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特開2025-85613グリッドに接続された電力コンバータを制御するための方法およびコントローラ
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  • 特開-グリッドに接続された電力コンバータを制御するための方法およびコントローラ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025085613
(43)【公開日】2025-06-05
(54)【発明の名称】グリッドに接続された電力コンバータを制御するための方法およびコントローラ
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20250529BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20250529BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20250529BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 110
H02M7/48 R
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024199356
(22)【出願日】2024-11-15
(31)【優先権主張番号】23212105.3
(32)【優先日】2023-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ジョセフ・ハート
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ウオレヴィ・ベルグ
(72)【発明者】
【氏名】ハンチャオ・リュ
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナクマール・ラマン・ヴァスデヴァン
(72)【発明者】
【氏名】アティヌケ・アデモラ・イドウ
【テーマコード(参考)】
5G066
5H770
【Fターム(参考)】
5G066HB03
5G066HB04
5H770BA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】グリッドに接続された電力コンバータを制御する方法及びコントローラを提供する。
【解決手段】方法(400)は、コントローラ(200)および/または電力コンバータ(204)に関連する第1のパラメータが第1の閾値を超えると判定することに応答して、電力コンバータ(204)の出力電流(222)を現在値および/または基準値に基づいて制限することにより、電力コンバータを第1の制限モード(430)で制御し、電力コンバータ(204)の出力電流(222)を決定し、出力電流(222)が平衡状態にあるか又は平衡状態に達しつつあると決定することに応答して、電力コンバータ(204)の出力電流(222)に基づいて、電力コンバータ(204)の仮想インピーダンスを決定し(440)、仮想インピーダンスに基づいて制御システム(228)を修正する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッド(232)に接続された電力コンバータ(204)を制御するための方法(400)であって、電力コンバータ(204)は、コントローラ(200)によって提供される制御データ(230)に基づいて、公称電圧で電流(222)を出力するように系統形成モードで初期制御(410)され、コントローラ(200)は、電力コンバータ(204)の下流の電流および/または電圧を示す測定信号(222、224)と、基準信号(212)とに基づいて制御データ(230)を決定する制御システム(228)を含み、前記方法は、
コントローラ(200)によって、コントローラ(200)および/または電力コンバータ(204)に関連する第1のパラメータが第1の閾値を超えたことを判定する(420)ステップと、
第1のパラメータが第1の閾値を超えたと判定したことに応答して、
コントローラ(200)によって、電力コンバータ(204)の出力電流(222)を現在値および/または基準値に基づいて制限することにより、電力コンバータを第1の制限モード(430)で制御し、
コントローラ(200)により、電力コンバータ(204)の出力電流(222)を決定するステップと、
出力電流(222)が平衡状態にある、または平衡状態に近いと判断した場合に応答して、
コントローラ(200)により、電力コンバータ(204)の出力電流(222)に基づいて、電力コンバータ(204)の仮想インピーダンスを決定し(440)、
コントローラ(200)によって、仮想インピーダンスに基づいて制御システム(228)を修正し、
コントローラ(200)によって、電力コンバータ(204)を第1の制約系統形成モード(450)で制御するステップであって、修正された制御システム(228)が、電力コンバータ(204)の下流の電流および/または電圧を示す測定信号(222、224)と、基準信号(212)とに基づいて、制御データ(230)を決定する、前記ステップと、を含む、方法。
【請求項2】
コントローラ(200)および/または電力コンバータ(204)に関連する第2のパラメータが第2の閾値を超えたことを、コントローラ(200)によって判定する(460)ステップと、
第2のパラメータが第2の閾値を超えたと判定したことに応答して、
コントローラ(200)によって、更新された現在値および/または更新された基準値に基づいて電力コンバータ(204)の出力電流(222)を制限することによって、電力コンバータを第2の制限モードで制御し、
コントローラ(200)によって、電力コンバータ(204)の更新された出力電流(222)を決定するステップと、
更新された出力電流(222)が平衡状態にある、または平衡状態に近いと判断されたことに応答して、
コントローラ(200)によって、電力コンバータ(204)の更新された出力電流(222)に基づいて、電力コンバータ(204)の更新された仮想インピーダンスを決定し、
コントローラ(200)によって、更新された仮想インピーダンスに基づいて制御システム(228)をさらに修正し、
コントローラ(200)によって、電力コンバータ(204)を第2の制約系統形成モード(450)で制御するステップであって、さらに修正された制御システム(228)は、電力コンバータの下流の電流および/または電圧を示す測定信号(222、224)および基準信号(212)に基づいて制御データ(230)を決定する、前記ステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
制御システム(228)は、電圧コントローラ(214)および電流コントローラ(216)を含むカスケード制御システム(228)であり、
電圧コントローラ(214)は、基準信号(212)および測定信号(222,224)に基づいて、電圧制御システムを使用して第1のデータ(215)を生成し、第1のデータ(215)を電流コントローラ(216)に出力し、
電流コントローラ(216)は、第1のデータ(215)および測定信号(222、224)に基づいて、電流制御システムを使用して第2のデータを生成し、
コントローラ(200)が、第2のデータに基づいて制御データ(230)を決定し、
コントローラ(200)は、第1のデータ(215)を現在値および/または基準値と等しくなるように設定することによって、第1の制限モード(430)で電力コンバータ(204)を制御し、それによって電力コンバータ(204)の出力電流(222)を制限する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
制御システム(228B)は、直接電圧コントローラ(214B)であり、
コントローラ(200)は、リミットコントローラ(217)を含み、
コントローラ(200)は、リミットコントローラ(217)が電力コンバータ(204)の出力電流(222)が現在値または基準値を超えて増加しないように制限することによって、第1の制限モード(430)で電力コンバータ(204)を制御し、それによって電力コンバータ(204)の出力電流(222)を制限する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
コントローラ(200)によって、電力コンバータ(204)のための仮想インピーダンスを決定すること(440)は、コントローラ(200)によって、電力コンバータ(204)の出力電流(222)に基づいて、電力コンバータ(204)のための仮想インピーダンスおよび固定仮想電圧オフセットを決定することをさらに含み、
コントローラ(200)によって、仮想インピーダンスに基づいて制御システム(228)を修正することは、コントローラ(200)によって、仮想インピーダンスおよび固定仮想電圧オフセットに基づいて制御システム(228)を修正することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
仮想インピーダンスに基づいて制御システム(228)を修正することが、
コントローラ(200)によって、仮想インピーダンスおよび出力電流(222)の関数として仮想電圧または仮想電流を計算することによって、制御システム(228)の調整タームを決定するステップと、
コントローラ(200)により、調整タームを制御システム(228)に実装するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
コントローラ(200)が、電力コンバータ(204)の仮想インピーダンスを決定することは、
電力コンバータ(204)が第1の制限モード(430)にある間に、電力コンバータ(204)の内部電圧フェーザ基準と、電力コンバータ(204)の出力とグリッド(232)との間のノード(224)におけるノード電圧との間の電圧差として定義される仮想電圧を計算するステップと、
グリッド(232)に接続された電力コンバータ(204)のテブナン等価回路に基づいて、仮想電圧、平衡状態における電力コンバータの出力電流、および仮想インピーダンスを含み、回路解析法を使用して、仮想インピーダンスのテブナン等価回路を解析するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
コントローラ(200)によって、電力コンバータ(204)の内部電圧フェーザ基準とノード(224)のノード電圧との間の電圧差の大きさが減少する結果として、仮想インピーダンスを減少させ(490)、それによって電力コンバータ(204)を初期のグリッド形成モード(410)で制御するように戻すステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
コントローラ(200)および/または電力コンバータ(204)に関連する第1のパラメータが第1の閾値を超えると決定してから、コントローラが、電力コンバータ(204)を 第1制限モードで制御するステップを完了するまでの時間が、50ms以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
コントローラ(200)および/または電力コンバータ(204)に関連する第1のパラメータが第1の閾値を超えると判定することが、
指令角度またはPLL(Phase Locked Loop)角度を使用するdqフレーム電流レギュレータの電流基準が飽和したと判断すること、および/または
電流コントローラ(216)の比例積分(PI)コントローラに入力されたdまたはq電流基準が飽和したと判断すること、および/または
電流コントローラ(216)の比例共振(PR)コントローラに、逆基準フレーム変換後に入力されるdまたはq電流基準が飽和したことを判断すること、および/または
電流コントローラ(216)のデッドビートコントローラに、逆基準フレーム変換後に入力されるdまたはq電流基準が飽和していると判断すること、および/または
相電流制限に達したと判断すること、および/または
有効電力制限に達したと判断すること、および/または
エネルギー制限に達したと判断すること、および/または
構成要素がパルスドロップまたはブロックしていると判断すること、および/または
電圧リファレンスが飽和したと判断すること、および/または
電圧出力が限界に達したと判断すること、および/または
変調指数が飽和したと判断すること、
の内の1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
グリッド(232)に接続された電力コンバータ(204)を制御するためのコントローラ(200)であって、
電力コンバータ(204)の下流の電流および/または電圧を示す測定信号(222、224)、および基準信号(212)に基づいて制御データ(230)を決定するように配置された制御システム(228)を含み、
コントローラ(200)は、制御データ(230)に基づいて、公称電圧で電流(222)を出力するように、系統形成モードで電力コンバータ(204)を制御するように準備され、
コントローラは、
コントローラ(200)および/または電力コンバータ(204)に関連する第1のパラメータが第1の閾値を超えたと判定し、
第1のパラメータが第1の閾値を超えたと判定したことに応答して、
電力コンバータを第1の制限モード(430)で制御し、コントローラ(200)は、現在値および/または基準値に基づいて電力コンバータ(204)の出力電流(222)を制限するように構成され、
電力コンバータ(204)の出力電流(222)を決定し、
出力電流(222)が平衡状態にある、または平衡状態に近いと判断した場合に応答して、
電力コンバータ(204)の出力電流(222)に基づいて、電力コンバータ(204)の仮想インピーダンスを決定し、
仮想インピーダンスに基づいて制御システム(228)を修正し、
電力コンバータ(204)を第1の制約系統形成モード(450)で制御し、修正された制御システム(228)は、電力コンバータの下流の電流および/または電圧の測定信号(222、224)と、基準信号(212)とに基づいて、制御データ(230)を決定する、ように構成される、コントローラ。
【請求項12】
コントローラはさらに、
コントローラ(200)および/または電力コンバータ(204)に関連する第2のパラメータが第2の閾値を超えると判定し、
第2のパラメータが第2の閾値を超えたと判定したことに応答して、
電力コンバータを第2の制限モードで制御し、コントローラは、更新された現在値および/または更新された基準値に基づいて、電力コンバータ(204)の出力電流(222)を制限するように構成され、
電力コンバータ(204)の更新された出力電流(222)を決定し、
更新された出力電流(222)が平衡状態にあるか、または平衡状態に近いと判断したことに応答して、
電力コンバータ(204)の更新された出力電流(222)に基づいて、電力コンバータ(204)の更新された仮想インピーダンスを決定し、
更新された仮想インピーダンスに基づいて制御システム(228)をさらに修正し、
電力コンバータ(204)を第2の制約系統形成モード(450)で制御し、さらに修正された制御システム(228)が、測定信号(222、224)および基準信号(212)に基づいて前記制御データ(230)を決定する、
ように構成される、請求項11に記載のコントローラ。
【請求項13】
制御システム(228)は、電圧コントローラ(214)と電流コントローラ(216)とを含むカスケード制御システム(228)であり、
電圧コントローラ(214)は、基準信号(212)および測定信号(222、224 )に基づいて、電圧制御システムを使用して第1のデータ(215)を生成するように構成され、電圧コントローラ(214)は、さらに、第1のデータ(215)を電流コントローラ(216)に出力するように構成され、
電流コントローラ(216)は、第1のデータ(215)および測定信号(222、224)に基づいて、電流制御システムを使用して第2のデータを生成するように構成され、
コントローラ(200)は、第2のデータに基づいて制御データ(230)を決定するようにさらに構成され、
コントローラ(200)は、第1のデータ(215)を現在値または基準値と等しくなるように設定することによって、第1の制限モード(430)において電力コンバータ(204)を制御し、それによって電力コンバータ(204)の出力電流(222)を制限するようにさらに構成される、請求項11に記載のコントローラ。
【請求項14】
コントローラは、仮想インピーダンスに基づいて制御システム(228)を修正するように構成され、コントローラは、仮想インピーダンスと出力電流(222)の関数として仮想電圧または仮想電流を計算することによって制御システム(228)の調整タームを決定し、調整タームを制御システム(228)に実装するように構成される、請求項11に記載のコントローラ。
【請求項15】
電力コンバータであって、
直流電源に接続するための直流側と、
グリッドに接続するための交流側と、
請求項11から14のいずれか一項に記載のコントローラ(200)と、
を含む、電力コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリッド(grid:電力網、送電網、系統)に接続された電力コンバータを制御する方法およびコントローラに関し、より詳細には、仮想インピーダンス(virtual impedance)を使用して電力コンバータを制御する方法およびコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
送電ネットワーク(power transmission networks)では、直流ネットワークと交流ネットワークを相互接続する必要がある場合、直流電力が交流電力に変換される。このような送電ネットワークでは、ACからDCへ、またはDCからACへ必要な変換を行うために、AC電力とDC電力間の各インターフェースに、コンバータ、電力コンバータ、インバータ、電力インバータ、またはパワーエレクトロニクス(converters, power converters, inverters, power inverters, or power-electronics)に基づくリソースとしても知られる電力変換手段が必要である。
【0003】
直流電力を交流電力に変換する場合、例えば、直流送電線とグリッドとの間のインターフェースにおいて、電力コンバータは、系統追従モード(GFL:grid-following mode)または系統形成モード(GFM:grid-forming mode)で運転されることがある。
【0004】
GFLモードでは、電力コンバータは高速電流調整ループ(fast current-regulation loops)を利用してグリッドと交換する有効電力と無効電力を制御し、サブ過渡から過渡のタイムスケール(a sub-transient to transient timescale、例えば、約10msから150msの間)で比較的一定の有効電力と無効電力の交換を実現する。電力コンバータは、所望の有効電力出力を達成するために、電流の有効成分に電流基準を使用する。GFLモードで動作する電力コンバータは、電流の無効成分に対する指令をもたらす方法で電圧および/または無効電力を管理する機能を含む。広帯域幅電流レギュレータ(Wide-bandwidth current regulators)は、実際の電流がコマンドに密接に追従するように、電力コンバータがグリッドに印加する電圧のコマンドをデベロップ(develop:開発、発展)する。したがって、GFLモードで動作する電力コンバータは、サブ過渡から過渡の時間スケールで電流源特性(current-source characteristic)を提供する。
【0005】
あるいは、GFMモードで動作する電力コンバータは、サブ過渡から過渡のタイムスケールにおいて電圧源特性を提供し、このタイムスケールでは電圧の位相角と大きさがほぼ静的に保たれる(remain mostly static)ように制御され、グリッドから要求される調整機能を実現する。この構造により、電流はグリッドの要求に従って流れ、コンバータはグリッドの電圧と周波数の確立に貢献する(contributes to establishing a voltage and frequency for the grid)。
【0006】
GFMモードで動作する電力コンバータは、GFLモードで動作する電力コンバータとは異なり、GFMモードでは、サブ過渡時間スケール(例えば、150ms未満)で、交流電流の代わりに電力コンバータの交流電圧と周波数を調整する。しかし、グリッドに障害事象が発生した場合、または他の深刻なグリッド擾乱(grid disturbance、本明細書では「グリッド事象」と呼ぶ)が発生した場合、電力コンバータが電流、電力、またはエネルギーではなく電圧を調整するため、電力コンバータが電流、電力、またはエネルギーの過負荷を経験する可能性がありる。この過負荷は、GFMモードで動作している電力コンバータをオフラインにトリップさせるか、最悪のシナリオでは、電力コンバータ内の半導体デバイスを損傷させ、電力コンバータを無期限に動作不能にする可能性がある。
【0007】
このようなグリッド事象が発生した場合、電力コンバータの自己保護が確保される必要があり、電流制限は通常、制御をGFLモードに切り替えることで達成される。しかし、条件によっては、このような方法で制御モードを切り替えると、電力コンバータの安定性や電力系統全体(overall power system)の安定性が損なわれる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2023/369865号明細書
【発明の概要】
【0009】
このような考察と新たなグリッド要件を考慮すると、ハードウェアの限界に近い(しかし超えない)運転をしながら、電力コンバータがGFMの挙動をある程度維持できるような方法を開発することが望まれる。
【0010】
第1の態様によれば、グリッドに接続された電力コンバータを制御するための方法(a method for controlling a power converter connected to a grid)が提供され、前記電力コンバータは、コントローラによって提供される制御データに基づいて、公称電圧で電流を出力するように系統形成モードで最初は制御され(the power converter is initially controlled in a grid-forming mode to output current at a nominal voltage, based on control data provided by a controller)、前記コントローラは、前記電力コンバータの下流の電流および/または電圧を示す測定信号と、基準信号とに基づいて制御データを決定する制御システムを含む(the controller comprising a control system which determines the control data based on measured signals indicative of currents and/or voltages downstream from the power converter, and a reference signal)。方法は、前記コントローラおよび/または前記電力コンバータに関連する第1のパラメータが第1の閾値を超えたことを前記コントローラによって判定することを含む(The method comprises determining, by the controller, that a first parameter related to the controller and/or the power converter exceeds a first threshold)。前記第1のパラメータが前記第1の閾値を超えると判定することに応答して以下のステップが実行される。前記コントローラによって、前記電力コンバータの出力電流を現在値および/または基準値に基づいて制限することにより、前記電力コンバータを第1の制限モードで制御するステップ(controlling, by the controller, the power converter in a first limiting mode, by limiting the power converter output current based on a present value and/or a reference value)。前記コントローラによって、前記電力コンバータの前記出力電流を決定するステップ(determining, by the controller, the output current of the power converter)。前記出力電流が平衡状態にある、または平衡状態に近いと決定することに応答して(Responsive to determining that the output current is at or is close to an equilibrium condition)以下のステップが実行される。前記コントローラによって、前記電力コンバータの前記出力電流に基づいて、前記電力コンバータの仮想インピーダンスを決定するステップ(determining, by the controller, a virtual impedance for the power converter based on the output current of the power converter)。前記コントローラによって、前記仮想インピーダンスに基づいて前記制御システムを修正するステップ(modifying, by the controller, the control system based on the virtual impedance)。前記コントローラによって、前記電力コンバータを第1の制約系統形成モードで制御し、前記修正された制御システムが、前記電力コンバータの下流の電流および/または電圧を示す測定信号と、基準信号とに基づいて前記制御データを決定するステップ(controlling, by the controller, the power converter in a first constrained grid-forming mode, comprising the modified control system determining the control data based on measured signals indicative of currents and/or voltages downstream from the power converter, and a reference signal)。
【0011】
前記出力電流が平衡状態にあること、または平衡状態に近いことを決定することは、前記出力電流が平衡状態の予め定義された閾値内にあることを決定することを含む場合がある(Determining that the output current is at or is close to an equilibrium condition may comprise determining that the output current is within a predefined threshold of an equilibrium condition)。前記事前に定義された閾値は、アプリケーションに依存する場合がある(The predefined threshold may be application dependant)。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記基準信号は、系統形成コントローラによって提供される電圧リファレンスを含む(In some embodiments, the reference signal contains a voltage reference provided by a grid-forming controller)。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記コントローラは、系統形成コントローラを含む(the controller comprises a grid-forming controller)。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記電力コンバータの前記出力電流を決定することは、前記出力電流を推定することを含む(determining the output current of the power converter comprises estimating the output current)。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記電力コンバータの前記出力電流を決定することは、前記出力電流を測定することを含む(determining the output current of the power converter comprises measuring the output current)。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記電力コンバータの前記出力電流を決定することは、前記出力電流の基準を使用することを含む(determining the output current of the power converter comprises using a reference for the output current)。
【0017】
いくつかの実施形態では、仮想インピーダンスは固定仮想インピーダンスまたは静的仮想インピーダンスである(the virtual impedance is a fixed or a static virtual impedance)。これは、前記仮想インピーダンスの前記決定された値が、前記制約系統形成モード中に変化しないことを意味する(This means that the determined value of the virtual impedance does not change during the constrained grid-forming mode)。
【0018】
いくつかの実施形態において、本方法は、前記コントローラおよび/または前記電力コンバータに関連する第2のパラメータが第2の閾値を超えたことを前記コントローラによって判定すること(determining, by the controller, that a second parameter related to the controller and/or the power converter exceeds a second threshold)をさらに含む。前記第2のパラメータが前記第2の閾値を超えると決定することに応答して以下のステップが実行される。前記コントローラによって、更新された現在値および/または更新された基準値に基づいて前記電力コンバータの前記出力電流を制限することによって、前記電力コンバータを第2の制限モードで制御するステップ(controlling, by the controller, the power converter in a second limiting mode, by limiting the power converter output current based on an updated present value and/or an updated reference value)。前記コントローラによって、前記電力コンバータの更新された出力電流を決定するステップ(determining, by the controller, an updated output current of the power converter)。前記更新された出力電流が平衡状態にある、または平衡状態に近いと決定することに応答して(Responsive to determining that the updated output current is at or is close to an equilibrium condition)以下のステップが実行される。前記コントローラによって、前記電力コンバータの更新された出力電流に基づいて、前記電力コンバータの更新された仮想インピーダンスを決定するステップ(determining, by the controller, an updated virtual impedance for the power converter based on the updated output current of the power converter)。前記コントローラによって、前記更新された仮想インピーダンスに基づいて前記制御システムをさらに修正するステップ(further modifying, by the controller, the control system based on the updated virtual impedance)。前記コントローラによって、前記電力コンバータを第2の制約系統形成モードで制御するステップであって、前記さらに修正された制御システムが、前記電力コンバータの下流の電流および/または電圧を示す測定信号と、前記基準信号とに基づいて制御データを決定するステップを含む、前記ステップ(controlling, by the controller, the power converter in a second constrained grid-forming mode, comprising the further modified control system determining the control data based on the measured signals indicative of currents and/or voltages downstream from the power converter, and the reference signal)。
【0019】
前記コントローラおよび/または前記電力コンバータに関連する第2のパラメータが第2の閾値を超えると判定し、その後、電力コンバータを第2の制約系統形成モードで制御することにより、閾値を超えるパラメータが前記電力コンバータをさらなる制約付きモードで制御する反復制御プロセスを確立することができる(By determining that a second parameter related to the controller and/or the power converter exceeds a second threshold, and subsequently controlling the power converter in a second constrained grid-forming mode, an iterative control process can be established wherein a parameter that exceeds a threshold causes the power converter to be controlled in a further constrained mode)。したがって、閾値を超えると判定されるパラメータの数に制限はなく、その後に制約系統形成モードの数にも制限はない(Accordingly, there is no limit to the number of parameters that may be determined to exceed a threshold, and subsequently there is no limit to the number of constrained grid-forming modes)。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記制御システムは、電圧コントローラと電流コントローラとを含むカスケード制御システムである(the control system is a cascaded control system including a voltage controller and a current controller)。前記電圧コントローラは、電圧制御システムを使用して、前記基準信号および前記測定信号に基づいて第1のデータを生成し、前記第1のデータを前記電流コントローラに出力する(The voltage controller uses a voltage control system to produce first data, based on the reference signal and the measured signals, and outputs the first data to the current controller)。前記電流コントローラは、電流制御システムを使用して、前記第1のデータと前記測定された信号に基づいて第2のデータを生成する(The current controller uses a current control system to produce second data, based on the first data and the measured signals)。前記コントローラは、前記第2のデータに基づいて制御データを決定する(The controller determines the control data based on the second data)。前記コントローラは、前記第1のデータを前記現在値および/または前記基準値と等しくなるように設定することによって、前記第1の制限モードで前記電力コンバータを制御し、それによって前記電力コンバータの出力電流を制限する(The controller controls the power converter in the first limiting mode by setting the first data to be equal to the present value and/or the reference value, thereby limiting the power converter output current)。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記第1のデータを前記現在値および/または基準値と等しくなるように設定することは、前記修正された制御システムが前記第1のデータの一部またはすべてを決定することを凍結、無効化、または許可しないことを含む(setting the first data to be equal to a present value and/or a reference value comprises freezing, disabling or not permitting the modified control system from determining some or all of the first data)。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記第1の制約系統形成モードで前記電力コンバータを制御することは、前記修正された制御システムが第1のデータの一部または全部を決定することを解除すること、可能にすること、または許可することを含む(controlling the power converter in the first constrained grid-forming mode comprises unfreezing, enabling, or permitting the modified control system from determining some or all of the first data)。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記制御システムはシングルループコントローラである(the control system is a single-loop controller)。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記制御システムは直接電圧コントローラである(the control system is a direct voltage controller)。前記コントローラは、リミットコントローラを含む(The controller comprises a limiting controller)。前記コントローラは、前記リミットコントローラが前記電力コンバータの前記出力電流が前記現在値および/または前記基準値を超えて増加することを制限することにより、前記第1の制限モードにおいて前記電力コンバータを制御し、それにより前記電力コンバータの前記出力電流を制限する(The controller controls the power converter in the first limiting mode by the limiting controller restricting the output current of the power converter from increasing past the present value and/or the reference value, thereby limiting the power converter output current)。
【0025】
いくつかの実施形態では、リミットコントローラは、制御データを修正、制御、および/または制限することによって、電力コンバータの出力電流が現在値または基準値を超えて増加しないように制限する(the limiting controller restricts the output current of the power converter from increasing past the present value or the reference value by modifying, controlling, and/or restricting the control data)。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記制御システムは仮想アドミタンスを含む(the control system includes a virtual admittance:仮想アドミタンス回路)。前記仮想アドミタンスは、従来のコントローラに取って代わることができる(The virtual admittance can replace a conventional controller)。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記電流コントローラは、前記電圧コントローラが前記第1のデータを生成するよりも比較的速く前記第2のデータを生成する(the current controller produces the second data relatively faster than the voltage controller produces the first data)。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記コントローラによって、前記電力コンバータのための前記仮想インピーダンスを決定することは、前記コントローラによって、前記電力コンバータの前記出力電流に基づいて、電力コンバータのための前記仮想インピーダンスおよび固定仮想電圧オフセットを決定することをさらに含み、前記コントローラによって、前記仮想インピーダンスに基づいて前記制御システムを修正することは、前記コントローラによって、前記仮想インピーダンスおよび前記固定仮想電圧オフセットに基づいて前記制御システムを修正することをさらに含む(the determining, by the controller, the virtual impedance for the power converter further comprises determining, by the controller, the virtual impedance and a fixed virtual voltage offset for the power converter based on the output current of the power converter; and the modifying, by the controller, the control system based on the virtual impedance further comprises modifying, by the controller, the control system based on the virtual impedance and the fixed virtual voltage offset)。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記仮想インピーダンスに基づいて前記制御システムを修正することは、前記コントローラによって、前記仮想インピーダンスおよび前記出力電流の関数として仮想電圧または仮想電流を計算することによって前記制御システムの調整タームを決定することと、前記コントローラによって、前記制御システムに前記調整タームを実装することとを含む(the modifying of the control system based on the virtual impedance comprises determining, by the controller, an adjustment term for the control system by calculating a virtual voltage or a virtual current as a function of the virtual impedance and the output current; and implementing, by the controller, the adjustment term into the control system)。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記調整タームの実装には、前記内部電圧フェーザ基準の修正が含まれる(the implementing of the adjustment term includes a modification of the internal voltage phasor reference)。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記コントローラは、前記電力コンバータが前記第1の制限モードにある間に、前記電力コンバータの内部電圧フェーザ基準と前記電力コンバータの出力とグリッドとの間のノードにおけるノード電圧との間の電圧差として定義される仮想電圧を計算することによって仮想インピーダンスを決定し(the controller determines the virtual impedance by calculating, whilst the power converter is in the first limiting mode, a virtual voltage defined as a voltage difference between an internal voltage phasor reference for the power converter and a node voltage at a node between an output of the power converter and the grid)、前記仮想電圧、平衡状態における前記電力コンバータの出力電流、および前記仮想インピーダンスを含む前記グリッドに接続された前記電力コンバータのテブナン等価回路に基づいて、回路解析方法を使用して仮想インピーダンスのテブナン等価回路を解析する(based on a Thevenin equivalent circuit of the power converter connected to the grid, including the virtual voltage, the output current of the power converter in the equilibrium condition, and the virtual impedance, using circuit analysis methods to resolve the Thevenin equivalent circuit for the virtual impedance)
【0032】
いくつかの実施形態では、前記コントローラは、前記電力コンバータが前記第1の制限モードにある間に、新しい内部電圧フェーザ基準、および前記電力コンバータの前記新しい内部電圧フェーザ基準と前記電力コンバータの出力と前記グリッドとの間のノードにおけるノード電圧との間の電圧差として定義される仮想電圧を計算し、前記仮想インピーダンスおよび前記新しい内部電圧フェーザ基準を解くための解析的方法を使用することによって、前記仮想インピーダンスを決定する(the controller determines the virtual impedance by calculating, whilst the power converter is in the first limiting mode, a new internal voltage phasor reference and a virtual voltage defined as a voltage difference between the new internal voltage phasor reference for the power converter and a node voltage at a node between an output of the power converter and the grid, and using analytical methods to solve for the virtual impedance and new internal voltage phasor reference)。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記コントローラは、前記電力コンバータが前記第1の制限モードにある間に、前記電力コンバータの内部電圧フェーザ基準と、前記電力コンバータの出力と前記グリッドとの間のノードにおけるノード電圧との間の電圧差として定義される仮想電圧を計算することによって、前記仮想インピーダンスおよび前記固定仮想電圧オフセットを決定し(the controller determines the virtual impedance and the fixed virtual voltage offset by calculating, whilst the power converter is in the first limiting mode, a virtual voltage defined as a voltage difference between an internal voltage phasor reference for the power converter and a node voltage at a node between an output of the power converter and the grid)、前記仮想電圧、平衡状態における前記電力コンバータの前記出力電流、および前記仮想インピーダンスを含む、前記グリッドに接続された前記電力コンバータのテブナン等価回路に基づいて、前記仮想インピーダンスのテブナン等価回路を解決する回路解析法を使用する(based on a Thevenin equivalent circuit of the power converter connected to the grid, including the virtual voltage, the output current of the power converter in the equilibrium condition, and the virtual impedance, using circuit analysis methods to resolve the Thevenin equivalent circuit for the virtual impedance)
【0034】
いくつかの実施形態において、本方法は、前記電力コンバータの内部電圧フェーザ基準(新しいまたは元の)と前記ノードの前記ノード電圧との間の電圧差が減少する結果として、前記コントローラによって前記仮想インピーダンスを減少させ、それによって前記電力コンバータを前記初期系統形成モードで制御することを含む(the method further comprises reducing, by the controller, the virtual impedance, as a result of the voltage difference between (new or original) the internal voltage phasor reference for the power converter and the node voltage at the node reducing in magnitude, and thereby returning to control the power converter in the initial grid-forming mode)。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記コントローラおよび/または前記電力コンバータに関連する前記第1のパラメータが前記第1の閾値を超えたと決定してから、前記コントローラが前記電力コンバータ(204)を前記第1の制限モードで制御するステップを完了するまでの時間は、50ms以下である(a time period from determining that the first parameter related to the controller and/or the power converter exceeds the first threshold, to the controller completing the step of controlling the power converter (204) in the first liming mode, is less than or equal to 50 ms)。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記コントローラおよび/または前記電力コンバータに関連する前記第1のパラメータが前記第1の閾値を超えると決定することは、以下のうちの1つ以上を含む:(the determining that the first parameter related to the controller and/or power converter exceeds the first threshold comprises one or more of:)指令角度またはPLL(Phase Locked Loop:位相同期ループ)角度を使用するdqフレーム電流調整器の電流基準が飽和したと判定すること(determining that a current reference of a dq-frame current regulator using commanded angle or Phase Locked Loop, PLL, angle has saturated)、および/または電流コントローラのPI(Proportional Integral:比例積分)制御器に入力されるdまたはq電流基準が飽和したと判定すること(determining that a d or q current reference inputted into a Proportional Integral, PI, controller in a current controller has saturated)、および/または電流コントローラのPR(Proportional Resonant:比例共振)制御器に、逆基準フレーム変換に続いて入力されるdまたはq電流基準が飽和したと判定すること(determining that a d or q current reference to be inputted, following an inverse reference frame transformation, into a Proportional Resonant, PR, controller in a current controller has saturated)、および/または、逆基準フレーム変換に続いて、電流コントローラのデッドビートコントローラに入力されるdまたはq電流基準が飽和したことを判定すること(determining that a d or q current reference to be inputted, following an inverse reference frame transformation, into a deadbeat controller in a current controller has saturated)、および/または、フェーザ電流制限に達したことを判定すること(determining that a phasor current limit has been reached)、および/または、有効電力制限に達したことを判定すること(determining that an active power limit has been reached)、および/または、エネルギー制限に達したことを判定すること(determining that an energy limit has been reached)、および/または、成分がパルス低下またはブロッキングしていることを判定すること(determining that a component is pulse dropping or blocking)、および/または、電圧リファレンスが飽和したことを判定すること(determining that a voltage reference has saturated)、および/または、電圧出力が制限に達したことを判定すること(determining that a voltage output has reached a limit)、および/または、変調指数が飽和したことを判定すること(determining that a modulation index has saturated)。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記コントローラおよび/または前記電力コンバータに関連する前記第2のパラメータが前記第2の閾値を超えると判定することは、以下のうちの1つ以上を含む:(the determining that the second parameter related to the controller and/or power converter exceeds the second threshold comprises one or more of:)指令角度またはPLL(Phase Locked Loop:位相同期ループ)角度を使用するdqフレーム電流レギュレータの電流基準が飽和したと判定すること(determining that a current reference of a dq-frame current regulator using commanded angle or Phase Locked Loop, PLL, angle has saturated)、および/または電流コントローラのPI(Proportional Integral:比例積分)コントローラに入力されるdまたはq電流基準が飽和したと判定すること(determining that a d or q current reference inputted into a Proportional Integral, PI, controller in a current controller has saturated)、および/または電流コントローラのPR(Proportional Resonant:比例共振)コントローラに、逆基準フレーム変換に続いて入力されるdまたはq電流基準が飽和したと判定すること(determining that a d or q current reference to be inputted, following an inverse reference frame transformation, into a Proportional Resonant, PR, controller in a current controller has saturated);および/または、逆基準フレーム変換に続いて、電流コントローラのデッドビートコントローラに入力されるdまたはq電流基準が飽和したことを判定すること(determining that a d or q current reference to be inputted, following an inverse reference frame transformation, into a deadbeat controller in a current controller has saturated)、および/または、フェーザ電流制限に達したことを判定すること(determining that a phasor current limit has been reached)、および/または、有効電力制限に達したことを判定すること(determining that an active power limit has been reached)、および/または、エネルギー制限に達したことを判定すること(determining that an energy limit has been reached)、および/または、成分がパルス低下またはブロッキングしていることを判定すること(determining that a component is pulse dropping or blocking)、および/または、電圧リファレンスが飽和したことを判定すること(determining that a voltage reference has saturated)、および/または、電圧出力が制限に達したことを判定すること(determining that a voltage output has reached a limit)、および/または、変調指数が飽和したことを判定すること(determining that a modulation index has saturated)。
【0038】
第2の態様によれば、グリッドに接続された電力コンバータを制御するためのコントローラ(a controller for controlling a power converter connected to a grid)が提供され、このコントローラは、電力コンバータの下流の電流および/または電圧を示す測定信号に基づいて制御データを決定するように構成された制御システムと、基準信号と、を含む(the controller comprising: a control system arranged to determine control data based on measured signals indicative of currents and/or voltages downstream from the power converter, and a reference signal)。前記コントローラは、前記制御データに基づいて、公称電圧で電流を出力するように電力コンバータを系統形成モードで制御するように準備される(The controller is arranged to control the power converter in a grid-forming mode to output current at a nominal voltage, based on the control data)。前記コントローラは、前記コントローラおよび/または前記電力コンバータに関連する第1のパラメータが第1の閾値を超えたことを判定するように構成される(The controller is configured to determine that a first parameter related to the controller and/or the power converter exceeds a first threshold)。前記第1のパラメータが前記第1の閾値を超えたと判定することに応答して:前記電力コンバータを第1の制限モードで制御し、前記コントローラは、現在値および/または基準値に基づいて前記電力コンバータの出力電流を制限するように構成され、前記電力コンバータの出力電流を決定する(Responsive to determining that the first parameter exceeds the first threshold: control the power converter in a first limiting mode, wherein the controller is configured to limit the power converter output current based on a present value and/or a reference value; and determine the output current of the power converter)。前記出力電流が平衡状態にある、または平衡状態に近いと決定することに応答して、前記コントローラは、前記電力コンバータの前記出力電流に基づいて前記電力コンバータの仮想インピーダンスを決定するように構成され;前記仮想インピーダンスに基づいて前記制御システムを修正するように構成され;第1の制約系統形成モードで前記電力コンバータを制御するように構成され、前記修正された制御システムは、前記電力コンバータの下流の電流および/または電圧の測定信号と、基準信号とに基づいて前記制御データを決定するように構成される(Responsive to determining that the output current is at or is close to an equilibrium condition, the controller is configured to determine a virtual impedance for the power converter based on the output current of the power converter; modify the control system based on the virtual impedance; and control the power converter in a first constrained grid-forming mode, wherein the modified control system is configured to determine the control data based on measured signals of currents and/or voltages downstream from the power converter, and a reference signal)。
【0039】
一般的に、前記コントローラは、本明細書で説明する方法を実行するように構成される傾向がある(the controller tends to be configured to execute the methods described herein)。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記電力コンバータの前記出力電流を決定することは、前記出力電流を推定することを含む(determining the output current of the power converter comprises estimating the output current)。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記電力コンバータの前記出力電流を決定することは、前記出力電流を測定することを含む(determining the output current of the power converter comprises measuring the output current)。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記電力コンバータの前記出力電流を決定することは、前記出力電流の基準を使用することを含む(determining the output current of the power converter comprises using a reference for the output current)。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記仮想インピーダンスは固定仮想インピーダンスまたは静的仮想インピーダンスである(the virtual impedance is a fixed or a static virtual impedance)。これは、前記仮想インピーダンスの値が1つだけ決定され、決定された仮想インピーダンスの値が、制約系統形成モード中に変化しないことを意味する(This means that only one value for the virtual impedance is determined, and the determined value of the virtual impedance does not change during the constrained grid-forming mode)。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記第1のデータを現在値または基準値と等しくなるように設定することは、前記修正された制御システムが前記制御データの一部またはすべてを決定することを凍結、無効化、または許可しないことを含む(setting the first data to be equal to a present value or a reference value comprises freezing, disabling or not permitting the modified control system from determining some or all of the control data)。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記第1の制約系統形成モードで前記電力コンバータを制御することは、前記修正された制御システムが前記第1のデータの一部または全部を決定することを解禁すること、可能にすること、または許可することを含む(controlling the power converter in the first constrained grid-forming mode comprises unfreezing, enabling, or permitting the modified control system from determining some or all of the first data)。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記コントローラは、前記コントローラおよび/または前記電力コンバータに関連する第2のパラメータが第2の閾値を超えたことを判定するようにさらに構成され(the controller is further configured to determine that a second parameter related to the controller and/or the power converter exceeds a second threshold)、前記第2のパラメータが前記第2の閾値を超えたことを判定することに応答して:電力コンバータを第2の制限モードで制御し(control the power converter in a second limiting mode)、前記コントローラは、更新された現在値および/または更新された基準値に基づいて前記電力コンバータの前記出力電流を制限するように構成され(the controller is configured to limit the power converter output current based on an updated present value and/or an updated reference value)、前記電力コンバータの更新された出力電流を特定し(determine an updated output current of the power converter)、前記更新された出力電流が平衡状態にあるか、または平衡状態に近いことを特定することに応答して(responsive to determining that the updated output current is at or is close to an equilibrium condition)、前記電力コンバータの前記更新された出力電流に基づいて、前記電力コンバータの更新された仮想インピーダンスを決定し(determine an updated virtual impedance for the power converter based on the updated output current of the power converter)、前記更新された仮想インピーダンスに基づいて、前記制御システムをさらに修正し(further modify the control system based on the updated virtual impedance)、前記電力コンバータを第2の制約系統形成モードで制御し(control the power converter in a second constrained grid-forming mode)、前記さらに修正された制御システムは、前記測定された信号および前記基準信号に基づいて前記制御データを決定する(the further modified control system is configured to determine the control data based on the measured signals and the reference signal)ように構成される。
【0047】
前記コントローラおよび/または前記電力コンバータに関連する第2のパラメータが第2の閾値を超えると判定し、その後、前記電力コンバータを第2の制約系統形成モードで制御することにより、閾値を超えるパラメータが電力コンバータをさらなる制約付きモードで制御する反復制御プロセスを確立することができる(By determining that a second parameter related to the controller and/or the power converter exceeds a second threshold, and subsequently controlling the power converter in a second constrained grid-forming mode, an iterative control process can be established wherein a parameter that exceeds a threshold causes the power converter to be controlled in a further constrained mode)。従って、閾値を超えると判定されるパラメータの数に制限はなく、その後に制約系統形成モードの数にも制限はない(Accordingly, there is no limit to the number of parameters that may be determined to exceed a threshold, and subsequently there is no limit to the number of constrained grid-forming modes)。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記制御システムは、電圧コントローラおよび電流コントローラを含むカスケード制御システムである(the control system is a cascaded control system including a voltage controller and a current controller)。前記電圧コントローラは、電圧制御システムを使用して、前記基準信号および前記測定信号に基づいて第1のデータを生成し、前記第1のデータを前記電流コントローラに出力するように構成される(The voltage controller is configured to use a voltage control system to produce first data, based on the reference signal and the measured signals, and output the first data to the current controller)。前記電流コントローラは、電流制御システムを使用して、前記第1のデータと前記測定信号に基づいて第2のデータを生成するように構成される(The current controller is configured to use a current control system to produce second data, based on the first data and the measured signals)。前記コントローラは、前記第2のデータに基づいて前記制御データを決定するように構成される(The controller is configured to determine the control data based on the second data)。前記コントローラはさらに、前記第1のデータを現在値または基準値と等しくなるように設定することにより、前記第1の制限モードで前記電力コンバータを制御し、それにより前記電力コンバータの前記出力電流を制限するように構成される(The controller is further configured to control the power converter in the first limiting mode by setting the first data to be equal to the present value or the reference value, thereby limiting the power converter output current)。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記制御システムはシングルループである(the control system is a single-loop)。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記制御システムは直接電圧コントローラである(the control system is a direct voltage controller)。前記コントローラは、リミットコントローラを含む(The controller comprises a limiting controller)。前記コントローラは、前記リミットコントローラが、前記電力コンバータの前記出力電流が現在値および/または基準値を超えて増加しないように制限し、それによって前記電力コンバータの前記出力電流を制限するように構成されることによって、前記第1の制限モードで前記電力コンバータを制御するように構成される(The controller is configured to control the power converter in the first limiting mode by the limiting controller being configured to restrict the output current of the power converter from increasing past the present value and/or the reference value, thereby limiting the power converter output current)。
【0051】
いくつかの実施形態では、制御システムは仮想アドミタンスを含む(the control system includes a virtual admittance)。前記仮想アドミタンスは、従来のコントローラに取って代わることができる(The virtual admittance can replace a conventional controller)。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記電流コントローラは、前記電圧コントローラが前記第1のデータを生成するよりも比較的速く前記第2のデータを生成する(the current controller produces the second data relatively faster than the voltage controller produces the first data)。
いくつかの実施形態では、。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記仮想インピーダンスに基づいて前記制御システムを修正するように構成される前記コントローラは、前記仮想インピーダンスおよび前記出力電流の関数として仮想電圧または仮想電流を計算することによって前記制御システムの調整タームを決定し(the controller being configured to modify the control system based on the virtual impedance comprises the controller being configured to determine an adjustment term for the control system by calculating a virtual voltage or a virtual current as a function of the virtual impedance and the output current)、調整タームを制御システムに実装する(implement the adjustment term into the control system)ように構成される。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記コントローラは、前記内部電圧フェーザ基準を修正することによって前記調整タームを実施するように配置される(the controller is arranged to implement the adjustment term by modifying the internal voltage phasor reference)。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記コントローラは、前記電力コンバータが前記第1の制限モードにある間に、前記電力コンバータの内部電圧フェーザ基準と前記電力コンバータの前記出力とグリッドとの間のノードにおけるノード電圧との間の電圧差として定義される仮想電圧を計算することによって前記仮想インピーダンスを決定するように構成され、そして、仮想電圧、平衡状態における前記電力コンバータの出力電流、および前記仮想インピーダンスを含むグリッドに接続された前記電力コンバータのテブナン等価回路に基づいて、回路解析方法を使用して前記仮想インピーダンスの前記テブナン等価回路を解析する(the controller is configured to determine the virtual impedance by calculating, whilst the power converter is in the first limiting mode, a virtual voltage defined as a voltage difference between an internal voltage phasor reference for the power converter and a node voltage at a node between an output of the power converter and the grid; and based on a Thevenin equivalent circuit of the power converter connected to the grid, including the virtual voltage, the output current of the power converter in the equilibrium condition, and the virtual impedance, using circuit analysis methods to resolve the Thevenin equivalent circuit for the virtual impedance)。
【0056】
いくつかの実施形態では、前記コントローラは、前記電力コンバータの内部電圧フェーザ基準とノードのノード電圧との間の電圧差の大きさが減少する結果、前記仮想インピーダンスを減少させ、それによって前記電力コンバータを初期系統形成モードで制御するように戻すようにさらに構成される(the controller is further configured to reduce the virtual impedance, as a result of the voltage difference between the internal voltage phasor reference for the power converter and the node voltage at the node reducing in magnitude, and thereby return to control the power converter in the initial grid-forming mode)。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記コントローラおよび/または前記電力コンバータに関連する第1のパラメータが第1の閾値を超えたと決定してから、前記コントローラが前記電力コンバータ(204)を前記第1の制限モードで制御するステップを完了するまでの時間は、50ms以下である(a time period from determining that the first parameter related to the controller and/or the power converter exceeds the first threshold, to the controller completing the step of controlling the power converter (204) in the first liming mode, is less than or equal to 50 ms)。
【0058】
いくつかの実施形態では、前記コントローラおよび/または前記電力コンバータに関連する前記第1のパラメータが前記第1の閾値を超えると判定するように構成されているコントローラは、以下のうちの1つ以上を含む(the controller being configured to determine that the first parameter related to the controller and/or power converter exceeds the first threshold comprises one or more of)。指令角度またはPLL(Phase Locked Loop)角度を使用するdqフレーム電流レギュレータの電流基準が飽和したと判定すること(determining that a current reference of a dq-frame current regulator using commanded angle or Phase Locked Loop, PLL, angle has saturated)、および/または電流コントローラ内のPI(Proportional Integral)コントローラに入力されるdまたはq電流基準が飽和したと判定すること(and/or determining that a d or q current reference inputted into a Proportional Integral, PI, controller in a current controller has saturated)、および/または電流コントローラ内のPR(Proportional Resonant)コントローラに、逆基準フレーム変換に続いて入力されるdまたはq電流基準が飽和したと判定すること(and/or determining that a d or q current reference to be inputted, following an inverse reference frame transformation, into a Proportional Resonant, PR, controller in a current controller has saturated);および/または、逆基準フレーム変換に従って、電流コントローラ内のデッドビートコントローラに入力されるdまたはq電流基準が飽和したことを特定すること(and/or determining that a d or q current reference to be inputted, following an inverse reference frame transformation, into a deadbeat controller in a current controller has saturated)、および/または、フェーザ電流制限に達したことを特定すること(and/or determining that a phasor current limit has been reached)、および/または、有効電力制限に達したことを判定すること(and/or determining that an active power limit has been reached)、および/または、エネルギー制限に達したことを判定すること(and/or determining that an energy limit has been reached)、および/または、成分がパルス低下またはブロッキングしていることを判定すること(and/or determining that a component is pulse dropping or blocking)、および/または、電圧リファレンスが飽和したことを判定すること(and/or determining that a voltage reference has saturated)、および/または、電圧出力が制限に達したことを判定すること(and/or determining that a voltage output has reached a limit)、および/または、変調指数が飽和したことを判定すること(and/or determining that a modulation index has saturated)。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記コントローラは、前記コントローラおよび/または前記電力コンバータに関連する前記第2のパラメータが前記第2の閾値を超えたと判定するように構成され、以下のうちの1つ以上を含む。指令角度またはPLL(Phase Locked Loop)角度を使用するdqフレーム電流レギュレータの電流基準が飽和したと判定すること、および/または電流コントローラ内のPI(Proportional Integral)コントローラに入力されるdまたはq電流基準が飽和したと判定すること、および/または電流コントローラ内のPR(Proportional Resonant)コントローラに、逆基準フレーム変換に続いて入力されるdまたはq電流基準が飽和したと判定すること;および/または、逆基準フレーム変換に従って、電流コントローラ内のデッドビートコントローラに入力されるdまたはq電流基準が飽和したことを判定すること、および/または、フェーザ電流制限に達したことを判定すること、および/または、有効電力制限に達したことを判定すること、および/または、エネルギー制限に達したことを判定すること、および/または、成分がパルス低下またはブロッキングしていることを判定すること、および/または、電圧リファレンスが飽和したことを判定すること、および/または、電圧出力が制限に達したことを判定すること、および/または、変調指数が飽和したことを判定すること(the controller being configured to determine that the second parameter related to the controller and/or power converter exceeds the second threshold comprises one or more of: determining that a current reference of a dq-frame current regulator using commanded angle or Phase Locked Loop, PLL, angle has saturated; and/or determining that a d or q current reference inputted into a Proportional Integral, PI, controller in a current controller has saturated; and/or determining that a d or q current reference to be inputted, following an inverse reference frame transformation, into a Proportional Resonant, PR, controller in a current controller has saturated; and/or determining that a d or q current reference to be inputted, following an inverse reference frame transformation, into a deadbeat controller in a current controller has saturated; and/or determining that a phasor current limit has been reached; and/or determining that an active power limit has been reached; and/or determining that an energy limit has been reached; and/or determining that a component is pulse dropping or blocking; and/or determining that a voltage reference has saturated; and/or determining that a voltage output has reached a limit; and/or determining that a modulation index has saturated)。
【0060】
第3の態様によれば、直流電源に接続するための直流側(a DC side for connection to a DC source)と、グリッドに接続するための交流側と(an AC side for connection to a grid)、第2の態様のコントローラ(the controller of the second aspect)とを備える電力コンバータが提供される。
【0061】
第4の態様によれば、電力コンバータを制御するためのコントローラのプロセッサによって実行されると、コントローラに第1の態様の方法を実行させる命令(instructions which when executed by a processor of a controller for controlling a power converter, cause the controller to perform the method of the first aspect)を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0062】
第5の態様によれば、第4の態様のコンピュータプログラムを含む非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(a non-transitory computer-readable storage medium comprising the computer program of the fourth aspect)が提供される。
【0063】
本発明の異なる態様の特定の特徴は、本発明の他の態様の対応する特徴の技術的効果および利点を共有することが理解されよう。より具体的には、コントローラ、電力コンバータ、コンピュータプログラム、および非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体は、本発明の方法の技術的効果および利点を共有する。
【0064】
また、「第1」および「第2」などの用語の使用は、単に類似の特徴を区別するためのものであり、特に指定がない限り、ある特徴の他の特徴に対する相対的な重要性を示すことを意図したものではないことが理解されよう。
【0065】
本出願の範囲内において、先の段落、特許請求の範囲及び/又は以下の説明及び図面に記載された様々な態様、実施形態、例及び代替案、特にその個々の特徴は、独立して又は任意の組み合わせで取り得ることが明示的に意図されている。すなわち、すべての実施形態および任意の実施形態のすべての特徴は、そのような特徴が両立しない場合を除き、任意の方法および/または組み合わせで組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】直流電源、電力コンバータ、およびグリッドを含む電力システムの概略図(縮尺なし:not to scale)である。
図2A】電力コンバータおよび電力系統のコントローラの概略図(縮尺なし)である。
図2B】電力コンバータおよび電力系統のコントローラを示す概略図(縮尺なし)である。
図3】通常時の電力系統の電気回路と簡略化した電気回路を示す概略図(縮尺なし)である。
図4】本開示の実施形態に従って電力コンバータを制御するために使用される方法の概略図(縮尺なし)である。
図5】グリッド事象発生時の電力系統の電気回路を示す概略図(縮尺なし)である。
図6】グリッド事象中の電力系統の仮想インピーダンスを含むテブナン等価回路の概略図(縮尺なし)である。
図7】第1の拘束系統形成モード中の位相を示すフェーザ図の概略図(縮尺なし)である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1は、直流電源202とグリッド232との間に接続された電力コンバータ204を含む電力システム100の概略図(縮尺なし)である。グリッド232は、交流グリッド232であってもよい。この図は、特定の電力システム、または接続、または相互接続を表すことに限定されることを意図しておらず、さらに、本発明を理解するのに有用な電力システムの動作原理を示す一般的な例として提供される。したがって、図中の特定の特徴は、特定の接続数で互いに接続されて示されているが、これも限定することを意図したものではなく、特徴/構成要素間の一般的な接続を説明するためのものであることが理解されよう。関連して、図解で認識される構成要素間の相対的な寸法または距離も、限定することを意図していない。したがって、電力システム100および本明細書で説明する原理および特徴は、図2Aに示すコントローラ200を構成する相互接続、またはコントローラ200を使用して動作する電力コンバータまたはネットワークに適用できることが理解されよう。
【0068】
電力システム100は、第1のインバータベースのリソース204(電力コンバータとしても知られる)から構成される。電力コンバータ204は、直流電力を交流電力に変換するように構成され、実質的にインバータとして機能する。電力コンバータ204はまた、交流電力を直流電力に変換するように構成され、本質的に整流器として機能する。電力コンバータ204は、電気的に近接し、グリッド事象または制御基準に関して首尾一貫した態様で動作する複数の電力コンバータのクラスタを表すことができる。電力コンバータ204は、単極システムの場合には単一のコンバータで構成され、双極システム(bipole system)の場合には2つのコンバータを含む。電力コンバータ204は、多端子電力伝送システムとして配置された複数の変換器ステーションを意味(represent:表す、象徴する、代表する)してもよい。この例では、電力コンバータ204は、直流側204aと交流側204bとを含む。
【0069】
電力コンバータ204は、第1のライン206を介して直流電源202に接続されている。直流電源202は、第2のライン208を介して電力コンバータ202の直流側204aに接続されている。第1および第2のライン206、208は例示であり、特定のタイプの接続またはケーブルを表すものではない。
【0070】
電力コンバータ204は、グリッド232に接続されている。グリッド232は、電力コンバータ204の交流側204bに接続されている。
【0071】
直流電源202および/またはグリッド232は、発電装置、送電装置、配電装置、および電気負荷(power generation apparatus, transmission apparatus, distribution apparatus, and electrical loads)を含む電力伝送システムであってもよい。直流電源202は、風力発電リソース、太陽光発電リソース、バッテリ発電リソース、スーパーキャパシタ発電リソース、バイオ発電リソース(wind-power generation resource, solar-power generation resource, battery generation resource, supercapacitor generation resource, bio-power generation resource)などの再生可能発電リソースを含んでもよい。直流電源202は、代替的に、そのような資源のネットワークから構成されてもよい。グリッド232は、コンシューマネットワークであってもよい。非限定的な例として、DCソース202は発電ネットワークであってもよく、グリッド232はコンシューマネットワークであってもよい。DCソース202および/またはグリッド232は、任意のサイズであることができ、運用要因によって、変化する電気特性を有することができる。
【0072】
電力システム100の動作は、一般的に以下のように説明できる。直流電源202は、直流側204aで電力コンバータ204に直流電力を供給する。電力コンバータ204は、受け取った直流電力をグリッド232用の交流電力に変換する。交流電力は、例えば、消費のために交流側204bからグリッド232に伝送される。特定の例では、電力コンバータ204は、オフショア風力発電所内に存在してもよいし、オンショアに存在してもよい。
【0073】
直流電源202が蓄電装置または高電圧直流(HVDC:High Voltage Direct Current)送電線である場合、グリッド232から直流電源202に電力を流すことができる。この場合、グリッド232は交流側204bの電力コンバータ204に交流電力を供給する。電力コンバータ204は、受け取った交流電力を電源202用の直流電力に反転する。直流電力は、直流側204aから電源202に伝送される。
【0074】
様々な追加の電気コンポーネントが、例示的な電力システム100の任意の特定の位置に、または任意の特定の機能/部品とともに配置され得ることが理解されよう。これらには、スイッチ、変圧器、抵抗器、リアクトル、サージアレスタ、二重給電誘導発電機、高調波フィルタ(switches, transformers, resistors, reactors, surge arrestors, doubly-fed induction generators, harmonic filters)、および当該技術分野において周知の他の構成要素が含まれ得る。これらの追加の電気コンポーネントは、電力システム100の第1および/または第2のライン206、208と直列であっても並列であってもよい。例えば、第2のライン208は、交流側204bの極と変圧器の巻線の第1のセットとの間に接続された第1のケーブル、変圧器、および変圧器の巻線の第2のセットとグリッド232との間に接続された第2のケーブルを含む、3つの追加の電気構成要素から構成されてもよい。別の実施例では、交流側204bは、二重給電誘導機の第1の巻線セットに接続され、グリッド232は、二重給電誘導機の第2の巻線セットに接続されてもよい。
【0075】
コンバータまたは電力変換手段は、(例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:insulated gate bipolar transistor)バルブを使用する)電圧源コンバータなど、多くの異なる技術で構成されることが理解されよう。このようなコンバータは、一般に「パワーエレクトロニクス」を使用していると考えられる。パワーエレクトロニクスコンバータは、例えばマルチレベル電圧ソースコンバータを含む。
【0076】
送電媒体として使用されるケーブルは、架橋ポリエチレン(XLPE:crosslinked polyethylene)および/または質量含浸(MI:mass impregnated)絶縁ケーブルの以下の非限定的な例を含み得ることが理解されるであろう。このようなケーブルは、絶縁層で囲まれた導体(銅またはアルミニウムなど)を含むことがある。ケーブルとその関連層の寸法は、特定の用途(特に動作電圧要件)に応じて変えることができる。ケーブルは、海底敷設などの用途では、強化または「装甲:armouring」をさらに含むことがある。ケーブルはさらに、1箇所以上で接地されるシース/スクリーンを含むことがある。
【0077】
さらに、電力システム100は、三相電力システムと共に使用することができることが理解されよう。三相電力システムでは、3つの導体が、それぞれの第1相、第2相および第3相の交流電力を消費者に供給する。第1相、第2相および第3相のそれぞれは、通常、等しい大きさの電圧または電流を有し、これらの電圧または電流は、互いに120°だけ位相がずれている。
【0078】
三相電力システムでは、相電流と相電圧は3つの単相成分(正相成分、負相成分、零相成分:a positive sequence component; a negative sequence component; and a zero-sequence component)で表すことができる。電力系統に従って同位相で回転するのは正相成分である。したがって、理想的なシナリオでは、正シーケンスの電圧/電流のみが存在することになる。三相システムの第1相、第2相、第3相間の電圧または電流の大きさまたは位相角のアンバランスは、負シーケンス成分またはゼロシーケンス成分(negative or zero-sequence components)を生じさせる可能性があることを理解されたい。このような不平衡は、例えばグリッド232における故障またはグリッド条件の変化(本明細書ではグリッド事象と呼ぶ)によって引き起こされる可能性がある。
【0079】
図2Aは、図1に示す電力コンバータ204を系統形成(GFM:grid-forming)モードで動作するように制御するために、本明細書に記載の方法を実施する際に使用され得るコントローラ200の一実施形態を示す概略図である。
【0080】
図2Aに示すように、電力システム100は、直流電源202、電力コンバータ204、グリッド232、およびコントローラ200を含む。コントローラ200は電力コンバータ204に接続されている。直流電源202、電力コンバータ204、グリッド232、およびコントローラ200を含む電力システム100の別の例を図2Bに示す。
【0081】
コントローラ200は、基準信号212と測定信号222、224を受信する。コントローラ200は、電力コンバータ204に制御データ230を出力する。
【0082】
制御データ230は、電力コンバータ204の極において所望の交流電圧波形(少なくとも部分的には、基本周波数電圧の大きさと位相角を含む)を迅速に(例えば、10msよりはるかに短い時間で)得るように電力コンバータ204内の半導体デバイスをスイッチングするために使用され得るゲートパルスのパターンを含んでもよく、さらに、ゲートパルスは、電力コンバータ204の極または電力コンバータ204の極に近接した位置のいずれかにおいて特定の基準信号212を達成するために使用されてもよい。
【0083】
基準信号212は、電圧マグニチュード基準および位相角基準(a voltage magnitude reference and a phase angle reference)を含む内部電圧フェーザ基準(internal voltage phasor reference)であってもよい。基準信号212は、コントローラ200の外部にあってもよい系統形成コントローラ(図示せず)によってコントローラ200に供給される。基準信号212の電圧マグニチュード基準および位相角基準は、測定信号222、224に基づいて、系統形成コントローラの制御目的に従って、時間と共に変化することがある。
【0084】
系統形成コントローラは、系統形成制御アルゴリズムを使用して基準信号212を生成することができる。系統形成制御アルゴリズムは、仮想同期機ベースの系統形成アルゴリズム(「慣性電力調整器:inertial power regulator」とも呼ばれる)、垂下制御ベースの系統形成アルゴリズム、仮想発振器制御(VOC)ベースの系統形成アルゴリズム、アイソクロナス(固定周波数)系統形成制御アルゴリズム(a virtual synchronous machine-based grid-forming algorithm (also known as an ‘inertial power regulator’), a droop-control-based grid-forming algorithm, a virtual oscillator control (VOC) based grid-forming algorithm, an isochronous (fixed-frequency) grid-forming control algorithm)、または上記の任意のバリエーションのいずれか1つで構成されてもよい。系統形成アルゴリズムの種類に関係なく、系統形成アルゴリズムは一般的に、通常の動作条件下では位相角基準を変化させ、他の系統形成電力コンバータとの自律同期を達成し、場合によっては所望の有効電力出力も達成する。
【0085】
系統形成制御アルゴリズムにより、系統形成コントローラは、局所的な電圧および電流の測定値のみを使用して、前述の異議を自律的に達成することができる。系統形成制御アルゴリズムはまた、「Qコントローラ:Q controller」としても知られる無効電力調整コンポーネントを含むことができ、出力される無効電力および/または近傍の調整点におけるローカル電圧の大きさを所望の設定点に調整する。系統形成アルゴリズムに対する基準セットポイントは、固定された有効電力および無効電力基準信号で構成される場合もあれば、別の外部コントローラまたはリモートグリッドオペレータによって提供される時間変動する場合もある。グリッド232が比較的「硬い:stiff」グリッドまたはバルク電力システムを示す条件下では、系統形成アルゴリズムは、典型的には、少なくとも100msから約数秒の典型的なセトリング時間(typical settling time)で、ゼロ定常状態エラー(zero steady-state error)で目的を達成する(すなわち、有効電力および無効電力の参照を達成する:achieve active and reactive power references)。
【0086】
アイランド状態(islanded condition、グリッド232が他の系統形成または同期発電電力コンバータを含まない場合があり、任意の量の総負荷(場合によってはゼロ総負荷を含む)を含む場合がある)のような特定の状況下では、発電と負荷の間の電力バランスの要件は、有効電力および/または無効電力設定値を遵守する要件よりも高い優先順位が与えられる場合が多く、系統形成制御アルゴリズムは、定常状態においてその有効電力および/または無効電力基準を正確に達成しないと予想される場合がある。この場合、系統形成リソース、例えば電力コンバータ204は、アイランドネットワークに存在する可能性のある他の系統形成リソース、例えば他の電力コンバータと同期し続け(安定した定常状態の平衡に落ち着き)、さらに、アイランド内に存在する負荷を満たすために、系統形成リソース、例えば電力コンバータ204に提供される有効電力および無効電力基準を達成しない可能性のある方法で有効電力および/または無効電力を提供または吸収することが期待される可能性がある。
【0087】
系統形成アルゴリズムによって生成され、基準信号212に含まれる電圧マグニチュード基準および位相角基準は、後に詳述するように、制御データ230を決定するためにコントローラ200によって使用される。通常の動作条件下では、コントローラ200内で採用される電圧制御方法のタイプに応じて、制御データ230は、一般に、過渡的にも定常状態においても、基準信号212に含まれる基本周波数電圧の大きさおよび位相角成分とは異なる、コンバータの極におけるAC電圧波形(基本周波数電圧の大きさおよび位相角から少なくとも部分的に構成される)を生成するために、コントローラ200によって生成される場合がある。
【0088】
測定信号222、224は、電力コンバータ204の下流の電流222および/または電圧224を示している。
【0089】
コントローラ200は、制御システム228で構成され、この例では、カスケード制御システム228である。コントローラ200は、代替的に、さらに後述するシングルループ電圧制御228Bから構成されてもよい。カスケード制御システム228は、図2Aに示すように、電圧コントローラ214と電流コントローラ216とを含む。
【0090】
電圧コントローラ214は、電圧制御システムを使用して、基準信号212および測定信号222、224に基づいて第1のデータ215を生成し、第1のデータ215を電流コントローラ216に出力する。基準信号212の位相角成分は、任意選択で、電圧コントローラ214内の1つまたは複数の基準フレーム変換に使用されてもよい。電流コントローラ216は、第1のデータ215および測定信号222、224に基づいて、電流制御システムを使用して第2のデータを生成する。電流コントローラ216はまた、いくつかの実施形態では、電流コントローラ216内に含まれる1つ以上のフィードフォワード制御機能および/または基準フレーム変換において、基準信号212の電圧の大きさおよび/または位相角成分を使用することができる。コントローラ200は、第2のデータに基づいて制御データ230を決定する。
【0091】
カスケード制御システム228は以下のように動作する。コントローラ200は、一般に、必ずしも基準信号212の大きさおよび/または位相角成分と一致しない、電力コンバータ204の極における時変電圧波形(time-varying voltage waveform、少なくとも部分的には、時変の基本周波数電圧の大きさおよび位相角を含む)を生成する制御データ230を生成する。むしろ、通常の状況下では、生成された電力コンバータ204の極電圧は、電力コンバータ204の極に直接ではないが電気的に近接した調整点で、基準信号212の大きさと位相角成分を実現するために必要に応じて急速に変化する。この調整点は、例えば、電力コンバータ204をグリッド232に結合する交流変圧器のグリッド側巻線端子上に配置することができる。基準信号212の電圧の大きさおよび位相角成分は、上述した系統形成制御の目的に従って、グリッド事象に応答して時間的に変化すると予想される。電圧コントローラ214の電圧制御システムは、グリッドコントローラによって提供される系統形成制御アルゴリズムの制御帯域幅よりもはるかに高い制御帯域幅(例えば、7~10倍)を有するので、電力コンバータ204の基本周波数の極電圧の電圧の大きさおよび位相角成分は、基準信号212の電圧の大きさおよび位相角成分よりも急速に変化すると予想される。
【0092】
コントローラ200は、代替的に、図2Bに示すようなシングルループ電圧制御システム228Bを含んでもよい。シングルループ電圧制御システム228Bは、基準信号212および測定信号222、224に基づいて制御データ230を生成するシングルループコントローラ214Bを含む。
【0093】
シングルループ電圧制御システム228Bは以下のように動作する。コントローラ200は、一般に、基準信号212の大きさおよび/または位相角成分と必ずしも一致しない、電力コンバータ204の極における時変電圧(少なくとも部分的には、時変の基本周波数電圧の大きさおよび位相角を含む)を生成する制御データ230を生成する。カスケード制御システム228の場合と同様に、生成された電力コンバータ204の極電圧は、必要に応じて、電力コンバータ204の極に電気的に近接しているが、電力コンバータ204の極に直接ではない調節点における基準信号212の大きさおよび/または位相角成分を実現するように変化する。
【0094】
代替例では、シングルループコントローラ214Bは、代わりに、データ230が基準信号212からより直接的に導出される「直接電圧制御」システムを含むことができる。直接電圧制御システムの場合、通常の動作条件下では、コントローラ200によって生成された制御データ230は、電力コンバータ204の極における基本周波数電圧の大きさおよび位相角が、基準信号212に含まれる電圧の大きさおよび位相角に(過渡的にも定常状態においても)密接に一致する結果となる。
【0095】
シングルループ電圧制御システムまたは直接電圧制御システムのいずれかが採用される場合、シングルループコントローラ214Bはさらに、重度の故障などの異常なグリッド事象の間に一時的にアクティブにされる電流制限制御機能を含むことができる。これらの電流制限制御機能は、アクティブになると、コンバータハードウェアの継続的な動作を可能にするために、電流または電流の一部の成分を最大値に効果的に制限するように制御データ230を変更し、その結果、コントローラ200の公称制御目的(nominal control objective)を一時的に放棄する。
【0096】
使用される電圧制御システムのタイプにかかわらず、コントローラ200は「公称仮想インピーダンス:nominal virtual impedance」を使用することもできる。これを達成するために、基準信号212内の電圧大きさ基準および電圧角度基準は、まず、電力コンバータ204の測定または予測される出力電流に比例する時変フェーザ電圧降下(time-varying phasor voltage drop)に対応するように、コントローラ200によって修正される。コントローラ200は、公称仮想インピーダンスのフェーザ電圧降下を計算する様々な手段を採用することができる。例えば、それは、複素値の公称仮想インピーダンスと、測定された電流222を使用して得られる時間変動電流フェーザ測定値との積で構成することができる。あるいは、公称仮想インピーダンス電圧降下は、公称インピーダンスと第2のデータ215から導出された電流フェーザ基準との積に等しくてもよい。計算に使用される公称仮想インピーダンスは固定されている、すなわち、まれな場合(例えば、グリッド強度(grid strength)の変化を補償するため)を除き、滑らかまたは離散的な方法で変化しない。
【0097】
コントローラ200がカスケードコントローラ228またはシングルループコントローラ228Bを含み、公称仮想インピーダンスが使用される場合、電力コンバータ204の極電圧は、調整時点において、基準信号212(内部電圧フェーザ基準:internal voltage phasor reference)から公称仮想インピーダンス電圧降下を差し引いた電圧フェーザに等しい電圧フェーザを実現するように迅速に操作される。
【0098】
コントローラ200が直接電圧コントローラを含む場合、電力コンバータ204の極における時間的に変化する基本周波数電圧の大きさおよび電圧位相角は、基準信号212(内部電圧フェーザ基準)から公称仮想インピーダンス電圧降下を差し引いたものに等しい電圧フェーザを含む。
【0099】
制御データ230は電力コンバータ204に供給される。電力コンバータ204は、制御データ230に基づいて動作、すなわち、直流電力の交流電力への変換または交流電力の直流電力への変換、ならびに無効電力の生成または吸収を実行する。このように、制御データ230は電力コンバータ204を制御する。
【0100】
図2Aには示されていないが、コントローラ200は、メモリと、少なくとも1つのプロセッサとを含んでいてもよい。メモリは、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、コントローラ200に本明細書に記載の1以上の方法を実行させる、コンピュータ読み取り可能な命令を含んでいてもよい。
【0101】
また、図2Aには示されていないが、コントローラ200は、トランシーバ装置をさらに含んでいてもよい。トランシーバ装置は、別個の送信機および受信機を含んでもよい。トランシーバ装置は、有線または無線手段を用いて直接、またはネットワークインターフェースなどのさらなるインターフェースを介して、本明細書に記載の他の構成要素と動作的に通信するために使用することができる。トランシーバ装置は、例えば、送受信機を用いて制御信号を送受信することができる。制御信号は、基準電流や基準電圧などの電気制御パラメータを含むか、または定義することができる。
【0102】
少なくとも1つのプロセッサは、コンピュータ読み取り可能な命令を実行する、および/または論理演算を実行することができる。少なくとも1つのプロセッサは、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、中央処理装置(CPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または同様のプログラマブルコントローラであってもよい。コントローラ200は、ユーザ入力デバイスおよび/または出力デバイスをさらに含んでもよい。プロセッサは、メモリおよびトランシーバに通信可能に結合されていてもよい。
【0103】
メモリはコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。例えば、メモリは、不揮発性コンピュータ記憶媒体を含んでもよい。例えば、メモリは、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどを含むことができる。
【0104】
また、図2Aには示されていないが、コントローラ200は、視覚的、聴覚的、および/または触覚的な入力/出力を可能にするユーザ入力デバイスインターフェースおよび/またはユーザ出力デバイスインターフェースをさらに含むことができる。このようなユーザ入力/出力デバイスの例としては、電子ディスプレイ、タッチスクリーン、キーボード、マウス、スピーカ、およびマイクロフォンへのインターフェースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
上述したように、開示された実施例では、コントローラ200は、電力コンバータ204に制御データ230を提供する。通常の動作状態では、制御データ230は、電力コンバータ204を系統形成(GFM)モードで制御する。本開示の態様は、これから説明するように、電力コンバータ204が動作中であり、グリッド事象が存在する場合の改善を提供する。
【0106】
カスケード制御システム228は、コントローラ200によって、系統形成リソースとしての電力コンバータ204を制御するために使用される。図3を参照すると、第1の回路図310および第2の回路図320を用いて、通常状態時の電力システム100を説明することができる。GFMモードで動作する場合、通常状態では、電力コンバータ204は、公称電圧でグリッド232に電力を出力するように制御される。図3には、グリッド232のテブナン電圧フェーザV、電力コンバータ204の極におけるコンバータ電圧フェーザV、電力コンバータ204の初期内部電圧フェーザ基準Vcv (すなわち、慣性電力レギュレータおよび「Qコントローラ」の出力)、グリッド232のテブナンインピーダンスZ、電力コンバータ204のコンバータインピーダンスZ、が示されている。電力コンバータ204のグリッド232への結合(すなわち、グリッド接続)の変換器インピーダンス Zc (たとえば、変圧器の「漏れリアクタンス」、フィルタ、バルブインダクタンスなどによる。ただし、これには上記の公称仮想インピーダンスは含まれない:due to, for example, transformer ‘leakage reactance(s)’, filters, valve inductances, etc.; note that this does not include the nominal virtual impedance, discussed above)、電力コンバータ204とグリッド232の共通結合点 (調整点) における結合電圧Vを示し、電力コンバータ204の出力電流I222を示す。第2の回路図320は、第1の回路図310を簡略化したものである。第2の回路図320が簡略化されているのは、通常の動作条件では、結合電圧 Vが初期内部電圧フェーザ基準Vcv にほぼ等しく、したがって、コンバータインピーダンスZは、物理的にはまだ存在するものの、関心のあるタイムスケール(サブ過渡から過渡:sub-transient to transient)におけるシステムの挙動に無視できる影響を及ぼすと考えられるため、回路図から削除されているからである。引き続き図3を参照すると、電力コンバータ204は、電気的特性の観点から見ると、変換器インピーダンスZとコンバータ電圧源301(コンバータ電圧フェーザVを生成する)を含む。これは、上述したように、電力コンバータ204がGFMモードで制御されるため、電力コンバータ204がコンバータ電圧源301を含むからである。
【0107】
グリッド232は、電気特性の観点から見ると、テブナンインピーダンスZとグリッド電圧源303(テブナン電圧フェーザVを生成する)を含む。上述したように、グリッド232はコンシューマネットワークであり、グリッド232に接続され電気エネルギーを供給する発電所がいくつあってもよい。したがって、グリッド232は、コンシューマネットワークと発電所の両方を含む。コンシューマネットワークは、テブナンインピーダンスZに簡略化することができる。発電所は、テブナン電圧フェーザVを供給および維持する役割を担うグリッド電圧源303に簡略化することができる。一般に、コンシューマネットワークおよび発電所の規模のために、実際には、テブナンインピーダンスZおよび/またはテブナン電圧フェーザVを知ること、測定すること、または決定する(know, measure or determine)ことは不可能である。
【0108】
コンシューマネットワークに障害が発生すると、テブナンインピーダンスZに変化が生じ、発電所に障害が発生すると、テブナン電圧フェーザVに変化が生じる。これらの障害のいずれかが、グリッド232の障害となる。しかし、通常の状態では、グリッド232にそのような故障はない。
【0109】
グリッド232に障害が発生した場合、または本明細書でグリッド事象と呼ばれる他の深刻なグリッド障害が発生した場合、電力コンバータ204は電圧を調整しており、電流、電力、またはエネルギーを調整していないため、電力コンバータ204が電流、電力、またはエネルギーの過負荷を経験する可能性がある。通常のGFMモードで制御される電力コンバータの場合、この過負荷は、電力コンバータをオフラインにトリップさせるか、最悪のシナリオでは、電力コンバータ内の半導体デバイスを損傷させ、電力コンバータを無期限に動作不能にする傾向がある。
【0110】
このようなグリッド事象が発生した場合、電力コンバータの自己保護が確保される必要があり、電流制限は通常、制御をGFLモードに切り替えることで達成される。しかし、このような方法で制御モードを切り替えることは、電力コンバータの安定性および電力系統全体(overall power system)の安定性を危うくする可能性がある。コントローラ200は、図4に開示した方法に従って電力コンバータ204を制御することにより、これを排除または低減する傾向がある。
【0111】
図4に示すように、電力コンバータ204は当初、コントローラ200から供給される制御データ230に基づいて、公称電圧で電力を出力するようにGFMモード410で制御される。制御システム228は、測定信号222、224および基準信号212に基づいて制御データ230を決定する。コントローラ200は、コントローラ200および/または電力コンバータ204に関連する第1のパラメータを監視し、第1のパラメータが第1の閾値を超えるか否かを判定する。通常の状態では、第1のパラメータは第1の閾値を超えず、電力システム100は、図3に示す第1および第2の回路図310、320に描かれているように動作している。
【0112】
その後、グリッド232でグリッド事象が発生する。この例では、グリッド事象により、テブナン電圧フェーザVが低下する。コントローラ200は、第1のパラメータを監視し、コントローラ200および/または電力コンバータ204に関連する第1のパラメータが第1の閾値を超えると判定420する。したがって、第1のパラメータは、グリッド事象の結果として第1の閾値を超える。
【0113】
第1のパラメータが第1の閾値を超えたと判定すること420は、以下のうちの1つ以上を含み得る。正シーケンスdqフレーム電流レギュレータの電流基準の個々のdまたはqチャネルが飽和した(系統形成アルゴリズムから出力される基準角度に同期して回転する正回転基準フレームに関して、または測定された正シーケンス電圧にロックされるPLL(Phase Locked Loop)角度に同期して回転する正回転基準フレームに関して、正シーケンスdおよびqチャネル電流がそれぞれの直交チャネルに適切に分解された)と判定すること;負シーケンスdqフレーム電流レギュレータの電流基準の個々のdまたはqチャンネルが飽和したと判定すること(系統形成アルゴリズムから出力された基準角度と同じ速度で回転するが負(反対)方向に回転する負回転基準フレームに対して、または測定された負シーケンス電圧にロックされたPLL角度に同期して回転する負回転基準フレームに対して、負シーケンスdおよびqチャンネル電流がそれぞれの直交チャンネルに適切に分解される);および/または、dq電流基準を有する電流コントローラ216内の比例積分(PI)コントローラが飽和したことを判定すること、および/または、abc電流基準またはα-β基準を有する電流コントローラ216内の比例共振(PR)コントローラが飽和したことを判定すること、および/または、フェーザ電流限界に達したことを判定すること、および/または、成分がパルス低下またはブロッキングしていることを判定すること、および/または、電圧リファレンスが飽和したことを判定すること、および/または、電圧出力が限界に達したことを判定すること、および/または、変調指数が飽和したことを判定すること。
【0114】
第1の閾値は、リソースの真の物理的動作限界に近い、および/または、固有または外部から課された動作限界に近い、量または量のセットとして指定される。第1の閾値は、グリッドコードの要件(grid code requirement)を満たすように、例えば、過渡時に有効電力と無効電力の生成を有利にするように、特定の方法で作成されることがある(例えば、閾値は、GFMコントローラの内部電圧角コマンドと同期して回転するdq0参照フレーム(dq0 reference frame)を想定して、q軸電流よりもd軸電流に対して大きい)。
【0115】
あるいは、第1の閾値は、正または負のシーケンス電流または電圧の生成を優先するように選択することもできる。同様に、コンポーネントまたはリソースの実際の最大許容閾値は、第2の閾値によって定義される。
【0116】
例えば、出力電流が制限される変数である1つの実施形態において、第1の閾値は、スカラー複素数値または「空間ベクトル:space vector」として定義されるリソースの出力電流が存在し得る許容領域を規定する2次元形状の周囲または境界として定義され得る(複素平面の原点から描かれる空間ベクトルは、第1の閾値である周囲によって定義される形状の外側の値で終端することは許されない);この形状は、円(例えば、この形状は、円(例えば、図7)、長方形、または2次元複素平面上の他の任意の形状であり、第1の閾値は、実際の物理的な限界を定義する第2の閾値である周囲によって縁取られた幾分大きな形状に幾分同心である。
【0117】
一実施形態では、第1の閾値を境界とする形状は、ユークリッドノルムを介するなど従来の方法で、電流の大きさをd軸電流とq軸電流の関数として計算し、定格電流の0.95パーセントという単位当たりの電流の大きさの閾値に対応する、半径が0.95に等しい円であり、第2の閾値は、半径が1.0または1.1のわずかに大きな同心円である。
【0118】
第1のパラメータが第1の閾値420を超えたと判定することに応答して、コントローラ200は、電力コンバータ204の出力電流222を現在値または基準値に基づいて制限することにより、電力コンバータ204を第1の制限モード430で制御する。
【0119】
コントローラ200がカスケード制御システム228を構成する場合、第1の制限モード430は、第1のデータ215をその現在値または基準値と等しくなるように設定することによって達成され、それによって電力コンバータ(204)の出力電流(222)が制限される。
【0120】
コントローラ200がシングルループまたは直接制御システム228Bを構成する場合、コントローラ200は、出力電流222が現在値または基準値を超えて増加するのを制限するリミットコントローラ217をさらに構成し、それによって電力コンバータ(204)の出力電流(222)を制限する。
【0121】
カスケード制御システム228の例では、第1のデータ215をその現在値または基準値と等しくなるように設定した結果、制御データ230は、出力電流222が電流値に収束するように、副過渡時間スケール(sub-transient timescale:サブトランジット時間スケール)で比較的迅速に、電力コンバータ204の極における基本周波数電圧波形を操作する。
【0122】
電流の大きさおよび電流位相角は、第1の制限モード430に費やされた残りの期間、比較的変化しないままであり、第1の制限モード430に費やされた期間中にさらなるグリッド事象がなければ、制御データ230も定常状態に達し、実質的に変化しないと予想される。
【0123】
使用される制御システム228、228Bのタイプにかかわらず、第1の制限モード430では、電力コンバータ(204)の出力電流(222)を制限するために、制御システム228、228Bの一部が、測定信号222、224および基準信号212に基づいて制御データ230の値を決定することを無効にされる。
【0124】
現在値とは、第1のパラメータが第1の閾値を超えたと判定されたときの、コントローラ200に含まれる電流基準の値(the value of a current reference contained in the controller 200 when the determination was made that the first parameter exceeded the first threshold)である。このように、電流基準は、実質的に「フリーズ」される、すなわち、電流基準は、第1のパラメータが第1の閾値を超えたと判定されたときの値と同じ値のままである。
【0125】
一部の例では、電流基準は、特定の角度によって定義される基準フレームに関してのみ、電流の大きさおよび電流位相角の点で「固定」される。基準フレームを定義するために使用される角度の選択は、電流レギュレータまたは過渡電流リミッタの設計に依存し、例えば、基準信号212に含まれる系統形成電圧角度基準から構成されてもよいし、PLL、周波数ロックループ(FFL:frequency-locked loop)、2次一般化積分器(SOGI:second-order generalized integrator)、または他の手段から代替的に導出されてもよい。
【0126】
第1の制限モード430では、コントローラ200内に含まれる電流基準が現在値または基準値に設定されるため、制御データ230または電流基準の値に他の方法で影響を与えた可能性のある任意の上位のコントローラ(例えば、電圧コントローラ214、または基準信号212を生成する系統形成コントローラ)も、任意選択で「凍結」、すなわち、それらの出力が特定の値にロックされるようにそれらの制御動作が変更され得る。
【0127】
特に、電圧コントローラ214が存在する場合、電圧コントローラ214を凍結することが望ましい場合がある。
【0128】
対象となる上位コントローラに1つ以上の積分器が存在する場合、コントローラの「フリーズ」には、これらの積分器の入力を一時的に無効にすること、または同様の効果を持つ他の制御動作を含むことができる。
【0129】
基準信号212を生成する系統形成アルゴリズムを凍結する必要はないかもしれない。これは、系統形成アルゴリズムが遅い帯域幅を持つ傾向があり、そのため、サブ過渡時間スケールで、応答時間が比較的遅くなるからである。
【0130】
したがって、第1の制限モード430では、電力コンバータ204の初期内部電圧フェーザ基準Vcv は、測定信号222、224の変化に関係なく、急激に変化することはないと予想される。
【0131】
さらに、いくつかの例では、参照信号212のゆっくりとした変化は、これらの変化が固定電流フェーザ参照の参照フレームをシフトさせることによって電力システム100を同期に向けて駆動するのに役立つ可能性があるため、潜在的に有益であり得る。しかしながら、電力コンバータ204が第1の制限モード430に留まるのは短時間(例えば、50ms未満)だけであると予想されるため、初期内部電圧フェーザ基準Vcv はこの間あまり変化しない。
【0132】
上述したように、グリッド事象は、グリッド232のテブナン電圧フェーザVの変化を引き起こす。グリッド232のテブナン電圧フェーザVの変化を伴う静止または凍結した初期内部電圧フェーザ基準Vcv は、結合電圧Vの変化を引き起こす。したがって、図3に関連して説明したような第2の回路図320は、第1の制限モード430に対して有効ではない。
【0133】
第1の制限モード430の間の電力コンバータ204およびグリッド232の動作を示す簡略化された電気図が、第3の回路図500として図5に示されている。第3の回路図500は:グリッド232の故障したテブナン電圧フェーザV ;電力コンバータ204の初期内部電圧フェーザ基準Vcv ;グリッド232の故障したテブナンインピーダンスZ ;電力コンバータ204のグリッド232への共通結合点(調整点)における故障した結合電圧V ;電力コンバータ204のグリッド事象中の出力電流I 、222;およびグリッド事象中の電力コンバータ204の基準電流Iref f+を示している。
【0134】
本開示の文脈において、「故障:faulted」という用語は、必ずしも特定のグリッド短絡または開回路状態を指すとは限らず、より広い意味で、系統形成リソースがパラメータ(例えば電流制限閾値)の超過を経験する可能性のあるあらゆるグリッド事象を示すために使用される。このようなグリッド事象の非網羅的なリストを以下に示す。アイランド時またはグリッド接続時(when islanded or grid-tied)の対称または非対称の線対地間短絡または線対線間短絡、アイランド時またはグリッド接続時の対称または非対称の線開路、グリッド接続時の電力系統の電圧の大きさのサグまたはスウェル(sag or swell)、グリッド接続時の電力系統の位相角の負荷ステップまたはジャンプ(load step or jump)、近隣の資源が取る予期しない制御アクション、アイランド時またはグリッド接続時の近隣資源の予期しない損失、定電力負荷、定電流負荷、定インピーダンス負荷、または機械負荷(constant-power load, constant current load, constant impedance load, or machine load)の大きなステップ、意図的または非意図的なアイランド化事象またはグリッド強度の急激な変化、意図的または非意図的な同期化イベント、または複数のイベントが同時または連続的に発生するような、アイランド化またはグリッドタイアップ時の前述のグリッド事象の組み合わせ。
【0135】
基準電流Iref は、正または負のシーケンス電流の大きさの制限、有効または無効電力伝達の制限、直流電源へのまたは直流電源からのエネルギー伝達の制限、および/または他の任意の関心量の制限のうちの1つ以上に関連する電力システム100内の構成要素によって決定され得る。
【0136】
第1のデータ215または基準電流Iref が現在値に設定されている(すなわち、凍結されている)ため、制御システム228または電流コントローラ216が安定していると仮定すると、出力電流222は変化しない。その結果、第1の制限モード430では、グリッド事象中の電力コンバータ204の出力電流I 、222は、平衡に向かって収束する傾向があり、これは一般に、電流コントローラ誤差信号の大きさ(複数の電流制御チャネルが存在する場合には、複数の電流コントローラ誤差信号の大きさ)が、ゼロに等しいか、ゼロに近い値まで減少することによって示すことができる。第1の制限モード430では、コントローラ200は、このように、電力コンバータ204を電流源501として効果的に制御する。
【0137】
電力コンバータ204を電流源として制御することは、電力コンバータ204を系統追従(GFL:grid-following)モードで制御することと同様である。GFLモードで電力コンバータ204を制御すると、電力コンバータ204がGFMモードで動作した結果としてもたらされるグリッド232のサポート機能を提供できなくなる傾向があるため、GFLモードは長期間望ましくない傾向がある。さらに、GFLモードでの長時間の動作は、電力コンバータ204および/またはグリッド232の安定性の損失にもつながる可能性がある。
【0138】
しかしながら、第1の制限モード430は、PLLが不安定になることが予想されない強力なグリッド条件下で安定することができる。このような条件下では、電流基準の基準フレームにPLLを使用することがさらに有利であり得、この場合、電流基準のdチャネル成分およびqチャネル成分は、不定期間にわたって有効電流設定値および/または無効電流設定値を迅速かつ正確に達成するように選択され得るからである。したがって、直流電源202とグリッド232との間のエネルギー伝達は、調整しやすくなる傾向がある。
【0139】
あるいは、PLL、FFL、またはSOGIに由来する位相角の代わりに、参照信号212の位相角成分を、リミットモード430における制御データ230の参照フレームとして使用することもできる。位相角成分は、このモードではフリーズしてもよいし、任意に変動を許容してもよい。基準信号212内の位相角基準が第1の制限モード430中に凍結されない場合、基準信号212のゆっくりと変化する位相角成分を第1のデータ215の基準フレームとして使用することができる。このような実施は、同期というGFM制御の目的を追求する電力コンバータ204の能力をある程度限定的に保持することを可能にし得るので、望ましいと考えられる。
【0140】
しかしながら、それでもなお、第1の制限モード430での動作は、電圧の大きさが調整されていないため、従来の意味でのGFMを構成せず、この欠点は予期せぬ結果をもたらす可能性がある。従って、望ましくない動作のリスクを低減するために、通常、コンバータ204が約50~100ms以上、理想的には30ms以上、第1の制限モード430に留まらないことが意図されている。
【0141】
コントローラ200は、典型的には、第1のパラメータが第1の閾値を超えたと判定されたときから50ms以下である時間内に、電力コンバータ204を第1の制限モード430で制御する(すなわち、電力コンバータ204が電流源として機能することを可能にする)ステップを完了する。その結果、出力電流I、222の電磁気的な時間スケールでの平衡状態(すなわち、定常状態)の迅速な達成がある。このことは、ハードウェアに関連する制限に違反しないので、電力コンバータ204がオフラインでトリップすることを有利に防止する傾向がある。例えば、このモードで達成される電流制限は、電力コンバータ204内の半導体デバイスのいずれかが損傷するのを防止する傾向がある。
【0142】
再び図4を参照すると、電力コンバータ204が第1の制限モード430(例えば、電流制限モード)で制御されているとき、コントローラ200は、電力コンバータ204の出力電流I,222を決定する。出力電流I,222が平衡状態に達したことに応答して、コントローラ200は、出力電流I,222および出力電圧224に基づいて、電力コンバータ204の仮想インピーダンス440を決定する。
【0143】
いくつかの実施形態では、測定信号222、224を使用する代わりに、コントローラ200は、仮想インピーダンス440の決定において、予想電流(すなわち、電流フェーザ基準215)、または推定電流(例えば、システムのモデルを介して、またはオブザーバ(観察手段)を介して取得され得る電流推定)などの、一方または両方の出力信号のプロキシを代替的に使用することができる。修正された内部電圧フェーザ基準も決定される場合がある。
【0144】
修正された内部電圧フェーザ基準が定常動作のためにまだ決定されていない場合、コントローラ200は、電力コンバータ204が第1の制限モード430にある間に、電力コンバータ204の内部電圧フェーザ基準Vcvと、電力コンバータ204とグリッド232との間のノード224(例えば、共通結合点)におけるノード電圧(故障結合電圧)V との間の電圧差として定義される仮想電圧Vを計算することによって、仮想インピーダンス440を決定する。次にコントローラ200は、平衡状態における電力コンバータ204の仮想電圧V、仮想インピーダンスZcv、および故障出力電流I 、222を含む、グリッド232に接続された電力コンバータ204の図6に示すテブナン等価回路600を生成する。次に,コントローラ200は,回路解析を使用して,仮想インピーダンスZcvのテブナン等価回路600を解決する(resolve the Thevenin equivalent circuit 600)。
【0145】
テブナン等価回路600は単純な回路図であるため、式1に示すように、オームの法則を用いてテブナン等価回路600を解くことができる。
cv=(Vcv-V )/Iref f+ 式1
【0146】
コントローラ200が仮想インピーダンスZcvを決定すると、コントローラ200は、制御システム228の調整タームを決定し、調整タームを含むように制御システム228を修正することで、仮想インピーダンスZcvに基づいて制御システム228を修正する。初期系統形成動作モード410の下で固定仮想インピーダンス(fixed virtual impedance)が既に採用されている場合、固定仮想インピーダンスは、仮想インピーダンス(virtual impedance)Zcvに置き換えられる。
【0147】
次いで、コントローラは、第1の制約系統形成モード450で電力コンバータ204を制御し、修正制御システム228は、電力コンバータ204の下流の電流および/または電圧の測定信号222、224と、基準信号212とに基づいて制御データ230を決定する。
【0148】
cvをこのように計算することで、第1制限モード430から第1の制約系統形成モード450への移行時に電圧V が変化しないことが保証される傾向がある。これは、平衡状態における故障出力電流I が、第1の制限モード430と第1の制約系統形成モード450とで同じになるように調整タームが選択されるからである(故障出力電流I は遷移後もIref f+に等しいため)。したがって、本開示の方法は、(制約された)系統形成モードに戻るシームレスかつほぼ瞬時の移行を達成する傾向がある。
【0149】
式1は、第1の制限モード430から制約系統形成モード450へのシームレスな移行を実現する固定仮想インピーダンスを決定するためのおそらく最も単純なアプローチを示しているが、可能なアプローチはこれだけではない。正弦定理と余弦定理を活用した別の計算方法を適用することで、様々な目的を満たしながら、シームレスな移行を達成することができる別の仮想インピーダンスを決定することができる。この代替計算方法では、静的または固定の仮想電圧オフセットで構成される第2の仮想電圧も決定する必要があり、これが内部電圧フェーザ基準Vcvに追加される。この第2の仮想電圧は、計算された仮想インピーダンスに関連する第1の(電流に依存する)仮想電圧オフセットとともに適用される。第2の仮想電圧は、角度 ∠Vcv、その大きさ |Vcv|、またはVcvの大きさと角度の両方の変化を含む、内部電圧フェーザ基準のステップ変化(step change in the internal voltage phasor reference)と見なすことができる。
【0150】
代替方法を使用して満たすことができる追加の目的には、仮想インピーダンスの特定の大きさの強制、仮想インピーダンス内の抵抗に対するリアクタンスの所望の比率の強制、および/または内部電圧フェーザの大きさおよび/または位相角の特定の値の強制のうちの1つ以上を含めることができる。いくつかの目的は相互に排他的であり、さらに、個々の目的の追求は、制約GFMモードにおけるシステムの挙動および/または性能に重要な影響を及ぼす可能性があることに留意する必要がある。
【0151】
一般性を損なわない範囲で、コントローラはすでに、既知の実数成分と無効成分を持つ固定の「定常状態」仮想インピーダンスZCVSSを採用していると仮定する。これが初期GFMモードと制約GFMモード(それぞれ410と450)の両方に存在し続けると仮定する。この仮想インピーダンスは、初期GFMモードと制約GFMモード(それぞれ410と450)の両方に存在し続ける。VCVSSは、制限モード430の終了時に、ZCVSSとIの積 (またはZCVSSと、第1のデータ215に含まれる電流リファレンス信号などのIのプロキシ(代替的指標)との積、またはIの推定値) によって与えられる仮想インピーダンスを横切る(across)仮想電圧降下を表す。また、制限モード430から制約GFMモード450へのシームレスな移行を実現するために、制約GFMモード450でのみ追加の「電流制限」仮想インピーダンスZCVLがZCVSSと直列に追加され、制約GFMモード450では、ZCV=ZCVL+ZCVSSとなると仮定する(任意で、|ZCVSS|はゼロに等しくてもよい)。
【0152】
シームレス移行に必要な固定Zcv(および必要に応じてZcvL) を決定するための代替方法の例として、次の計算を実行して、シームレスな遷移を実現するために必要な追加の電流制限仮想インピーダンス |ZcvL| の必要な大きさと、必要な内部電圧フェーザ基準角度 ∠Vcv を決定できる。この計算は、電流制限仮想インピーダンスの必要なリアクタンス対抵抗比
XR=(imag(ZcvL))/(real(ZcvL))
(または、既知の場合は、同等の電流制限仮想インピーダンスの角度 ∠ZcvL) と、必要な内部電圧フェーザの大きさ(desired magnitude of the internal voltage phasor) |Vcv| が与えられた場合に実行できる。
∠ZcvL=tan-1(rXR
γ=π-∠(V+VCVSS)+∠I+∠ZcvL
B=|V+VCVSS
C=|VCV
α=π-γ-sin-1(B(sinγ)/C)
A=C(sinα)/(sinγ)
|ZcvL|=A/(|I|)
∠Vcv=∠(V+VCVSS)-α
【0153】
別の例として、以下の計算により、電流制限仮想インピーダンスの所望のリアクタンス対抵抗比rXR=(imag(ZcvL))/(real(ZcvL))と、電流制限仮想インピーダンス|ZcvL|の所望の大きさが与えられた場合に、電流制限モード430から制約系統形成モード450へのシームレスな遷移を実現するために必要な内部電圧フェーザの必要な大きさ|VCV|と、必要な内部電圧フェーザ基準角度∠Vcvが決定される。
A=|ZcvL||I
B=|V+VCVSS
∠ZcvL=tan-1(rXR
γ=π-∠(V+VCVSS)+∠I+∠ZcvL
C=[A+B-2ABcos(γ)]0.5
α=π-γ-sin-1(B(sinγ)/C)
|VCV|=C
∠Vcv=∠(V+VCVSS)-α
【0154】
前述の議論では、仮想インピーダンスは非サリエントなリアクタンスと抵抗要素(non-salient reactive and resistive elements)から構成されると考えられている。つまり、仮想インピーダンス内のリアクタンスはdチャンネルとqチャンネルで同一の大きさを持ち、仮想インピーダンス内の抵抗はdチャンネルとqチャンネルで同一の大きさを持つと考えられる。しかし、定常状態および制約GFMモードにおいて、電流制限の目的で顕著な仮想インピーダンスを適用することも可能である。仮想インピーダンスが顕著である場合、仮想インピーダンス内のリアクタンスは、dチャンネルとqチャンネルで異なる値を持つ可能性がある。仮想インピーダンス内の抵抗についても同様である。
【0155】
基準信号212の位相角成分が、第1の制限モード430における第1のデータ215の基準フレームとして使用され得ること、またはPLL、FFL、またはSOGIなどがこの目的のために採用され得ることは、上述した。同じ基準フレームを使用して、仮想インピーダンス内のリアクタンスおよび抵抗素子の異なるdチャネル成分およびqチャネル成分に渡る(across different d- and q- channel components)「方向依存:orientation-dependant」電圧降下を計算することができる。
【0156】
制約GFMモードでの電流制限に顕著な仮想インピーダンスを適用すると、電流制限インピーダンスの大きさによって誘起される電圧降下が、過負荷が発生している特定のチャネルにほとんど(または全体的に)集中するという潜在的な利点がある。直交する低インピーダンスチャネル(orthogonal low-impedance channel)が存在するため、制約GFMモードでは、動作の柔軟性が高まり、安定化電流供給能力が向上する可能性がある。非サリエント電流制限インピーダンスの場合と同様に、解析技術を使用して、第1の制限モード430から制約GFMモード450へのシームレスな移行を可能にするサリエントリアクタンスおよび/または抵抗のdチャネルおよびqチャネル成分を計算することができる。
【0157】
前述の議論では、コントローラ200は、正シーケンス量に対して排他的に動作し、方法400は、正シーケンス量に適用されると仮定することができる。ただし、コントローラ200および制御方法400は、独立して、負シーケンスに適用することもでき、コントローラ200は、場合によっては、カスケード負シーケンス電圧制御、シングルループ負シーケンス電圧制御、または直接負シーケンス電圧制御(cascaded negative sequence voltage control, single-loop negative sequence voltage control, or direct negative sequence voltage control)を含む負シーケンス電圧制御機能を提供するコントローラを表すことに留意されたい。この場合、負シーケンス電圧がゼロであることが望まれるため、基準信号212は典型的にはゼロである(しかしながら、ゼロでない負シーケンス電圧リファレンスも実装可能である)。図4のモードに関して、モードおよびモード遷移は、負シーケンスの実装においても正シーケンスの実装と同様に機能する。例えば、測定された負シーケンス電流222またはこの電流の何らかの代理(例えば、電流基準または推定電流)が負シーケンス閾値を超えると、第1の制限モード430に入ることができる。正シーケンスアプリケーションの場合と同様に、負シーケンスコントローラの制約GFMモードへのシームレスな移行を可能にする負シーケンス仮想インピーダンスを決定することができる。正シーケンスコントローラと負シーケンスコントローラの両方が存在すると仮定すると、図4に示す全体的な制御戦略は、任意で正シーケンスと負シーケンスの両方(制御パラメータは同一または異なる)に同時に適用することも、一方のシーケンスだけに適用することもできる。
【0158】
第1の制約系統形成モード450では、電力コンバータ204は電力コンバータ204の出力電圧を調整することができ、それによってグリッド232をサポートし続けることができる。制限モード430で凍結または無効化されていた信号およびコントローラは、制約GFMモード450で再活性化され、必要に応じて、制限モード430から制約GFMモード450への移行中にシステム平衡を乱さない値で再初期化される。コントローラ200は、制限モード430で電力コンバータ204を制御してから50ms以内に、第1の制約系統形成モード450で電力コンバータ204を制御する。これにより、電力コンバータ204がGFLモードにある時間が短縮または最小化される傾向があり、これにより、電力コンバータ204が電気機械的な時間スケールで、電力コンバータ204がグリッド232を支持し続けることができるGFMモードに迅速に戻ることができる傾向がある。
【0159】
図7を参照すると、フェーザ図700は、第1の制約系統形成モード450のシミュレーション結果において、内部電圧フェーザ基準Vcvを第1のフェーザ701として、平衡状態における電力コンバータ204の故障出力電流I を第2のフェーザ702として、ノード電圧(故障結合電圧)V を第3のフェーザ703としてノード電圧(故障結合電圧:faulted coupling voltage)V、第4のフェーザ704として、仮想電圧Vを第4のフェーザ704と、して、グリッド232の故障テブナン電圧フェーザV を第5のフェーザ705として示している。フェーザ図700は、X軸710とY軸720も含み、それぞれが電圧または電流の単位(per unit)を持つ。また、第1の限界706としての第1の閾値も示している。
【0160】
図7に示す例では、コントローラ200は、フェーザ電流がフェーザ電流限界に達したと判定することによって、第1のパラメータが第1の閾値を超えたと判定する。したがって、第1のパラメータは第2のフェーザ702であり、第1の閾値は第1の限界706である。
【0161】
図7から分かるように、第5のフェーザ705は1p.u.未満であり、これはグリッド232上でグリッド事象が発生したことを示している。第2のフェーザ702として示される電力コンバータ204の故障出力電流I は、第1の限界値706にある。第4のフェーザ704は、第1のフェーザ701と第3のフェーザ703との差である。このようにして、電力コンバータ204は、第1の制約系統形成モード450で制御され、電力コンバータ204の故障出力電流I は、制御システム228の調整タームを決定するために使用される仮想インピーダンスZcvを決定するために使用される仮想電圧Vの結果として、(第2のフェーザ702で示されるように)平衡状態に維持される(The power converter 204 is thus controlled in the first constrained grid-forming mode 450, wherein the faulted output current Ipf of the power converter 204 is maintained in the equilibrium condition (as shown by the second phasor 702), as a result of the virtual voltage Vv used to determine the virtual impedance Zcv, which is used to determine the adjustment term for the control system 228)。
【0162】
一実施形態では、調整タームは、第4のフェーザ704(仮想電圧V)を含むことができる。これは、インピーダンスフェーザZcvと測定された電流フェーザI との積として定義することができる。別の実施形態では、調整タームは、代わりに、インピーダンスフェーザZcvと第1のデータ215に含まれる電流フェーザ基準との積を含むことができる。一実施形態では、調整タームは、内部電圧フェーザ基準212と加算される仮想電圧として適用される可能性があり、この仮想電圧は、電圧コントローラがその制御動作を実行する際に仮想電圧降下を適切に実現するように、電圧コントローラ214(直接電圧調整またはシングルループ電圧調整コントローラが使用される場合は214B)に提供される基準を修正する(The adjustment term, in one embodiment, could be applied as a virtual voltage that is summed with the internal voltage phasor reference 212, which modifies the reference provided to the voltage controller 214 (or, in the case that a direct voltage regulation or single-loop voltage regulation controller is used, 214B) so that the voltage controller appropriately realizes the virtual voltage drop as it performs its control action)。
【0163】
コントローラ200はさらに、第1の制約系統形成モード450から初期系統形成モード410に戻るスムーズな遷移を提供することができる。このスムーズな遷移に先立ち、グリッド事象が解消して電流I が減少すると、第3のフェーザ703は第1のフェーザ701に向かって戻る。第4のフェーザ704(仮想電圧V)は、第1のフェーザ701と第3のフェーザ703との差であるため、第4のフェーザ704は、グリッド事象が消去されるにつれて、結果として大きさが小さくなる。
【0164】
グリッド事象が解除された後、仮想電圧Vが十分に小さくなり、システムが平衡状態にあると判断されると、第1の制約系統形成モード450から初期系統形成モード410への滑らかで制御された移行を開始するためのアクションを取ることができる。そのため、電流制限のためにコントローラ200によって追加された仮想インピーダンスZcvの成分、および関連する調整タームは、ゼロに向かって収束する。したがって、制御された遷移の間、コントローラ200は、グリッド事象のクリア時に既に生じていた低減を超えて、修正された制御システム228の調整ターム490をさらに低減し、最終的に修正項をゼロに低減し、それによって系統形成モード410で電力コンバータ204を制御するように戻ることができる。
【0165】
これにより、有利なことに、電力コンバータ204を制御した結果としてグリッド232が混乱することなく、電力コンバータ204がスムーズに通常の系統形成制御に戻ることができる傾向がある。さらに、電力コンバータ204は、グリッド事象中に電力コンバータ204をサポートするために、ある形式の系統形成制御を維持できる傾向がある。
【0166】
いくつかの実施形態では、コントローラ200は、コントローラ200および/または電力コンバータ204に関連する第2のパラメータが第2の閾値を超えたと460判定することができる。
【0167】
第2のパラメータが第2の閾値を超えると判定することに応答して、コントローラは、更新された現在値または更新された基準値に基づいて電力コンバータ204の出力電流222を制限することによって、第2の制限モードで電力コンバータ204を制御する(または、直接電圧調整コントローラまたはシングルループ電圧調整コントローラが使用される場合には、リミットコントローラ217は、出力電流222を更新された現在値または更新された基準値に制限する)。その結果、制御データ230は、測定された電流222が更新された現在値または更新された基準値に適合するように、電力コンバータ204の極における基本周波数電圧波形を迅速に操作することが期待される。第2の制限モードで費やされる期間中にさらなるグリッド事象がなければ、制御データ230も定常状態に達し、実質的に変化しないと予想される。任意選択で、制御システム228は、測定信号222、224および基準信号212に基づいて制御データ230の値を決定することを無効にすることができる。次に、コントローラ200は、電力コンバータ204の更新された出力電流222を決定する。
【0168】
更新された出力電流222が平衡状態に達したことに応答して、コントローラ200は、電力コンバータ204の更新された出力電流222に基づいて電力コンバータ204の更新された仮想インピーダンスを決定し、更新された仮想インピーダンスに基づいて制御システム228をさらに修正する。更新された仮想インピーダンスを決定し、更新された仮想インピーダンスに基づいて制御システム228をさらに修正することは、上述したのと同様の方法で行われる。
【0169】
その後、コントローラ200は、さらに修正された制御システム228が測定信号222、224および基準信号212に基づいて制御データ230を決定することにより、電力コンバータ204を第2の制約系統形成モード450で制御する。
【0170】
第2のパラメータが第2の閾値を超えたと判断し、それに対応するアクションを取ることは、例えば、グリッド事象の原因となった故障に続いて別の故障が発生した場合や、グリッド事象の結果としてグリッド232の別の部分で調整が行われた場合に有用である傾向がある。このように、最初のグリッド事象(initial grid event)に続いて後続のグリッド事象が発生する可能性がある。
【0171】
いくつかの実施形態では、制御システム228は、電圧コントローラ214および電流コントローラ216を含むカスケード制御システム228である。電圧コントローラ214は、電圧制御システムを使用して、基準信号212および測定信号222、224に基づいて、第1のデータ215を生成し、第1のデータ215を電流コントローラ216に出力する。電流コントローラ216は、電流制御システムを用いて、第1のデータ215と測定信号222、224とに基づいて、第2のデータを生成する。
【0172】
電流コントローラ216は、電圧コントローラ214が第1のデータ215を生成するよりも比較的速く第2のデータを生成することができる。
【0173】
コントローラ200は、第2のデータに基づいて制御データ230を決定する。
【0174】
コントローラ200は、第1のデータ215を現在値または基準値と等しくなるように設定することによって、第1の制限モード430において電力コンバータ204を制御し、それによって、上述したように、電力コンバータ204の出力電流222を制限する。
【0175】
仮想インピーダンスまたは更新された仮想インピーダンスに基づいて制御システム228を修正することは、電圧コントローラ214の電圧制御システムを修正することを含む場合がある。
【0176】
いくつかの実施形態では、コントローラ200が電力コンバータ204を第1の制限モード430で制御することに応答して、コントローラは、第1のパラメータが第1の閾値を超える継続時間が定義された最小継続時間未満(less than a defined minimum duration)である場合、制御方法を初期の系統形成モード410に戻すことができる。
【0177】
本開示の方法およびコントローラは、系統追従モードの使用が可能な限り短時間に保たれるため、可能な限り最大限の系統形成制御を維持できる傾向がある。本コントローラおよび方法は、一般に、故障復旧時に安定した動作を提供し、さらに、系統形成リソース(すなわち、電力コンバータ204)とバルク電力網(bulk power grid、すなわち、グリッド232)との間の同期喪失を防止する傾向がある。コントローラおよび方法は、電力コンバータ204の電流能力を最大化する傾向があり、調整タームの決定を通じて、有効電流対無効電流、角度対電圧、正列対負列(active vs. reactive current, angle vs. voltage, positive vs. negative sequence)の優先順位付けを可能にする。
【0178】
第1のパラメータの正確な実装は、ユーザが決定することができ、したがって、コントローラおよび方法は、所望に応じてある程度の柔軟性および調整可能性を提供する傾向がある(例えば、コントローラおよび方法は、系統形成動作を優先するように、または電流制限の拡張を可能にするように構成することができるなど)。
【符号の説明】
【0179】
100:電力システム 200:コントローラ 202:直流電源 204:電力コンバータ/第1のインバータベースのリソース 204a:直流側 204b:交流側 206:第1のライン 208:第2のライン 212:基準信号 214:電圧コントローラ 214b:シングルループコントローラ 215:第1のデータ、第2のデータ 216:電流コントローラ 217:制限コントローラ 222:測定信号、測定電流 224:測定信号、測定電圧 228:カスケード制御システム 228B:シングルループ電圧制御システム 230:制御データ 232:グリッド 301:コンバータ電圧源 303:グリッド電圧源 310:第1の回路図 320:第2の回路図 410:初期GFMモード 430:制限モード 450:制約系統形成モード 490:調整ターム 500:第3の回路図 501:電流源 600:テブナン等価回路 700:フェーザ図 701:第1のフェーザ 702:第2のフェーザ 703:第3のフェーザ 704:第4のフェーザ 705:第5のフェーザ 706:第1の限界

図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】