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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008563
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】方向整列装置
(51)【国際特許分類】
   H01G 13/00 20130101AFI20250109BHJP
【FI】
H01G13/00 331D
H01G13/00 351A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110820
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大坂 文哉
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC38
5E082EE04
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082KK01
5E082LL01
5E082MM15
5E082PP10
(57)【要約】
【課題】積層体の積層方向が治具のXY面に垂直な方向になるように積層体の向きを揃えることができる方向整列装置を提供すること。
【解決手段】X方向とY方向を含む平面を主面112とし、主面112に開口する凹部111を備えた振り込みプレート110と、X方向及びY方向に垂直なZ方向に磁極が配置された磁石120と、を備え、磁石120を移動させ、磁石120の磁力により、振り込みプレート110の凹部111に収容された、内部電極層が埋設された積層体10の向きを揃え、磁石120内で極性が向かう軸Zと、積層体10の積層方向Tの軸がずれていることを特徴とする方向整列装置100。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X方向とY方向を含む平面を主面とし、前記主面に開口する凹部を備えた振り込みプレートと、
前記X方向及び前記Y方向に垂直なZ方向に磁極が配置された磁石と、を備え、
前記磁石を移動させ、前記磁石の磁力により、前記振り込みプレートの前記凹部に収容された、内部電極層が埋設された積層体の向きを揃え、
前記磁石内で極性が向かう軸と、前記積層体の積層方向の軸がずれていることを特徴とする、方向整列装置。
【請求項2】
前記磁石は前記主面に対してX方向の正方向又はY方向の正方向に移動し、負方向側に配された前記積層体の向きを揃える、請求項1に記載の方向整列装置。
【請求項3】
前記凹部を平面視した形状は長方形であり、
前記磁石から発生する磁力線は、前記長方形の角部に対して向かう、請求項1又は2に記載の方向整列装置。
【請求項4】
前記磁石は、前記平面で平面視した際に円形状である請求項3に記載の方向整列装置。
【請求項5】
前記磁石の移動速度は、50mm/s以上、1000mm/s以下である請求項1又は2に記載の方向整列装置。
【請求項6】
前記磁石の磁力は0.13T以上、4T以下である請求項1又は2に記載の方向整列装置。
【請求項7】
前記積層体は、積層セラミックコンデンサとなる積層体であり、内部に強磁性体であるNiを含む内部電極層を複数層有する、請求項1又は2に記載の方向整列装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向整列装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部電極が積層された積層体の積層方向をそろえる技術が記載されている。この技術は、積層方向に垂直な面、主に側面に何らかの加工を施すため、積層体を治具に振り込んだ後、側面がZ軸方向を向いた姿勢となるように磁石で方向転換するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-175902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、積層体の積層方向が治具のXY面と同じ方向になるように積層体の向きを揃えることができる。しかしながら、積層体の積層方向が治具のXY面に垂直な方向(治具のZ軸方向と同じ方向)になるように積層体の向きを揃えることはできない。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、積層体の積層方向が治具のXY面に垂直な方向になるように積層体の向きを揃えることができる方向整列装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の方向整列装置は、X方向とY方向を含む平面を主面とし、前記主面に開口する凹部を備えた振り込みプレートと、前記X方向及び前記Y方向に垂直なZ方向に磁極が配置された磁石と、を備え、前記磁石を移動させ、前記磁石の磁力により、前記振り込みプレートの前記凹部に収容された、内部電極層が埋設された積層体の向きを揃え、前記磁石内で極性が向かう軸と、前記積層体の積層方向の軸がずれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、積層体の積層方向が治具のXY面に垂直な方向になるように積層体の向きを揃えることができる方向整列装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、積層体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、図2に示す積層セラミックコンデンサのLT断面図(A-A線断面図)である。
図4図4は、図2に示す積層セラミックコンデンサのWT断面図(B-B線断面図)である。
図5図5は、方向整列装置を構成する振り込みプレートの一例を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、凹部に積層体が収容された状態を模式的に示す斜視図である。
図7図7は、方向整列装置の一例の全体を模式的に示す斜視図である。
図8A図8Aは、磁力により積層体の向きを変える様子を模式的に示す工程図である。
図8B図8Bは、磁力により積層体の向きを変える様子を模式的に示す工程図である。
図8C図8Cは、磁力により積層体の向きを変える様子を模式的に示す工程図である。
図9図9は、磁石の移動方向の例を模式的に示す上面図である。
図10図10は、凹部の角部に向かう磁力線を模式的に示す平面視図である。
図11図11は、積層体に外部電極が設けられてなる積層セラミックコンデンサを基板型の端子に実装する工程を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の方向整列装置について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0010】
本発明の方向整列装置を使用してその姿勢を制御する対象となる積層体は特に限定されるものではないが、チップ部品である電子部品となる積層体の姿勢の制御に好適に用いることができる。電子部品の例としては積層セラミックコンデンサ、積層コイル等が挙げられる。
また、上記した積層セラミックコンデンサ、積層コイル等の電子部品は積層体を含むので、積層体を含む電子部品も、本発明の方向整列装置を使用してその姿勢を制御する対象となる積層体に含まれる。
本発明の方向整列装置の説明の前に、姿勢を制御する対象の積層体の例として、積層セラミックコンデンサを構成する積層体について説明する。また、当該積層体に外部電極を形成してなる積層セラミックコンデンサについて説明する。
【0011】
図1は、積層体の一例を模式的に示す斜視図であり、図2は、積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。図1に示す積層体に外部電極を形成したものが図2に示す積層セラミックコンデンサである。積層体及び積層セラミックコンデンサの長さ方向の寸法、幅方向の寸法、及び積層方向の寸法をそれぞれ両矢印L、W、Tで示す。積層方向Tは積層体及び積層セラミックコンデンサの厚さ方向でもある。
積層体又は積層セラミックコンデンサの積層方向の寸法をT、幅方向の寸法をW、長さ方向の寸法をLとした際に、T<LかつW<Lであることが好ましい。W=Lであってもよく、W≠Lであってもよい。
図3は、図2に示す積層セラミックコンデンサのLT断面図(A-A線断面図)であり、図4は、図2に示す積層セラミックコンデンサのWT断面図(B-B線断面図)である。
【0012】
図1に示す積層体10は、積層された複数の誘電体層20と複数の内部電極層(第1内部電極層35及び第2内部電極層36)を含み、積層方向Tに相対する第1主面10a及び第2主面10bと、積層方向Tに直交する幅方向Wに相対する第1側面10e及び第2側面10fと、積層方向T及び幅方向Wに直交する長さ方向Lに相対する第1端面10c及び第2端面10dと、を含む。
積層体は角部及び稜線部に丸みがつけられていることが好ましい。角部は、積層体の3面が交る部分であり、稜線部は、積層体の2面が交る部分である。
【0013】
誘電体層20を構成する誘電体材料としては、例えば、BaTiO、CaTiO、SrTiO、又はCaZrOなどの成分を含む誘電体セラミックを用いることができる。また、これらの成分にMn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、Ni化合物等の、主成分よりも含有量の少ない成分を添加したものを用いてもよい。
誘電体層は、外層部と内層部を含む。外層部は、積層体の両主面側に位置し、主面と最も主面に近い内部電極層との間に位置する誘電体層である。両外層部に挟まれた領域が内層部である。
誘電体層の厚みは、0.4μm以上、2.0μm以下であることが好ましい。
【0014】
内部電極層は、強磁性体を含むことが好ましい。
強磁性体としてはニッケル(Ni)が挙げられる。内部電極層が強磁性体を含むことにより、磁力による積層体の回転が容易になる。
内部電極層は、さらに誘電体層に含まれる誘電体セラミックと同一組成系の誘電体粒子を含んでいても良い。
内部電極層の厚みは、0.4μm以上、2.0μm以下であることが好ましい。
積層体における内部電極層の積層枚数は、204枚以上、510枚以下であることが好ましい。
【0015】
複数の内部電極層は、第1内部電極層35及び第2内部電極層36を含む。
第1内部電極層35と第2内部電極層36は、互いに対向する対向電極部と、対向電極部から積層体の端面までの引出電極部を備えている。
図3に示すように、第1内部電極層35は積層体10の第1端面10cに引き出されており、第1外部電極16に接続されている。第2内部電極層36は積層体10の第2端面10dに引き出されており、第2外部電極17に接続されている。
本実施形態において、各対向電極部では内部電極層が誘電体層を介して対向することにより容量が形成されている。これにより、積層セラミックコンデンサとして機能する。
【0016】
積層体は、方向整列装置によりその向きが揃えられる時点において、未焼結であってもよく、焼結されていてもよい。
積層体の大きさは、特に限定されないが、幅(W方向寸法)0.33mm以上、1.45mm以下、厚さ(T方向寸法)0.33mm以上、1.45mm以下、長さ(L方向寸法)0.63mm以上、2.20mm以下であることが好ましい。
【0017】
積層セラミックコンデンサ1においては、積層体10の第1端面10cには第1外部電極16が接続されており、第2端面10dには第2外部電極17が接続されている。第1外部電極16及び第2外部電極17は端面外部電極である。端面外部電極は積層体の端面に形成され、さらに端面から側面及び主面に伸びている。
【0018】
外部電極は、下地電極層と、下地電極層上に配置されためっき層とを含んでいてもよい。
下地電極層は、焼付け層、樹脂層及び薄膜層等からなる群から選択された少なくとも1つの層を含んでいてもよい。
焼付け層は、ガラスと金属とを含む層である。ガラスはSiを含み、金属としては、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag-Pd合金、及びAu等からなる群から選択された少なくとも1つを含むことが好ましい。また、焼付け層は、複数層であってもよい。
焼付け層は、ガラス及び金属を含む導電性ペーストを積層体に塗布して焼き付けることにより形成される層であり、内部電極層と同時焼成したものでもよく、内部電極層を焼成した後に焼き付けた層であってもよい。
【0019】
樹脂層は、導電性粒子と熱硬化性樹脂を含む樹脂層であってもよい。樹脂層を形成する場合は、焼付け層を形成せずに積層体上に樹脂層を直接形成してもよい。また、樹脂層は、複数層であってもよい。
【0020】
薄膜層は、スパッタ法又は蒸着法等の薄膜形成法により形成され、金属粒子が堆積された1μm以下の層である。
【0021】
めっき層としては、例えば、Cu、Ni、Sn、Ag、Pd、Ag-Pd合金、AuNiから選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
めっき層は複数層であってもよい。好ましくは、Niめっき層、Snめっき層の2層構造である。Niめっき層は、下地電極層が電子部品を実装する際のはんだによって侵食されることを防止することができる。Snめっき層は、電子部品を実装する際のはんだの濡れ性を向上させ、電子部品を容易に実装することができる。
【0022】
なお、本発明の方向整列装置において向きを揃える対象の積層体は、ここまで説明した形態の積層体及び積層セラミックコンデンサに限定されるものではなく、例えば、側面にも内部電極層が引き出されている、貫通型の積層体であってもよい。貫通型の積層体を含む積層セラミックコンデンサにおいては積層体の側面にも外部電極が形成される。
【0023】
続いて、本発明の方向整列装置の実施形態について説明する。
図5は、方向整列装置を構成する振り込みプレートの一例を模式的に示す斜視図である。
図5には、振り込みプレート110を示しており、振り込みプレートのX方向、Y方向、Z方向を示している。振り込みプレート110には凹部111が設けられている。
振り込みプレート110の上面でX方向とY方向を含む平面を主面112として、凹部111は、主面112に開口している。凹部111が主面112に開口する部分を開口部113とする。凹部111は開口部113を有する有底孔である。凹部111の底面は振り込みプレート110の一部である。
【0024】
振り込みプレート110に対して複数の凹部111が行列状(格子状)に設けられている。凹部の深さは、積層体の幅方向寸法又は厚さ方向寸法よりも深いことが好ましい。
凹部111の開口部113は、積層体を回転させるため長方形状であり、短手方向の長さは、積層体の積層方向に延びる稜線と幅方向に延びる稜線のなす対角線の長さ(図4に両矢印dで示す長さ)より大きい方が好ましい。
振り込みプレート110の材料は、磁石の影響を受けない材料又は磁石の影響を受けにくい材料であることが好ましい。振り込みプレート110の材料は、非磁性材料であることが好ましく、樹脂材料であることが好ましい。
【0025】
振り込みプレート110は、シェーカー(振動付与装置)などにセットされる。振り込みプレート110上に積層体を複数個載置し、振動と傾きを与えることで振り込みプレート110の凹部111に積層体が収容される。
【0026】
図6は、凹部に積層体としての積層セラミックコンデンサが収容された状態を模式的に示す斜視図である。積層セラミックコンデンサを示すために振り込みプレートは透過図としている。また、積層体の積層方向を示すために外部電極を透過して内部電極層を図示している。
図6には、凹部111に収容された積層セラミックコンデンサ1の向きが揃っていない状態を示しており、凹部111内で積層方向がZ方向と同じ方向である積層セラミックコンデンサ1Mと、積層方向がX方向と同じ方向である積層セラミックコンデンサ1Sが混在している。
【0027】
本発明の方向整列装置は、振り込みプレートと、磁石とを備える。
図7は、方向整列装置の一例の全体を模式的に示す斜視図である。
図7に示す方向整列装置100は、振り込みプレート110と磁石120を備える。
図7には、振り込みプレート110の凹部111内に積層セラミックコンデンサ1M、積層セラミックコンデンサ1Sを収容し、凹部111を覆うカバー130を配置した状態を示している。
【0028】
磁石120は、X方向及びY方向に垂直なZ方向に磁極が配置されている。この磁極の配置であると、磁石内で極性が向かう軸はZ方向となる。N極120Nが振り込みプレート110の主面112に対向しており、S極120Sが振り込みプレート110とは反対の面に位置している。
N極とS極の配置は反対であってもよく、S極120Sが振り込みプレート110の主面112に対向しており、N極120Nが振り込みプレート110とは反対の面に位置していてもよい。
【0029】
磁石の形状は特に限定されないが、X方向とY方向を含む平面で平面視した際に円形状であること(円盤状の磁石であること)が好ましい。
磁石は永久磁石であっても電磁石であってもよい。
磁石の材質は特に限定されないが、ネオジム磁石であることが好ましい。
また、磁石の磁力は0.13T以上、4T以下であることが好ましい。磁石の磁力の強さはテスラメータにより測定することができる。
【0030】
磁石120を移動させると、磁石120の磁力により、振り込みプレート110の凹部111に収容された、内部電極層が埋設された積層体である積層セラミックコンデンサ1の向きを揃えることができる。
行方向又は列方向に、その向きを揃えたい積層体が配置されている凹部のエリアから外れた領域に磁石を配置し、行方向又は列方向へ磁石を動かすことで積層体の積層方向が振り込みプレートのXY面に垂直な方向(Z方向)となるように積層体の向きが揃っていく。なお、積層体の積層方向が振り込みプレートのXY面に垂直な方向(Z方向)である積層体については、その向きが保持される。
【0031】
本発明の方向整列装置において、向きを揃える対象の積層体は、その積層方向の軸が磁石内で極性が向かう軸(Z方向)からずれている積層体である。一例としては、積層方向がXY平面内にある積層体である。その向きが揃えられる対象となる積層体の積層方向はX方向と一致していてもよく、Y方向と一致していてもよい。また、X方向とY方向のいずれとも一致していなくてもよく、X方向又はY方向に対して所定の角度傾いていてもよい。
【0032】
図8A図8B及び図8Cは、磁力により積層体の向きを変える様子を模式的に示す工程図である。図8A図8B及び図8Cにおける磁力線の向きを矢印(X方向)で示しており、2点鎖線は磁力線を示している。
磁石120ではX方向及びY方向に垂直なZ方向に磁極が配置されているため、磁石120が通過するエリアの近傍の凹部における磁力線の向きがX方向(又はY方向)となる。
磁石は、図8A図8B図8Cの順に移動する。磁石の移動方向は、紙面手前から奥に向かう方向、又は紙面奥から手前に向かう方向、すなわち+Y方向又は-Y方向である。
【0033】
図8Aには、振り込みプレート110の凹部111内に、積層方向がX方向と同じ方向である積層セラミックコンデンサ1Sが配置された様子を示している。
凹部111内における磁力線の向きは左から右に向かう方向(X方向)である。このような磁力線を伴って磁石120が積層セラミックコンデンサ1Sの近傍を通過すると、図8B及び図8Cに示すように、磁力線の向きに対して内部電極層の向きが平行になるように積層体が回転する。その結果、図8Cに示すように凹部111内の積層セラミックコンデンサ1は積層方向がZ方向と同じ方向である積層セラミックコンデンサ1Mとなり、積層体の向きが揃うことになる。
【0034】
なお、磁石120に積層体が保持されないように、振り込みプレート110の主面112には凹部111を覆うカバー130が設けられている。
カバー130は、その厚みは特に限定されないが、磁石120による磁力が透過する程度の厚さであることが好ましい。例えば0.1mm以上、20mm以下とすることができる。また、カバー130は材質によっては反りが発生するため、剛性確保のために5mm以上であることがより好ましい。
カバー130の材質は、磁石120による磁力を透過させるために、強磁性体である金属以外であることが好ましく、樹脂であることが好ましい。
【0035】
図9は、磁石の移動方向の例を模式的に示す上面図である。
図9においては磁石の移動方向を矢印で示している。この図においては磁石120は-Y方向に動き、少し-X方向に動き、+Y方向に動き、少し-X方向に動き、再度-方向に動いている。すなわち、振り込みプレートの凹部の上面視形状の長方形の長手方向(Y方向)への移動と上記長方形の短手方向(X方向)への移動が交互に行われているといえる。
【0036】
ここで、磁石が移動していく方向を正方向、磁石が通過してきた方向を負方向とする。この正方向、負方向は、図9等におけるX座標の+X方向、-X方向、Y座標の+Y方向、-Y方向とは異なる概念である。
例えば、図9に示す位置の磁石120は-Y方向に向けて動くが、この場合の正方向は-Y方向であり、負方向は+Y方向となる。図9において磁石120が図面の下端の位置に達して-X方向に動くときの正方向は-X方向であり、負方向は+X方向である。
そして、磁石は振り込みプレートの主面に対してX方向の正方向又はY方向の正方向に移動し、負方向側に配された積層体の向きを揃えることになる。
【0037】
磁石は一方通行で走査するのが好ましく、同じ位置を往復して複数回走査することは好ましくない。往復すると予期しない位置での積層体の回転が生じる可能性がある。
また、磁石の移動速度は50mm/s以上、1000mm/s以下であることが好ましい。
【0038】
本発明の方向整列装置では、凹部を平面視した形状は長方形であり、磁石から発生する磁力線は、長方形の角部に対して向かうことが好ましい。
図10は、凹部の角部に向かう磁力線を模式的に示す平面視図である。
図10において右端に示す凹部111には積層セラミックコンデンサ1Sが収容されている。凹部111を平面視した形状は長方形である。図10に示す磁石120は円盤状であり、円盤の中心から磁力線が放射状に延びていく。この磁力線は凹部111を平面視した形状の長方形の角部111aに向かっている。なお、図10では磁石120からの磁力線の方向を2点鎖線の矢印で示している。
この方向に磁力線が伸びて凹部111内の積層セラミックコンデンサ1Sに磁力線が作用すると、凹部111内で積層セラミックコンデンサ1Sの位置が傾き、姿勢が崩れることになる。積層セラミックコンデンサ1Sの姿勢が崩れることで、積層セラミックコンデンサ1Sが凹部111内で回転しやすくなり、積層セラミックコンデンサ1の方向が揃いやすくなる。
また、凹部内で積層体(積層セラミックコンデンサ)の位置が動き得ることから、磁石から発生する磁力線は、積層体を構成する直方体を上面視した際の上面の長方形を構成する角部に対して向かうことが好ましい。
【0039】
方向整列装置によりその向きが揃えられた積層体は、外部電極を形成した後、基板等の実装対象物に実装される。以下には、積層セラミックコンデンサが基板型の端子に実装される例について説明する。
図11は、積層体に外部電極が設けられてなる積層セラミックコンデンサを基板型の端子に実装する工程を模式的に示す側面図である。
図11には、積層セラミックコンデンサ1の第2外部電極17の側から見た側面図を示している。
図11には基板型の端子200に積層セラミックコンデンサ1を実装する工程を示している。図11には積層セラミックコンデンサ1を基板型の端子200に実装する向きである下向きの矢印を示している。
基板型の端子200は絶縁性の基板221を有しており、絶縁性の基板221の第2主面221b側に積層セラミックコンデンサ1を実装する。
基板型の端子200の実装電極223に、たとえば、スクリーン印刷法により半田ペーストを塗布する。
次に、積層セラミックコンデンサ1の第1外部電極16(図11には図示せず)及び第2外部電極17に半田ペーストが付着するように、基板型の端子200上に積層セラミックコンデンサ1を載置してリフローする。リフローによって、溶融した半田ペーストが固化することにより、基板型の端子200に積層セラミックコンデンサ1が実装される。
【0040】
図11には、実装された積層セラミックコンデンサ1における内部電極層の向きを、第2外部電極17内の点線で示している。内部電極層の積層方向は基板型の端子200の主面に垂直な方向(Z方向)であり、基板型の端子200の主面と内部電極層の主面はともにX方向とY方向を含む平面である。
上述したとおり、方向整列装置により積層体の向きを積層方向がZ方向と同じ方向となるように揃えることができるので、実装後の積層セラミックコンデンサの内部電極層の向きを図11に示した向きにすることができる。
【0041】
方向整列装置により積層体の向きを積層方向がZ方向と同じ方向となるように揃えて、その向きを維持したまま、積層セラミックコンデンサを基板型の端子に実装してもよい。
【0042】
基板型の端子の主面と内部電極層の主面がともにX方向とY方向を含む平面であってその向きが揃っていると、圧電効果による振動が伝わりにくく、振動が伝播して発生する可聴音(いわゆる「鳴き」)を低減することができる。
【0043】
電子部品としての積層セラミックコンデンサを製造し、積層セラミックコンデンサを基板型の端子に実装する工程の一例をまとめると、以下の通りになる。
1.誘電体層となるセラミックグリーンシートを成型する。
2.内部電極層となる内部電極パターンをセラミックグリーンシートに印刷する。
3.内部電極層を印刷したセラミックグリーンシートを積層して積層体を得る。通常は多数の電子部品のパターンが印刷された大判の積層体(マザーブロック)となる。
4.マザーブロックを個片化して多数の積層体を得る。
5.積層体の端面及び側面に外部電極を形成するための導電性ペーストの塗布及び乾燥等の工程を行い、外部電極を形成して、積層セラミックコンデンサとする。
6.振り込み装置を用いて方向整列装置の振り込みプレートの凹部に積層セラミックコンデンサを振り込んで収容する。
7.凹部の開口部を覆うカバーを載置する。
8.Z方向に磁極が配置された磁石をカバーの上方に配置し、向きを揃える対象の積層セラミックコンデンサが収容されている凹部の領域から外れた領域に磁石を配置し、行方向又は列方向へ磁石を動かして、積層セラミックコンデンサの向きを揃える。
9・積層セラミックコンデンサを振り込みプレートからピックアップして、基板型の端子の集合基板に順次実装させる。
【0044】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0045】
<1>
X方向とY方向を含む平面を主面とし、前記主面に開口する凹部を備えた振り込みプレートと、
前記X方向及び前記Y方向に垂直なZ方向に磁極が配置された磁石と、を備え、
前記磁石を移動させ、前記磁石の磁力により、前記振り込みプレートの前記凹部に収容された、内部電極層が埋設された積層体の向きを揃え、
前記磁石内で極性が向かう軸と、前記積層体の積層方向の軸がずれていることを特徴とする、方向整列装置。
【0046】
<2>
前記磁石は前記主面に対してX方向の正方向又はY方向の正方向に移動し、負方向側に配された前記積層体の向きを揃える、<1>に記載の方向整列装置。
【0047】
<3>
前記凹部を平面視した形状は長方形であり、
前記磁石から発生する磁力線は、前記長方形の角部に対して向かう、<1>又は<2>に記載の方向整列装置。
【0048】
<4>
前記磁石は、前記平面で平面視した際に円形状である<1>~<3>のいずれかに記載の方向整列装置。
【0049】
<5>
前記磁石の移動速度は、50mm/s以上、1000mm/s以下である<1>~<4>のいずれかに記載の方向整列装置。
【0050】
<6>
前記磁石の磁力は0.13T以上、4T以下である<1>~<5>のいずれかに記載の方向整列装置。
【0051】
<7>
前記積層体は、積層セラミックコンデンサとなる積層体であり、内部に強磁性体であるNiを含む内部電極層を複数層有する、<1>~<6>のいずれかに記載の方向整列装置。
【0052】
また、本明細書には、本発明の方向整列装置を使用した、積層体の方向整列方法が記載されている。
本明細書に記載されている積層体の方向整列方法は、
本発明の方向整列装置を使用する、内部電極層が埋設された積層体の向きを揃える方向整列方法であって、
X方向とY方向を含む平面を主面とし、前記主面に開口する凹部を備えた振り込みプレートの凹部内に、積層体を振り込んで収容する工程と、
向きを揃える対象の積層体が収容されている前記凹部の領域から外れた領域に、前記X方向及び前記Y方向に垂直なZ方向に磁極が配置された磁石を配置し、前記磁石を動かして、前記振り込みプレートの前記凹部内に収容された、積層方向が前記Z方向からずれている積層体の向きを前記Z方向に揃える工程と、を行う、積層体の方向整列方法である。
【符号の説明】
【0053】
1、1M、1S 積層セラミックコンデンサ(積層体)
10、 積層体
10a 第1主面
10b 第2主面
10c 第1端面
10d 第2端面
10e 第1側面
10f 第2側面
16 第1外部電極
17 第2外部電極
20 誘電体層
35 第1内部電極層
36 第2内部電極層
100 方向整列装置
110 振り込みプレート
111 凹部
111a 凹部の角部
112 主面
113 開口部
120 磁石
120N N極
120S S極
130 カバー
200 基板型の端子
221 絶縁性の基板
221b 絶縁性の基板の第2主面
223 実装電極

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11