4D020CD01
4D020DA01
4D020DA02
4D020DB01
4D020DB03
4D020DB20
(57)【要約】
【課題】アミンを含む処理液を用いて酸性化合物を被処理ガスから分離させるガス処理装置において、処理液が水で薄まってしまうことを抑制する。
【解決手段】ガス処理装置10は、酸性化合物を含む被処理ガスと、酸性化合物を吸収する前の状態においてアミンと第2成分とが混ざり合った状態にある一方で酸性化合物の吸収により主としてアミンを含む第1相部分と主として第2成分を含む第2相部分とに相分離する処理液と、を互いに接触させて、被処理ガスに含まれる酸性化合物を処理液に吸収させる吸収器12と、処理液から酸性化合物を分離する再生器14と、吸収器12から流出した第2相部分を、吸収器12内の処理液同伴ガスと接触させて、処理液同伴ガスに同伴される処理液を回収する処理液回収部42と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物を吸収する前の状態においてアミンと第2成分とが混ざり合った状態にある一方で前記酸性化合物の吸収により主として前記アミンを含む第1相部分と主として前記第2成分を含む第2相部分とに相分離する処理液と、を互いに接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させるための吸収器と、
前記酸性化合物を吸収した前記処理液を加熱して、当該処理液から酸性化合物を分離するための再生器と、
前記吸収器から流出した前記第1相部分及び前記第2相部分の少なくとも一方を、前記被処理ガスから前記酸性化合物が前記処理液に吸収された後の前記吸収器内のガス又は前記酸性化合物を含む前記再生器内のガスである処理液同伴ガスと接触させて、前記処理液同伴ガスに同伴される処理液を回収する処理液回収部と、
を備える、ガス処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス処理装置において、
前記酸性化合物を吸収した処理液を、前記第1相部分が主に含まれる処理液と前記第2相部分が主に含まれる処理液とに分ける分離器を備える、ガス処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のガス処理装置において、
前記処理液同伴ガスと洗浄水とを互いに接触させて、前記処理液同伴ガスに同伴される処理液を回収する水洗部を備え、
前記処理液回収部は、前記第1相部分及び前記第2相部分に相分離した吸収液が、前記水洗部において前記洗浄水と接触する前に、前記処理液同伴ガスと接触する位置に配置されている、ガス処理装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のガス処理装置において、
前記処理液にほぼ溶解性及び反応性を有しないガス又は水蒸気からなる分離促進ガスを前記再生器に供給する分離促進ガス供給部を備え、
前記処理液回収部は、前記吸収器から流出した前記第1相部分及び前記第2相部分の少なくとも一方を、前処理液同伴ガスと接触させるように構成されている、ガス処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載のガス処理装置において、
前記処理液回収部は、前記吸収器から流出した前記第1相部分及び前記第2相部分の少なくとも一方を、前記再生器内において、前記酸性化合物を含むガスと接触させるように構成されている、ガス処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載のガス処理装置において、
前記分離促進ガスが水分を含むガス又は水蒸気からなるガスであり、
前記再生器に供給される前記分離促進ガスから当該分離促進ガスに含まれる水分を分離させる水分除去部を備えている、ガス処理装置。
【請求項7】
請求項4に記載のガス処理装置において、
前記分離促進ガスが水分を含むガス又は水蒸気からなるガスであり、
前記再生器に供給される前記分離促進ガスから当該分離促進ガスに含まれる水分を分離させる水分除去部と、
前記水分除去部で得られた水分を、
前記吸収器の水洗部、
前記再生器の水洗部、
前記再生器で得られた酸性化合物を供給先に供給するための供給路に設けられたコンデンサー、及び
前記吸収器から処理後のガスを排出する排出路に設けられたコンデンサー、
のうちの少なくとも1つに供給する水分供給路と、
を備えている、ガス処理装置。
【請求項8】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物を吸収する前の状態においてアミンと第2成分とが混ざり合った状態にある一方で前記酸性化合物の吸収により主として前記アミンを含む第1相部分と主として前記第2成分を含む第2相部分とに相分離する処理液とを、互いに接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させるための吸収器と、
前記酸性化合物を吸収した前記処理液を加熱して、当該処理液から酸性化合物を分離するための再生器と、
前記処理液にほぼ溶解性及び反応性を有しないガスであって水分を含むガス又は水蒸気からなる分離促進ガスを前記再生器に供給する分離促進ガス供給部と、
前記再生器に供給される前記分離促進ガスから当該分離促進ガスに含まれる水分を除去する水分除去部と、を備えている、ガス処理装置。
【請求項9】
吸収器において、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物を吸収する前の状態においてアミンと第2成分とが混ざり合った状態にある一方で前記酸性化合物の吸収により主として前記アミンを含む第1相部分と主として前記第2成分を含む第2相部分とに相分離する処理液とを、互いに接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させ、
再生器において、前記酸性化合物を吸収した前記処理液を加熱して、当該処理液から酸性化合物を分離し、
前記吸収器から前記第1相部分及び前記第2相部分を流出させ、
前記吸収器から流出した前記第1相部分及び前記第2相部分の少なくとも一方を、前記被処理ガスから前記酸性化合物が前記処理液に吸収された後の前記吸収器内のガス又は前記酸性化合物を含む前記再生器内のガスである処理液同伴ガスと接触させて、前記処理液同伴ガスに同伴される処理液を回収する、ガス処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載のガス処理方法において、
前記酸性化合物を吸収した処理液を、分離器により、前記第1相部分を主に含む処理液と前記第2相部分を主に含む処理液とに分離する、ガス処理方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載のガス処理方法において、
前記第1相部分及び前記第2相部分に相分離した吸収液を、前記処理液同伴ガスと接触させ、
その後、前記吸収器内の前記ガス又は前記再生器内の前記ガスを、洗浄水と接触させて、当該被処理ガスに同伴される処理液を回収する、ガス処理方法。
【請求項12】
請求項9または10に記載のガス処理方法において、
前記処理液にほぼ溶解性及び反応性を有しないガス又は水蒸気からなる分離促進ガスを、前記再生器に供給し、
前記吸収器から流出した前記第1相部分及び前記第2相部分の少なくとも一方を、前記処理液同伴ガスと接触させる、ガス処理方法。
【請求項13】
請求項12に記載のガス処理方法において、
前記吸収器から流出した前記第1相部分及び前記第2相部分の少なくとも一方を、前記再生器内において、前記酸性化合物を含むガスと接触させる、ガス処理方法。
【請求項14】
請求項12に記載のガス処理方法において、
前記分離促進ガスが水分を含むガス又は水蒸気からなるガスであり、
前記再生器に供給される前記分離促進ガスから当該分離促進ガスに含まれる水分を分離し、
前記分離された水分を、前記処理液同伴ガスと接触させて、当該処理液同伴ガスに同伴される処理液を回収する、ガス処理方法。
【請求項15】
請求項12に記載のガス処理方法において、
前記再生器に供給される前記分離促進ガスから当該分離促進ガスに含まれる水分を分離し、
前記分離された水分を、前記吸収器の水洗部、前記再生器の水洗部、前記再生器で得られた酸性化合物を供給先に供給するための供給路に設けられたコンデンサー及び前記吸収器から処理後の被処理ガスを排出する排出路に設けられたコンデンサーの少なくとも1つに供給する、ガス処理方法。
【請求項16】
請求項14に記載のガス処理方法において、
前記吸収器に導入される前記被処理ガスに含まれる硫黄分の濃度と、前記吸収器に導入される前記被処理ガスの流量と、前記吸収器から排出された処理後のガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度と、前記再生器から排出された酸性化合物を含むガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度と、前記吸収器に導入される前記処理液に含まれる劣化成分の濃度と、のうちの少なくとも1つを測定し、
前記測定の結果に基づいて、前記分離促進ガスから分離して前記処理液同伴ガスと接触させる水分の流量と、前記処理液同伴ガスと接触させる前記第1相部分又は前記第2相部分の流量と、前記吸収器及び前記再生器の少なくとも一方に設けられた水洗部に供給される洗浄水の流量と、の少なくとも一つの流量を調整する、ガス処理方法。
【請求項17】
請求項16に記載のガス処理方法において、
前記吸収器から排出された処理後のガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度と、前記再生器から排出された酸性化合物を含むガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度との少なくとも一方の測定結果が閾値よりも高くなると、前記分離促進ガスから分離して前記処理液同伴ガスと接触させる水分の流量と前記水洗部に供給される洗浄水の流量との少なくとも一方を増大させ、
前記吸収器から排出された処理後のガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度と、前記再生器から排出された酸性化合物を含むガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度との少なくとも一方の測定結果が閾値よりも低くなると、前記分離促進ガスから分離して前記処理液同伴ガスと接触させる水分の流量と前記水洗部に供給される洗浄水の流量との少なくとも一方を減少させる、ガス処理方法。
【請求項18】
請求項12に記載のガス処理方法において、
前記吸収器に導入される前記被処理ガスに含まれる硫黄分の濃度と、前記吸収器に導入される前記被処理ガスの流量と、前記吸収器から排出された処理後のガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度と、前記再生器から排出された酸性化合物を含むガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度と、前記吸収器に導入される前記処理液に含まれる劣化成分の濃度と、のうちの少なくとも1つを測定し、
前記測定の結果に基づいて、前記分離促進ガスから分離して前記処理液同伴ガスと接触させる水分の流量と、前記処理液同伴ガスと接触させる前記第1相部分又は前記第2相部分の流量と、の少なくとも1つの流量を調整する、ガス処理方法。
【請求項19】
吸収器において、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により主としてアミン相を含む第1相部分と主としてアミン以外の成分相を含む第2相部分とに相分離する処理液とを、互いに接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させ、
再生器において、前記酸性化合物を吸収した前記処理液を加熱して、当該処理液から酸性化合物を分離し、
前記処理液にほぼ溶解性及び反応性を有しないガスであって水分を含むガス又は水蒸気からなる分離促進ガスから当該分離促進ガスに含まれる水分を除去し、
前記水分が除去された分離促進ガスを前記再生器に供給する、ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス処理装置及びガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素が地球温暖化への影響が大きいと考えられる。この地球温暖化問題に対する有効な対策として、二酸化炭素(CO2)を含有する大容量のガス(CO2含有ガス)からCO2を回収する技術が注目されている。CO2を回収する方法としては、種々の方法があり、例えば、アミン吸収法等の化学吸収法等が挙げられる。化学吸収法とは、アミン水溶液等のアルカリ性水溶液を処理液として用い、この処理液にCO2含有ガスを接触させて酸性化合物(CO2)を処理液に吸収させ、この酸性化合物を吸収した処理液を加熱して、当該処理液から酸性化合物を放出させて酸性化合物を回収する、という方法である。アミン化合物を含む処理液を用いた化学吸収法は、例えば下記特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたガス処理装置では、アミン化合物、有機溶剤及び水を含む処理液が用いられ、この処理液として、酸性化合物を吸収することにより、酸性化合物の含有率の異なる相に相分離する処理液が選択されている。また、特許文献1に開示されたガス処理装置では、水素ガス等の分離促進ガスを再生器に供給するガス供給部が設けられている。この装置では、分離促進ガスが再生器に供給されるため、酸性化合物を分離回収するために必要なエネルギーの低減が図られている。
【0003】
このようなアミン化合物を含む処理液を用いたアミン吸収法においては、下記特許文献2に開示されているように、酸性化合物が分離された後の処理済みガスにアミン化合物が同伴してしまうことが知られている。アミン化合物が処理済みガスに同伴されて系外に放出されてしまうことを防止すべく、特許文献2に開示されたガス処理装置には、CO2が除去された脱炭酸排ガスと洗浄水とを接触させて、脱炭酸排ガスに同伴する物質を除去する水洗部が吸収器に設けられている。なお、アミン化合物が処理済みガスに同伴される場合、蒸発ガスとして同伴される場合と、ミスト(液)となって同伴される場合とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6906766号公報
【特許文献2】特許第5968159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されたガス処理装置のように、吸収器に水洗部が設けられている場合、アミン化合物が系外に排出されることを抑制できるが、処理液が洗浄水と接触するため、吸収器と再生器との間を循環する処理液が薄まってしまうという問題がある。
【0006】
一方、特許文献1に開示されたガス処理装置のように、分離促進ガスとして例えば水素ガスが再生器に供給される場合には、水素ガスが水電解によって得られる場合に、飽和に近い水分が水素ガスに保持されることがある。この場合には、水素ガスに保持された水分が再生器に供給されることになるため、吸収器と再生器との間を循環する処理液が薄まってしまうという問題がある。
【0007】
特許文献1又は2に開示されたガス処理装置のように、吸収器と再生器との間を循環する処理液が薄まってしまうと、処理液による酸性化合物の分離性能が低下してしまう虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アミンを含む処理液を用いて酸性化合物を被処理ガスから分離させるガス処理装置又はガス処理方法において、処理液が水で薄まってしまうことを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明に係るガス処理装置は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物を吸収する前の状態においてアミンと第2成分とが混ざり合った状態にある一方で前記酸性化合物の吸収により主として前記アミンを含む第1相部分と主として前記第2成分を含む第2相部分とに相分離する処理液と、を互いに接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させるための吸収器と、前記酸性化合物を吸収した前記処理液を加熱して、当該処理液から酸性化合物を分離するための再生器と、前記吸収器から流出した前記第1相部分及び前記第2相部分の少なくとも一方を、前記被処理ガスから前記酸性化合物が前記処理液に吸収された後の前記吸収器内のガス又は前記酸性化合物を含む前記再生器内のガスである処理液同伴ガスと接触させて、前記処理液同伴ガスに同伴される処理液を回収する処理液回収部と、を備える。
【0010】
本発明のガス処理装置では、処理液回収部において、吸収器から流出した第1相部分及び第2相部分の少なくとも一方と、処理液同伴ガスとが接触する。このとき、主としてアミンを含む第1相部分を処理液同伴ガスに接触させる場合には、第1相部分中のアミンが、処理液同伴ガスに同伴される第2成分と混ざり易い。したがって、処理液同伴ガスに同伴される第2成分を回収することができる。一方、主として第2成分を含む第2相部分を処理液同伴ガスに接触させる場合には、第2相部分中の第2成分が、処理液同伴ガスに同伴されるアミンと混ざり易い。したがって、処理液同伴ガスに同伴されるアミンを回収することができる。このとき、処理液同伴ガスに同伴される処理液を水洗するための洗浄水を用いないのでれば、処理液が薄まってしまうことはない。一方で、仮に洗浄水による水洗を併用するとしても、洗浄水の水量を低減できるため、処理液が薄まってしまうことを抑制できる。したがって、処理液を介した酸性化合物の分離回収性能が低下してしまうことを抑制することができる。
【0011】
前記ガス処理装置は、前記酸性化合物を吸収した処理液を、前記第1相部分が主に含まれる処理液と前記第2相部分が主に含まれる処理液とに分ける分離器を備えていてもよい。
【0012】
この態様では、分離器で分離された処理液(すなわち、第1相部分が主に含まれる処理液と第2相部分が主に含まれる処理液とに分離された処理液)が、処理液回収部において処理液同伴ガスと接触する。したがって、処理液同伴ガスに同伴される処理液の回収を効果的に行うことができる。
【0013】
前記ガス処理装置は、前記処理液同伴ガスと洗浄水とを互いに接触させて、前記処理液同伴ガスに同伴される処理液を回収する水洗部を備えてもよい。この場合、前記処理液回収部は、前記第1相部分及び前記第2相部分に相分離した吸収液が、前記水洗部において前記洗浄水と接触する前に、前記処理液同伴ガスと接触する位置に配置されていてもよい。
【0014】
この態様では、処理液回収部において、第1相部分及び第2相部分の少なくとも一方が処理液同伴ガスとの接触に用いられるため、この第1相部分及び第2相部分の少なくとも一方の一部は、処理液同伴ガスに同伴されることになる。その後、この処理液同伴ガスは、水洗部において洗浄水と接触する。このため、処理液同伴ガスに同伴される第1相部分及び第2相部分の少なくとも一方が回収される。したがって、処理液回収部において、処理液同伴ガスに同伴される処理液を回収できるとともに、この処理液回収部で用いられた第1相部分及び第2相部分の少なくとも一方であって、処理液同伴ガスに同伴されることになった第1相部分及び第2相部分の少なくとも一方も回収することができる。
【0015】
前記ガス処理装置は、前記処理液にほぼ溶解性及び反応性を有しないガス又は水蒸気からなる分離促進ガスを前記再生器に供給する分離促進ガス供給部を備えてもよい。この場合、前記処理液回収部は、前記吸収器から流出した前記第1相部分及び前記第2相部分の少なくとも一方を、前処理液同伴ガスと接触させるように構成されている。
【0016】
この態様では、分離促進ガスが再生器に供給されるため、再生温度を低下させることができる。したがって、より低温(低品質)の熱を用いることが可能になる。
【0017】
前記ガス処理装置において、前記処理液回収部は、前記吸収器から流出した前記第1相部分及び前記第2相部分の少なくとも一方を、前記再生器内において、前記酸性化合物を含むガスと接触させるように構成されていてもよい。
【0018】
この態様では、再生器には、分離促進ガス供給部によって分離促進ガスが供給されるため、再生器内のガス量が多くなっている。これに伴い、処理液同伴ガスに同伴される処理液の量も増える。しかし、吸収器から流出した第1相部分及び第2相部分の少なくとも一方が再生器に導入されるため、再生器内において処理液同伴ガスに同伴される処理液が増大するとしても、同伴される処理液を有効に回収することができる。
【0019】
前記ガス処理装置において、前記分離促進ガスが水分を含むガス又は水蒸気からなるガスであってもよい。この場合、前記ガス処理装置は、前記再生器に供給される前記分離促進ガスから当該分離促進ガスに含まれる水分を分離させる水分除去部を備えていてもよい。
【0020】
この態様では、水分除去部において、水分を含むガス又は水蒸気からなるガスである分離促進ガスから水分が除去される。したがって、再生温度を低下させることができるだけでなく、分離促進ガスによって処理液が薄まってしまうことを抑制できる。
【0021】
前記ガス処理装置において、前記分離促進ガスが水分を含むガス又は水蒸気からなるガスであってもよい。この場合、前記ガス処理装置は、前記再生器に供給される前記分離促進ガスから当該分離促進ガスに含まれる水分を分離させる水分除去部と、前記水分除去部で得られた水分を、前記吸収器の水洗部、前記再生器の水洗部、前記再生器で得られた酸性化合物を供給先に供給するための供給路に設けられたコンデンサー、及び前記吸収器から処理後のガスを排出する排出路に設けられたコンデンサー、のうちの少なくとも1つに供給する水分供給路と、を備えていてもよい。
【0022】
この態様では、水分除去部で得られた水分が、水分供給路を通して、吸収器の水洗部、再生器の水洗部、供給路に設けられたコンデンサー及び排出路に設けられたコンデンサーの少なくとも1つに供給される。そして、水洗部又はコンデンサーにおいて、再生器内のガスに同伴される処理液と、吸収器から排出された処理後のガスに同伴される処理液との少なくとも1つが回収される。すなわち、水分除去部で得られた水分が、処理液同伴ガスに同伴される処理液の回収に利用される。したがって、水分除去部で分離された水分を有効に利用できる。
【0023】
本発明に係るガス処理装置は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物を吸収する前の状態においてアミンと第2成分とが混ざり合った状態にある一方で前記酸性化合物の吸収により主として前記アミンを含む第1相部分と主として前記第2成分を含む第2相部分とに相分離する処理液とを、互いに接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させるための吸収器と、前記酸性化合物を吸収した前記処理液を加熱して、当該処理液から酸性化合物を分離するための再生器と、前記処理液にほぼ溶解性及び反応性を有しないガスであって水分を含むガス又は水蒸気からなる分離促進ガスを前記再生器に供給する分離促進ガス供給部と、前記再生器に供給される前記分離促進ガスから当該分離促進ガスに含まれる水分を除去する水分除去部と、を備えている。
【0024】
本発明に係るガス処理装置では、分離促進ガスが再生器に供給されることにより、再生温度を低下させることができる。したがって、より低温(低品質)の熱を用いることが可能になる。しかも、水分除去部において、水分を含むガス又は水蒸気からなるガスである分離促進ガスから水分が除去され、その後、当該ガスが再生器に供給される。したがって、分離促進ガスによって処理液が薄まってしまうことを抑制できる。したがって、処理液を介した酸性化合物の分離回収性能が低下してしまうことを抑制することができる。
【0025】
本発明に係るガス処理方法は、吸収器において、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物を吸収する前の状態においてアミンと第2成分とが混ざり合った状態にある一方で前記酸性化合物の吸収により主として前記アミンを含む第1相部分と主として前記第2成分を含む第2相部分とに相分離する処理液とを、互いに接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させ、再生器において、前記酸性化合物を吸収した前記処理液を加熱して、当該処理液から酸性化合物を分離し、前記吸収器から前記第1相部分及び前記第2相部分を流出させ、前記吸収器から流出した前記第1相部分及び前記第2相部分の少なくとも一方を、前記被処理ガスから前記酸性化合物が前記処理液に吸収された後の前記吸収器内のガス又は前記酸性化合物を含む前記再生器内のガスである処理液同伴ガスと接触させて、前記処理液同伴ガスに同伴される処理液を回収する。
【0026】
本発明のガス処理方法では、吸収器から流出した第1相部分及び第2相部分の少なくとも一方が、吸収器又は再生器において処理液同伴ガスに接触する。このとき、主としてアミンを含む第1相部分が処理液同伴ガスに接触する場合には、第1相部分中のアミンが、処理液同伴ガスに同伴される第2成分と混ざり易い。したがって、処理液同伴ガスに同伴される第2成分を回収することができる。一方、主として第2成分を含む第2相部分が処理液同伴ガスに接触する場合には、第2相部分中の第2成分が、処理液同伴ガスに同伴されるアミンと混ざり易い。したがって、処理液同伴ガスに同伴されるアミンを回収することができる。このとき、処理液同伴ガスに同伴される処理液を水洗するための洗浄水を用いないのでれば、処理液が薄まってしまうことはない。一方で、仮に洗浄水による水洗を併用するとしても、洗浄水の水量を低減できるため、処理液が薄まってしまうことを抑制できる。したがって、処理液を介した酸性化合物の分離回収性能が低下してしまうことを抑制することができる。
【0027】
前記ガス処理方法において、前記酸性化合物を吸収した処理液を、分離器により、前記第1相部分を主に含む処理液と前記第2相部分を主に含む処理液とに分離してもよい。
【0028】
この態様では、分離器で分離された処理液(すなわち、第1相部分が主に含まれる処理液及び第2相部分が主に含まれる処理液)の少なくとも一方と、処理液同伴ガスとが接触する。すなわち、第1相部分又は第2相部分が主として含まれる処理液が処理液同伴ガスとの接触に用いられる。したがって、処理液同伴ガスに同伴される処理液の回収を有効に行うことができる。
【0029】
前記ガス処理方法において、前記第1相部分及び前記第2相部分に相分離した吸収液を、前記処理液同伴ガスと接触させ、その後、前記吸収器内の前記ガス又は前記再生器内の前記ガスを、洗浄水と接触させて、当該被処理ガスに同伴される処理液を回収してもよい。
【0030】
この態様では、第1相部分及び第2相部分の少なくとも一方が処理液同伴ガスとの接触に用いられるため、この第1相部分及び第2相部分の少なくとも一方の一部が、処理液同伴ガスに同伴されることがある。その後、この処理液同伴ガスが洗浄水と接触するため、処理液同伴ガスに同伴される第1相部分及び第2相部分の少なくとも一方が回収される。したがって、処理液同伴ガスとの接触に用いられた第1相部分及び第2相部分の少なくとも一方であって、処理液同伴ガスに同伴されることになった第1相部分及び第2相部分の少なくとも一方の一部も回収することができる。
【0031】
前記ガス処理方法において、前記処理液にほぼ溶解性及び反応性を有しないガス又は水蒸気からなる分離促進ガスを、前記再生器に供給し、前記吸収器から流出した前記第1相部分及び前記第2相部分の少なくとも一方を、前記処理液同伴ガスと接触させてもよい。
【0032】
この態様では、分離促進ガスが再生器に供給されることにより、酸性化合物を処理液から分離させるために必要なエネルギーを低減することができる。
【0033】
前記ガス処理方法において、前記吸収器から流出した前記第1相部分及び前記第2相部分の少なくとも一方を、前記再生器内において、前記酸性化合物を含むガスと接触させてもよい。
【0034】
この態様では、再生器には、分離促進ガス供給部によって分離促進ガスが供給されるため、再生器内のガス量が多くなっている。これに伴い、処理液同伴ガスに同伴される処理液の量も増える。しかし、吸収器から流出した第1相部分及び第2相部分の少なくとも一方が再生器に導入されるため、再生器内において処理液同伴ガスに同伴される処理液が増大するとしても、同伴される処理液を有効に回収することができる。
【0035】
前記ガス処理方法において、前記分離促進ガスが水分を含むガス又は水蒸気からなるガスであってもよい。この場合、前記再生器に供給される前記分離促進ガスから当該分離促進ガスに含まれる水分を分離し、前記分離された水分を、前記処理液同伴ガスと接触させて、当該処理液同伴ガスに同伴される処理液を回収してもよい。
【0036】
この態様では、水分を含むガス又は水蒸気からなるガスである分離促進ガスから水分が除去され、その後、当該ガスが再生器に供給される。したがって、再生温度を低下させることができるだけでなく、分離促進ガスによって処理液が薄まってしまうことを抑制できる。一方で、分離された水分が、処理液同伴ガスとの接触により処理液同伴ガスに同伴される処理液の回収に利用される。したがって、分離された水分を有効に利用できる。
【0037】
前記ガス処理方法において、前記再生器に供給される前記分離促進ガスから当該分離促進ガスに含まれる水分を分離し、前記分離された水分を、前記吸収器の水洗部、前記再生器の水洗部、前記再生器で得られた酸性化合物を供給先に供給するための供給路に設けられたコンデンサー及び前記吸収器から処理後の被処理ガスを排出する排出路に設けられたコンデンサーの少なくとも1つに供給してもよい。
【0038】
この態様では、分離された水分が、吸収器の水洗部、再生器の水洗部、供給路に設けられたコンデンサー及び排出路に設けられたコンデンサーの少なくとも1つに供給される。そして、コンデンサーにおいて、再生器で得られた酸性化合物に同伴される処理液と、吸収器から排出された処理後の被処理ガスに同伴される処理液との少なくとも1つが回収される。したがって、分離された水分を有効に利用できる。
【0039】
前記ガス処理方法において、前記吸収器に導入される前記被処理ガスに含まれる硫黄分の濃度と、前記吸収器に導入される前記被処理ガスの流量と、前記吸収器から排出された処理後のガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度と、前記再生器から排出された酸性化合物を含むガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度と、前記吸収器に導入される前記処理液に含まれる劣化成分の濃度と、のうちの少なくとも1つを測定し、前記測定の結果に基づいて、前記分離促進ガスから分離して前記処理液同伴ガスと接触させる水分の流量と、前記処理液同伴ガスと接触させる前記第1相部分又は前記第2相部分の流量と、前記吸収器及び前記再生器の少なくとも一方に設けられた水洗部に供給される洗浄水の流量と、の少なくとも一つの流量を調整してもよい。
【0040】
この態様では、処理液の蒸発量又はミスト量が多いとき、又は処理液の蒸発量又はミスト量が多くなると予想されるときに、処理液の蒸気またはミストを適切に回収できる。
【0041】
前記ガス処理方法において、前記吸収器から排出された処理後のガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度と、前記再生器から排出された酸性化合物を含むガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度との少なくとも一方の測定結果が閾値よりも高くなると、前記分離促進ガスから分離して前記処理液同伴ガスと接触させる水分の流量と前記水洗部に供給される洗浄水の流量との少なくとも一方を増大させ、前記吸収器から排出された処理後のガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度と、前記再生器から排出された酸性化合物を含むガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度との少なくとも一方の測定結果が閾値よりも低くなると、前記分離促進ガスから分離して前記処理液同伴ガスと接触させる水分の流量と前記水洗部に供給される洗浄水の流量との少なくとも一方を減少させてもよい。
【0042】
この態様では、処理液の蒸発量又はミスト量が多いときに、処理液の蒸気又はミストを適切に回収できる。一方で、処理液の蒸発量又はミスト量が少ないときには、水分除去量を減少させることにより、水分除去に要するエネルギーを低減させることができる。
【0043】
前記ガス処理方法において、前記吸収器に導入される前記被処理ガスに含まれる硫黄分の濃度と、前記吸収器に導入される前記被処理ガスの流量と、前記吸収器から排出された処理後のガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度と、前記再生器から排出された酸性化合物を含むガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度と、前記吸収器に導入される前記処理液に含まれる劣化成分の濃度と、のうちの少なくとも1つを測定し、前記測定の結果に基づいて、前記分離促進ガスから分離して前記処理液同伴ガスと接触させる水分の流量と、前記処理液同伴ガスと接触させる前記第1相部分又は前記第2相部分の流量と、の少なくとも1つの流量を調整してもよい。
【0044】
この態様では、処理液の蒸発量又はミスト量が多いとき、又は処理液の蒸発量又はミスト量が多くなると予想されるときに、処理液の蒸気またはミストを適切に回収できる。
【0045】
本発明に係るガス処理方法は、吸収器において、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により主としてアミン相を含む第1相部分と主としてアミン以外の成分相を含む第2相部分とに相分離する処理液とを、互いに接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させ、再生器において、前記酸性化合物を吸収した前記処理液を加熱して、当該処理液から酸性化合物を分離し、前記処理液にほぼ溶解性及び反応性を有しないガスであって水分を含むガス又は水蒸気からなる分離促進ガスから当該分離促進ガスに含まれる水分を除去し、前記水分が除去された分離促進ガスを前記再生器に供給する。
【0046】
本発明に係るガス処理方法では、分離促進ガスが再生器に供給されることにより、再生温度を低下させることができる。したがって、より低温(低品質)の熱を用いることが可能になる。しかも、水分を含むガス又は水蒸気からなるガスである分離促進ガスから水分が除去され、その後、当該ガスが再生器に供給される。したがって、分離促進ガスによって処理液が薄まってしまうことを抑制できる。したがって、処理液を介した酸性化合物の分離回収性能が低下してしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0047】
以上説明したように、本発明によれば、アミンを含む処理液を用いて酸性化合物を被処理ガスから分離させるガス処理装置又はガス処理方法において、処理液が水で薄まってしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】第1実施形態に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【
図2】吸収器において処理液回収部と水洗部との位置関係が変更された第1実施形態の変形例を概略的に示す図である。
【
図3】吸収器において処理液回収部と水洗部との位置関係が変更された第1実施形態の変形例を概略的に示す図である。
【
図4】第1実施形態において分離器が省略された変形例を概略的に示す図である。
【
図5】第1実施形態において、第1流路部を流れる第1相部分が処理液回収部に導入されるように構成される変形例を概略的に示す図である。
【
図6】第1実施形態において、第2の処理液回収部が追加されている変形例を概略的に示す図である。
【
図7】第1実施形態において、処理液回収部が再生器に設けられている変形例を概略的に示す図である。
【
図8】第2実施形態に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【
図9】第3実施形態に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【
図10】第3実施形態において、水分供給路が水洗部に繋がるよう構成された変形例を概略的に示す図である。
【
図11】第3実施形態において、水分供給路が排出部のコンデンサーに繋がるよう構成された変形例を概略的に示す図である。
【
図12】第4実施形態に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【
図13】第5実施形態に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【
図14】第6実施形態に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【
図15】第7実施形態に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【
図16】第1流路部及び第2流路部が、送り流路における熱交換器より下流側の部位に設けられる場合の変形例を示す図である。
【
図17】第1流路部と第2流路部のそれぞれに熱交換器が設けられる場合の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0050】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係るガス処理装置10は、酸性化合物を可逆的に吸収及び放出する性質を有する処理液を用いて、酸性化合物を含む被処理ガスから酸性化合物を分離する装置である。本実施形態では、水への溶解で酸を生ずる酸性化合物である二酸化炭素(CO2)が分離対象となっているため、地球温暖化対策として有効である。なお、酸性化合物としては、水溶液が酸性となるものであれば特に限定されず、例えば塩化水素、二酸化炭素、二酸化硫黄、二硫化炭素等であってもよい。また、酸性化合物を含む被処理ガスとしては、例えば産業排ガス、精製時に生ずるプロセスガス、天然ガス等が挙げられる。
【0051】
処理液は、酸性化合物を吸収する前の状態においてアミンと第2成分とが混ざり合った状態にある一方で、酸性化合物の吸収により主としてアミンを含む第1相部分と主として第2成分を含む第2相部分とに相分離する処理液である。処理液は、例えば、水、アミン及び第2成分としての有機溶剤を含むアルカリ性の吸収剤であり、アミンが30wt%、有機溶剤が60wt%、水が10wt%含まれていてもよい。
【0052】
アミンとしては、例えば、2-アミノエタノール(MEA:溶解度パラメータ=14.3(cal/cm3)1/2)、2-(2-アミノエトキシ)エタノール(AEE:溶解度パラメータ=12.7(cal/cm3)1/2)等の1級アミン、例えば2-(メチルアミノ)エタノール(MAE)、2-(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2-(ブチルアミノ)エタノール(BAE)等の2級アミン、例えばトリエタノールアミン(TEA)、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル等の3級アミンなどが挙げられる。
【0053】
有機溶剤としては、例えば1-ブタノール(溶解度パラメータ=11.3(cal/cm3)1/2)、1-ペンタノール(溶解度パラメータ=11.0(cal/cm3)1/2)、オクタノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEGDEE)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)等が挙げられ、複数種を混合して用いてもよい。
【0054】
アミン及び有機溶剤のそれぞれの溶解度パラメータが所定範囲に収まっている場合、処理液は、酸性化合物を吸収しない状態では、単一液相を形成するが、酸性化合物の吸収により酸性化合物の含有率が高い主としてアミンが含まれる第1相部分と、酸性化合物の含有率が低く主として第2成分が含まれる第2相部分とに相分離する。ここで、溶解度パラメータは、以下の式(1)で示される。
【0055】
【0056】
ΔHはモル蒸発潜熱、Rはガス定数、Tは絶対温度、Vはモル体積である。
【0057】
【0058】
表1に示すように、水、アミン及び有機溶剤を含む吸収剤において、アミンの溶解度パラメータから有機溶剤の溶解度パラメータを減じた値が1.1(cal/cm3)1/2以上4.2(cal/cm3)1/2以下となるように、アミン及び有機溶剤の組合せを選択すると、酸性化合物の吸収により、酸性化合物の含有率が高く主としてアミンが含まれる第1相部分と、酸性化合物の含有率が低く主として第2成分が含まれる第2相部分とに二相分離する処理液が得られる。この場合でも、酸性化合物の吸収前は、アミンと第2成分とが混ざり合って単一液相を形成する。
【0059】
溶解度パラメータの差分の値が前記下限値に満たない場合、処理液が酸性化合物を吸収しても二相に分離しないおそれがある。一方、溶解度パラメータの差分の値が前記上限値を超える場合、処理液が酸性化合物を吸収する前から二相に分離し、処理液を酸性化合物を含む被処理ガスに接触させる工程において、処理液と被処理ガスとの接触状態が不均一となり、吸収効率が低下するおそれがある。なお、表1における「良好」とは、二酸化炭素の吸収前は単一液相であり、二酸化炭素の吸収により二液相に分離したことを意味する。また、表1における「混和せず」とは、二酸化炭素の吸収前から二液相状態であり、単一液相を形成しなかったことを意味する。また、表1における「分離せず」とは、二酸化炭素の吸収後でも単一液相であったことを意味する。
【0060】
図1に示すように、ガス処理装置10は、吸収器12と、再生器14と、送り流路16と、還流路18と、を備えている。吸収器12は、プロセスガス等の被処理ガスと処理液とを接触させて、処理液に被処理ガス中の酸性化合物を吸収させるための装置である。なお、本実施形態では、酸性化合物としての二酸化炭素が分離される。
【0061】
送り流路16は、吸収器12から二酸化炭素を吸収した処理液(リッチ液)を抜き出して再生器14に導入させる流路である。再生器14は、リッチ液を加熱することにより、リッチ液から二酸化炭素を放出させるための装置である。還流路18は、二酸化炭素を放出した後の処理液(リーン液)を再生器14から抜き出して吸収器12に還流させる流路である。
【0062】
吸収器12には、吸収器12に被処理ガスを供給する導入路22と、処理後のガス(処理済みガス)を排出する排出路24と、処理液を再生器14に送るための送り流路16と、再生器14から処理液を吸収器12に戻すための還流路18と、が接続されている。導入路22は、吸収器12の下部に接続され、排出路24は、吸収器12の上部に接続されている。送り流路16は、吸収器12の下部に接続されている。すなわち、送り流路16は、吸収器12内に溜まった処理液を抜き出すことができる位置において、吸収器12に接続されている。還流路18は、吸収器12の上部に接続されている。すなわち、還流路18は、処理液が吸収器12内を流下できる位置において、吸収器12に接続されている。
【0063】
吸収器12内では、導入路22を通して導入された被処理ガスと、還流路18を通して還流してきた処理液とが接触することにより、被処理ガス中の二酸化炭素が処理液に吸収される。また、二酸化炭素が除去された後のガスである処理済みガスが排出路24を通して吸収器12から排出される。なお、吸収器12における二酸化炭素の吸収は発熱反応である。吸収器12において発生するこの反応熱は、被処理ガス、処理済みガス及び処理液の温度を上昇させる。
【0064】
吸収器12において二酸化炭素を吸収した処理液(リッチ液)は、送り流路16を通して吸収器12から導出される。リッチ液は、主としてアミンが含まれる第1相部分と主として第2成分(有機溶剤)が含まれる第2相部分とに相分離している。送り流路16には、この相分離した状態の処理液(リッチ液)を、第1相部分が主に含まれる処理液と第2相部分が主に含まれる処理液とに分けるための分離器26が設けられている。分離器26は、第1相部分と第2相部分の比重差を用いて両者を分離するものであり、分離器26内の空間に立壁が設けられた構造となっている。分離器26内に導入された処理液は、立壁に対して一方の空間である流入側空間26aに導入される。流入側空間26aに溜められた処理液のうち、比重の小さな第2相部分は立壁の上端を超えて隣接空間26bに導入されるため、流入側空間26aには主として第1相部分が、隣接空間26bには主として第2相部分が溜められる。このようにして、分離器26では、処理液が、第1相部分が主に含まれる処理液と第2相部分が主に含まれる処理液とに分けられる。
【0065】
送り流路16は、分離器26の流入側空間26aから処理液(第1相部分)を導出させる第1流路部16aと、分離器26の隣接空間26bから処理液(第2相部分)を導出させる第2流路部16bと、を含む。
【0066】
第1流路部16aと第2流路部16bにはそれぞれポンプ28,29が設けられている。
【0067】
送り流路16の第1流路部16a及び第2流路部16bは何れも、熱交換器32に接続されている。熱交換器32は、送り流路16を流れる処理液(リッチ液)と、再生器14から吸収器12に戻される処理液(リーン液)との間で熱交換を行うためのものである。なお、熱交換器32は省略することが可能である。
【0068】
再生器14には、送り流路16と、還流路18とが接続されている。送り流路16は、再生器14の上部に接続されている。還流路18は、再生器14の下部に接続されている。還流路18には、ポンプ34が設けられている。
【0069】
再生器14には、送り流路16を通して導入された二酸化炭素を含む処理液が貯留される。再生器14には、再生器14内の処理液を加熱することによって、処理液から二酸化炭素を脱離させるための加熱器36が設けられている。再生器14では、処理液が加熱されると、二酸化炭素が脱離するだけでなく、処理液中の水が蒸発する。なお、処理液からの二酸化炭素の脱離は、吸熱反応である。
【0070】
再生器14には、再生器14内で得られた二酸化炭素を含むガスを、二酸化炭素の需要先に供給するための供給路38が接続されている。再生器14では、処理液から蒸発した二酸化炭素と水蒸気との混合気体が生ずるため、混合気体を冷却するためのコンデンサー40が供給路38に設けられている。混合気体が冷却されると、水蒸気が凝縮するので、水蒸気を分離することができる。コンデンサー40で得られた凝縮水は通常、再生器14に戻される。なお、凝縮水は吸収器12に戻されてもよい。
【0071】
ガス処理装置10では、アミンを含む処理液が用いられており、このアミンはミスト状あるいは蒸気状となって、吸収器12内の処理済みガスに同伴されることがある。本明細書では、ミスト状又は蒸気状となった処理液が同伴されるガスを処理液同伴ガスとも称する。ガス処理装置10には、処理液同伴ガスに同伴されるアミン又は第2成分を回収するための処理液回収部42が設けられている。
【0072】
本実施形態の処理液回収部42には、送り流路16の第2流路部16bに接続された抜き出し路44を通して、第2相部分を主として含む処理液が導入される。そして、処理液回収部42では、第2流路部16bから抜き出された第2相部分が、吸収器12内の処理液同伴ガスと接触する。このため、本実施形態の処理液回収部42は、処理液同伴ガスに同伴される処理液のうち、主としてアミンを回収する。
【0073】
処理液回収部42は、吸収器12内において、還流路18の接続部よりも上側に配置されている。したがって、還流路18を通して流入し且つガスに同伴されるミスト状又は蒸気状の処理液、あるいは吸収器12内の処理液から生じガスに同伴されるミスト状又は蒸気状の処理液が、導入された液状の第2相部分と接触する。これにより、ミスト状又は蒸気状のアミンが第2相部分に取り込まれる。
【0074】
吸収器12には、処理液同伴ガスと洗浄水とを互いに接触させて、処理液同伴ガスに同伴される処理液のうち、処理液回収部42では回収できなかった処理液を回収する水洗部46も設けられている。処理液同伴ガスには、アミンだけでなく、第2成分である有機溶剤も同伴されるため、水洗部46は、処理液回収部42を通過したミスト状又は蒸気状の有機溶剤及びアミンを洗浄水と接触させることにより、当該有機溶剤及びアミンを回収する。なお、水洗部46を省略することが可能である。
【0075】
水洗部46と処理液回収部42とは、処理液回収部42で第2相部分と接触した後の処理液同伴ガスが洗浄水と接触するように位置決めされている。このため、
図1では、水洗部46が処理液回収部42の上側に配置されている。このように位置決めされることにより、水洗部46が設けられているとしても、供給される洗浄水の量を抑えることができるので、処理液が薄まってしまうことを抑制できる。
【0076】
なお、水洗部46は、処理液回収部42を通過した処理液同伴ガスが洗浄水と接触するのであれば、水洗部46が処理液回収部42の上側に配置されている必要はない。例えば、
図2に示すように、吸収器12において、処理液回収部42と水洗部46が水平方向に並ぶように配置されるとともに、処理液同伴ガスが処理液回収部42を下から上に通過した後で、水洗部46の下部に導入される流路12aが形成されていてもよい。また、
図3に示すように、吸収器12において、処理液同伴ガスが、処理液回収部42及び水洗部46を水平方向に流れるように構成されていて、かつ、吸収器12には、処理液回収部42に導入された第1相部分又は第2相部分が水洗部46に流れ込まないような蛇行流路部12bが、処理液回収部42及び水洗部46間に設けられていてもよい。蛇行流路部12bが設けられる代わりに、吸収器12が、処理液回収部42を有する容器部分と、水洗部46を有する容器部分とに分けられていてもよい。
【0077】
ここで、第1実施形態に係るガス処理装置10を使用したガス処理方法について説明する。ガス処理方法は、吸収工程と再生工程とを含む。
【0078】
吸収工程は、吸収器12において被処理ガスと処理液とを接触させる工程である。吸収器12には、導入路22を通して、少なくとも二酸化炭素を含むプロセスガス等の被処理ガスが供給される。また、吸収器12には、還流路18を通して処理液が導入される。処理液は、被処理ガスに含まれる二酸化炭素と接触して該二酸化炭素を吸収する。二酸化炭素を吸収した処理液(リッチ液)は、二酸化炭素の含有率が高い第1相部分と二酸化炭素分離の含有率が低い第2相部分とに相分離する。
【0079】
吸収器12内の処理液は、送り流路16を通して分離器26に導入される。分離器26からは、主としてアミンを含む第1相部分が第1流路部16aを通して導出され、主として第2成分(有機溶剤)を含む第2相部分が第2流路部16bを通して導出される。第1相部分及び第2相部分は合流し、熱交換器32において、還流路18を流れる処理液(リーン液)と熱交換して加熱される。熱交換器32を通過した処理液は、再生器14に導入される。
【0080】
再生器14内に導入された処理液は、加熱器36によって加熱され、これにより、処理液から二酸化炭素が分離される(再生工程)。処理液から分離された二酸化炭素は、供給路38を通して需要先に送られる。再生器14内において、処理液から得られた水蒸気は、供給路38においてコンデンサー40によって凝縮し、通常、再生器14に戻される。なお、水蒸気は吸収器12に戻されてもよい。
【0081】
再生器14内に貯留された処理液(リーン液)は、還流路18を流れて吸収器12に還流する。なお、還流路18の処理液は、熱交換器32において、送り流路16を流れる処理液を加熱する。
【0082】
送り流路16の第2流路部16bを流れる第2相部分の一部は、抜き出し路44を通して吸収器12内の処理液回収部42に送られる。処理液回収部42では、抜き出し路44を通して導入された第2相部分が、吸収器12内の処理液から生じた処理液同伴ガスに接触する。この処理液同伴ガスには、ミスト状又は蒸気状の処理液が同伴されている。これにより、ミスト状又は蒸気状のアミンが液状の第2相部分に取り込まれるため、吸収器12内の処理液同伴ガスからアミンが回収され、このアミンを液状の処理液に合流させることができる。
【0083】
処理液回収部42では、導入された第2相部分の一部が処理液同伴ガスに同伴されることがあるが、この処理液同伴ガスは、水洗部46において洗浄水と接触する。このため、同伴される第2相部分は、洗浄水に取り込まれる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態のガス処理装置10では、処理液回収部42において、吸収器12から流出した回収用の第2相部分と処理液同伴ガスとが接触する。このとき、主として第2成分を含む第2相部分を処理液同伴ガスに接触させるため、第2相部分中の第2成分が、処理液同伴ガスに同伴されるアミンと混ざり易い。したがって、処理液同伴ガスに同伴されるアミンを回収することができる。また、洗浄水による水洗が併用されるが、洗浄水の水量を低減できるため、処理液が薄まってしまうことを抑制できる。したがって、処理液を介した酸性化合物の分離回収性能が低下してしまうことを抑制することができる。
【0085】
また本実施形態では、分離器26が設けられ、分離器26で分離された処理液の第2相部分が処理液回収部42に導入される。したがって、処理液同伴ガスに同伴されるアミンを効果的に回収することができる。
【0086】
また本実施形態では、処理液回収部42において、第2相部分が処理液同伴ガスとの接触に用いられるため、この第2相部分の一部は、処理液同伴ガスに同伴されることになる。その後、処理液同伴ガスは、水洗部46において洗浄水と接触するため、処理液同伴ガスに同伴される第2相部分が回収される。したがって、処理液回収部42において、処理液同伴ガスに同伴される処理液を回収できるとともに、この処理液回収部42で用いられた第2相部分であって、処理液同伴ガスに同伴されることになった第2相部分も回収することができる。
【0087】
なお、本実施形態では、分離器26が設けられているが、分離器26を省略することが可能である。例えば
図4に示すように、送り流路16が第1流路部16aと第2流路部16bとを含み、第1流路部16a及び第2流路部16bがそれぞれ吸収器12に接続されていてもよい、この場合において、第1流路部16aが吸収器12の下端に接続され、第2流路部16bが第1流路部16aの接続部よりも高い位置で吸収器12に接続される。すなわち、吸収器12内に溜まった処理液は第1相部分と第2相部分とに相分離している。また、アミンを主として含む第1相部分は、第2成分(有機溶剤)を主として含む第2相部分よりも重い。このため、吸収器12内に溜まった処理液は、その上下方向の位置によって第1相部分と第2相部分との構成比率が異なる。したがって、第1流路部16aによる処理液の抜き出し位置と第2流路部16bによる処理液の抜き出し位置とを高さ方向において異ならせることにより、第1相部分と第2相部分とに分けることができる。
【0088】
本実施形態では、第2流路部16bを流れる第2相部分が処理液回収部42に導入されるが、この構成に限られない。
図5に示すように、第1流路部16aを流れる第1相部分が処理液回収部42に導入されてもよい。この場合、抜き出し路44は、第2流路部16bではなく第1流路部16aに接続される。抜き出し路44を通して処理液回収部42に導入された第1相部分は、処理液同伴ガスに同伴されるミスト状又は蒸気状の処理液と接触する。このとき、第1相部分は、ミスト状又は蒸気状の処理液中の第2成分を取り込むため、処理液同伴ガスから第2成分を回収することができる。
【0089】
また、
図6に示すように、第1流路部16aを流れる第1相部分を処理液回収部42に導入する抜き出し路44に加え、第2流路部16bを流れる第2相部分を第2の処理液回収部43に導入する第2の抜き出し路45が設けられていてもよい。第2の処理液回収部43は、主として第2成分(有機溶剤)が含まれる第2相部分を吸収器12内の処理液同伴ガスと接触させて、主として第2成分を回収する。
【0090】
また、
図7に示すように、処理液回収部42は、再生器14に設けられていてもよい。この場合、処理液回収部42は、再生器14内における送り流路16の接続部よりも上の位置に配置される。なお、
図7では、第2流路部16bに接続された抜き出し路44を通して第2相部分が処理液回収部42に供給されるが、これに代え/これとともに、第1流路部16aに接続された抜き出し路44を通して第1相部分が処理液回収部42に供給されてもよい。
【0091】
(第2実施形態)
図8に示すように、第2実施形態では、酸性化合物の分離を促進するためのガス(以下、分離促進ガスと称する)が再生器14に導入される。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0092】
第2実施形態に係るガス処理装置10には、分離促進ガスを再生器14に供給する分離促進ガス供給部50が設けられている。分離促進ガスは、処理液にほぼ溶解しないガスである。つまり、分離促進ガスは処理液にほぼ吸収されない。また、分離促進ガスは、処理液とは化学反応を起こさない。分離促進ガスとして、水素ガス、酸素ガス、メタンガス等の炭化水素ガスを挙げることができるが、本実施形態では水素ガスが用いられる。また、分離促進ガスとして、水蒸気、又は水蒸気と処理液にほぼ溶解しないガスとの混合ガスを挙げることもできる。処理液にほぼ溶解しないガス、水蒸気、又は水蒸気と処理液にほぼ溶解しないガスとの混合ガスを再生器14に供給することにより、再生器14内における酸性化合物のガス分圧を下げることができて、再生器14内において処理液からの酸性化合物の分離を促進することができる。
【0093】
ここで、処理液に「ほぼ溶解しない」は、処理液への溶解度が所定値以下であることを表していてもよい。分離促進ガスは、例えば、ヘンリーの法則に従うガスであって、0℃、100kPaの条件下において、処理液100gに対する溶解度が1mol以下の溶解度であるガスであればよい。なお、水に対する酸素の溶解度は、1.3×10-4mol/100g、水に対するメタンの溶解度は、8×10-4mol/100g、水に対する水素の溶解度は、9.5×10-5mol/100gである。これに対し、水に対するアンモニアの溶解度は、6mol/100gであるので、アンモニアは分離促進ガスに該当しない。
【0094】
ガス処理装置10は、水素ガスから水分を除去する水分除去部52を備えている。すなわち、分離促進ガスである水素ガスが水電解によって得られる場合には、水素ガスに、飽和に近い水分が保持されることがある。このため、水素ガスに保持された水分が再生器14に導入されて処理液を薄めることがないように、水分除去部52が設けられている。
【0095】
水分除去部52には、水素ガスを冷却することによって水素ガスから水分を分離する冷却器52aと、冷却器52aで得られた分離水を溜める気液分離器52bと、が含まれる。気液分離器52bに溜められた分離水は、系外に排出される。
【0096】
なお、水分除去部52は、水素ガスを冷却することによって水分を分離するものに限られない。例えば、水分を吸着材に吸着させることによって水分を除去するように構成されていてもよい。
【0097】
また、乾燥した分離促進ガスが供給される場合等、分離促進ガスに水分が保持されていない場合には、水分除去部52を省略することもできる。
【0098】
再生器14には分離促進ガスが供給されるため、第1実施形態と比較して、再生器14内のガス量が増大する。また、再生器14内のガス(処理液から分離された二酸化炭素を含むガス)には、ミスト状又は蒸気状の処理液が同伴することがある。この処理液を同伴するガスを処理液同伴ガスと称する。本実施形態では、再生器14内の処理液同伴ガスに同伴されるミスト状又は蒸気状の処理液を回収すべく、処理液回収部42が再生器14に設けられている。
【0099】
処理液回収部42は、再生器14内における送り流路16の接続部よりも上の位置に配置される。すなわち、送り流路16から導入された処理液が処理液回収部42を通過してしまうことを回避すべく、処理液回収部42は送り流路16の接続部よりも上側に位置している。
【0100】
処理液回収部42は、
図8に示すように、第2流路部16bから第2相部分が導入されてもよく、あるいは、図示省略するが、第1流路部16aから第1相部分が導入されてもよい。
【0101】
本実施形態では、分離促進ガスが再生器14に供給されることにより、再生温度を低下させることができる。したがって、より低温(低品質)の熱を用いることが可能になる。
【0102】
また本実施形態では、分離促進ガス供給部50により、分離促進ガスが再生器14に供給されるため、再生器14内のガス量が多くなっている。これに伴い、処理液同伴ガスに同伴される処理液の量も増える。しかし、吸収器12から流出した回収用の第2相部分が再生器14に導入されるため、再生器14内において処理液同伴ガスに同伴される処理液が増大するとしても、同伴される処理液を有効に回収することができる。
【0103】
また本実施形態では、水分除去部52において、水分を含む水素ガスである分離促進ガスから水分が除去される。したがって、再生温度を低下させることができるだけでなく、分離促進ガスによって処理液が薄まってしまうことを抑制できる。
【0104】
なお、本実施形態では、抜き出し路44が、第2相部分が主として流れる第2流路部16bに接続されているが、これに代え、抜き出し路44は、第1相部分が主として流れる第1流路部16aに接続されてもよい。また、第1流路部16aを流れる第1相部分を処理液回収部42に導入する抜き出し路44に加えて、
図6に示すような、第2流路部16bを流れる第2相部分を第2の処理液回収部43に導入する第2の抜き出し路45が設けられていてもよい。また、処理液回収部42が再生器14に設けられているが、これに代え/これとともに、処理液回収部42は、
図1、
図5及び
図6と同様に、吸収器12に設けられてもよい。また、
図4と同様に、分離器26が省略されてもよい。その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0105】
(第3実施形態)
図9に示すように、第3実施形態では、水分除去部52で得られた水分が処理液同伴ガスの洗浄に利用される。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0106】
第3実施形態に係るガス処理装置10には、水分除去部52で得られた水分をコンデンサー40に供給する水分供給路54が設けられている。水分供給路54は、一端部が気液分離器52bに接続され、他端部が供給路38におけるコンデンサー40よりも上流側の部位に接続されている。なお、他端部はコンデンサー40に接続されてもよい。
【0107】
気液分離器52b内に溜まった分離水は、水分供給路54を通して供給路38に送られる。このため、再生器14内の処理液同伴ガスが供給路38に流入したとしても、処理液同伴ガスに同伴される処理液は、分離水に取り込まれるため、コンデンサー40を経由して再生器14に戻される。
【0108】
本実施形態では、水分除去部52で得られた水分が、水分供給路54を通して、供給路38に設けられたコンデンサー40に供給される。そして、コンデンサー40において、再生器14から流出した処理液同伴ガスに同伴される処理液が回収される。すなわち、水分除去部52で得られた水分が、処理液同伴ガスに同伴される処理液の回収に利用される。したがって、水分除去部52で分離された水分を有効に利用できる。
【0109】
なお、本実施形態では、水分供給路54が供給路38に接続されているが、これに限られない。
図10に示すように、水分供給路54は、吸収器12内の水洗部46及び再生器14内の水洗部46の少なくとも一方に水分を供給してもよい。また、
図11に示すように、水分供給路54は、排出路24に設けられたコンデンサー56に水分を供給してもよい。この場合、吸収器12に水洗部46が設けられていてもよく、省略されていてもよい。
【0110】
本実施形態では、抜き出し路44が、第2相部分が主として流れる第2流路部16bに接続されているが、これに代え、抜き出し路44は、第1相部分が主として流れる第1流路部16aに接続されてもよい。また、第1流路部16aを流れる第1相部分を処理液回収部42に導入する抜き出し路44に加え、第2流路部16bを流れる第2相部分を第2の処理液回収部43に導入する第2の抜き出し路45が設けられていてもよい。また、処理液回収部42が再生器14に設けられているが、これに代え/これとともに、処理液回収部42は、
図1、
図5及び
図6と同様に、吸収器12に設けられてもよい。また
図4と同様に、分離器26が省略されてもよい。その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1及び第2実施形態の説明を第3実施形態に援用することができる。
【0111】
(第4実施形態)
図12に示すように、第4実施形態では、分離促進ガス供給部50と水分除去部52とが設けられる一方で、処理液回収部42が設けられていない。すなわち、第4実施形態では、分離促進ガス供給部50が、水分を含むガス又は水蒸気からなる分離促進ガスを再生器14に供給するため、分離促進ガスによって再生器14内に水分が持ち込まれる可能性がある。そこで、水分除去部52によって、それを抑制して処理液が薄まってしまうことを抑制することができる。このため、処理液の第1相部分又は第2相部分によって処理液同伴ガスに同伴する処理液を回収する処理液回収部42は省略されている。尚、ここでは第1、第2実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0112】
第4実施形態では、分離促進ガスが再生器14に供給されることにより、再生温度を低下させることができる。したがって、より低温(低品質)の熱を用いることが可能になる。しかも、水分除去部52において、水分を含むガス又は水蒸気からなるガスである分離促進ガスから水分が除去され、その後、当該分離促進ガスが再生器14に供給される。したがって、分離促進ガスによって処理液が薄まってしまうことを抑制できる。したがって、処理液を介した酸性化合物の分離回収性能が低下してしまうことを抑制することができる。
【0113】
なお、
図12では、送り流路16に分離器26が設けられ、送り流路16が第1流路部16aと第2流路部16bとを有しているが、これに限られない。分離器26が省略され、送り流路16が第1流路部16aと第2流路部16bとを有しないで、単一の流路で構成されていてもよい。その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1、第2実施形態の説明を第4実施形態に援用することができる。
【0114】
(第5実施形態)
図13は第5実施形態を示す。尚、ここでは第1~第4実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0115】
第5実施形態では、被処理ガスの濃度等を測定することにより、処理液同伴ガスに同伴されるミスト状又は蒸気状の処理液が増えるとき又は増えると予想されるときに、処理液同伴ガスからの処理液の回収を行い、それ以外のときには、処理液の回収を行わない。こうすることにより、処理液回収に必要なエネルギーが増大し過ぎないようにする。
【0116】
具体的には、ガス処理装置10には、導入路22に配置され、被処理ガスに含まれる硫黄分の濃度又は被処理ガス流量を測定可能な測定器58と、排出路24に配置され、処理済みガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度を測定可能な測定器59と、供給路38に配置され、二酸化炭素を含むガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度を測定可能な測定器60と、還流路18に配置され、処理液に含まれる劣化成分の濃度を測定可能な測定器61と、の少なくとも1つが設けられる。
【0117】
測定器58~61による測定結果を示す信号は、制御部63に送られる。制御部63は、受信した信号が示す測定結果に基づいて、抜き出し路44に設けられたバルブ65及び冷却器52aの少なくとも1つを調整するように構成されている。例えば、導入路22に配置された測定器58による測定結果が、被処理ガス中に閾値以上の硫黄分が含まれていることを示す場合に、制御部63は、バルブ65を開く制御又は冷却器52aを作動させる制御を行ってもよい。硫黄分が多い場合にアミンのミスト生成が促進される可能性があるからである。また、導入路22に配置された測定器58による測定結果が、閾値以上の被処理ガス流量であることを示す場合に、制御部63は、バルブ65を開く制御又は冷却器52aを作動させる制御を行ってもよい。被処理ガスの流量が増大すれば、アミン又は第2成分の排出量が増大し得ると予測されるからである。また、排出路24に配置された測定器59による測定結果が、処理済みガスに閾値以上の濃度のアミン又は第2成分が含まれていることを示す場合に、制御部63は、バルブ65を開く制御又は冷却器52aを作動させる制御を行ってもよい。実際にアミン又は第2成分の排出が増えていることになるからである。また、還流路18に配置された測定器61による測定結果が、処理液中のアミンを泡立たせるような劣化成分が閾値以上の濃度で含まれることを示す場合に、制御部63は、バルブ65を開く制御又は冷却器52aを作動させる制御を行ってもよい。処理液の経年劣化により、劣化成分が増えたときには、処理液中のアミンが損失し易くなるからである。
【0118】
第5実施形態では、処理液の蒸発量又はミスト量が多いとき、又は処理液の蒸発量又はミスト量が多くなると予想されるときに、処理液の蒸気またはミストを適切に回収できる。一方で、処理液の蒸発量又はミスト量が少ないとき又は少なくなると予想されるときには、処理液回収に要するエネルギーを減らすことができる。
【0119】
また、排出路24に配置された測定器59、及び供給路38に配置された測定器60の少なくとも1つによる測定結果が、ガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度が閾値よりも高いことを示す場合に、制御部63は、バルブ65の開度を大きくする制御、及び冷却器52aの能力を上げる制御のうちの少なくとも1つの制御を行ってもよい。一方、排出路24に配置された測定器59、及び供給路38に配置された測定器60の少なくとも1つによる測定結果が、ガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度が閾値よりも低いことを示す場合に、制御部63は、バルブ65の開度を小さくする制御、及び冷却器52aの能力を下げる制御のうちの少なくとも1つの制御を行ってもよい。
【0120】
この場合には、処理液の蒸発量又はミスト量が多いときに、処理液の蒸気又はミストを適切に回収できる。一方で、処理液の蒸発量又はミスト量が少ないときには、水分除去量を減少させることにより、水分除去に要するエネルギーを低減させることができる。
【0121】
なお、
図13に示す形態では、水洗部46が設けられているが、水洗部46を省略することが可能である。すなわち、第2成分(有機溶剤)が揮発しにくいものであれば、水洗部46を省略することが可能となる。この場合でも、制御部63は、受信した信号が示す測定結果に基づいて、バルブ65及び冷却器52aの少なくとも1つを調整するように構成される。また、処理液回収部42は、再生器14内に代え/とともに、吸収器12内に設けられてもよい。その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1~第4実施形態の説明を第5実施形態に援用することができる。
【0122】
(第6実施形態)
図14は第6実施形態を示す。尚、ここでは第1~第5実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0123】
第6実施形態では、制御部63は、抜き出し路44に設けられたバルブ65及び冷却器52aの少なくとも1つを調整するだけでなく、水洗部46に洗浄水を供給するための洗浄水路67に設けられたバルブ66も調整する。なお、抜き出し路44のバルブ65は省略されてもよい。また、洗浄水路67は水分供給路54によって構成されてもよい。
【0124】
排出路24に配置された測定器59、及び供給路38に配置された測定器60の少なくとも1つによる測定結果が、ガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度が閾値よりも高いことを示す場合に、制御部63は、洗浄水路67に設けられたバルブ66の開度を大きくする制御、及び冷却器52aの能力を上げる制御のうちの少なくとも1つの制御を行う。一方、排出路24に配置された測定器59、及び供給路38に配置された測定器60の少なくとも1つによる測定結果が、ガスに含まれるアミン又は第2成分の濃度が閾値よりも低いことを示す場合に、制御部63は、洗浄水路67に設けられたバルブ66の開度を小さくする制御、及び冷却器52aの能力を下げる制御のうちの少なくとも1つの制御を行う。
【0125】
第6実施形態では、処理液の蒸発量又はミスト量が多いときに、処理液の蒸気又はミストを適切に回収できる。
【0126】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1~第5実施形態の説明を第6実施形態に援用することができる。
【0127】
(第7実施形態)
図15は第7実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0128】
第7実施形態では、制御部63は、受信した信号が示す測定結果に基づいて、抜き出し路44に設けられたバルブ65、洗浄水路67に設けられたバルブ66、及び冷却器52aの少なくとも1つを調整するように構成されている。つまり、第5実施形態では、水洗部46に供給される水の流量が調整されないようになっているのに対し、第7実施形態では、水洗部46に供給される水の量も調整可能となっている。これにより、吸収器12又は再生器14に供給される水量をより適正に調整することができる。なお、
図15では、還流路18に配置された測定器61が省略されているが、還流路18に測定器61を設けてもよい。
【0129】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1~第6実施形態の説明を第7実施形態に援用することができる。
【0130】
(その他の実施形態)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、第1~第7実施形態では、送り流路16が、熱交換器32よりも上流側の部位に配置された第1流路部16aと第2流路部16b抜き出し路44を含むが、これに限られない。
図16に示すように、第1流路部16a及び第2流路部16bは、送り流路16における熱交換器32より下流側の部位に設けられていてもよい。この場合には、処理液回収部42に供給される第1相部分又は第2相部分が、熱交換器32で加熱された液体となる。このため、
図1等に示すように、処理液の回収効果をより高めるためには、熱交換器32で加熱される前の第1相部分又は第2相部分を、処理液回収部42に供給するのが好ましい。
【0131】
また、
図17に示すように、第1流路部16aと第2流路部16bにそれぞれ熱交換器32が設けられてもよい。すなわち、リッチ液のうちの第1相部分とリーン液とを熱交換する熱交換器32aと、リッチ液のうちの第2相部分とリーン液とを熱交換する熱交換器32bと、が設けられていてもよい。なお、
図17では、熱交換器32aと熱交換器32bとが並列になるように接続された構成が示されているが、熱交換器32aと熱交換器32bとが直列になるように接続されていてもよい。ただし、熱交換器32aと熱交換器32bとが並列に接続される方が、熱回収効率がより高くなる。
【符号の説明】
【0132】
10 :ガス処理装置
12 :吸収器
14 :再生器
24 :排出路
26 :分離器
38 :供給路
40 :コンデンサー
42 :処理液回収部
43 :第2の処理液回収部
46 :水洗部
50 :分離促進ガス供給部
52 :水分除去部
54 :水分供給路
56 :コンデンサー
63 :制御部