(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008584
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】車軸装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20250109BHJP
【FI】
F16H57/04 B
F16H57/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110861
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石坂 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】槇 孝展
(72)【発明者】
【氏名】松安 亮典
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB04
3J063AC01
3J063AC11
3J063BA11
3J063CA01
3J063CA05
3J063XD03
3J063XD17
3J063XD32
3J063XD54
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
3J063XE14
3J063XF12
3J063XF13
(57)【要約】
【課題】オイルレベルの左右差を低減する。
【解決手段】車軸装置は、車体に設けられた車軸装置であって、駆動源からの回転動力を伝達する伝達軸と、前記伝達軸の回転により車体左右方向に沿う軸を中心に回転するギヤを含む差動装置と、前記差動装置を収容するとともに、前記差動装置を潤滑するための潤滑油を貯留するハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記ギヤの外周と対向する内壁に突起を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられた車軸装置であって、
駆動源からの回転動力を伝達する伝達軸と、
前記伝達軸の回転により車体左右方向に沿う軸を中心に回転するギヤを含む差動装置と、
前記差動装置を収容するとともに、前記差動装置を潤滑するための潤滑油を貯留するハウジングと、を備え、
前記ハウジングは、前記ギヤの外周と対向する内壁に突起を備える、
車軸装置。
【請求項2】
車体前後方向から見て、前記突起の外形の一部は、前記車体左右方向の中心と重なる、
請求項1に記載の車軸装置。
【請求項3】
前記車体前後方向から見て、前記突起の外形の一部は、前記ギヤの前記車体左右方向の外端と重なる、
請求項2に記載の車軸装置。
【請求項4】
前記車体前後方向に対して前下がりに前記車体を6度前傾させた場合に、前記突起の外形の一部は、前記潤滑油の液面と重なる、
請求項3に記載の車軸装置。
【請求項5】
車体前後方向から見て、前記突起の一部は、前記伝達軸と重なる、
請求項1から4の何れか一項に記載の車軸装置。
【請求項6】
前記ハウジングは、車体前後方向の前側に配置されたフロントハウジング、又は、前記車体前後方向の後側に配置されたリヤハウジングであり、
前記突起は、前記フロントハウジングの前側内壁、又は、前記リヤハウジングの後側内壁に設けられる、
請求項1から4の何れか一項に記載の車軸装置。
【請求項7】
前記突起の少なくとも一部は、前記潤滑油に浸る、
請求項1から4の何れか一項に記載の車軸装置。
【請求項8】
前記突起と前記ギヤとの隙間の大きさは、5mm以上10mm以下である、
請求項1から4の何れか一項に記載の車軸装置。
【請求項9】
車体前後方向から見て、前記突起の外形の一部は、前記ギヤの歯面側から背面側に向かうに従って車軸中心に近づくように傾斜する、
請求項1から4の何れか一項に記載の車軸装置。
【請求項10】
前記車体前後方向から見て、前記突起の外形の少なくとも一部は、前記ギヤの歯面側から背面側に向かうに従って車体上下方向の上側及び下側から前記車軸中心に近づくように傾斜する2つの辺と、車体左右中心線に沿う1つの辺と、を含む三角形の外形と重なる、
請求項9に記載の車軸装置。
【請求項11】
前記ギヤの回転により前記ギヤの周囲を流れる前記潤滑油を案内するシュラウドを更に備え、
車体前後方向から見て、前記突起の外形の一部は、前記シュラウドと重なる、
請求項1から4の何れか一項に記載の車軸装置。
【請求項12】
前記車体左右方向の外端側に、湿式多板式のブレーキを更に備え、
前記ブレーキの少なくとも一部は、前記潤滑油に浸る、
請求項1から4の何れか一項に記載の車軸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車軸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャリアの底部に貯留される潤滑油を一方のベアリングに供給する動力伝達装置の潤滑構造が開示されている。キャリアの内壁面には、回転するピニオンギヤによって掻き揚げられる潤滑油を一方のベアリングに供給する溝状の流路が形成される。流路の上方には、掻き揚げられた潤滑油を一方のベアリングに誘導するための突片が設けられる。
一方、エンジンからトランスミッションを通過した力を車輪に伝えるアクスルを含む車軸装置が知られている。車軸装置は、エンジンからの回転動力を伝達するドライブシャフトと、ドライブシャフトの回転により車体左右方向に沿う軸を中心に回転するベベルギヤを含む差動装置と、差動装置を収容するとともに、差動装置を潤滑するための潤滑油を貯留するハウジングと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車軸装置では、ベベルギヤの回転により、潤滑油の液面の高さ(以下「オイルレベル」ともいう。)に左右差が生じる場合がある。例えば、ベベルギヤの歯面側では、ベベルギヤの歯面とは反対側(背面側)よりもオイルレベルが高くなる。この場合、左右のブレーキの冷却能力に差が生じる。例えば、この差を無くすために、オイルレベルを低い側に合わせ、初期のオイルレベルを決定する場合がある。しかしこの場合、オイルレベルの左右差の分、オイルが無駄となり、オイルコストの増加、オイルの攪拌ロスとなり得る。そのため、オイルレベルの左右差を低減する上で改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、オイルレベルの左右差を低減することができる車軸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車軸装置は、車体に設けられた車軸装置であって、駆動源からの回転動力を伝達する伝達軸と、前記伝達軸の回転により車体左右方向に沿う軸を中心に回転するギヤを含む差動装置と、前記差動装置を収容するとともに、前記差動装置を潤滑するための潤滑油を貯留するハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記ギヤの外周と対向する内壁に突起を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、オイルレベルの左右差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る車軸装置を搭載した車両の斜視図。
【
図2】実施形態に係る車軸装置を車体左右方向に沿う車軸中心を通る鉛直面で切断した断面の後面視であって、車両が停止している状態のオイルレベルを示す図。
【
図3】実施形態に係る車軸装置を車体左右方向に沿う車軸中心を通る水平面で切断した断面の上面視であって、伝達軸の回転方向とギヤの回転方向とを示す図。
【
図4】実施形態に係る車軸装置を車体左右方向に沿う車軸中心を通る鉛直面で切断した断面の後面視であって、ハウジングの内壁の突起を示す図。
【
図5】実施形態に係るハウジングの内壁の突起を示す図であって、
図3の一部を拡大して示す図。
【
図6】実施形態に係るハウジングの内壁の突起を示す斜視図。
【
図7】比較例に係る車軸装置を車体左右方向に沿う車軸中心を通る鉛直面で切断した断面の後面視であって、回転中のオイルレベルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態においては、車軸装置として、ホイールローダ(車両の一例)に搭載された車軸装置を挙げて説明する。
【0010】
以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置や状態を意味するのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している配置や状態をも含むものとする。以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更して示す場合がある。
【0011】
<車両>
図1は、実施形態に係る車軸装置1を搭載した車両100の斜視図である。
図1に示すように、車両100は、車体101、作業機102、前側走行装置103、後側走行装置104及び運転室105を備える。
【0012】
以下、車両の前進方向(車体前方)、後進方向(車体後方)及び車両幅方向(車体左右方向)を「車両前方(車両前後方向一方側)」、「車両後方(車両前後方向他方側)」及び「車両幅方向」と称する。車両幅方向は、「左側(車両幅方向一方側)」又は「右側(車両幅方向他方側)」と称する場合もある。車両が前進する方向に対して右手を右側、車両が前進する方向に対して左手を左側と称する。車両の車両上下方向(車体上下方向)、車両上方(車体上方)及び車両下方(車体下方)を単に「上下方向」、「上方」及び「下方」と称する。図の例では、車両は、水平面(水平な地面)に配置されている。車両の車両上下方向(車体上下方向)、車両上方(車体上方)及び車両下方(車体下方)は、車両が水平面に配置された状態の上下方向(鉛直方向)、鉛直上方及び鉛直下方とそれぞれ一致する。以下の説明では、左側の要素の末尾に符号Lを付し、右側の要素の末尾に符号Rを付す場合がある。
【0013】
車体101の上部には、運転室105が設けられる。例えば、運転室105には、車両100の運転者が座るためのシートや、各種操作のためのレバー、ペダル及び計器類が内装されている。
【0014】
作業機102は、土砂等の作業対象物の掘削又は運搬を行うための機械である。作業機102は、車体101の前部に設けられる。例えば、作業機102は、ブーム、バケット、ベルクランク、リフトシリンダ及びバケットシリンダ等を含んで構成される。
【0015】
前側走行装置103は、車体101の前側下部に設けられる。前側走行装置103は、フロントアクスル112の軸回りに回転可能な前輪を含んで構成される。
後側走行装置104は、車体101の後側下部に設けられる。後側走行装置104は、リヤアクスル113の軸回りに回転可能な後輪を含んで構成される。
【0016】
車両100は、駆動源110、トランスミッション111、フロントアクスル112及びリヤアクスル113を更に備える。
駆動源110は、車体101の後部に搭載される。例えば、駆動源110は、ディーゼルエンジン(エンジンの一例)である。例えば、エンジンには、エンジンのシリンダ内に燃料を噴射する燃料噴射装置や、エンジンの回転数を計測するエンジン回転計等が設けられる。
【0017】
トランスミッション111は、入力軸に入力される駆動力を変速して出力軸から出力する。トランスミッション111の入力軸は、エンジンに接続される。トランスミッション111の出力軸は、フロントアクスル112及びリヤアクスル113に接続される。トランスミッション111は、エンジンの駆動力をフロントアクスル112及びリヤアクスル113に伝達する。
【0018】
フロントアクスル112は、トランスミッション111が出力する駆動力を前側走行装置103に伝達する。これにより、前側走行装置103を構成する前輪が矢印R1方向(図の例では前進時回転方向)に回転する。
リヤアクスル113は、トランスミッション111が出力する駆動力を後側走行装置104に伝達する。これにより、後側走行装置104を構成する後輪が矢印R2方向(図の例では前進時回転方向)に回転する。
【0019】
<車軸装置>
図2は、実施形態に係る車軸装置1を車体左右方向に沿う車軸中心ACを通る鉛直面で切断した断面の後面視であって、車両が停止している状態のオイルレベルを示す図である。
図3は、実施形態に係る車軸装置1を車体左右方向に沿う車軸中心ACを通る水平面で切断した断面の上面視であって、伝達軸2の回転方向とギヤの回転方向とを示す図である。
図4は、実施形態に係る車軸装置1を車体左右方向に沿う車軸中心ACを通る鉛直面で切断した断面の後面視であって、ハウジング4の内壁61の突起80を示す図である。
図3及び
図4においては、潤滑油5の図示を省略している。
図2から
図4を併せて参照し、車体101には、車軸装置1が設けられる。車軸装置1は、駆動源110からの回転動力を伝達する伝達軸2と、伝達軸2の回転により車体左右方向に沿う軸を中心に回転するギヤを含む差動装置3と、差動装置3を収容するとともに、差動装置3を潤滑するための潤滑油5を貯留するハウジング4と、を備える。
フロントアクスル112及びリヤアクスル113は、車軸装置1の一実施形態である。
【0020】
<伝達軸>
伝達軸2は、車体前後方向に沿うように延びる。伝達軸2は、車体左右方向の中心BC(以下「車体左右中心線BC」ともいう。)に配置される。伝達軸2は、トランスミッション111の出力軸に接続される。伝達軸2の前端部には、ベベルギヤ20(傘歯車、伝達軸2の回転により車体左右方向に沿う軸を中心に回転するギヤの一例)に噛み合う歯10(以下「ドライブピニオンギヤ10」ともいう。)が設けられる。
【0021】
<差動装置>
差動装置3は、ベベルギヤ20、アクスルシャフト30L,30R、サイドギヤ31L,31R、デフピニオンシャフト40、デフピニオンギヤ41A,41B,41C,41D及び軸受50L,50Rを備える。ベベルギヤ20は、車体左右方向の中心BCに対して車体左右方向の一方にオフセットして配置される。図の例では、ベベルギヤ20は、車体左右方向の中心BCに対して右側にオフセットして配置される。なお、ベベルギヤ20の配置態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0022】
ベベルギヤ20は、ドライブピニオンギヤ10に噛み合う歯を有する歯面部21と、車体左右方向において歯面部21とは反対側に配置される背面部22と、ベベルギヤ20の径方向外側に位置し歯面部21と背面部22とを繋ぐ側面部23と、を備える。例えば、歯面部21において歯が設けられた側(歯面側)と反対側の部分(背面側の部分)は、ボルト等の締結部材で後述するディファレンシャルケース24に固定される。図の例では、ボルトの頭部25は、ディファレンシャルケース24のケース背面部27の右側に配置される。
【0023】
ディファレンシャルケース24は、車体左右方向に開口し右側のアクスルシャフト30Rの一部を支持する筒状の右側半体24Rと、車体左右方向に開口し左側のアクスルシャフト30Lの一部を支持する筒状の左側半体24Lと、を備える。ディファレンシャルケース24は、ベベルギヤ20の背面部22に繋がりアクスルシャフト30L,30Rの一部を支持する。右側半体24Rの外周部は、ベベルギヤ20の背面部22に繋がっている。例えば、左右の半体24L,24Rは、ボルト等の締結部材26で互いに固定される。
【0024】
アクスルシャフト30L,30Rは、車体左右方向に沿うように延びる。アクスルシャフト30L,30Rは、左右一対設けられる。左右のアクスルシャフト30L,30Rは、互いに同軸上に配置される。
【0025】
サイドギヤ31L,31Rは、左右一対設けられる。サイドギヤ31L,31Rは、アクスルシャフト30L,30Rの車幅方向内端部に連結される。右側のアクスルシャフト30Rは、右側のサイドギヤ31Rを介して右側半体24Rに支持される。左側のアクスルシャフト30Lは、左側のサイドギヤ31Lを介して左側半体24Lに支持される。
【0026】
デフピニオンシャフト40は、車軸中心ACを中心とする半径方向に対して互いに直交する四方向に延びる。デフピニオンシャフト40は、車体左右中心線BCに対して右側にオフセットして配置される。デフピニオンシャフト40は、車軸中心ACを中心として、前方後、後方向、上方向及び下方向に延びる。デフピニオンシャフト40において、前方向及び後方向に延びる部分、並びに、上方向及び下方向に延びる部分は、それぞれ同軸上に配置される。
【0027】
デフピニオンギヤ41A,41B,41C,41Dは、デフピニオンシャフト40を中心として回転可能にデフピニオンシャフト40に支持される。デフピニオンギヤ41A,41B,41C,41Dは、デフピニオンシャフト40において前方向、後方向、上方向及び下方向に延びる部分にそれぞれ支持される。デフピニオンギヤ41A,41B,41C,41Dは、サイドギヤ31L,31Rに噛み合っている。
【0028】
軸受50L,50Rは、左右一対設けられる。軸受50L,50Rは、ディファレンシャルケース24とハウジング4との間に配置される。軸受50L,50Rは、ベベルギヤ20が連結されたディファレンシャルケース24を回転可能に支持する。右側の軸受50Rは、右側半体24Rの外周部とハウジング4の右側内周部との間に配置される。左側の軸受50Lは、左側半体24Lの外周部とハウジング4の左側内周部との間に配置される。
【0029】
例えば、伝達軸2が矢印J1方向(図の例では前進時回転方向)に回転すると、ベベルギヤ20が矢印J2方向(図の例では前進時回転方向)に回転する。すると、ベベルギヤ20の回転に伴ってサイドギヤ31L,31R及びアクスルシャフト30L,30Rが一体に回転する。例えば、車両100の直進走行時に、左右の車輪に速度差(回転数の差)が生じない場合、左右のサイドギヤ31L,31R及びアクスルシャフト30L,30Rは同じ速度で回転する。
【0030】
一方、左右のサイドギヤ31L,31Rの一方に負荷がかかると(例えば、一方が固定されると)、デフピニオンギヤ41A,41B,41C,41Dは回転しながら他方のサイドギヤ31L,31Rを余分に回転させる。例えば、車両100がカーブを曲がる時に、左右の車輪に速度差(回転数の差)が生じる場合、この速度差を吸収することができる。
【0031】
<ハウジング>
ハウジング4は、車体前後方向の前側に配置されたフロントハウジングである。ハウジング4は、車体左右方向に沿う筒状に形成される。ハウジング4には、差動装置3を収容する内部空間60が形成される。ハウジング4においてベベルギヤ20を収容する部分は、アクスルシャフト30L,30Rを収容する部分よりも径方向外側に膨出している。図の断面視で、ハウジング4においてベベルギヤ20を収容する部分の内壁61は、前側に向かって湾曲している。
【0032】
図2に示すように、ハウジング4の内部空間60には、潤滑油5が貯留される。図の例では、ベベルギヤ20が回転する前の初期の潤滑油5の液面の高さS1(以下「初期のオイルレベルS1」ともいう。)は、アクスルシャフト30L,30Rの中心軸に沿う位置にある。図の例では、初期のオイルレベルS1は、アクスルシャフト30L,30Rの上縁と車軸中心ACとの間に配置される。なお、初期のオイルレベルS1は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0033】
<シュラウド>
図2及び
図3を併せて参照し、車軸装置1は、ベベルギヤ20の回転によりベベルギヤ20の周囲を流れる潤滑油5を案内するシュラウド65,66を更に備える。シュラウド65,66は、ハウジング4の内壁61と隙間を介して配置される。シュラウド65,66は、ベベルギヤ20の回転方向に沿う板状の部分を含んで構成される。
【0034】
図の例では、シュラウド65,66は、ベベルギヤ20を介して一対設けられる。一対のシュラウド65,66は、ベベルギヤ20の歯面部21と隙間を介して配置される歯面側シュラウド65と、ディファレンシャルケース24のケース背面部27と隙間を介して配置される背面側シュラウド66と、を含んで構成される。なお、シュラウド65,66の構成態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0035】
<ブレーキ>
車軸装置1は、車体左右方向の外端側に、湿式多板式のブレーキ70L,70Rを更に備える。ブレーキ70L,70Rは、左右一対設けられる。ブレーキ70L,70Rは、アクスルシャフト30L,30Rの車幅方向外端部とファイナルギヤ71L,71Rとの間に配置される。例えば、トランスミッション111で変速されたエンジンの回転は、ファイナルギヤ71L,71Rで最終的に減速されてタイヤに伝わる。
【0036】
ブレーキ70L,70Rの少なくとも一部は、潤滑油5に浸る。例えば、初期のオイルレベルS1では、ブレーキ70L,70Rの約半分が潤滑油5に浸ってもよい。なお、ブレーキ70L,70Rが潤滑油5に浸る態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0037】
<突起>
図5は、実施形態に係るハウジング4の内壁61の突起80を示す図であって、
図3の一部を拡大して示す図である。
図6は、実施形態に係るハウジング4の内壁61の突起80を示す斜視図である。
図6においては、突起80が設けられるハウジング4の内壁61(前側内壁61)の図示を省略している。
図5及び
図6を併せて参照し、ハウジング4は、ベベルギヤ20の外周と対向する内壁61に突起80を備える。突起80は、フロントハウジングの前側内壁61に設けられる。
【0038】
突起80は、ハウジング4の前側内壁61からベベルギヤ20の外周に向かって突出している。例えば、突起80は、ハウジング4の前側内壁61と同一の部材で一体に形成されてもよい。例えばこの場合、突起80は、ハウジング4の一部から隆起する隆起部でもよい。なお、突起80は、隆起部であることに限らず、ハウジング4の前側内壁61とは異なる部材(板状部材)で形成されてもよい。例えばこの場合、突起80を形成する板状部材は、ハウジング4の前側内壁61に溶接等で固定されてもよい。例えば、突起80の態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0039】
図4及び
図5を併せて参照し、車体前後方向から見て、突起80の外形の一部は、車体左右方向の中心BCと重なる。図の例では、車体前後方向から見て、突起80の外形の一部は、ベベルギヤ20の車体左右方向の外端と重なる。図の例では、車体前後方向に対して前下がりに車体101を6度前傾させた場合に、突起80の外形の一部は、潤滑油5の液面S2(以下「前傾時のオイルレベルS2」ともいう。)と重なる。前傾時のオイルレベルS2は、初期のオイルレベルS1よりも車体上方に位置する。
【0040】
図2及び
図3を併せて参照し、車体前後方向から見て、突起80の一部は、伝達軸2と重なる。突起80の少なくとも一部は、潤滑油5に浸る。例えば、初期のオイルレベルS1では、突起80の約半分が潤滑油5に浸ってもよい。なお、突起80が潤滑油5に浸る態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0041】
図5及び
図6を併せて参照し、突起80とベベルギヤ20との隙間Gの大きさは、5mm以上10mm以下である。突起80とベベルギヤ20との隙間Gは、突起80とベベルギヤ20との最小間隔に相当する。図の例では、突起80のうちベベルギヤ20の側面部23に面する部分には、凹部81が形成されている。例えば、凹部81の底面は、ベベルギヤ20の回転方向及び軸方向において、ベベルギヤ20の側面部23に沿って一様の隙間Gをあけて配置されている。
【0042】
図3及び
図4を併せて参照し、車体前後方向から見て、突起80の外形の一部は、ベベルギヤ20の歯面側から背面側に向かうに従って車軸中心ACに近づくように傾斜する。車軸中心ACは、アクスルシャフト30L,30Rの中心に相当する。
【0043】
車体前後方向から見て、突起80の外形の少なくとも一部は、ベベルギヤ20の歯面側から背面側に向かうに従って車体上下方向の上側及び下側から車軸中心ACに近づくように傾斜する2つの辺V1,V2と、車体左右中心線BCに沿う1つの辺V3と、を含む三角形の外形と重なる。図の例では、車体前後方向から見て、突起80の外形の一部は、1つの頂点が車軸中心AC上にある正三角形の外形と重なる。
【0044】
図4及び
図5を併せて参照し、車体前後方向から見て、突起80の外形の一部は、シュラウド65と重なる。図の例では、車体前後方向から見て、突起80の外形の一部は、歯面側シュラウド65と重なる。図の例では、突起80のうち車体前後方向から見て歯面側シュラウド65と重なる部分には、溝82が形成されている。
【0045】
一方、車体前後方向から見て、突起80の外形は、背面側シュラウド66とは重ならない。図の例では、突起80の右端は、背面側シュラウド66よりも車体左右方向の内側に配置されている。例えば、突起80の右端には、背面側シュラウド66に対して所定間隔をあけるための切欠きが形成されてもよい。例えば、突起80の右端は、車体前後方向から見て、ケース背面部27の右側に配置されるボルトの頭部25と重なる位置に設定されてもよい。
【0046】
例えば、車体前後方向から見て突起80の外形の一部が上記の正三角形の外形と重なる場合は、以下の手順(1)から(6)で、突起80の外形を設定してもよい。
(1)突起80の右端は、車体前後方向から見て、ケース背面部27の右側に配置されるボルトの頭部25と重なる位置に設定する。
(2)突起80の左端は、車体前後方向から見て、車体左右方向の中心BCと重なる位置に設定する。
(3)突起80の外形のうちベベルギヤ20の歯面側から背面側に向かうに従って車体上下方向の上側から車軸中心ACに近づくように傾斜する辺V1の一部は、前傾時のオイルレベルS2と重なる位置に設定する。
(4)車体前後方向から見て、上記(2)における突起80の左端に沿う辺V3(車体上下方向に沿う辺)と、上記(3)の辺V1とのなす角度は、60度に設定する。
(5)車体前後方向から見て、突起80の外形のうちベベルギヤ20の歯面側から背面側に向かうに従って車体上下方向の下側から車軸中心ACに近づくように傾斜する辺V2は、車軸中心ACを対称軸として、上記(4)の辺V1に対して線対称となる位置に設定する。
(6)突起80のうちベベルギヤ20の側面部23に面する部分は、ベベルギヤ20の側面部23に対して10mm程度の隙間Gをあける。
なお、突起80の外形を設定する手順は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0047】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の車軸装置1は、車体101に設けられる。車軸装置1は、駆動源110からの回転動力を伝達する伝達軸2と、伝達軸2の回転により車体左右方向に沿う軸を中心に回転するベベルギヤ20を含む差動装置3と、差動装置3を収容するとともに、差動装置3を潤滑するための潤滑油5を貯留するハウジング4と、を備える。ハウジング4は、ベベルギヤ20の外周と対向する内壁61に突起80を備える。
例えば、
図7に示すように、車軸装置1Xでは、ベベルギヤ20Xの回転により、潤滑油5の液面の高さ(オイルレベル)に左右差が生じる場合がある。例えば、ベベルギヤ20Xの歯面側では、ベベルギヤ20Xの歯面とは反対側(背面側)よりもオイルレベルが高くなる。この場合、左右のブレーキの冷却能力に差が生じる。例えば、この差を無くすために、オイルレベルを低い側に合わせ、初期のオイルレベルを決定する場合がある。しかしこの場合、オイルレベルの左右差の分、オイルが無駄となり、オイルコストの増加、オイルの攪拌ロスとなり得る。
これに対し本構成によれば、ベベルギヤ20の外周と対向するハウジング4の内壁61に突起80を備えることで、ハウジング4の内壁61とベベルギヤ20の外周との隙間Gを突起80で狭めることができる。そのため、ベベルギヤ20の回転によりベベルギヤ20の周辺を流れるオイルの流速を、突起80による絞り効果で速くすることができる。これにより、ベベルギヤ20の歯面側よりも背面側に向かって流れるオイル(例えば、
図6の矢印方向に流れるオイル)の流速を速くすることができる。そのため、ベベルギヤ20の回転によりオイルレベルの高い側から低い側へ向かって流れるオイルの流量を増すことができる。したがって、オイルレベルの左右差を低減することができる。
【0048】
本実施形態では、車体前後方向から見て、突起80の外形の一部は、車体左右方向の中心BCと重なる。
例えば、車体前後方向から見て、突起80の外形が車体左右方向の中心BCに対してベベルギヤ20の歯面側の方向に長く延び過ぎる場合、ベベルギヤ20の歯面側から背面側へのオイルの流れを阻害してしまう。これに対し本構成によれば、車体前後方向から見て突起80の外形の一部が車体左右方向の中心BCと重なることで、ベベルギヤ20の歯面側から背面側へのオイルの流れを阻害してしまう事態を回避することができる。
【0049】
本実施形態では、車体前後方向から見て、突起80の外形の一部は、ベベルギヤ20の車体左右方向の外端と重なる。
この構成によれば、突起80の外形が必要以上に大きくなることを抑制することができる。
【0050】
本実施形態では、車体前後方向に対して前下がりに車体101を6度前傾させた場合に、突起80の外形の一部は、潤滑油5の液面S2と重なる。
この構成によれば、車体前後方向に対して前下がりに車体101を6度前傾させた場合でも、ベベルギヤ20の回転によりベベルギヤ20の周辺を流れるオイルの流速を、突起80による絞り効果で速くすることができる。例えば、車両100が下り斜面を走行中の場合でも、オイルレベルの左右差を低減することができる。
【0051】
本実施形態では、車体前後方向から見て、突起80の一部は、伝達軸2と重なる。
この構成によれば、伝達軸2の回転に伴うベベルギヤ20の回転によりベベルギヤ20の周辺を流れるオイルの流速を、突起80による絞り効果でより効果的に速くすることができる。
【0052】
本実施形態では、ハウジング4は、車体前後方向の前側に配置されたフロントハウジングである。突起80は、フロントハウジングの前側内壁61に設けられる。
この構成によれば、フロントハウジングの内部空間60において、オイルレベルの左右差を低減することができる。
【0053】
本実施形態では、突起80の少なくとも一部は、潤滑油5に浸る。
この構成によれば、ベベルギヤ20の回転によりベベルギヤ20の周辺を流れるオイルの流速を、突起80による絞り効果でより効果的に速くすることができる。
【0054】
本実施形態では、突起80とベベルギヤ20との隙間Gの大きさは、5mm以上10mm以下である。
例えば、突起80とベベルギヤ20との隙間Gの大きさが5mm未満である場合、隙間Gが小さ過ぎてしまい、ベベルギヤ20の回転バラツキ、ハウジング4の製造バラツキ、差動装置3の組み立て時の調整代等を考慮した必要な寸法を確保できなくなる可能性が高い。一方、突起80とベベルギヤ20との隙間Gの大きさが10mm超過である場合、突起80による絞り効果を十分に得ることができなくなる可能性が高い。これに対し本構成によれば、突起80とベベルギヤ20との隙間Gの大きさが5mm以上10mm以下であることで、上記の必要な寸法を確保しつつ、突起80による絞り効果を十分に得ることができる。
【0055】
本実施形態では、車体前後方向から見て、突起80の外形の一部は、ベベルギヤ20の歯面側から背面側に向かうに従って車軸中心ACに近づくように傾斜する。
この構成によれば、突起80の外形がベベルギヤ20の歯面側から背面側に向かって車体左右方向に一様に延びる場合と比較して、ベベルギヤ20の回転によりベベルギヤ20の周辺を流れるオイルをベベルギヤ20の歯面側から背面側に向かって誘導しやすくなる。したがって、オイルレベルの左右差をより効果的に低減することができる。
【0056】
本実施形態では、車体前後方向から見て、突起80の外形の少なくとも一部は、ベベルギヤ20の歯面側から背面側に向かうに従って車体上下方向の上側及び下側から車軸中心ACに近づくように傾斜する2つの辺V1,V2と、車体左右中心線BCに沿う1つの辺V3と、を含む三角形の外形と重なる。
この構成によれば、ベベルギヤ20の正回転及び逆回転の各々によりベベルギヤ20の周辺を流れるオイルをベベルギヤ20の歯面側から背面側に向かって誘導しやすくなる。したがって、オイルレベルの左右差をより効果的に低減することができる。例えば、車両100の前進走行時及び後進走行時の各々で、オイルレベルの左右差をより効果的に低減することができる。
【0057】
本実施形態では、車軸装置1は、ベベルギヤ20の回転によりベベルギヤ20の周囲を流れる潤滑油5を案内するシュラウド65を更に備える。車体前後方向から見て、突起80の外形の一部は、シュラウド65と重なる。
この構成によれば、ベベルギヤ20の回転によりベベルギヤ20の周辺を流れつつシュラウド65により案内されるオイルの流速を、突起80による絞り効果でより効果的に速くすることができる。
【0058】
本実施形態では、車軸装置1は、車体左右方向の外端側に、湿式多板式のブレーキ70L,70Rを更に備える。ブレーキ70L,70Rの少なくとも一部は、潤滑油5に浸る。
この構成によれば、潤滑油5によりブレーキ70L,70Rを冷却することができるため、ブレーキ70L,70Rの制動性能を保持することができる。
【0059】
<変形例>
上述した実施形態では、車体前後方向から見て、突起の外形の一部は、車体左右方向の中心と重なる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、車体前後方向から見て、突起の外形の全部は、車体左右方向の中心と重ならなくてもよい。例えば、車体前後方向から見て、突起の外形は、車体左右方向の中心に対してベベルギヤの歯面側の方向に長く延びてもよい。例えば、車体左右方向の中心に対する突起の外形の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0060】
上述した実施形態では、車体前後方向から見て、突起の外形の一部は、ベベルギヤの車体左右方向の外端と重なる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、車体前後方向から見て、突起の外形の全部は、ベベルギヤの車体左右方向の外端と重ならなくてもよい。例えば、ベベルギヤの車体左右方向の外端に対する突起の外形の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0061】
上述した実施形態では、車体前後方向に対して前下がりに車体を6度前傾させた場合に、突起の外形の一部は、潤滑油の液面と重なる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、車体前後方向に対して前下がりに車体を6度前傾させた場合に、突起の外形の全部は、潤滑油の液面と重ならなくてもよい。例えば、車体前傾時での潤滑油の液面に対する突起の外形の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0062】
上述した実施形態では、車体前後方向から見て、突起の一部は、伝達軸と重なる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、車体前後方向から見て、突起の全部は、伝達軸と重ならなくてもよい。例えば、伝達軸に対する突起の外形の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0063】
上述した実施形態では、ハウジングは、車体前後方向の前側に配置されたフロントハウジングであり、突起は、フロントハウジングの前側内壁に設けられる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ハウジングは、車体前後方向の後側に配置されたリヤハウジングであり、突起は、リヤハウジングの後側内壁に設けられてもよい。例えば、突起は、フロントハウジングの前側内壁、及び/又は、リヤハウジングの後側内壁に設けられてもよい。例えば、フロントハウジング及びリヤハウジングに対する突起の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0064】
上述した実施形態では、突起の少なくとも一部は、潤滑油に浸る例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、突起の全部は、潤滑油に浸らなくてもよい。例えば、突起が潤滑油に浸る態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0065】
上述した実施形態では、突起とベベルギヤとの隙間の大きさは、5mm以上10mm以下である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、突起とベベルギヤとの隙間の大きさは、5mm未満又は10mm超過であってもよい。例えば、突起とベベルギヤとの隙間の大きさは、設計仕様に応じて変更することができる。
【0066】
上述した実施形態では、車体前後方向から見て、突起の外形の一部は、ベベルギヤの歯面側から背面側に向かうに従って車軸中心に近づくように傾斜する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、突起の外形は、ベベルギヤの歯面側から背面側に向かって車体左右方向に一様に延びてもよい。例えば、車軸中心に対する突起の外形の傾斜態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0067】
上述した実施形態では、車体前後方向から見て、突起の外形の少なくとも一部は、ベベルギヤの歯面側から背面側に向かうに従って車体上下方向の上側及び下側から車軸中心に近づくように傾斜する2つの辺と、車体左右中心線に沿う1つの辺と、を含む三角形の外形と重なる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、車体前後方向から見て、突起の外形の全部は、上記の三角形と重ならなくてもよい。例えば、車体前後方向から見て、突起の外形は、矩形や五角形等の多角形でもよいし、円形や楕円形、長円形等の湾曲した外形でもよいし、直線及び曲線を含む外形でもよいし、これらを組み合わせた外形でもよい。例えば、突起の外形の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0068】
上述した実施形態では、車軸装置は、ベベルギヤの回転によりベベルギヤの周囲を流れる潤滑油を案内するシュラウドを更に備え、車体前後方向から見て、突起の外形の一部は、シュラウドと重なる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、車体前後方向から見て、突起の外形の全部は、シュラウドと重ならなくてもよい。例えば、車軸装置は、シュラウドを備えなくてもよい。例えば、シュラウドに対する突起の外形の配置態様、及び/又は、シュラウドの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0069】
上述した実施形態では、車軸装置は、車体左右方向の外端側に、湿式多板式のブレーキを更に備え、ブレーキの少なくとも一部は、潤滑油に浸る例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ブレーキの全部は、潤滑油に浸らなくてもよい。例えば、ブレーキの少なくとも一部は、上記の潤滑油とは別の油に浸ってもよい。例えば、車軸装置は、上記のブレーキを備えなくてもよい。例えば、車軸装置は、湿式多板式以外のブレーキを備えてもよい。例えば、ブレーキが潤滑油に浸る態様、及び/又は、ブレーキの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0070】
上述した実施形態では、車軸装置は、駆動源であるディーゼルエンジンからトランスミッションを通過した力を車輪に伝える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、駆動源は、ディーゼルエンジン以外のエンジンであってもよい。例えば、車軸装置は、エンジン以外の他の動力源からの回転動力を車輪に伝えてもよい。例えば、駆動源の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0071】
上述した実施形態では、車軸装置は、ホイールローダに搭載される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、車軸装置は、ショベルやブルドーザ、ダンプトラック等の他の作業車両に搭載されてもよい。例えば、車軸装置が搭載される車両の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0072】
上述した実施形態では、伝達軸の回転により車体左右方向に沿う軸を中心に回転するギヤは、ベベルギヤである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、伝達軸の回転により車体左右方向に沿う軸を中心に回転するギヤは、平歯車、はすば歯車、ねじ歯車、やまば歯車、球状歯車等の他の歯車を含んで構成されてもよい。例えば、伝達軸の回転により車体左右方向に沿う軸を中心に回転するギヤの構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であり、上述した実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0074】
(付記1)
車体に設けられた車軸装置であって、
駆動源からの回転動力を伝達する伝達軸と、
前記伝達軸の回転により車体左右方向に沿う軸を中心に回転するギヤを含む差動装置と、
前記差動装置を収容するとともに、前記差動装置を潤滑するための潤滑油を貯留するハウジングと、を備え、
前記ハウジングは、前記ギヤの外周と対向する内壁に突起を備える、
車軸装置。
【0075】
(付記2)
車体前後方向から見て、前記突起の外形の一部は、前記車体左右方向の中心と重なる、
付記1に記載の車軸装置。
【0076】
(付記3)
前記車体前後方向から見て、前記突起の外形の一部は、前記ギヤの前記車体左右方向の外端と重なる、
付記2に記載の車軸装置。
【0077】
(付記4)
前記車体前後方向に対して前下がりに前記車体を6度前傾させた場合に、前記突起の外形の一部は、前記潤滑油の液面と重なる、
付記3に記載の車軸装置。
【0078】
(付記5)
車体前後方向から見て、前記突起の一部は、前記伝達軸と重なる、
付記1から4の何れかに記載の車軸装置。
【0079】
(付記6)
前記ハウジングは、車体前後方向の前側に配置されたフロントハウジング、又は、前記車体前後方向の後側に配置されたリヤハウジングであり、
前記突起は、前記フロントハウジングの前側内壁、又は、前記リヤハウジングの後側内壁に設けられる、
付記1から5の何れかに記載の車軸装置。
【0080】
(付記7)
前記突起の少なくとも一部は、前記潤滑油に浸る、
付記1から6の何れかに記載の車軸装置。
【0081】
(付記8)
前記突起と前記ギヤとの隙間の大きさは、5mm以上10mm以下である、
付記1から7の何れかに記載の車軸装置。
【0082】
(付記9)
車体前後方向から見て、前記突起の外形の一部は、前記ギヤの歯面側から背面側に向かうに従って車軸中心に近づくように傾斜する、
付記1から8の何れかに記載の車軸装置。
【0083】
(付記10)
前記車体前後方向から見て、前記突起の外形の少なくとも一部は、前記ギヤの歯面側から背面側に向かうに従って車体上下方向の上側及び下側から前記車軸中心に近づくように傾斜する2つの辺と、車体左右中心線に沿う1つの辺と、を含む三角形の外形と重なる、
付記9に記載の車軸装置。
【0084】
(付記11)
前記ギヤの回転により前記ギヤの周囲を流れる前記潤滑油を案内するシュラウドを更に備え、
車体前後方向から見て、前記突起の外形の一部は、前記シュラウドと重なる、
付記1から10の何れかに記載の車軸装置。
【0085】
(付記12)
前記車体左右方向の外端側に、湿式多板式のブレーキを更に備え、
前記ブレーキの少なくとも一部は、前記潤滑油に浸る、
付記1から11の何れかに記載の車軸装置。
【符号の説明】
【0086】
1…車軸装置、2…伝達軸、3…差動装置、4…ハウジング、5…潤滑油、20…ベベルギヤ(伝達軸の回転により車体左右方向に沿う軸を中心に回転するギヤ)、25…ボルトの頭部(ギヤの車体左右方向の外端)、61…内壁、65…歯面側シュラウド(シュラウド)、70L,70R…ブレーキ、80…突起、101…車体、110…駆動源、AC…車軸中心、BC…車体左右中心線(車体左右方向の中心)、G…突起とギヤとの隙間、S1,S2…潤滑油の液面、V1,V2,V3…三角形の外形に含まれる辺